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電気痙攣療法によるうつ病患者の脳体積への影響に関するメタ解析

 デンマーク・Mental Health Centre GlostrupのK. Gbyl氏らは、脳構造に対する電気痙攣療法(ECT)の影響に関する文献レビューを行った。Acta psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2018年4月29日号の報告。 MRIを用いたECTで治療されたうつ病患者の縦断研究のシステマティック文献レビューおよび海馬体積の対するECTの影響に関するメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・32研究より、患者群467例、対照群285例が抽出された。・MRI研究では、ECTと脳のダメージとの関連を示すエビデンスは見つからなかった。・新しいMRIによる体積測定試験の1つを除き、特定の脳領域(多くの場合、海馬)におけるECT誘発性体積増加は、認められなかった。・海馬体積に対するECTの影響に関するメタ解析では、プールされた効果量は、右海馬でg=0.39(95%CI:0.18~0.61)、左海馬でg=0.31(95%CI:0.09~0.53)であった。・DTI研究では、前頭葉および側頭葉における白質経路の完全性におけるECT誘発性増加が示唆された。・体積増加と治療効果との間の相関結果は、一貫していなかった。 著者らは「MRI研究では、ECTが脳のダメージを引き起こすとの仮説を支持せず、むしろ治療により、前辺縁領域の体積増加を誘発する。今後、これらの体積増加、治療効果、認知的副作用との関連を研究すべきである」としている。■関連記事うつ病患者に対する継続ECTの新たな戦略精神疾患患者に対するECT後の転帰を予測することは可能かうつ病治療に対する、電気けいれん療法 vs 磁気けいれん療法

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週1回製剤が糖尿病患者の負担軽減

 近年、糖尿病治療にはさまざまな薬物療法が登場する中、患者の意向や負担を考慮し、個々のライフスタイルに合わせた治療方法の選択が望まれている。しかし、糖尿病患者の負担を評価する既存の質問票では、薬物治療に対しての負担を抽出して評価することは難しい。 そこで今回、奈良県立医科大学は、日本イーライリリー株式会社の支援により、2型糖尿病患者における薬物治療の負担を測定するアンケート調査手法、「DTBQ(Diabetes Treatment Burden Questionnaire:糖尿病薬物治療負担度質問票)」を開発し、検証・調査を行った。 本試験の解析結果より、DTBQの信頼性が示され、服用による患者負担は、注射薬より経口薬のほうが小さく、また投与頻度が少ないほど小さくなることが明らかになった。本結果は、論文としてDiabetes Therapy誌2018年3月29日号に掲載された。 本研究は、外来で以下の6種類のうち1種類の治療を12週間以上受けている 2型糖尿病患者236例を対象に行われた。1. 注射薬(GLP-1受容体作動薬:以下GLP-1)を週1回±経口血糖降下薬2. 注射薬(インスリンまたはGLP-1)を1日1回±経口血糖降下薬3. 注射薬(インスリンまたはGLP-1)を1日2~3回±経口血糖降下薬4. 経口血糖降下薬のみを週1回5. 経口血糖降下薬のみを1日1回6. 経口血糖降下薬のみを1日2~3回 DTBQは、(1)基本情報を聴取するパートと、(2)薬物療法に対する負担感を評価するパートで構成されている。(2)の質問は、18項目それぞれを1~7点で回答し、このスコアレベルをもとに治療負担を評価する。 検証は、信頼性評価として、236例を対象に1回目のDTBQ記入を実施、ならびに再現性評価として、47例を対象に、1回目のDTBQ記入に続き2回目の記入を実施した。 主な結果は以下のとおり。・週1回の経口薬の患者負担が最も小さく、次いで1日1回の経口薬、週1回の注射薬の順となり、1日複数回の服用は患者負担が大きかった。・HbA1c値が7.0%未満の患者と7.0%以上の患者を比較すると、後者のほうがより負担を感じていた。・低血糖経験のない患者よりも、経験のある患者のスコアが有意に高く、低血糖経験のある患者のほうが治療に対して負担を感じていた。・注射薬、経口血糖降下薬ともに、コンプライアンスのよい患者は治療に対する負担が軽度であった。・本試験の解析の結果、Cronbach’s α係数が0.7775~0.885であったことから各質問に対する回答の一貫性が示され、信頼性が明らかになった。・級内相関係数(ICC)が0.912であったことから、1回目の回答と2回目の回答の一致度が高いことが示され、再現性に優れていることが判明した。 この結果について、石井 均氏(奈良県立医科大学 糖尿病学講座 教授)は、「今後この結果は患者さんをより理解すること、そのうえで患者さんに合った、より良い治療方針を決定していくことに役立つことを確信しています」とコメントしている。■原著論文1)Ishii H, et al. Diabetes Ther. 2018 Mar 29. [Epub ahead of print]■参考日本イーライリリー株式会社 プレスリリース

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内視鏡による進行腺腫あり vs.なし、大腸がんリスクに有意差/JAMA

 軟性S状結腸鏡検査(FSG)が陽性で大腸内視鏡検査を受けた結果、進行腺腫が認められた人は、腺腫が認められなかった人に比べて、その後の大腸がんリスクが有意に高かった。一方で非進行腺腫の有無と同リスク増大には関連は認められない可能性が示されたという。米国・ピッツバーグ大学のBenjamin Click氏らが、FSGの結果が陽性だった1万5,935例を対象にした試験で明らかにしたもので、JAMA誌2018年5月15日号で発表した。腺腫ポリープがある人は大腸がんを予防するために、定期的な大腸内視鏡検査を受けるよう勧められる。しかし、検査受診時の腺腫有無と、長期の大腸がん発症との関連は明らかになっていなかった。大腸内視鏡検査で腺腫ありvs.なしの15年以内の大腸がんリスクを評価 研究グループは、前立腺・肺・大腸・卵巣がんに関する多施設共同前向きコホート無作為化試験「PLCO(Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian)Cancer試験」を行った。全米各地で1993年にFSGスクリーニングを開始し、2013年まで大腸がん発症の追跡を行った。試験には、男女55~74歳の15万4,900例が登録され、無作為に2群に分けられ、一方はFSGによる追跡を、もう一方には通常ケアを行った。 初回FSGスクリーニングで陽性だった1万5,935例には、大腸内視鏡検査が行われ、腺腫の有無と状態の別で分類された。 主要評価項目は、ベースラインの大腸内視鏡検査から15年以内の大腸がん発症率。副次的評価項目は、大腸がん死亡率だった。進行腺腫あり、なしに比べて大腸がん死亡リスク2.6倍 大腸内視鏡検査を行った被験者1万5,935例の平均年齢は64歳、男性の割合は59.7%だった。初回大腸内視鏡検査の結果、進行腺腫が認められたのは2,882例(18.1%)、非進行腺腫は5,068人(31.8%)、腺腫がまったく認められなかったのは7,985例(50.1%)だった。大腸がん罹患率の追跡期間中央値は、12.9年だった。 大腸がんの罹患率は、腺腫が認められなかった群で7.5例/1万人年、非進行腺腫群は9.1例/1万人年だったのに対し、進行腺腫群では20.0例/1万人年と、進行腺腫群は無腺腫群に比べ有意に増大した(リスク比[RR]:2.7、95%信頼区間[CI]:1.9~3.7、p<0.001)。非進行腺腫群と無腺腫群では、有意差はなかった。 また、大腸がん死亡リスクについても、進行腺腫群の有意な増大が認められたが(RR:2.6、95%CI:1.2~5.7、p=0.01)、非進行腺腫群の同リスクに有意差はみられなかった(RR:1.2、95%CI:0.5~2.7、p=0.68)。

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急性単純性膀胱炎に対するガイドライン推奨治療の比較試験(解説:小金丸博氏)-860

 膀胱炎に代表される尿路感染症はとてもありふれた感染症であり、とくに女性では一生涯で半数以上が経験すると言われている。膀胱炎に対して世界中で多くの抗菌薬が処方されることが薬剤耐性菌出現の一因になっていると考えられており、2010年に米国感染症学会(IDSA)と欧州臨床微生物感染症学会(ESCMID)は「女性の急性単純性膀胱炎および腎盂腎炎の治療ガイドライン」を改訂した。このガイドラインでは、急性単純性膀胱炎に対する第1選択薬としてnitrofurantoin monohydrateやfosfomycin trometamolなどを推奨しており、これらの薬剤の使用量が増加してきているが、治療効果を比較したランダム化試験はほとんど存在しなかった。 本試験は、妊娠をしていない18歳以上の女性を対象に、急性単純性膀胱炎に対するnitrofurantoinとfosfomycinの治療効果を検討したオープンラベルのランダム化比較試験である。少なくとも1つの急性下部尿路感染症状(排尿障害、尿意切迫、頻尿、恥骨上圧痛)を有し、尿亜硝酸塩あるいは白血球エステラーゼ反応陽性を示すものを対象とした。その結果、プライマリアウトカムである28日目の臨床的改善率はnitrofurantoin群70%、fosfomycin群58%であり、nitrofurantoin群で有意に高率だった(群間差:12%、95%信頼区間:4~21%、p=0.004)。また、セカンダリアウトカムの1つである28日目の微生物学的改善率もnitrofurantoin群で有意に高率だった(74% vs.63%、群間差:11%、95%信頼区間:1~20%、p=0.04)。 本試験で検討された治療薬の用法は、それぞれnitrofurantoin100mgを1日3回・5日間経口投与とfosfomycin3gを単回経口投与であった。ガイドラインではnitrofurantoin100mgを1日2回・5日間経口投与が推奨されており、nitrofurantoinの至適投与方法は今後検討の余地がある。fosfomycinの単回投与は患者のコンプライアンスを考えると魅力的なレジメンであるが、臨床的改善率と微生物学的改善率の両方が有意に低率だったことは、今後の治療薬の選択に影響を与える結果であると考える。 本試験の治療成功率は、過去の報告と比較して低率だった。その理由の1つとして、大腸菌以外の細菌(Klebsiella sppやProteus sppなど)の割合が高かったことが挙げられており、尿路感染症の原因菌として大腸菌が多い地域であれば、もう少し治療成功率が高かった可能性はある。また、過去の試験より治療成功の定義が厳格であったことも影響したと考えられる。 実は、本試験で検討された2つの抗生物質はどちらも日本では発売されていない。日本で発売されているホスホマイシン経口薬はホスホマイシンカルシウムであり、fosfomycin trometamolとは異なる薬剤である。本邦における膀胱炎治療は、ST合剤、βラクタム薬、フロオロキノロンなどの中から選択することが多いと思われるが、地域での薬剤感受性情報や副作用を勘案し、総合的に判断することが求められる。

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統合失調症におけるアドヒアランス不良と医療費との関係

 統合失調症治療における服薬アドヒアランス不良は、重大な問題となっている。アドヒアランス不良が医療費に及ぼす影響を理解することは、治療アドヒアランスが懸念される際に行われる介入の費用対効果を評価するうえで重要である。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMark Pennington氏らは、統合失調症治療における抗精神病薬のアドヒアランス不良が医療費へ与える影響に関して、利用可能な文献による包括的なレビューを行った。PharmacoEconomics誌オンライン版2018年4月26日号の報告。 2018年2月までに報告された、統合失調症患者の抗精神病薬のアドヒアランスと医療費との関連を調査した研究について、複数のデータベース(MEDLINE、Embase、PsycINFO、Health Management Information Consortium)を用いて検索を行った。対象とした研究には、行動介入試験は含まれたが、異なる薬理学的介入の比較試験は除外された。また、対象患者の1/3以上が統合失調症患者であり、医療費が報告された研究についてレビューした。 主な結果は以下のとおり。・28研究、34件の文献が包括基準を満たした。・20研究は、行政データベース(主にメディケイド)の分析を報告していた。・医療費の調査結果は混在していたが、アドヒアランス不良患者における薬剤費の低下は、入院費(薬価が比較的高い)の増加を上回る可能性があることが示唆された。・いくつかの研究において、プロスペクティブコホートデータの分析や、主に欧州におけるアドヒアランスに影響を及ぼす行動介入試験について発表されていた。・調査結果は再び混在していたが、アドヒアランスの向上は、医療費の低下に関連しないことが示唆された。 著者らは「行政データの分析からの推論は、選択バイアスのリスクにより制限される。また、試験からの推論は、小さいサンプルサイズにより制限される。これらの文献から、アドヒアランス不良が医療費を増加させるとの仮説は、一貫して支持されるものではない」としている。■関連記事統合失調症、服薬アドヒアランス研究の課題とは抗精神病薬の種類や剤形はアドヒアランスに影響するのか統合失調症、双極性障害に対する持効性注射剤使用と関連コスト

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降圧薬が皮膚がんのリスク増加に関連

 米国・マサチューセッツ総合病院のK.A. Su氏らによる調査の結果、光感作性のある降圧薬(AD)による治療を受けた患者では、皮膚の扁平上皮がん(cSCC)のリスクが軽度に増加することが明らかになった。多くのADは光感作性があり、皮膚の日光に対する反応性を高くする。先行の研究では、光感作性ADは口唇がんとの関連性が示唆されているが、cSCCの発症リスクに影響するかどうかは不明であった。British Journal of Dermatology誌オンライン版2018年5月3日号掲載の報告。 研究グループは、北カリフォルニア州の包括的で統合的なhealthcare delivery systemに登録され、高血圧症に罹患した非ヒスパニック系白人のコホート研究において、ADの使用とcSCCリスクとの関連を調べた。ADの使用については電子データを用いて分析。ADは、公表論文に基づいて、光感作性(α2刺激薬、利尿薬[ループ系、カリウム保持性、サイアザイド系および配合剤])、非光感作性(α遮断薬、β遮断薬、中枢性交感神経抑制薬およびARB)または光感作性不明(ACE阻害薬、Ca拮抗薬、血管拡張薬およびその他の配合剤)に分類された。 Coxモデルを用いて補正ハザード比(aHR)と95%信頼区間(CI)を推定した。共変量は、年齢、性別、喫煙、合併症、cSCCおよび日光角化症の既往歴、調査年、医療制度の利用、医療保険会員の期間、光感作性ADの使用歴とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に、cSCCを3,010例が発症した。・AD不使用群と比較し、cSCCのリスクは、光感作性AD使用歴ありの群(aHR:1.17、95%CI:1.07~1.28)、光感作性不明AD使用歴ありの群(aHR:1.11、95%CI:1.02~1.20)で増加したが、非光感作性AD使用歴ありの群では関連は認められなかった(aHR:0.99、95%CI:0.91~1.07)。・光感作性ADの処方数の増加に伴い、cSCCのリスクが軽度に増加した。1~7剤(aHR:1.12[95%CI:1.02~1.24])、8~15剤(同:1.19[1.06~1.34])、16剤以上(同:1.41[1.20~1.67])。

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男女の排尿時間はどちらが長いか?~日本抗加齢医学会総会

 「あなたは自分が何秒間おしっこしているか知っていますか?」 男女別の排尿時間という、これまで泌尿器科、婦人科の世界できちんと検証されてこなかったシンプルな疑問を明らかにしたのは、旭川医科大学病院臨床研究支援センターの松本 成史氏。5月25日~27日に大阪で開催された日本抗加齢医学会のシンポジウム中でその研究成果を発表した。男女とも排尿時間は加齢とともに有意に延長 ヒトの排尿に関する数値としては、1回20~30秒、1回200~400mL、1日1,000~1,500mL、1日5~7回などが標準とされている。しかし、「ヒトの本当の1回の排尿時間を実際に測定して分析した研究報告はこれまでなかった」(松本氏)。一方で、すべての哺乳類の平均排尿時間は、体の大きさに関係なく、21±13秒と結論付けられており、この研究論文は2015年のイグ・ノーベル賞を受賞している(Yang PJ, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014;111:11932-11937.)。 松本氏は、これら排尿に関する数値を日本人で実証すべく、本研究を行った。 排尿時間の調査対象は、NHKの番組企画に協力してくれた20歳以上の3,719人(男性2,373人、女性1,336人)。「通常の尿意」の際の排尿時間(尿が実際に出始め、出終わるまでの時間)を自己計測し、高血圧、糖尿病、腎機能障害の有無、過活動膀胱症状スコア、国際前立腺症状スコアとQOLスコア(男性のみ)などとともに自己申告で記載してもらった。 その結果、平均排尿時間は、男性(平均63.36±11.72歳)で29.00±20.62秒、女性(平均52.63±13.05歳)で18.05±12.48秒と、男性のほうが10秒以上上回った。排尿時間は、尿道が長い男性のほうが女性より長いと一般的に考えられており、それを裏付ける結果となった。 年齢との関係を見ると、男女とも排尿時間は加齢とともに有意に延長。自己申告に基づく高血圧、腎機能障害等の有病者と健常者の比較では、有病者グループのほうが男女とも有意に長かった。 排尿時間の哺乳類標準である「21秒」との乖離について松本氏は、「(排尿時間を延長させる)前立腺肥大の影響がないと考えられる20~50歳に限ると、男性の平均は21.98±17.87秒である」とし、先行研究と矛盾しない結果だと説明する。それも踏まえ、「排尿時間は自己測定が容易であり、アンチエイジング、疾病早期発見の1つの指標になりえる。とくに男性については、[21秒]はわかりやすい数値だ」と話している。

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ミルクチョコ vs.ダークチョコ、視力に良いのは?

 ダークチョコレートは、短期間の血流改善や、気分および認知機能を改善するが、視機能に対する影響はほとんど知られていない。米国・University of the Incarnate Word Rosenberg School of OptometryのJeff C. Rabin氏らは、無作為化クロスオーバー単盲検試験の結果、ダークチョコレートはミルクチョコレートと比較し、摂取2時間後のコントラスト感度と視力を有意に改善したことを報告した。著者は「これらの効果の持続期間や日常臨床での影響については、さらなる検討が待たれる」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2018年4月26日号掲載の報告。 研究グループは、視力ならびに大きい文字と小さい文字のコントラスト感度に対する短期効果をダークチョコレートとミルクチョコレートの摂取で比較する目的で、2017年6月25日~8月15日に、Rosenberg School of Optometryにて無作為化クロスオーバー単盲検試験を行った。 病理学的な眼疾患のない30例(男性9例、女性21例、年齢[平均±SD]26±5歳)に、ダークチョコレートとミルクチョコレートを別個に食べてもらい、1.75時間後に視力および大きい文字と小さい文字のコントラスト感度をそれぞれ測定し、比較した。 主な結果は以下のとおり。・小さい文字のコントラスト感度(平均±SE, logCS)は、ダークチョコレート摂取後1.45±0.04、ミルクチョコレート摂取後1.30±0.05で、ダークチョコレート摂取後のほうが有意に高かった(平均差:0.15、95%信頼区間[CI]:0.08~0.22、p<0.001)。・大きい文字のコントラスト感度(同上)は、ダークチョコレート摂取後2.05±0.02、ミルクチョコレート摂取後2.00±0.02で、ダークチョコレート摂取後のほうがわずかに高かった(平均差:0.05、95%CI:0.00~0.10、p=0.07)。・視力(平均±SE, logMAR)も、ダークチョコレート摂取後-0.22±0.01(約20/12)、ミルクチョコレート摂取後-0.18±0.01(約20/15)で、ダークチョコレート摂取後わずかに改善した(平均差:0.04、95%CI:0.02~0.06、p=0.05)。・すべての検査結果を合わせた複合スコア(logU)は、ダークチョコレート摂取後のほうが、ミルクチョコレート摂取後より有意な改善を示した(平均差:0.20、95%CI:0.10~0.30、p<0.001)。

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認知症発症リスクと身体測定値との関連

 これまで、認知症と特定の身体測定値との関連を調査した研究は、あまり行われていなかった。台湾・亜東技術学院のPei-Ju Liao氏らは、認知症発症リスクと身体測定値との関連について調査を行った。International journal of geriatric psychiatry誌オンライン版2018年5月4日号の報告。 2000~08年における台湾の医療センター健康診断部のデータより、6,831例の人体3D計測によるスキャニングデータ(38の身体測定値を含む)を収集した。そのうち236例が、10年のフォローアップ期間中に認知症を発症した。データ解析には、多重Cox回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・胸幅(ハザード比:0.90、95%CI:0.83~0.98)、右大腿中央囲(ハザード比:0.93、95%CI:0.90~0.96)は、認知症発症予防の予測因子であった。・腹囲(ハザード比:1.03、95%CI:1.02~1.05)は、認知症発症のリスク因子であった。・これらの組み合わせにおいて、腹囲の値が大きく、右大腿中央囲の値が小さい人の認知症発症リスクが最も高かった(ハザード比:2.49、95%CI:1.54~4.03)。 著者らは「身体測定は、臨床医学と予防医学の両方において、将来の応用や科学的なメリットの糸口となる」としている。■関連記事アルツハイマー病へ進行しやすい人の特徴は認知症リスクとBMIとの関連歯の残存数と認知症リスクに関するメタ解析

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リアルワールドエビデンスを活用したSGLT2阻害薬の治療ゴールとは

 2018年5月15日、アストラゼネカ株式会社は、「リアルワールドデータから見えるSGLT2阻害剤による糖尿病治療の新たなステージ~日本人を含むCVD‐REAL2研究の結果によって示唆される日本人糖尿病患者さんのベネフィットや真の治療ゴールとは~」をテーマとしたプレスセミナーを開催した。香坂 俊氏(慶應義塾大学医学部 循環器内科 講師)と門脇 孝氏(東京大学医学部付属病院 特任研究員・帝京大学医学部 常勤客員教授)の2名が講師として招かれ、リアルワールドエビデンス(RWE)の未来と糖尿病治療のエビデンスへの活用についてそれぞれ解説した。安全性確立の時代からランダム比較化試験(RCT)へ 香坂氏によると、1960~70年代に世界を震撼させたサリドマイド事件をきっかけに臨床試験の重要性やそれに基づく認可システムに警鐘が鳴らされ、比較対照試験が一般的となった。さらに、この事件を踏まえ、1990年代からランダム化比較試験(RCT)が一般化されるようになるが、 「基礎研究が安全性の検証のみ」「比較対照がプラセボ」 「効果の実証」についての問題点が議論されるようになり、根拠に基づく医療(EBM)、客観的な医療的介入が治療方針として提唱されるようになった。RCTの限界 さらに、2000年代になるとRCT中心の医療から薬剤間の比較研究へと変わったが、患者の予後に差がつく薬剤に淘汰されていく。その中で、「副作用検出に症例数が少ない(Too Few)」「適応疾患が限定(Too Narrow)」「高齢者が除外(Too Median-Aged)」のような、いわゆる「RCTの5Toos」の問題が指摘されるようになった。なぜRWEなのか? これらの問題を踏まえ、登場したのが「リアルワールドエビデンス(RWE)」である。コホートあるいはデータベース研究、症例対照研究を利活用するため、相対的に「早く」「広く」「安く」結論が得られることが最大のメリットであり、臨床データで選ばれないような特定集団に着目することができる(ビッグデータの活用)点も大きな特徴である。 一方で、「『バイアスを完全に除くことができない』『登録されている情報が限定的』『コントロール(比較対照群)を設定できない』ため、データの信憑性に欠ける点が今後の解決すべき課題である」と同氏は語る。CVD-REAL2:RCTとRWEの方向性が合致した研究 ここで、事例としてRWEを使ったCVD-REAL2が示された。この研究は、世界主要3地域の2型糖尿病患者を対象に、SGLT2阻害薬もしくは他の血糖降下薬による治療において、全死亡、心不全による入院、全死亡または入院の複合解析、心筋梗塞、そして脳卒中との関係性を比較した試験である。そして、SGLT2阻害薬の大規模なRWEの中でも、同薬がより良好な心血管ベネフィットを示したと注目を浴びている。 このほかにRWEが活用された例として、『急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)』の事例を紹介し、同氏は「これは非常にRWEの特性が活かせた事例」と述べ、「データ活用の発展に伴い、RCTの結果のみを鵜呑みにして医療を行うのではなく、その場面や領域に即したRWEを活用しながら診断の方針を確定させることが必要」と強調した。SGLT2阻害薬に対する意識変化 続いて、門脇氏が糖尿病専門医の視点からSGLT2阻害薬でのRWEの活用を説明した。SGLT2阻害薬は発売直後、「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」が策定され、服用により通常体液量が減少するので脱水、脳梗塞への注意喚起が行われた治療薬である。 ところが2015年9月にEMPA-REG OUTCOME試験での非致死的脳卒中の減少が報告されたことから、SGLT2阻害薬は糖尿病専門医だけでなく循環器科専門医の間でも、その可能性に期待が高まるようになった。DECLARE-TIMI58のもたらす結果とは 今回、門脇氏が講演で紹介したDECLARE-TIMI58試験は、2型糖尿病(6.5%≦HbA1c<12%)かつ、心血管疾患既往のある40歳以上、または1つ以上の心血管リスク因子を保有する男性(55歳以上)あるいは女性(60歳以上)の患者、約1万7,000例が登録され、試験期間が中央値4.5年の研究である。同試験では、心不全の抑制を評価するために、これまでの試験では副次評価項目としてしか評価されてこなかった、心血管死または心不全による入院の複合や心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合が主要評価項目となっている。同氏は「この研究でRWEを活用し、糖尿病治療の最終目標をより多くの医師が意識し達成することを期待したい」と伝えている。また、「この研究結果は2018年の後半に発表される予定で、重要な役割を果たす可能性があるのでぜひ注目してほしい」とも述べている。■参考アストラゼネカ株式会社 プレスリリースDECLARE-TIMI 58試験スキーム■関連記事SGLT2阻害薬で心血管リスク低下~40万例超のCVD-REAL2試験SGLT2阻害薬、CV/腎アウトカムへのベースライン特性の影響は/Lancet

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複合型ADHD児における運動能力がADHD症状と睡眠問題に及ぼす影響

 複合型注意欠如多動症(ADHD-Combined Type:ADHD-CT)の小児は、睡眠や運動に関する問題を有する割合が高いといわれている。オーストラリア・ディーキン大学のNicole Papadopoulos氏らは、小児においてADHD-CTの有無にかかわらず、運動能力がADHD症状と睡眠問題との関係を緩和するか、この緩和によりADHD診断に違いがあるかについて検討を行った。Behavioral sleep medicine誌オンライン版2018年3月12日号の報告。 対象は、8~15歳の初等教育男児70例。その内訳は、ADHD-CT群38例(平均年齢:10歳2ヵ月[SD:1歳6ヵ月])、対照(典型的な発達)群32例(平均年齢:9歳6ヵ月[1歳5ヵ月])。運動能力の評価はMovement Assessment Battery for Children第2版(MABC-2)、ADHD症状の評価はConners' Parent Rating Scale(CPRS)、親より報告された睡眠問題の評価はChildren's Sleep Habits Questionnaire(CSHQ)を用いて、それぞれ測定した。 主な結果は以下のとおり。・ADHD症状スコアが高く、運動能力スコアが低い小児において、睡眠問題がより多く報告された。・緩和効果は、ADHD-CT群で認められたが、対照群では認められなかった。 著者らは「本知見は、運動能力の低下したADHD症状がより重症な小児では、睡眠問題リスクが高くなる可能性があることを示唆している。睡眠介入を含むADHD-CT児の睡眠問題のリスクファクターを検討する際には、運動能力を考慮することの重要性も示唆している」としている。■関連記事ADHD発症しやすい家庭の傾向日本でのADHDスクリーニング精度の評価:弘前大学ADHDの小児および青年における意図しない怪我のリスクとADHD薬の影響

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ESUS後の脳卒中再発予防、リバーロキサバン vs.アスピリン/NEJM

 塞栓源不明の脳塞栓症(embolic stroke of undetermined source:ESUS)の初発後の、脳卒中の再発予防において、リバーロキサバンにはアスピリンを上回るベネフィットはないことが、カナダ・マックマスター大学のRobert G. Hart氏らが実施した「NAVIGATE ESUS試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年5月16日号に掲載された。塞栓源不明の脳塞栓症は、虚血性脳卒中の20%を占め、高い再発率と関連する。抗凝固薬は、心房細動患者の脳塞栓症の予防に有効であることから、塞栓源不明の脳塞栓症後の脳卒中の再発予防において、抗血小板薬よりも高い効果が得られる可能性があるとの仮説が提唱されている。NAVIGATE ESUS試験は31ヵ国459施設に7,213例を登録 NAVIGATE ESUS試験は、日本を含む31ヵ国459施設が参加した国際的な無作為化第III相試験である(BayerとJanssen Research and Developmentの助成による)。 NAVIGATE ESUS試験の対象は、脳塞栓に起因すると推定されるが、動脈の狭窄やラクナ梗塞はなく、心内塞栓源が同定されない虚血性脳卒中の患者であった。被験者は、リバーロキサバン(15mg、1日1回)またはアスピリン(100mg、1日1回)を投与する群に無作為に割り付けられた。 有効性の主要アウトカムは、time-to-event解析における脳卒中(虚血性、出血性、未定義の脳卒中)の初回再発または全身性塞栓症の発症であった。安全性の主要アウトカムは、大出血の発生率とした。 2014年12月~2017年9月の期間に、7,213例が登録され、リバーロキサバン群に3,609例が、アスピリン群には3,604例が割り付けられた。 2017年10月5日の2回目の中間解析で、再発抑制に関してベネフィットが得られる可能性がほとんどなく、リバーロキサバン群は出血リスクが高いと判定され、データ・安全性監視委員会の勧告により、本試験は早期に終了した。年間再発率:5.1 vs.4.8%、年間大出血発生率:1.8 vs.0.7% ベースラインの全体の平均年齢は67歳、62%が男性であった。高血圧が77%、糖尿病が25%、脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)の既往は18%に認められた。また、卵円孔開存が7%(リバーロキサバン群:259例、アスピリン群:275例)にみられた。 NAVIGATE ESUS試験の早期終了まで、中央値で11ヵ月の追跡が行われた。有効性の主要アウトカムは、リバーロキサバン群172例(年間発生率:5.1%)、アスピリン群160例(4.8%)に認められ、ハザード比(HR)は1.07(95%信頼区間[CI]:0.87~1.33)と、両群間に有意な差はみられなかった(p=0.52)。 虚血性脳卒中の再発は、リバーロキサバン群158例(年間発生率:4.7%)、アスピリン群156例(4.7%)(HR:1.01、95%CI:0.81~1.26)であり、出血性脳卒中の再発はそれぞれ13例(0.4%)、2例(0.1%)(6.50、1.47~28.8)、全身性塞栓症は1例(<0.1%)、2例(0.1%)(0.50、0.05~5.51)であった。 事前に規定された探索的サブグループ解析では、東アジア人(中国、日本、韓国)および推定糸球体濾過量>80mL/分の患者は、アスピリン群のほうが、有効性の主要アウトカムの年間発生率が有意に低かったが、イベント数が少なく十分な検出力はなかった。 大出血は、リバーロキサバン群62例(年間発生率:1.8%)、アスピリン群23例(0.7%)に認められ、HRは2.72(1.68~4.39)と、リバーロキサバン群で有意に高頻度であった(p<0.001)。また、生命を脅かす出血/致死的出血(p=0.004)、臨床的に重要な非大出血(p=0.004)、症候性頭蓋内出血(p=0.003)は、いずれもリバーロキサバン群で有意に頻度が高かった。 現在、NAVIGATE ESUS試験と同様の患者を対象に、他の抗凝固薬とアスピリンを比較する無作為化試験が進行中だという。

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統合失調症の超長期的アウトカム

 統合失調症および統合失調症スペクトラム障害の超長期的アウトカムに関する最近のデータについて、チェコ・カレル大学のJan Volavka氏らが検討を行い、治療介入を含むアウトカムに影響を及ぼす要因について調査した。International journal of clinical practice誌オンライン版2018年4月24日号の報告。 2008~17年に発表された、統合失調症または統合失調症スペクトラム障害を対象とし、5年以上のフォローアップ期間を設け、適切なアウトカムの情報を有するプロスペクティブコホート研究を、PubMedおよびScopusデータベースより検索した。参考文献リストおよび著者の参照ライブラリを追加文献に含んだ。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ時に症状寛解を有する患者の割合は、抗精神病薬による計画的な治療の患者で37.5%、未治療患者で16.4%であった。・フォローアップ時の良好なアウトカムは、低用量の抗精神病薬で治療を行っていた患者および薬物治療開始時に薬理学的な治療を行っていなかった患者において観察された。・初回エピソード時の早期発見および集中的な治療とともに、継続的な心理社会的治療、その後の継続的なサポートが、より良いアウトカムと関連していた。 著者らは「統合失調症の長期的アウトカムは、メンタルヘルスケアへのアクセス、精神症状の早期発見、薬理学的治療により、非常に多様であった。最近のデータは、一部の患者における長期的な低用量の抗精神病薬による治療の有効性を裏付けるものであった。初回エピソードの統合失調症患者のうち20%程度は、長期的な抗精神病薬の維持治療を必要としないと考えられる。その割合は、統合失調症スペクトラム障害において、より高い可能性がある。しかし、これらの患者が長期的な治療を必要としない理由は明白ではない。このサブグループを予測する方法は、個々の患者において臨床応用するには、まだ不十分である」としている。■関連記事初回エピソード統合失調症患者における抗精神病薬中止後の長期的な影響統合失調症の維持治療に対するブレクスピプラゾールの長期安全性評価研究安定期統合失調症、抗精神病薬は中止したほうが良いのか

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伏在静脈グラフト病変、DES vs.BMS/Lancet

 新規伏在静脈グラフト(SVG)病変にステントを留置した患者を12ヵ月間追跡した結果、薬剤溶出ステント(DES)とベアメタルステント(BMS)で、アウトカムに有意差はないことが確認された。米国・テキサス大学サウスウエスタン医療センターのEmmanouil S. Brilakis氏らが、新規SVG病変に対するDESとBMSを比較検証した無作為化二重盲検試験「DIVA試験」の結果を報告した。これまで、新規SVG病変に対するステント留置術において、BMSとDESの有効性を比較した研究はほとんどなかった。著者は、「今回の結果は、価格が低いBMSが、安全性や有効性を損なうことなくSVG病変に使用可能であることを示唆しており、米国のようなDESの価格が高い国では経済的に重要な意味がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2018年5月11日号掲載の報告。ステント留置が必要な新規SVG病変を有する患者を退役軍人施設で登録 研究グループは、25ヵ所の米国退役軍人施設において、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を必要とする1ヵ所以上の新規SVG病変(50~99%狭窄、SVG直径2.25~4.5mm)を有する18歳以上の患者を登録し、DES群またはBMS群に1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化は、糖尿病の有無およびPCIを必要とする標的SVG病変の数(1ヵ所または2ヵ所以上)により各参加施設内で層別化して行われた。患者、委託医師、コーディネーター、アウトカム評価者は、割り付けに関して盲検化された。 主要評価項目は、標的血管不全(TVF)(心臓死、標的血管の心筋梗塞、標的血管血行再建術[TVR]の複合エンドポイントと定義)の12ヵ月の発生率で、intention-to-treat解析で検討した。標的血管不全の発生率、DES群17% vs.BMS群19%で有意差なし 2012年1月1日~2015年12月31日に、599例が無作為化され、同意取得が不適切であった2例を除く597例が解析対象となった。患者の平均年齢は68.6歳(SD 7.6)、595例(>99%)が男性であった。ベースラインの患者背景は、両群でほぼ類似していた。 12ヵ月後のTVF発生率は、DES群17%(51/292例)、BMS群19%(58/305例)であった(補正ハザード比:0.92、95%信頼区間[CI]:0.63~1.34、p=0.70)。主要評価項目の構成要素、重篤な有害事象、ステント血栓症の発生についても、両群間で有意差は確認されなかった。目標症例数762例に達する前に、試験への患者登録は中止された。 著者は研究の限界として、退役軍人施設の患者を対象とした試験であるため、ほとんどが男性であること、目標症例数に達する前に試験中止となったことなどを挙げている。

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軽症喘息へのSMART療法 vs.ブデソニド維持療法/NEJM

 軽症喘息患者に対する52週間の治療において、ブデソニド・ホルモテロール配合剤(商品名:シムビコート)の頓用はブデソニド維持療法(1日2回投与)と比較し、重症喘息増悪の発生という点では非劣性が認められたが、症状の改善は劣っていた。ただし、ブデソニド・ホルモテロール頓用患者では吸入ステロイド薬(ICS)の使用量がブデソニド維持療法患者の約4分の1であった。南アフリカ・ケープタウン大学のEric D. Bateman氏らが、軽症喘息患者を対象とした多施設共同無作為化二重盲検第III相試験「Symbicort Given as Needed in Mild Asthma 2(SYGMA2)」試験の結果を報告した。軽症喘息患者は、発作時に短時間作用性β2刺激薬(SABA)の吸入を用いることが多く、ICS維持療法のアドヒアランスは不良である。即効性吸入β2刺激薬+ICSの頓用は、こうした患者の症状改善や増悪リスクに対する新たな治療法となる可能性があった。NEJM誌2018年5月17日号掲載の報告。25ヵ国354施設の軽症喘息患者約4,200例で重症増悪発生率を評価 研究グループは、2014年11月~2017年8月に、日常的なICS定期投与の適応がある12歳以上の軽症喘息患者4,215例を、ブデソニド・ホルモテロール頓用群(プラセボ1日2回投与+ブデソニド・ホルモテロール[ブデソニド200μg、ホルモテロール6μg]頓用)(2,089例)と、ブデソニド維持療法群(ブデソニド200μg1日2回投与+テルブタリン0.5mg頓用)(2,087例)に無作為に割り付け、52週間治療を行った。 主要評価項目は、重症喘息増悪の年間発生率で、ブデソニド・ホルモテロール頓用群のブデソニド維持療法群に対する非劣性マージンは1.2と規定した。副次評価項目として、喘息症状に関し、5項目の喘息管理質問票(Asthma Control Questionnaire-5:ACQ-5、0点[障害なし]~6点[最大の障害])で評価した。重症増悪発生率は非劣性、症状コントロールは劣性 重症増悪の年間発生率は、ブデソニド・ホルモテロール頓用群0.11(95%信頼区間[CI]:0.10~0.13)、ブデソニド維持療法群0.12(95%CI 0.10~0.14)であり、ブデソニド・ホルモテロール頓用群は重症増悪という点ではブデソニド維持療法に対して非劣性であることが認められた(率比:0.97、95%信頼上限1.16)。 ICSの1日使用量の中央値は、ブデソニド・ホルモテロール頓用群(66μg)が、ブデソニド維持療法群(267μg)よりも低値であった。初回増悪までの期間は、両群で類似していた(ハザード比:0.96、95%CI:0.78~1.17)。ACQ-5のベースラインからの改善は、ブデソニド維持療法のほうが優れていた(群間差:0.11、95%CI:0.07~0.15)。

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成長ホルモン治療を継続させる切り札

 2018年5月18日ノボ ノルディスク ファーマ株式会社は、ノルディトロピン(一般名:ソマトロピン)承認30周年を記念し、プレスセミナーを開催した。 セミナーでは、成長ホルモン治療の現状、問題点とともに医療者と患者・患者家族が協働して治療の意思決定を行う最新のコミュニケーションの説明が行われた。成長ホルモン治療でアドヒアランスを維持することは難しい セミナーは、「成長ホルモン治療の Shared Decision Making ~注射デバイスの Patient Choiceと Adherence」をテーマに、高澤 啓氏(東京医科歯科大学 小児科 助教)を講師に迎え行われた。 現在、成長ホルモン(以下「GH」と略す)治療は、保険適用の対象疾患としてGH分泌不全性低身長、ターナー症候群、ヌーナン症候群、プラダー・ウィリー症候群、慢性腎不全、軟骨異栄養症(ここまでが小児慢性特定疾患)、SGA性低身長がある。これらは未診断群も含め、全国で約3万人の患児・患者が存在するという。診断では、通常の血液、尿検査のスクリーニングを経て、負荷試験、MRI、染色体検査などの精密検査により確定診断が行われる。そして、治療ではソマトロピンなどのGH治療薬を1日1回(週6~7回)、睡眠前に本人または家族が皮下注射している。 GH治療の課題として、治療が数年以上の長期間にわたることで患者のアドヒアランスが低下し、維持することが難しいとされるほか、治療用の注射デバイスが現状では医師主導で選択されていることが多く、患者に身体的・精神的負担をかけることが懸念されているという。患者の怠薬を防ぐ切り札 これらの課題を解決する手段として提案されるのが「Shared Decision Making(協働意思決定)」(以下「SDM」と略す)だという。 SDMとは、「意思決定の課題に直面した際に医師と患者が、evidenceに基づいた情報を共有し、選択肢の検討を支援するシステムにのっとり、情報告知に基づいた選択を達成する過程」と定義され、従来のインフォームドコンセントと異なり、患者の視点が医療者に伝わることで医療の限界や不確実性、費用対効果の共有が図られ、治療という共通問題に向き合う関係が構築できるという。 実際この手法は、欧米ですでに多数導入され、専任のスタッフを設置している医療機関もあり、SDMがアドヒアランスに与える影響として、患者の治療意欲の向上、怠薬スコアの改善といった効果も報告されているという1)。日本型SDMの構築の必要性 実際に同氏が、川口市立医療センターで行ったSDM導入研究(n=46)を紹介。その結果として、「患者が自己決定することで(1)患者家族の理解および治療参加が促進された、(2)アドヒアランスの維持に寄与した、(3)治療効果を促進する可能性が示唆された」と報告した。また、「SDMによる患者の自己決定は、意思疎通の過程で有用であり、治療への家族参加や自己効力感を高めうるだけでなく、簡便な手法ゆえ施設毎での応用ができる」と意義を強調した。 最後に同氏は、今後のわが国での取り組みについて「SDMの有効性から必要性への啓発、サポートする体制作り、日本式のSDMの在り方の構築が求められる」と展望を語り、セミナーを終了した。

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第60回

第60回:Game Changerとなるか?最近の免疫治療データ:NEJM、AACRよりキーワード肺がんメラノーマKEYNOTE-054KEYNOTE-189KEYNOTE-042CheckMate-227肺がんネオアジュバント動画書き起こしはこちら音声だけをお聞きになりたい方はこちら //playstopmutemax volumeUpdate RequiredTo play the media you will need to either update your browser to a recent version or update your Flash plugin.毎年大きな発表というと、ASCOということだったんですけど、最近すごく分散されてESMOヨーロッパでもgame changing の発表があったり…AACRというのは、研究寄りと思われてたのですけど…今年はAACRでもPractice Changing臨床が変わるような試験がいくつか報告されています。1つはメラノーマのStageIIIに対するペムブロリズマムの結果が報告されたこと、(そして)KEYNOTE-189ですね(これはウォールストリートジャーナルなどにも載りました)。PhaseIIでFDAには認可されていたんですが、その確認で、PhaseIIIでも同様な効果が得られたことが報告されています。(非小細胞肺がんの)1stラインで、カルボラチン・ペメトレキセド・ペムプロリズムの併用が、カルボプラチン・ペメトレキセドの併用に勝っていたと。これはPD-L1発現に関わらず良かったということですね。ただ、よくあるというか当たり前だと思うんですけど、median survival(OS)が12ヵ月、1年生存率が5割くらいと言われていたStageIV肺がんに対し、PhaseIIの時はmedian Progression Free Survival(PFS)が13ヵ月と1年を超えたので、これは実際どんな結果になるかと思ったんですけど、PhaseIIIで蓋を開けてみるとPFSは8.8ヵ月、9ヵ月弱ですね…それでもかなり画期的なんですけど…そういう結果が出ました。PhaseIIでのresponse rateは5割5分とか6割弱だったと思うのですが、それも49%…50%弱とこなれてきた印象あります。ここでcontrol armが、ちょっと興味深いんですけど、カルボ・アリムタのresponse rateが、実は2割を切るぐらいです。従来は3~4割、4割5分というStudyもあったのですが、これ(この試験)に関しては、control groupはかなり低かったですね。ただ、randomizedのcontrol trialでblindedな試験なので、この結果を(信頼して)…カルボ・ペム・ペムの副作用は2剤、単剤より多いですが、効果は高いということです。またASCOで報告したいと思うんですけども、ASCOでKEYNOTE-042、PD-L1発現1%以上の群に(対する)、Chemo vs ペムブロリズマブの結果がPlenary Sessionで報告されるようです。(これも多分Game Changerになると思うのですが)PD-L1の発現率は今、22c3という抗体を使った場合、1%未満になるのが3分の1、1~49%に収まるのが3分の1、50%以上が3分の1と言われています。ペムブロリズマブは50%以上の群に関しては1stラインでは認可になっています(ので)、もし1~49%も1stラインでペムブロリズマブ単剤のほうがChemoより良い、という結果が報告されると、non squamous、squamous含めStageIVの肺がん患者の3分の2は、ペムブロリズマブから始めたほうが良いということになる可能性もあります。カルボ・ペム・ペムであればPD-L1発現関係なしに使えるので、どういうPSの患者さんにはペムブロリズマブ単剤を使ったほうが良いのか、どういう患者さんであれば、カルボプラチン・ペメトレキセド・ペムブロリズマブの3剤併用を使ったほうが良いのか、バイオマーカーも含めて注意深く報告を見守ってみたいと思います。<KEYNOTE-189を含め、数本の免疫CP薬の記事がNEJMに同時掲載されました>resectableな肺がんに対して、ニボルマブのネオ・アジュバントの結果が報告されています。50%ぐらいにmajor tumor responseがあったと、確か11例ぐらいだと思うんですけど、20例resectionして、その半分近くにtumor responseがあったという、ネオ・アジュバントの小さなStudyですが報告が、まったく同じ時のNew England Journalに載りました。もう1つはtumor mutation burdenですね。これはどこの検査を使うのか、いくつのgeneを調べるのか、カットオフ値をどうするのか、まだまったくコンセンサスが出てなくて、議論の分かれるところですけども、1メガベースに10個以上のmutationがある患者さんに対して、イピリムマブとニボルマブを併用することで効果があった、という報告がNew England Journalの同じ号に出ています。1つの号にKEYNOTE-189、ニボルマブのネオ・アジュバント、そしてtumor mutation burdenを使ったイピ・ニボの効果という報告がありました。高リスク悪性黒色腫の術後補助療法でのペムブロリズマブ:第III相試験(KEYNOTE-054)/NEJMNSCLC 1次治療、ペムブロリズマブ併用でOS延長:第III相試験(KEYNOTE-189)/NEJMペムブロリズマブ、PD-L1発現肺がんの1次治療に単剤でOS改善(KEYNOTE-042)早期NSCLC、ニボルマブによるネオアジュバントが有望/NEJMニボルマブ・イピリムマブ併用、高腫瘍変異負荷肺がん1次治療でPFS延長(CheckMate-227)/NEJM

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第1回 経口ステロイドは短期服用でも有害事象リスク増【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 経口ステロイド薬は多岐にわたる疾患に使われていて、多くの疾患の治療に必須の薬剤であることに疑いの余地はありません。しかし、長期服用した場合の有害事象もよく知られているところです。では、経口ステロイド薬を短期服用した場合はどうなのでしょうか? 私は、短期服用した場合の有害事象はそれほど多くはないだろう、となんとなく思っていたのですが、その認識を改める契機となった研究を紹介します。Short term use of oral corticosteroids and related harms among adults in the United States: population based cohort study.Waljee AK ,et al. BMJ. 2017;357:j1415.この研究は、2012~14年にかけて、医療保険に加入している18~64歳の米国人154万8,945例の記録を分析したものです。そのうち32万7,452例(21.1%)が何らかの病気に対して少なくとも1回以上、短期的にステロイド薬を服用していました。論文内では30日未満を短期と定義し、30日~5ヵ月にわたり追跡調査を行っています。5分の1の人が、3年間で1回は経口ステロイド薬を使用していたというのは、本邦とは使用の感覚が少し違うのかもしれません。組み入れられている患者の条件は次のとおりでした。・平均年齢:服用群45.5±11.6歳、非服用群44.1±12.2歳・服用期間:平均6日間(四分位範囲:6~12日)、7日以上服用は47.4%(15万5,171例)・基礎疾患や過去1年以内のステロイド使用歴なし・prednisone当量の服用量:中央値20mg/日(四分位範囲:17.5~36.8mg/日)、40mg/日以上は23.4%(7万6,701例)・主な服用理由:上気道感染症、椎間板障害、アレルギー、気管支炎、下気道疾患(これら5症状が全体の約半数)アウトカムとして服用開始30日以内および31~90日の敗血症、深部静脈血栓症、骨折リスクを評価しています。平均6日間服用で敗血症、深部静脈血栓症、骨折リスクが上昇ステロイド薬服用群で1,000人・年当たりの発生頻度がもっとも高かったのは骨折(21.4件)、次いで静脈血栓塞栓症(4.6件)、敗血症による入院(1.8件)です。下記の表のように、5~30日目の非服用群の自然発生リスクと比較して、服用群の敗血症リスクは5.30倍、静脈血栓症リスクは3.33倍、骨折リスクが1.87倍という結果で、いずれも統計学的に有意差があります。1日20mg以下という比較的低用量であっても有意差は保持されていますが、高用量になるほどリスクが増加する傾向にあります。リスク上昇傾向は31~90日後には下がるものの、それでも服用者総計の敗血症は2.91倍、静脈血栓塞栓症は1.44倍、骨折は1.40倍と有意差は保持されています。相対的な数値ですので実臨床上の感覚としては大幅に増えるというほどのものではないかもしれませんが、一定の認識は持っておいたほうがよさそうです。ちなみに、40mg以上服用の5~30日の発症率比が20~39mg/日よりも低く出ているものもありますが、症例数が少なく信頼区間の幅が極めて広いため、これをもってして20~39mg/日よりリスクが低いとは言い切れません。また、31~90日目の有害事象発症率比はやはり高用量になるほど大きい傾向にあります。画像を拡大するステロイド薬の服用理由別のリスク評価はどうなのでしょうか? ステロイド薬の服用に至った理由は呼吸器系症状か筋骨格系症状かによらず、ステロイド薬服用群では各リスクが上昇する傾向が示唆されています。筋骨格系症状で服用した群の発症率比がやや多いようですが、単純に服用量が多かったという可能性も考えられます。画像を拡大するなお、年齢別、性別、人種別でのリスク評価では、おおむね年齢が高いほどリスクが上がる傾向があるようですが、人種差や性差はさほど見られませんでした。本研究の結果をもって、実際の処方提案などの介入方法を変えるという類のものではなさそうですが、経口ステロイド薬の有害事象のモニタリングは服用が短期間、低用量であっても相応の注意をもって行ったほうがよさそうです。Short term use of oral corticosteroids and related harms among adults in the United States: population based cohort study.Waljee AK ,et al. BMJ. 2017;12;357:j1415.

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第2回 意識障害 その2 意識障害の具体的なアプローチ 10’s rule【救急診療の基礎知識】

72歳男性の意識障害:典型的なあの疾患の症例72歳男性。友人と食事中に、椅子から崩れるようにして倒れた。友人が呼び掛けると開眼はあるものの、反応が乏しく救急車を要請した。救急隊到着時、失語、右上下肢の麻痺を認め、脳卒中選定で当院へ要請があった。救急隊接触時のバイタルサインは以下のとおり。どのようにアプローチするべきだろうか?●搬送時のバイタルサイン意識:3/JCS、E4V2M5/GCS血圧:188/102mmHg 脈拍:98回/分(不整) 呼吸:18回/分SpO2:95%(RA) 体温:36.2℃ 瞳孔:3/3mm+/+意識障害のアプローチ意識障害は非常にコモンな症候であり、救急外来ではもちろんのこと、その他一般の外来であってもしばしば遭遇します。発熱や腹痛など他の症候で来院した患者であっても、意識障害を認める場合には必ずプロブレムリストに挙げて鑑別をする癖をもちましょう。意識はバイタルサインの中でも呼吸数と並んで非常に重要なバイタルサインであるばかりでなく、軽視されがちなバイタルサインの1つです。何となくおかしいというのも立派な意識障害でしたね。救急の現場では、人材や検査などの資源が限られるだけでなく、早期に判断することが必要です。じっくり考えている時間がないのです。そのため、意識障害、意識消失、ショックなどの頻度や緊急性が高い症候に関しては、症候ごとの軸となるアプローチ法を身に付けておく必要があります。もちろん、経験を重ね、最短距離でベストなアプローチをとることができれば良いですが、さまざまな制約がある場面では難しいものです。みなさんも意識障害患者を診る際に手順はあると思うのですが、まだアプローチ方法が確立していない、もしくは自身のアプローチ方法に自信がない方は参考にしてみてください。アプローチ方法の確立:10’s Rule1)私は表1の様な手順で意識障害患者に対応しています。坂本originalなものではありません。ごく当たり前のアプローチです。ですが、この当たり前のアプローチが意外と確立されておらず、しばしば診断が遅れてしまっている事例が少なくありません。「低血糖を否定する前に頭部CTを撮影」「髄膜炎を見逃してしまった」「飲酒患者の原因をアルコール中毒以外に考えなかった」などなど、みなさんも経験があるのではないでしょうか。画像を拡大する●Rule1 ABCの安定が最優先!意識障害であろうとなかろうと、バイタルサインの異常は早期に察知し、介入する必要があります。原因がわかっても救命できなければ意味がありません。バイタルサインでは、血圧や脈拍も重要ですが、呼吸数を意識する癖を持つと重症患者のトリアージに有効です。頻呼吸や徐呼吸、死戦期呼吸は要注意です。心停止患者に対するアプローチにおいても、反応を確認した後にさらに確認するバイタルサインは呼吸です。反応がなく、呼吸が正常でなければ胸骨圧迫開始でしたね。今後取り上げる予定の敗血症の診断基準に用いる「quick SOFA(qSOFA)」にも、意識、呼吸が含まれています。「意識障害患者ではまず『呼吸』に着目」、これを意識しておきましょう。気管挿管の適応血圧が低ければ輸液、場合によっては輸血、昇圧剤や止血処置が必要です。C(Circulation)の異常は、血圧や脈拍など、モニターに表示される数値で把握できるため、誰もが異変に気付き、対応することは難しくありません。それに対して、A(Airway)、B(Breathing)に対しては、SpO2のみで判断しがちですが、そうではありません。SpO2が95%と保たれていても、前述のとおり、呼吸回数が多い場合、換気が不十分な場合(CO2の貯留が認められる場合)、重度の意識障害を認める場合、ショックの場合には、確実な気道確保のために気管挿管が必要です。消化管出血に伴う出血性ショックでは、緊急上部内視鏡を行うこともありますが、その際にはCの改善に従事できるように、気管挿管を行い、AとBは安定させて内視鏡処置に専念する必要性を考える癖を持つようにしましょう。緊急内視鏡症例全例に気管挿管を行うわけではありませんが、SpO2が保たれているからといって内視鏡を行い、再吐血や不穏による誤嚥などによってAとBの異常が起こりうることは知っておきましょう。●Rule2 Vital signs、病歴、身体所見が超重要! 外傷検索、AMPLE聴取も忘れずに!症例の患者は、突然発症の右上下肢麻痺であり、誰もが脳卒中を考えるでしょう。それではvital signsは脳卒中に矛盾ないでしょうか。脳卒中に代表される頭蓋内疾患による意識障害では、通常血圧は高くなります(表2)2)。これは、脳卒中に伴う脳圧の亢進に対して、体血圧を上昇させ脳血流を維持しようとする生体の反応によるものです。つまり、脳卒中様症状を認めた場合に、血圧が高ければ「脳卒中らしい」ということです。さらに瞳孔の左右差や共同偏視を認めれば、より疑いは強くなります。画像を拡大する頸部の診察を忘れずに!意識障害患者は、「路上で倒れていた」「卒倒した」などの病歴から外傷を伴うことが少なくありません。その際、頭部外傷は気にすることはできても、頸部の病変を見逃してしまうことがあります。頸椎損傷など、頸の外傷は不用意な頸部の観察で症状を悪化させてしまうこともあるため、後頸部の圧痛は必ず確認すること、また意識障害のために評価が困難な場合には否定されるまで頸を保護するようにしましょう。画像を拡大する意識障害の鑑別では、既往歴や内服薬は大きく影響します。糖尿病治療中であれば低血糖や高血糖、心房細動の既往があれば心原性脳塞栓症、肝硬変を認めれば肝性脳症などなど。また、内服薬の影響は常に考え、お薬手帳を確認するだけでなく、漢方やサプリメント、家族や友人の薬を内服していないかまで確認しましょう3)。●Rule3 鑑別疾患の基本をmasterせよ!救急外来など初診時には、(1)緊急性、(2)簡便性、(3)検査前確率の3点に意識して鑑別を進めていきましょう。意識障害の原因はAIUEOTIPS(表4)です。表4はCarpenterの分類に大動脈解離(Aortic Dissection)、ビタミン欠乏(Supplement)を追加しています。頭に入れておきましょう。画像を拡大する●Rule4 意識障害と意識消失を明確に区別せよ!意識障害ではなく意識消失(失神や痙攣)の場合には、鑑別診断が異なるためアプローチが異なります。これは、今後のシリーズで詳細を述べる予定です。ここでは1つだけおさえておきましょう。それは、意識状態は「普段と比較する」ということです。高齢者が多いわが国では、認知症や脳卒中後の影響で普段から意思疎通が困難な場合も少なくありません。必ず普段の意識状態を知る人からの情報を確認し、意識障害の有無を把握しましょう。前述の「Rule4つ」は順番というよりも同時に確認していきます。かかりつけの患者さんであれば、来院前に内服薬や既往を確認しつつ、病歴から◯◯らしいかを意識しておきましょう。ここで、実際に前掲の症例を考えてみましょう。突然発症の右上下肢麻痺であり、3/JCSと明らかな意識障害を認めます(普段は見当識障害など特記異常はないことを確認)。血圧が普段と比較し高く、脈拍も心房細動を示唆する不整を認めます。ここまでの情報がそろえば、この患者さんの診断は脳卒中、とくに左大脳半球領域の脳梗塞で間違いなしですね?!実際にこの症例では、頭部CT、MRIとMRAを撮影したところ左中大脳動脈領域の急性期心原性脳塞栓症でした。診断は容易に思えるかもしれませんが、迅速かつ正確な診断を限られた時間の中で行うことは決して簡単ではありません。次回は、10’s Ruleの後半を、陥りやすいpitfallsを交えながら解説します。お楽しみに!1)坂本壮. 救急外来 ただいま診断中. 中外医学社;2015.2)Ikeda M, et al. BMJ. 2002;325:800.3)坂本壮ほか. 月刊薬事. 2017;59:148-156.コラム(2) 相談できるか否か、それが問題だ!「報告・連絡・相談(ほう・れん・そう)」が大事! この単語はみなさん聞いたことがあると思います。何か困ったことやトラブルに巻き込まれそうになったときは、自身で抱え込まずに、上司や同僚などに声をかけ、対応するのが良いことは誰もが納得するところです。それでは、この3つのうち最も大切なのはどれでしょうか。すべて大事なのですが、とくに「相談」は大事です。報告や連絡は事後であることが多いのに対して、相談はまさに困っているときにできるからです。言われてみると当たり前ですが、学年が上がるにつれて、また忙しくなるにつれて相談せずに自己解決し、後で後悔してしまうことが多いのではないでしょうか。「こんなことで相談したら情けないか…」「まぁ大丈夫だろう」「あの先生に前に相談したときに怒られたし…」など理由は多々あるかもしれませんが、医師の役目は患者さんの症状の改善であって、自分の評価を上げることではありません。原因検索や対応に悩んだら相談すること、指導医など相談される立場の医師は、相談されやすい環境作り、振る舞いを意識しましょう(私もこの部分は実践できているとは言えず、書きながら反省しています)。(次回は6月27日の予定)

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若年者の無症候性WPW症候群における致死的なイベントリスクは?【Dr.河田pick up】

 WPW(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト)症候群を持つ若年者は突然死のリスクがあり、無症候の若年WPW症候群患者のマネージメントについては長い間議論されてきた。 この研究では、WPW症候群を持つ若年者のリスクの特性を調べるために、致死的なイベントを経験した患者とそうでない患者を比較している。米国・ユタ大学のSusan P. Etheridge氏らによる国際多施設共同研究で、JACC.Clinical Electrophysiology誌2018年4月号に掲載。 この後ろ向きの多施設共同研究では、21歳以下のWPW症候群患者でEPS(電気生理学的検査)が行われた912人を同定した。症例群は致死的なイベント(LTE)を有した患者で、LTEは突然死、回避された突然死、そして心房細動中の最も短いRR間隔 (shortest pre-excited RR interval in atrial fibrillation:SPERRI)が250ms以下、もしくは心房細動中に血行動態が保てなくなったもの、と定義されている。対照群はそれらのイベントのない患者であり、両群の臨床的な特徴とEPSのデータを比較した。致死的なイベントが起きた患者では、65%でLTEが初発症状 症例群(96例)は年齢が高く、症状や頻拍の既往が少ない傾向にあった。LTEが起きた際の平均年齢は14.1±3.9歳であった。LTEが初発症状であったのが65%であり、そのうち早期興奮を伴った心房細動が49%、回避された突然死が45%、そして突然死が6%であった。EPSで同定された3つのリスクは最も短いRR間隔、副伝導路の有効不応期 (accessory pathway effective refractory period:APERP) 、そして心房ペーシング中の早期興奮が見られる最短のペーシング間隔 (shortest paced cycle length with pre-excitation during atrial pacing:SPPCL) であり、これら3つはいずれも症例群で、対照群より短かった。致死的なイベントが起きた患者でも、37%でEPSのハイリスクな特徴を示さず 多変量解析の結果、致死的なイベントのリスク因子は、男性、Ebstein奇形、早い順行伝導が可能な副伝導路(APERP、SPERRI、あるいはSPPCL≤250ms)、複数の副伝導路、心房細動が誘発されることであった。症例群の86例中60例(69%)がEPSの際に少なくとも2つ以上のリスク項目の評価を受けた。そして、そのうち22例(37%)がEPSでのハイリスクな特徴を示さず、15例(25%)ではリスクが高い副伝導路およびAVRT(房室回帰性頻拍)のいずれも有していなかった。無症候の若年WPW患者でも突然死を起こす可能性有 本研究では、若年WPW患者は症状やハイリスクな特徴を有さずとも、突然死を起こす可能性があると結論付けている。WPW症候群のマネージメントは有症候、無症候に分けて行われてきたが、このマネージメントが必ずしも適切とは言えないかもしれない。EPSは症状よりもリスク評価において正確であるが、完璧なツールではない。また、EPSと同時にアブレーションを行うのが一般的であり、EPS後に無作為化した前向き研究を行うことは現実的ではない(副伝導路をEPSのみ行い放置するのは、一般的に極めてまれである)。アブレーションのリスクは一般的に高くはないが、若年者の場合は全身麻酔等も必要で、心臓が成長することも考慮しなければならず、症例ごとに評価、家族との話し合いのうえで管理していくことが必要と考えられる。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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