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Dr.光冨の肺がんキーワード解説「EGFR変異 Part1」【肺がんインタビュー】第110回

第110回 Dr.光冨の肺がんキーワード解説「EGFR変異 Part1」肺がんではさまざまなドライバー変異が解明されている。それに伴い、種々の標的治療薬が登場する。それら最新の情報の中から、臨床家が知っておくべき基本情報を近畿大学の光冨徹哉氏が解説する。

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第22回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2025

 日本臨床腫瘍学会は2025年2月13日にプレスセミナーを開催し、3月6~8日に神戸で開催される第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)の注目演題などを紹介した。今回の会長は徳島大学の高山 哲治氏が務め、「Precision Oncology Toward Practical Value for Patients」というテーマが設定された。 2019年にがん遺伝子パネル検査が保険収載となり今年で5年を迎える。検査数は毎年順調に増加しているものの、「検査を受けられるのは標準治療終了後、または終了見込み時に限られる」「保険適用となる薬剤が限られ、かつ承認外薬を使うのは煩雑」などの要因から、検査後に推奨された治療に到達する患者は10%程度に限られる現状がある。日本臨床腫瘍学会をはじめとしたがん関連学会は長くこの状況を問題とし、改善を図る活動を行ってきた。今回のテーマにもそうしたメッセージが込められている。 今年の演題数は計1,267題、うち509題は海外からのものだ。また12月中旬まで臨床試験の結果を待って最新の内容を盛り込む「Late Breaking Abstract」をはじめて採用し、約20題が採択された。以下、主な演題を紹介する。プレジデンシャルセッション・全16演題Presidential Session 1 呼吸器 血液3月6日(木)8:30~11:101)PS1-1 TTF-1陰性の進行非扁平上皮非小細胞肺癌に対するカルボプラチン+nab-パクリタキセル+アテゾリズマブ併用療法の第II相試験:F1NE TUNE(LOGIK2102)2)PS1-2 完全切除後のALK遺伝子転座陽性非小細胞肺癌に対する術後Alectinibの第III相試験(ALINA試験):日本人薬物動態、安全性解析3)PS1-3 Phase I/II study of tifcemalimab combined with toripalimab in patients with previously treated advanced lung cancer4)PS1-4 In-depth Responder Analysis of PhALLCON, a Phase 3 Trial of Ponatinib Versus Imatinib in Newly Diagnosed Ph+ ALLPresidential Session 2 泌尿器 頭頸部 TR・臨床薬理3月7日(金)15:00~17:405)PS2-1 未治療切除不能尿路上皮癌に対してエンホルツマブベドチン+ペムブロリズマブ併用療法と化学療法を比較したEV-302試験:アジア人サブグループ解析6)PS2-2 Safety profile of belzutifan monotherapy in patients with renal cell carcinoma: A pooled analysis of 4 clinical trials7)PS2-3 LIBRETTO-531:RET遺伝子変異陽性甲状腺髄様癌に対する一次治療としてのSelpercatinibの有効性・安全性・生存のアップデート8)PS2-4 血中遊離DNAによりHER2遺伝子増幅が認められた固形がんに対するトラスツズマブ デルクステカンの多施設共同臨床第II相試験(HERALD/EPOC1806試験) データ アップデートPresidential Session 3 消化管3月7日(金)8:20~11:009)PS3-1 RAS野生型大腸癌におけるmodified-FOLFOXIRI+セツキシマブ療法の効果予測臨床因子:DEEPER試験(JACCRO CC-13)10)PS3-2 血中循環腫瘍DNA陽性の治癒切除後結腸・直腸がん患者を対象としたFTD/TPI療法とプラセボとを比較する無作為化二重盲検第III相試験(CIRCULATE-Japan ALTAIR/EPOC1905)11)PS3-3 再発高リスクStage II結腸癌に対するオキサリプラチン併用術後補助化学療法の至適投与期間に関する第III相試験:ACHIEVE-2試験12)PS3-4 進行食道がんに対するNivolumab+Ipilimumab or 化学療法:CheckMate648における日本人サブグループの45ヶ月フォローアップPresidential Session 4 肝胆膵 希少がん 乳腺3月8日(土)8:30~11:1013)PS4-1 CRAFITYスコア2点の肝細胞癌に対する一次薬物療法:レンバチニブと免疫療法の治療効果の比較14)PS4-2 Final Results of TCOG T5217 Trial:SLOG vs Modified FOLFIRINOX as First-Line Treatment in Advanced Pancreatic Cancer15)PS4-3 消化管・膵原発の切除不能進行・再発神経内分泌腫瘍に対するエベロリムス単剤療法とエベロリムス+ランレオチド併用療法のランダム化第III相試験:JCOG190116)PS4-4 脳転移を伴う又は伴わない治療歴のあるHER2陽性の進行/転移性乳癌患者を対象とするトラスツズマブ デルクステカンの試験結果(DESTINY-Breast12)会長企画・特別セッション特別講演がんの近赤外光線免疫療法(光免疫療法)The Era of Liquid Biopsy Biomarkers and Precision Medicine in Gastrointestinal Cancers特別企画腫瘍循環器学の重要性と実態:小室班研究を踏まえて会長企画シンポジウム全ゲノムシークエンスの臨床実装ゲノム医療で推奨された保険適応外薬をどのように使うか?激論!『条件付き承認制度』の活用はドラッグ・ロス対策に有用か!?ctDNAに基づくがん治療希少がんの遺伝性腫瘍がん遺伝子パネル検査は1次治療開始前に実施するべきか?大腸がんに対する新たな分子標的治療薬注目のシンポジウム 今回の学会テーマと深く関連するがん遺伝子パネル検査の課題と今後の方向性については上記シンポジウムで2つのテーマが設定されている。京都大学の武藤 学氏が関連する2つのセッションの概要を説明した。会長企画シンポジウム2:ゲノム医療で推奨された保険適用外薬をどのように使うか?3月6日(木)14:00~15:30 遺伝子変異に基づいて推奨された治療薬は日本の医療制度では保険適用外で使用困難な現状があり、治験や先進医療の活用が求められるものの、制度上の制約が多い。欧米では患者支援プログラム(PAP)やコンパッショネート・ユースの仕組みがある。東京科学大学の池田 貞勝氏が基調講演を行い、医師、患者代表、経済学者がそれぞれの立場から発表を行う。会長企画シンポジウム6:がん遺伝子パネル検査は1次治療開始前に実施するべきか?3月8日(土)14:00~15:30 日本において保険収載の遺伝子パネル検査は標準治療終了後に行うこととされているが、患者の状態が悪化し、推奨された治療を受けられないケースも多い。海外では1次治療前の検査が推奨されており、日本でも早期検査の意義が議論されている。早期のパネル検査の有効性を検討する臨床試験の結果を共有し、がん種別の検討や厚労省の見解を発表する。 さらに、昨年の学会で初めて行われたSNSを使った学会広報に関する活動に関する報告も引き続き行われる。これまでJSMOのSNSワーキンググループ(SNS-WG)は、昨年の学会において対象プログラムのスライド撮影およびSNS投稿解禁を実現し、今年の学会ではSNS投稿時の公式ハッシュタグを「#JSMO25」に統一することとした。これまで国内では「#JSMO2024」、海外では「#JSMO24」が多く使われ、SNS上で分断が起こっていたことに対処したものだ。委員会企画 禁煙推進セッション/SNSワーキンググループシンポジウム オンコロジー領域におけるSNS利用3月6日(木)8:30~10:00 インターネット上の医療情報のファクトチェックをテーマとした論文を執筆した豊川市民病院の呉山 菜梨氏、SNSを使った医療コミュニケーション経験が豊富な帝京大学ちば総合医療センターの萩野 昇氏が講演を行い、SNS-WGメンバーの東海大学・扇屋 大輔氏が昨夏の「医学生・研修医のための腫瘍内科セミナー」においてWGが行った情報発信と成果について報告する。―――――――――――――――――――第22回日本臨床腫瘍学会 開催概要会期:2025年3月6日(木)〜8日(土)会場:神戸コンベンションセンター開催形式:現地(現地主体、一部ライブ配信+オンデマンド配信)SNSハッシュタグ:#JSMO25学会サイト:https://site2.convention.co.jp/jsmo2025/―――――――――――――――――――

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ICI関連心筋炎の診断・治療、医師の経験値や連携不足が影響

 2023年にがんと心血管疾患のそれぞれに対する疾病対策計画が公表され、その基本計画の一環として、循環器内科医とがん治療医の連携が推奨された。しかし、当時の連携状態については明らかにされていなかったため、新潟県内の状況を把握するため、新潟県立がんセンター新潟病院の大倉 裕二氏らは「免疫チェックポイント阻害薬関連心筋炎(ICIAM)についての全県アンケート調査」を実施。その結果、ICIAMではアントラサイクリン関連心筋症(ARCM)と比較し、循環器内科医とがん治療医の双方の経験や組織的な対策が少なく、部門間連携の脆弱性が高いことが明らかとなった。Circulation Report誌オンライン版2025年2月4日号掲載の報告。 本研究は新潟大学循環器内科と新潟腫瘍循環器協議会(OCAN2020)が、ICIAMとARCMに関する質問票を県内すべての循環器内科医とその病院の指導的ながん治療医に配布し行われた。 主な結果は以下のとおり。・アンケートには、病院29施設の循環器内科医124人と指導的立場にあるがん治療医41人が回答した。・ICIAMの臨床経験があると報告した循環器内科医は31.8%、指導的立場にあるがん治療医は24.4%で、ARCMの経験(循環器内科医の80.0%[p<0.001]、指導的立場にあるがん治療医の58.5%[p=0.009])よりも有意に低かった。・21年以上の勤務歴のあるベテランの循環器内科医は20年以下の循環器内科医と比較してICIAMの経験が少なかった(18.6%vs.38.5%、p=0.018)。・免疫療法を実施している20施設のうち、12施設(60%)では循環器内科医と指導的立場にあるがん治療医の間で「相談なし」と回答し、5施設(25%)では「ICIAM 発症後に相談した」と回答の一致を認めた。一方、ARCM発症前または発症後の部門間相談について、「相談なし」と回答したのは回答したのは4施設(20%)のみで、12施設(60%)で「ARCM発症後に相談した」と回答の一致を認めた。 本結果を踏まえ、大倉氏らはICIAM診療における5つのギャップを次のように示しており、(1)循環器内科医とがん治療医の経験のギャップ(2)循環器内科医とがん治療医の知識のギャップ(3)循環器内科医の若手とベテランの世代間ギャップ(4)循環器内科とがん診療科の部門間ギャップ(5)連携体制の病院間のギャップ 「病院では循環器内科医とがん治療医の連携を促進させる必要がある」としている。

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化学療法誘発性末梢神経障害患者の10人に4人が慢性的な痛みを経験

 化学療法誘発性の末梢神経障害(chemotherapy induced peripheral neuropathy;CIPN)の診断を受けたがん患者の10人に4人が慢性的な痛みを抱えていることが、新たなシステマティックレビューとメタアナリシスにより明らかになった。米メイヨー・クリニックの麻酔科医であるRyan D’Souza氏らによるこの研究は、「Regional Anesthesia & Pain Medicine」に1月29日掲載された。D’Souza氏は、「われわれの研究結果は、慢性的な痛みを伴うCIPNは、末梢神経障害と診断された人の40%以上に影響を及ぼす、世界的に見ても重大な健康問題であることを明示している」と述べている。 化学療法薬はがん細胞を殺すが、同時に健康な細胞や組織、神経系にもダメージを与え、特に末梢神経への影響が大きい。CIPNの症状には、バランスや協調運動の喪失などの運動障害と、感覚の喪失、しびれ、うずき、「針で刺されたような感覚」、皮膚の灼熱感などの感覚障害がある。CIPNの有病率については、これまでにも複数の研究で報告されているが、どの程度が慢性的な痛みを経験するのかについては明らかになっていない。 この点を明らかにするために、D’Souza氏らは、28カ国でCIPNの診断を受けた計1万962人を対象に実施された77件の研究データを用いて解析を行い、慢性的な(3カ月以上)痛みを伴うCIPNの統合有病率を推定した。28カ国のうち実施研究数が最も多かったのは、米国での13件、次いで日本での10件だった。また、研究の多く(45.45%)は前向き観察研究であり、その他は、後ろ向き観察研究(37.66%)、ランダム化比較試験(16.88%)などであった。対象者のがん種としては、大腸がん(25件の研究、32.47%)、乳がん(17件の研究、22.08%)が多かった。 解析の結果、対象者における慢性的な痛みを伴うCIPNの統合有病率は41.22%であることが明らかになった。化学療法の種類別に解析を行うと、同有病率が最も高かったのはプラチナ系抗がん薬での40.44%、次いでタキサン系抗がん薬での38.35%であった。がん種別に見ると、肺がん患者を対象にした研究で最も高い有病率(60.26%)、卵巣がん患者(31.40%)とリンパ腫患者(35.98%)を対象にした研究で最も低い有病率が報告されていた。 研究グループは、「今後の研究では、化学療法が神経痛を引き起こす具体的な機序を解明するとともに、命を救うための治療を受けているがん患者をその痛みから守ることができる治療法の開発に焦点を当てるべきだ」と話している。

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在宅で痙攣に対応する【非専門医のための緩和ケアTips】第94回

在宅で痙攣に対応する脳腫瘍や脳転移をはじめとして、痙攣は進行がん患者の緩和ケアでよく遭遇する症状です。前回の髄膜播種の回でも触れました。緊急対応が必要となる症状なので、しっかり理解して、準備をしておくことが重要です。今回の質問脳転移のある肺がん患者さん。自宅で痙攣していると訪問看護師から連絡がありました。薬剤を持っていくにも時間がかかる状況で、救急搬送せざるを得ませんでした。もう少しできることがあったかと思うのですが、どう対応すれば良かったのでしょうか?脳転移のように中枢神経に病変がある場合、痙攣発作が生じることがあります。すでに脳転移がある場合は、抗けいれん薬を使用していることが多いかと思います。ただ、訪問診療で診ている状況では、病状がさらに進行することや内服が安定しなくなることがあり、入院中はコントロールできていた痙攣が在宅で再発することも珍しくありません。緩和ケアで遭遇する痙攣で難しいのは、「重積状態になりやすい」ことです。考えてみれば当然で、脳腫瘍や脳転移のように器質的な病変が中枢神経にあるのですから、痙攣の原因を除去することができません。痙攣がなかなか止まらないのも納得です。もう1つ難しい点は、「静脈路が確保しにくい」ことです。とくに在宅医療の状況下では、事前準備がないと静脈路確保に時間がかかってしまいます。また抗がん剤治療を長く頑張ってきた患者は血管がもろくなっており、ルート確保をしたくてもできないことがあります。そういった観点からは、筋肉注射などの投与経路の代替手段を多く知っておく必要があります。在宅緩和ケアで痙攣を生じやすい患者に対応するためには、事前の準備が重要です。具体的には、痙攣時に備えた薬剤の準備と、家族や訪問看護師との情報共有を大切にしましょう。痙攣時に備え、私は前もって小児用の坐薬のジアゼパムを処方しておくことがあります。一般的には成人に対して使用することは少ないのですが、痙攣が発生して訪問看護師に連絡をし、到着を待つ時間は家族にとって不安なものです。在宅医療の特性上ある程度は仕方ないものの、医療者が到着するまでに何らかの対応ができることは、本人や家族の安心につながります。家族でも投与しやすい坐薬を自宅に置き、痙攣が起こった時はまずはそれを家族に使ってもらい、その間に自宅に向かうのです。痙攣重積となり、単発の抗けいれん薬の投与では痙攣が止まらない時には、注射での持続投与が必要です。この時点で入院を勧めるかどうかは、予想される予後や患者本人・家族の状況や希望によるでしょう。ただ、痙攣は多くのご家族が在宅療養を継続することは難しいと感じる症状であり、在宅の医療者にとっても対応困難である場合も多いものです。ですので、私は「入院を検討してもよいと感じている」と率直にお伝えしながら、何が本人と家族にとっての最善かを話し合うようにしています。在宅緩和ケアで難しい対応を迫られる痙攣ですが、皆さまの経験はいかがでしょうか?今回のTips今回のTipsがん患者の痙攣には、事前の「薬剤」と「話し合い」が大切。

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NRG1融合遺伝子陽性がんへのzenocutuzumab、とくに期待できるがん種は?/NEJM

 進行ニューレグリン1(NRG1)融合遺伝子陽性がんに対するzenocutuzumab(MCLA-128)の有効性および安全性を評価した第II相臨床試験の結果が、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのAlison M. Schram氏らeNRGy Investigatorsにより報告された。とくに非小細胞肺がん(NSCLC)および膵臓がんの患者において有効性が示され、有害事象の大部分は低Gradeであった。NRG1融合遺伝子は、複数の固形がんで確認されているリカレントながんドライバー遺伝子で、NRG1がヒト上皮成長因子受容体3(HER3)に結合し、HER2とのヘテロ二量体化と下流での腫瘍成長および増殖経路の活性化を引き起こす。zenocutuzumabは、HER2およびHER3を標的とする初の二重特異性抗体薬で、前臨床試験では複数の種類の腫瘍でzenocutuzumabの抗腫瘍活性が示されていた。NEJM誌2025年2月6日号掲載の報告。腫瘍の種類を問わない進行NRG1融合遺伝子陽性がん患者を対象に試験 研究グループは、腫瘍の種類を問わない進行NRG1融合遺伝子陽性がん患者を対象に、zenocutuzumabの有効性と安全性を評価する登録制の第II相臨床試験を行った。18歳以上、進行または転移固形腫瘍の診断を受け、試験担当医師の見解でそれら腫瘍種に対する標準治療を受けたもしくは標準治療の対象外であり、次世代シークエンス法によりNRG1融合遺伝子陽性と確認された患者を適格とした。 登録被験者は、2週間ごとにzenocutuzumab 750mgを静脈内投与された。主要評価項目は、試験担当医師の評価による全奏効(完全奏効[CR]または部分奏効[PR])とした。副次評価項目は、奏効期間、無増悪生存期間(PFS)、安全性などであった。30%で奏効、NSCLCでは29%、膵臓がんで42% 2019年9月25日~2024年1月31日(データカットオフ日)に、12種の腫瘍を有する204例が登録され治療を受けた。このうち、4例(乳がん2例、NSCLC 2例)は評価可能であったが測定可能病変を有していなかった。そのほか、データカットオフ日前の24週間未満に初回zenocutuzumabの投与を受けたなどの理由で、計43例が除外され、主要有効性集団には10種の腫瘍を有する161例(主にNSCLC[94例]と膵臓がん[36例])が含まれた。 測定可能病変を有し、データカットオフ日の24週間以前に登録された158例において、奏効が得られたのは30%(95%信頼区間[CI]:23~37)であった。奏効期間中央値は11.1ヵ月(95%CI:7.4~12.9)であり、データカットオフ日の時点で奏効例の19%が持続していた。 奏効は、NSCLC(27/93例、29%[95%CI:20~39])、膵臓がん(15/36例、42%[25~59])など複数種の腫瘍と、複数のNRG1融合パートナーで認められた。 PFS中央値は6.8ヵ月(95%CI:5.5~9.1)であった。 有害事象は、主にGrade1または2であった。試験担当医師判断によるzenocutuzumab関連有害事象で多くみられたのは、下痢(患者の18%)、倦怠感(12%)、悪心(11%)であった。注入に伴う反応(複合事象)は患者の14%に認められた。1例が治療関連有害事象によりzenocutuzumabを中止した。

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METエクソン14スキッピングNSCLC治療、最近の知見【肺がんインタビュー】第109回

第109回 METエクソン14スキッピングNSCLC治療、最近の知見2024年、グマロンチニブが承認され、TKIが3剤となったMETエクソン14スキッピングNSCLC。大阪国際がんセンターの西野和美氏に、同病態の臨床経験と最近の知見を紹介いただいた。

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免疫チェックポイント阻害薬関連の1型糖尿病、生存率との関連~日本人2万例を解析

 免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病(ICI-T1DM)の発現割合、危険因子、生存率への影響について、奈良県立医科大学の紙谷 史夏氏らが後ろ向き大規模コホートで調査した結果、ICI-T1DMは0.48%に発現し、他の免疫関連有害事象(irAE)と同様、ICI-T1DM発現が高い生存率に関連していることが示唆された。Journal of Diabetes Investigation誌2025年2月号に掲載。 本研究は、わが国の診療報酬請求データベースの1つであるDeSCデータベースを用いた後ろ向き大規模コホート研究で、2014~22年にICIを投与された2万1,121例が登録された。ICI-T1DM発現の危険因子とその特徴をロジスティック回帰分析で評価し、ICI初回投与の翌日以降の新たなirAEの発現をアウトカムとした。  主な結果は以下のとおり。・ICI投与開始後、2万1,121例中102例(0.48%)にICI-T1DMが認められた。・PD-(L)1阻害薬とCTLA-4阻害薬の併用は、PD-1阻害薬単独と比較してICI-T1DMのリスクが高かった(オッズ比[OR]:2.36、95%信頼区間[CI]:1.21~4.58、p=0.01)。・過去に糖尿病(OR:1.59、95%CI:1.03~2.46、p=0.04)または甲状腺機能低下症(OR:2.48、95%CI:1.39~4.43、p<0.01)と診断された患者はICI-T1DMリスクが高かった。・Kaplan-Meier解析では、ICI-T1DM患者はそうでない患者よりも生存率が高かった(log-lank検定p<0.01)。・多変量Cox回帰分析では、ICI-T1DM発現は低い死亡率と関連していた(ハザード比:0.60、95%CI:0.37~0.99、p=0.04)。

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がんが肺に転移しやすいのはなぜ?

 肺はがん細胞にとって魅力的な場所なのか、進行がん患者の半数以上で肺転移が認められる。その理由の一つとなり得る研究結果が報告された。この研究では、がんが転移した肺の中ではアミノ酸の一種であるアスパラギン酸の濃度が上昇しており、がん細胞が増殖しやすい環境が形成されている可能性のあることが示唆されたという。フランダースバイオテクノロジー研究機関(VIB、ベルギー)がん生物学センターのGinevra Doglioni氏らによるこの研究結果は、「Nature」に1月1日掲載された。 Doglioni氏は、「乳がんに罹患したマウスや患者の肺では、がんに罹患していないマウスや患者の肺に比べてアスパラギン酸のレベルが高いことが分かった。これは、アスパラギン酸が肺転移に重要な役割を果たしている可能性があることを示唆している」とVIBのニュースリリースで述べている。 この研究でDoglioni氏らはまず、肺に転移したがん細胞の遺伝子発現について調べ、通常とは異なる「翻訳プログラム」が存在することを示すエビデンスを見つけた。翻訳とは、細胞内で遺伝情報を設計図にしてタンパク質を生成するプロセスのことをいう。翻訳プログラムが変化すると生成されるタンパク質の種類も変わり、その結果、がん細胞が肺という環境で成長しやすくなっている可能性がある。 では、このような進行性のがん転移では、何が翻訳プログラムの変化を引き起こす要因となっているのだろうか。Doglioni氏らが転移性乳がんマウスのがん細胞を調べた結果、肺転移におけるがん細胞の攻撃性や増殖性の促進は、タンパク質であり翻訳開始・伸長因子でもあるeIF5Aのハイプシン化という翻訳後修飾の増加により引き起こされる可能性が示唆された。 さらに、腫瘍分泌因子(tumour-secreted factor;TSF)で前処理したマウスと対照マウスの肺間質液中の栄養素濃度を比較したところ、前者ではアスパラギン酸の濃度が顕著に増加していることが確認された。そこで、アスパラギン酸がeIF5Aのハイプシン化に及ぼす影響を検討したところ、アスパラギン酸は、がん細胞に取り込まれるのではなく、がん細胞表面にあるNMDA受容体というタンパク質を活性化させることが判明した。これによりシグナル伝達カスケードが引き起こされ、最終的にeIF5Aのハイプシン化が促進される。がん細胞は、このプロセスを通じて翻訳プログラムを変化させ、肺の環境を自らの増殖に適したものに変えていることが示唆された。 転移性乳がん患者の肺腫瘍サンプルを調査したところ、マウスで観察されたものと同様の翻訳プログラムの存在が確認された。また、肺転移では他の臓器への転移と比較して、アスパラギン酸に結合するNMDA受容体のサブユニットの発現量が増加していることも明らかになった。 論文の上席著者であるVIBのSarah-Maria Fendt氏は、「この相関関係は、臨床的な文脈において本研究結果が重要であることを強調しており、アスパラギン酸によるシグナル伝達が肺で増殖するがん細胞に共通する特徴である可能性を示唆している。さらに、今回特定されたメカニズムを標的とする薬剤はすでに存在しており、さらなる研究によって臨床に応用されるようになる可能性がある」と述べている。

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髄膜播種の症状は難しい【非専門医のための緩和ケアTips】第93回

髄膜播種の症状は難しい緩和ケアではたまに出合う難しい症状があるのですが、そのうちの1つが「髄膜播種」に関連した症状です。脳や脊髄の周りを流れている「脳脊髄液(CSF)」にがん細胞が入り込み、それが髄膜全体に広がってしまうことで起こります。病態の解決は難しいのですが、その難しさを理解し、少しでも患者さんにできることを考えてみましょう。今回の質問訪問診療で診ていたがん患者が頭痛を訴えたため、薬物療法を試してみたものの効果がなく、嘔気も出てきて基幹病院に入院となりました。その後、原疾患の髄膜播種だったとの報告をもらったのですが、疑うことができなかったと反省しています。どうすれば気付けたのでしょうか?がん患者を担当していると、まれに経験するのが髄膜播種です。今回の質問のように診断が難しく、気付かれないケースも多いと感じます。前提として原疾患の進行があり、予後が限られた状態で生じることが多いため、さらに診断を難しくします。ましてや在宅診療であれば、適切なタイミングでの診断はなかなか難しいのが現実でしょう。髄膜播種の症状としては、頭痛と嘔気が代表的です。ただ、ここに神経症状が加わるため、症状が多彩になります。意識障害、認知機能の低下はまだわかりやすいのですが、視覚・聴覚障害という局所的な神経症状があることがさらに診断を難しくします。私自身、担当するがん患者さんが難聴を訴え、調べていくと髄膜播種を併発していた、という経験を何度かしています。ほかにも下肢の感覚異常や尿閉なども髄膜播種の一症状であることがあります。典型症状だけに捉われていると、見逃しやすい病態なのです。髄膜播種の診断には、髄液検査やMRIを用います。ただし、これらは血液検査のように手軽にできるものではないため、検査前確率が高いことが求められます。進行がん患者で新規の神経症状があった際には、まずは髄膜播種を疑うことから始めましょう。髄膜播種の症状緩和はなかなか難しいのですが、一般的なオピオイドなどの疼痛緩和に加え、ステロイドの投与を考慮します。頭痛は頭蓋内圧亢進が症状を悪化させると考えられており、ステロイドによりこれらの改善が見込まれるためです。加えて、化学療法や放射線治療は原疾患への治療効果だけでなく、症状緩和の観点からも有効とされています。ただし、これは予想される予後などを含め、がん治療医の判断によることになるでしょう。私は進行した患者さんを担当することが多く、髄膜播種併発例に侵襲的な治療が適応となることは少ない印象です。最後に、こういった中枢神経に影響が及ぶ状況になると、痙攣が生じる可能性に留意する必要があります。入院していれば、抗けいれん薬をすぐに投与できるでしょうが、在宅であれば備えが必要です。在宅での痙攣の対応については次回にまとめますが、まずはベンゾジアゼピンの注射薬や坐薬を常備することを覚えておきましょう。以上、診断だけでなく、対応も難しい髄膜播種についてお話ししました。多彩で難治の症状に悩まされることも多いですが、丁寧にアセスメントをしながら対応してみてください。今回のTips今回のTips多彩な症状を特徴とする髄膜播種、まずは「疑う」ことが大切。

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患者本人にがん告知する?しない?-医療者間の意見対立【こんなときどうする?高齢者診療】第9回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」で2024年12月に扱ったテーマ「医療者間のコンフリクト:医療者間の意見の対立をよりよいゴールに導くコツ」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。専門性の違う職種が集まる医療チームで、意見の対立(コンフリクト)は避けられない課題です。 “対立がないことは調和ではなく無関心だ”という言葉が示すように、対立は避けるべき悪ではなく、チームがそのトピックに強い関心を持っていることの現れです。意見の対立を患者へのよりよいケアを提供するチャンスに変える方法を一緒に学んでいきましょう。コンフリクトをチャンスに変えるコンフリクトとは「複数の人が関与し、何らかの意思決定、医療行為が必要な患者の検査・治療・ケアに関する異なる意見・要求の存在、対立とそれにまつわる不和、人間関係の緊張」を指します。この内容は、大きく以下の3つに分類することができます。(1)タスク何をすべきかに関する意見の対立(2)プロセス誰がどのように役割を果たすか、認知や解釈に関する対立※同じ物事に対峙していても、考え方はさまざまであることから生じる(3)エモーション感情の対立や不一致。優越感、劣等感、満足、後悔など以下のケースが3つのコンフリクトのどれにあてはまるか想像してみてください。症例70歳男性 肺がんステージIII 家族は息子1人・娘2人場面カンファレンスメンバー看護師、医師どのような対話がされた?:看護師は「家族が本人への告知を望んでいない」と報告し、家族の意向に沿うべきと提案。一方、医師は「治療方針を決めるために本人に告知すべき」と主張し意見が対立。コンフリクトを解消する3つの鍵このケースでは、告知するか否かというタスクで対立していると考えられます。同時に現状の解釈の相違や背後にある感情的な対立も想定できます。対立要素を想定できたら、ディスカッションしやすいよう関係性を整えましょう。関係性調整のキーポイントは、共通目標・共通知識・相互尊重の3つです。共通目標の再確認医療チームの共通目標は「患者に最善の利益を提供すること」ことのはずです。この患者にとって何が大切か、最善か(Matters Most)をチームで改めて共有し直し、話し合いの土台を作ります。共通知識・認知の整備次に、全員が同じ情報を持っている状態を作ります。加えて情報の解釈がどのようなものであるかの共有も必要です。ある職種だけが知っていてほかの職種は知らない情報がないか、また同じ情報に関して解釈の相違がないかを確認します。職種間での情報格差や解釈の違いの存在に注意を払いましょう。相互尊重の姿勢自分の専門性や個人的な価値観に基づいて意見を押し付けていないか振り返りましょう。他職種の専門性や立場を尊重することで、感情的な緊張を和らげることができます。DESC法でわかりやすく伝える共通目標・共通知識・相互尊重の3つができたら、最後に話し方の型を使います。ここでのお勧めはDESC法。コンフリクト場面以外でもさまざまなタイミングで使える有用な型です。具体的に見ていきましょう。DESC法Describe状況を説明するExpress自分の感情も含めて伝えるSpecify具体的な提案を行うConsequences提案によって想定する結果を示すはじめに現在の状況を説明し(Describe)、次に意見の背景にある不安、焦り、心配などとともに懸念事項を共有します。Expressでは感情も含めて伝えることがポイントです。それらを踏まえて具体的な治療・ケアを提案し(Specify)、最後にそれによって得られる結果を示します(Consequences)。これにより、各人の現状・提案・結果を踏まえたディスカッションがしやすくなります。今回のケースでDESC法を使って医師として発言すると、例えばこのような言い方になります。「患者は肺がんステージIIIですが、ご家族は告知を希望していないとのことです。一方で、患者本人の自分自身の健康・医学的情報の共有や告知などへの希望は十分把握できていません。患者には状況を知る権利があり、治療方針が本人の意思と一致しないことを懸念しています。ご本人に情報共有の希望や共有する際の方法などを確認し、本人が知りたい場合には家族と調整して情報を共有したいと思います。希望しない場合には、希望しない理由や、それでも知っておきたいことなどを確認して、家族の意向に沿って治療を進める方向で考えることを提案します。」いかがでしょうか?最後に、今回のケースを通じて次の問いかけを考えてみてください。自分の現場で同様の対立が起きたら、どのように対応しますか?共通目標・共通知識・相互尊重の3つをどのように実践できますか?DESC法を使うことで、どのように対話を進められるでしょうか?これらをシミュレーションすることで対立をチャンスに変えるヒントが見つかるはずです。ぜひ、一緒に練習していきましょう! よくある意見の対立症例はオンラインサロンでオンラインサロンメンバー限定の講義では、サロンメンバーが体験したコンフリクト2例をもとにどのような対応が可能かディスカッションしています。また、綿貫聡氏(東京都立多摩総合医療センター救急・総合診療科医長)を迎えた対談動画で、診断エラーを減らす方法の学びもご覧いただけます。

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限局型小細胞肺がんに対する同時化学放射線療法後のデュルバルマブ地固め療法:ADRIATIC試験【肺がんインタビュー】第108回

第108回 限局型小細胞肺がんに対する同時化学放射線療法後のデュルバルマブ地固め療法:ADRIATIC試験限局型小細胞肺がんに対する同時化学放射線療後のデュルバルマブ地固め療法による生存改善が第III相ADRIATIC試験で示された。日本人サブグループ解析の結果について、共同研究者である国立がん研究センター東病院の善家 義貴氏に解説いただいた。参考Cheng Y, et al. Durvalumab after Chemoradiotherapy in Limited-Stage Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2024;391:1313-1327.

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小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存に関する診療ガイドライン 2024年12月改訂 第2版

がん・生殖医療の普及等を受け、現状に即した新たな推奨を提示!7年ぶりとなる改訂第2版はMinds 2020に準拠、また推奨作成にはエビデンスだけでなく、価値観や容認性、実行可能性などさまざまな視点における合意形成方法としてGRADEが提唱する「EtD frameworks」を用いた。2017年版で扱った8領域に、肺、耳鼻咽喉・頭頸部、膠原病を加えてパワーアップ。巻頭には各疾患領域の診療アルゴリズムを収載した。医師、看護師、薬剤師、心理士など多職種に向けた、がん・生殖医療の今を集結させた1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存に関する診療ガイドライン 2024年12月改訂 第2版定価7,150円(税込)判型B5判頁数576頁発行2024年12月編集日本癌治療学会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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PM2.5が多いとマラソン選手の記録が低下する

 マラソン選手は良い記録を出すために、レース前やレース中に摂取する食べ物や飲み物に細心の注意を払う。しかし、新たな研究によると、レース時の大気汚染のレベルも、走行タイムを左右する因子の一つであることが明らかになった。大気汚染のレベルが高いほど、選手の走行タイムが悪化する傾向があるという。 この研究は、米ハーバード大学博士課程のElvira Fleury氏らによるもので、詳細は「Sports Medicine」に12月18日掲載された。論文の筆頭著者であるFleury氏は、「ハイレベルのマラソン選手は記録向上のために、トレーニング、栄養、シューズやウエア、競技コース、さらに天候まで考慮して大会に臨んでいる。しかしわれわれの研究から、パフォーマンスの最大化には、大気汚染の影響をも考慮すべきであることが示された」と述べている。 Fleury氏らは、米国で定期的に行われている9件の大規模なマラソン大会の2003~2019年のデータ(計140大会分)を利用して、選手の完走タイムと当日の大気汚染レベル(PM2.5濃度)との関連を検討した。解析対象サンプル数は、男性が150万6,137件、女性は105万8,674件だった。 解析の結果、大会当日のPM2.5濃度が1μg/m3高いごとに、男性選手の平均完走時間は32秒(95%信頼限界30~33)、女性選手は25秒(同23~27)長いことが分かった。また、完走タイムの中央値で全体を二分して比較すると、記録が上位の選手の方が、大気汚染による記録低下の影響がより強く認められた。論文の上席著者である米ブラウン大学のJoseph Braun氏は、大学発のリリースの中で、「この結果は、大気汚染が高齢者や影響を受けやすい人々だけに健康リスクをもたらすのではなく、トレーニングを積み最も健康的と目される人々にさえ悪影響を及ぼす可能性のあることを意味している」と述べている。 研究グループによると、これまでの報告で大気汚染が心臓病、呼吸器疾患、肺がんのリスクだけでなく、全死亡リスクとも関連していることが示されているという。また今回の研究で明らかにされた、マラソン選手への大気汚染の影響のメカニズムについては、血圧の上昇、血管の収縮、肺機能の低下、および短期的な認知機能への影響を介してパフォーマンスを低下させる可能性があると推測している。 Braun氏は、「マラソンを完走できるような人は、一般的に非常に健康で高い心肺機能を有している。われわれの解析結果は、そのような極めて健康な人々に対しても、現在の環境基準を超えないレベルの大気汚染が悪影響を及ぼすことを明らかにした」と本研究の意義を強調。また著者らは、「今回のデータは、自動車や発電所のエネルギー源を化石燃料から環境負荷の少ない別の方法へ転換することで、大気汚染物質の排出を削減するという取り組みを支持するものである」と付け加えている。

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口内炎がつらいです【非専門医のための緩和ケアTips】第92回

口内炎がつらいですがん診療の進展に伴い、診療所の先生が基幹病院に通院中の患者さんを診察する機会が増えてきたのでは、と思います。抗がん剤治療の副作用対策は大きく進歩しましたが、まだつらい症状を訴える患者さんが多い副作用の1つが「口内炎」です。今回の質問私の外来患者が抗がん剤治療のために基幹病院に通院しています。私の外来で診察する際に、口内炎に対する対応を相談されたのですが、あまり経験がなく良いアドバイスができませんでした…。口内炎に苦しむ患者さんの様子を見ると、こっちもつらくなりますよね。口内炎は抗がん剤治療や分子標的薬の副作用として頻繁に発症します。一般的な化学療法では発症率は10%程度ですが、頭頸部がんの化学放射線療法では、さらに高頻度で見られます。ご質問にある患者さんが「すでに口内炎を発症しているのか」は不明ですが、まずは「予防」について考えてみましょう。口内炎の予防には口腔ケアが非常に重要です。口腔内の衛生を保ち、湿潤環境を維持するため、定期的に水分を口に含むことを指導しましょう。また、義歯の調整が必要な場合やその他の専門的な歯科治療が必要な場合は、歯科受診を推奨します。これらの予防策は患者さんの協力が重要ですので、がん治療の開始前から取り組むようアドバイスすると良いでしょう。口内炎ができてしまった場合には、口内炎の発症のタイミングや治療内容から、「がん治療関連の口内炎」か「その他の原因によるものか」を判断します。口内炎で問題になる症状の多くは口腔内の痛みです。多くの方は物理的刺激による口内炎を経験しているでしょう。あの痛みがさらに広範にあることを想像すると、そのつらさが想像できるかと思います。口内炎に対する薬剤は、症状や患者さんの状態に応じて選択します。内服が困難な場合には、口腔用軟膏や口腔用液が有用です。痛みが強い場合には、がん疼痛治療に準じて薬剤を調整します。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が効果を示すケースもあるため、腎機能障害や他の副作用に注意しつつ投与を検討することも1つの選択肢です。また、がん疼痛治療に用いられるオピオイドについても触れておきます。オピオイドは、口内炎の痛み緩和に一定の効果がありますが、通常、モルヒネ換算で60mg/日を超える投与が必要となることは少ない印象です。もしオピオイドの効果が乏しい場合には、カンジダなど感染症の合併として発症しているケースや、心理的要因(例:不安)が関与している可能性を考慮する必要があります。今回のTips今回のTipsがん治療に関連した口内炎、「予防」と「治療」の両方が大切です。

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RA合併肺がんに対するICI治療を考える【肺がんインタビュー】第107回

第107回 RA合併肺がんに対するICI治療を考える自己免疫疾患を合併するがん患者の治療においては、がん治療と自己免疫疾患の管理が複雑に絡み合う。とくに、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)などのがん免疫療法では、不明点が多い。そのような中、大阪南医療センターの工藤 慶太氏らがリウマチ(RA)合併肺がんのICI治療に関するリアルワールド試験を行った。自己免疫疾患合併がん、治療のジレンマ自己免疫疾患合併がんはがん治療医を悩ませる。がん治療による自己免疫疾患悪化、自己免疫抑制治療によるICIの有効性低下、自己免疫疾患の免疫亢進による免疫関連有害事象(irAE)発現といったClinical Questionに答えはない。画像を拡大する自己免疫疾患のなかでも頻度の高いRA患者は、一般集団に比べて発がんリスクが高い。とくに悪性リンパ腫、肺がんで多いと報告されており1)、肺がん患者のRA合併率は5.9%との報告もある2)。「自己免疫疾患イコールICI適用外」ではないICIは固形がんの生存予後に大きく関わり、今や治療に欠かせない。そのため、がん治療医はICIを使いたいと考える。しかし、自己免疫疾患合併がんにおけるICI治療に関しては前向きなデータがない。米国リウマチ学会(ACR)、日本リウマチ学会いずれのガイドラインにもICIの記載はない。がん免疫療法の使用を妨げるべきではなく、ベースラインの免疫抑制レジメンは可能な限り低用量にして維持する必要があるとする欧州リウマチ学会(eular)ステートメント、Annals of Oncology誌で発表された自己免疫疾患合併がんにおけるICI使用指針(レビュー)が数少ない指標だ。そういう状態の中、工藤氏は、さまざまなレトロ研究を分析し、自己免疫疾患イコールICI適用外というわけではない、という判断に至る。画像を拡大する工藤氏が所属する国立病院機構 大阪南医療センターは、年間約2,500名のRA診療が行われており、腫瘍内科医として以前からRA合併がん患者を診療する機会が多かったという。そのような中、あるIV期のリウマチ合併肺がん患者に関し、リウマチ主治医から「RAはコントロールするから、がんを何とかして欲しい」と依頼される。南大阪の5病院で後ろ向き試験を行う工藤氏は、まったくデータがない中、自施設でデータをまとめ出した。それが、南大阪の5病院でRA合併進行肺がんに対するICIの安全性と有効性を検証する後ろ向き試験に繋がった。この試験はリアルワールド研究なので、リウマチの治療内容も、ICIの治療内容も多種多様である。この試験の最も大きな特徴は、RAの疾患活動性が把握できている点である。実際に解析対象に含まれた疾患活用性のあるRAは81%にのぼる。「既報では疾患活動性のあるRAの割合は20〜30%、活動性RA合併例をこれだけ反映しているデータは貴重」と工藤氏は言う。画像を拡大する研究の結果、リウマチが急性に増悪(フレア)しても、きちんとコントロールすれば、ICI治療が継続できるICI投与後にRAのフレアを認めた症例は22例中9例(41%)。フレアはICI投与後早期に起こっている。ただ、フレアした9例中7例はICIを継続できている(ICI中止1例、一時中止1例)。工藤氏は「フレアしても、RAをきちんとコントロールすれば、ICI治療は継続できた」と結論する。画像を拡大するICIの治療効果については、少数例のレトロスペクティブ研究であるが、一般的なICIの効果と比較して劣るというようなデータではないという。治療継続期間は1年を超えており、「多くの症例で治療継続できていると示されたことには大きな意味がある」と工藤氏は指摘する。irAEについては、22例中9例(41%)に発現した。irAE発現4割程度という数値は、海外データと同等であり、免疫活動性のある日本の患者であってもirAEは必ずしも高くならないという結果だ。つまり、ICI投与によってリウマチの増悪やirAEが増えても、管理できれば、ICIの治療効果は非自己疾患非合併例と変わらないことになる。画像を拡大するがん治療医は必ずしもリウマチ治療の経験が深いとは言えない。また、リウマチ専門医も多くの方はがん治療についての知識・理解が十分とは言えない。たとえば、リウマチの場合、安定していれば3ヵ月に1回程度の外来で済むが、ICIを使う場合は短期フォローが必要である。「免疫の専門医とがん治療の専門医で治療方針についてすり合わせていくことが重要」と工藤氏は言う。 RA合併がんにおけるRA治療の方針工藤氏らは自施設の治療の方針も提案している。この方針はがん治療開前と開始後について、IC I+化学療法とICI単独に分けて作成されている。(詳細は下図)原則として、がん治療開始前・開始後ともはリウマチのステロイドはできるだけ低用量にして継続し、DMARDsを中止する。がん治療開始後にRA症状が悪化したら、ICI治療に拮抗するとされるアバタセプトと、がん発生リスクのあるJAK阻害薬を除いたDMARDsを再開。さらにコントロール不良の場合は、がん免疫に悪影響をおよぼさないとされるIL-6阻害薬を第一選択として用いる。画像を拡大する画像を拡大する自己免疫疾患合併がん患者にもICIの恩恵を十分に与えるICIは固形がんの生存予後に大きく関わり、今や治療に欠かせない薬剤である。RA合併肺がんの治療に十分なエビデンスがあるとは言えないが、「エビデンスだけを考えてしまうと、本来治療できる患者も治療を受けられない危惧がある」と工藤氏は言う。自己免疫疾患治療医と連携して、自己免疫疾患合併がん患者にもICIの恩恵を十分受けられるよう努めるべきであろう。参考1)LK Mercer, et al.Rheumatology (Oxford).2012;52:91-98.2)Khan SA, et al. JAMA Oncol.2016;2:1507-1508.

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「2024年のOncology注目トピックス」(肺がん編)【肺がんインタビュー】第106回

第106回 「2024年のOncology注目トピックス」(肺がん編)近年の肺がん薬物治療は、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に加え、抗体薬物複合体や二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE抗体)をはじめとした二重特異性抗体などの新規薬剤の開発、さらにこれらを駆使した薬物治療の進歩は目覚ましく、より多くの肺がん患者が治癒/長期生存を目指せる時代となってきた。2024年は多くのpractice changingな臨床試験が学会/論文発表され、本邦における「肺癌診療ガイドライン2024年版」でも数多くの新規治療が推奨されている。本稿では、これらの中でも現在/将来の実臨床に直結し得る報告について整理し概説する。[目次]1.TNM分類の改訂2.早期NSCLC(EGFR/ALK陰性の場合)2-1.II~IIIB期NSCLCに対する術前・術後のペムブロリズマブ(KEYNOTE-671試験)2-2.II~IIIB期NSCLCに対する術前・術後のニボルマブ療法(CheckMate 77T試験)2-3.2025年以降の切除可能NSCLC(EGFR/ALK陰性例)に対する周術期治療の展望2-4.IB~IIIA期完全切除後ALK融合遺伝子陽性NSCLCに対する術後アレクチニブ単剤療法(ALINA試験)3.切除不能III期NSCLC3-1.切除不能III期EGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対するCRT後のオシメルチニブ(LAURA試験)4.進行期EGFR遺伝子変異陽性NSCLC4-1.未治療進行期EGFR遺伝子変異NSCLCに対するアミバンタマブ+lazertinib併用療法(MARIPOSA試験)4-2.オシメルチニブ耐性後のEGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対するアミバンタマブ+化学療法±lazertinib(MARIPOSA-2試験)5.進行期ALK融合遺伝子陽性NSCLC5-1.未治療進行期ALK融合遺伝子陽性NSCLCに対するロルラチニブ単剤療法(CROWN試験)6.進行期ROS1融合遺伝子陽性NSCLC6-1.進行期ROS1融合遺伝子陽性NSCLCに対するレポトレクチニブ単剤療法(TRIDENT-1試験)6-2.進行期ROS1融合遺伝子陽性NSCLCに対するtaletrectinib単剤療法(TRUST-I試験)7.小細胞肺がん(SCLC)7-1.限局期SCLC(LS-SCLC)に対する同時CRT後のデュルバルマブ(ADRIATIC試験)1.TNM分類の改訂肺がんのTNM分類は、国際対がん連合(UICC)/米国がん合同委員会(AJCC)によって7年おきに改訂されており、第8版は2017年から施行されていた。2023年の世界肺癌学会(WCLC)で第9版のTNM分類が発表され、2024年にJournal of Thoracic Oncology誌に報告されている(Rami-Porta R, et al. J Thorac Oncol. 2024;19:1007-1027. )。本邦においても2024年12月末に「肺癌取扱い規約 第9版」が発刊となっており、2025年1月より発効されている。T/N/M各因子の主な変更点は以下のとおり。T因子変更なしN因子N2(同側縦隔かつ/または気管分岐下リンパ節への転移)がN2aとN2bに細分化N2a:単一のリンパ節stationへの転移、N2b:複数のリンパ節stationへの転移M因子M1c(胸腔外の1臓器または多臓器への多発遠隔転移)がM1c1とM1c2に細分化M1c1:胸腔外の1臓器への多発転移、M1c2:胸腔外の多臓器への多発転移これらの分類変更に伴い、病期分類も改訂(図1)がなされている。これにより、第8版と第9版でステージングが異なる可能性がある(図2)ため、注意されたい。図1 肺がんTNM分類の第9版のステージングの概要画像を拡大する(筆者作成)図2 肺がんTNM分類の第8版と第9版の相違点画像を拡大する(筆者作成)周術期治療のさまざまな治療開発が進む中で、第9版では、より切除可能性を意識した分類であると言える。ただし、欧州がん研究治療機構肺がんグループ(EORTC-LCG)によるIII期非小細胞肺がん(NSCLC)の切除可能性に関するサーベイ(図3)では、回答者によって切除可能性の考えが異なるサブセットもあり(例:multi-station N2(N2b)のIII期症例)、個々の症例ごとに多職種チーム(Multidisciplinary team)で協議することが求められる。図3 III期NSCLCにおけるTNMサブセットと切除可能性評価に関するサーベイ概要画像を拡大する(Houda I, et al. Lung Cancer. 2024;199:108061. より筆者作成)2.早期NSCLC(EGFR/ALK陰性の場合)2-1. II~IIIB期NSCLCに対する術前・術後のペムブロリズマブ(KEYNOTE-671試験)II~IIIB期(第8版)の切除可能なNSCLC患者に対して、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブの術前化学療法への上乗せと術後の単独追加投与(最大1年間)による有効性および安全性を検証した二重盲検プラセボ対照第III相ランダム化比較試験であるKEYNOTE-671試験の中間解析(追跡期間中央値25.2ヵ月)において、無イベント生存期間(EFS)の有意な延長(ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.46~0.72、p<0.001、中央値:未到達vs.17.0ヵ月)が認められたことが2023年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表され、New England Journal of Medicine誌に同時報告された(Wakelee H, et al. N Engl J Med. 2023;389:491-503. )。この試験の主要評価項目はEFSと全生存期間(OS)のco-primaryとなっており、片側α=0.025をEFS、OS、病理学的著効(mPR)、病理学的完全奏効(pCR)に分割し、厳密に制御されたデザインである(EFS:α=0.01、OS:α=0.0148、mPR:α=0.0001、pCR:α=0.0001)。2024年にはLancet誌にフォローアップ期間を延長(追跡期間中央値36.6ヵ月)したアップデート報告がなされ(Spicer JD, et al. Lancet. 2024;404:1240-1252. )、ペムブロリズマブ群におけるOSの有意な延長が示された(HR:0.72、95%CI:0.56~0.93、中央値:未到達vs.52.4ヵ月、p=0.00517)。なお、サブグループ解析では、PD-L1発現が高い患者やステージがより進行した患者でEFSのリスク軽減が認められている。また、治療関連有害事象は両群間で差は認められなかった(重篤な有害事象の頻度:17.7% vs.14.3%)。また、2024年12月のESMO Immuno-Oncology Congress(ESMO-IO)で報告された4年フォローアップデータ(追跡期間中央値:41.1ヵ月)においても、OS延長の傾向は維持されている(HR:0.73、95%CI:0.58~0.92)。KEYNOTE-671試験の結果から、2023年10月に米国食品医薬品局(FDA)の承認が得られ、本邦では2024年8月に国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得している。「肺癌診療ガイドライン2024年版」では、臨床病期II~IIIB期(第9版、N3を除く)に対して、術前にプラチナ製剤併用療法とペムブロリズマブを併用し、術後にペムブロリズマブの追加を行う治療が弱く推奨されている(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B)。2-2. II~IIIB期NSCLCに対する術前・術後のニボルマブ療法(CheckMate 77T試験)II~IIIB期(第8版)の切除可能なNSCLC患者に対して、抗PD-1抗体であるニボルマブの術前化学療法への上乗せと術後の単独追加投与(最大1年間)による有効性および安全性を検証した二重盲検プラセボ対照第III相ランダム化比較試験であるCheckMate 77T試験の中間解析(追跡期間中央値25.4ヵ月)において、EFSの有意な延長(HR:0.58、97.36%CI:0.42~0.81、p<0.001、中央値:未到達vs.18.4ヵ月)が認められたことが2023年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表され、New England Journal of Medicine誌に2024年に報告された(Cascone T, et al. N Engl J Med. 2024;390:1756-1769. )。副次評価項目であるpCR/mPR割合もニボルマブ群で向上が認められた(ニボルマブ群 vs.化学療法群:pCR 25.3% vs.4.7%[オッズ比:6.64、95%CI:3.40~12.97]、mPR 35.4% vs.12.1%[オッズ比:4.01、95%CI:2.48~6.49])。前述のKEYNOTE-671試験と同様に、PD-L1発現が高い患者やステージがより進行した患者でEFSのリスク軽減が認められた。これらの試験結果から、2024年10月にFDAの承認が得られている(本邦では2025年1月時点で未承認)。2024年のESMOでは、追跡期間中央値33.3ヵ月のアップデート報告が発表(ESMO2024、LBA50)され、引き続きEFSのベネフィットが示されている(HR:0.59、95%CI:0.45~0.79、中央値:40.1ヵ月 vs.17.0ヵ月)。また、2024年のWCLCでは、ニボルマブの術後投与の必要性を検討するために術前投与(CheckMate 816試験)と、術前・術後投与(CheckMate 77T試験)を両試験の患者背景を傾向スコアによる重み付け解析で調整することにより比較した研究が報告された(WCLC 2024、PL02.08)。CheckMate 77T群の患者では1回以上の術後ニボルマブを投与された患者のみが対象となっており、術後ニボルマブ投与が何らかの理由で困難であった患者は潜在的に除外されている点(CheckMate 77T群で有利な患者選択になっている可能性)には注意が必要であるが、周術期ニボルマブは術前のみのニボルマブに対して手術時点からのEFSを改善し(重み付けありのHR:0.61、95%CI:0.39~0.97)、とくにPD-L1陰性例や、non-pCR例で術後ニボルマブ投与の意義がある可能性が示唆されている。2-3. 2025年以降の切除可能NSCLC(EGFR/ALK陰性例)に対する周術期治療の展望2025年1月現在、NSCLCに対するICIを用いた周術期治療として、本邦ではCheckMate 816レジメン(術前ニボルマブ)、KEYNOTE-671レジメン(周術期ペムブロリズマブ)、IMpower010レジメン(術後アテゾリズマブ)が選択可能である(図4)。術前治療を行うレジメンにおいても、CheckMate 816レジメンとKEYNOTE-671レジメンでは術後治療の有無のみだけでなく、プラチナ製剤の種類や術前治療のサイクル数など細かな違いがあり(表1)、国内の各施設において、内科・外科双方で周術期の治療戦略方針を議論しておく必要があるだろう。また、EGFR遺伝子変異陽性例やALK融合遺伝子陽性例でもICIを用いた周術期治療が有効かどうか、PD-L1発現や術後のpCR/mPRステータス別の治療戦略など争点は未だ多く残っており、さらなるエビデンスの蓄積が求められる。さらに、IIIA-N2期のNSCLCを切除可能として周術期治療を行うか、切除不能として化学放射線療法(CRT)を行うかの判断は非常に難しい。2013~14年の国内のIIIA-N2期のNSCLCに対する治療実態調査(Horinouchi H, et al. Lung Cancer. 2024;199:108027. )では、周術期化学療法が行われたのは約25%であり、約59%はCRTが選択された。CRTが選択された患者で切除不能とされた主要な理由は、転移リンパ節数が多いことであり(71%)、周術期ICI戦略の登場によってこの勢力図が今後どのように変化していくか注視したい。図4 主要な周術期治療戦略の概略図画像を拡大する(筆者作成)表1 主要な術前ICIの臨床試験の患者背景の違い画像を拡大する(筆者作成)2-4. IB~IIIA期完全切除後ALK融合遺伝子陽性NSCLCに対する術後アレクチニブ単剤療法(ALINA試験)完全切除後のALK融合遺伝子を有するIB~IIIA期(第7版)NSCLCに対して、術後補助療法としてアレクチニブ(1,200mg/日を2年間内服)とプラチナ併用療法を比較したALINA試験の結果が2023年のESMOで発表され、2024年にNew England Journal of Medicine誌に報告された(Wu YL, et al. N Engl J Med. 2024;390:1265-1276. )。試験の注意点として、アレクチニブの用量が国内の進行期の承認用量(600mg/日)よりも多いことが挙げられる。主要評価項目である無病生存期間(DFS)は、II~IIIA期、IB~IIIA期の順に階層的に検証され、それぞれ有意な延長が示された(II~IIIA期のHR:0.24、95%CI:0.13~0.45、p<0.0001、IB~IIIA期のHR:0.24、95%CI:0.13~0.43、p<0.0001)。また、脳転移再発を含む中枢神経系イベントのDFSの延長も示されている(HR:0.22、95%CI:0.08~0.58)。ALINA試験の結果から、2024年4月にFDA承認が得られ、本邦では2024年8月に国内適応追加承認を取得している。また、「肺癌診療ガイドライン2024年版」では、ALK融合遺伝子陽性の術後病理病期II~IIIB期(第9版)完全切除例に対して、従来の術後補助療法(プラチナ併用療法)の代わりとしてアレクチニブによる治療を行うよう弱く推奨されている(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B)。今後は術後の時点でALK(およびEGFR)のステータスを確認することが求められる。3.切除不能III期NSCLC3-1. 切除不能III期EGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対するCRT後のオシメルチニブ(LAURA試験)切除不能なEGFR遺伝子変異陽性III期NSCLCでCRT終了後に病勢進行のない患者に対するオシメルチニブ地固め療法の有効性および安全性を検証した二重盲検プラセボ対照第III相ランダム化比較試験であるLAURA試験の主解析およびOSに関する第1回中間解析の結果が2024年のASCOで発表され、同年New England Journal of Medicine誌に報告された(Lu S, et al. N Engl J Med. 2024;391:585-597. )。試験デザインでは、オシメルチニブを永続内服する必要があった点に留意が必要である。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)はオシメルチニブ群で有意に延長し(HR:0.16、95%CI:0.10~0.24、p<0.001、中央値:39.1ヵ月vs.5.6ヵ月)、オシメルチニブ群で脳転移や肺転移などの遠隔転移再発が少ないことが示された(脳転移:8% vs.29%、肺転移:6% vs.29%)。OSは未成熟(成熟度20%)であり、プラセボ群では約8割が再発後にオシメルチニブの投与を受けており、今後のOSでも有意な延長が確認されるかどうかは長期フォローアップデータが待たれる。有害事象面では、放射線肺臓炎はオシメルチニブ群で数値的に多い(48% vs.38%)ものの、ほとんどがGrade2以下であった。なお、本試験には日本人が30例登録されており、日本人サブセットデータが2024年の日本肺癌学会で報告され、日本人サブセットにおいてもLAURA試験の全体集団の結果と一致したことが報告されている。また、日本人では肺障害が懸念されるものの、Grade3以上の放射線肺臓炎の頻度はわずか(4%、30例中1例のみ)であった。LAURA試験の結果から、2024年9月にFDA承認されており、本邦では2025年1月時点で未承認であるが、2024年7月に国内承認申請済みであり、そう遠くない未来には本邦でも使用可能な戦略になることが期待される。4.進行期EGFR遺伝子変異陽性NSCLC4-1. 未治療進行期EGFR遺伝子変異NSCLCに対するアミバンタマブ+lazertinib併用療法(MARIPOSA試験)未治療のEGFR遺伝子変異(exon19欠失変異あるいはL858R変異)陽性NSCLCに対する、アミバンタマブ(EGFRとMETの二重特異性抗体)とlazertinibの併用療法の有効性・安全性をオシメルチニブ単剤(およびlazertinib単剤)と比較した国際無作為化第III相試験であるMARIPOSA試験の第1回中間解析結果が2023年のESMOで発表され、2024年にNew England Journal of Medicine誌に報告された(Cho BC, et al. N Engl J Med. 2024;391:1486-1498. )。アミバンタマブ+lazertinib群でオシメルチニブ群と比較して有意なPFSの延長が示された(HR:0.70、95%CI:0.58~0.85、p<0.001、中央値:23.7ヵ月vs.16.6ヵ月)。2024年のASCOでは高リスクの患者背景(肝転移、脳転移、TP53変異陽性など)を持つサブグループでもアミバンタマブ+lazertinibのPFSベネフィットがあることが示され、論文化されている(Felip E, et al. Ann Oncol. 2024;35:805-816. )。OSについては未だ未成熟ではあるものの、同年のWCLCでアップデート報告(追跡期間中央値:31.1ヵ月)(WCLC 2024、OA02.03)が発表され、アミバンタマブ+lazertinib群のOS中央値は未到達、HRは0.77(95%CI:0.61~0.96、p=0.019)とアミバンタマブ+lazertinib群でこれまで絶対的な標準治療であったオシメルチニブ単剤療法を上回る可能性が示唆されている。2025年1月には、OSが統計学的有意かつ臨床的に意義のある延長を示したとのプレスリリースが出ており、2025年内の報告が期待される。もっとも、アミバンタマブを用いることで皮膚毒性や浮腫、インフュージョンリアクションや静脈血栓症など配慮すべき有害事象は増えるため、リスクベネフィットを踏まえた治療選択や、適切な毒性管理が求められる。この試験結果から、2024年8月にFDA承認が得られており、本邦では2024年4月に承認申請中である。4-2. オシメルチニブ耐性後のEGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対するアミバンタマブ+化学療法±lazertinib(MARIPOSA-2試験)アミバンタマブを用いた治療戦略は既治療例でも検討されており、オシメルチニブ耐性後のEGFR遺伝子変異(exon19欠失変異あるいはL858R変異)陽性NSCLCに対するアミバンタマブ+プラチナ併用療法±lazertinibの有効性・安全性を化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)と比較した無作為化オープンラベル第III相試験であるMARIPOSA-2試験の第1回中間解析結果が2023年のESMOで発表され、2024年にAnnals of Oncology誌に報告されている(Passaro A, et al. Ann Oncol. 2024;35:77-90. )。主要評価項目であるPFSは、アミバンタマブ+化学療法およびアミバンタマブ+化学療法+lazertinibにより、化学療法のみと比較して有意に延長したことが示された(HRはそれぞれ0.48、0.44、共にp<0.001、中央値はそれぞれ6.3、8.3、4.2ヵ月)。2024年のESMOでは第2回中間解析結果が発表され、追跡期間中央値18.1ヵ月時点におけるOS中央値は、統計学的な有意差は認めなかったものの、アミバンタマブ+化学療法群で化学療法群よりも延長する傾向にあった(HR:0.73、95%CI:0.54~0.99、p=0.039、中央値:17.7ヵ月vs.15.3ヵ月)。この試験結果から、2024年9月にFDAの承認(アミバンタマブ+化学療法のみ)が得られており、本邦では2024年5月に承認申請中である。5.進行期ALK融合遺伝子陽性NSCLC5-1. 未治療進行期ALK融合遺伝子陽性NSCLCに対するロルラチニブ単剤療法(CROWN試験)PS0~1の未治療進行期ALK融合遺伝子陽性NSCLCを対象として、ロルラチニブ単剤療法とクリゾチニブ単剤療法を比較した国際共同非盲検ランダム化第III相試験であるCROWN試験において、ロルラチニブによって主要評価項目であるPFSの有意な延長が2020年に示されていた(HR:0.28、95%CI:0.19~0.41、p<0.001、中央値:未到達vs.9.3ヵ月)(Shaw AT, et al. N Engl J Med. 2020;383:2018-2029. )。2024年に報告された同試験の長期フォローアップ報告(観察期間中央値60.2ヵ月)でも、PFS中央値は未到達であった(Solomon BJ, et al. J Clin Oncol. 2024;42:3400-3409. )。5年時点での中枢神経イベントフリー割合はロルラチニブでクリゾチニブよりも著明に高く(92% vs.21%)、高い頭蓋内制御効果が確認された。一方、ロルラチニブによる認知機能障害や気分障害などの中枢神経関連有害事象(全Gradeで約40%)に対しては慎重なマネジメントが求められる。この試験結果から、「肺癌診療ガイドライン2024年版」では、2023年から推奨度が変更となり、PS0~1のALK融合遺伝子陽性、進行NSCLCの1次治療として、ロルラチニブ単剤療法を行うよう強く推奨されている(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:B)。(※アレクチニブは推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:A、ブリグチニブは推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B)6.進行期ROS1融合遺伝子陽性NSCLC6-1. 進行期ROS1融合遺伝子陽性NSCLCに対するレポトレクチニブ単剤療法(TRIDENT-1試験)ROS1融合遺伝子陽性のNSCLCを含む進行固形がん患者を対象に、ROS1-TKIであるレポトレクチニブの有効性と安全性を評価した第I/II相試験であるTRIDENT-1試験の結果は、2023年のWCLCで初回報告され(WCLC 2023、OA03.06)、2024年にNew England Journal of Medicine誌に報告された(Drilon A, et al. N Engl J Med. 2024;390:118-131. )。ROS1-TKI未治療例が71例、既治療例が56例登録され、レポトレクチニブ単剤治療(1日1回160mgを14日間内服後、1回160mgを1日2回内服)により、主要評価項目であるORRは未治療例で79%、既治療例で38%、PFS中央値は未治療例で35.7ヵ月、既治療例で9.0ヵ月であったと報告された。また、この薬剤は分子量が小さいことから、ATP結合部位へ正確かつ強力に結合することができ、クリゾチニブなど従来のROS1-TKIの耐性変異として問題となるG2032R変異を有する患者においても59%に奏効が認められた。ただし、主な治療関連有害事象として、めまい(58%)など中枢神経系の有害事象には注意が必要である(治療関連有害事象による中止は3%)。この試験の結果から、2024年6月にFDA承認が得られ、本邦では2024年9月に国内製造販売承認を取得している。また、「肺癌診療ガイドライン2024年版」では、ROS1融合遺伝子陽性、進行NSCLCの1次治療として、レポトレクチニブを含むROS1-TKI単剤療法を行うよう強く推奨されている(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:C)(※ROS1-TKIの薬剤の推奨度は同列)。6-2. 進行期ROS1融合遺伝子陽性NSCLCに対するtaletrectinib単剤療法(TRUST-I試験)2024年のASCOでは、新規ROS1チロシンキナーゼ阻害薬であるtaletrectinib単剤療法の有効性、安全性を検証した単群第II相のTRUST-I試験の結果が報告(ASCO 2024、#8520)され、Journal of Clinical Oncology誌に同時掲載されている(Li W, et al. J Clin Oncol. 2024;42:2660-2670. )。ROS1-TKI未治療症例において奏効割合91%、頭蓋内奏効割合88%、PFS中央値23.5ヵ月と良好な成績を示した。クリゾチニブ既治療症例においても、奏効割合52%、頭蓋内奏効割合73%と良好な結果であった。主な有害事象はAST上昇(76%)や下痢(70%)であり、高い中枢神経移行性を持つ一方で、前述のレポトレクチニブと異なり中枢神経系の有害事象が比較的少ないことが特徴である。taletrectinibが神経栄養因子受容体(TRK)よりもROS1に対して酵素的選択性を示すことが起因していると考えられる。なお、TRUST-I試験は中国国内の単群試験であったが、国際共同単群第II相試験であるTRUST-II試験でも同様の結果が再現されたことが2024年のWCLCで報告されている(WCLC 2024、MA06.03)。これらの試験結果から、taletrectinibはFDAの優先審査対象となり現在審査中である。表2 主なROS1-TKIの治療成績、有害事象のまとめ画像を拡大する(筆者作成)7.小細胞肺がん(SCLC)7-1. 限局期SCLC(LS-SCLC)に対する同時CRT後のデュルバルマブ(ADRIATIC試験)I~III期の切除不能LS-SCLCに対する同時CRT後に病勢進行のない患者に対するデュルバルマブ地固め療法(最大2年間)の有効性および安全性を検証した二重盲検プラセボ対照第III相ランダム化比較試験であるADRIATIC試験の第1回中間解析の結果が2024年のASCOで発表され、同年New England Journal of Medicine誌に報告された(Cheng Y, et al. N Engl J Med. 2024;391:1313-1327. )(デュルバルマブ群の他、デュルバルマブ+トレメリムマブ群も存在するが、現時点で盲検化されている)。デュルバルマブ群はプラセボ群より有意にOS、PFS(co-primary endpoints)を延長した(OSのHR:0.73、98.321%CI:0.54~0.98、p=0.01、中央値:55.9ヵ月vs.33.4ヵ月、PFSのHR:0.76、97.195%CI:0.59~0.98、p=0.02、中央値:16.6ヵ月vs.9.2ヵ月)。肺臓炎/放射線肺臓炎はデュルバルマブ群で38.2%、プラセボ群で30.2%(Grade3/4はそれぞれ3.1%、2.6%)に発現し、免疫関連有害事象は全Gradeでそれぞれ32.1%と10.2%であった(Grade3/4はそれぞれ5.3%、1.4%)。本試験では同時CRT時の放射線照射の回数は1日1回と1日2回のいずれも許容されていた。本試験では1日1回照射を受けた患者の方が多く(約7割)、国によっては放射線照射を外来で行うことが主流であることが一因と考えられる。2024年のESMOで照射回数によるサブグループ解析結果が報告されており(ESMO 2024、LBA81)、いずれの照射回数においてもデュルバルマブ群でOS、PFSを改善することが確認されているが、1日2回照射の方がデュルバルマブ群、プラセボ群双方においてOS、PFSの絶対値が長いことも示されている。また、本試験には日本人が50例登録されており、日本人サブセットデータが2024年の日本肺癌学会で報告され、同時CRT後のデュルバルマブ地固め療法は日本人集団においても臨床的に意義のあるOSの改善が示されている。ADRIATIC試験の結果から、2024年12月にFDAで承認された。本邦では2025年1月時点で未承認であるが、LAURA試験レジメンと同時に国内承認申請済みであり、今後の承認が期待される。おわりに2024年に学会/論文発表された臨床試験のうち、国内ガイドラインで推奨された治療、および今後推奨が予想される治療を中心に解説した。2024年は切除可能な早期から進行期までさまざまな病期の肺がんにおける新知見が報告された印象的な1年であったと言える。本稿では詳しく取り上げなかったが、その他にも2024年に国内で新規承認されたレジメンは多く、表3にまとめた。2025年以降も肺がんの治療の進歩がさらに加速していくことを期待したい。表3 2024年に国内承認された、あるいは2025年内に承認が予想されるレジメン画像を拡大する(筆者作成)【2024年の学会レポート・速報】

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自壊創への対応【非専門医のための緩和ケアTips】第91回

自壊創への対応がん患者の緩和ケアでは、皮膚症状の対応が求められることもあります。中でもがん患者の「自壊創」は、経験がないと対応に苦慮することが多いでしょう。今回は、この自壊創の対応について考えます。今回の質問今度、訪問診療で新たに担当する乳がん患者がいます。紹介状では自壊創があり、訪問看護など定期的な創処置が必要とのことです。経験がないのですが、どのような対応や経過が想定されるのでしょうか?緩和ケアを実践していると、悪性腫瘍による自壊創を経験します。乳がんがその代表例ですが、ほかにも喉頭がんや子宮頸がんの患者さんもいました。腫瘍が増大して表層に露出した場合、そこが自壊創として難治性の潰瘍となります。ほかにも、頸部や鼠径部のリンパ節転移が増大して自壊創になったケースもありました。どのがん種でも、自壊創が引き起こす問題はある程度共通しています。出血、滲出液、そして悪臭です。そしてこれらは直接見えるため、患者本人や家族にとってつらい問題となります。私の経験では、滲出液や悪臭のために外出することすらできなくなってしまった患者さんもいました。このような創に対しては1)洗浄2)滲出液のドレッシング3)適切な薬剤の使用が基本的なアプローチとなります。自壊創は常にじわじわと滲出液が染み出しており、かつ創部には壊死組織があるため、定期的に洗浄することが有効です。そのうえで滲出液の多い部位に、吸水性のある被覆材でドレッシングします。創部が滲出液で湿ったままになると、そこが嫌気性菌などの繁殖源となり、悪臭が発生します。定期的な洗浄と適切なドレッシングで、まずはこれを阻止します。薬剤は疾患の状態によって使い分けますが、緩和ケアの面からは2つの軟膏について知っておくと良いでしょう。1)メトロニダゾール軟膏自壊創の悪臭は滲出液と壊死組織により繁殖した嫌気性菌が原因です。なので、嫌気性菌をカバーする抗菌薬であるメトロニダゾールを含む軟膏を創部に塗るというのは理にかなっていますよね。以前は薬剤部での製剤が必要でしたが、今はロゼックスゲルという製品が登場しており、そのまま使えて便利です。2)モーズ軟膏これは聞いたことがない方が多いかもしれません。塩化亜鉛による腐食作用により、自壊創のタンパク質を硬化することで効果を発揮します。化学的に熱傷をつくるような作用ですので、使用することで腫瘍塊も徐々に小さくなるケースも見られます。また圧迫で止血されない、じわじわとした出血を止める効果もあります。ただ、モーズ軟膏については、私は皮膚科の先生に対応をお願いしています。モーズ軟膏は刺激が非常に強く、正常皮膚に付くとその部位が化学的熱傷を起こしてしまいます。また、塩化亜鉛を溶かした軟膏の硬さは水分と亜鉛華デンプンの配合バランスで調節するのですが、これがなかなか難しく経験を要します。これらの理由から、使い慣れてない中で処置するのは危険もあるため、ぜひ専門の先生と相談しながら活用してください。今回のTips今回のTipsたまに遭遇する自壊創の対応、皮膚科の知識を身に付けて対応しましょう。

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