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第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会 会長インタビュー【Oncologyインタビュー】第49回

出演:和歌山県立医科大学 内科学第三講座(呼吸器内科・腫瘍内科)教授 山本 信之氏2025年5月17日より、第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会が開催される。総会のテーマは「最高のがんサポーティブケアを目指して beyond evidence」である。会長の和歌山県立医科大学山本信之氏に学術集会の見どころについて聞いた。参考第10回日本がんサポーティブケア学会学術集会ホームページ

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発達障害と緩和ケア【非専門医のための緩和ケアTips】第98回

発達障害と緩和ケア皆さんは発達障害について勉強したことはありますか? 精神科の先生以外は、専門的に勉強したことがある方は少ないかと思います。私も専門外ではありますが、緩和ケア領域では対応が難しい状況でしばしば議論になる分野ですので、この機会に少しご紹介します。今回の質問基幹病院から外来に紹介されたがん患者さんの紹介状に「発達障害の疑い」とありました。あまり詳しく勉強したことがない分野ですが、どのような点に注意が必要でしょうか?最初に、今回の議論の前提を共有しておきましょう。私自身、精神科の専門医ではなく、体系的に勉強した経験もありません。発達障害の医学的な正しい理解に当たっては、適切な文献や書籍を参照ください。私は緩和ケアの実践に当たって知っておくとよいこと、という観点から紹介します。発達障害は知的な能力の偏りが大きく、得意・不得意にばらつきが大きい、という特徴があります。特定の情報や感覚に集中し過ぎる、逆に気にし過ぎないといったことがあります。よくある例として、周囲から「空気が読めない」と評価されることがあります。「空気を読む」って、よく考えるとなかなか難しいことですよね。音情報としての相手の口調、映像情報として相手の表情をキャッチし、相手の社会的立場なども考慮して、どのように振る舞うべきかを決めなければなりません。でもこういうのって誰かが説明してくれるわけではありません。自分で多くの情報を処理して、適切に自分の行動に反映することが求められます。そして、こうしたことが苦手なことが多いのが、発達障害の特徴の1つです。さて、このような特徴が緩和ケアを提供するうえで、どのような問題となるのでしょうか? たとえば、痛みの評価で「一番痛かった時を10点とすると、今は何点ですか?」と尋ねることがよくあります。この質問に対して、「痛みを数字で表現なんてできません」って真顔で返答されることがあります。これは、「痛み」という自覚症状と「数字」という、まったく異なる情報を結び付けられないことから生じます。このような場合には、本人の表現しやすい方法で個別に痛みを評価する方法が必要です。たとえば、数字での表現が難しくても、「立ち上がる時に痛い」といった動作での表現ならばしやすいかもしれません。「痛みを数字に変換して、カルテに記載する」といった医療者目線だけでなく、患者さんの特性に合わせることでやり取りしやすくなります。ほかにも、発達障害の特性のある患者さんには、曖昧な言い方よりも具体的にはっきりと伝えたほうが良いことが多いようです。在宅療養を希望するかを知りたいとき、「これからどうしたいですか?」といった聞き方をすることが多いですよね。多くの場合、点滴などが減って、入院の治療が終了に近づいているような状況です。しかし、患者さんはこうした「暗黙の前提」を共有するのが苦手だったりします。そのため、「どうしたいって言われても、どうすれば良いか先生なのだから教えてください」といった反応があったりします。医療者の意図をくみ取れず、食い違いが生じているのですね。こういった場合、「来週に退院ができる病状になりそうなので、退院の準備について話をさせてください。たとえば、訪問診療など在宅医療の準備が必要かもしれません」といったように、具体的な話をすると伝わりやすくなります。最後に、発達障害を考える際の重要な点を紹介します。ここまで述べたように、発達障害を思わせる特性が強い患者さんがいても、必ずしも診断にこだわる必要はありません。また、本人が困っていなかったり、影響が許容範囲だったりするのであれば、あまり「発達障害」という用語を出す必要もないでしょう。最初に述べたように、空気を読むことの難しさは誰しもあるもので、あくまで程度の問題です。時としてレッテル貼りの弊害もあるので、発達障害という診断にこだわらないようにしましょう。患者さんとのコミュニケーションに違和感を持ったときに今回の話を思い出していただき、工夫してもらえたらと思います。今回のTips今回のTips発達障害の診断にこだわらず、緩和ケアを提供するうえで支障になる発達障害らしさに対して工夫しましょう。

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DNRを救急車で運んだの?【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第5回

DNRを救急車で運んだの?PointDNRは治療中止ではない。終末期医療の最終目標は、QOLの最大化。平易な言葉で理知的に共感的に話をしよう。適切な対症療法を知ろう。症例91歳男性。肺がんの多発転移がある終末期の方で、カルテには急変時DNRの方針と記載されている。ところが深夜、突如呼吸困難を訴えたため、慌てて家族が救急要請した。来院時、苦悶様の表情をみせるもののSpO2は97%(room air)だった。研修医が家族に説明するが、眠気のせいか、ついつい余計な言葉が出てしまう。「DNRってことは、何も治療を望まないんでしょ? こんな時間に救急車なんて呼んで、もし本物の呼吸不全だったら何を期待してたんですか? 大病院に来た以上、人工呼吸器につながれても文句はいえませんよ。かといって今回みたいな不定愁訴で来られるのもねぇ。なんにもやることがないんだから!」と、ここまでまくしたてたところで上級医につまみ出されてしまった。去り際に垣間見た奥さんの、その怒りやら哀しみやら悔しさやらがない交ぜになった表情ときたらもう…。おさえておきたい基本のアプローチDo Not Resuscitation(DNR)は治療中止ではない! DNRは意外と限定的な指示で、「心肺停止時に蘇生をするな」というものだ。ということはむしろ、心肺停止しない限りは昇圧薬から人工呼吸器、血液浄化法に至るまで、あらゆる医療を制限してはならないのだ。もしわれわれが自然に想像する終末期医療を表現したいなら、DNRではなくAllow Natural Death(AND)の語を用いるべきだろう。ANDとは、患者本人の意思を尊重しながら、医療チーム・患者・家族間の充分な話し合いを通じて、人生の最終段階における治療方針を具体的に計画することだ。それは単なる医療指示ではなく、患者のQuality of Life(QOL)を最大化するための人生設計なのである。落ちてはいけない・落ちたくないPitfalls「延命しますか? しませんか?」と最後通牒を患者・家族につきつけるのはダメ医療を提供する側だからこそ陥りやすい失敗ともいえるが、「延命治療を希望しますか? 希望しませんか?」などと、患者・家族に初っ端から治療の選択肢を突きつけてはならない。家族にしてみれば、まるで愛する身内に自分自身がとどめを刺すかどうかを決めるように強いられた心地にもなろう。患者は意識がないからといって、家族に選択を迫るなんて、恐ろしいことをしてはいないか? 「俺が親父の死を決めたら、遠くに住む姉貴が黙っているはずがない。俺が親父を殺すなんて、そんな責任追えないよぉ〜」と心中穏やかならぬ、明後日の方向を向いた葛藤を強いることになってしまうのだ。結果、余計な葛藤や恐怖心を抱かせ、得てして客観的にも不適切なケアを選択してしまいがちになる。家族が親の生死を決めるんじゃない。患者本人の希望を代弁するだけなのだ。徹頭徹尾忘れてはならないこと、それはANDの最終目標は患者のQOLの最大化だということだ。それさえ肝に銘じておけば、身体的な側面ばかりでなく、患者さんの心理的、社会的、精神的側面をも視野に入れた全人的ケアに思い至る。そして、治療選択よりも先にたずねるべきは、患者本人がどのような価値観で日々を過ごし、どのような死生観を抱いていたのかだということも自ずと明らかになろう。ANDを実践するからには、QOLを高めなければならないのだ。Point最終目標はQOLの最大化。ここから焦点をブレさせない「患者さんは現在、ショック状態にあり、昇圧剤および人工呼吸器を導入しなければ、予後は極めて厳しいといわざるを得ません」いきなりこんな説明をされても、家族は目を白黒させるばかりに違いない。情報提供の際は専門用語を避けて、できるだけ平易な言葉遣いで話すべきだ。また、人生の終末を目前に控えた患者・家族は、とにかく混乱している。恐怖、罪悪感、焦り、逃避反応などが入り組んだ複雑な心情に深く共感する姿勢も、人として大切なことだ。だが、同情するあまりにいつまでも話が進まないようでは口惜しい。実は、患者家族の満足度を高める方法としてエビデンスが示されているのは、意外にも理知的なアプローチなのだ。プロブレムを浮き彫りにするためにも、言葉は明確に、1つ1つの問題を解きほぐすように話し合おう。逆に、心情を慮り過ぎて言葉を濁したり、楽観的で誤った展望を抱かせたり、まして具体的な議論を避ける態度をとったりすると、かえって信頼を損なうことさえある。表現にも一工夫が必要だ。すがるような思いで病院にたどり着いた患者・家族に開口一番、「もはや手の施しようがありません」と言おうものなら地獄へ叩き落された心地さえしようというもの。何も根治を望んで来たわけではないのだから、「苦痛を和らげる方法なら、できることはまだありますよ」と、包括的ケアの余地があることを伝えられれば、どれだけ救いとなることだろう。以上のことを心がけて、初めて患者・家族との対話が始まるのだ。こちらにだって病状や治療方針など説明すべきことは山ほどあるのだが、終末期医療の目的がQOLの向上である以上、患者の信念や思いにしっかりと耳を傾けよう。もし、その過程で患者の嗜好を聞き出せたのならしめたもの。しかしそれも、「うわー、その考え方にはついていけないわ」などと邪推や偏見で拒絶してしまえば、それまでだ。患者の需要に応えられたときにQOLは高まる。むしろ理解と信頼関係を深める絶好の機会と捉えて、可能な限り患者本人の願いを実現するべく、家族との協力態勢を構築していこう。気持ちの整理がつくにつれ、受け入れがたい状況でも差し引きどうにか受容できるようになることもある。そうして徐々に歩み寄りつつ共通認識の形成を試みていこう。その積み重ねが、愛する人との静かな別れの時間を醸成し、ひいては別離から立ち直る助けともなるのだ。Point平易かつ明確な言葉で語り掛け、患者・家族の願いを見極めよう「DNRでしょ? ERでできることってないでしょ?」より穏やかな死の過程を実現させるためにも、是非とも対症療法の基本はおさえておこう。訴えに対してやみくもに薬剤投与と追加・増量を繰り返しているようでは、病因と戦っているのか副作用と戦っているのかわからなくなってしまうので、厳に慎みたい。その苦痛は身体的なものなのか、はたまた恐怖や不安など心理的な要因によるものなのか、包括的な視点できちんと原因を見極めるべきだ。対症療法は原則として非薬物的ケアから考慮する。もし薬剤を使用するなら、病因に対して適正に使用すること。また、患者さんの状態に合わせて、舌下錠やOD錠、座薬、貼付剤など適切な剤型を選択しよう。続くワンポイントレッスンと表で、使用頻度の高い薬剤などについてまとめてみた。ただし、終末期の薬物療法は概してエビデンスに乏しいため、あくまでも参考としていただけるとありがたい。表 終末期医療でよく使用する薬剤PointERでできることはたくさんある。適切な対症療法を学ぼうワンポイントレッスン呼吸困難呼吸困難は終末期の70%が経験するといわれている。自分では訴えられない患者も多いので、呼吸数や呼吸様式、聴診所見、SpO2などの客観的指標で評価したい。呼吸困難は不安などの心理的ストレスが誘因となることも多いため、まずは姿勢を変化させたり、軽い運動をしたり、扇風機で風を当てたりといった環境整備を試すとよいだろう。薬剤では、オピオイドに空気不足感を抑制する効果がある。経口モルヒネ30mg/日未満相当ならば安全に使用できる。もし不安に付随する症状であれば、ベンゾジアゼピンが著効する場合もある。口腔内分泌物口腔内の分泌物貯留による雑音は、終末期患者の23〜92%にみられる。実は患者本人にはほとんど害がないのだが、そのおぞましい不協和音は死のガラガラ(death rattle)とも呼ばれ、とくに家族の心理的苦痛となることが多い。まずは家族に対し、終末期に現れる自然な経過であることを前もって説明しておくことが重要だ。どうしても雑音を取り除く必要がある場合は、アトロピンの舌下滴下が分泌物抑制に著効することがある。ただし、すでに形成した分泌物には何の影響もないため、口腔内吸引および口腔内ケアも並行して実践しよう。せん妄せん妄も終末期患者の13〜88%に起こる頻発症状だ。ただし、30〜50%は感染症や排尿困難、疼痛などによる二次的なものである。まずは原因の検索とその除去に努めたい。薬剤投与が必要な場合は、ハロペリドールやリスペリドンなどの抗精神病薬を少量から使用するとよいだろう。睡眠障害睡眠障害はさまざまな要因が影響するため、慎重な評価と治療が不可欠である。まずは昼寝の制限や日中の運動、カフェインなどの刺激物を除去するといった環境の整備から取り掛かるべきだろう。また、睡眠に悪影響を及ぼす疼痛や呼吸困難などのコントロールも重要である。薬物は健忘、傾眠、リバウンドなどの副作用があるため、急性期に限定して使用する。一般的には非ベンゾジアゼピン系のエスゾピクロンやラメルテオンなどが推奨される。疼痛疼痛は終末期患者の50%が経験するといわれている。必ずしも身体的なものだけではなく、心理的、社会的、精神的苦痛の表出であることも多いため、常に包括的評価を心掛けるべきだ。このうち、身体的疼痛のみが薬物療法の適応であることに注意しよう。まずは潜在的な原因の検索から始め、その除去に努めよう。終末期の疼痛における環境整備やリハビリ、マッサージ、カウンセリングなどの効果は薬物療法に引けを取らないため、まずはこのような支持的療法から試みるとよいだろう。薬物療法の際は、軽度ならば非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェン、そうでなければオピオイドの使用を検討する。ちなみに、かの有名なWHOの三段階除痛ラダーは2018年の時点でガイドラインから削除されているから注意。現在では、患者ごとに詳細な評価を行ったうえで、痛みの強さに適した薬剤を選択することとなっている。たしかに、あの除痛ラダーだと、解釈次第ではNSAIDsと弱オピオイドに加えて強オピオイドといったようなポリファーマシーを招きかねない。末梢神経痛に対しては、プレガバリンやガバペンチン、デュロキセチンなどが候補にあがるだろう。勉強するための推奨文献日本集中治療医学会倫理委員会. 日集中医誌. 2017;24:210-215.Schlairet MC, Cohen RW. HEC Forum. 2013;25:161-171.Anderson RJ, et al. Palliat Med. 2019;33:926-941.Dy SM, et al. Med Clin North Am. 2017;101:1181-1196.Albert RH. Am Fam Physician. 2017;95:356-361.執筆

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非小細胞肺がん肺がんコンパクトパネルのリアルワールドデータ/Anticancer Res

 非小細胞肺がん(NSCLC)の分子プロファイリングに基づく個別化治療戦略は、NSCLC患者の予後を改善するために不可欠である。肺がんコンパクトパネル(LCCP)は、組織および細胞診検体からNSCLCの遺伝子変異を検出するマルチフレックスコンパニオン診断キットである。しかし、その実臨床における成績について大規模な検証がなされていなかった。そのようななか、近畿中央呼吸器センターの谷口 善彦氏が日本でのリアルワールドデータをAnticancer Research誌2025年4月号で発表した。 同研究は、2023年4月~2024年7月に同施設でNSCLCと診断されLCCPを用いた症例の組織型、遺伝的異常、アレル頻度、PD-L1発現レベルを収集し後方視的に分析した。 主な結果は以下のとおり。・317例を評価した結果、154件(48.6%)が遺伝的異常を示した。・最も多く発見された変異は、EGFRの主要変異で63例であった。・腺がんでは、126例(70%)が遺伝的異常を示した。・15例で複数の共遺伝子異常が同定された。・13例が低アレル頻度(2.5%未満)を示していた。・EGFRエクソン19del陽性症例の30件で特定された9変異のうち3変異は、他のコンパニオン診断法では検出できないものであった。 LCCPは腫瘍含量が低い(5%以下)症例でも遺伝子異常を検出する能力を示すことから、EGFRエクソン19delの希少変異や複数の共変異を同定できる能力がある。これらの結果は、LCCPがNSCLCの個別化治療戦略を改善する可能性を示すとしている。

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医師の喫煙率、男女・診療科で差/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、4月2日に定例の記者会見を開催した。会見では、松本氏が3月28日に発生したミャンマー大地震の犠牲者などに哀悼の意を示すとともに、支援金として医師会より合計1,000万円を支援したことを報告した。また、2000年より医師会と日本大学が共同調査を行っている「喫煙意識調査報告」の内容、4月19日に開催されるシンポジウム「未来ビジョン若手医師の挑戦」の開催概要が説明された。男性会員医師の喫煙率は下げ止まり 「第7回(2024年)日本医師会員喫煙意識調査報告」について副会長の茂松 茂人氏(茂松整形外科 院長)がその概要を述べ、調査を行った兼板 佳孝氏(日本大学医学部社会医学系公衆衛生学分野 教授)が詳細を説明した。 この調査は、医師会の禁煙推進活動の一環として2000年より4年ごとに実施され、医師会員の喫煙の現状とその関連要因の把握を目的に行われている。 今回の主な調査目的は、「喫煙率の推移」、「喫煙に関する意識」、「加熱式たばこの使用実態」、「加熱式たばこに関する意識」の4点であり、調査方法としては日本医師会員の中より性別・年齢階級で層別化した上で無作為に抽出した男性6,000人、女性1,500人に自記式質問調査票の郵送で実施した。調査時期は2024年2~12月で、有効回答数は4,139人(反応率58.0%)だった。 主な結果は以下のとおり。・男性の喫煙率は6.9%(前回7.1%)、女性は0.9%(前回2.1%)。・年齢階級別の喫煙率につき、男性では50~59歳が8.8%、女性では70歳以上が2.3%で1番高かった。・診療科別の喫煙率につき、男性では皮膚科(12.1%)、精神科(9.7%)、整形外科(9.6%)の順で多く、参考までに呼吸器科は3.2%と低く、健診科は0%だった。・診療科別の喫煙率につき、女性では循環器科(4.0%)、健診科(3.4%)、精神科(2.0%)の順で多く、0%の診療科が呼吸器科、消化器科など8診療科あった。・現在使用しているたばこ製品については、紙巻たばこ(70.9%)、加熱式たばこ(32.7%)、そのほか(2.6%)の順で多かった。・「加熱式たばこへの心配や懸念」については、「長期間の安全性のエビデンスがないこと」(54.0%)で1番多かった。・「加熱式たばこについて質問された経験」では、「ある」が20.6%、「ない」が78.8%だった。・「加熱式たばこの正確な情報を患者に説明できるか」では、「できる」が11.4%、「できない」が87.7%だった。 今回の調査結果から茂松氏らは、「男性の喫煙率が下げ止まりとなったこと」、「男女ともに20~39歳の喫煙率の低下が顕著だったこと」、「喫煙者の中で加熱式たばこの使用者割合が増加したこと」などが判明したと言及し、「これらの研究結果を踏まえた上で、日本医師会による喫煙防止啓発活動がさらに推進されていくことが期待され、引き続き、定期的に同様の調査を実施し、医師会員の喫煙率、喫煙習慣をモニタリングしていく必要がある」と語った。 最後に常任理事の笹本 洋一氏(ささもと眼科クリニック 院長)が、シンポジウム「未来ビジョン若手医師の挑戦」について、4月19日にライブ配信で開催されること、内容は若手医師のさまざまな挑戦とシンポジウムを中心に行われることを紹介し、会見を終えた。

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白斑患者はがんリスクが高いのか?

 尋常性白斑患者におけるがんの発症率に関する研究では、一貫性のない結果が報告されている。イスラエル・テルアビブ大学のYochai Schonmann氏らは、約2万5千例の尋常性白斑患者を含む大規模コホートでがん発症リスクの評価を行い、結果をJournal of the American Academy of Dermatology誌2025年4月号に報告した。 研究者らは、イスラエルのClalit Health Servicesデータベース(2000~23年)を利用した人口ベースコホート研究を実施し、多変量Cox回帰モデルを用いて調整ハザード比(HR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・本研究には、尋常性白斑患者2万5,008例およびマッチさせた対照群24万5,550例が含まれた。尋常性白斑患者の平均年齢(SD)は35.96歳(22.39歳)、1万2,679例(50.70%)が男性であった。・がんの発症率は、尋常性白斑患者で10万人年当たり499例(95%信頼区間[CI]:468~532)、対照群で10万人年当たり487例(95%CI:476~497)であった(調整ハザード比[HR]:1.00、95%CI:0.93~1.07、p=0.999)。・尋常性白斑患者では、対照群と比較して悪性黒色腫(調整HR:0.70、95%CI:0.50~0.99、p=0.0337)、肺がん(調整HR:0.73、95%CI:0.57~0.93、p=0.007)、膀胱がん(調整HR:0.70、95%CI:0.52~0.94、p=0.0138)のリスクが低かった。 著者らは、尋常性白斑患者のがん発症率は上昇していないことが示されたとし、同患者に対するがん検診は、一般集団に推奨されている標準的なガイドラインに従って実施すべきとまとめている。

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がん術前1ヵ月間の禁煙で合併症が減少~メタ解析

 がん手術の前に4週間禁煙した患者では、手術が近づいても喫煙していた患者よりも術後合併症が有意に少なかったことを、オーストラリア・ディーキン大学のClement Wong氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2025年3月7日号掲載の報告。 喫煙は術後合併症のよく知られた危険因子であり、喫煙する患者では合併症リスク増大の懸念から外科手術の延期を検討することもある。しかし、がん患者の手術が延期された場合、患者が禁煙している間に病勢が進行するリスクがある。今回、研究グループはがん患者の喫煙状態や禁煙期間とがん手術後の合併症との関連を調べるために、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。 Embase、CINAHL、Medline Complete、Cochrane Libraryを2000年1月1日~2023年8月10日に体系的に検索し、喫煙しているがん患者と喫煙していないがん患者の術後合併症を調査した介入研究と観察研究を抽出した。評価項目は、がんの手術前の4週間も喫煙していた患者と4週間は禁煙した患者、手術前の4週間も喫煙していた患者と生涯で一度も喫煙したことがない患者などにおける、あらゆる術後合併症のオッズ比(OR)であった。●24件のランダム化比較試験の3万9,499例が解析対象となった。肺がんは最も多く研究されたがん種であった。●手術前の4週間も喫煙していた群は、4週間は禁煙した群および生涯で一度も喫煙したことがない群と比較して、術後合併症のORが高かった。 -術前4週間も喫煙群vs.4週間は禁煙群のOR:1.31、95%信頼区間(CI):1.10~1.55、1万4,547例(17研究) -術前4週間も喫煙群vs.非喫煙群のOR:2.83、95%CI:2.06~3.88、9,726例(14研究)●手術前の2週間も喫煙していた群と、最後に喫煙したのが2週間~1ヵ月前および2週間~3ヵ月前であった群の術後合併症のORに有意な差はなかったが、点推定では禁煙期間が長いほうが有利であった。 -術前2週間も喫煙群vs.2週間~1ヵ月前に禁煙群のOR:1.20、95%CI:0.73~1.96、n=3,408(5研究) -術前2週間も喫群煙vs.2週間~3ヵ月前に禁煙群のOR:1.19、95%CI:0.89~1.59、n=5,341(10研究)●手術前の1年間に喫煙していた群の術後合併症のORは、少なくとも1年前に禁煙した群よりも高かった(OR:1.13、95%CI:1.00~1.29、3万1,238例[13研究])。 研究グループは、手術前の2週間も喫煙していた群と2週間~1ヵ月前および2週間~3ヵ月前に禁煙した群のORに有意差がなかった点について、「短い禁煙期間を比較した研究が少ないことや出版バイアスの可能性により、長い禁煙期間よりも短い禁煙期間を支持する研究が過小評価されている可能性がある」と言及したうえで、「禁煙とがんの術後合併症に関するこのシステマティックレビューおよびメタ解析では、手術の4週間前から禁煙していたがん患者は、手術が近づいても喫煙していた患者よりも術後合併症が少なかった。最適な禁煙期間を特定し、がん手術延期と病勢進行リスクとのトレードオフについての情報を臨床医に提供するためには、さらに質の高いエビデンスが必要である」とまとめた。

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EGFR陽性NSCLCへのCRT後オシメルチニブ、OSアップデート解析(LAURA)/ELCC2025

 切除不能なStageIIIのEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)において、化学放射線療法(CRT)後のオシメルチニブ地固め療法が無増悪生存期間(PFS)を大幅に改善したことが国際共同第III相無作為化比較試験「LAURA試験」で示され1)、米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得している。ただし、全生存期間(OS)の中間解析では、成熟度が20%と低く、OSの有意な改善はみられなかった(ハザード比[HR]:0.81、95%信頼区間[CI]:0.42~1.56)。そのため、OSの長期フォローアップデータの解析が待たれている。そこで、OSのアップデート解析が実施され、欧州肺がん学会(ELCC2025)で米国・エモリー大学のSuresh S. Ramalingam氏が結果を報告した。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:18歳以上(日本は20歳以上)の切除不能なStageIIIのEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性NSCLC患者のうち、CRT(同時CRTまたはsequential CRT)後に病勢進行が認められなかった患者216例・試験群(オシメルチニブ群):オシメルチニブ(80mg、1日1回)を病勢進行または許容できない毒性、中止基準への合致のいずれかが認められるまで 143例・対照群(プラセボ群):プラセボ※ 73例・評価項目:[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[主要な副次評価項目]OS、頭蓋内PFS[副次評価項目]2次治療の開始または死亡までの期間(TFST)、PFS2(2次治療開始後のPFS)、3次治療の開始または死亡までの期間(TSST)など※:BICRによる病勢進行が認められた患者は非盲検下でオシメルチニブへのクロスオーバーが許容された。 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時点(2024年11月29日)において、割り付け治療を受けている患者の割合は、オシメルチニブ群48%(69/143例)、プラセボ群5%(4/73例)であった。・アップデート解析におけるOSの成熟度は31%であり、OS中央値はオシメルチニブ群58.8ヵ月、プラセボ群54.0ヵ月であった(HR:0.67、0.40~1.14)。4年OS率はそれぞれ70%、52%であり、カプランマイヤー曲線の両群間の開きは前回の解析時より大きくなる傾向がみられた。なお、OSのアップデート解析時までに、割り付け治療中止に至ったプラセボ群の患者のうち、80%(55/69例)が2次治療として第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)による治療を受けた。・割り付け治療中止に至った患者のうち、2次治療を受けた割合はオシメルチニブ群73%(54/74例)、プラセボ群87%(60/69例)であった。2次治療の内訳はいずれの群もEGFR-TKIが最も多く、それぞれ42%、88%であった。細胞傷害性化学療法はそれぞれ27%、4%であった。・PFSに関する主解析時(データカットオフ日:2024年1月5日)におけるTFST、PFS2、TSSTの結果も報告された。・TFST中央値はオシメルチニブ群43.8ヵ月、プラセボ群9.5ヵ月であった(HR:0.13、95%CI:0.08〜0.21、名目上のp<0.001)。・PFS2中央値はオシメルチニブ群48.2ヵ月、プラセボ群47.4ヵ月であった(HR:0.62、95%CI:0.35~1.08)。・TSST中央値はオシメルチニブ群未到達、プラセボ群47.4ヵ月であった(HR:0.51、95%CI:0.28〜0.91、名目上のp=0.022)。

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「血痰は喀血」、繰り返す喀血は軽症でも精査を~喀血診療指針

 本邦初となる喀血診療に関する指針「喀血診療指針」が、2024年11月に日本呼吸器内視鏡学会の学会誌「気管支学」に全文掲載された。そこで、喀血ガイドライン作成ワーキンググループ座長の丹羽 崇氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科 医長 兼 喀血・肺循環・気管支鏡治療センター長)に、本指針の作成の背景やポイントなどを聞いた。喀血を体系的にまとめた指針は世界初 「喀血診療の現場では、長年にわたって公式な診療指針が存在せず、個々の医師が経験と知識を基に対応していたことに、大きなジレンマを感じていた」と丹羽氏は述べる。自身でカテーテル治療や内視鏡治療を行うなかで、より体系的な診療指針の必要性を実感していたところ、日本呼吸器内視鏡学会の大崎 能伸理事長(当時)より「ガイドラインを作ってみないか」と声をかけられたことから、喀血ガイドライン作成ワーキンググループが立ち上がり、作成が始まったとのことである。 「喀血という症候に焦点を当てて体系的にまとめているものは、本指針が世界で初めてである」と強調する。本指針は、日本IVR学会の協力のもとで作成されており、放射線科、呼吸器外科、呼吸器内科、救急集中治療の専門医が集まり、集学的に作成されたことから、非常に大作となっている。 なお「ガイドライン」ではなく「指針」となっている点について、「エビデンスが不足している領域が多く、Mindsのガイドライン作成方法に則った作成が困難であったことから、エキスパートオピニオンとして指針という形で作成した」と述べた。軽症喀血を「ティシューで処理可能」とするなど、わかりやすい表現に 本指針では、「血痰」や「小喀血」と表現されるものも「喀血」としている。これについては、「血痰」という表現は日本独自のものであり国際的には用いられていないこと、本指針を英文誌にも掲載して国際的なスタンダードを作成していきたい意向があることなどから、すべて「喀血」として統一したとのことである。 「本指針は専門医だけでなく、非専門医や看護師、救急相談センターの方々にも使っていただくことを想定して作成した」と丹羽氏は語る。そのため、喀血の重症度の表現を軽症喀血であれば「大さじ1杯」「ティシューで処理可能」など、わかりやすい表現としている。このような表現を用いることで「患者にわかりやすく説明可能となり、患者からの話を重症度に結びつけることができるほか、トリアージの場面などにも活用できるのではないか」と述べた。重症度の定義は以下のとおり。<重症喀血>200mL以上(コップ1杯)、または酸素飽和度90%以下<中等症喀血>15mL/日以上200mL/日未満、またはティシューで処理できない量<軽症喀血>15mL/日未満(大さじ1杯)、ティシューで処理可能 本指針では、重症度分類に入院適応と気管支動脈塞栓術(BAE)の適応をリンクさせていることも特徴である。中等症喀血であれば入院は相対適応、BAEも相対適応となっており、軽症喀血では入院については外来レベルとしているが、BAEは慎重適応とし、軽症喀血でもBAEを否定していない。肺非結核性抗酸菌症が増加 喀血というと、結核の印象を持たれる方もいるのではないだろうか。しかし、現在は肺非結核性抗酸菌症(NTM症)が増加している。喀血の原因疾患としては、肺NTM症、肺アスペルギルス症、気管支拡張症が多く、喫煙者にも多いという。本指針では、これらの疾患の概要や治療方法などと共に、喀血との関係についても記載しているため、ぜひ一読されたい。喀血患者は開業医のもとに眠っている 「喀血患者は開業医の先生方のところに多く眠っている」と丹羽氏は語る。「喀血をみたら、原因を精査していただきたい。胸部X線検査ではわからないような微細な変化で喀血を繰り返している人も多いため、喀血を繰り返す場合は、軽症であっても経過観察ではなく精査・加療の対象になると考えてほしい。軽症であってもQOLにも影響し、患者は外出が億劫になったり、お風呂に入るのを控えたりする場合もある」。 また、喀血が原因で抗血小板薬や抗凝固薬などの服用を中断しているケースも散見されるという。これについて「喀血が原因で本来必要な薬剤の服用をやめてしまわないように、BAEなども考慮してほしい。そのため、本指針では軽症喀血であってもBAEを適応なしとせず、慎重適応としている」と述べた。「開業医の先生方にこそ読んでいただきたい」 本指針は、日本呼吸器内視鏡学会の学会誌「気管支学」にフリーアクセスで全文掲載されているほか、2025年4月に書籍として発刊される予定である。書籍版には、重症度分類と治療方針に関する早見表も掲載予定とのことだ。丹羽氏は、本指針の活用法について「喀血患者は開業医の先生方のもとを訪れることが多いため、ぜひ、開業医の先生方にこそ読んでいただきたい。また、喀血患者の紹介を受ける呼吸器科の先生方にも読んでほしい。喀血の原因疾患についても詳しく記載しており、患者への説明にも役立てられると考えている。喀血治療にはカテーテル治療や内視鏡治療のオプションがあるといった気付きを得たり、手術適応の判断に活用したりするなど、本指針を1施設に1冊おいて喀血診療に役立てていただきたい」と話した。

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骨転移のある患者に対する緩和ケア【非専門医のための緩和ケアTips】第97回

骨転移のある患者に対する緩和ケア骨転移は進行がん患者ではよく経験する合併症です。痛みの原因となりますし、骨折をすると日常生活動作(ADL)が大きく低下します。緩和ケアを実践するうえで、こうした症状に適切に対応することは、とても重要です。今回の質問在宅診療で骨転移を伴うがん患者さんを担当しています。痛みがあり医療用麻薬を処方しているのですが、どの程度の動作まで許容されるでしょうか? 転倒して骨折をするのでは、と心配になってしまいます。骨転移を有するがん患者への緩和ケアの際、最も気になるのは「がん疼痛」と「骨折」ですよね。さらに、時折「高カルシウム血症」や「脊髄圧迫」といった救急性の高い病態を来すこともあります。骨転移の痛みに対するアプローチで基本となるのは「WHO方式がん疼痛治療法」1)です。ただ、骨転移の痛みの際はNSAIDsが比較的有効とされるので、腎機能などをみて許容できる際はオピオイドとNSAIDsを併用します。また、骨転移による痛みは動作など刺激による痛みや、骨の脆弱性による病的骨折が問題になります。ここが今回のご質問にも関連するところです。病的骨折とは通常では骨折をしない程度の荷重や刺激で骨折することを指し、骨転移はその一因です。皆さんも、ちょっとした転倒で骨折し、寝たきりになってしまった患者さんの経験があるかもしれません。かといって、動かずじっとしていれば、廃用が進んで寝たきりになってしまいます。ここで骨転移がある患者さんにお勧めしたいのが、「リハビリ」と「コルセットなどの福祉用具」の活用です。「転ばないよう注意しましょう」といっても、患者さんはどのように注意すればよいかわかりません。私自身、明らかな段差やサイズの合わないスリッパなどには注意を促しますが、動作の指導などは荷が重いと感じます。こうした場合は理学療法士などの専門職と連携して指導に当たります。私の勤務先やがん拠点病院などでは、骨転移患者の治療方針決定のための多職種カンファレンスが開催されています。このように骨転移はADLに大きく影響する病態のため、患者本人や家族に理解を促す必要があります。骨転移の注意点を説明し、ADLへの影響や不安について対話をすることが大切です。気掛かりがあれば、医師がすべてに対応する必要はないことを念頭に置き、看護師やケアマネジャーなど各職種に相談しましょう。最後に、骨転移のあるがん患者さんが不幸にして骨折してしまった場合、手術をすべきかどうかについて考えてみましょう。これはなかなか難しい問題で、ケースバイケースという答えにならざるを得ません。手術に耐えられるだけの体力があるかどうか、本人や家族の意向も関わってきます。骨折の部位や残された予後によっては手術はせずにベッド上で固定する、といった対応になることもあります。私の経験では、利き腕の上腕骨の骨転移部がポッキリ折れてしまった患者さんがいました。予後が3ヵ月以上見込めそうだったこともあり、本人と話し合い、整形外科医にコンサルトして手術をしました。結果的に手術をしたことで、食事を含めたADLが自身でできるまでに回復し、本人もとても喜んでいました。こうした個別判断が大切な分野であり、経験豊富な整形外科医を交えて治療方針を話し合いましょう。今回は骨転移のあるがん患者に対する緩和ケアについて考えました。多職種アプローチが大切なので、連携の在り方もぜひ考えてみてください。今回のTips今回のTips 骨転移に対する緩和ケア、多職種でアプローチしましょう。1)WHO方式がん疼痛治療法/日本緩和医療学会

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EGFR陽性NSCLC、アミバンタマブ+ラゼルチニブがOS改善(MARIPOSA)/ELCC2025

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、EGFRおよびMETを標的とする二重特異性抗体アミバンタマブと第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬ラゼルチニブの併用療法は、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」において、オシメルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善したことがすでに報告されている1)。また、世界肺がん学会(WCLC2024)で報告されたアップデート解析では、アミバンタマブ+ラゼルチニブが全生存期間(OS)を改善する傾向(ハザード比[HR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.61~0.96、名目上のp値=0.019)にあったことが示され、OSの最終解析結果の報告が待たれていた。欧州肺がん学会(ELCC2025)において、OSの最終解析結果が国立台湾大学のJames Chih-Hsin Yang氏により発表され、アミバンタマブ+ラゼルチニブが有意にOSを改善したことが示された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性の進行・転移NSCLC患者・試験群1(ami+laz群):アミバンタマブ(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の1サイクル目は週1回、2サイクル目以降は隔週)+ラゼルチニブ(240mg、1日1回) 429例・試験群2(laz群)ラゼルチニブ(240mg、1日1回) 216例・対照群(osi群):オシメルチニブ(80mg、1日1回) 429例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づくPFS[主要な副次評価項目]OS[副次評価項目]奏効率(ORR)、頭蓋内PFS、症状進行までの期間(TTSP)など 今回はami+laz群とosi群の比較結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・治療中止はami+laz群62%(260/421例)、osi群72%(310/428例)に認められ、病勢進行による治療中止はそれぞれ33%(140/421例)、55%(234/428例)であった。・OS最終解析(追跡期間中央値37.8ヵ月)時点におけるOS中央値はami+laz群が未到達、osi群が36.7ヵ月であり、ami+laz群が有意に改善した(HR:0.75、95%CI:0.61~0.92、p<0.005)。3年OS率はそれぞれ60%、51%であり、42ヵ月OS率はそれぞれ56%、44%であった。・OSのサブグループ解析では、ほとんどのサブグループでami+laz群が優位であった。65歳以上の集団のみosi群が優位な傾向にあった(HR:1.11、95%CI:0.84~1.48)。・頭蓋内PFS中央値はami+laz群が25.4ヵ月、osi群が22.2ヵ月であった(HR:0.79、95%CI:0.61~1.02、p=0.07)。3年頭蓋内PFS率はそれぞれ36%、18%であった。・頭蓋内ORRはami+laz群が78%、osi群が77%であり、頭蓋内奏効期間中央値はそれぞれ35.7ヵ月、29.6ヵ月であった。・TTSP中央値はami+laz群が43.6ヵ月、osi群が29.3ヵ月であり、ami+laz群が改善した(HR:0.69、95%CI:0.57~0.83、p<0.001)。・病勢進行後に2次治療を受けた患者の割合はami+laz群が74%、osi群が76%であり、2次治療の内訳は化学療法ベースの治療がそれぞれ56%、67%で、チロシンキナーゼ阻害薬ベースの治療がそれぞれ39%、28%であった。・割り付け治療継続期間中央値はami+laz群が27.0ヵ月、osi群が22.4ヵ月であった。・安全性プロファイルは主解析時と一貫しており、主解析時から5%以上増加した有害事象はなかった。有害事象の多くは治療開始から4ヵ月以内に発現した。・ベースライン時に抗凝固薬を使用していたのは5%であり、ami+laz群では40%に静脈血栓塞栓症が発現した(osi群は11%)。 なお、本試験の結果に基づき、Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2025年3月27日に、アミバンタマブとラゼルチニブの併用療法について「EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を適応として、厚生労働省より承認を取得したことを発表している。

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限局型小細胞肺がん、CRT後のデュルバルマブ承認/AZ

 アストラゼネカは2025年3月27日、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)について「限局型小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法」の適応で、厚生労働省より承認を取得したことを発表した。根治的化学放射線療法(CRT)後に病勢進行が認められない限局型小細胞肺がん(LD-SCLC)を対象とした免疫療法では、本邦初の承認となる。 本承認は、LD-SCLC患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「ADRIATIC試験」の結果1)に基づくものである。本試験において、デュルバルマブ群はプラセボ群と比較して有意に死亡リスクが低下し(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.57~0.93、p=0.0104)、全生存期間(OS)中央値はデュルバルマブ群55.9ヵ月、プラセボ群33.4ヵ月であった。3年OS率はそれぞれ57%、48%と推定された。 また、デュルバルマブ群はプラセボ群と比較して有意に無増悪生存期間(PFS)も改善し(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95、p=0.0161)、PFS中央値はデュルバルマブ群16.6ヵ月、プラセボ群9.2ヵ月であった。2年PFS率はそれぞれ46%、34%と推定された。<今回追加された「効能又は効果」「用法及び用量」>・効能又は効果限局型小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法・用法及び用量〈限局型小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法〉通常、成人にはデュルバルマブ(遺伝子組換え)として、1回1,500mgを4週間間隔で60分間以上かけて点滴静注する。投与期間は24ヵ月間までとする。ただし、体重30kg以下の場合の1回投与量は20mg/kg(体重)とする。

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家庭内空気汚染の疾病負担、1990~2021年の状況は?/Lancet

 世界的には家屋内で固形燃料(石炭・木炭、木材、作物残渣、糞)を用いて調理をする家庭は減少しており、家庭内空気汚染(household air pollution:HAP)に起因する疾病負担は大幅に減少しているものの、HAPは依然として主要な健康リスクであり、とくにサハラ以南のアフリカと南アジアでは深刻であることが、米国・ワシントン大学のKatrin Burkart氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2021 HAP Collaboratorsの解析で示された。著者は、「本研究で得られたHAPへの曝露と疾病負担に関する推定値は、医療政策立案者らが保健介入を計画・実施するための信頼性の高い情報源となる。多くの地域や国でHAPが依然として深刻な影響を及ぼしている現状を踏まえると、資源の乏しい地域で、よりクリーンな家庭用エネルギーへ移行させる取り組みを加速させることが急務である。このような取り組みは、健康リスクの軽減と持続可能な発展を促進し、最終的には何百万もの人々の生活の質と健康状態の改善に寄与することが期待される」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年3月18日号掲載の報告。1990~2021年の204の国と地域のデータを解析 研究グループは、1990~2021年の204の国と地域におけるHAPへの曝露と傾向、ならびに白内障、慢性閉塞性肺疾患、虚血性心疾患、下気道感染症、気管がん、気管支がん、肺がん、脳卒中、2型糖尿病および生殖に関する有害なアウトカムの媒介要因に関する疾病負担を推定した。 まず、調理に固形燃料を使用する人が曝露する微小粒子状物質(PM2.5)の燃料種別平均濃度(μg/m3)を、燃料種、地域、暦年、年齢および性別ごとに推定した。次に、疫学研究のシステマティック・レビューと、新たに開発されたメタ回帰ツールを用いて、疾患特異的ノンパラメトリック曝露反応曲線を作成し、PM2.5濃度の相対リスクを推定した。 また、曝露推定値と相対リスクを統合し、性別、年齢、場所、暦年ごとの原因別の人口寄与割合と疾病負担を推定した。HAP起因の疾病負担は減少、ただしサハラ以南アフリカと南アジアでは高リスク 2021年には、世界人口の33.8%(95%不確実性区間[UI]:33.2~34.3)にあたる26億7,000万人(95%UI:26億3,000万~27億1,000万)が、あらゆる発生源からのHAPに曝露しており、平均濃度は84.2μg/m3であった。これは、1990年にHAPに曝露した世界人口の割合(56.7%、95%UI:56.4~57.1)と比較すると顕著に減少しているが、絶対値でみると、1990年のHAP曝露者30億2,000万人から3億5,000万人(10%)の減少にとどまった。 2021年には、HAPに起因する世界の障害調整生存年(DALY)は1億1,100万(95%UI:7,510万~1億6,400万)であり、全DALYの3.9%(95%UI:2.6~5.7)を占めた。 2021年のHAPに起因する世界のDALY率は、年齢標準化DALYで人口10万人当たり1,500.3(95%UI:1,028.4~2,195.6)で、1990年の4,147.7(3,101.4~5,104.6)から63.8%減少した。 HAP起因の疾病負担は、サハラ以南のアフリカと南アジアで依然として最も高く、それぞれ人口10万人当たりの年齢標準化DALYは4,044.1(95%UI:3,103.4~5,219.7)と3,213.5(2,165.4~4,409.4)であった。HAP起因DALY率は、男性(1,530.5、95%UI:1,023.4~2,263.6)のほうが女性(1,318.5、866.1~1,977.2)よりも高かった。 HAP起因の疾病負担の約3分の1(518.1、95%UI:410.1~641.7)は、妊娠期間の短縮と低出生体重が媒介要因であった。 HAP起因の疾病負担の変化の傾向と要因分析の結果、世界のほとんどの地域で曝露の減少がみられたが、とくにサハラ以南のアフリカでは曝露の減少が人口増加によって相殺されていたことが示された。

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細胞免疫療法~CAR T-cell・T-cell engager~の進歩と今後の展望/日本臨床腫瘍学会

 手術療法、抗がん剤療法、放射線療法に続くがん治療の第4の柱として、細胞免疫療法が国内外で徐々に広がりつつある。とくに、最近は通常の免疫機能などでは治癒が困難な難治性のがんに対する治療法として、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法やT細胞誘導抗体(T-cell engager:TCE)が、一部の血液がんに対する効果的な治療法として期待されている。 2025年3月6~8日に開催された第22回日本臨床腫瘍学会学術集会では、日本血液学会と日本臨床腫瘍学会の合同シンポジウムが開催され、細胞免疫療法の現状や課題、今後の展望などについて議論が交わされた。CAR-T細胞療法に残された課題に挑む CAR-T細胞療法は細胞免疫療法の1つとして、とくに一部の血液がんに対して高い治療効果を発揮している。一方で、CAR-T細胞療法にはサイトカイン放出症候群(CRS)や神経毒性のような有害事象、再発率の高さ、固形がんに対する限定的な効果、さらには高額な製造コストなどが解決すべき課題として残されている。 このような背景の中で、玉田 耕治氏(山口大学大学院医学系研究科 免疫学講座)らの研究グループは、固形がんに対する高い効果が期待できる次世代(第4世代)のCAR-T細胞の開発に取り組んでいる。固形がんに対してCAR-T細胞療法が効果を発揮するためには、腫瘍部分でのCAR-T細胞の集積と増殖が必要となる。玉田氏らは、免疫機能を調整する能力をCAR-T細胞に追加することでこの問題が解決できると考え、T細胞の生存や増殖を刺激するサイトカインであるIL-7とT細胞や樹状細胞の遊走や集積を促進するケモカインであるCCL19を同時に産生する7×19 CAR-T細胞を開発し、これをPRIME(Proliferation-inducing and migration-enhancing)CAR-T細胞と名付けた。マウスモデルを用いた研究により、7×19 CAR-T細胞は、内因性腫瘍抗原に対するエピトープ拡散を誘導することで、強力な抗がん効果を発揮することが証明された。また、がん患者の末梢血単核球細胞(PBMC)由来の7×19 CAR-T細胞の抗腫瘍効果なども確認されている。これらのことから、「PRIME CAR-T細胞は固形がんに対する画期的ながん治療法となることが期待され、近い将来、固形がんに対するCAR-T細胞の臨床研究が日本で実施される可能性がある」と玉田氏は述べた。 一方で、CAR-T細胞療法には高い製造コストがかかり、1回の投与で数千万円という高額な治療費を要することが大きな課題となり、とくに開発途上国においては治療の実現を拒む主な要因となっている。そこで、高橋 義行氏(名古屋大学大学院医学系研究科 小児科学)らの研究グループは、製造コストを下げるために独自で安価なCAR-T細胞の製造法を開発した。従来、CAR-T細胞はウイルスベクターを用いた遺伝子を導入する方法で製造されてきたが、高橋氏らは非ウイルスベクターによるpiggyBacトランスポゾン法を用いてCAR-T細胞の培養を行うことに成功した。本法は酵素べクター法の1つで、ウイルスベクターを用いた方法に比べて製造方法が簡便かつ安価であり、ウイルスベクターを用いた従来の方法と同様の治療効果が期待できるという。 そして、高橋氏らは再発または難治性のCD19陽性急性リンパ性白血病患者を対象に、piggyBacトランスポゾン法にて製造したCD19標的CAR-T細胞療法の第I相試験を実施している。CD19標的CAR-T細胞1×105/kgを1回投与するコホート1(16~60歳、3例)とコホート2(1~15歳、3例)、3×105/kgの1回投与に増量するコホート3(1~60歳、3例)において、投与後28日時点で全例に完全奏効(CR)が認められ、2例が再発した。なお、本剤を投与した全例の末梢血で、piggyBac CAR-T細胞の増殖が観察されていた。 さらに、高橋氏らはタイのチュラロンコン大学からの要請を受けてCAR-T細胞療法の臨床研究を支援している。同氏らと同じ方法で製造されたCD19標的CAR-T細胞療法を受けたタイの悪性リンパ腫患者5例の全例で効果が確認され、その中の1人は投与後1ヵ月で多発していた腫瘍が消失し、1年後には寛解となっていた。 これまでの成果を踏まえ、高橋氏は、「安価な製造コストを実現することで、世界中でCAR-T細胞療法が普及することが期待される。また、日本の知的財産を活用した純日本製のCAR-T製剤が承認されれば、日本の医療費削減にもつながるのではないか」と結論した。iPS細胞技術を用いた若返りT細胞療法の開発 これまで、難治性のエプスタイン・バー(EB)ウイルス関連リンパ腫に対して、末梢血由来細胞傷害性T細胞(CTL)を体外で増殖して再び体内に戻すCTL療法が試みられてきたが、治療効果は十分ではなかった。これは、CTLが標的抗原に持続的に曝露されると疲弊してしまうためで、この問題を解決するために安藤 美樹氏(順天堂大学大学院医学研究科 血液内科学)らの研究グループは、iPS細胞技術を用いることで疲弊したT細胞を若返らせる技術を開発した。EBウイルス抗原特異的CTLからT細胞由来のiPS細胞を作製し、再びCTLに分化誘導することで若返ったCTL(rejT)となり、rejTはEBウイルス感染腫瘍を縮小することなどが確認された。さらに、EBウイルス抗原のLMP2に対するrejTをマウスに投与すると、EBウイルス関連リンパ腫に対する強い抗腫瘍効果を示しながら末梢血でセントラルメモリーT細胞として存在することが確認され、LMP2-rejTは生体内でメモリーT細胞として長期間生存することで難治性リンパ腫の再発抑制効果を維持することが示唆された。 また、安藤氏らはCARによる抗原認識とT細胞受容体(TCR)による抗原認識の両者を兼ね備え、2つの異なる受容体により効率よく腫瘍を攻撃するiPS細胞由来2抗原受容体T細胞(DRrejT)を作製した。マウスモデルによる検討では、DRrejTはEBウイルス関連リンパ腫に対して、単一標的のrejTやCARに比べて抗腫瘍効果は高く、効果が長期間持続することが示された。 加えて、小細胞肺がん(SCLC)にGD2が高発現していることに着目して、iPS細胞から分化誘導したCTL(rejT)にGD2標的CARを導入する方法でGD2-CARrejTを作製すると、SCLC対する強い抗腫瘍効果を示すとともに、末梢血由来のGD2-CAR-Tよりも有意に生存期間を延長した。 さらに、同様の方法でiPS細胞からヒトパピローマウイルス特異的rejT(HPV rejT)を誘導したところ、末梢血由来HPV CTLと比較して子宮頸がんをより強く抑制していた。しかし、患者由来のCTL作製は時間とコストがかかり実用化は難しく、他家iPS細胞を用いた場合は免疫拒絶反応などが問題となる。そこで、安藤氏らはCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いてHLAクラスIを編集した健常人由来のHPV rejTを作製したところ、免疫拒絶反応を抑えながら子宮頸がんを強力に抑制し、長期間の生存期間延長効果も認められた。このような結果を踏まえ、現在、HLAクラスIを編集したHPV rejTの安全性を評価する医師主導第I相試験が進行しているという。 安藤氏は、「iPS細胞技術を活用することで、迅速かつ何度でも十分量のDRrejTを作ることが可能で、“Off-the-shelf”療法として大いに期待できる」と締めくくった。固形がんに対する細胞免疫療法の臨床開発状況と展望 固形がんに対する細胞免疫療法としては、CAR-T細胞療法、CAR-NK細胞療法、CARマクロファージ(CAR-M)療法、TCR-T細胞療法など、数多くの臨床試験が実施されているが、日本で承認されている治療法はまだ存在しない。 CAR-T細胞療法は、CD3ζ単独のCARが第1世代、CD3ζに副刺激分子のCD28や4-1BBを1つ足したものが第2世代、2つ足したものが第3世代と呼ばれ、とくに2010年に登場した第2世代以降のCAR-T細胞療法は、B細胞性白血病/リンパ腫に高い有効性を示してきた。さらに、サイトカイン分子によりT細胞の活性化シグナルを増強させるように設計された第4世代のCAR-T細胞療法の開発が進んでいる。 固形がんに対するCAR-T細胞療法の開発の問題点として、北野 滋久氏(がん研究会 有明病院)は、免疫抑制性の環境が形成される腫瘍微小循環(TME)による有効性と持続性の低下、高いCRSのリスク、on-target/off-tumor 毒性(OTOT)、抗体薬物複合体(ADC)やTCEとの競合などを挙げる。現在、これらの問題を解決するためにさまざまな技術開発が進められており、その一例として、第4世代のCAR-T細胞療法によるTMEの調整、CRSを回避するための抗IL-6受容体抗体や免疫抑制薬の予防的投与の研究、主要組織適合性複合体(MHC)/ペプチド複合体の標的化や三重特異性抗体などによるOTOTへの対応のような研究が進行しているという。 また、CAR-T細胞療法に続く有望な細胞免疫療法として、北野氏はTCR-T細胞療法にも注目している。TCR-T細胞療法は、患者からリンパ球を採取し、がん抗原特異的なTCRをT細胞に導入して再び患者に輸注する治療法で、がん関連抗原であるNY-ESO-1を標的とした高親和性TCRを用いた滑膜肉腫患者を対象とした第I/II相試験では、有効な成績が示されていた。CAR-T細胞療法は細胞表面の抗原を標的とするのに対して、TCR-T細胞療法の標的は細胞内タンパク質と糖鎖であり、最近ではネオアンチゲンを対象としたTCR-T細胞療法の開発も進められている。リンパ系腫瘍に対する細胞免疫療法(CAR-T、BiTE)の現状と今後の展望 CAR-Tと二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を用いた細胞免疫療法は、B細胞リンパ腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病、多発性骨髄腫など、さまざまな種類のリンパ系悪性腫瘍の治療に用いられている。大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)を例にとると、CD19を標的としたCAR-T細胞療法やCD20とCD3を標的としたBiTE抗体療法が臨床使用されている。 LBCLに対するCAR-T細胞療法としては、tisa-cel、axi-cel、liso-celがそれぞれの臨床試験の結果を基に3rdライン以降の治療薬として最初に承認された。その後、初回治療に対する治療抵抗例や、初回治療による寛解後1年以内の再発例を対象にした臨床試験において、標準治療(化学療法+自家移植)を上回るCAR-T細胞療法の有効性が示されたことを受け、axi-celとliso-celは2ndラインでの使用も認められることとなった。このような現状を踏まえ、伊豆津 宏二氏(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科)はCAR-T細胞療法について、「再発または難治性のLBCL患者の治療にパラダイムシフトをもたらした」と述べた。さらに、今後は高リスクなLBCL患者に対する1stラインでの使用や、ほかのサブタイプによるCAR-T細胞療法の開発などが期待されるという。 加えて、伊豆津氏はCD20とCD3を標的としたBiTE抗体療法について、LBCLに対する2ndラインの有用性について検討した臨床成績、さらには現在進行中の1stラインにおける有用性を評価する臨床試験の概要についても言及した。 最後に、CAR-T細胞療法やBiTE抗体療法のようなT細胞リダイレクト療法には、有効性の長期持続が困難、抗原回避や耐性、CRSなどの有害事象、長い製造時間、高額な製造コスト、最適な治療順序の決定など、解決すべき課題が多く残されていることを伊豆津氏は指摘し、講演を締めくくった。

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高齢NSCLCへのICI、2次治療への移行率と治療成績(NEJ057)/日本臨床腫瘍学会

 高齢の非小細胞肺がん(NSCLC)患者における免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療後の2次治療への移行率や、2次治療の有効性に関する報告は乏しい。そこで、75歳以上の進行・再発NSCLC患者を対象とした後ろ向きコホート研究(NEJ057)1)において、ICIによる治療後の2次治療への移行率および2次治療の治療成績が検討された。山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター)が、第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で本結果を報告した。・試験デザイン:多施設(58施設)後ろ向きコホート研究・対象:未治療の75歳以上の進行・再発NSCLC患者のうち、ICI+化学療法、ICI単剤、プラチナダブレット、単剤化学療法のいずれかで2018年12月~2021年3月に治療を開始した患者(初回治療に分子標的薬を使用した患者とEGFR遺伝子変異ALK融合遺伝子を有する患者は除外)・評価項目:全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、安全性など 今回は、ICI+化学療法またはICI単剤で治療を開始したNSCLC患者を対象として解析された。主な結果は以下のとおり。・解析対象患者(779例)の内訳は、ICI+化学療法群354例、ICI単剤群425例であった。・全身状態はICI+化学療法群のほうが良好な傾向にあった。ECOG PS0/1/2以上/不明の例数は、ICI+化学療法群が137/199/17/1例、ICI単剤群が100/223/102/0例であった。・PD-L1発現はICI単剤群のほうが高発現の傾向にあった。PD-L1 1%未満/1~49%/50%以上/不明の例数は、ICI+化学療法群が111/129/75/39例、ICI単剤群が12/111/297/5例であった。・データカットオフ時点(2021年12月31日)において、病勢進行はICI+化学療法群82%、ICI単剤群77%に認められ、Best Supportive Care(BSC)以外の2次治療への移行率はそれぞれ39.3%、23.8%であった。各群の2次治療の内訳は以下のとおり。-プラチナ併用化学療法:5%、13%-単剤化学療法:39%、16%-ICI単剤:3%、1%-その他:1%未満、1%未満-BSC:52%、69%・2次治療のレジメンは、ICI+化学療法群ではドセタキセル(52例)、S-1(32例)、ドセタキセル+ラムシルマブ(23例)が多く、ICI単剤群ではS-1(21例)、カルボプラチン+ペメトレキセド(18例)、カルボプラチン+nab-パクリタキセル(18例)が多かった。・2次治療のPFS中央値、奏効割合は以下のとおり。 <ICI+化学療法群> プラチナ併用化学療法:2.5ヵ月、13% 単剤化学療法:3.7ヵ月、11% <ICI単剤群> プラチナ併用化学療法:5.3ヵ月、26% 単剤化学療法:3.7ヵ月、13%

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在宅患者がやってきた【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第4回

在宅患者がやってきたPoint在宅患者は、外来に通院できない事情がある。外来患者よりもより医療を必要としている人達だ!在宅患者・家族は、最期まで在宅生活を送れないさまざまな事情も抱えている。患者・家族をはじめ在宅チームは、急変時に病院バックベッドの存在があるから、在宅で頑張れる!在宅医療の普及で、患者・家族、医療者もWin-Winに!症例88歳女性。肝内胆管がん、多発肝転移、リンパ節転移、骨転移あり。消化器科主治医からは「いつでも調子が悪くなったら病院に戻ってきていいよ」と言われたうえで、A病院からB診療所に紹介され、訪問診療が開始された。高齢の夫と長男の妻の3人暮らし。キーパーソンの長男は海外に単身赴任中。嫁に行った長女はよく顔を見にきてくれる。疼痛コントロールも良好であった。訪問診療開始1ヵ月後、長男の妻より「今朝から左手の力が入らない、移動も困難になっている」とB診療所に電話あり。トルーソー症候群(悪性腫瘍の凝固能亢進による脳梗塞)の可能性ありと判断された。在宅医は「今回脳梗塞が疑われるが、原病に伴うものであるため、在宅での継続加療も可能」と長男の妻に話したが、長男の妻の強い希望で、A病院に救急紹介された。A病院では頭部CT、頭部MRIが施行され、左右多発脳梗塞(トルーソー症候群)と診断された。長男の妻は仕事と介護で疲れもピークに達しており、「入院させてほしい」と強い希望があった。救急では入院主治医決定に難航した。原疾患の消化器内科か、脳梗塞の神経内科か。“大人の事情”の協議の末、今回は神経内科で入院加療となった。「最期まで在宅でと決まってなかったの? どうして救急に送ってくるんでしょうね」と救急当番の研修医はボソッと心なくつぶやいてしまった。「『これって在宅医が悪いの?』、『患者・家族が悪いの?』って、そんな視点をもつ医者はロクな医者にならないぞ」と指導医に叱られた。「『病気をみずして人をみろ』が実践できたら、入院主治医決定に迷うことはないんだけどね」と、悲しそうに指導医はつぶやいた。おさえておきたい基本のアプローチどんな患者さん達が在宅医療を受けているのだろうか?在宅患者の85%以上は要介護状態にあり、要介護1~5の患者がそれぞれ10~20%ずつ存在する。在宅患者の基礎疾患は多様であり、とくに循環器疾患・認知症・脳血管疾患を抱える患者の割合が大きい(図1)1)。治癒が期待できない患者(末期悪性腫瘍や人工呼吸器を使用している患者、遺伝性疾患や神経筋難病など)は約15%を占める。図1 疾患別の患者割合在宅医療を受けている患者達は、表1のような状況で、ぎりぎりで在宅生活を送っている実情を理解しておこう。病院に紹介されて疾患だけ治して、家にポイッと帰すだけでは、よい医療の質は保たれないのだ。「病気をみずして、人をみよ」とまさしく体現しているのだ。表1 在宅医療利用患者の生活背景事情独居老々介護在宅介護困難で、施設(グループホーム、老人ホームなど)に入所中家族は働いており、昼間の介護者不在で、ほぼ毎日デイサービス利用している上記などの理由で特養などの施設へ入所したいが、空き待ちの間、在宅医療を受けている一方、患者は在宅療養を受けたくてもなかなかそれができないのが現状なんだ。図2のように、在宅療養移行や継続の阻害要因と、在宅医療推進にあたっての課題が、厚生労働省からもあげられている2)。24時間の在宅医療提供体制や、在宅医療・介護サービス供給量の拡充だけでなく、在宅療養者のバックベッドの確保・整備や、介護する家族支援は欠かせないことが、理解できるだろう。疾病をもつ患者の生活も支えていくことは、医療全体の医療費負担の軽減にもつながるんだ。図2 在宅療養移行・継続阻害要因と在宅医療推進の課題画像を拡大するそんな状況でようやく在宅療養が受けられたが、在宅療養が継続できなくなって病院に紹介されてくるときに、「あ~、ダメだ。病院にお世話にならないといけなくなってしまったぁぁぁ」という患者・家族の思いや在宅医の忸怩たる思いを慮って、病院の受け入れ側医師は優しく温かく良医としての矜持をもって受け入れてほしい。在宅医療を選択することは、在宅で必ずしも死を選択しているわけではなく、まだ準備ができていない患者・家族もいる、在宅で死を迎えたいと思っていても気が変わる場合もある、そんな多様性を病院の受け入れ医師は知っておかないといけない。落ちてはいけない・落ちたくないPitfallsまず、在宅患者は、外来に通えないという前提があることを理解しよう!訪問診療の対象にある患者は、外来通院できない患者に絞られることをまず前提として理解いただきたい。外来診療に通えない人とは、疾患の重症度が高く、多疾患併存状態も多く、通えない事情として身体的要因だけでなく社会的要因も考慮しなければならないだろう。実際に、高齢者を対象として在宅医療の有無の観点から入院患者の特徴と救急車搬送により入院となる割合の違いを明らかにすることを目的とした研究がある3)。在宅医療がある症例はない症例と比較して認知症やがんなど併存症を伴う割合や低栄養および低ADL患者である割合が高く、在院日数の長期化がみられ、介護施設へ転院となる割合が高かった。また、がんをはじめ多くの主傷病において救急車搬入により入院となる割合が高かった。この研究結果を踏まえて、外来患者よりも在宅患者のほうが救急車搬入による入院が多い実態を肝に銘じていただき、患者にも家族にも優しい対応をお願いしたい。米国では、高齢者を対象に在宅医療サービスを開始したところ、登録前の1年間と登録後で同じ患者で比較して、ERの訪問が約30%、入院が10%減少したという報告もある4)。やはり在宅医療は患者・家族、医療者にとって、Win-Winな制度と考えられるだろう。Pointなぜ在宅医療を受けているのか? という理由をまず考えてみよう!急激なADLの低下出現…在宅生活本当に続けられる!?冒頭の症例の患者は末期がんの状態であり、ADLの低下は予想されていた。しかし脳梗塞による急激なADL低下に、主介護者である長男の妻より、在宅加療継続は難しいとのお話があり、入院加療となった。長男の妻は仕事で日中介護できず、在宅生活も1ヵ月近くなっており介護疲れもあった。入院後にもカンファレンスを行い、元々入っていた訪問看護以外に訪問介護導入も可能とお話したが、実母を看取った経験も踏まえて、在宅加療を継続する自信がないとのことだった。本人の気持ちも確認したが、このまま入院でよいとのお話であった(長男の妻によると、ご本人は周囲の状況を察してあまりわがままは言えない性格とのことだった)。キーパーソンの息子も帰国したが、入院加療を続けてほしいとのお話であり、転院調整中にA病院でお亡くなりになった。在宅医療は病気だけをみていたのでは始まらない。生活背景や心理的背景も考慮して、家族も支えていかないといけない。無理矢理在宅を継続することで、長男の妻が精神的にも肉体的にも追い詰められて、本当に体を壊してもいけないのだ。また海外駐在の息子さんがいるというのも、権利意識やインフォームド・コンセントにも気を遣い、診療方針決定に大きく影響を受け、そういうことまで配慮してこそ在宅医療はうまくいくのだ。高齢者は、疾病でも外傷でも容易にADLが低下する。疾病の重症度だけで帰宅可能と判断しても、実際は帰宅後の介護負担が増加して、より危険にさらされる状況になってしまうことは珍しくない。尿路感染だけ診断して安易に帰宅させた老々介護の高齢女性が、自宅で転倒し大腿骨近位部骨折を併発して、救急車で舞い戻ってきたという事例もある。ときには患者家族と救急担当医の間で患者の押し付け合いのような現象が生じる。しかし、無理に帰宅させて病状が悪化するのでは、判断が甘いといわざるを得ない。帰宅後に病態の見落としが判明する場合もある。在宅医療を受けている患者の入院・帰宅の判断の際には、帰宅後の介護負担を十分に考慮し、メディカルソーシャルワーカーなどを通じて、ケアマネジャーや在宅主治医などと連携して、帰宅後の介護や医療提供を考慮するように心がけたい5)。Point継続しておうちで過ごせそうでしょうか? ケアマネ・在宅主治医にも相談してみましょう在宅患者・家族みんなが、最期まで在宅と考えているわけではない前述の患者も、最期まで在宅と決めて、訪問診療を開始したわけではない。退院の際に病院主治医から「困ったときは入院も考慮します」と話があり、その言葉が、患者・家族・在宅チームの安心につながっていた。在宅医療を含む自宅療養を受ける際にその患者や家族が抱える問題意識として、症状急変時の対応に不安があること、症状急変時すぐに入院できるか不安があることが、図2に示されている。他のケースでも、最期は病院でと病院主治医と約束し、在宅医療開始になった患者がいる。1人は肺がん末期で、呼吸苦や疼痛はオピオイド増量でコントロールしていたが、急激に呼吸状態が悪化し、訪問看護が呼ばれ、訪問看護からの連絡で往診のうえ、家族の希望も踏まえて紹介元の病院に紹介したが、24時間以内に亡くなった。もう1人は、肝細胞がん末期、胸水腹水貯留で、腹水除去などを在宅で行っていたが、深夜呼吸苦が増悪し、在宅酸素導入したが、家族が病院紹介を希望され、この方も24時間以内に亡くなった。結構ぎりぎり最期(死ぬ直前)まで患者も家族も在宅で頑張っているんだ。「だったら最期くらい家で看取ればいいのに」なんて冷たい言い方をしてはいけない。最後の最後につらそうにしている患者を家族が在宅で看ていられなくなってしまう気持ちもわかってあげよう。家族は医療者ではなく素人であり、死に対する免疫はないのだから。オンタリオの研究では、家で看取ると思っていても、最後は不安になって16%の人は救急車を呼ぶという6)。ぎりぎりまで在宅で患者に寄り添った家族にやさしい言葉をかけられる医療者こそ、心の通った医療者なんだ。Point病院主治医に、困ったらおいでと言われていたのですね。よくここまでおうちで頑張りましたね在宅看取りのはずなのに、どうして救急搬送してしまうのか?在宅看取りを希望していても、心配で在宅主治医や訪問看護師を呼ぶ前に119番通報してしまう家族もいるものと理解しよう。気が変わるのは仕方のないこと。むしろ絶対に気が変わったらダメなんて言ったら、在宅医療は推進できない。蘇生処置を行わない意思表示(DNAR:Do Not Attempt Resuscitation)のある終末期がん患者の臨死時に救急車要請となる理由を救急救命士への半構造的面接により検討した研究論文7)では、(1)DNARに関する社会的整備が未確立(臨死時救急車以外病院搬送手段がないなど)(2)救急車の役割に対する認識不足(蘇生処置をせずに救急搬送が可能という認識の住民や医師がいるなど)(3)看取りのための医療支援が不十分(4)介護施設での看取り体制が不十分(5)救急隊に頼れば何とかなるという認識(何かあったときは119番という住民感情があるなど)(6)在宅死を避けたい家族の思い(家族が在宅死に対する地域社会の反応を気にするなど)(7)家族の動揺(DNARの意思が揺らぐ家族など)といった7つの理由が明らかになったとしている。Pointとっさに、救急車を呼んでしまったのですね。最期にこんなにバタバタするとは想像しなかったですよね。状態が悪いのを見ているのはつらいので、無理もないですよワンポイントレッスン在宅側からの取り組み─在宅看取りの文化の醸成に向けて─在宅医療を受けていても、救急車を呼び、今まで関係のなかった病院に搬送されると、死亡判定後、警察が来て検死が始まる。警察が事情を聴きに家まで来てしまうのだ。「まさか警察が来て事情聴取を受けるなんてぇ…」と、思いがけない最期に憤りや後悔をあらわにする家族もいる。家族に後悔が残らないようにするための在宅側からの取り組みを紹介する。在宅医療を地域住民に啓発しよう2014年厚生労働省より全国1,741市町村別に在宅死の割合が発表されたが、全国平均12.8%に対し、筆者のクリニックがある永平寺町は6.7%であり、福井県下でも最下位だった。永平寺町内には福井大学医学部附属病院がそびえたち、町民の生活風景のなかに大学病院があることで、何かあれば大学病院に行けばよいとの住民感情もあっただろう。大学病院なのに町立病院のような親近感をもたれているといえばそのとおりなんだけど…。そんな状況を受け、2019年8月1日に永平寺町立在宅訪問診療所(24時間体制の在宅支援診療所)が設立された。開設の約1年前から町の福祉保健課、地域包括支援センターとともに永平寺町民に向けて、在宅医療についての説明会を約2年間にわたって計70回行い、在宅医療が何なのかの啓発活動に専念した。最期がイメージしやすいパンフレットを作成がんの末期で病院から紹介いただく患者でも、最期に向けてどのような経過を辿っていくのかイメージできず、強い不安を感じている患者・家族がほとんどだ。そこで当院ではパンフレットを作成し、タイミングをみて、パンフレットを用いながら、今後の変化について、説明している(図3)。図3 最期をイメージするためのパンフレット緩和ケア普及のための地域プロジェクトがフリーで提供している「これからの過ごし方」というパンフレットも大変参考になる8)。ほかにも、疼痛などの評価ツールなども掲載されているので、ぜひ参考にされたい(緩和ケア普及のための地域プロジェクト)。救急車を呼んでしまうと、その先には!?最期のときに焦って救急車を呼んでしまうと、救命のために心臓マッサージや気管挿管が行われ、病院で最期を迎えた場合は、警察による検死も行われることもあるとパンフレットや口頭でお伝えしている。119番をコールする前に、訪問看護か在宅医にコールを! ということで、24時間連絡可能な連絡先が記載された用紙をお渡しし、家の目立つところに掲示してもらっている。最期に呼ぶのはあわてない、あわてない…最期が近いと予測されている場合、また真夜中などにおうちで息を引き取った場合、あわてずに翌朝、当方に連絡してもらえればよいこともお伝えしている。息を引き取る瞬間にご家族や医療者がもし立ち会えなかったとしても、在宅主治医が死後24時間以内に往診し診察すれば、死亡診断書が書けるのだ。家族も夜はなるべく休んでいただくよう説明している。参考1)厚生労働省. 在宅患者の状況等に関するデータ.2)厚生労働省. 在宅医療の動向.3)たら澤邦男 ほか. 日本医療マネジメント学会雑誌. 2020;21:70-78.4)De Jonge E, Taler G. Caring. 2002;21:26-29.5)太田凡. 日本老年医学会雑誌. 2011;48:317-321.6)Kearney A, et al. Healthc Q. 2010;13:93-100.7)鈴木幸恵. 日本プライマリ・ケア連合学会誌. 2015;38:121-126.8)緩和ケア普及のための地域プロジェクト(厚生労働科学研究 がん対策のための戦略研究). これからの過ごし方について.執筆

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二重特異性抗体ivonescimab、PD-L1陽性未治療進行NSCLCのPFS延長/Lancet

 未治療のPD-L1陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、PD-1と血管内皮増殖因子(VEGF)に対する二重特異性抗体であるivonescimabはペムブロリズマブと比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが示された。中国・同済大学のAnwen Xiong氏らが、中国の55施設で実施した第III相無作為化二重盲検比較試験「HARMONi-2試験」の結果を報告した。ivonescimabは、初期の第Ib相試験でPD-L1陽性進行NSCLCに対する単剤療法での客観的奏効率が52.2%と、有望な結果が示されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「ivonescimabはPD-L1陽性進行NSCLCの1次治療における新たな治療選択肢となるだろう」とまとめている。Lancet誌2025年3月8日号掲載の報告。ivonescimab単剤とペムブロリズマブ単剤を比較 HARMONi-2試験の対象は、手術または根治的化学放射線療法の適応がなく全身療法未治療のIIIB/C期またはIV期NSCLCで、EGFR変異およびALK転座を有していないECOG PS 0~1、PD-L1陽性(TPS≧1%)の18歳以上の患者であった。 研究グループは、適格患者をivonescimab(20mg/kg)群またはペムブロリズマブ(200mg)群に、組織型(扁平上皮vs.非扁平上皮)、臨床病期(IIIB/C期vs.IV期)、PD-L1 TPS(50%以上vs.1~49%)で層別化して1対1の割合で無作為に割り付けた。いずれの群も3週間間隔で静脈内投与し、独立画像判定委員会(IRRC)判定による病勢進行、許容できない毒性発現または最長24ヵ月まで投与を継続した。 主要評価項目は、ITT集団におけるIRRC判定によるRECIST v1.1に基づくPFSであった。 試験は現在も進行中であり、本論では事前に計画された中間解析(2024年1月29日データカットオフ)の結果が報告された。ivonescimabはペムブロリズマブと比較しPFSを約5ヵ月有意に延長 2022年11月9日~2023年8月26日に879例がスクリーニングされ、このうち適格基準を満たした398例がivonescimab群(198例)またはペムブロリズマブ群(200例)に無作為に割り付けられた。 追跡期間中央値8.7ヵ月(四分位範囲:7.1~10.3)において、PFS中央値はivonescimab群11.1ヵ月、ペムブロリズマブ群5.8ヵ月であった(層別化ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.38~0.6、片側p<0.0001)。 サブグループ解析においても、PFS中央値は一貫してivonescimab群で優れた。PD-L1 TPS 1~49%集団では8.0ヵ月vs.5.4ヵ月(HR:0.54、95%CI:0.37~0.78)、PD-L1 TPS 50%以上集団では11.1ヵ月vs.8.2ヵ月(0.48、0.29~0.79)などであった。 安全性については、Grade3以上の治療関連有害事象は、ivonescimab群で58例(29%)、ペムブロリズマブ群で31例(16%)に発現し、Grade3以上の免疫関連有害事象はそれぞれ14例(7%)および16例(8%)に認められた。ivonescimabは、扁平上皮がんおよび非扁平上皮がんのいずれに対しても類似の安全性プロファイルを示し、有害事象は管理可能であった。

60.

固形がん患者における初回治療時CGP検査実施の有用性(UPFRONT)/日本臨床腫瘍学会

 本邦における包括的ゲノムプロファイリング検査(CGP)は、「標準治療がない、または局所進行もしくは転移が認められ標準治療が終了となった(見込みを含む)」固形がん患者に対して生涯一度に限り保険適用となる。米国では、StageIII以上の固形がんでのFDA承認CGPに対し、治療ラインに制限なく全国的な保険償還がなされており、開発中の新薬や治験へのアクセスを考慮すると、早期に遺伝子情報を把握する意義は今後さらに増大すると考えられる。本邦の固形がん患者を対象に、コンパニオン診断薬(CDx)に加えて全身治療前にCGPを実施する実現性と有用性を評価することを目的に実施された、多施設共同単群非盲検医師主導臨床試験(NCCH1908、UPFRONT試験)の結果を、国立がん研究センター中央病院/慶應義塾大学の水野 孝昭氏が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。・対象:16歳以上の治癒切除不能または再発病変を有する非小細胞肺がん(EGFR、ALK、ROS1、BRAFのドライバー遺伝子変異なし)、トリプルネガティブ乳がん、胃がん、大腸がん、膵がん、胆道がん患者(前治療歴なし[術前術後補助化学療法は許容]、ECOG PS 0/1、CGP検査に提出可能な腫瘍検体・末梢血検体を有する)・組み入れ患者の治療の流れ:CGP(医療保険の先進医療特約または自費)→標準治療±分子標的治療(→[保険適用のCGP]→分子標的治療)※1・評価項目:[主要評価項目]actionableな遺伝子異常※2に対応する分子標的薬による治療を受ける患者の割合[重要な副次評価項目]全生存期間(OS)、actionableな遺伝子異常を有する患者の割合、actionableな遺伝子異常に対する標的治療における無増悪生存期間(PFS)など・追跡期間:24ヵ月(データカットオフ:2024年3月)※1:保険適用のCGPを受けるかどうかは任意で、本研究では規定なし※2:actionableな遺伝子異常=厚生労働省「第2回がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議(2019年3月8日)」で示された「資料3-4 治療効果に関するエビデンスレベル分類案」1)におけるエビデンスレベルD以上 主な結果は以下のとおり。・2020年6月~2022年3月に201例が登録され、192例がCGPを受けた。・201例の患者背景は、年齢中央値が62歳(範囲:19~83)、男性が54.2%、がん種は膵がん27.9%/大腸がん24.9%/非小細胞肺がん15.9%/胆道がん11.9%/胃がん8.5%/乳がん6.5%で、術後再発症例は32.8%であった。・最も多く検出された遺伝子異常はTP53(≧60%)で、KRAS(≧40%)、APC、SMAD4、ARID1A(いずれも≧10%)などが続いた。また、ERBB2、BRAF、EGFRなど薬剤に直結する遺伝子異常も、いずれも5%未満ではあるが検出された。・actionableな遺伝子異常(エビデンスレベルA~D)を有する患者は110例(57.3%)、治療候補薬の推奨あり(エビデンスレベルE以下も含む)の患者は142例(74.0%)であった。・actionableな遺伝子異常を有する患者の割合をがん種別にみると、膵がん67.9%/非小細胞肺がん65.6%/胆道がん62.5%/大腸がん48.0%/乳がん46.2%/胃がん35.3%であった。・actionableな遺伝子異常に対応する分子標的薬による治療を受けた患者は14例(7.3%)で、がん種ごとにみると非小細胞肺がん18.8%/膵がん8.9%/胆道がん4.2%/大腸がん4.0%、乳がんおよび大腸がんは0%であった。なお、14例中8例が治験的治療を受けた。・actionableな遺伝子異常に対する標的治療におけるPFS中央値は3.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:1.1~5.8)、奏効率(ORR)は28.6%であった。とくに非小細胞がん患者においてPFSが良好な傾向がみられ、6例中4例がPR(部分奏効)であった。・全体集団のOS中央値は24.3ヵ月(95%CI:20.2~30.9)であった。・治療候補薬の推奨があった患者における分子標的治療を受けなかった理由としては、標準治療中の状態悪化が57.0%を占め、32.8%が標準治療中であった。 水野氏は今回の結果について、初回全身治療時にCGPを受けた固形がん患者のうち、actionableな遺伝子異常に基づく分子標的治療を受けた患者の割合は7.3%であり、本研究実施期間中においては限定的であったが、ドライバー遺伝子陽性症例を除く非小細胞肺がん患者で比較的良好な結果が得られたことから、特定の背景を有する患者においてはCGP早期実施による利益が得られる可能性があるとまとめている。 講演後の質疑応答において、司会を務めた京都大学の武藤 学氏は、今回の7.3%という結果にはCGPをCDxとして使用したケースは含まれず、治験的治療やCDxがカバーできない治療に進んだ症例が該当するという点に注意が必要と指摘。そのうえで、今後は治験へのアクセスのしやすさの向上、継続した対象者への治験提案、治験の数を増やすなどの方策を練るべきではないかとした。 本試験に関しては、同時期に標準治療を受けた固形がん患者130例を登録した観察研究が並行して実施されており、今後対照群として比較解析を行うことが計画されている。また、本試験のサブスタディとして、CGPに対する十分な組織のない患者を対象としたUpfront Liquid study、費用対効果分析やQOL評価を行うためのアンケート調査も実施されている。

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