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第289回 在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省

<先週の動き> 1.在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省 2.医療事故調査制度の地域差なお顕著 報告の質と迅速性向上が課題/医療安全調査機構 3.再生医療の安全管理に警鐘 死亡事例と法令違反受け制度見直しへ/厚労省 4.汚職対応に第三者委員会が厳しい報告 「自浄作用の放棄」と批判/東大 5.胸部CTで肺がん見落とし死亡 37mm腫瘤見逃しで医療事故/神戸市立医療センター 6.医師による性犯罪相次ぐ 実刑判決を受け行政処分の遅れに厳しい視線 1.在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省厚生労働省は3月31日に、先日公表した2026年度の診療報酬改定について、疑義解釈(その2)で在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)の往診体制に関する施設基準を大幅に明確化し、とくに往診代行サービスの利用に厳しい要件を課すことを明らかにした。厚労省は、24時間往診体制を第三者サービスに依存する場合でも、患者への説明責任と医療の継続性確保を重視し、「体制内医師」であることを厳格に求める姿勢を示した。具体的には、往診担当医の氏名および担当日を患者・家族に文書で事前提示することが必須とされ、氏名の非開示は認められない。また、当該医療機関と雇用契約のない医師を往診担当医として記載することも不可とされた。さらに、やむを得ず事前に氏名を提示していない医師が往診を行う場合であっても、往診前日までに当該医療機関を訪問し、常勤医と対面で面談を行い、診療方針や患者情報を共有していることが条件となる。オンラインでの情報共有のみでは要件を満たさない点も重要である。共有すべき内容としては「患者の最新の病状や急変リスク」「今後の診療方針、緊急時の入院先や地域医療体制」「医療機関内の電子カルテや医療資材の運用方法」など、実務レベルまで具体的に示された。これにより、形式的な雇用契約のみでは要件を満たさず、対面での面談や診療方針の共有も必要となっている。従来の往診代行サービスは、外部医師のスポット対応や業務委託契約を前提とするモデルが多く、「誰が来るかわからない」体制でも運用されてきた。しかし、今回の解釈では、こうした外部プール型の仕組みは原則として施設基準を満たさない可能性が高く、実質的に継続困難とみられる。対応策としては、非常勤を含めた雇用契約の締結、連携医療機関としての正式な組み込み、自院内での当直体制強化などが挙げられるが、いずれも人的コストの増加は避けられない。今回の見直しは、責任の所在の明確化や医療の質担保という点では合理性を持つ一方で、小規模な在宅療養支援診療所にとっては24時間体制維持のハードルが一段と高まり、在宅医療提供体制の再編を促す可能性がある。制度上は在宅医療の推進が掲げられてきた中で、実運用面では「外注依存から体制内完結へ」の転換が強く求められる局面に入ったといえる。 参考 1) 疑義解釈資料の送付について(その2)(厚労省) 2) 在支診・在支病の施設基準、往診代行を使う場合は常勤医との対面での面談が必須に(日経メディカル) 2.医療事故調査制度の地域差なお顕著 報告の質と迅速性向上が課題/医療安全調査機構日本医療安全調査機構が公表した2025年年報によると、医療事故調査制度が始まった2015年10月~2025年末までの累計報告件数は3,633件に達し、このうち88.9%で院内調査が完了した。2025年単年では375件、月平均31件超で、前年よりやや増加した。都道府県別の人口100万人当たり報告件数は全国平均2.9件で、大分県と京都府がともに4.9件で最多、続いて三重県4.6件、宮崎県4.5件だった。その一方で、福井県1.1件、埼玉県1.6件、和歌山県1.7件など低い地域もあり、地域差が続いている。ただし、報告件数の多寡は直ちに医療安全水準を示すものではなく、報告文化や制度理解の差を反映している可能性がある。事故の起因となった医療内容では、分娩を含む手術が158件で全体の43.9%を占め、依然として最大の割合を占めた。処置は39件、10.8%だった。有床診療所では事故の起因となった医療内容の75.7%が手術関連で、帝王切開を含む分娩が多い点が目立った。手術の内訳では、経皮的血管内手術、内視鏡下手術、開腹手術が上位を占めた。事故発生から院内調査結果報告までの平均期間は494.4日で、前年より延びた。発生から報告まで100.1日、報告から院内調査結果報告まで394.3日で、迅速化にはなお課題が残る。2025年に完了した院内調査は360件で、累計3,230件となり、コロナ禍前の水準に戻りつつある。外部委員の参加は81.4%、解剖・死亡時画像診断(Ai)実施は49.4%だったが、いずれも前年より低下した。2026年4月からは制度見直しにより、医療事故判断プロセスの記録保存、管理者らの研修受講、遺族申し出への組織的対応などが求められる。報告の質と調査の透明性を高め、再発防止に結びつける運用強化が、今後の医療安全の焦点となる。 参考 1) 医療事故調査・支援センター 2025年 年報(日本医療安全調査機構) 2) 2025年の「人口100万人あたり医療事故報告件数」最多は大分と京都、手術・分娩関連の死亡事故が依然多い-日本医療安全調査機構(Gem Med) 3.再生医療の安全管理に警鐘 死亡事例と法令違反受け制度見直しへ/厚労省自由診療で行われる再生医療を巡り、死亡事例や法令違反が相次いでいる。厚生労働省の資料では、2025年8月に都内クリニックで自己脂肪由来間葉系幹細胞の投与中に患者が急変し死亡した事案を受け、提供の一時停止命令や立入検査を実施し、製造施設には改善命令を出した。提供医療機関側でも、救急体制の不備、適切な救急措置の未実施、原因究明に必要な投与残余物の廃棄などが課題として示された。別の都内のクリニックでも、計画に記載のない医師や医薬品・試薬による実施、未届出疾患への提供、疾病など報告の未実施などが確認され、改善命令が出されている。問題の背景には、自由診療の再生医療が「認定再生医療等委員会の審査・届出を経ている」ことで、患者側に国が有効性や安全性を評価したかのような誤認が生じやすい構造がある。厚労省の見直し資料も、美容やがん治療などで妥当性が明確でない再生医療が増え、健康被害や信頼性低下のリスクが顕在化していると整理している。日本再生医療学会も2026年3月に「科学的根拠が不十分な自由診療の拡大は深刻な課題だ」と表明している。厚労省は今後、再生医療等安全性確保法の見直しに向け、リスク分類の再検討、自由診療の妥当性評価、提供医師・医療機関の適格性確保、認定委員会の審査の質向上、患者フォローアップや監査体制の強化、国民へのわかりやすい情報提供などを検討する。医師にとっては、自由診療であっても「届出済み」では十分ではなく、科学的妥当性、救急対応、合併症発生時の検体保全、説明責任まで含めた実施体制が厳しく問われる局面に入った。 参考 1) 再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく行政処分等について(厚労省) 2) 再生医療等安全性確保法の見直しに関する今後の検討方法について(同) 3) 「再生医療」事故や違反相次ぐ 自由診療、安全性に課題 厚労省、制度見直しへ(時事通信) 4.汚職対応に第三者委員会が厳しい報告 「自浄作用の放棄」と批判/東大東京大学医学部・附属病院を巡る一連の汚職事件について、第三者のプロセス検証委員会は4月3日、大学側の対応を「組織の自浄作用と説明責任の放棄」と厳しく批判する報告書を公表した。問題の中心となったのは、内部通報があったにもかかわらず、警察の捜査を理由に学内調査を約7ヵ月間事実上停止した対応で、委員会は「真相究明を警察に委ねる姿勢は、『大学の自治』を自ら毀損する危うさをはらむ」と指摘した。報告書は、東大本部の初動の遅れに加え、総長を含む執行部の危機意識の不足、部局や研究室が互いに干渉しない組織風土、重要会議で議事録を残さないなど運営プロセスの軽視を根本要因に挙げた。また、「東大は悪いことをしない」という無謬性への思い込みと、不祥事が大学全体に及ぼす影響を十分に想像できない体質が、対応の後手を招いたと分析している。そのうえで委員会は、外部第三者による継続的なモニタリング、内部監査・監事監査・会計監査の連携強化、最高リスク責任者(CRO)の配置、対内外コミュニケーションの活性化、教員懲戒制度の迅速化と抜本的見直しの5点を提言した。東大では報告書を受け、近日中に改革策を示すとしている。今回の報告は、医学部に限らず大学全体のガバナンス不全を問う内容であり、東大の信頼回復には、再発防止策だけでなく、自浄能力を備えた組織文化への転換が不可欠だといえる。 参考 1) プロセス検証委員会報告書について(東大) 2) 東大汚職事件めぐり第三者委員会が調査結果を公表(NHK) 3) 東大収賄事件「総長の危機意識不足」、第三者委が報告 初動も問題視(朝日新聞) 4) 東京大院汚職「組織の自浄作用発揮できず」 検証委が報告書(日経新聞) 5.胸部CTで肺がん見落とし死亡 37mm腫瘤見逃しで医療事故/神戸市立医療センター神戸市立医療センター西市民病院で、CT画像に写っていた肺がんを見落とした医療事故が発生し、70代女性患者が死亡した。同院によると、女性は2024年5月、階段からの転落による外傷評価のため整形外科を受診し、CT検査を実施。画像には右肺に最大約37mmの腫瘤影が認められていたが、放射線科医がこれを指摘せず、整形外科医側でも十分な確認が行われなかった。その後、女性は2025年10月に呼吸困難と大量胸水で再受診し、精査の結果、同部位に肺がんが判明。すでにステージIVまで進行しており、手術による根治は困難な状態だった。化学療法が行われたものの全身状態が悪化し、同年12月に死亡した。初回CT画像の再検証により見落としが明らかとなった。病院は今回の事案について過失を認め、遺族に謝罪。補償については現在検討中としている。見落としの背景として、外傷評価が主目的であったため肺野の読影が不十分であったこと、ならびに読影結果の共有・確認体制の不備があったと説明している。再発防止策として、放射線科医と各診療科医師によるダブルチェックの徹底、ならびにAI読影支援ソフトの活用強化を掲げた。今回の事例は、偶発的に撮影された画像所見であっても全身的な異常の見落としを防ぐ体制の重要性を示すものであり、読影責任の所在や多職種間の情報共有の在り方が改めて問われる結果となった。 参考 1) CT画像で肺がん見落とし70代の女性患者死亡 神戸市立・西市民病院、遺族に謝罪(産経新聞) 2) CT検査で肺がん見落とし70代女性死亡 神戸市立病院で医療事故(朝日新聞) 3) 神戸市立医療センター西市民病院で医療事故 外傷診断目的で受診・70代女性患者のCT撮影した際に放射線科医が『がん』見落とす 女性患者はがんが進行して死亡(FNNプライムオンライン) 6.医師による性犯罪相次ぐ 実刑判決を受け行政処分の遅れに厳しい視線美容外科医が麻酔や睡眠薬を悪用し、無抵抗状態にした女性患者や職員らに対して長期間にわたり性的暴行を繰り返していた事件で、東京地裁は被告人の男性医師に懲役25年の実刑判決を言い渡した。犯行は約9年間に及び、被害者は21人、うち未成年が4人、最年少は9歳と極めて重大である。患者の多くは手術中や処置後の麻酔下にあり、医療行為そのものが加害の機会として利用されていた点が特徴。また、同一被害者に対する複数回の加害行為や、犯行の様子を撮影するなど、計画性と執拗性も認定された。判決は、医師という立場を利用した「悪質で卑劣な犯行」と断じ、常習性と規範意識の著しい欠如を強く非難している。求刑27年に対し25年の量刑となったが、被害の規模と内容から極めて重い判断といえる。被告は起訴事実を認めつつも量刑不当として控訴している。本件は、医療機関という本来安全であるべき場において、患者の身体的・心理的脆弱性が悪用された点で社会的衝撃が大きい。加えて、捜査段階から余罪の可能性も指摘されており、押収された記録媒体には他の被害をうかがわせる映像が含まれていたとされる。事件の実態は、判決で認定された範囲をなお上回る可能性がある。さらに、別の精神科医による患者への不同意性交事件も発覚しており、診察後に施錠された空間で逃げ場を奪われた状況での犯行が疑われている。この医師は過去の逮捕・有罪事案を経ても、診療を継続していたことが明らかとなり、行政処分の遅れに対する制度的問題も浮上している。一連の事件を受け、世論は極めて厳しく、「医師免許制度は機能しているのか」「なぜ再犯を防げなかったのか」といった批判が噴出している。とくに、刑事罰や行政処分が抑止力として十分に機能していない実態に対し、制度の見直しを求める声が強まっている。医療は患者の信頼の上に成り立つが、その信頼を根底から覆す行為が繰り返されたことは、医療界全体の倫理と統治の在り方を問い直す事案となっている。 参考 1) 美容外科医が麻酔で無抵抗の女性患者らに性犯罪、9歳児含む21人が被害…「悪質で卑劣な犯行」懲役25年判決(読売新聞) 2) 女性にわいせつ行為容疑、医師を逮捕 10人以上の被害状況を撮影か(朝日新聞) 3) 「まだ診察ある」経営する心療内科で20代女性患者に不同意性交 容疑で医師の男を逮捕(産経新聞) 4) 患者の女性を閉じ込め不同意性交か 歌舞伎町の精神科医を逮捕(毎日新聞) 5) 新宿・歌舞伎町“有名精神科医”が不同意性交の疑いで7回目の逮捕…20年にわたり犯罪を繰り返してきた激ヤバ医師の「数々の悪行」(現代ビジネス) 6) なぜ6回逮捕でも医師免許は剥奪されないのか…女性患者を襲い続けた歌舞伎町の精神科医を守る「歪んだ制度」の正体(同)

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EGFR変異NSCLC、アミバンタマブ+ラゼルチニブがアジア人でもOS良好(MARIPOSA)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、アミバンタマブ+ラゼルチニブは、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」において、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を改善することが示されている1)。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、本試験のアジア人集団におけるOSなどのアップデート解析結果が、林 秀敏氏(近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 主任教授)により発表され、アミバンタマブ+ラゼルチニブは、アジア人集団においてもオシメルチニブ単剤と比較してOSが良好であることが示された。なお本演題は、欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2025)のアンコール演題であったが、日本人集団のpost-hoc解析結果が追加された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19欠失またはL858R)陽性の進行・転移NSCLC患者・試験群1(ami+laz群):アミバンタマブ(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の1サイクル目は週1回、2サイクル目以降は隔週)+ラゼルチニブ(240mg、1日1回) 429例・試験群2(laz群):ラゼルチニブ(240mg、1日1回) 216例・対照群(osi群):オシメルチニブ(80mg、1日1回) 429例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づくPFS[主要な副次評価項目]OS[その他の評価項目]PFS2(2次治療開始後のPFS)、治療中止までの期間、頭蓋内PFS(icPFS)、頭蓋内奏効率(icORR)、頭蓋内奏効期間(icDOR)、症状進行までの期間(TTSP)、安全性など 今回は、アジア人集団(ami+laz群250例、osi群251例)の比較結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・ベースラインの患者背景は両群でバランスがとれており、年齢中央値は63歳であった。EGFR遺伝子変異の内訳はexon19欠失が55%、L858Rが45%であり、脳転移を有する割合は44%であった。・追跡期間中央値38.7ヵ月時点におけるOS中央値は、ami+laz群が未到達、osi群38.4ヵ月であり、ami+laz群で延長がみられた(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.56~0.97、名目上のp=0.026)。3年OS率はami+laz群61%、osi群53%で、42ヵ月OS率はそれぞれ59%、46%であった。・OSのサブグループ解析において、一貫したOSのベネフィットが示された。日本人を対象としたpost-hoc解析においても一貫した傾向がみられた(HR:0.77、95%CI:0.34~1.77)。・病勢進行後に後治療を受けた患者の割合はami+laz群71%、osi群75%であり、いずれも多くが化学療法またはチロシンキナーゼ阻害薬を含む治療を受けていた。・PFS2中央値はami+laz群が未到達、osi群34.2ヵ月であり、ami+laz群が良好であった(HR:0.70、95%CI:0.54~0.91、名目上のp=0.007)。・治療中止までの期間中央値はami+laz群27.9ヵ月、osi群23.2ヵ月であり、ami+laz群が長かった(HR:0.74、95%CI:0.59~0.93、名目上のp=0.008)。・icPFS中央値はami+laz群が23.5ヵ月、osi群が23.9ヵ月であった(HR:0.79、95%CI:0.57~1.09)。3年icPFS率はami+laz群が36%、osi群が18%であった。・icORRはami+laz群が78%、osi群が79%であった。icDOR中央値はそれぞれ未到達、27.4ヵ月であった。・TTSP中央値はami+laz群が未到達、osi群が30.8ヵ月であった(HR:0.65、95%CI:0.51~0.84、名目上のp<0.001)。・安全性プロファイルは既報および全体集団と一貫していた。静脈血栓塞栓症(VTE)はami+laz群の34%、osi群の7%で発現したが、追跡期間の延長による意義のある増加はみられなかった。なお、ベースライン時に抗凝固薬を使用していたのは3%であった。肺臓炎の発現割合はいずれの群も2%と低かった。・ami+laz群における注目すべき有害事象の多くは投与初期(0~4ヵ月)に発現しており、長期の観察において安全性に関する新たなシグナルはみられなかった。このことから、長期的な治療継続が実現可能であることが示唆された。 本結果について、林氏は「アミバンタマブ+ラゼルチニブはオシメルチニブ単剤と比較して、全体集団と同様にアジア人集団でも死亡リスクを有意に低下させ、アジア人集団における新たな標準治療としての位置付けがさらに強固なものとなった」とまとめた。なお、日本人集団のOS解析結果について、同氏は「日本人集団のOS解析結果はpost-hoc解析であり、サンプルサイズやイベント数が少なかった。アジア人は層別化因子であったことを考慮すると、アジア人集団の解析結果のほうがより重要なデータである」と述べた。

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EGFR変異NSCLC、オシメルチニブ+化学療法の日本人解析結果(FLAURA2)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、オシメルチニブ+化学療法はオシメルチニブ単剤と比較して、日本人集団においても無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)が良好であった。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、国際共同第III相無作為化比較試験「FLAURA2試験」の日本人集団の結果を栁谷 典子氏(がん研究会有明病院)が報告した。日本人集団のOSの解析結果は、2025年11月に開催された第66回日本肺癌学会学術集会でも報告されていたが、今回はさらに詳細な結果が報告された。試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験対象:未治療の局所進行/転移EGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失またはL858R)の非扁平上皮NSCLC成人患者557例試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごと(併用群、279例)対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、278例)評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1を用いた治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]OSなど 日本人集団の解析結果は以下のとおり。なお、PFSのデータカットオフは2023年4月、OS・安全性・曝露期間・次治療のデータカットオフは2025年6月であった。・解析対象は併用群47例、単独群47例であった。男性の割合はそれぞれ34%、51%であり、年齢中央値はそれぞれ68歳(範囲:39~83)、65歳(同:33~79)であった。中枢神経系転移を有する割合はそれぞれ38%、40%であった。EGFR遺伝子変異の内訳は、exon19欠失変異/L858R変異が、併用群49%/51%、単独群66%/34%であった。日本人集団はグローバル集団と比較して、年齢が高く、前喫煙者が多いという特徴があった。・PFS中央値は併用群24.8ヵ月、単独群16.4ヵ月であり、日本人集団でも併用群が良好であった(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.28~0.86)。・1年、2年時のPFS率は、併用群がそれぞれ83%、64%であり、単独群がそれぞれ63%、30%であった。・OS中央値は併用群48.3ヵ月、単独群34.3ヵ月であり、日本人集団でも併用群が良好であった(HR:0.60、95%CI:0.36~1.03)。・2年、3年、4年時のOS率は、併用群がそれぞれ85%、65%、52%であり、単独群がそれぞれ65%、41%、33%であった。・データカットオフ時点(2025年6月)において、試験治療を継続していた患者の割合は併用群28%(オシメルチニブ28%、ペメトレキセド6%)、単独群15%であった。・併用群は化学療法フリー期間が長かった。各薬剤の曝露期間中央値は、併用群はオシメルチニブ28.5ヵ月、ペメトレキセド5.5ヵ月、プラチナ製剤2.8ヵ月であった。単独群のオシメルチニブは16.0ヵ月であった。・次治療を受けた患者の割合は併用群75%、単独群86%であった。最初の次治療の内訳は、併用群では化学療法が多く(プラチナ製剤を含む化学療法40%、プラチナ製剤を含まない化学療法33%)、単独群ではプラチナ製剤を含む化学療法が多かった(71%)。・安全性について、主解析後の2年間の観察期間において、新たな間質性肺疾患の発現はなく、安全性に関する新たなシグナルはみられなかった。 なお、グローバル集団における既報の主要結果1)は以下のとおり。・PFS中央値(併用群vs.単独群)25.5ヵ月vs.16.7ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.49〜0.79、p<0.001)・1/2年PFS率(同上)80%/57%vs.66%/41%・OS中央値(同上)47.5ヵ月vs.37.6ヵ月(HR:0.77、95%CI:0.61〜0.96、p=0.02)・2/3/4年OS率(同上)80%/63%/49%vs.72%/51%/41% 本結果について、栁谷氏は「オシメルチニブは、EGFR遺伝子変異陽性進行NSCLCの1次治療として確立した推奨治療である。FLAURA2試験では、オシメルチニブ+プラチナ製剤+ペメトレキセド併用療法がオシメルチニブ単剤と比較してOSを有意に延長し、日本人集団でもOSの改善傾向が示された。これらの結果は、併用療法が1次治療として強く推奨される選択肢であることを支持する」と述べている。

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HER2変異陽性NSCLCへのゾンゲルチニブ、脳転移例にも奏効(Beamion LUNG-1)/ELCC2026

 ゾンゲルチニブは、未治療のHER2遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、管理可能な安全性プロファイルとともに高い抗腫瘍活性を示し、活動性脳転移を有する患者においても良好な頭蓋内活性を示した。欧州肺がん学会(ELCC2026)において、John V. Heymach氏(米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)が、国際共同第Ia/Ib相試験「Beamion LUNG-1試験」のコホート2(未治療のチロシンキナーゼドメイン[TKD]の変異陽性患者)、およびコホート4(ベースライン時に活動性脳転移を有するTKDの変異陽性患者)の結果を報告した。なお、本試験の結果を基に、米国食品医薬品局(FDA)はHER2遺伝子変異陽性進行NSCLCに対する1次治療として、ゾンゲルチニブを2026年2月に迅速承認した。また、本邦でも同適応に関する適応追加申請が行われたことが、2026年3月に発表されている。 本試験は第Ia相と第Ib相で構成され、第Ib相の中間解析の結果から1日1回120mgの用量が選択された。今回は、未治療のHER2遺伝子変異(TKDの変異)陽性NSCLC患者コホート(コホート2)、ベースライン時に活動性脳転移を有するHER2遺伝子変異(TKDの変異)陽性NSCLC患者コホート(コホート4)のうち、1日1回120mgの用量で投与された患者の結果が報告された。有効性の主要評価項目は、コホート2がRECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)による奏効率(ORR)、コホート4はRANO-BM基準に基づくBICRによる頭蓋内奏効率(icORR)であった。 主な結果は以下のとおり。・患者背景について、コホート2(74例)の年齢中央値は67歳で、ベースライン時に脳転移を有していた割合は30%であった。コホート4(30例)の年齢中央値は59歳であり、未治療の割合は27%であった。・コホート2において、BICRによる確定ORRは76%(CR:11%、PR:65%)で、確定病勢コントロール率は96%であった。・コホート2における奏効までの期間の中央値は1.4ヵ月であった。・コホート2における無増悪生存期間(PFS)中央値は14.4ヵ月、奏効期間(DOR)中央値は15.2ヵ月であった。・コホート4において、BICRによる確定icORRは47%、確定頭蓋内DCR(icDCR)は87%であった。脳への放射線治療歴がない患者(17例)における確定icORRは59%、確定icDCRは94%であった。・コホート4における頭蓋内PFS中央値は8.2ヵ月、頭蓋内DOR中央値は6.9ヵ月であった。・コホート2において、治療関連有害事象(TRAE)は91%(67例)に認められ、Grade3以上のTRAEは19%(14例)であった。・コホート2で頻度の高かったTRAEは下痢(55%、Grade3:3%)、皮疹(24%、Grade3以上はなし)、ALT増加(18%、Grade3:4%)であった。・コホート2において、有害事象による減量は16%(12例)、投与中止は9%(7例)に認められた。 本結果について、Heymach氏は「ゾンゲルチニブは、活動性脳転移を有する患者を含めて、HER2遺伝子変異陽性NSCLC患者において臨床的に意義のあるベネフィットを示し、Grade3以上のTRAEが非常に少なく管理可能な安全性プロファイルを示した」と結論付けた。なお、未治療のHER2遺伝子変異陽性進行NSCLC患者を対象として、標準治療との比較によりゾンゲルチニブの有用性を検証する国際共同第III相無作為化比較試験「Beamion LUNG-2試験」が進行中である。また、切除可能なHER2遺伝子変異陽性NSCLC患者を対象として、術後補助療法におけるゾンゲルチニブの有用性を評価する国際共同第III相無作為化比較試験「Beamion LUNG-3試験」も進行中である。

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EGFR・TP53変異NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法がPFS改善(TOP)/ELCC2026

 EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)において、TP53遺伝子変異は高頻度にみられ、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬単剤療法の効果不良と関連することが知られている。そこで、TP53遺伝子変異を併存するEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者を対象として、オシメルチニブ+化学療法(FLAURA2レジメン)とオシメルチニブ単剤を比較する第III相試験「TOP試験」が中国で実施されている。本試験において、TP53遺伝子変異が併存する集団でも、FLAURA2レジメンが無増悪生存期間(PFS)を改善し、全生存期間(OS)も良好な傾向がみられた。欧州肺がん学会(ELCC2026)において、Yunpeng Yang氏(中国・中山大学がんセンター)が本試験のPFSの主解析およびOSの中間解析の結果を報告した。試験デザイン:海外第III相非盲検無作為化比較試験対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19欠失/L858R)およびTP53遺伝子変異陽性の非扁平上皮NSCLC成人患者294例試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+カルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごと(併用群、146例)対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、148例)評価項目:[主要評価項目]治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]OS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・本試験の対象患者は、ベースライン時に約5割が中枢神経系転移を有していた(併用群49.3%、単独群48.0%)。EGFR遺伝子変異の内訳は、exon19欠失変異/L858R変異が、併用群54.8%/45.2%、単独群56.1%/43.9%であった。・データカットオフ時点(2025年11月12日)におけるPFS中央値は併用群34.0ヵ月、単独群15.6ヵ月であり、併用群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.32〜0.60、p<0.001)。・PFSに関するサブグループ解析では、中枢神経系転移の有無やEGFR遺伝子変異の種類などを含むすべてのサブグループで併用群が良好な傾向にあった。・OSは未成熟(成熟度30.6%)であったが、OS中央値は併用群48.4ヵ月、単独群36.5ヵ月であり、併用群で改善の傾向がみられた(HR:0.57、95%CI:0.38~0.88)。・ORRは併用群82.9%、単独群71.6%であった。DOR中央値はそれぞれ32.7ヵ月、15.3ヵ月であった。・オシメルチニブによる治療継続期間中央値は併用群20.3ヵ月、単独群15.4ヵ月であった。・Grade3以上の有害事象は併用群62.4%、単独群14.9%に発現したが、新たな安全性に関するシグナルはみられなかった。 本試験結果について、Yang氏は「EGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCにおいて、遺伝子変異などの特徴に応じて治療を選択する個別化治療戦略を支持する重要な根拠となる」とまとめた。

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アミバンタマブ治療肺がん患者向けサポート・プログラムを提供開始/J&J

 Johnson & Johnsonは2026年3月18日、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)もしくはEGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発NSCLCで、アミバンタマブ・ボルヒアルロニダーゼ アルファ皮下注射(リブロファズ)もしくはアミバンタマブ点滴静注(ライブリバント)で治療を始める患者・家族などを対象としたペイシェント・サポート・プログラム「リブロファズ/ライブリバントwithMe(ウイズミー)」の提供を開始する。定期的な連絡および肺がんや上記治療薬に関する情報提供によって、同剤の適正使用を支援することを主な目的としている。 同プログラムでは、登録された患者に対し、専任看護師が6ヵ月間定期的に電話することで、治療に関連する疑問の解消、セルフケアの習慣化、身体変化への気づき、医療従事者に伝えるべきことの整理などのサポートを無償で行う。また患者からの問い合わせや相談にも電話やメールで随時対応する。 同プログラムは、医療従事者が、リブロファズもしくはライブリバントで治療を始める患者に本プログラムを紹介し、患者がプログラムの内容に納得し、参加登録をすることでサポートを受けられるようになる。 一方で、同プログラムでは医学的判断を伴う情報提供は行わない。医師による診察・治療を代替するものではない、としている。

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がん関連VTE発症予測に包括的ゲノムプロファイリングは有用か/日本循環器学会

 がん患者における重要な心血管合併症の1つに静脈血栓塞栓症(VTE)があり、2023年に公開されたASCO Guidelineにおいても、このようなVTEの高リスク患者への1次予防が推奨されている。しかし、がん関連VTEの発症を正確に予測できるモデルは現段階では確立されていない。そこで今回、中村 栞奈氏(京都大学医学部附属病院 循環器内科)がVTE発症の予測として包括的ゲノムプロファイリングを用いた最新知見について、3月20~22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1において報告した。なお、本結果はJournal of thrombosis and haemostasis誌オンライン版2026年3月20日号に同時掲載された1)。 本研究は、VTEの発症とがん関連遺伝子変異との潜在的な関連性を調査することを目的として、FoundationOne CDxによる包括的ながんゲノムプロファイリング(CGP)を受けたVTE既往歴のない成人がん患者を対象に、324個のがん関連遺伝子の中からVTEに関連する遺伝子変異を探索した。主要評価項目はVTEの発症。 主な結果は以下のとおり。・京都大学医学部附属病院において、2015年3月~2024年6月の期間にCGPが行われた1,079例のうち、適格基準を満たした412例について検討した。・対象者の平均年齢は59歳、199例(48%)が女性であった。・がんの遠隔転移は319例(77%)、372例(90%)が化学療法を行っていた。・観察期間の中央値は693日で、検体採取後に59例(14%)にVTEを認めた。また、累積イベント発症率は1年で8.3%、3年で16.6%、5年で26.0%であった。 ・VTEを発症した患者の原発がんの部位は、膵臓14例(24%)、胆道7例(12%)、子宮7例(12%)、肺6例(10%)であった。・年齢と性別を共変量とし、Cox比例ハザードモデルを用いたがん遺伝子変異の調整ハザード比(HR)を算出したところ、KRAS(HR:2.35、95%信頼区間[CI]:1.38~4.01)、CDKN2A(HR:2.06、95%CI:1.21~3.52)、TP53(HR:1.71、95%CI:0.99~2.93)など、VTEリスクの高さと関連する可能性のあるゲノム変異を特定した。  中村氏は「包括的なゲノムプロファイリングに基づくこの新しい研究は、VTEの発症に関連するいくつかのゲノム変異を明らかにし、従来の臨床指標にがん関連遺伝子変異情報を統合することで、より精緻なリスク層別化が可能となることが期待される」とコメント。ただし、本研究の制限について「対象者が少なく、がんの病期や治療内容による調整ができていないため、潜在的バイアスが存在した可能性がある」と述べた。 最後に同氏は「本研究を踏まえより大規模な研究を行っていくために、新たなコホートで検証するためにONCO CARDIO Registryを始めた。この研究では、日本全国の約40施設の大学病院・がんセンター・大規模基幹病院が集結し、約2万例(最大総数)のがん患者の登録を目指しており、世界的にも最大規模のがん関連遺伝子情報を含めた腫瘍循環器領域の疫学研究となる見込みである」と今後の展望を語った。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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バーンアウトについて学んでみる【非専門医のための緩和ケアTips】第120回

バーンアウトについて学んでみる緩和ケアに限らず、医療者として働き続けるうえで非常に重要な「バーンアウト(燃え尽き症候群)」に関する質問をいただきました。今回はバーンアウト全般について考えてみます。今日の質問緩和ケアやお看取りのケアはやりがいを感じる反面、精神的負担を感じるときがあります。知り合いの緩和ケア認定看護師が、うつ病で休職したという経験もあります。緩和ケアはバーンアウトしやすいのでしょうか?私も緩和ケアの仕事を始めた頃に、家族や知人に「亡くなる人ばかりを診ていると、うつ病になるのではないか」と心配されたことがありました。私自身は緩和ケアにやりがいを感じ、キャリアの中で関わることができたことは本当に良かったと思います。ただ確かに、周囲にはうつ病と診断されるかどうかはともかく、メンタル不調で休職が必要になったり、緩和ケアの仕事を続けられなくなったりする方もいました。私は精神科医ではなく、バーンアウトについて専門的に学んだ経験もありませんが、部門の管理者としてスタッフの健康管理をするうえでバーンアウトについて知っておくことは重要だと考えています。では、具体的にバーンアウトのどんな点を知っておく必要があるのでしょうか? 緩和ケア領域は、共感性の高いスタッフが集まりやすい分野だと感じます。緩和ケアを実践するスタッフは、患者はもちろん、家族や介護スタッフ、同僚に対しても思いやりをもつ方が多いと感じます。一方、懸命に取り組むスタッフであればあるほど、仕事において感情的な負担や葛藤を抱えることは多いとも感じます。懸命に取り組むだけに、患者さんの苦痛を緩和できなかったり、家族とのやり取りで負担を感じたりといった場面が続くと、より負担を感じやすくなります。そんな状況で、私たちにとって大切なことは、自分自身の状況に敏感であることです。バーンアウトの分野には「情緒的消耗感」や「脱人格化」という用語があります。「情緒的消耗感」は単なる疲弊だけでなく、情緒的な資源の枯渇を伴う状態です。そして「脱人格化」は他者への対応が思いやりのないものになったり、個別のケアに配慮できなかったりする状態を意味します。まずは自分自身のコンディションに意識を向け、こうした状態の兆候がないか、気を払うことが大切です。管理者目線では、スタッフがこうした状態に陥っていないかを注意する必要があります。また、自分自身に注意を払えるよう、バーンアウトをテーマとした研修を行うことも一手でしょう。いかがでしょうか? バーンアウトについて、皆さんの職場で、それぞれの立場で、考えるきっかけになれば幸いです。今日のTips今日のTipsバーンアウトについて理解すること、自身のコンディションに敏感になることが大切。

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地方在住のがん患者は手術のために都市部へ行くべきか

 地方のがん患者は、主要な医療機関で治療を受けるために長距離移動することが多いが、そうした長旅は、必ずしも必要ではないかもしれない。肺がんまたは大腸がん患者を対象にした新たな研究で、地元の病院で治療を受けた場合と都市部の医療機関へ移動して治療を受けた場合で、死亡率や手術の転帰に大きな差は認められなかったことが明らかになった。米ルイビル大学外科学分野のMichael Egger氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American College of Surgeons」に2月11日掲載された。 Egger氏は、「地方に住むがん患者は、高品質で多職種が連携するがん治療を受ける機会を得られないことが多い。しかし、全ての患者が手術を受けるために長距離を移動できるわけではないし、すでに受け入れ能力の限界に達している都市部のハイボリューム施設にとっても持続可能ではない」とニュースリリースで指摘している。 Egger氏らは今回、SEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)-メディケアのデータを用いて、地方在住で65歳以上の大腸がん患者1万383人および肺がん患者6,006人を対象に、がんの手術を地方で受けた場合と都市部で受けた場合の転帰を比較した。 肺がん患者では、75%(4,493人)、大腸がん患者では54%(5,633人)が都市部の病院で手術を受けていた。肺がん患者、大腸がん患者のいずれにおいても、地方で手術を受けた群(地方群)と都市部で手術を受けた群(都市部群)の間に、人口統計学的特徴やがんのステージについて有意な差は認められなかった。術後3カ月間の死亡率は、肺がん患者では地方群で5.2%、都市部群で4.8%、大腸がん患者ではそれぞれ7.3%と6.9%であり、いずれも有意な群間差は認められなかった。さらに、術後30日間の再入院率についても、肺がん患者では両群とも10.4%、大腸がん患者では両群とも14.0%であり、群間差は認められなかった。 一方で、都市部の病院で治療を受けた患者は、治療のためにより長距離を移動していた。具体的には、大腸がん患者の移動距離の中央値は、地方群での16マイル(約26km)に対して都市部群は49マイル(約79km)と約3倍の距離を移動していた。これを移動時間に換算すると、それぞれ23分と58分に相当した。肺がん患者でも、地方群で35マイル(約56km)、都市部群で61マイル(約98km)と都市部群の移動距離が長く、移動時間はそれぞれ49分と72分に相当した。 地方在住の患者の一部は、依然として必要な治療を受けるために都市部へ移動しなければならない場合はあるが、研究グループは、「今回の結果は、地域病院でも一定のがん手術を十分に提供できることを示している」と述べている。Egger氏は、「移動時間の長さや移動に伴う費用は、地方在住のがん患者の多くにとって大きな負担となり得る。医療システムが医療供給体制を地域ごとに再編していく中で、地元で治療を受けても問題ない患者と、より集約化された医療を受けることで利益を得られる患者を見極めることが重要になってくるだろう」と述べている。 研究グループは今後、地方と都市部の病院のうち、最良の結果を出している施設を分析し、何が優れていたのかを明らかにする予定だという。また、地方の病院が、手術以外のがん治療においても都市部の施設と同等のケアを提供しているかどうかも調べる計画があるとしている。

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抗菌薬・PPI、NSCLCの術前ICI+化学療法への影響は?(CReGYT-04 Neo-Venus副次解析)

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)において、抗菌薬やプロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用は、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性の低下と関連する可能性が指摘されている。しかし、術前ICI+化学療法などの周術期治療に及ぼす影響は明らかになっていない。そこで、切除可能NSCLCに対する術前ICI+化学療法について、抗菌薬やPPIが及ぼす影響を多施設共同後ろ向き観察研究「CReGYT-04 Neo-Venus」の副次解析で評価した。その結果、抗菌薬やPPIの使用は、術前ICI+化学療法の奏効と有意な関連がみられなかった。本研究結果は、戸田 道仁氏(関西労災病院 呼吸器外科)らによって、Lung Cancer誌2026年4月号で報告された。 本研究は日本の29施設で実施された。対象は、2023年3月~2024年7月の期間に、ニボルマブ+化学療法による術前治療を開始した切除可能StageIIA~IIIBのNSCLC患者131例とした。根治的手術を受け、外科的転帰の解析対象となった113例について、治療開始前30日以内の抗菌薬やPPIの使用と奏効割合(ORR)、病理学的完全奏効(pCR)、病理学的奏効(MPR)などとの関連を調べた。 主な結果は以下のとおり。・抗菌薬の使用は4.4%(5例)、PPIの使用は20.4%(23例)にみられた。・抗菌薬の有無別にORR、pCR、MPRを評価した結果、抗菌薬の有無による差はみられなかった。詳細は以下のとおり(抗菌薬ありvs.なしの値を示す)。 ORR:80.0%vs.70.4%(p=1.000) pCR:40.0%vs.35.8%(p=1.000) MPR:60.0%vs.59.6%(p=1.000)・PPIの有無別にORR、pCR、MPRを評価しても、PPIの有無による差はみられなかった。詳細は以下のとおり(PPIありvs.なしの値を示す)。 ORR:78.3%vs.68.9%(p=0.532) pCR:43.5%vs.33.3%(p=0.507) MPR:60.9%vs.58.9%(p=1.000)・感度解析として、逆確率重み付け解析を実施しても抗菌薬やPPIの使用は、ORR、pCR、MPRに有意な影響を示さなかった。・多変量解析の結果、PD-L1 TPS 50%以上(オッズ比[OR]:9.660、95%信頼区間[CI]:3.493~30.405、p<0.05)およびStageII(OR:5.208、95%CI:1.895~16.075、p<0.05)がpCRの独立した予測因子であった 。・PD-L1 TPS 50%以上(OR:7.259、95%CI:2.650~23.628、p<0.05)は、MPRについても独立した予測因子であった。 本研究結果について、著者らは「切除可能NSCLC患者において、抗菌薬やPPIの使用は、術前ICI+化学療法の効果との有意な関連はみられなかった」とまとめた。また「より大規模なサンプルサイズで、長期フォローアップを伴う研究が必要である」と指摘している。

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苦痛の評価が難しい患者さん【非専門医のための緩和ケアTips】第119回

苦痛の評価が難しい患者さん症状緩和の講演をすると必ずと言っていいほど「苦痛の評価が難しい患者さんへの対応」を聞かれます。皆さん、悩まされることは一緒ですよね。この機会に私なりの工夫を整理してみます。今日の質問高齢者をケアすることが多いのですが、患者の苦痛を評価する難しさを感じます。苦痛の症状は和らげたいのですが、苦痛を評価するって実はかなり難しいのではと思います。皆さんはどのように対応されているのでしょうか?最初にお伝えしたいのが、今回の質問者は「しっかりと緩和ケアを実践されている」ということです。苦痛緩和を大切に考え、苦痛の評価を丁寧にしようとしているからこその質問ですよね。難しい状況に対し、丁寧なケアを提供しようとしていること自体が本当に大切な態度であり、自信を持ってほしいと思います。私が「苦痛の評価は難しい」と感じる患者の特性や状況があります。最初に思い浮かぶのは、患者に意識障害があり、言葉でのコミュニケーションが難しいケースです。お看取りが近くなると、大半の患者がこうした状況になるので、多くの医療者が経験しているでしょう。せん妄も意識障害ですので、この範疇に入るでしょう。こうした場合、もともと関わってきた患者であれば、表情などの非言語的なサインに注目して、家族や介護・医療関係者で「以前の様子と比べると苦しそうに見える」といった印象を擦り合わせるのが良いと思います。別の状況として、患者が苦痛を言いたがらないといったケースもあります。これはさまざまな要因で生じますが、私の経験からは、「介護者や医療者に遠慮している」「医療用オピオイドなど、薬剤への抵抗感がある」という理由が多かったです。前者の場合、苦痛を訴えることで周囲が対応することを気にされているのでしょう。苦痛を非常に強く訴える患者さんもいれば、医療者を気遣って夜通し苦痛に耐える患者さんもいて、苦痛に対する態度は本当に人それぞれだと感じます。遠慮しがちな方に対しては、「痛みや苦痛は訴えていただいたほうが助かります」「我慢されているのかと心配しています」と伝えることが多いです。ただ、前述のように苦痛との向き合い方は人それぞれの面もあり、「見守る姿勢」も大切だと思っています。薬剤への抵抗感が理由の場合、正確な情報提供をしたうえで、「どのような点が心配なのか」を聞くようにしています。「以前、鎮痛薬を飲んだ際に気分が悪くなったんです」といった過去の経験や、「モルヒネのせいで亡くなってしまった人がいると聞いた」という誤った知識に基づく場合も多いので、再度説明を試みます。ただし、考えを無理に修正しようとすると対立関係になることもあるので、注意が必要です。苦痛の評価が難しい患者の対応について考えてみました。さまざまな工夫ができる分野かと思いますので、皆さんの実践もぜひ聞かせてください。今日のTips今日のTips苦痛の評価が難しくなっている要因に合わせ、対応を考えよう。

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若年成人のがん、唯一死亡率が増えているのは?

 若年成人におけるがん罹患率の増加を報告する研究は多数存在するが、検出バイアスの影響を受けにくい死亡率ではどうか。50歳未満の人々における主要5大がんの死亡率の変化を検証した研究結果が、JAMA誌2026年2月17日号「Research Letter」に掲載された。 米国がん協会(アトランタ)のRebecca L. Siegel氏らは、米国健康統計センター(NCHS)の死亡証明データから、1990〜2023年に50歳未満でがん死に至った約約127万例を解析した。主要5大がん(大腸がん、肺がん、乳がん、白血病、脳腫瘍)を中心に、年間死亡数および10万人当たりの年齢調整死亡率の推移を評価した。 主な結果は以下のとおり。・1990~2023年に、米国における50歳未満のがん死亡数は計126万7,520例(女性53%)で、年齢調整死亡率は10万人当たり25.5から14.2へと、44%減少した。・2014~23年の年間平均死亡率増減の平均は、脳腫瘍-0.3%(95%信頼区間[CI]:-0.6%~0.0%)、乳がん-1.4%(-1.7%~-1.1%)、白血病-2.3%(-2.3%~-2.2%)、肺がん-5.7%(-7.2%~-4.2%)であった。・大腸がん死亡率のみが2005年以降、年率1.1%(95%CI:0.9%~1.3%)増加しており、1990~94年のがん死因の5位から、2023年には1位となった。・一方、肺がんは1位から4位、白血病は3位から5位に順位を下げた。乳がんは全体では2位、女性では1位のままであった。子宮頸がんは研究期間を通じて減少を続けたものの、1990年と2023年ともに女性のがん死因の3位であった。・男性の順位は全体の傾向を反映していたが、乳がんに代わって1990年には非ホジキンリンパ腫(4位)、2023年には膵臓がん(5位)が入った。 研究者らは、「米国における50歳未満の人々のがん関連死因の上位では、大腸がんを除くすべてのがんで死亡率が低下した。乳がんと白血病は罹患率が増加しているにもかかわらず、死亡率は減少した。大腸がんのみ死亡率が増加している原因はさらなる研究が必要だが、過去の大腸がん検診の推奨開始年齢が50歳だったため、若年者の受診率が低いことは問題だ。若年発症大腸がんは約4分の3が進行期で診断されており、早期発見の重要性が一段と高まっている。現在、検診の推奨開始年齢は45歳に引き下げられたが、遺伝などのリスク要因がある場合や、血便や腹痛などの自覚症状がある場合は、さらに若い年齢からの受診を考慮すべきだ」としている。

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第23回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2026

 日本臨床腫瘍学会は、2026年2月28日にプレスセミナーを開催し、3月26~28日に横浜で開催される第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)の注目演題などを紹介した。 今回のテーマは「Medical Oncologists for Cancer Patients」。これは、2025年9月19日に「がん薬物療法」領域が日本専門医機構によりサブスペシャルティ領域として正式に承認されたことを受けて、もう一度学会としてどのようにメディカルオンコロジスト(腫瘍内科医)を育成すべきかを考えるという意図が込められている。なお、がん薬物療法専門医は2025年4月1日時点で1,825人が認定されている。 今年の演題数は計1,482題で過去最多となる。本学会はアジアにおける国際学会に近づけることを目指しており、約半数の738題は海外からで、インドネシア、インド、中国、フィリピン、台湾、ベトナムなど多くの国から寄せられている。プレジデンシャルセッション・全19演題Presidential Session 1「血液」3月26日(木)08:30~10:301)MOSUNETUZUMAB PLUS POLATUZUMAB VEDOTIN IS SUPERIOR TO R-GEMOX IN PATIENTS WITH R/R LBCL: THE PHASE III SUNMO TRIAL2)EFFICACY OF RITUXIMAB-BENDAMUSTINE +/- ACALABRUTINIB IN PATIENTS WITH MANTLE CELL LYMPHOMA: THE PHASE 3 ECHO TRIAL3)EPCORE FL-1:再発・難治性濾胞性リンパ腫に対するエプコリタマブ+リツキシマブ・レナリドミド(R2)併用療法の第III相非盲検試験4)Improved long-term tolerability with asciminib (ASC) vs IS-TKIs in newly diagnosed CML-CP: ASC4FIRST week 96 analysisPresidential Session 2「消化器/肝」3月26日(木)14:00~16:001)胃癌/食道胃接合部癌に対するデュルバルマブとFLOT化学療法の術前術後補助療法(MATTERHORN)2)SKYSCRAPER-07:根治的化学放射線療法後の切除不能食道扁平上皮癌におけるアテゾリズマブ±チラゴルマブの第III相試験の日本部分集団解析結果3)Precemtabart tocentecan (Precem-TcT, M9140): Results from PROCEADE-CRC-01 and post-hoc analysis in Japanese patients4)TALENTACE:肝細胞癌患者を対象としたTACE及びアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用による第III相試験Presidential Session 3「呼吸器」3月27日(金)9:50~11:501)EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌における一次治療オシメルチニブ ± プラチナ製剤-ペメトレキセド併用療法の全生存期間:FLAURA2日本コホート2)MARIPOSA試験(未治療EGFR変異陽性非小細胞肺がんアミバンタマブ+ラゼルチニブ併用療法vsオシメルチニブ)全生存期間アジア人解析3)EGFR変異陽性進行非小細胞肺癌に対するラゼルチニブ併用療法におけるアミバンタマブの皮下投与と静脈注射の比較:PALOMA-3日本人サブセット解析4)進展型小細胞肺がんを対象としたイフィナタマブ デルクステカン(I-DXd)の第II相試験(IDeate-Lung01試験):日本人サブグループ解析結果の報告Presidential Session 4「乳癌」3月28日(土)8:20~10:201)ESR1遺伝子変異が出現した進行乳癌におけるカミゼストラントによる一次治療:SERENA-6試験の日本人サブグループ解析2)Pooled safety analysis of sacituzumab govitecan in metastatic breast cancer (mBC), including patients in NA/EU and Asia3)Sacituzumab govitecan + pembrolizumab vs chemo + pembrolizumab in untreated PD-L1+ advanced TNBC: ASCENT-04/KEYNOTE-D194)術前療法後に浸潤性残存病変を有する再発高リスクHER2陽性乳がん患者を対象に、T-DXdとT-DM1を比較したDESTINY-Breast05の中間解析Presidential Session 5「TR/第I相試験」3月28日(土)10:30~12:001)WGSに基づく個別化ctDNAパネルによるMRDの検出: MONSTAR-SCREEN-3プロジェクトにおける乳癌コホート2)固形がんにおけるチロシンキナーゼ阻害薬の有効性と標的遺伝子mRNA発現の関連:SCRUM-Japan MONSTAR-SCREEN-23)DAREON-7: phase I study of obrixtamig plus chemotherapy in patients with DLL3-positive neuroendocrine carcinomas注目の演題会長企画シンポジウム9 がん患者が求める専門医とは3月28日(土)10:30~12:00 腫瘍内科医にはエビデンスを重視した医療だけでなく、対話を重視した医療も求められている。本シンポジウムでは、「がん患者が求める専門医とは」をテーマに、現在のがん治療が抱える問題について、3つのテーマで患者会側および専門医側が講演する。総合討論では、「がん患者が求める専門医」と「専門医の認識」についてすり合わせ、ディスカッションを深める。会長企画シンポジウム4 希少がんや希少フラクションの医薬品開発~戦略・デザイン・金・ゴール~3月26日(木)16:05~17:35 希少がん・希少フラクションなどを含む患者数の少ない集団では、開発や戦略の困難さ・事業計画の予見可能性・市場性の観点などさまざまなハードルがある。今後の運用や方向性を策定することで、バランスのとれた希少疾病指定医薬品の開発を促進し、医薬品開発力・科学性・先進性においてどのように世界をリードしていけるのかを議論する。委員会企画5 希少がんに対するエビデンスのある抗悪性腫瘍薬の供給問題3月27日(金)10:20~11:50 希少がんであっても、エビデンスの高い標準治療を滞りなくがん患者に届けるにはどうしたらよいのかを、アカデミア、製薬メーカー、がん患者、厚生労働省の立場より議論し、今後に必要なアクションについて考える。

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複数のがん種で診断後の運動量とがん死亡リスク低下が関連

 これまでの研究で、一部のがん種では身体活動ががんの発症や再発・死亡リスク低下と関連することが報告されている。しかし、乳がん、大腸がん、前立腺がん以外のがん種における身体活動とがん死亡に関するエビデンスは限られている。今回、米国がん協会のErika Rees-Punia氏らは、身体活動とがん死亡との関連が十分に検討されてこなかった7種のがん(膀胱がん、子宮体がん、腎がん、肺がん、口腔がん、卵巣がん、直腸がん)の患者を対象に、診断後の身体活動量、および診断前後の身体活動量の変化とがん死亡リスクとの関連を検討する観察研究を実施した。結果はJAMA Network Open誌2026年2月17日号に掲載された。 本研究では、6つの大規模前向きコホート※の統合データを用いた。対象は上記7がん種の患者で、ベースラインデータは1976~97年に収集した。1週間当たりの余暇時間の中高強度身体活動量をMET・時/週で評価し、診断後少なくとも1年を経過した時点(平均2.8年後)の中高強度身体活動量とがん死亡との関連を解析した。主要アウトカムはがん死亡で、平均追跡期間は10.9年であった。※Cancer Prevention Study-II Nutrition Cohort、Health Professionals Follow-Up Study、NIH-AARP Diet and Health Study、Nurses' Health Study、Nurses' Health Study II、Women's Health Study 主な結果は以下のとおり。・統合解析には、1万7,141例のがん患者が含まれた(平均年齢67歳、女性60%)。多いがん種は膀胱がん(24%)、子宮体がん(22%)、肺がん(18%)であった。・膀胱がん、子宮体がん、肺がん、卵巣がん患者において、診断後の身体活動レベルが高い群では、身体活動を行っていない群と比較してがん死亡リスクの低下が認められた。・膀胱がん、子宮体がん、肺がん患者では、推奨量(7.5MET・時/週以上)を下回る身体活動レベルであっても、身体活動を行っていない群と比較して死亡リスクの低下が認められた。・口腔がんおよび直腸がんでは、一部の高い身体活動レベルにおいてがん死亡リスクの低下が示唆された。・腎がんでは、推奨量を満たす群でリスク低下の傾向がみられたものの、有意差は認められなかった。・診断前後の身体活動の変化を検討した解析では、肺がんおよび直腸がん患者において、診断前後ともに推奨量を満たさなかった群と比較して、診断前は推奨量を満たさなくても診断後に満たした群ではがん死亡リスクが低かった。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 -肺がん HR:0.58(95%CI:0.47~0.71) -直腸がん HR:0.51(95%CI:0.32~0.83) 研究グループは「本研究は、身体活動量の低下が全身状態の悪化や死期が近いことを反映している逆因果の可能性、アンケートに回答できる健康な患者が対象となっている選択バイアス、喫煙による残余交絡の影響を完全には排除できない」と指摘したうえで、「これらの結果は、がんとともに生きる人々とがんを乗り越えた人々の寿命と全体的な健康のために身体活動を促進することが重要であることを示唆している」とまとめた。

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PPIやNSAIDsの併用、ICIの有効性に影響せず

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療中、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの一般的な併用薬が治療効果に影響するとの報告があるが、その因果関係には議論がある。米国・ミシガン大学のDaria Brinzevich氏らは、米国退役軍人保健局(VHA)の全国データベースを用い、非小細胞肺がん(NSCLC)患者における一般的併用薬とICI治療成績の関連を検証した。Cancer誌オンライン版2025年12月15日号掲載の報告。 2005~23年に治療を受けたStageIVのNSCLC患者のうち、1次または2次治療でICI(n=3,739)または化学療法(n=6,585)を受けた患者を対象とした。20種類の薬剤クラス(PPI、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、抗菌薬、スタチン、β遮断薬、ACE阻害薬/ARB、NSAIDs、オピオイド、ステロイド、抗凝固薬など)について「治療開始前3ヵ月内の処方」を併用と定義した。主要評価項目は全生存期間(OS)とTTNT(次治療開始までの期間)と併用薬の関連で、傾向スコアに基づく重み付けを用いたCox比例ハザードモデルで解析した。ICI群で名目上有意(p<0.05)な関連が認められた薬剤については、化学療法群でも同様の解析を行い、非特異的な影響を検証した。 主な結果は以下のとおり。・ICI群は男性が97%、60~79歳が81%、ICI+化学療法併用が45%、1次治療が71%だった。対照群(化学療法群)は多くの背景因子でICI群と類似していたが、59歳以下が24%(ICI群9.4%)と若年者が多く、併存疾患もやや少なかった。・ICI群において、20の薬剤クラスの中で15はOSと、14はTTNTと有意な関連を示さなかった。一方で、ループ利尿薬、抗凝固薬、オピオイド、ペニシリン系およびフルオロキノロン系抗菌薬はOS不良と関連した。しかし、これらの関連は化学療法群でも同様に認められ、ICIの特異的な影響ではないことが示唆された。これらの薬剤はICI群においてTTNTの悪化とも関連したが、化学療法群でも同様の関連性が観察された。・抗菌薬(1点)、PPI(1点)、ステロイド(2点)から構成される「immunomodulatory drug score」もICI群でOSおよびTTNT不良と関連したが、化学療法群でも同様の関連が認められた。すなわち、同スコアはICI効果修飾因子ではなく、一般的な予後指標である可能性が高いと考えられた。 著者らは、「本研究では、一般的に処方される併用薬がStageIV NSCLCにおけるICIの有効性を変化させることは認められなかった。従来報告されてきた併用薬とICI効果の関連の多くは、疾患重症度や基礎疾患など、未測定の交絡因子による可能性が高い。ICI治療中であっても、併存疾患の治療を過度に制限する必要はない可能性が示唆される」としている。

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飲酒と大腸がん、リスクの高い頻度と量は?

 飲酒は大腸がんリスクの上昇と関連していることが示されているが、生涯飲酒に関する研究は限られている。米国国立がん研究所のCaitlin P. O'Connell氏らは、生涯飲酒と大腸腺腫および大腸がんの発症との関連性を推定することを目的とした研究を行った。Cancer誌2026年2月1日号掲載の報告。 前立腺がん、肺がん、大腸がん、卵巣がん検診の効果を評価するPLCO試験に参加した米国成人を対象とした。参加者はビール、ワイン、蒸留酒の摂取頻度について、4つの事前定義された年齢層(18~24歳、25~39歳、40~54歳、55歳以上)ごとに、10段階の頻度カテゴリー(飲酒経験なし~1日6杯以上)を用いて回答した。また、過去1年間のビール・ワイン・蒸留酒摂取量も報告した。参加者を「非飲酒者」「元飲酒者」「現飲酒者」に分類し、生涯平均飲酒量(週1杯未満、1~7杯未満、7~14杯未満、14杯以上)でも分類した。 ベースライン時の検診で陰性であった1万2,327例のうち、812例が2回目の検診で腺腫と診断された。腺腫発症のオッズ比(OR)を推定するためにロジスティック回帰分析を用いた。20年間の追跡調査期間中、8万8,092例の参加者において1,679件の大腸がん発症が確認された。Cox比例ハザード回帰を用いて、大腸がんのハザード比(HR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・参加者の大半が現飲酒者であった(73.4%)。ベースライン年齢は、非飲酒者群が飲酒者群よりわずかに高かった。飲酒頻度が最も低い群(週1杯未満)と比較し、生涯飲酒量が最も多い群(週14杯以上)では、男性(89.8%vs.24.2%)、非ヒスパニック系白人(90.7%vs.90.2%)、現喫煙者(18.3%vs.6.4%)、過体重(48.1%vs.38.2%)である傾向が強く、大学卒業者の割合は低かった(34.7%vs.37.6%)。・一貫して大量飲酒している現飲酒者は、少量飲酒者と比較して、大腸がんリスクが91%高かった(HR:1.91、95%信頼区間[CI]:1.17~3.12)。・現飲酒者において、生涯平均飲酒量が最多の群と最少の群を比較すると、大腸がんリスクとの間に正の関連が認められた(週14杯以上vs.週1杯未満、HR:1.25、95%CI:1.01~1.53)。とくに直腸がんリスク(HR:1.95、95%CI:1.17~3.28)が顕著に上昇した。・少量飲酒者と比較して、元飲酒者は非進行性腺腫のオッズが低かった(OR:0.58、95%CI:0.39~0.84)。・一方、週7~14杯未満の中程度の飲酒者は、週1杯未満の飲酒者と比較して、大腸がんリスクが低下し(HR:0.79、95%CI:0.64~0.97)、とくに遠位結腸がん(HR:0.64、95%CI:0.42~1.00)リスクが低下傾向を示した。 研究者らは「本前向き研究において、継続的な多量のアルコール摂取と生涯平均飲酒量の増加は、とくに直腸がんのリスクを高めることが観察された。また、元飲酒者では非進行性腺腫リスクが低いことも確認され、禁酒が大腸がんリスクを低下させることを示唆している」とした。

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認知症の周辺症状に対する薬物療法【非専門医のための緩和ケアTips】第118回

認知症の周辺症状に対する薬物療法今回は認知症の周辺症状に対する薬物療法に関する質問をいただきました。緩和ケアの実践に限らず、多くの方が経験する状況だと思いますので、私なりに感じる点を述べてみます。今日の質問病棟にいると認知症の方が非常に多く、家族も対応に困りながらギリギリのところで生活しているのでは、と感じます。医療関係者の中には、認知症の周辺症状に対してすぐに抑肝散やクエチアピンを使うべき、とする方もいますが、やや疑問に感じます。質問ありがとうございます。ご家族の大変さにも目を向けているのは非常に重要な点ですね。私自身、認知症の行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)に対して抑肝散やクエチアピンといった薬物療法を行う場合、少し後ろめたさを感じることがあります。この思いの理由は何なのか、振り返って考えてみました。いくつかの論点があると思いますが、まずは「薬物療法の副作用が気になる」という点です。急性期病院に勤務していると、医原性の状態悪化で入院する方をよく見ます。良かれと思って処方された薬剤が理由で状態が悪化している方を見ると、「薬以外に取り組むべきことはないのか」「できるだけ非薬物療法で対応したい」と考えるのは普通かと思います。一方、薬物療法を求める医療者や家族の気持ちを考えてみましょう。これは2つの要素が大きいのではと思います。1つは、認知症に対する看護や介護の大変さが切実だからでしょう。とくに夜間対応の大変さは、ここで語るまでもありません。もう1つの要素としては、以前の回で紹介した「ユマニチュード」に代表される、認知症の非薬物療法に対する知識不足や不慣れさがあるのではないでしょうか。いずれにせよ、誰しも認知症の高齢者に薬を飲ませたくて仕方ないわけではなく、さまざまな要因で対応に困っているために薬物療法が求められているのだと思います。さて、では結局のところ認知症のBPSDへの薬物療法について、どのように対処すると良いのでしょうか? ここでのキーワードは「個別性」と「フォローアップ」です。認知症のBPSD=即薬物が必須、ではありません。一方で、抗精神病薬などを必要とする患者や状況もあるでしょう。関わる多職種で薬物療法の注意点を共有し、患者ごとに必要性を判断することが大切です。もう1つ、適切な薬物療法が提供されているか、非薬物療法にも取り組んでいるかといった、継続的なフォローアップも重要です。こうした取り組みを行う前提があれば、薬物療法も有効な選択肢になりうる、というのが私の見解です。今日のTips今日のTips周辺症状を伴う認知症患者へのケアは、薬物療法と非薬物療法のどちらも大切。

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全身治療後のサルベージ手術で示された、進行肺がんの新たな長期生存の可能性

 進行した非小細胞肺がん(NSCLC)では、初診時に切除不能と判断される症例が多く、治療の主軸は全身治療に置かれてきた。しかし、治療反応が良好な一部の患者に対して、全身治療後に外科切除を行うサルベージ手術の意義は十分に検討されていない。今回、全身治療後にサルベージ手術を行った高度に選択された症例を解析した結果、進行肺がんでも長期生存が現実的となる可能性が示された。研究は愛知県がんセンター呼吸器外科部の瀬戸克年氏、坂倉範昭氏らによるもので、詳細は12月17日付で「Thoracic Cancer」に掲載された。 分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場により、進行NSCLCに対する全身治療成績は大きく向上している。これに伴い、初診時には切除不能と判断された症例でも、全身治療後に病変が局在化・縮小し、根治を目的としたサルベージ手術が行われるケースが増えている。一方、薬物療法後の手術は治療関連線維化など特有の課題を伴い、長期予後への真の影響については十分なエビデンスがない。こうした背景から本研究は、全身治療後にサルベージ手術を行ったNSCLC症例を後ろ向きに解析し、その安全性と腫瘍学的成績、臨床的意義を検討した。 本研究では、2014年1月1日から2024年12月31日にかけて愛知県がんセンターで治療を受けた、初診時に切除不能と診断されたNSCLC患者を対象とした。このうち、化学療法、分子標的治療、免疫療法のいずれか、またはそれらの併用後に、根治目的のサルベージ手術を受けた32例を後ろ向きに解析した。主要評価項目は全生存期間(OS)とし、副次評価項目として無再発生存期間(RFS)、重篤な合併症(ClavienーDindo分類IIIa以上)、およびR0切除(完全切除)率を設定した。生存解析にはKaplanーMeier法およびlog-rank検定を用いた。 年齢中央値は61.0歳で、男性が約3分の2を占めた。ECOG Performance Status(PS)は30例が0、残る2例も1で、PS 2以上の症例は認めなかった。初診時に切除不能と判断された理由は遠隔転移が最多で、次いでN3リンパ節転移や高度N2病変などであった。手術前に行われた全身治療の治療ライン数中央値は1で、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬が症例に応じて使用されていた。 追跡期間中央値40.1か月時点で、OSの中央値には到達せず、RFSの中央値は49.9か月であった。5年OS率は75.0%(95%信頼区間〔CI〕 51.6~88.3)、5年RFS率は46.3%(95%CI 26.3~64.2)であった。 サルベージ手術の内訳は、肺葉切除術21例(65.6%)、区域切除術6例(18.8%)、楔状切除術5例(15.6%)であり、R0切除は26例(81.3%)で達成された。 合併症は全体で4例(12.5%)に発生した。重篤な合併症は1例で、胸膜癒着術を要する遷延性気漏であった。術後90日以内の死亡は認められなかった。 さらに、術後24か月以内に再発または死亡を認めなかった症例を予後良好群(18例)、認めた症例を予後不良群(14例)とし、探索的に各因子について単変量解析を行った。その結果、腺がんのみが有意に良好な予後と関連していた(88.9% vs. 35.7%、P=0.003)。 著者らは、「初診時に切除不能と判断されたNSCLC患者において、全身治療後に行われたサルベージ手術が、安全性および有効性の両面で良好な成績を示した。追跡期間中央値40.1か月における5年OS率は75%、5年RFS率は46%であり、厳密に選択された症例では、サルベージ手術が生存期間延長を目指す治療選択肢となり得る可能性が示唆された」と述べている。 その一方で、単施設・後ろ向き研究である点に加え、全身治療のみで管理された症例や、全身治療後に外科へ紹介されたものの手術に至らなかった症例が含まれていないことから、選択バイアスの影響は否定できないとしている。このため、今後は多施設前向き研究による検証が必要であると述べている。

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ブータンでの経験【非専門医のための緩和ケアTips】第117回

ブータンでの経験緩和ケアは、さまざまな環境で取り組むことが求められます。今回は医療資源の限られた環境での緩和ケアについてのご質問です。緩和ケアに限らず、「資源の限られた中での医療」という話題について、私の経験と学びをお話しします。今日の質問離島で診療をしているのですが、島の限られた医療体制の中で緩和ケアを実践する大変さを感じます。私よりもさらに少ない医療資源の中で取り組まれている方もいることでしょう。先生はこのような環境で診療経験はありますか。あればぜひ教えてほしいです。私は普段、急性期病院に勤務しており、比較的医療資源の潤沢な環境にいます。ただ、年に数回、離島での緩和ケアアウトリーチ(医療者が地域に出向く支援)の手伝いに参加しています。また、2024年からは年に1度、ブータンでの医療支援活動に参加しています。2025年は私にとって2回目のブータン訪問でした。アジア各国から指導医チームが結成され、ブータンの現地で1週間のレクチャーやベッドサイドティーチングを行います。今回は、ブータンの在宅緩和ケアを通じて貴重な経験をしました。ブータンは国土の大半が山岳地帯です。今回、私が往診に同行したお宅は、病院から車で1時間以上かかる場所にありました。市街地を出発し、その後ずっと山道を走り、さらに未舗装路に入っていきます。途中に牛を何頭も見かけ、標高はどんどん高くなっていきます。「どこまで行くのだろう」「夜間や天気が悪いときに往診が必要になっても、この立地では行けないな…」などと考えていると、やっと到着しました。訪問先のお宅が、山の頂上のようなところに、ポツンと立っていました。患者さんは末期の大腸がん、すでに会話が難しい状況で発語がやっとの状態でした。現地の訪問看護師から、「嘔気があるが、もともと内服していたモルヒネをどのように調整すべきか?」と質問されました。皆さんだったらどう答えるでしょうか? もちろん、PCA(自己調節鎮痛)ポンプなんてありません。このような環境で診療をした経験はありませんでしたが、この環境でのベストを考える必要があります。数日内に内服が難しくなりそうだったので、モルヒネの投与経路を皮下注射に切り替えるように提案しました。内服が困難になり、症状が強くなっても、医療者がすぐに駆けつけることができないことが理由です。その後も、日本の診療環境と大きく異なる光景を目の当たりにしました。モルヒネの投与量を計算して訪問看護師に伝えると、持参したモルヒネ注射薬をシリンジに引き、家族に皮下注射の指導を始めたのです。日本で医療用麻薬を家族が注射することはまずありません。再度現地の訪問看護師から、「こうした場合、日本ではどのように対応するのか?」と質問がありました。私は「日本では、在宅用の持続投与が可能なデバイスがあり、それを使っているケースが多い。家族が注射をすることはほぼなく、本人や家族が自分たちで注射するのは、在宅医療ではインスリンの自己注射製剤くらいです。でも、ブータンの環境を考えると、今皆さんがやっていることがベストプラクティスだと思いますし、緩和ケアを届けていることを尊敬しています」と英語でお伝えしました。ブータンでの国際支援活動を通じて、世界中で緩和ケアを必要としている患者さんがいること、そして緩和ケアを届けようと頑張っているスタッフがいることを実感しました。日本でもさまざまな地域で、それぞれの地域にあった形で緩和ケアを実践している仲間がいます。世界中で同じ思いの仲間が頑張っていることを忘れず、われわれもできることを少しずつ頑張っていきたいですね。今日のTips今日のTips今、この瞬間も世界のどこかで緩和ケアを届けている仲間がいることを忘れないようにしよう。

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