がん手術の前に4週間禁煙した患者では、手術が近づいても喫煙していた患者よりも術後合併症が有意に少なかったことを、オーストラリア・ディーキン大学のClement Wong氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2025年3月7日号掲載の報告。
喫煙は術後合併症のよく知られた危険因子であり、喫煙する患者では合併症リスク増大の懸念から外科手術の延期を検討することもある。しかし、がん患者の手術が延期された場合、患者が禁煙している間に病勢が進行するリスクがある。今回、研究グループはがん患者の喫煙状態や禁煙期間とがん手術後の合併症との関連を調べるために、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。
Embase、CINAHL、Medline Complete、Cochrane Libraryを2000年1月1日~2023年8月10日に体系的に検索し、喫煙しているがん患者と喫煙していないがん患者の術後合併症を調査した介入研究と観察研究を抽出した。評価項目は、がんの手術前の4週間も喫煙していた患者と4週間は禁煙した患者、手術前の4週間も喫煙していた患者と生涯で一度も喫煙したことがない患者などにおける、あらゆる術後合併症のオッズ比(OR)であった。
●24件のランダム化比較試験の3万9,499例が解析対象となった。肺がんは最も多く研究されたがん種であった。
●手術前の4週間も喫煙していた群は、4週間は禁煙した群および生涯で一度も喫煙したことがない群と比較して、術後合併症のORが高かった。
-術前4週間も喫煙群vs.4週間は禁煙群のOR:1.31、95%信頼区間(CI):1.10~1.55、1万4,547例(17研究)
-術前4週間も喫煙群vs.非喫煙群のOR:2.83、95%CI:2.06~3.88、9,726例(14研究)
●手術前の2週間も喫煙していた群と、最後に喫煙したのが2週間~1ヵ月前および2週間~3ヵ月前であった群の術後合併症のORに有意な差はなかったが、点推定では禁煙期間が長いほうが有利であった。
-術前2週間も喫煙群vs.2週間~1ヵ月前に禁煙群のOR:1.20、95%CI:0.73~1.96、n=3,408(5研究)
-術前2週間も喫群煙vs.2週間~3ヵ月前に禁煙群のOR:1.19、95%CI:0.89~1.59、n=5,341(10研究)
●手術前の1年間に喫煙していた群の術後合併症のORは、少なくとも1年前に禁煙した群よりも高かった(OR:1.13、95%CI:1.00~1.29、3万1,238例[13研究])。
研究グループは、手術前の2週間も喫煙していた群と2週間~1ヵ月前および2週間~3ヵ月前に禁煙した群のORに有意差がなかった点について、「短い禁煙期間を比較した研究が少ないことや出版バイアスの可能性により、長い禁煙期間よりも短い禁煙期間を支持する研究が過小評価されている可能性がある」と言及したうえで、「禁煙とがんの術後合併症に関するこのシステマティックレビューおよびメタ解析では、手術の4週間前から禁煙していたがん患者は、手術が近づいても喫煙していた患者よりも術後合併症が少なかった。最適な禁煙期間を特定し、がん手術延期と病勢進行リスクとのトレードオフについての情報を臨床医に提供するためには、さらに質の高いエビデンスが必要である」とまとめた。
(ケアネット 森)