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広汎性発達障害に日本で使用されている薬剤は:東北大学

 日本において、広汎性発達障害(PDD)に適応を有する薬剤は、ピモジドだけである。いくつかの抗精神病薬は、日本でも適応外で使用されているが、これら薬剤の処方および使用に関する詳細は不明な点が多い。東北大学の佐藤 倫広氏らは、日本のPDD児における薬物治療の実態を明らかにするため調査を行った。World journal of pediatrics誌オンライン版2016年6月10日号の報告。 2005~10年に新規でPDD(ICD-10:F84)と診断された18歳未満の小児3,276例のデータを、日本医療データセンターの請求データより抽出した。処方率は、それぞれの薬剤が処方されたPDD患者の割合とした。 主な結果は以下のとおり。・2010年以前には、ATC分類で神経系に属する薬剤のうち、非定型抗精神病薬、他の抗精神病薬、精神刺激薬、他のすべての中枢神経系作用薬、抗けいれん薬、非バルビツール酸系薬、パーキンソン病/症候群薬の処方が有意に増加していた(trend p≦0.02)。・リスペリドンの処方率は一貫して増加しており、2010年には6.9%に達していた(trend p<0.0001)。これは、調査対象の抗精神病薬のうち最も高かった。・アリピプラゾールの処方率も増加しており、2010年には1.9%に達していた(trend p<0.0001)。・ピモジドの処方率には変化がなく、2010年は0.4%と低率であった。 著者らは「ピモジドと比較し、リスペリドン、アリピプラゾール、他の向精神薬の処方率が増加している。日本人小児に対するこれら薬物の安全性データは十分でないため、今後の安全性評価が必要とされる」としている。関連医療ニュース 自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か? 抗精神病薬の適応外処方、年代別の傾向を調査 非定型抗精神病薬、小児への適応外使用の現状

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私 結婚できないんじゃなくて、しないんです【コミュニケーション能力】

今回のキーワード生涯未婚率「仮氏理論」「ライフ・イズ・ビューティフル理論」「ツッコミマスター」進化心理学・進化精神医学社会的知能(SQ)社会的コミュニケーション障害(DSM-5)なぜ結婚しなくなったの?みなさんは、もう結婚しているでしょうか? またはこれから結婚するでしょうか? 1990年までの日本では、結婚する人が、男女ともに変わらず95%以上でした。ところが、現在はどうでしょうか? 統計的には、男女とも90%近くが、「いずれ結婚するつもり」と考えています。しかし、2010年の生涯未婚率は男性20%超、女性10%超で、急激に上がってきています。このまま行けば、2035年には男性30%、女性20%と予測されています。また、離婚率も生涯未婚率と同じく上がってきています。一体、何が起きているのでしょうか? どうしてこうなったのでしょうか? そして結婚するにはどうしたら良いでしょうか? さらには結婚を続ける、つまり離婚しないにはどうしたら良いでしょうか? これらの問いに答えるためのキーワードは、コミュニケーション能力です。このコミュニケーション能力の理解のために、今回、ドラマ「私 結婚できないじゃなくて、しないんです」を取り上げます。主人公の39歳女医のみやびが、恋愛スペシャリストを自称する十倉からスパルタ指導の下で、独身アラフォーを抜け出そうとするラブコメディーです。このドラマでは、十倉が「仮氏理論」「ライフ・イズ・ビューティフル理論」「ツッコミマスター」という3つの独自理論を説いています。これらを通して、コミュニケーション能力を高めるやり方やあり方をアカデミックに解説します。また、現代の結婚をしない心理について、進化心理学・進化精神医学の視点で探っていきます。さらに、DSM-5(精神疾患の分類と診断の手引第5版)への改定に伴い、新しく登場した「社会的コミュニケーション障害」も解説します。仮氏理論―誰でも良いから彼氏をつくるみやびは、「好きになれる人じゃないと」「好きになれる人がいない」と言います。そして、これまでずっと仕事を優先してきました。理想の相手がいないことと時間がないことを理由に、長期間「彼氏がいない状態」になっています。そんなみやびに対して、十倉は「仮氏理論」を説きます。「仮氏」とは仮の彼氏という造語で、仮氏理論とはどんな男でも良いからまず彼氏をつくり、「彼氏がいない状態」から抜け出すことです。この仮氏は、かつての「キープ君」に似ています。この仮氏をつくることによって、労力や時間を注ぐデメリットを上回って得られるメリットが3つあると十倉は説きます。1つ目は、心の余裕です。十倉は、「最悪あいつがいると思える」と言います。これは、「仮氏」というバックアップがある(いる)からこそ、心の余裕が生まれ、焦らなくなるというわけです。余裕とは、うまく行かなくなっても、いざという時の保険があるということです。2つ目は、魅力の水増しです。十倉は「彼氏はいるんだけど・・・と含みを持たせて」「彼氏を踏み台に本命の男にジャンプ」と言います。女性は誰かのものであるというだけで、男性にとって魅力が増すという心理を利用しています。3つ目は、トレーニングになることです。十倉は、「理想の結婚相手はエベレスト」であり、「仮氏は高地トレーニング」であると言います。つまり、恋愛を含むコミュニケーションには、トレーニングが必要であるということです。これは、最も重要なことです。なぜなら、実際に理想の彼氏ができるというチャンスが巡ってきても彼氏いない歴が長すぎれば、「何をして良いか分からない」「何から始めれば良いか分からない」という事態が起きてしまうからいです。つまり、もったいないのは、本命じゃない相手とのデートの時間ではなく、逆に大本命に絞って一本釣りするデートの時間であるということです。コミュニケーションはダンスと同じです。練習すれば、リズムに合わせてキレのある動きができて、だんだん上手になります。逆に、止めてしまうと、リズムに合わずキレのない動きになり、だんだん下手になります。しかも、恋愛は、仕事、友人、家族などの他のコミュニケーションと比べて、より高い能力と経験が求められます。つまり、本命の彼氏を射止めるために、「仮氏」はダンスの練習台であり踏み台であるということです。そして、それは男女お互い様であるということです。ちなみに、この「仮氏理論」の発想は、心理療法の1つであるブリーフセラピーのスケーリング・クエスチョンによる目標設定に当てはまります。ライフ・イズ・ビューティフル理論―デートを楽しむみやびは、本命の桜井君とのデートで張り切りますが、うまく行きません。その後、十倉の教えに従って、「仮氏」とデートをしますが、楽しくありません。そして、その相手のイケてないところを女子会のガールズトークでこき下ろして盛り上がります。みやびは「デートが楽しくない」と言っています。なぜでしょうか? 原因が3つあります。1つ目は、自分の良いところばかりを見せようとして緊張していることです。その心理は、結婚という目的に囚われ、デートがその手段となり、仕事となり、苦行となっています。2つ目は、相手の悪いところばかりを見てしまい幻滅することです。その心理は、結婚という目的に囚われ、相手の値踏みばかりをして、婚活の面接官になっています。3つ目は、デートを楽しむ経験を積んでいないことです。そもそもデートを楽しんだことがあまりないと、その楽しみ方が分からないということです。みやびは、美人で医師という最高のキャリアを持っており、デートを楽しんでいそうなイメージがあります。しかし、だからこそ彼女は「恋愛弱者だ」と十倉は言います。そのわけは、勉強や仕事、友人関係で自分の思い通りになってきた人は、逆に必ずしも自分の思い通りにならない恋愛には免疫力がなく、弱いということです。自分だけでなく、結婚や相手にも完璧さを求めて、そうならないことへのいら立ちや不安をつのらせるばかりで、楽しむのが下手だということです。そんなみやびに十倉は、「ライフ・イズ・ビューティフル理論」を説きます。「ライフ・イズ・ビューティフル」とは、主人公の父親が最愛の幼い息子に、戦争による過酷な運命をポジティブに伝え続けるという感動の映画です。まさにこの映画のように、十倉は「全ての物事にはプラス面とマイナス面がある」「物事の二面性をみろ」「デートは常にプラス思考」「デートを楽しめ」「魔法の言葉は『逆に楽しい』」と言います。何があっても、「逆に楽しい」面を見つけ出すことです。たとえ結婚したとして、その後の結婚生活で、必ずしも相手の欠点がないわけではありません。相手の欠点に目が行ってしまった時、その良さ(プラス面)に目を向け、バランスをとり、トータルで相手を見ることができるかが大切になります。みやびのような女性の言い分は「好きじゃないと楽しめない」です。逆です。「楽しめていないから好きになれない」です。つまり、どんな相手でも状況でも楽しめるということは、それ自体がとても大事なコミュニケーション能力であるということです。さらには、このコミュニケーション能力を高めるには、ダンスと同じように、普段から楽しんでいることです。楽しむことで相手を好きになります。つまり、人を好きになるのも、それ自体がとても大事なコミュニケーション能力であるということです。もう1つ魔法の言葉をご紹介しましょう。これは、特に失恋など結果的にうまくいかなかった時点で役立ちます。それは、「良い勉強になった」「経験値が上がった」です。失恋は、避けて通りたいと多くの人は思いがちです。よくよく考えると、失恋のようにうまく行かない相手や状況は、コミュニケーション能力を高めるためには必要なことです。失敗は成長の肥やしです。そして失恋は結婚の肥やしです。うまく行かないことは、マイレージのようなもので、どんどん経験値として貯まっていくことで、将来的にその経験値が生かされ、その後により遠くへ、より高みへ飛べるようになります。ちなみに、この「ライフ・イズ・ビューティフル理論」の発想は、心理療法の1つである認知行動療法の二面性による認知再構築やナラティブセラピーのオルタナティブストーリーに当てはまります。ツッコミマスター―相手を楽しませるみやびは、本命の桜井君とのデートで張り切りますが、全て裏目に出てしまいます。挙句の果てに、捨身の告白をしてフラれます。その理由は、「私を選んで」と自分が気に入られることばかりに必死になり、ぎこちなくて気持ち悪かったからでした。そして、みやび自身はもちろん楽しんでいないですし、何より相手を楽しませてもいなかったからでした。そんなみやびに十倉は、「ツッコミマスターになれ」を説きます。ツッコミマスターとは、相手の言動に盛り上がるツッコミを入れることです。会話が、楽しいキャッチボールになることです。みやびがやっていたのは、言いなりのイエスマンです。会話は、受け身で退屈な一方通行です。ツッコミマスターになるには、3つの力を鍛える必要です。1つ目は観察力です。これは、興味を持ち相手をよく観察するだけでなく、普段から世の中のことをよく観察して、相手と結び付けることです。良い例は「例えツッコミ」です。2つ目は、行動力です。これは、ツッコミという本音や毒を会話に投げ込むリスクを負う行動を積極的にすることです。ツッコミには、デメリットとして予定調和を崩すことで相手の気を悪くさせるリスクがあります。そこには、安心感はありません。しかし、それを上回るメリットとして、予定調和を崩すことで生まれる笑いがあり、楽しさがあります。気まずくならないための保険として、「思い切って言っちゃうけど」などの前置きをして、相手がツッコミされる心の準備をしてもらうこともできます。3つ目は、包容力です。これは、相手を心から楽しませたいと思うことです。たとえそのツッコミがどぎつくなったとしても、悪気はないと思われるほど、声のトーンや表情などの雰囲気(非言語的コミュニケーション)は温かみがあるのがポイントです。コミュニケーションとは、ダンスと同じように、自分がわがままで相手を疲れさせず、自分が言いなりで相手を飽きさせず、息を合わせて自分も楽しみ相手も楽しませることであると言えます。そして、このコミュニケーション能力を高めるには、普段から相手を楽しませていることです。その相手が、恋人だけでなく、友人や家族やご近所などのプライベートな関係から、同僚や部下、さらには上司などの仕事関係、さらにはエレベーターで乗り合わせた人などの何でもない関係まで広がれば広がるほど、それが積み重なれば積み重なるほど、この能力は高まります。また、たとえ結婚したとして、その後の結婚生活で、必ずしも相手とうまく行くことばかりではありません。うまく行かない時、意見が合わなかったりケンカになりかけた時、わがまま(攻撃)でもなく言いなり(非主張)でもない、折り合いを付けるツッコミが良い関係を保つ大きな力になるということです。コミュニケーション能力とは、我慢してけんかしない能力ではなく、たとえけんかしても仲直りできる能力であると言えます。ちなみに、この「ツッコミマスター」の発想は、心理療法の1つであるアサーションとユーモアに当てはまります。結婚をしない心理とは?これまで、「仮氏理論」「ライフ・イズ・ビューティフル理論」「ツッコミマスター」を通して、コミュニケーション能力を高めるやり方やあり方をアカデミックに解き明かしてきました。しかし、それにしても、現在、なぜ結婚しない人がこれほど急に増えたのでしょうか?そもそも、なぜデートもしない人が増えたのでしょうか?その謎を解くために、私たちが人間となり体と心(脳)を適応させていった数百万年前の原始の時代の狩猟採集社会に目を向けてみましょう。なぜなら、この時代に私たちの心(脳)の原型が形作られたからです。一方、現代の農耕牧畜社会から始まる文明社会は、たかだか1万数千年の歴史しかなく、体や心(脳)が進化するにはあまりにも短いからです。原始の時代、男性(父親)は日々食糧を確保し、女性(母親)は日々子育てをして、性別で役割を分担し、家族をつくりました。さらに、これらの家族が血縁によっていくつも集まって100人から150人の大家族の生活共同体(村)をつくり、つながって協力しました。そして、そうする種が生き残りました。その子孫が現在の私たちです。逆に、そうしない種は、子孫を残さないわけですから、理屈の上ではこの世にほぼ存在しないと言えます。それが、日本で1990年までの結婚する人が、男女ともに変わらず95%以上であったことを表しています。ところが、1990年代以降の現代はどうでしょうか? 実は、原始の時代と違う現代の社会構造こそが、結婚をしない心理を生み出していると言えます。その主な3つの心理を探ってみましょう。(1)「自由がなくなる」―個人主義化―自己愛の心理1つ目は、「自由がなくなる」という心理です。高度経済成長期を過ぎた1970年代から、世の中は物質的には豊かになっていきました。生活の余裕ができて、個人の選択の自由が重んじられるようになり、個人主義化していきました。女性も社会参加するようになりました。女性は仕事を持つ、男女ともに余暇活動を楽しむ、自分の趣味や習い事をするなど生き方の選択肢が増えていきました。いわゆる「自分磨き」「リア充(リアル生活充実)」「意識高い系」という流行り言葉がそれを表しています。また、結婚についても、お見合いなどによって親(社会)が決めるやり方から、恋愛によって個人同士が決める自由が重んじられるようになりました。本人の意思が尊重されることで、周り(社会)よりも自分を大切にする気持ちが高まります(自己愛)。一見、結婚を選ぶ自由があることは良いように見えますが、ここには落とし穴があります。それは、相手を選ぶ自由があるということは、一方で、相手から必ずしも選ばれない「不自由さ」という責任があるということです。自分が相手を好きだからと言ってどんなに努力しても、必ずしも相手が自分を好きになるという保証がないということです。ここが仕事や友人関係との大きな違いです。恋愛は理不尽なのです。そして、「面倒は嫌だ」「時間がもったいない」という理由付けによって、拒絶されたり裏切られることがない仕事や趣味、友達関係やペットで、人生を満たそうとします。または、アイドルの追っかけをしたり、二次元(仮想現実)の恋人をつくることで、思い通りになる擬似的な恋愛で欲求を満たそうとします。つまり、「自由であり続けたい」「我慢したくない」ということです。こうして、自分の自由さに目が行くばかりで、恋愛のコミュニケーションの機会が減り、その能力が高まらないままなのです。これが、「自由がなくなる」という心理の根っこにあるものです。(2)「コスパが悪い」―効率化―損得勘定の心理2つ目は、「コスパ(コストパフォーマンス)が悪い」という心理です。世の中は、さらにとても便利で効率化していきました。女性は経済的に自立するようになり、男性も家事労働的に自立できるようになりました。そして、個人主義化と相まって、それまでの三世帯の大家族よりも、未婚の男性や女性がその親と同居するのみの核家族や独り暮らしが増えていきました。もはや、女性が必ずしも結婚して経済的に男性に依存する必要がなく、男性も必ずしも結婚して女性の家事労働に依存する必要がなくなりました。いわゆる男女の役割のフラット化です。逆に、結婚すると、親と別居することになるため、男性も女性も自分の親の経済や家事労働に依存できなくなり、さらに女性が離職して家事労働や子育てに専念する場合は男性が自分の経済を女性や子どもと共有することになり、結果的に生活水準は下がってしまいます。効率化という社会の価値観によって、「自由がなくなる上に損をする」という損得勘定の発想(外発的動機付け)が強まり、つながる必要がないという心理に陥ってしまいます。そこには、「相手を楽しませたい」「幸せにしたい」というコミュニケーション本来の発想(内発的動機付け)が貧しくなっています。こうして、結婚して失うものばかりに目が向き、得るものには目が向かないため、恋愛のコミュニケーションの機会が減り、その能力が高まらないままなのです。これが、「コスパが悪い」という心理の根っこにあるものです。(3)「好きな人がいない」―情報化―受け身の心理3つ目は、「好きな人がいない」という心理です。1990年代から、インターネットの普及により情報化が一気に加速しました。物だけでなく、情報までも人と直接かかわらなくても手に入るようになりました。つまり、生きていくために、苦労して人とコミュニケーションをして何かを手に入れる体験を子どもの頃からしなくても良くなってきたのです。言い換えれば、より受け身でも生きてはいけるということです。そして、この受け身の心理で恋愛をするようになったのです。デートをしても、男女がお互い受け身なので、楽しくなくて盛り上がらず、好きになれないので、次につながらないのです。つまり、厳密には、「好きな人がいない」のではなく、「好きになる経験を積んでいない」ということです。また、人と深くかかわり好き好かれるコミュニケーションの体験を積み重ねていないので、人からどう思われるか不安になりやすく、「人見知り」「対人恐怖」に陥りやすくなります。そして、ますます恋愛に臆病になります。悪循環です。情報が溢れる中、不安をなくそうと情報収集ばかりして、頭でっかちになり、ますます不安になっています。とても「結婚は勢い」というふうには思えなくなっています。さらに、情報化は、相手を商品のように細かくランク付け(価値付け)する意識を強めます。いわゆる「スペック」です。この心理によって、相手のだめなところばかりに目が行きやすくなり、好きになれないのです。好きになるのは、スペックなどの情報によるものではなく、生身のコミュニケーションそのものによるものです。つまり、「好きな人がいない」というのは、相手の問題ではなく、自分の心の問題であるといことです。こうして、相手の欠点に目が行くばかりで、恋愛感情を深めるコミュニケーションの機会が減り、その能力が高まらないままなのです。これが、「好きな人がいない」という心理の根っこにあるものです。なぜコミュニケーション能力が注目されるの?結婚をしない心理の3つの要素のどれも、コミュニケーション能力が絡んでいます。実際に、結婚における魅力について、男性は経済力で女性は容姿であるのは昔からではありますが、昨今はコミュニケーション能力のウェートがますます高まっています。なぜでしょうか? もう一度、進化心理学・進化精神医学の視点で考えてみましょう。生きていくために必要な能力は、狩猟採集社会の原始の時代や農耕牧畜社会の近代までは主に身体能力でした。ところが、産業革命が起きた19世紀以降、身体能力を必要とする肉体労働は、機械が代わりにやってくれるようになりました。むしろ、その機械を操作するための記憶力や分析能力などの知的能力(IQ)が重要視されるようになりました。ところが、情報化が進んだ1990年以降、記憶力や分析力を必要とする頭脳労働はコンピューターが代わりにやってくれるようになりました。そして、むしろ機械やコンピューターができないコミュニケーション能力が重要視されるようになったのです。つまり、魅力とは、その時代を生きていくために必要な能力であるといえます。そして現在では、このコミュニケーション能力は、いかに人とうまくやっていけるかという社会的知能(SQ:social quotient)として注目されています。だからこそ、逆にコミュニケーション能力が低い人も目立つようになっていきました。そして、精神障害の1つとして認知されるようになったのです。それが、2013年のDSM-5への改定で新しく登場した社会的コミュニケーション障害です。もともと、軽症の自閉症やアスペルガー障害と診断されていましたが、あまりに増えてしまったため、新しい疾患概念として提唱されたのです。精神障害が、いかにその時代の社会構造によって決められてしまうのかがよく分かります。極端な話、未来の時代に、歌唱力やダンスが生きるために必要な能力と見なされたら、「歌唱障害」や「ダンス障害」という病名が存在しうるということです。コミュニケーション能力を高めるには?このドラマは、女性向けの恋愛指南のスタイルをとっています。いわば「男たらし」になる術です。ただ、恋愛とは、コミュニケーション能力が最も発揮される瞬間であることを踏まえると、このドラマで説かれた「仮氏理論」「ライフ・イズ・ビューティフル理論」「ツッコミマスター」は、女性だけでなく男性にも、そして恋愛だけでなく、仕事、友人、家族、子育てなど広く人間関係に使える理論であるとも言えます。つまり、私たちは、このドラマから学んだ理論を通して、よりよいコミュニケーションをする「人たらし」になることができるのではないでしょうか?1)水野敬也:スパルタ婚活塾、文響者、20142)週間東洋経済「生涯未婚」、東洋経済新報社、2016年5/143)山田昌弘:家族難民、朝日新聞出版社、20144)岡田尊司:夫婦という病、河出書房新社、2016

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妊娠中のSSRI使用、妊婦や胎児への影響は

 SSRIは、世界中で最も一般的に処方される抗うつ薬である。しかし、うつ病をとくに発症しやすい期間である妊娠中のSSRI使用は、過去数十年に胎児の成長といった安全性の面で患者や医療者における大きな懸念点となっている。カナダ・BC Women's Hospital and Health CentreのSura Alwan氏らは、妊娠中のSSRI使用に関するレビューを行った。CNS drugs誌オンライン版2016年5月2日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・妊娠中のSSRI曝露は、流産、早産、新生児合併症、先天異常(とくに先天性心疾患)、小児期における神経発達障害(とくに自閉症スペクトラム障害)と関連している。・個々のSSRIの効果に関する研究では、妊娠中のfluoxetineやパロキセチン使用は、先天異常リスクは小さいけれども高いことが示されている。絶対リスクは小さいが、一部の患者にとって懸念となるかもしれない。・また、出産前のうつ病は、それ自体が好ましくない周産期アウトカムと関連しており、妊娠中に抗うつ薬を中止すると、うつ病再発の高リスクと関連する。・観察された胎児への好ましくない影響が、母親の薬物使用や基礎疾患と関連しているかを判断するのはいまだ困難である。・SSRIや同様の治療を受けているすべての妊婦に対し、母親と子供の両方にとっての未治療リスクと治療リスクを慎重に検討し、治療することが重要である。・サーベイランスやタイムリーな介入のために、有害アウトカム発生の高リスクを認識することが重要である。そのため、妊婦に対しては、妊娠初期に任意のSSRIを使用する場合は、超音波検査や胎児心エコー検査により先天異常を検出する出生前診断のオプションを用いることが推奨される。・妊娠初期には、漸減や他の治療法への切り替えなど、ケースバイケースで検討する必要がある。関連医療ニュース 妊娠初期のSSRI曝露、胎児への影響は 妊娠に伴ううつ病、効果的なメンタルヘルス活用法 妊娠初期のうつ・不安へどう対処する

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若者に対する抗精神病薬、リスクを最小限にするためには

 抗精神病薬は若者に対し、非精神病や適応外での使用が増えており、心血管代謝系副作用、とくに2型糖尿病に対する懸念が問題となる。米国・ザッカーヒルサイド病院のBritta Galling氏らは、若者に対する抗精神病薬治療に伴う2型糖尿病リスクを評価した。JAMA psychiatry誌オンライン版2016年1月20日号の報告。 創設から2015年5月4日までのデータベース(PubMed、PsycINFO)より、言語制限なしで、系統的文献検索を行った。データ分析は2015年7月に実施し、追加分析を2015年11月に行った。文献の選択は、少なくとも3ヵ月間抗精神病薬を投与された2~24歳の若者における2型糖尿病発症率に関する縦断研究報告とした。2人の独立した研究者により、2型糖尿病リスクのランダム効果メタ分析とメタ回帰の研究レベルのデータを抽出した。主要評価項目は、患者年当たりの累積2型糖尿病リスクまたは2型糖尿病発症率と定義した。副次的評価項目には、抗精神病薬治療を受けていない患者(精神対照群)または健常対照群との主要評価項目の比較が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・13件の研究から、抗精神病薬を投与された若者18万5,105人、31万438人年当たりが抽出された。・患者の平均年齢は14.1歳(SD:2.1)、男性が59.5%、平均フォローアップ期間は、1.7年(SD:2.3)であった。・このうち、7件の研究は精神対照群(134万2,121人、207万1,135人年当たり)を、8件の研究は健常対照群(29万8,803人、46万3,084人年当たり)を含んでいた。・抗精神病薬を投与された若者の累積2型糖尿病リスクは1,000人当たり5.72(95%CI:3.45~9.48)、発症率は1,000人年当たり3.09(95%CI:2.35~3.82)であった。・健常対照群と比較し、抗精神病薬を投与された若者の累積2型糖尿病リスク(OR:2.58.95%CI:1.56~4.24、p<0.0001)と罹患率比(IRR:3.02、95%CI:1.71~5.35、p<0.0001)は有意に高かった。・精神対照群との比較も同様に、抗精神病薬を投与された若者の累積2型糖尿病リスク(OR:2.09.95%CI:1.50~52.90、p<0.0001)と罹患率比(IRR:1.79、95%CI:1.31~2.44、p<0.0001)は有意に高かった。・10件の研究の多変量メタ回帰分析では、より大きな累積2型糖尿病リスクは、より長いフォローアップ期間(p<0.001)、オランザピン処方(p<0.001)、男性(p=0.002)と関連していた(r2=1.00、p<0.001)。・より大きな2型糖尿病発症率は、第2世代抗精神病薬処方(p≦0.050)、より少ない自閉症スペクトラム障害の診断(p=0.048)と関連していた(r2=0.21、p=0.044)。 結果を踏まえ、著者らは「抗精神病薬を投与された若者の2型糖尿病リスクはまれだと思われるが、累積リスクや暴露調整発症率、罹患率比は、健常対照群や精神対照群よりも有意に高かった。オランザピン治療や抗精神病薬暴露期間は、抗精神病薬を投与された若者の2型糖尿病発症に対する修正可能な危険因子であった。抗精神病薬は、慎重かつできるだけ短い期間の使用にとどめるべきであり、その有効性および安全性を積極的に管理する必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 小児に対する抗精神病薬、心臓への影響は 未治療小児患者への抗精神病薬投与、その影響は 第2世代抗精神病薬、小児患者の至適治療域を模索

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診察室のラジオ体操【Dr. 中島の 新・徒然草】(082)

八十二の段 診察室のラジオ体操以前、こども病院の先生(女性)が雑談で、「アスペルガーって、体操させたらすぐにわかるのよ。誰も私の意見に賛成してくれないけど」と仰っていたことがあります。アスペルガー症候群というのは自閉症スペクトラムの一種で、コミュニケーションや能力に独特のものがあるとされています。その時は「ふーん、そんなもんか」と聞き流していたのですが……ある日、脳血管障害のために以前から通院中の外来患者さん(20代、男性)の診察中のこと。実はこの患者さんの母親が「ウチの息子はアスペルガー症候群ではなかろうか」と疑っているのです。確かに会話が通常とは異なっており、壁や床にチラッチラッと視線を逸らせながら、ひとごとのように喋るので、本当にアスペルガーかもしれないという気がしてきました。ふと「この人にラジオ体操をしてもらったらどうなるのだろうか?」と思いつきました。さらに「あの先生の言っていた診断法は役に立つのか?」「本当にこの人がアスペルガーなら、どんな体操になるのだろうか?」などと考え始めると、居ても立ってもいられなくなってきました。ということで、患者さん本人と付き添いの母親にちょっと提案してみました。 中島 「アスペルガー症候群の人は体操してみたら簡単にわかるということらしいんですよ」 母親 「えっ、そうなんですか!」 患者 「体操……ですか」 かねてからアスペルガーの診断がつかないかと考えている母親は乗り気ですが、本人は相変わらずひとごと。 母親 「確かにこの子は体操が苦手でした」 中島 「やっぱり!」 母親 「でも、私の運動神経の鈍さが遺伝したんじゃないかとも思うんです」 中島 「それでね、今ここでラジオ体操をしてもらおうと思うんですけど」 本人だけにラジオ体操をさせるのも申し訳ないので、私も含めて母親と3人でラジオ体操をすることにしました。幸い、診察室には十分な広さがあります。 中島 「では、 腕を前から上にあげてー、大きく背伸びの運動からー、はいっ。チャンッ、チャンッ、チャンッ、チャンッ」 気分を出すために口で音楽をつけました。この動作の段階では何も異常はみられません。ところが次の段階に移ったときに異変が…… 中島 「手足の運動でーす。チャンチャッカチャンチャン、チャンチャッカチャン」 何かおかしい!お母さんも私も普通にラジオ体操をしているのに、彼だけ動作に違和感があるのです。何というか、手と足が連動せずにバラバラに動いているというか。 母親 「小学校の運動会で全校生徒が一斉に体操をしていてもですね、この子は探す必要がありませんでした。どこにいるかすぐにわかるんですよ」 中島 「やはりそうでしたか!」 患者 「運動会ですねー」 ラジオ体操をしてもらった時の違和感をうまく言い表すのは難しいのですが……。日本人なら誰でも子供の頃からやらされてきたラジオ体操を、異文化の人が形だけ真似ようとして失敗してしまったというか、そんな感じです。何事もやってみるものですね。今度こども病院の先生に会ったら「アスペルガー疑いの患者さんと体操してみましたよ」と報告しておきます。それにしても診察室で大真面目にラジオ体操をする3人の大人、というのも横から見るとちょっと不気味な絵だったかもしれません。最後に1句アスペルガー ラジオ体操 即診断

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妊娠糖尿病は子供の自閉スペクトラム症のリスク/JAMA

 妊娠26週までに妊娠糖尿病(GDM)と診断された母親から出生した子供は、母親が糖尿病でない場合に比べ自閉スペクトラム症(ASD)を発症するリスクが高いことが、米国・カイザーパーマネンテ南カリフォルニア(KPSC)のAnny H Xiang氏らの検討で示された。胎児における母親の高血糖への曝露は、臓器の発達や機能に長期に影響を及ぼす可能性が示唆され、妊娠前の糖尿病だけでなく妊娠期間中の高血糖(=GDM)と、子供の肥満や代謝異常の長期的リスクとの関連が確認されている。一方、母親の糖尿病と子供のASDとの関連を検討した研究は少なく、GDMの発症時期を重視した報告はこれまでなかったという。JAMA誌2015年4月14日号掲載の報告より。診断時期を妊娠26週前後で分けて後ろ向きに評価 研究グループは、子供のASDのリスクと、子宮内での2型糖尿病やGDMへの曝露、妊娠中のGDM診断時期との関連について検討する目的で、レトロスペクティブな縦断的コホート研究を実施した。対象は、1995年1月1日~2009年12月31日までにKPSCで単胎妊娠、妊娠期間28~44週で出生した子供32万2,323例であった。 子供は、出生から以下のいずれかの日まで追跡された。ASDの診断、KPSC健康計画の登録期限、全死因による死亡、2012年12月31日。出生年で補正したCox回帰モデルを用いてハザード比(HR)を算出し、ASDの相対リスクを推定した。 母親を既存の2型糖尿病(6,496例[2.0%]、平均年齢32.7歳)、GDM(2万5,035例[7.8%]、32.4歳、妊娠期間26週までに診断:7,456例、26週以降に診断:1万7,579例)、非糖尿病(29万792例[90.2%]、29.2歳)に分けて解析した。 主要評価項目は子供の臨床的なASDの診断であった。母親、兄/姉のASDや、母親の喫煙、体重の影響はない 出生後のフォローアップ期間中央値は5.5年で、この間に3,388例の子供がASDと診断された。そのうち、既存の2型糖尿病の母親から生まれた子供が115例、26週までにGDMと診断された母親の子供が130例、26週以降に診断された母親の子供が180例であり、非糖尿病の母親の子供は2,963例であった。 1,000人当たりの非補正年間ASD発症率は、既存2型糖尿病群が3.26件、26週以内診断GDM群が3.02件、26週以降診断GDM群が1.77件、非糖尿病群は1.77件であった。出生年で補正したHR(非糖尿病群との比較)は、既存2型糖尿病群が1.59(95%信頼区間[CI]:1.29~1.95)、26週以内診断GDM群が1.63(95%CI:1.35~1.97)、26週以降診断GDM群は0.98(0.84~1.15)であった。 母親の出産年齢、経産回数、教育歴、世帯収入、人種/民族、併存疾患歴および子供の性別で補正後の子供のASDリスクは、母親の既存の2型糖尿病とは関連がなかった(HR:1.21、95%CI:0.97~1.52、p=0.09)が、26週以内のGDM診断とは有意な関連がみられた(HR:1.42、95%CI:1.15~1.74、p<0.001)。抗糖尿病薬の投与はASDのリスクとは関連がなかった。 全コホートでは、母親または兄/姉のASD診断で補正しても結果に影響はなく、またデータが得られた6万8,512例においては、母親の喫煙、妊娠前のBMI、妊娠中の体重増加で補正しても結果は変わらなかった。 著者は、「多彩な民族からなる集団において、母親の既存の2型糖尿病は子供のASDとは関連がないが、妊娠26週までにGDMと診断された母親の子供のASDリスクは共変量で補正後も有意に高いことが示された」とまとめ、「本研究では、すべてのデータが統合された患者ケアシステムから得られ、子供は1歳までにKPSC健康計画に登録されて電子カルテにより継続的にフォローアップが行われたため、スクリーニングバイアスや診断バイアスが回避されたと考えられる」と考察している。

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成人発症精神疾患の背景に自閉スペクトラム症が関連

 国立精神・神経医療研究センターの松尾 淳子氏らは、成人発症精神障害患者における自閉症的特性/症状の存在について検討を行った。その結果、成人発症精神障害患者(大うつ病性障害[MDD]寛解例を除く)の約半数で高レベルの自閉症様特性/症状を有する割合が認められること、双極性障害および統合失調症患者では重症度と関係なく自閉症様特性/症状を認める割合が高かったこと、MDD患者ではうつ症状の重症度と自閉症様特性/症状の発生に関連を認めることなどを報告した。結果を踏まえて著者は、「最適な治療のためには、成人発症精神障害の背景にある自閉症様特性/症状を評価することの重要性が示された。前向きデザインの大規模集団によるさらなる研究が必要である」と述べている。PLoS One誌オンライン版2015年4月2日号の掲載報告。 自閉スペクトラム症は、しばしば他の精神疾患との同時発症がみられる。正常知能の小児精神疾患集団において自閉症様特性/症状が高頻度に発現することが確認されているが、成人精神疾患集団における報告はない。本研究では、成人発症のMDD、双極性障害、統合失調症等の精神障害患者において自閉症的特性/症状が高頻度に認められるか否か、そしてこうした関連が症状の重症度と独立してみられるのか否かを検討した。 対象は、25~59歳の正常知能の成人290例である(MDD125例、双極性障害56例、統合失調症44例、健常対照65例)。自閉症様特性/症状は成人用対人応答性尺度(Social Responsiveness Scale:SRS)を用いて評価した。症状の重症度は陽性・陰性症状評価尺度(Positive and Negative Symptoms Scale)、ハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton Depression Rating Scale)やヤング躁病評価尺度(Young Mania Rating Scale)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・MDD寛解患者を除いた被験者の約半数は、自閉スペクトラム症の診断閾または診断閾下レベルの自閉症様特性/症状を示した。・さらに、精神疾患患者において自閉症様特性が高レベルを示した者の割合は健常対照と比べ有意に多く、双極性障害あるいは統合失調症の寛解または非寛解であるかによる差異はなかった。・一方、MDD寛解患者において、自閉症様特性が高レベルを示した者の発生率または程度において、健常対照と差はなかった。・双極性障害および統合失調症成人患者ではかなりの割合で、重症度と関係なく自閉症様特性/症状が認められたが、これは自閉スペクトラム症とこれら精神疾患との間に共通の病態生理が存在することを示唆するものである。・これに対し、MDD患者における自閉症様特性は、うつ症状の重症度と関連がみられた。関連医療ニュース 成人ADHDをどう見極める 自閉症スペクトラム障害への薬物治療、国による違いが明らかに 日本人若年性認知症で最も多い原因疾患は:筑波大学

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若年者への抗精神病薬使用、93%は適応外処方

 スペイン・バルセロナ大学病院のInmaculada Baeza氏らは、4~17歳の小児・青少年における抗精神病薬使用および変化について、精神科専門外来受診者259例を対象に1年間追跡調査した。結果、第二世代抗精神病薬が最も多く処方され、約93%は未承認の適応での使用であった。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2014年10月号の掲載報告。 追跡調査は、小児・青少年専門精神科部門4施設を受診した、抗精神病薬未治療または準未治療(抗精神病薬治療を始めてから30日未満)の、4~17歳の連続患者265例を対象に行われた。抗精神病薬の種類、用量、併用薬について、ベースライン時、治療開始後1、3、6、12ヵ月時点で記録した。 主な結果は以下のとおり。 ・ベースライン時の患者の平均年齢は14.4(2.9)歳、男性が145例(54.7%)であった。・抗精神病薬の処方頻度は多い順に、統合失調症スペクトラム障害(30.2%)、破壊的行動障害(DBD、18.9%)、双極性障害(14.3%)、抑うつ性障害(12.8%)、摂食障害(11.7%)であった。・全体で93.2%の患者が、未承認適応で抗精神病薬を使用していた。・リスペリドンは、全評価において最も頻度の高い処方薬であったが、診断によって抗精神病薬の種類に違いがみられた。・すなわち、リスペリドンはDBD患者で最も有意に処方頻度が高く、オランザピンは、摂食障害患者で最も処方頻度が高かった。・オランザピンとクエチアピンは、リスペリドン後に最も多く処方された第二世代抗精神病薬であり、ハロペリドールは最も処方数が多かった第一世代抗精神病薬であった。・追跡期間中、抗精神病薬多剤療法を受けていたのは最高8.3%の患者であった。・追跡期間中の抗精神病薬について変更があったのは約16%の患者であり、主として第二世代抗精神病薬1剤をほかのものに切り替えるケースであった。関連医療ニュース 非定型抗精神病薬、小児への適応外使用の現状 日本では認知症への抗精神病薬使用が増加 自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か  担当者へのご意見箱はこちら

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結婚できない男【空気を読まない】[改訂版]

今回のキーワードこだわり(想像力の障害)発達障害(自閉症スペクトラム障害)共感性職人気質パターン認識構造化「なんで空気を読まないの?」みなさんがかかわる患者さんやいっしょに仕事をするスタッフたちの中で、「なんで空気を読まないの?」と思わず驚きの声を上げそうになったことはありませんか? 世の中にはいろんな人がいます。できることなら誰とでもうまくやっていきたいですよね。でも、うまくいかなくなった時、どう考えたらいいのでしょうか? どうしたらいいのでしょうか?今回、2006年に放映されたドラマ「結婚できない男」を取り上げます。これは、今までにない異色の恋愛ドラマで、みなさんの中にも覚えている人が多いかと思います。婚活が社会現象となって久しく、結婚したくてもなかなかできない男女が増えた今の世の中を絶妙に映し出しています。主人公はなぜ結婚できないのでしょうか? 世の中はなぜ結婚しづらくなったのでしょうか? これらの疑問も踏まえて、これからストーリーを追って見ていきましょう。空気を読まない主人公の信介は、ルックス良く、建築家として成功し、経済的にも恵まれている39歳の独身男性です。高身長、高学歴、高収入で一時もてはやされた3高も満たしています。一見して女性を引き付けるものを持ってはいます。しかし、出会った女性はことごとく彼にうんざりし、すぐに彼の元を去っていきます。なぜでしょうか?いくつか分かりやすいシーンがあります。信介がパーティ会場で初対面の女性に接するシーンが印象的です。雨でずぶ濡れの地味な上着で登場します。部下の英治に営業をするよう頼まれていたのにもかかわらず、「(営業の相手は)キッチンの重要性を理解していない。議論にならん」と言い放ちます。女性から建築家になった理由を聞かれると、「神のお告げがありまして」と分かりにくい冗談を言います。すかさず「今のギャグです」と英治にフォローされて、何とか場が保たれています。自分の好きな映画の話を一方的に始める信介に対して、女性は苦し紛れに「そのうち見ます」と言うと、信介は「そのうちなんて言って、見たやつはいませんよ」と返します。女性は、何とか場を和ませようとして「このスパゲティおいしいですよ」と差し出すと、信介は「ちょっと冷めてる」「これちょっと細いから、厳密にはスパゲッティーニ、つまりあなたはほんとは『スパゲッティーニおいしいよ』と僕に言うべきなんです」と答えるのです。最終的に、女性はうんざりして逃げてしまいますが、信介は英治に「構わん」と言い放ちます。このように、信介は、相手の話も聞かず、一方的に話し、思ったことをそのまま口走り、うんちくをこね、そしてこりないのです。別のシーンでは、マンションの隣人であるみちるがお金に困り、水商売をやり始めた姿を見て、何とか助けたい思いからお金を貸そうとします。信介は「困ってんの見たくないから」と言いつつ、受け取るのにとまどっている彼女を見て「客も我慢している」「もっと若くて女子大生みたいなのがいいのに」ともっともらしく言い放ってしまいます。また、バスツアー参加では、バスガイドの話に割り込み、より詳しいうんちくを得意がって披露し、バスガイドを泣かせてしまいます。年下の女性とのデートの時に相手が水族館で「魚、大好き」と言うと、信介は「魚より肉が好きだな」と答えます。長年の仕事パートナー沢崎がヘッドハントされるシーンでは、引き留めようとして出た信介の言葉は「便利で都合のいいやつはお前しかいない」との本音でした。急に近付いたり、顔を近づけて話すなどの特徴もあります。どうやら、彼には「空気が読めない」「空気を読まない」という言葉が当てはまりそうです。こだわりでは、なぜ信介は「空気を読まない」のでしょうか?さらに、別のシーンをいくつか見てみましょう。人生ゲームに凝っていて1人で復刻版の人生ゲームをやります。お好み焼きはマニュアル通りに作らないと気が済みません。模型のプラモデルの部品が1つ足りないだけでもう1セット購入します。そして、花は大嫌いで、視界に入るだけでも体調を悪くしてしまいます。猫背でぎこちない歩き方も相変わらずです。これらは、全て彼の「こだわり」と言えます。さらに、「空気を読まない」のも彼のこだわりの裏返しであり、延長であると言えそうです。つまり、彼はこだわりがとても強いのです。そして、メンタルヘルスの現場では、このような「こだわり」があまりにも強過ぎて、日常生活や社会生活がうまくいかない場合、ある障害が浮かび上がってきます。それは、発達障害(自閉症スペクトラム障害)です。ただ、信介にこの診断が下り、治療が必要というほどでは全くありません。そのわけは、メンタルヘルスにおける診断や治療は、あくまで本人や周りがひどく困ってしまうことが大前提だからです。ただ、その人を取り巻く環境や周りとの相性によって困り具合が変わるので、線引きが難しいことがよくあります。ここで言えることは、信介には発達障害の傾向があり、困ってしまいやすいということです。そして、信介や周りの人が、この傾向と上手に付き合っていくためのヒントをみなさんといっしょに考えることができるのではないかということです。想像力―「硬さ」「狭さ」「独特さ」強いこだわりは、発達障害の要素の1つである想像力の「硬さ」「狭さ」「独特さ」です(想像力の障害)。つまり、想像力に柔軟性がなく、しかも想像力の広がりが狭いために、相手が何を思っているか、何を感じているかを想像すること(心の理論)にとても鈍感なのです。だからこそ、自分のことばかり考えてしまい、結果的に、対人関係においては、「空気を読まない」「不器用」な人になってしまいます。しかし、こだわりは、裏を返せば、自分にとって何が特別か悟っている「ひたむきさ」「一途さ」「才能」でもあります。実際に、信介は、自分の興味のある建築という仕事においては、とことん追求し、良い仕事をしており、「一芸」に秀でています。つまり、こだわりには二面性があるのです。その人の良さでもあり、その人らしさ、個性とも言えます。表:こだわりの二面性マイナス面プラス面こだわり融通が利かない空気を読まない(読めない)頑固、偏屈、無愛想ひたむき、一途ブレない、流されない正直、真面目、勤勉、律儀図太い、一芸に秀でるなぜ信介のような人は今の世の中で目立つのか?それでは、なぜ信介のような人は、今の世の中で目立つようになったのでしょうか? その答えは、コミュニケーション能力、つまりは気回しが求められる社会構造に変化してしまったからです。かつての士農工商の封建社会では、身分制度により仕事も結婚相手も生まれる前からほぼ決められていました。農業や工業などの製造業が主流で、この社会において求められる価値観は、「正直」「真面目」「勤勉」「律儀」です。分かりやすいイメージとしては、頑固で人付き合いは悪いけど腕は良い職人です。この職人気質は、まさに建築家の信介に当てはまります。この価値観はこだわりの特性と相性が良いのです。多少の「偏屈」は問題にされず目立たなかったのです。この特性を持った人々がその能力を発揮し、その時代に活躍しました。しかし、その後、時代は大きく変わりました。産業革命、情報革命を経て、サービス業中心の世の中になってきました。情報化し複雑化したコミュニケーション重視の新しい社会の仕組みの中、かつてなくコミュニケーション能力、「空気を読む」という気回しの能力が求められる時代に変わってきたのです。信介のような人たちは本来の居場所、行き場である製造業の仕事からあぶれてしまい、サービス業に流れていきました。しかし、こだわりは受け入れられず、ただその「偏屈さ」が目立つ結果となったのでした。実際に、建築の営業をするパートナーの沢崎が不在の時に、信介は彼女に代わって営業を全うすることはできませんでした。逆に言えば、その特性を見抜いて、向いている職種を見出すこともできます。対人的な職種は、対象が人の心そのもので「生もの」であるため、常に空気を読んで、臨機応変に動かなければならないので、信介には負担が大きいです。一方、対物的な職種は、空気を読むことそのものを対象にしないため、決められた手順通りに取り組むことができるので、才能や技術のある信介のような人には合っています。表:こだわりタイプと気回しタイプがそれぞれ向いている職種 こだわりタイプ(職人気質)気回しタイプ(商人器質)モデル信介部下の英治ライバル建築家の金田職種対物的な職種対人的な職種例一般職製造業、職人専門職(研究者、学者)、事務職サービス業(営業、接客、窓口)管理職医療職急性疾患、救命救急、手術室慢性疾患、精神疾患、リハビリテーション今の世の中の結婚に求められるものは?ヒロインとして登場する女医の夏美は、ある種の強さを持った現代的な女性で、ドラマの中で彼女が見合い結婚に嫌気が差し、恋愛結婚に憧れるのも納得がいきます。そんな夏美の診察室に、信介は、「胃がシクシクと・・・」と言い、しょっちゅう訪れます。彼は、夏美の感情の変化を読み取ることができず、たびたび怒らせてしまいます。と同時に、実は、彼はストレス性の胃炎になるくらい自分自身の感情の変化にも気付きにくいのです。端的に言うと、相手の心だけでなく、自分の心を察するのも鈍いのです。そして、自分がストレスを抱え込んでいることに気付かず、無理をしてしまいやすいです。やがて、彼は夏美に好意を寄せていきますが、その自分自身の気持ちに気付かず、噛み合わないもどかしさが私たちにも伝わってきます。実は、今の社会の仕組みは結婚にも影響を与えています。情報化され自由化された新しい恋愛結婚のシステムでは、選択肢、判断基準が増え個々人の違いが重視されるようになりました。そこで特に求められるのは相手の気持ちを推し量ること、つまりは気回しや思いやりです(共感性)。部下の英治やホスト風のライバル建築家の金田は、信介とは対照的に人当たりのいいキャラとして描かれており、信介の特性を際立たせています。逆に、ドラマでみちるを狙うストーカーが登場しましたが、相手の気持ちを全く考えない一方的な恋愛であるストーカー行為は、まさにこだわりの負の産物と言えます。信介のような人はどうすればいいのか?信介のような人たちはどうすればいいのでしょうか? それは、本人がパターン認識をして学習することです。信介は、何が悪いか分からないけれどパターン認識をして彼なりに周りとうまくやって行こうとする姿勢が見受けられます。例えば、信介に皮肉を言われたと思った夏美は激怒し立ち去るシーンがありますが、わけが分からず追いかけた信介は悪気なく尋ねます。「悪いんでしょ?」と。しかし、夏美が許してくれないので「すみません」ととりあえず謝っています。何が悪かったのかのフィードバックがなければ、同じ過ちを繰り返していきますが、ストーリーが進むにつれて、信介は夏美に「また、説教ですか?」と言いながらも、夏美の「説教」に耳を傾けていくようになっていき、いつの間にか惹かれていきます。周りの人たちはどうすればいいのか?周りの人たちはどうすればいいのでしょうか? 実は、その答えはドラマの中に散りばめられています。ドラマの回を重ねて見るうちに私たちは気付かされます。それは、、本人に悪気がないことを周りが理解することです。これは、信介のような人たちを理解する上でとても大切なことです。ドラマで夏美が言います。「言い方とかムカつくけど、悪い人ではないと思う」「心で思っていることと表に出すことが違っている場合が多い」と。彼の個性ゆえに独特の言い回しをしてしまい本心がうまく相手に伝わらないことが多いのです。時には、信介の一生懸命さやもどかしさが私たちにも伝わってきます。現に、頼まれれば、命懸けでベランダをつたい、慣れない犬の世話をし、迷子の犬探しに必死に協力します。出会って間もない女性の新しい恋人のフリをすることを承諾します。みちるのボディガードを務め、ストーカーを撃退します。もともとお金の貸し借りをしたことがなかったのに、困っているみちるに自らお金を貸そうともしました。秘密を漏らすなと言われたら絶対に漏らしません。これは信介の良さであり、さきほどの「正直」「真面目」「勤勉」「律儀」などの二面性を併せ持っていることが理解できます。「俺は自分の気持ちに正直でいたいから」という信介の言葉がそれを裏付けています。信介の良き理解者である沢崎は、その特性を見抜きうまく手なずけ仕事をやらせていました。実直であるがゆえに乗せられやすい面も見えてきます。時には、「今の(信介の発言)を翻訳すると」などと沢崎はフォローも入れます。周りが汲み取るその人らしさまた、夏美は沢崎のアドバイスを受けながら、ちょっとずつ信介を理解していきます。ある時、結婚相手に理想ばかり追い求めるみちるに「男性に求めるものは?」と聞かれて、夏美は答えます。「その人が何を考えているかちゃんと理解できること」と。発想の転換です。求めるのは、相手にではなく自分であることを悟るのです。夏美の成長ぶりが伺えます。その後、夏美はあえて信介のテレビ出演でカットされた発言の話を引き出し聞いてあげるなどして、「説教」だけではない支持的なかかわりを通して信介に歩み寄ります。そして、最後には信介に告白します。「(今までの)私たちの会話ってキャッチボールじゃなくてドッジボールばっかりだった気がします」「(これから)私はキャッチボールがしてみたいです、あなたと」と。その告白を受けて、後日、信介は夏美の診察室に訪れます。「キャッチボールしようと思って」と。関わる相手がキャッチボールできるうまい球をまず投げてあげることが大事であることも描かれています。また、信介が通うコンビニの女性店員でさえ、対応を変えてきます。いつもレジで「スプーン要りますか?」「ポイントカードありますか?」と聞くと、信介は間髪入れずに無愛想に「要りません」「ありません」と言うので、やがて「スプーン要りませんし、ポイントカードもありませんよね。」と聞くようになります。コミュニケーションのコツラストシーンで、夏美を家に誘いたい信介は、誘いの言葉を素直に言い出せず、逆に夏美に「もしかしてうちに来いって言ってますか」と言い当てられてしまい、いつもの口癖で「あなたがどうしてもとおっしゃるなら」と言ってしまいます。うわての夏美は、「あなたがどうしてもって言うなら」と切り返します。すると、最後についに、いつもはあまのじゃくな信介が素直に答えます。「じゃあ来てください。どうしても」と。このシーンは、夏美のかかわりにより信介が少しずつ変わってきていることを窺わせます。と同時に、夏美の信介へのかかわりが大きく変わったことも描かれています。とてもほのぼのとするエンディングです。もちろん、トレンディドラマにありがちなハッピーエンドではなく、これからの2人の関係も波乱に満ちたものを予感させます。実際に、主人公に共感し、自分と重ね合わせてハッとした未婚男性の視聴者はいるのではないでしょうか? 反面教師としても主人公の視点を通して、自分のあり方、生き方を客観的に見つめ直すことができます。もちろん、周りの人たちにとっても、信介のような人たちへの理解が深まり、コミュニケーションのコツが分かってきます。そのコツとは、細かく具体的で丁寧な指示を出して(視覚化)、レールを敷いて枠組みを作り(構造化)、一つ一つのパターン認識やパターン学習を手助けしてあげることなのです。また、こだわりが強ければ、急な予定の変更(新奇場面)にストレスを感じやすくなります。その対策として、予定の変更をあらかじめ伝えることも肝心です(予定告知)。ドラマはセラピーの効果このドラマは、信介のような人たちが信介を自分と重ね合わせ、同時に彼らの周りの人たちが信介をその人に重ね合わせ、どうしたらいいかを気付かせてくれるセラピーの役割を果たしています。社会が信介のような人たちの特性をもっと知り、その個性的で良い面を高く買ってあげて、口下手でコミュニケーションが苦手な面は大目に見て微笑ましく見守ってあげることができたら、世の中はきっと彼らにとっても私たちにとっても、もっと居心地の良い場所になるのではないでしょうか。今、世の中に求められているのは、彼らを理解し、彼らと「キャッチボール」をして、お互いに少しずつ成長していけるような、より心の広いコミュニケーション社会なのではないでしょうか?1)尾崎将也:結婚できない男、扶桑社、20062)吉田友子:高機能自閉症・アスペルガー症候群、「その子らしさ」を生かす子育て、中央法規出版、2009

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救急搬送患者に対する抗精神病薬の使用状況は

 最近の専門ガイドラインでは、救急部門(ED)に搬送されてきた激しい興奮を呈する患者へのファーストライン治療として、第二世代抗精神病薬(SGA)の経口投与が推奨されているが、現実的にはほとんど投与は行われておらず、処方の増加もみられないことが判明した。また投与されている場合は通常は経口投与で、しばしばベンゾジアゼピン系薬の併用投与を受けており、アルコール依存症患者への処方頻度が最も高かったことも明らかになった。米国・UC San Diego Health SystemのMichael P. Wilson氏らが報告した。Journal of Emergency Medicine誌オンライン版2014年3月21日号の掲載報告。 これまでEDにおいて、どのような薬物投与が行われているのか、SGAがどれくらい処方されているのかは不明であった。研究グループは、1)患者特性、ベンゾジアゼピン系の併用投与を調べ、またSGAの使用についてハロペリドールまたはドロペリドールの使用と比較すること、2)ED患者へのSGA処方率の経時的変化を調べた。2つの大学EDを2004~2011年に受診した患者コホートを後ろ向きに分析した。コホートの患者は、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ジプラシドン(国内未発売)の処方を受けていた。記述的分析法にて年齢、性別、ハロペリドール/ドロペリドールなど第一世代抗精神病薬(FGA)の使用、ベンゾジアゼピン系薬併用使用の割合を比較。線形回帰分析法にてSGA処方が時間とともに増大しているかを調べた。 主な結果は以下のとおり。・試験期間中にEDを受診しSGA処方を受けていた記録は、患者1,680例、1,779件であった。・EDでSGA処方を受けた患者の大半は、経口投与であった(93%)。・ベンゾジアゼピン系薬の併用は、受診者の21%でみられた。また受診者の21%がアルコールに関連した患者であった。・EDにおけるSGA使用の割合は、時間とともに増加はしていなかった。関連医療ニュース 統合失調症の再入院、救急受診を減らすには 急性期精神疾患に対するベンゾジアゼピン系薬剤の使用をどう考える 自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か?

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メチルフェニデートへの反応性、ADHDサブタイプで異なる

 注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、ドパミンおよびノルアドレナリン作動性神経伝達を介する前頭前皮質の変化に伴う神経発達障害である。神経ステロイド(アロプレグナノロン、デヒドロエピアンドロステロンなど) は、さまざまな神経伝達物質の分泌を調節する。スペイン・Complejo Hospitalario GranadaのAntonio Molina-Carballo氏らは、小児ADHD患者を対象とし、神経ステロイドの濃度ならびにメチルフェニデート服薬による臨床症状への効果および神経ステロイド濃度への影響を検討した。その結果、ADHDのタイプにより神経ステロイドはそれぞれ異なったベースライン濃度を示し、メチルフェニデートに対して異なる反応を呈することを報告した。Psychopharmacology誌オンライン版2014年3月6日号の掲載報告。 本研究は、小児ADHDにおけるアロプレグナノロンおよびデヒドロエピアンドロステロンのベースライン濃度と日内変動を明らかにするとともに、メチルフェニデート継続服薬による臨床症状への効果およびこれら2種類の神経ステロイドの濃度への影響を明らかにすることを目的とした。対象は、5~14歳の小児148例で、DSM-IV-TR分類でADHDと診断され、“attention deficit and hyperactivity scale”によるサブタイプと“Children's Depression Inventory”によるサブグループが明らかになっているADHD群(107例)と対照群(41例)であった。両群とも20時と9時に血液サンプルを採取し、ADHD群では治療開始4.61±2.29ヵ月後にも血液を採取しアロプレグナノロンおよびデヒドロエピアンドロステロン濃度を測定した。Stata 12.0を用いて年齢と性別で調整した因子分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・メチルフェニデートの投与により、うつ症状を伴わないinattentiveサブタイプのADHD患者においてアロプレグナノロン濃度が2倍に増加した(27.26 ± 12.90 vs. 12.67 ±6.22ng/mL、朝の測定値)。・うつ症状を伴うADHDサブタイプではデヒドロエピアンドロステロンのベースライン濃度が高く、メチルフェニデート投与後はわずかな増加を認めたが統計学的有意差はなかった (7.74 ± 11.46 vs. 6.18 ±5.99 ng/mL、朝の測定値)。・うつ症状を伴うinattentiveサブタイプのADHD患者において、デヒドロエピアンドロステロンのベースライン濃度は低かったが、メチルフェニデート投与後にはさらに減少した。・ADHDサブタイプおよびサブグループによって、神経ステロイドはその種類によりベースライン濃度が異なり、メチルフェニデートに対して異なる反応を示す。これらの異なる反応性は、ADHDサブタイプや併存症の臨床マーカーになる可能性がある。関連医療ニュース ADHDに対するメチルフェニデートの評価は 抗てんかん薬によりADHD児の行動が改善:山梨大学 自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か

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パーキンソン病患者でみられる衝動性にセロトニンが関与か

 パーキンソン病では、たとえ衝動制御障害を認めない場合でも、一般に衝動性がよくみられる。それは、ドパミン過剰遊離、運動制御にかかわる前頭葉-線条体回路における構造変化など、複数の因子が関与していると思われる。さらに、動物による前臨床試験およびヒトの研究から、パーキンソン病における応答阻害に前脳へのセロトニン作動性投射の変化も寄与している可能性が示唆されている。英国・ケンブリッジ大学のZheng Ye氏らは、パーキンソン病患者でみられる衝動性のメカニズムを探り、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の有用性を明らかにする検討を試みた。Brain誌オンライン版2014年2月27日号の掲載報告。 本研究では、SSRIシタロプラムが、行動および神経メカニズムという観点から応答阻害を改善するか否かについてマルチモーダル磁気共鳴イメージング(MRI)研究を行った。試験デザインは二重盲検無作為化プラセボ対照クロスオーバー試験とし、衝動性などの実行機能を測定する Stop-signal 課題や Go/NoGo 課題を用いて実施した。特発性パーキンソン病患者21例(46~76歳、男性11例、Hoehn & Yahr stage:1.5~3)を対象とし、2つの時期に分けて、通常使用しているドーパミン作動薬にシタロプラム30mgまたはプラセボを追加した。マッチさせた健常対照20例(54~74歳、男性12例)は薬物を投与せずに測定した。行動および局所脳活性に及ぼす疾患と薬物の影響について、一般線形モデルを用いて分析した。さらに、拡散テンソル画像法(DTI)とそれを用いたTract-Based Spatial Statistics(TBSS)法により解剖学的関連性を検討した。 主な結果は以下のとおり。・プラセボ追加群は健常対照群と比較して、Go reaction timeに影響を及ぼすことなくStop-Signal Reaction Timeが長く、NoGo errorsが大きかったことから、パーキンソン病では応答阻害障害が惹起されていることを確認した。・この現象は、右下前頭葉における運動の実行中止に特異的な活性の減弱と関連していたが、NoGoに関連する活性においてプラセボ追加群と健常対照群の間で差は認められなかった。・シタロプラムによる有益な効果は確認されなかったが、より重症例(Unified Parkinson's Disease Rating Scaleの運動スコア高値)においてStop-Signal Reaction Time とNoGo errorsの軽減がみられ、下前頭活性が増強されていた。・シタロプラムに誘発される前頭前野領域の脳賦活の促進と前頭葉-線条体回路における構造連関の保持増強が、行動に影響していた。・シタロプラムの応答阻害に対する行動性への影響は、個々の前頭前野領域の脳賦活および前頭葉-線条体回路連関の相違に依存することが示唆された。また、疾患の重症度とシタロプラムの効果との関連は、前脳へのセロトニン作動性投射の減弱による可能性があると思われた。・これらの結果を踏まえて著者は、「本研究の結果は、認知および行動制御におけるセロトニンの重要な役割に関する広い理解に寄与するとともに、パーキンソン病を対象としたセロトニン作動性薬の臨床試験において、患者を層別化する際の新たなストラテジーを提供しうるものとなる」とまとめている。関連医療ニュース 自閉症スペクトラム障害に対するSSRIの治療レビュー 早漏症にSSRI、NO濃度との関連を確認 閉経期ホットフラッシュにSSRIが有効

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小児自閉症に対する薬物療法はQOLにどのような影響を与えるか

 米国・ワイルコーネル大学医学部のWendy N. Moyal氏らは、自閉症スペクトラム障害(ASD)を有する小児・若年者のQOLに及ぼす薬物療法の影響についてレビューを行った。その結果、アリピプラゾールとオキシトシン(本疾患には未承認)は、QOLにプラスとなる効果をもたらすことが明らかであること、その他の抗精神病薬については、リスクとベネフィットについての有用な情報はあるがQOLに関する特定データはなかったことを報告した。Pediatric Drugs誌オンライン版2013年10月24日号の掲載報告。 ASDを有する小児は88人に1人の割合でいると推定されている。同障害は、社会的なコミュニケーションや意思疎通の障害、興味対象が限定的であること、反復行動がみられることで診断される。ASDの小児の大半では適応スキル障害がみられ、多くが知的障害を有し、そのほか精神障害や精神症状が共通してみられる。このような複合的な障害によって、患者および家族はQOLに相当な影響を受けていると考えられる。精神医学的な問題による機能障害への対処のために、医師や家族によって薬物治療が考慮されており、実際、小児・若年者のASDの3分の1が1剤以上の抗精神病薬を服用している。また、その多くは補完・代替医療も利用している。そのような背景を踏まえて研究グループは、ASDの小児について抗精神病薬治療のQOLに関するベネフィットとリスクについて、どのようなことが明らかになっているかをレビューした。 主な結果は以下のとおり。・自閉症患者における、QOLの評価を含む抗精神病薬治療の研究はまれであった。小児を対象としたアリピプラゾールの興奮症状に関する研究と、成人対象のオキシトシン研究1例であった。・アリピプラゾール研究では、オキシトシン研究と同様に、治療を受けた患者においてQOLにプラスとなる効果をもたらすことが示されていた。・その他の抗精神病薬は、小児のASD治療に用いられており、リスクとベネフィットに関する情報は得られたが、QOLへの影響に関する特異的なデータはなかった。・著者は、「アリピプラゾールとオキシトシン研究は、研究者にとってQOL評価の手法を組み込む際の例証となり、また臨床医に有用な情報を提供するものである」と述べ、「そのうえで、ASDの小児について、薬物療法およびQOLにおけるさらなる研究を行うことを推奨する」とまとめている。関連医療ニュース 自閉症スペクトラム障害への薬物治療、国による違いが明らかに 自閉症スペクトラム障害に対するSSRIの治療レビュー 統合失調症患者の社会的認知機能改善に期待「オキシトシン」

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統合失調症治療に抗炎症薬は有用か

 統合失調症の病態に脳の炎症は関連しているのか。オランダ・ユトレヒト大学のIris E. Sommer氏らは、抗炎症薬による統合失調症の症状軽減効果を評価するため、臨床試験26件について解析を行った。その結果、アスピリン、N-アセチルシステイン、エストロゲン製剤において、症状の重症度に対し有意な改善効果が認められることを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2013年10月8日号の掲載報告。 統合失調症の炎症説は新しいものではないが、最近、統合失調症の病因における免疫系の役割を示唆するデータが多く発表されており、再び注目を集めている。脳における炎症の増強が統合失調症の症状に関与しているとするならば、炎症の抑制は臨床経過を改善しうると考えられる。実際、最近、数件の試験において、抗炎症薬が統合失調症の症状を改善しうるか否かが検討されていた。本研究では、これまでに実施された臨床試験を基に、統合失調症の症状に及ぼす抗炎症薬の有効性に関する最新情報を調査した。PubMed、Embase、the National Institutes of Health のウェブサイト(http://www.clinicaltrials.gov)、Cochrane Schizophrenia Group entries in PsiTriおよびCochrane Database of Systematic Reviewsを用いてデータベース検索を行った。検索対象は、臨床アウトカムを検討した無作為化二重盲検プラセボ対照試験に限定した。主な結果は以下のとおり。・適格試験は26件が抽出された。・アスピリン、セレコキシブ、ダブネチド(国内未承認)、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)などの脂肪酸、エストロゲン製剤、ミノサイクリンおよびN-アセチルシステイン(NAC)について、症状の重症度に及ぼす影響を調査した。・そのうち、アスピリン(重み付け平均効果サイズ[ES]:0.3、270例、95%CI:0.06~0.537、I2=0)、エストロゲン製剤(ES:0.51、262例、95%CI:0.043~0.972、I2=69%)およびNAC (ES:0.45、140例、95%CI:0.112~0.779)において、有意な効果が認められた。・セレコキシブ、ミノサイクリン、ダブネチドおよび脂肪酸では、有意な効果が認められなかった。・以上より、抗精神病薬へのアスピリン、NAC、エストロゲン製剤の追加は有望だと思われた。・これら3製剤は、いずれも非常に幅広い活性を有している。症状の重症度に対する有益な効果が、真にその抗炎症作用を介したものであるか否かを検討する必要がある。関連医療ニュース 抗精神病薬へのNSAIDs追加投与、ベネフィットはあるのか? 新たな選択肢か?!「抗精神病薬+COX-2阻害薬」自閉症の治療  アルツハイマー病、アミロイドβ蛋白による“炎症反応”が関与

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アスペルガー障害、高機能自閉症への第二世代抗精神病薬は有用か

 カナダ・王立オタワ精神保健センターのNatalie Sochocky氏らは、アスペルガー障害(AD)および高機能自閉症(HFA)に対する第二世代抗精神病薬の有用性についてシステマティックレビューとメタ解析を実施した。その結果、ADおよびHFAの行動症状は第二世代抗精神病薬により改善するが、有害事象として体重増加に注意が必要であることを報告した。Current Clinical Pharmacology誌オンライン版2013年9月20日号の掲載報告。 小児および思春期の低機能自閉性障害の興奮性および攻撃性の治療における、第二世代抗精神病薬に関するエビデンスが蓄積されつつある。ADおよびHFA患者は大きな感情的および行動的な問題、精神的合併症を抱えており、研究グループは、これら患者に対し、より効果的な治療選択を提供するため、第二世代抗精神病薬の有効性に関する発表論文をレビューする必要があるとして本検討を行った。Medline、PubMedおよびPsychINFOのデータベースを用いて、小児および思春期(0~24歳)のADならびにHFAに対する第二世代抗精神病薬使用に関する最近の英語文献について、システマティックレビューとメタ解析を実施した。キーワードとして、「アスペルガー」「高機能自閉症」「自閉症スペクトラム(ASD)」「広汎性発達障害(PDD)」を、「第二世代抗精神病薬」「アリピラゾール」「オランザピン」「クエチアピン」「リスペリドン」「ジプラシドン(国内未承認)」と組み合わせて検索した。 主な結果は以下のとおり。・引用文献214件が抽出された。そのうちIQ 71以上の被験者が25%以上を占める非盲検試験あるいは無作為化対照試験(RCT)のみをレビューの対象とした。・レビュー適格試験は11件であり、8試験についてメタ解析を実施した。・方法論の正確性に限界があったものの、解析の結果、ADおよびHFAの行動症状が第二世代抗精神病薬により改善することが示唆された。・大多数の試験で、有害事象として体重増加が報告されていた。・以上を踏まえて著者は、「各試験には頑健性の欠如による限界がみられ、薬理学的ならびに精神社会的治療に関するさらなる研究が求められる。臨床医は、ベネフィットと心血管代謝リスクとのバランスを考慮して慎重に治療を行うべきである」と結論している。関連医療ニュース 大うつ病性障害の若者へのSSRI、本当に投与すべきでないのか? 自閉症スペクトラム障害への薬物治療、国による違いが明らかに 若年発症統合失調症への第二世代抗精神病薬治療で留意すべき点

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SSRIで著効しない強迫性障害、次の一手は

 強迫性障害は、WHOが指摘するところの、最も手立てのない疾患の一つである。セロトニン取り込み阻害薬(SSRI)は強迫性障害の治療薬としてFDAで承認されている唯一の薬剤であるが、SSRI単独で症状を最小限にできる患者は少ない。このような例には、抗精神病薬またはexposure(強迫行為のきっかけとなる刺激への曝露)とritual prevention(強迫行為の回避)(EX/RP)からなる認知行動療法を追加することが、プラクティスガイドラインで推奨されている。米国・コロンビア大学のHelen Blair Simpson氏らは、強迫性障害患者へのSSRI治療において認知行動療法を追加することの効果について、ランダム化臨床試験にて検討した。その結果、exposureとritual prevention(EX/RP)の追加は、リスペリドンならびにプラセボの追加と比較して、症状のほか見識、機能およびQOLの改善に優れることを報告した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2013年9月11日号の掲載報告。 本研究では、成人強迫性障害の初回治療としてのSSRI治療において、抗精神病薬による強化療法、EX/RPの追加およびプラセボとを無作為化試験で比較検討した。2007年1月から2012年8月までに、強迫性障害と不安障害を専門とする外来クリニック2施設において、試験登録12週以前にSSRIを服用したにもかかわらず中等度以上の強迫性障害を認める患者(18~70歳)を適格として実施された。適格例163例のうち100例を、リスペリドン群(40例)、EX/RP群(40例)、またはプラセボ群(20例)に無作為に割り付け、86例が試験を完了した。SSRIを同量で維持している期間中に、リスペリドン(最大4mg/日)の8週間投与群、EX/RP群(1週間に2回、17セッション)、またはプラセボ群に無作為化し、独立評価委員会による4週間ごとの評価が行われた。主要評価項目は、エール・ブラウン強迫観念・強迫行為尺度(Y-BOCS)によるOCD重症度とした。 主な結果は以下のとおり。・EX/RP群はリスペリドン群、プラセボ群と比較して8週目におけるY-BOCSスコア減少が有意に大きいことが、混合効果モデルにより示された(対リスペリドン 平均[SE]:-9.72[1.38]、p<0.001/対プラセボ 同-10.10[1.68]、p<0.001)。なお、リスペリドン群とプラセボ群間で有意な差は認められなかった(平均[SE]:-0.38[1.72]、p=0.83)。・EX/RP群はリスペリドン群、プラセボ群と比較して反応性が良好であった(Y-BOCSスコアが25%以上減少した割合:EX/RP群80%、リスペリドン群23%、プラセボ群15%、p<0.001)。・EX/RP群はリスペリドン群、プラセボ群と比較して症状を最小限に抑えられた患者の割合が多かった(Y-BOCSスコア12以下:EX/RP群43%、リスペリドン群13%、プラセボ群5%、p=0.001)。・EX/RP群はリスペリドン群、プラセボ群と比較して見識、機能およびQOLの改善においても優れていた。・SSRIへのEX/RPの追加は、リスペリドンまたはプラセボを追加した場合と比較して優れていた。・以上を踏まえて著者は「SSRI投与中で臨床的に重大な症状が続いている強迫性障害患者に対しては、抗精神病薬を投与する前に、有効かつ問題となる有害事象プロファイルが少ないEX/RPの適用を考慮すべきである」と結論している。関連医療ニュース 難治性の強迫性障害治療「アリピプラゾール併用療法」/a> なぜ?第二世代抗精神病薬投与による“強迫症状”発現機序 自閉症スペクトラム障害に対するSSRIの治療レビュー

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自閉症スペクトラム障害への薬物治療、国による違いが明らかに

 香港大学のYingfen Hsia氏らは、自閉症スペクトラム障害(ASD)に対する処方薬の状況を多国間レベルで明らかにするため、IMS Prescribing Insightsのデータベースを用いた分析を行った。その結果、成人に比べ小児患者に対する処方率が高いこと、国により処方薬に違いがみられることなどを報告した。Psychopharmacology誌オンライン版2013年9月5日号の掲載報告。 これまでに、米国あるいは英国からASDに対する向精神薬処方に関する研究が報告されているが、それらの研究内容は必ずしも他国に当てはまらない可能性がある。研究グループは、エビデンスが欠如している地域を明らかにするため、ASD治療における精神薬理学的処方の範囲を多国間レベルで理解しておく必要があるとして本研究を行った。IMS Prescribing Insightsのデータベースを用いて、2010~2012年の成人および小児ASDにおける 向精神薬処方パターンを検討した。データは、ヨーロッパ(フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国)、南米(メキシコ、ブラジル)、北米(カナダ、米国)、アジア(日本)から収集した。 主な結果は以下のとおり。・北米諸国での処方率が最も高く、次いでヨーロッパ諸国、南米の順であった。また、各国とも、処方率は成人に比べ小児のほうが高かった。・若年ASDに対して最も多く処方されていた薬剤は、英国と日本を除き、リスペリドンであった。英国で最も多く処方されていたのはメチルフェニデート、日本ではハロペリドールであった。・成人に対して最も多く処方されていたのは、リスペリドンをはじめとする抗精神病薬であった。なお、ブラジルではチオリダジン(国内販売中止)、米国ではジプラシドン(国内未承認)が抗精神病薬として最も多く処方されていた。・国により処方薬に違いがみられる点について著者は「診断基準、臨床ガイドラインあるいは保険制度によるものだと思われる」と指摘したうえで、「ASD患者に対する多くの向精神薬について、有効性と安全性のエビデンスが欠如している。処方のギャップを縮小するための研究が求められる」とまとめている。関連医療ニュース 自閉症スペクトラム障害に対するSSRIの治療レビュー 新たな選択肢か?!「抗精神病薬+COX-2阻害薬」自閉症の治療  自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か?

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自閉症スペクトラム障害に対するSSRIの治療レビュー

 オーストラリア・メルボルン大学のKatrina Williams氏らは、自閉症スペクトラム障害(ASD)に対するSSRIによる治療の有用性についてレビューを行った。その結果、小児に対する有効性および有害性のエビデンスはなく、成人については試験規模が小さくバイアスリスクが不明であり有効性のエビデンスは限定的であることを報告した。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2013年8月20日号の掲載報告。 SSRIは、ASDにしばしば共存するうつ病や不安症、強迫性障害の治療に対して処方が行われている。研究グループは、そうした治療がもたらす影響について、(1)自閉症の中心的特徴(社会的関係性、コミュニケーション、行動の問題)を改善するか、(2)自傷行動のような非中心的特徴である側面を改善するか、(3)成人または小児およびその介護者のQOLを改善するか、(4)短期的または長期的アウトカムを有するか、(5)有害性の発生の5点について検討した。レビューは、CENTRAL、Ovid MEDLINE、Embase、CINAHL、PsycINFO、ERIC、Sociological Abstractsのデータベースを2013年5月時点で検索して行い、また、ClinicalTrials.govやICTRPなども対象とした。文献リストの補充や当該分野の専門家とのコンタクトも行った。ASD患者を対象に、あらゆるSSRIとプラセボの投与について比較した無作為化試験を適格とし、2名の研究者が独立して試験の選択、データの抽出、各試験のバイアスリスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・9試験、被験者320例がレビューに組み込まれた。小児のみ対象とした試験は5試験、成人のみは4試験であった。・評価に含まれたSSRIは4種類で、フルオキセチン(国内未承認)(3試験)、フルボキサミン(2試験)、フェンフルラミン(国内未承認)(2試験)、シタロプラム(国内未承認)(2試験)であった。・被験者の診断基準、IQ評価の指標は、試験によってさまざまであった。示されていたアウトカム尺度は18種類に及んだ。・複数の試験で、CGIとOCBのアウトカム尺度が用いられていたが、使用されたツールや評価項目は試験によって異なっていた。そのため、1つのアウトカム(改善割合)を除いてメタ解析を行うことは不適当であった。・その中で、大規模かつ質の高い小児の1試験があったが、シタロプラムのポジティブな有効性についてエビデンスは認められなかった。・成人では3試験で、CGIとOCBにおいてポジティブなアウトカム(1試験は攻撃性の改善、2試験は不安症の改善)が示されていたが、試験規模が小さかった。関連医療ニュース 自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か? 新たな選択肢か?!「抗精神病薬+COX-2阻害薬」自閉症の治療  大うつ病性障害の若者へのSSRI、本当に投与すべきでないのか?

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抗精神病薬治療中の若者、3割がADHD

 米国・ザッカーヒルサイド病院のMichael L. Birnbaum氏らは、若年者の注意欠陥多動性障害(ADHD)における抗精神病薬使用に関する薬剤疫学データのシステマティックレビューとプール解析を実施した。その結果、若年ADHDの約1割で抗精神病薬が投与されていること、抗精神病薬による治療を受けている若年者の約3割にADHDがみられる状況を報告した。Current Psychiatry Reports誌2013年8月号の掲載報告。 若年ADHDへの抗精神病薬の処方について懸念が高まっているが、利用可能なデータベースは個々の試験に限られている。そこで、全体的な頻度と経年的な傾向を明らかにすることを目的に、若年ADHDにおける抗精神病薬使用に関する薬剤疫学データのシステマティックレビューとプール解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ヒットした1,806件の試験のうち21件で、以下の3つの集団解析データの報告を含んでいた。1)抗精神病薬による治療を受けている若年者( 15件、34万1,586例)2)若年ADHD(9件、619万2,368例)3)一般の若年者(5件、1,428万4,916例)・抗精神病薬による治療を受けている若年者の30.5±18.5%がADHDを有していた。その割合は、1998年から2007年の間に21.7±7.1%から27.7 ±7.7%(比= 1.3±0.4)へと増加していることが長期試験で示された。・若年ADHDの11.5±17.5%が抗精神病薬の投与を受けていた。その割合は、1998年から2006年の間に5.5±2.6%から11.4±6.7%(比= 2.1±0.6)へと増加していることが長期試験で示された。・一般の若年者の0.12±0.07%でADHDが確認され、抗精神病薬の投与を受けていた。その割合は、1993年から2007年の間に0.13±0.09%から0.44±0.49%(比= 3.1±2.2)へと増加していることが長期試験で示された。・以上の知見より、抗精神病薬は臨床的に重要かつ大勢の若年ADHDに使用されていることが示唆された。処方の理由およびリスク対ベネフィットに関するエビデンスが少ないため、さらなる検討が望まれる。関連医療ニュース 自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か? 抗てんかん薬によりADHD児の行動が改善:山梨大学 摂食障害、成人期と思春期でセロトニン作動系の特徴が異なる!

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