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ASCO2026スタート!注目演題を集めた特設サイトオープン

 5月29日~6月2日(現地時間)、世界最大の腫瘍学会であるASCO2026(米国臨床腫瘍学会年次総会)が、米国・シカゴとオンラインのハイブリッド形式で開催される。 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」(医師会員限定)では、ASCO 2026のスタートに合わせて、7,000を超える演題の中から、複数のエキスパートが専門分野の注目演題をピックアップした特設サイトをオープンした。 「ASCO2026特設サイト」では、「肺がん」「消化器がん」「乳がん」「泌尿器がん」のカテゴリに分け、エキスパートのコメントとともに、ASCO視聴サイトの該当演題へのリンクを掲載している。 エキスパートが選定した、がん種別の注目演題の一部は以下のとおり。このほかにも多くのユーザーが注目すべき演題を紹介している。【肺がん】山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター 呼吸器内科)によるまとめ水柿 秀紀氏(北海道がんセンター 呼吸器内科)によるまとめ【消化器がん】砂川 優氏(聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座)によるまとめ中村 将人氏(相澤病院 がん集学治療センター 腫瘍内科)によるまとめ【乳がん】寺田 満雄氏(名古屋市立大学 乳腺外科)によるまとめ【泌尿器がん】三好 康秀氏(足柄上病院 泌尿器科)によるまとめ―――――――――――――――――――Doctors’Picks ASCO2026 特設サイト――――――――――――――――――― 学会終了後は、聴講レポートやまとめ記事なども続々とアップしていく予定である。

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肺がん診療ガイドライン2025押さえておきたい3つのポイント【DtoD ラヂオ ここが聞きたい!肺がん診療Up to Date】第11回

第11回:肺がん診療ガイドライン2025押さえておきたい3つのポイントパーソナリティ日本鋼管病院 田中 希宇人 氏ゲスト岡山大学病院 二宮 貴一朗 氏※番組冒頭に1分ほどDoctors'PicksのCMが流れます参考1)日本肺癌学会 肺癌診療ガイドライン2025(オンライン版)関連サイト専門医が厳選した、肺がん論文・ニュース「Doctors'Picks」(医師限定サイト)講師紹介

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家族の介護疲れをケアする【非専門医のための緩和ケアTips】第124回

家族の介護疲れをケアする高齢化が進む日本で、介護の問題は非常に重要です。在宅緩和ケアの実践でも、患者の症状緩和だけでなく、家族の介護負担をどのようにケアするかという問題によく遭遇します。緩和ケア医の立場からは、どのような支援ができるのでしょうか?今日の質問先日、訪問診療を担当している患者が入院したのですが、症状悪化というよりは家族の介護疲れが理由で入院となってしまい、在宅医としてやや不全感がありました。もともと、家族としては在宅療養にあまり前向きでなかった中で、本人が強く自宅療養を希望したという経緯もあります。何かできたことがあったのでしょうか?まず、患者本人がどのように感じているかはこの文面からはわかりませんが、家族が在宅療養に前向きでなかった中で、少しでも自宅療養の時間を持てたことは、医療者としての役割を果たせたのではと思います。そのうえで、私自身が感じたことや取り組んでいる工夫について述べます。まず、「介護疲れ」とは家族の性格や覚悟の問題ではなく、シンプルに「負担が許容量を超えた状態」だと理解しましょう。そして許容量はそれぞれの家族、ご家庭で異なります。ある家族にとっては乗り越えられたことも、ある家族にとっては対応が難しいと感じることもよく経験します。ですので、事前に家族の状況を把握し、在宅療養という(多くの場合は)未経験のことへの対応力をアセスメントしておくことが大切です。アセスメントをしたうえで、懸念される事項に対して準備できることや必要な支援を整理します。その中で最も一般的なのは、介護保険の申請と介護保険サービスの活用でしょう。介護保険については皆さんも日々対応されているでしょうが、私が医師として行っている工夫を紹介します。それは、不安や負担に感じていることを傾聴したうえで、「家族だけで対応しなくてもいいんですよ」と自分の言葉で明確に伝える、というものです。介護経験のない家族は、それぞれが持つ介護の「イメージ」の中で不安が増幅しています。もちろん、介護負担を心配して在宅療養を選択しなくてもよいわけですが、極端かつ誤ったイメージだけで選択肢を狭めてしまうのは残念です。なので「心配はごもっともだと思います。皆さん、同じように心配されると思って聞いていました。ただ、もし、『本当は自宅で過ごさせてあげたいけど、介護が心配』ということであれば、私もいろいろなご家族と同じような相談をしてきた経験から、少しご説明させていただいてもよいですか?」と話します。医療、介護の注意点と見通しをお伝えしたうえで、「しっかり準備をしたら、大変なときはあったけれど、思ったよりも負担は少なかった、と振り返るご家族もいました。よろしければ、より詳しい介護のプロからのお話も聞いてみませんか?」とお話しして、ケアマネジャーや退院支援スタッフにつなぎます。緩和ケアに関わっていると、各職種の担う役割はとても専門性が高いことを実感します。私自身ができることはごく一部であり、各職種の専門性を患者と家族に還元できるようにすることが、緩和ケア医を含めた医師の役割なのだと感じます。今日のTips今日のTips介護は家族にとって切実な問題。家族の状況のアセスメントを介護職と一緒に取り組みましょう。

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ICIとの併用でOSが延長、肺がん治療の新戦略「TTフィールド」の可能性/ノボキュア

 ノボキュアは2026年4月にメディアラウンドテーブル「進行期肺がん治療の新潮流」を開催した。同イベントでは近畿大学医学部内科学腫瘍内科の林 秀敏氏と同社の代表取締役である小谷 秀仁氏が登壇。2026年3月に保険収載された非小細胞肺がん(NSCLC)の腫瘍治療電場(TTフィールド)「オプチューンルア」について、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)との併用効果などを解説した。TTフィールドの抗腫瘍効果 TTフィールドは、電場をがん治療に応用した新たな治療モダリティである。肺がんに対しては150kHzの交流電場を体内に形成することで、直接および間接作用で抗腫瘍効果を発揮する。 直接作用として明らかになっているのは有糸分裂阻害である。交流電場によって細胞分裂に必要な紡錘体形成が妨げられ、がん細胞がアポトーシスへと誘導される。交流電場によって免疫原性細胞死が誘導されて抗腫瘍免疫が惹起されることで間接作用として抗腫瘍活性が発揮される。この結果、がん免疫療法がより有効に機能する状態が整えられる。 腫瘍細胞と正常細胞では電場の最適周波数が異なること、急速に分裂する腫瘍細胞に対して選択的に作用する特性から、TTフィールドは正常細胞への影響が少ないとされる。肺がんにおけるTTフィールドへの期待 日本における肺がんの罹患数は全がん種の中で2位、死亡数は最多である。新薬の登場で改善しつつあるが、肺がんの生命予後はいまだに厳しい。とくに2次治療以降の有効な選択肢は少ない。 こうした背景のもと、プラチナベース化学療法で進行した再発・進行NSCLCを対象に、国際多施設共同無作為化試験LUNARが実施された。 同試験の結果、全体集団においてオプチューンルア+標準療法(治験責任医師選択のICIまたはドセタキセル)群の全生存期間(OS)中央値は13.2ヵ月、標準療法群は9.9ヵ月と、統計学的に有意な延長が示され、主要評価項目を達成した(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.56〜0.98、p=0.035)。特筆すべきはICIとの併用サブグループである。対照群であるICI単独群のOS中央値10.8ヵ月に対し、オプチューンルア+ICI群では19.0ヵ月を示し、8.2ヵ月の延長が認められた1)。TTフィールドが腫瘍免疫を活性化することでICIの有効性をさらに高める可能性が示唆される結果となった。 オプチューンルアの対象となるドライバー遺伝子陰性NSCLCにおいても、ICIによる2次治療の効果は限られている。林氏は「ICIをいかに効きやすくするかは、われわれに課せられた重要な使命であり、TTフィールドはその1つの答えになり得る」と期待を語った。実臨床での活用とサポート体制 オプチューンルアによる治療は在宅で実施する。胸部の前後を挟み4枚のアレイを貼付するという単純なものである。 LUNAR試験における主な有害事象はアレイ貼付部位の皮膚炎(大半がGrade1〜2)であり、保湿やスキンケアなどのシンプルな対応が有効である。 臨床効果の発現は長時間貼付することで、より発揮され、18時間以上の使用が推奨されている。 ノボキュアでは医療者、患者のサポート体制を整えている。MDR(Medical Device Representative)が医療機関向けに情報提供・適正使用推進を担い、DSS(Device Support Specialist)は機器の取り扱いトレーニングなどを担う。在宅療法という特性上、24時間365日のコールセンターでサポートする。アレイには着用時間を記録する温度センサーが内蔵されており、患者の使用データをDSSが担当の医療者に毎月フィードバックする。 治験を行なった林氏は「治療を頑張りたいという患者さんが多い。患者さん自身が治療に関与できる点がモチベーションにもつながっているのではないか」と語った。 TTフィールド療法は従来の薬物治療とは一線を画す新たなモダリティとして、またICIの有効性を底上げする治療戦略として、再発・進行NSCLCにおける新たな潮流となることが期待される。

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喘鳴をみたら喘息?【喘息・COPDのここが知りたい!】第1回

皆さま、こんにちは。神奈川県川崎市にあります日本鋼管病院という地域の総合病院で呼吸器内科医として働いています田中 希宇人(たなか きゅうと)と申します。ネット上では「キュート先生」の名前で医療情報発信を行っています。川崎南部地域は肺がん・COPD・喘息など、呼吸器疾患の患者さんが多く、呼吸器の症状で困っている方を10年以上診療してきています。喘息・COPDのガイドラインはしっかり策定されておりますが、すべての患者さんがガイドラインに当てはまるわけではありません。本連載では、それらのガイドラインの隙間を埋めるような実臨床で役立つ内容、悩む状況などについて一緒に考えていきたいと思います。ぜひご意見やご感想もお寄せいただけますと幸いです。喘鳴をみたら喘息?はじめに:その喘鳴をどう診ますか?日常診療において、患者さんが「ゼーゼーする」「ヒューヒューいう」と訴えて来院された際、真っ先に頭に浮かぶのは「喘息」ではないでしょうか。実際に喘息は非常に頻度の高い疾患であり、その症状の1つに「喘鳴(ぜんめい)」があります。喘鳴とは、気道が狭くなることで「ゼーゼー」や「ヒューヒュー」といった異常な呼吸音が連続的に発生する状態を指します。この音は、狭くなった気道を空気が無理に通過する際に生じる振動によるものです。喘鳴は、聴診器を使わなくても聞こえることもあります。息を吸う時に聞かれる「吸気性喘鳴」と吐く時に聞かれる「呼気性喘鳴」があります。音が聞こえるタイミングや、気道のどの部分が狭くなっているかで病気を推測できる場合があります。しかし「All that wheezes is not asthma(喘鳴がすべて喘息とは限らない)」1,2)という言葉があります。ガイドラインには「喘息の治療法」については詳しく書いてありますが、「この喘鳴が本当に喘息なのか」という診断や鑑別プロセスについては、多くを語ってくれません。ましてや、目の前の患者さんが「喘息なのか」については教えてくれません。本連載では、ガイドラインの行間に隠れた、実臨床での「診療のコツ」をお伝えしていきたいと考えています。第1回は多くの先生方が最も迷いやすく、かつ見逃してはならない「喘鳴の鑑別」について深掘りしていきます。喘鳴の「音」を解剖する:stridorとwheeze聴診器を当てて何か「音がする」だけで満足してはいけません。その異常な音が「いつ」「どこで」聞こえるかが、診断の最大のヒントになります。外来診療では長い時間がとれないため、患者の頸部で聴診します。深呼吸で、呼気は勢いよく最後の最後まで吐ききってもらいます。典型的な喘息の喘鳴は、呼気終末に聴取されます。喘鳴が聞かれる場合に、まず重要なのは音が吸気時(息を吸うとき)に強いのか、呼気時(吐くとき)に強いのかという点です。呼気性喘鳴(wheeze)主に末梢気道が狭窄しているサインです。喘息やCOPDの典型的な音です。吸気性喘鳴(stridor)主に上気道・中枢気道の閉塞を示唆します。喉頭浮腫、声帯機能不全、異物、気管腫瘍などが疑われます。もし吸気時に強い「ヒュー」という音が聞こえたなら、それは喘息の増悪ではなく「上気道の緊急事態」かもしれません。この見極め一つで対応が劇的に変わります。次に、聞かれる音がmonophonic(単音性)なのか、polyphonic(多音性)かということがわかると、さらに病気が絞られます。monophonic聴診してどこの部位で聞いても同じ高さの「ピー」という音が聞こえる状態。これは、特定の太い気道が1点で狭まっている、腫瘍や異物などの病態の可能性を考えます。polyphonic胸のあちこちで異なる高さの音が混ざって聞こえる状態。これは喘息のように、肺全体であちこちの気道が狭くなっている病態を示します。喘息と間違えやすい3つの病態咳・息切れ・喘鳴などの症状があると「喘息」が疑われ、呼吸器外来を受診することが多いです。そこで気を付けなければいけない、喘息と間違えやすい代表的な3つの疾患を紹介しましょう。(1)心不全最も頻度が高く、かつ命にかかわるのが心不全です。左心不全による肺水腫で気管支粘膜が浮腫を起こすと、喘息そっくりの喘鳴が聴取されます。見分けるポイントがいくつかあります。喘息の喘鳴は「夜間・早朝」に強く認められますが、心不全は「横になる時(臥位)」に症状が悪化します。また、心不全徴候であるIII音の聴取、下腿浮腫や頸静脈怒張の有無、X線で心拡大やバタフライシャドウ、採血でBNP高値などをあわせて確認します。喘息の既往がある高齢者が「最近ゼーゼーがひどい」と受診した場合、じつは心不全がベースにあるケースは珍しくありません。喘息とうっ血性心不全が合併していることがあり、私も気管支拡張薬、ステロイド、利尿薬、降圧薬を同時に投与したことがあります。(2)声帯機能不全(VCD)喘息と考えて吸入ステロイドや気管支拡張薬など各種吸入薬を使ってもまったく症状が改善しない「難治性喘息」の中に紛れ込んでいるのが、声帯機能不全(Vocal Cord Dysfunction:VCD)です。本来、息を吸うときに開くはずの声帯が上手に開かない病態です。VCDによる喘鳴が最も強く聞こえるのは「胸」ではなく「首」です。また、喘息増悪(発作)時にはSpO2が低下することが多いですが、VCDでは正常に保たれていることが多いのも特徴です。「吸入薬が効かない」と訴える方や、心理的ストレスを抱える方では、VCDの可能性を考え耳鼻科医に診察してもらうことも重要です。(3)中枢気道病変(腫瘍・異物)ときどき呼吸器外来で診るのが、肺がんや気管支結核、あるいは高齢者の誤嚥による異物などが原因の喘鳴です。肺がん・気管支がんなどの悪性腫瘍、異物などによる物理的閉塞による喘鳴は「片側だけ」「ある特定の部位だけ」で聞こえます。喘鳴は全肺野で聞かれるはず、という思い込みを捨て、左右の胸の音を丁寧に聞き比べるとわかることがあります。また、喘息増悪で聞かれる喘鳴は、比較的急な経過で聴取されますが、悪性腫瘍が原因の場合には徐々に症状が強くなることが特徴です。喫煙歴のある高齢者の喘鳴で安易に「喘息やCOPDが原因」と決めつけるのは危険です。X線やCTでの精査を躊躇してはいけません。喘鳴を正しく見極めるためのコツ喘鳴が聴取される患者さんで喘息か他疾患の病態かで迷ったとき、実際の医療現場で行っているいくつかのコツを紹介しましょう。(1)SABA(短時間作用性β2刺激薬)に対する反応をみるまず比較的簡単にできるのが、喘息増悪に準じてメプチンなどのSABAをネブライザーで吸入させ、その場で喘鳴が消失あるいは軽減するかを確認することです。これは、非常に有用な診断的治療になります。喘息であれば反応が良いはずですが、心不全や腫瘍による気道の物理的狭窄では反応が乏しいことがわかります。(2)「いつもの喘鳴」との違いを聞いてみる喘息増悪を繰り返す患者さんが一番自分の状態をわかっています。しかし、喘息患者さんでも別の病気を合併することがあります。「今回の症状は、今までの喘息発作と同じ感じですか?」という一言が、別の病気を見つけるカギになることがあります。患者さんが感じる「今回はなんか違う、息が吸い込みにくい感じがする」といった症状には注意が必要です。(3)喘鳴の起こり方を探る喘息の増悪は何かをきっかけに発作的に起こりますが、COPDや心不全の増悪は、動いたときの息切れが先行し、徐々に症状が悪化することが多いです。そのようなきっかけ、安静時の喘鳴なのか労作時の喘鳴なのか、など喘鳴の起こり方を探ってみましょう。おわりに:診断の「質」が治療の「質」を決める喘息治療の進歩により、多くの患者さんが発作を経験せずに平穏に過ごせるようになりました。喘息死も私が研修医だった20年前に比べるとだいぶ減りました。しかし、その一方で咳・息切れ・喘鳴のような症状がある場合に、「とりあえず喘息として吸入薬を出す」ことが、本来見つけるべき他の疾患を見逃すリスクを生んでいる側面もあります。「喘鳴=喘息」という思考をいったんやめて、聴診器から聞こえる音の正体を疑ってみる姿勢が第一歩です。正しい診断が下されれば、正しい治療につながります。そこで既存のガイドラインがさらに活きてくるものと考えています。 1) Jackson C. BMQ. 1865;16:86 2) Kaminsky DA. Chest. 2015;147:284-286.

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中性脂肪、がんリスクマーカーに?~日本の全身がん検査プログラム

 京都府立医科大学の手良向 聡氏らが行った後ろ向き観察研究から、ベースラインの血清トリグリセライド(TG)が、将来のがん発症リスクを予測する高感度なバイオマーカーとなる可能性が示唆された。Health Science Reports誌2026年3月29日号掲載の報告。 日本において、メタボリックシンドローム(Mets)併存患者のがん死亡率は年々増加しており、これらの患者のがんの早期発見が喫緊の課題となっている。近年、Metsの構成要素が活性酸素種(ROS)の生成、ホルモン産生の変化などを通じて、がん発生を促進する可能性が指摘されている。 そこで研究者らはがんの発症とさまざまな危険因子との関連性を調べるため、2009年11月~2019年10月の期間、浜松光医学財団の浜松PET診断センターで全身がん検査を受けた浜松ホトニクスおよび関連企業の従業員1,495人(男性69.9%、平均年齢48.8歳)を対象に検証を行った。検査内容はPET-CT、胸腹部CT、頭部・骨盤MRI/MRA、腹部超音波、包括的な血液検査、腫瘍マーカーなど。主要評価項目は初回検査からがん発症までの期間で、カプランマイヤー法で推定し、Cox比例ハザードモデルを用いて、年齢、ライフスタイル、血液検査値、既往歴など各種リスク因子との関連を解析した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に59例(3.9%)ががんを発症し、診断時の年齢中央値は57歳であった。・がん種は大腸がん(12例)が最も多く、次いで肺がん(8例)、乳がん(7例)、胃がん(7例)、前立腺がん(6例)と続いた。・多変量解析において、TGの上昇はがん発症と統計学的に有意な関連を示した(ハザード比[HR]:1.004、95%信頼区間[CI]:1.001~1.008、p=0.02)。・空腹時TGの正常上限である150mg/dLを境にした解析では、150mg/dL以上の群は150mg/dL未満の群に対し、がん発症のHRが1.99(95%CI:0.94~4.24)となり、臨床的に意義のある傾向が確認された。・高血圧の既往がある場合、がん発症リスクが顕著に高いことが示された(HR:2.88、95%CI:1.49~5.53、p=0.002)。・初回検査からの累積がん発症率は、2年で1.0%、4年で2.3%、6年で3.4%、8年で4.8%であった。 研究者らは、「ベースラインTGががんリスクのバイオマーカーである可能性が示された。また、高血圧の既往も強力な予測因子であり、これら代謝関連因子を適切に管理することが、がん予防戦略において重要となる可能性がある」としている。

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ストレスや悲しみはがんリスクと関連しない

 長年にわたり、強い心理的ストレスや悲しみ、あるいはネガティブな性格はがんを引き起こし得ることが、ウェルネス分野や医療現場で広く信じられてきた。しかし、大規模な国際研究により、個人の精神状態はがんの発症とほとんど関係がない可能性が示された。フローニンゲン大学医療センター(オランダ)のLonneke van Tuijl氏らによるこの研究は、「Cancer」に3月23日掲載された。 この研究では、複数コホートを統合した大規模データベースであるPsychosocial Factors and Cancer Incidence(PSY-CA)コンソーシアムを用いて、心理社会的要因とがん(乳がん、肺がん、前立腺がん、大腸がん、喫煙関連がん、アルコール関連がん)の発症との関連が検討された。対象は、ベースライン時に少なくとも1つの心理社会的要因が測定されていた42万1,799人。検討された要因は、知覚された社会的支援(perceived social support;PSS)、喪失体験、パートナーの有無(既婚、離婚、独身など)、神経症傾向、全般的な精神的苦痛であった。 その結果、対象とした心理社会的要因と全がん、乳がん、前立腺がん、大腸がん、アルコール関連がんとの間に有意な関連は示されなかった。一方、最近の喪失体験、PSS低値、およびパートナーがいないこと(独身や離婚者など)は、肺がんリスクのわずかな上昇と関連していた。しかし、関連因子を調整すると、知覚されたPSS低値とパートナーがいないことについては関連が弱まる、または消失した。一方で、パートナーがいないことと喫煙関連のがんとの関連は、因子の調整後も認められた。神経症傾向および全般的な精神的苦痛は、いずれのがんとも関連を示さなかった。 研究グループは、ストレスそのものが細胞をがん化させるわけではないが、ストレスに対する対処行動は影響し得ると結論付けている。例えば、困難な状況にある人は、喫煙や飲酒、不健康な食生活に陥りやすく、これらが実際のがんリスクの主要因であると考えられる。Van Tuijl氏は、「さらに、観察された小さな影響の多くは、不健康な行動によって説明されることが多い」と述べている。 メンタルヘルスを良好に保つことは、生活の質(QOL)や疾病からの回復において重要であるが、本研究は、それががん発症の主要な要因ではないことを示した。Van Tuijl氏は、「PSY-CAコンソーシアムはここ数年、メンタルヘルス不調やその他の心理社会的ストレスががん発症リスクを高めるという広く信じられている考えを検証してきた。本研究の結果は、この広く信じられている考えを明確に支持するものではなかった」とニュースリリースでコメントしている。 研究グループはさらに、この結果は、がん患者が自身の病気を過去のストレスに結び付けて罪悪感や自責の念を抱くことを防ぐ一助となる可能性があると指摘している。

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HER2変異陽性NSCLCの1次治療、ゾンゲルチニブが奏効率76%・PFS14.4ヵ月を達成(Beamion LUNG-1)/NEJM

 HER2変異陽性の進行・転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、ゾンゲルチニブは迅速かつ持続的な客観的奏効と、無増悪生存期間(PFS)の改善をもたらし、脳転移に対する有効性も期待できることを、米国・University of Texas M.D. Anderson Cancer CenterのJohn V. Heymach氏らBeamion LUNG-1 Investigatorsが、「Beamion LUNG-1試験」の結果で示した。ゾンゲルチニブは経口投与型の不可逆的チロシンキナーゼ阻害薬で、野生型の上皮成長因子受容体(EGFR)には、ほとんど作用せずにHER2を選択的に阻害するため、関連する毒性作用を最小限に抑えるとされる。研究の成果はNEJM誌2026年4月30日号に掲載された。国際的な第Ia/Ib相多コホート試験 Beamion LUNG-1試験は、オーストラリア、欧州、アジア(日本を含む)、米国の53施設で実施した第Ia/Ib相多コホート試験(Boehringer Ingelheimの助成を受けた)。2023年11月~2025年8月に、進行または転移のあるHER2変異陽性非扁平上皮NSCLC患者を登録した。 本論では、未治療の患者(コホート2)および活動性の脳転移を有する患者(探索的コホート4)の解析結果が報告された。 両コホートとも、コホート1の用量設定解析で決定された投与法(21日を1サイクルとし、ゾンゲルチニブ120mgを1日1回、経口投与、病勢進行・同意の撤回・許容できない毒性作用の発現まで投与を継続)による治療を受けた。 主要評価項目は盲検化された独立中央レビューによる確定された客観的奏効、副次評価項目はPFSなどであった。未治療例の1次治療(コホート2)、確定された客観的奏効は76% コホート2は、原発巣への治療を受けていない患者74例(年齢中央値67歳[四分位範囲[IQR]:35~88]、女性37例[50%])であった。安定した無症候性の脳転移(既治療か否かは問わない)を有する患者も含めた。 データカットオフ日(2025年8月21日)の時点で、確定された客観的奏効が56例(76%、95%信頼区間[CI]:65~84)で得られた。8例(11%)が完全奏効、48例(65%)が部分奏効だった。標的病変の総腫瘍径の、ベースラインからの最大の変化率中央値は-59%(範囲:-4~-100)であった。 また、奏効期間中央値は15.2ヵ月(95%CI:9.8~評価不能[NE])、PFS中央値は14.4ヵ月(11.1~NE)だった。 一方、全Gradeの有害事象は73例(99%)に発現し、このうちGrade3以上は33例(45%)であった。治療関連有害事象は67例(91%)に認め、このうちGrade3以上は14例(19%)だった。活動性脳転移(コホート4)、確定された頭蓋内客観的奏効が47% コホート4は、原発巣への治療の有無にかかわらず、活動性の脳転移(既治療か否かは問わない)を有する患者30例であった。 Response Assessment in Neuro-Oncology Brain Metastases(RANO-BM)の基準に準拠すると、データカットオフ日の時点で、確定された頭蓋内客観的奏効が47%(95%CI:30~64)で達成された。 脳への放射線療法を受けていない23例のうち57%(95%CI:37~74)と、1次治療としてゾンゲルチニブの投与を受けた8例のうち4例の50%(22~79)で、頭蓋内客観的奏効が得られた。 頭蓋内奏効期間中央値は6.9ヵ月(95%CI:2.9~NE)、頭蓋内PFS中央値は8.2ヵ月(4.1~11.3)であった。 コホート4の安全性プロファイルは、試験全体と一致していた。治療関連有害事象は28例(93%)にみられ、このうちGrade3以上は5例(17%)であった。Grade4の治療関連有害事象(ALT値上昇)を1例に認め、Grade5の治療関連有害事象(死亡)の報告はなかった。 著者は、「この経口標的治療薬は、進行性の疾患において、化学療法に代わる有効な1次治療の選択肢となる可能性がある」としている。 また、「脳放射線照射を受けていない活動性脳転移で頭蓋内奏効を示したことは、ゾンゲルチニブの頭蓋内活性を強調する知見といえる」「HER2に基づく治療法が1次治療の領域へと移行するに従って、治療の適切な順序、併用薬、耐性に関する重要な課題が、その重要性をさらに高めている」と指摘している。

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免疫介在性炎症性疾患患者のがんリスク、要因は炎症か

 全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、乾癬などの免疫介在性炎症性疾患(IMID)患者はがんリスクが高いことが知られているが、リスクが高いのはIMID診断後1年間であり、抗炎症薬による治療を開始するとそのリスクは経時的に低下する可能性が、新たな研究で示された。ガッルーラ地域保健局(イタリア)リウマチ科部長のDaniela Marotto氏らによるこの研究は、「Cancers」に3月23日掲載された。Marotto氏は、「初期段階でがんリスクがピークに達するということは、治療よりも慢性炎症そのものががん発症の重要な要因であることを示唆している」と述べている。 Marotto氏らは今回、イタリアで2018年1月1日から12月31日までの間にIMIDと診断された患者5万4,896人および非IMID患者30万1,126人を対象に、IMIDとがん発症との関連を検討した。IMIDは、RAとびまん性結合組織疾患(diffuse diseases of connective tissue;DDCT)を対象とした。DDCTは免疫の異常により全身の結合組織に慢性的な炎症が生じる疾患の総称で、SLEや強皮症、シェーグレン症候群などが代表例である。対象患者は2023年12月31日まで追跡された。 解析の結果、IMID群では非IMID群と比べて、5年間のがんリスクが有意に高かった(調整オッズ比1.32、95%信頼区間1.27~1.38)。しかし、がんリスクは経時的に低下し、オッズ比は診断後1年目で1.83(95%信頼区間1.61~2.08)、2年目で1.53(同1.37~1.69)、3年目で1.40(同1.25~1.56)、4年目で1.37(同1.22~1.53)、5年目で1.20(同1.15~1.30)であった(全てP<0.001)。がん種ごとに検討すると、IMID群では白血病・リンパ腫(調整オッズ比1.98)、肺がん(同1.74)、膀胱がんとメラノーマ(いずれも同1.48)のリスクが高かった。一方、IMIDの種類別に検討すると、DDCT群はRA群と比べてがんリスクが高かった(調整オッズ比はDDCT群1.53、RA群1.20)。 共著者であるシエナ大学(イタリア)医療バイオテクノロジー分野のAntonio Giordano氏は、「今回の結果は、炎症ががんリスクを左右する決定的な要因であるという仮説を支持するものだ」と指摘している。 研究グループは、この知見から、IMID患者に対しては、特に診断後1年以内におけるがん検診の重要性を周知・促進する必要があると強調している。

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不眠にベンゾジアゼピンは使ったらダメ?【非専門医のための緩和ケアTips】第123回

不眠にベンゾジアゼピンは使ったらダメ?不眠に対する処方はどうしていますか? 従来はベンゾジアゼピン系が広く用いられてきましたが、最近はあまり処方しないほうがよいとも言われています。緩和ケアにおいてはどのように考えるのでしょうか?今日の質問訪問診療で担当している患者から、最近不眠気味なので睡眠薬を処方してほしいと相談がありました。予後は月単位と想定される方ですが、まだトイレなどで歩いていたため、転倒の心配を説明し、ベンゾジアゼピン系以外の睡眠薬を処方しました。ただ、その後もあまり眠れなかったようで、もっと強い睡眠薬はないかと相談されました。終末期が近い患者でもベンゾジアゼピン系睡眠薬は使用しないほうがよいのでしょうか?かなり実践的なご質問をいただきました。最近はベンゾジアゼピン系睡眠薬(以下、ベンゾ)の弊害が強調されるようになり、「不眠=ベンゾはNG」として処方を避ける場面が多くなっています。ただ、今回のように終末期に差し掛かった状況であれば、私自身はベンゾの処方は「あり」だと考えています。もちろん、慢性的な不眠に対して長期間使用することは推奨しませんし、転倒やせん妄といったベンゾによる弊害が強く懸念される場合も処方しません。不眠に対する睡眠薬の位置付けは、「環境調整などの非薬物療法に取り組んだうえでの手段」であり「不眠の原因を取り除く」ことが処方の目的です。そして、薬剤の選択としては、まずはベンゾを避けることが推奨されます。ベンゾは入眠効果が速い一方で、日中の眠気の持ち越し、せん妄、転倒、認知機能への悪影響といったリスクがあり、交通事故なども懸念されます。高齢者ではとくにリスクが強調され、避けられることが多くなっています。私が研修医のころは不眠を訴える入院患者にはルーティンでベンゾを処方していたことを考えると、大きく位置付けが変わったことがわかります。ただ、短期的な強いストレスで入眠困難が著明であり、確実性の高い入眠効果を期待する際には、ベンゾは今でもよい選択肢だと考えます。では、終末期の場合はどうでしょうか。予後がそう長くなく、解決困難な強い身体症状がある、そうした時に「眠れない」という状況はよくあります。身体症状を和らげるためにベストを尽くすのは大切ですが、患者自身や家族が疲弊しないことも大切です。せん妄などの弊害が許容できれば、夜間をしっかり休むことを優先してベンゾの処方も一手でしょう。長期的な予後が期待できない場合には、依存など長期使用の弊害を考慮する必要性も薄まります。このあたりの対応は、専門家間でも統一されていない印象です。ある精神科の先生は「終末期であっても、ベンゾは処方しない」という方針でした。一方、私自身は「ベンゾだからダメ」と思考停止になるのではなく、注意点をよく理解し、患者の苦痛緩和を実現するためにほかの手段がない場合には使用が許容される、というスタンスです。皆さんはどのように考えますか?今日のTips今日のTips終末期の不眠に対しては、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の弊害をよく理解し、個々のケースで使用を検討しましょう。

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ロボット支援気管支鏡検査で肺がん診断の迅速化と精度向上を実現

 肺がん検診で検出される異常の多くは無害で良性であるが、ごく一部には危険なものも含まれる。こうした中、新たな研究で、ロボット技術によりその異常が良性であるか悪性であるかを迅速かつ安全に識別できる可能性が示された。米メイヨー・クリニックの呼吸器・集中治療医であるSebastian Fernandez-Bussy氏らによるこの研究結果は、「Mayo Clinic Proceedings」4月号に掲載された。Fernandez-Bussy氏は、「肺がんの生存率は早期発見に大きく依存する。より早期に、かつ合併症の発生を抑えて診断・治療できる技術は、生存率の向上に寄与する可能性がある」と述べている。 肺がんは通常、胸部CT検査で微小な結節として発見される。しかし、より危険な悪性結節と、はるかに一般的な良性結節をいかに識別するかが課題であった。疑わしい末梢肺病変の評価には、従来、CTガイド下経胸壁生検(CTTB)や気管支鏡生検が用いられてきたが、肺の構造上、ごく少量の組織しか採取できないことが多く、目的の組織を得るために複数回の挿入が必要であった。 こうした状況下で導入されたのが、形状感知型ロボット支援気管支鏡検査(shape-sensing robotic-assisted bronchoscopy;ssRAB)である。ssRABは2019年に米食品医薬品局(FDA)の承認を取得している。この装置により、医師は1度の器具の挿入で生検に必要な数の肺組織サンプルを採取できるようになった。さらに、超音波気管支鏡(EBUS)を使用することで、縦隔リンパ節へのがんの広がりも同時に評価できる。加えて、高度な3D画像技術の導入により、生検をより高い精度で行えるようになっているという。Fernandez-Bussy氏は、「この技術は、肺がんの早期診断において画期的な変化をもたらした」とニュースリリースで述べている。 本研究では、ssRABを用いた肺病変診断について、約5年間の実臨床データが解析された。データには、2019年7月から2024年8月の間にフロリダ州、アリゾナ州、ミネソタ州のメイヨー・クリニックの3施設でssRABを受けた1,904人の患者から採取された2,115個の肺病変のデータが含まれていた。 その結果、2019年にssRABが導入された当時、原発性肺がんの診断例に占める早期段階のがんの割合は46%であったが、2024年半ばには68.9%へと増加した。一方、局所進行がんまたは転移がんの割合は、2019年の54%から2024年には31.1%へと減少した。ssRABの診断率は、厳密な定義では76.9%、やや緩い定義では80.2%であった。悪性腫瘍に対する感度は85.0%であった。 さらに、研究グループによると、患者によっては、結節の評価および超音波気管支鏡ガイド下針生検による病期分類と同時に、治療も受けていた。ssRABでは、特に手術や放射線が難しい患者では、電気的に腫瘍を破壊する治療(パルスフィールドアブレーション)などが併用されるためである。論文の上席著者であるメイヨー・クリニックの胸部外科部長であるJanani Reisenauer氏は、「私はこれを『single anesthetic lung surgery pathway(単回麻酔で肺の診断から手術まで行う一連の診療フロー)』と呼んでいる。この治療法により、通院回数が減少し、家族と過ごす時間が確保され、回復も短縮される」と述べている。 肺がんを早期に発見して治療することは、患者に大きな利益をもたらす。研究グループによれば、まだ転移していない小さな腫瘍の場合、5年生存率は67%であるのに対し、転移した腫瘍では12%にとどまる。

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胆石が「肺」にあった1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第305回

胆石が「肺」にあった1例右肺下葉に4cmの腫瘤。造影CTでは不均一な濃度の充実性病変で、石灰化あり、胸膜陥入像あり。――さて、この画像を見せられたら、皆さんは何を考えますか? 肺がんや結核などを考えますよね。実は、「胆石」でした。…ふぁっ!?Zhang Q, et al. Gallstone ectopia in the lungs: case report and literature review. Int J Clin Exp Med. 2014 Nov 15;7(11):4530-4533.主人公は57歳の男性です。5ヵ月前に肝内胆管結石に対して結石除去術と肝部分切除術を受けています。術前の胸部X線・CTでは肺に異常なし。ここまでは何も問題ありませんよね。ところが術後4ヵ月頃から、これといったきっかけもなく咳と血痰が出てきました。白い痰が少量、発作的な右胸の痛みもある。ただ、発熱や盗汗といった全身症状はありません。造影胸部CTを撮影してみると、右肺下葉の前肺底区に44mm×40mmの腫瘤が見つかりました。内部に散在する石灰化、辺縁のスピキュラ、胸膜陥入像。かなり悪性っぽい見た目です。縦隔リンパ節腫大や胸水はなし。臨床診断は「過誤腫疑い、肺がんも否定できず」といったところです。手術で開胸してみると、腫瘤は約4cm×4cm、硬くて境界は明瞭。ここまでは想定の範囲内です。ただ、気になる所見がありました。肺の横隔膜面と横隔膜の筋肉が癒着していて、見た目が黒っぽいのです。病理の結果は…、「胆石の肺内迷入」。線維性結合組織の増生に炎症細胞浸潤、多核巨細胞反応を伴っていました。要するに、胆石がお腹から肺に入り込んで、異物反応で肺に肉芽腫を作っていた、というわけです。ちょ、ちょっと待って、どこからどうやって胆石が肺に入るの?仮説はこうです。肝内胆管結石の手術中に、結石が腹腔内にこぼれ落ちる。こぼれた石は横隔膜の下に溜まる。その後、横隔膜の薄いところ(diaphragmatic weakness)をすり抜けて胸腔に入り、最終的に肺の中にたどり着いて、被包化された炎症性腫瘤になる。ふむふむ。この論文では、1975年から2014年までに報告された計15例(本症例含む)のレビューも行っています。え、そんなに既報があるの? レビューによると、胆石手術(または胆石発見)から肺の腫瘤が見つかるまでの期間は平均12.5ヵ月。最長では60ヵ月(5年!)というケースもあったそうです。割とタイムラグがあるので、手術との関連が見落とされやすいようです。印象的なのが、全例右肺に発生しているという点です。肝臓の直上には右横隔膜があるので、こぼれた石は右横隔膜下に集まりやすく、横隔膜を越えたら右肺下葉に到達するのが最短ルートです。大事なポイントは、胆石手術中にこぼれた石をできる限り回収することだそうです。

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タルラタマブが小細胞肺がん2次治療に加わる意義/アムジェン

 2026年3月、タルラタマブ(商品名:イムデトラ)が小細胞肺がん(SCLC)の2次治療に承認された。アムジェンが主催したメディアセミナーでは、関西医科大学呼吸器腫瘍内科学講座の倉田 宝保氏と肺がん患者会のワンステップの長谷川 一男氏が登壇。医師と患者の立場から、新たな展開の意義を語った。小細胞肺がん治療における免疫チェックポイント阻害薬の導入 SCLCは肺がんの10〜15%を占める。喫煙との関連が高く、病勢進行も速い。進行の速さに加え、喫煙歴のある患者が多いため、咳や痰などの症状がSCLCによるものなのか、その鑑別は容易ではない。発見時には片肺にとどまっている限局性であっても、もう一方の肺に浸潤した進展型となっていることがほとんどだ。 1960年代、SCLCの治療には薬物療法が有効であることが証明されている。しかし、予後は不良で、1981年当時の生存期間中央値(MST)は、限局型が14ヵ月、進展型では7ヵ月にとどまっていた。その後、同時化学放射線療法(シスプラチン+エトポシド+放射線)により限局型のMSTは27.3ヵ月に、シスプラチン+イリノテカン療法により進展型のMSTは12.8ヵ月に延びるが、それ以降、近年まで成績は向上しなかった。 そのような中、SCLCにも免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が導入された。ICIは腫瘍変異量が多い腫瘍に有効性が高い。喫煙との関連が深いため腫瘍変異量が多いSCLCではICIの効果が期待されていた。 しかし、SCLCにおけるICIの効果は限定的であった。進展型SCLCの1次治療でICIを化学療法に上乗せしても、5年生存率の改善は10〜12%にとどまる。理由の1つにSCLCがCold tumorであることもあげられている。SCLCでは、T細胞受容体およびT細胞ががん細胞を認識するMHCクラスIの発現が低く、PD-L1発現も低い。さらに、腫瘍へのリンパ球浸潤が少ないことが明らかになっている。 十分とは言えなくとも選択肢が増えた1次治療に比べ、2次治療以降はさらに深刻な状況である。日本におけるSCLC2次治療の標準療法であるアムルビシン単剤のMSTは6〜9ヵ月程度にとどまる。そのような状態にもかかわらず、アムルビシン承認以降、約20年にわたって2次治療に新規薬剤は登場しなかった。タルラタマブによる課題の克服と2次治療への導入 こうした課題を背景に、タルラタマブが登場した。タルラタマブはSCLC細胞に高発現するDLL3とT細胞表面のCD3に結合する二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)である。 タルラタマブはDLL3を介してT細胞をがん細胞に近接させ、T細胞を活性化・増殖させるとともに、炎症性サイトカインなどの放出を誘発してがん細胞のアポトーシスをもたらす。「免疫的にColdなtumorをHotに変え、免疫療法を作用させていく薬」と倉田氏は説明した。 タルラタマブの承認根拠となったDeLLphi-301試験では、3次治療以降のSCLC患者を対象に単剤投与が行われた。奏効率(ORR)は41.4%、生存期間中央値(OS)は14.3ヵ月という成績を示した。「3次治療の患者は免疫系が疲弊していて免疫治療が効きにくい状態にある。そういう状態でこれだけの効果を示すことは非常に興味深い」と倉田氏は評価する。 今回、2次治療適応追加の根拠となったのが、タルラタマブ単剤と化学療法を比較したDeLLphi-304試験である。主要評価項目であるOS中央値は、タルラタマブ群の13.6ヵ月に対し、化学療法群では8.3ヵ月。ハザード比は0.60(95%信頼区間:0.47〜0.77)、p<0.001と、タルラタマブによる有意なOS延長が示された。一方、サイトカイン放出症候群(多くはGrade2以下)は半数以上に認められ、発熱、食欲減退、味覚不全などの有害事象が報告されている。 倉田氏は「これからのSCLCの治療に免疫療法は欠かせない。有害事象を管理してタルラタマブを使用するのはわれわれの責務」とし、また「免疫療法はより早い段階での投与が効果を高めることがわかっている。今後タルラタマブの2次治療以前の使用が実現することを強く期待している」と述べた。SCLC患者が直面する現実 長谷川 一男氏らが運営する肺がん患者の会ワンステップでは、2ヵ月に1度「おしゃべり会」を設けている。同会にSCLC患者も参加するが、1〜2回で来られなくなることが多かったという。 疾患自体の厳しさにとどまらず、SCLCの患者・家族が直面する現実は深刻だ。患者の喫煙が発症に関連することから、家族は患者を責め、患者は罪悪感に苛まれる。 2016年の日本肺癌学会学術集会。プログラムの中に「30年間変わらない小細胞肺がんの治療」と題したセッションが設けられていたという。当時は分子標的薬や免疫療法が非小細胞肺がんの景色を変えていた時期であり、SCLCが取り残されていた現実を表しているといえるだろう。30年変わらなかった治療に光が差し始めた 転機が訪れたのは2019年だった。世界肺がん学会(WCLC2019)の最重要演題が集まるPresidential Symposiumで、SCLCの免疫治療の結果が発表された。「長く止まっていた領域にようやく光が差し始めた瞬間だった」と長谷川氏は当時の興奮を伝える。 その後、SCLCに対してタルラタマブが臨床導入される。長谷川氏によれば、タルラタマブが臨床で使われるようになってから、治療中も仕事を続けているSCLC患者に出会うこともあるという。 SCLC治療に選択肢が増えることは「仕事ができる、家族との時間を守れる」など患者・家族の日常生活にも大きな恩恵をもたらす。「以前は生きられるかどうかで精一杯というのがSCLC患者さんの実情だったが、今はどう生きるかを考える余地が出てきた」と長谷川氏は強調した。 長谷川氏は最後に、「タルラタマブのような新薬が3次治療から2次治療、そして1次治療へと移行していき、SCLC患者の現実をどんどん変えてくれることを願っている」と結んだ。

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医師でリスクの低いがんは?~日本人の職業とがんリスクの大規模研究

 日本の労働者における職業とがん種別発症リスクの関連を全国規模で調査した、東海大学の深井 航太氏らによる大規模症例対照研究の結果、肉体労働や運輸関連の職業でがんリスクが高いなど、職業による違いがみられ、とくに男性で顕著であることがわかった。一方、医師などの専門職では肺がん、食道がん、胃がん、大腸がんのリスクが低いことが示された。Journal of Occupational and Environmental Medicine誌オンライン版2026年4月14日号に掲載。 本研究は、労働者健康安全機構の有する病職歴データベース(ICOD-R、2005〜23年度)を活用した多施設共同、病院ベース症例対照研究である。14万6,994例のがん症例と、年齢・性別・入院年をマッチングした27万8,244例の対照群を対象に分析した。喫煙、飲酒、肥満、シフトワークなどの生活習慣・背景因子を調整したうえで、一般事務従事者を基準とした職業別の調整オッズ比を算出した。 主な結果は以下のとおり。<男性>・がん全体では、医師、歯科医師、獣医師、薬剤師、教師などの専門職およびホワイトカラーの職業においてリスクが低い一方で、肉体労働、サービス業、輸送関連の職業ではリスクが高い職業が多かった。・肺がん、食道がん、胃がん、大腸がんは、医師などの専門職でリスクが低かったが、販売、飲食物調理、接客サービス、自動車運転、建設、土木、金属製品、運搬の職業では、肺がん、大腸がん、肝がんのリスクが高かった。・木製品製造従事者は胆道がんリスクが高かった。・建築家、土木技術者、測量士、音楽家、化学製品製造従事者は膀胱がんリスクが高かった。・前立腺がんは多くの職種で一般事務職よりもリスクが低かったが、これは潜在的な発症率の差というより、受診行動やPSA検査を含む検診受診率における職業間の差異を反映している可能性がある。<女性>・がん全体では、職業分類による差は男性ほど顕著ではないが、特定の部位で関連が認められた。・電気機械組立従事者は、肺がん、胆道がん、胃がんのリスクが有意に高かった。・胃がんは、事務機器操作、商品販売、家庭生活支援サービス、衣服・宝石製品製造の従事者の間でリスクが高かった。・大腸がんは、教師、芸術家、デザイナー、写真家や、映像操作、販売類似職業、家庭支援サービス、介護サービス、農業の従事者でリスクが低かった。・乳がんは、保健師、助産師、看護師、その他の医療従事者、介護サービス従事者が、一般事務職と比較して有意にリスクが低かった。

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生菌製剤と食物繊維、肺がんに対するICIの効果を増強か/日本呼吸器学会

 がん免疫療法において腸内細菌叢へのアプローチが注目されている。近年、生菌製剤として用いられる酪酸菌Clostridium butyricum MIYAIRI 588株(以下、CBM588)が、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を用いた進行肺がん患者の全生存期間(OS)の延長と関連していたことが、後ろ向き研究で報告されている1)。また、腎細胞がんでは、無作為化比較試験においても、CBM588がICIによる治療を受ける患者の無増悪生存期間や奏効率の改善に寄与する可能性が示唆されている2,3)。そこで、本邦においても、CBM588の使用の有無と食物繊維の摂取量がICIの効果に及ぼす影響について、前向き観察研究での検討が実施された。その結果、CBM588の使用はICIによる治療を受けた非小細胞肺がん(NSCLC)患者のOSを延長する可能性があり、その効果は食物繊維摂取量が多いと増強されることが示唆された。第66回日本呼吸器学会学術講演会において、徳永 龍輝氏(熊本大学病院 呼吸器内科)が報告した。 本研究は、単施設前向き観察研究として実施された。対象は、2021年3月~2024年8月に熊本大学病院でICIによる治療を開始した、20歳以上の進行・再発NSCLC患者101例とした。ICI治療開始3週間前から投与中の期間に、整腸剤としてCBM588を投与された患者(CBM588群、55例)と投与されなかった患者(対照群、46例)に分類した。また、アンケート回答が得られた88例について、推定食物繊維摂取量が10g/1,000kcal以上に相当するhigh-fiber集団(CBM588群25例、対照群30例)と、それ未満のlow-fiber集団(それぞれ23例、10例)に分類して評価した。OSの解析には、傾向スコアに基づく逆確率重み付け(IPTW)を用いたCox比例ハザードモデルを使用した。 主な結果は以下のとおり。・CBM588群は対照群と比較して、OSが有意に延長した。OS中央値はCBM588群未到達、対照群10.1ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.24~0.78、p=0.005)。・IPTWを用いた解析においても、CBM588群でOSの有意な延長が認められた(HR:0.28、95%CI:0.14~0.58、p<0.001)。・食物繊維摂取量別の解析において、CBM588群ではhigh-fiber集団がlow-fiber集団と比較して、OSが有意に延長した。OS中央値はhigh-fiber集団未到達、low-fiber集団27.3ヵ月であった(HR:0.26、95%CI:0.08~0.82、p=0.021)。・一方、対照群では、high-fiber集団とlow-fiber集団の間にOSの差はみられなかった(OS中央値:15.9ヵ月vs.16.1ヵ月)。 本結果について、徳永氏は「腸内細菌は食物繊維の発酵により酪酸などの短鎖脂肪酸を産生する。この酪酸はCD8陽性T細胞の抗腫瘍機能を高めるとされており、ICIの抗腫瘍効果を増強した可能性が考えられる」と考察した。また「NSCLC患者において、CBM588はICIの効果を増強し、生存期間を延長する可能性がある。また、十分な食物繊維摂取下では、さらにICIの抗腫瘍効果を増強する可能性があることが示唆された」とまとめた。

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がん薬物療法における皮下注射剤の可能性/日本臨床腫瘍学会

 近年、がん薬物療法領域での皮下注射剤の活用が広がっている。2026年度診療報酬改定では外来腫瘍化学療法診療料への皮下注製剤の算定も認められる見通しとなった。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)では、腫瘍内科医、薬剤師、緩和ケア医、看護師、制度申請者の立場から、皮下注射の現状と課題が多角的に論じられた。がん治療の時間毒性を改善できる皮下注射 大阪大学の吉波 哲大氏は、腫瘍内科医の立場からがん薬物療法における「時間毒性」の概念を提示した。がん薬物療法においては、骨髄抑制や悪心などの薬剤毒性に加え、近年は経済毒性が注目されている。もう1つの側面として、吉波氏は時間毒性の重要性を訴える。 時間毒性は経済毒性とも無関係ではない。たとえば、通院により仕事を休むことで、給与に影響が出る。このように、時間毒性は深刻化すると経済毒性につながる。「医療者は時間毒性に対する取り組みを強く認識しなければならない」と吉波氏は説明した。 吉波氏が専門とする乳がん領域でも皮下注射は活用されている。HER2陽性乳がんでは、トラスツズマブとペルツズマブの併用療法が用いられるが、近年トラスツズマブとペルツズマブの配合皮下注製剤(商品名:フェスゴ)が登場した。フェスゴは2剤併用と同等の血中濃度と有効性を示す。投与時間に関しては、従来の2剤投与の90分超に対し、フェスゴでは最短5分と、1時間以上短縮ができる。患者に2剤投与とフェスゴ投与のどちらを選ぶかを聞いたところ、85%がフェスゴと回答している。その理由の多くは「診療における所要時間の短さ」であった。 皮下注製剤について吉波氏は「がん治療の時間毒性を軽減する可能性を十分に秘めている」と結論付ける。製剤技術の進化が皮下注射の可能性を広げる 小牧市民病院の山本 泰大氏は、薬剤師の観点から皮下注製剤の特性と今後の展開を論じた。従来、皮下投与可能な薬液量は2mLが目安とされてきたが、ヒアルロン酸を配合することで皮下組織にスペースが確保される。そのため、薬液量が増えても投与が可能になった。同院では現時点で外来化学療法患者の約20%が皮下注射を受けている。「今後もさらに増えていくであろう」と山本氏は述べた。 国内で承認されている皮下注射抗がん剤として、前述のフェスゴに加えてダラツズマブ、アミバンタマブ、モスネツズマブなどがある。海外でもいくつかの薬剤で臨床試験が進んでいるという。 「皮下注射抗がん剤は、今後もさらに広がっていくことが予想され、医療コストや患者負担軽減につながることは間違いない。これからは臨床現場での運用や副作用のエビデンスを蓄積していくべき」と山本氏は述べる。緩和ケア領域における皮下注射のメリット 広島市立広島市民病院の余宮 きのみ氏は、緩和ケアにおける皮下注射の臨床的意義を紹介した。緩和ケア領域において持続皮下注はその簡便性と安全性から世界的に普及している。日本緩和医療学会の「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)」でも、経口困難な患者に対するオピオイドの持続皮下注が推奨される。 緩和ケアにおける皮下注射の利点として余宮氏は、ルート確保の容易さ、シリンジポンプを小さくできる可能性、経口剤に比べた鎮痛達成の早さといった点などを挙げた。 「皮下注射は緩和領域においても重要な選択肢になるであろう」と余宮氏は述べる。安全な皮下注射投与のために 国立がん研究センター東病院の市川 智里氏は、看護師の立場から発言。皮下注射は簡便ではあるものの必ずしも安全というわけではないと指摘した。抗体薬、G-CSF製剤、ホルモン薬と多岐にわたる薬剤が皮下注射として使用されており、薬剤ごとの特性と注意事項を把握しておくことの重要性を強調する。 具体的には、6R(Right Patients・Right Drug・Right Dose・Right Time・Right Route・Right Purpose)と全身状態評価の徹底を挙げた。投与部位、硬結・疼痛予防、放射線照射部位・瘢痕部位の回避といった基本を押さえるとともに、皮下脂肪層が薄い高齢者や低栄養患者に対する工夫も重要だという。 同院では薬剤別の早見表(投与間隔、使用針ゲージ、投与部位、投与前チェック項目など)を化学療法室に掲示し、スタッフが入れ替わっても一定の質を保てるよう工夫している。市川氏はまた、「投与観察時間を患者とのコミュニケーション機会として活用し、副作用や生活上の意見を聞き取ることで治療継続を支援していきたい」と話す。外来腫瘍化学療法診療料への皮下注射の算定 国立がん研究センター中央病院の下井 辰徳氏は、2026年度診療報酬改定における「外来腫瘍化学療法診療料」への皮下注射剤算定について解説した。従来、点滴・静注は外来腫瘍化学療法診療料として算定されるが、皮下注製剤は算定対象外とされていた。 算定対象外であるため、医療機関は皮下注射を積極的に選択しにくいのが現状だ。フェスゴを例にとると、外来腫瘍化学療法診療料が算定できないという理由で、4割以上の患者で使用されていないという。 こうした状況を受け、日本臨床腫瘍学会をはじめとする団体が合同で医療技術評価分科会に要望を提出した。要望で示したのは、皮下注も点滴と同様に専門的なケアと安全管理を伴う医療行為であること、算定されない現状が患者の時間毒性軽減という利益を阻害していること、財政影響が限定的であるといった点である。 中医協での審議の結果、点数は点滴・静注よりも少ないが、2026年6月から皮下注製剤に対しても算定が認められる見通しだ。「次回診療報酬改定までの2年間で、算定の活用状況、点数設計などが検討されていくと予想される」と下井氏は述べる。

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親ががんのとき、子供のケアはどうする?【非専門医のための緩和ケアTips】第122回

親ががんのとき、子供のケアはどうする?今回はがんになった親を持つお子さんのケアについてです。悩むことも多いこの話題について考えてみたいと思います。今日の質問大学病院から、若年のがん患者を紹介されました。お子さんがいて、まだ親の病状について、きちんと理解できていない様子です。患者の予後は3〜6ヵ月程度と予想され、治療効果は乏しくなっているものの、しばらくは大学病院に通院するようです。ただ、近い将来、私たちの訪問診療で看取る可能性が高いと予想しています。子供のケアはどのように取り組むとよいでしょうか?地域で緩和ケアに取り組んでいると、時々遭遇する難しい状況かと思います。幸い大学病院からの紹介が比較的早いタイミングだったため、これから関係構築に取り組みながら、お子さんのケアも考えることができそうです。まず、われわれが理解する必要があるのは、子供の発達段階を理解して適切な対応を考える必要があるという点です。ご質問の情報だけではお子さんの具体的な状況がわからないのですが、仮に10歳程度としましょう。10歳程度の子供の発達段階は、徐々に抽象的な概念の理解や先々の予測などについても考えが及ぶようになります。つまり、10歳児は多くの場合、死の概念や不可逆性を理解できるのです。また、事実を隠すような対応は、短期的には平穏でも長期的には家族に対する不信感や「知っていたら、こうしたかった」といった不全感につながるといわれています。一方、緩和ケアの実践では難しいときがあるのも事実です。患者である親やほかの親族が子供への説明を望まないというケースがしばしばあります。多くの場合、子供への影響を心配する気持ちや、どのように話せばよいかわからない、といった苦しさに基づいたものです。また、このような状況にある患者は、若い就労世代であることが多く、がん治療で収入が絶たれているにもかかわらず、介護保険の対象年齢(原則40歳以上)に該当しない場合があります。そういった意味からも、さまざまな支援が必要になる状況です。こうした状況での子供のケアは、一般知識を身に付けたうえで、社会福祉士や公認心理師・臨床心理士といった各職種にも力を借りることが必要です。私のように地域の基幹病院に勤務していれば院内で他職種と連携できますが、在宅医療や診療所の医師はどのように対応すればよいのでしょうか?おそらく地域ごとにできることは異なると思います。もし皆さんがこういった難しいケアを提供する必要性に直面した際は、地域の基幹病院の緩和ケア部門に相談してみてはいかがでしょう? さまざまな事情で入院が必要になる可能性の高い患者でもあり、情報共有の意味合いもあります。基幹病院の専門職に相談できるだけでも対応の幅が広がるでしょう。誰が対応しても難しい状況ですので、地域の緩和ケアリソースをフル活用して、ケアに取り組んでいただけたらと思います。今日のTips今日のTips子供の発達段階に合わせ、ほかの専門職も交え、地域のリソースを使って対応することが大切。

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タルラタマブのCRS関連発熱を解析、発熱が奏効と関連か/日本臨床腫瘍学会

 小細胞肺がん(SCLC)治療薬タルラタマブは、2026年3月27日に添付文書が改訂され、2次治療から使用可能となった。本剤は高い効果が期待されているが、免疫活性化に伴うサイトカイン放出症候群(CRS)による発熱の頻度が高く、適切な管理方法と予測マーカーの確立が急務となっている。そこで、山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター)らの研究グループは、タルラタマブによる治療を受けたSCLC患者を対象とした後ろ向き研究を実施し、発熱のタイミングや持続時間などと奏効との関連を解析した。その結果、投与1回目と2回目の両方で発熱がみられた患者は、奏効割合(ORR)が高かった。また、発熱の早期からステロイドを用いることで安全に投与を継続できることも示された。本結果は、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で発表された。 研究グループは、埼玉医科大学国際医療センターにおいてタルラタマブ治療を受けた、再発または進行SCLC患者25例を対象として後ろ向き研究を実施した。本研究では、37.5℃以上を発熱と評価し、発熱患者にはヒドロコルチゾン100mgを投与した。また、発熱が6時間以上持続または再度発熱した場合はデキサメタゾン9.9mgを投与した。データカットオフ日は2026年2月28日であった。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は72歳(範囲:50~82歳)、男性の割合は84.0%であった。・タルラタマブ治療開始時に何らかのグルココルチコイドが処方されていた患者は36.0%であった。・37.5℃以上の発熱を認めた割合は、投与1回目(サイクル1の1日目[C1D1])は64.0%、投与2回目(C1D8)は87.0%であった。・発熱のタイミングについて、投与から発熱までの時間の中央値は、C1D1では13.7時間であったのに対し、C1D8は25.2時間であり発熱までの時間が有意に長かった(p=0.005)。・発熱の持続時間(37.5℃以上になってから37.0℃未満に低下するまでの期間)中央値は、C1D1では40.5時間であったのに対し、C1D8は27.3時間であり発熱の持続時間が有意に短かった(p=0.019)。・発熱に対する治療の内訳は、ヒドロコルチゾンのみがC1D1 37.5%、C1D8 35.0%であり、ヒドロコルチゾンのみでは解熱に至らずデキサメタゾンの追加投与が必要となった患者がそれぞれ62.5%、55.0%であった。C1D1、C1D8ともにトシリズマブを用いた患者はいなかった。ステロイド投与量の中央値(プレドニゾロン換算)は、C1D1、C1D8共に91mgであった。・C1D1とC1D8の両方で発熱を認めたdouble-fever群は、認めなかった群と比較して、ORRが有意に高かった(p=0.011)。 本結果について、山口氏は「少数例の検討ではあるが、double-feverパターンを示した患者では、ORRが高くなる傾向があることがわかった。また、発熱の早期からステロイド介入を行う統一されたプロトコールを用いることで、安全に治療を行うことができた」とまとめた。また、本発表の後に実施されたプレスリリースセッションにおいて「タルラタマブ投与後の慎重な観察期間を投与後72時間とすることを提言する。安全な入院管理を行うとともに外来治療への円滑な移行体制が確立されることで、多くのSCLC患者にこの有望な治療を届けることができると期待している」と述べた。

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EGFR変異NSCLC、アミバンタマブ皮下注+ラゼルチニブの日本人解析結果(PALOMA-3)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)において、アミバンタマブ皮下注製剤(商品名:リブロファズ)+ラゼルチニブ(同:ラズクルーズ)の併用療法は、アミバンタマブ静脈内投与製剤(同:ライブリバント)+ラゼルチニブと一貫した有効性を示し、Infusion-Related Reaction(IRR)の発現率を低減させることが、国際共同第III相試験「PALOMA-3試験」で示されている1)。本試験の日本人集団の解析結果について、田宮 基裕氏(大阪国際がんセンター)が第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で報告した。本解析において、アミバンタマブ皮下注製剤は日本人集団でも全体集団と一貫した臨床的有益性を示すことが示唆された。なお、アミバンタマブ皮下注製剤は2026年3月18日に薬価収載され、同日に発売されている。・試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験・対象:EGFR変異陽性(exon19欠失またはL858R)で、オシメルチニブ+プラチナ製剤を含む化学療法後に進行したNSCLC患者・試験群(SC群、206例):アミバンタマブ皮下投与(体重に応じ1,600mgまたは2,240mg、最初の4週間は週1回、それ以降は隔週)+ラゼルチニブ経口投与(240mg、1日1回)・対照群(IV群、212例):アミバンタマブ静脈内投与(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の4週間は週1回、それ以降は隔週)+ラゼルチニブ経口投与(240mg、1日1回)・評価項目:[主要評価項目]2サイクル目1日目もしくは4サイクル目1日目のトラフ濃度、1~15日目の血中濃度曲線下面積[副次評価項目]奏効割合(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、患者満足度、安全性など[探索的評価項目]全生存期間(OS)など 今回は、日本人集団56例(SC群26例、IV群30例)の解析結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・年齢中央値はSC群70歳、IV群63歳であった。ECOG PS0の割合はそれぞれ62%、27%であり、SC群が高かった。脳転移歴を有する割合はそれぞれ46%、23%であり、こちらもSC群が高かった。・日本人集団の薬物動態パラメータは、全体集団と同様であった。・ORRはSC群39%、IV群30%であった。なお、データカットオフ時点において、奏効例では死亡および病勢進行イベントは認められていなかった。・PFS中央値はSC群未到達、IV群4.5ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.18~1.10)。・OS中央値はSC群未到達、IV群8.8ヵ月であった(HR:0.14、95%CI:0.02~1.17)。1年OS率はそれぞれ96%、48%であった。・Grade3以上の有害事象の発現割合はSC群42%、IV群70%であった。投与中止に至った有害事象の発現割合はそれぞれ15%、20%であった。・SC群におけるIRRの発現率は15%であり、IV群の60%と比較して低減した。・静脈血栓塞栓症(VTE)の発現割合はSC群12%、IV群17%であった。なお、SC群のVTEは、予防的抗凝固薬の投与を受けていない患者のみに発現した。 本結果について、田宮氏は「EGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLC日本人患者において、アミバンタマブ皮下注製剤+ラゼルチニブが、より有望な治療選択肢となることを支持するものである」とまとめた。 また、SC群ではIRRの発現が低減した一方で、皮膚障害は低減しなかったことについて問われ、これに対して同氏は「皮下投与では薬剤の吸収が緩やかであり、ピーク濃度は低くなる。このことにより、SC群でIRRの発現が低減した可能性がある。一方で、皮膚障害には、組織における薬剤濃度が関係していると考えられる。体内の薬剤濃度はSC群のほうが安定して高い濃度を維持している可能性があり、このことから皮膚毒性や低アルブミン血症はSC群で多い傾向にあったのではないか」と見解を述べた。

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