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糖尿病患者、カルシウムサプリ常用でCVDリスク増

 カルシウムは、骨の組成に重要であり、カルシウム補助食品やサプリメントは骨粗鬆症性骨折予防などに広く用いられている。一方で、カルシウムサプリ摂取が血中カルシウム濃度を急激に上昇させ、心血管系に有害となる可能性がある。とくに心血管疾患(CVD)のリスクが高く、カルシウム代謝が低下していることが多い糖尿病患者における安全性の懸念が提起されている。中国・武漢のTongji Medical CollegeのZixin Qiu氏らによる、糖尿病患者におけるカルシウムサプリ摂取の安全性をみた研究結果がDiabetes Care誌2024年2月号に掲載された。 研究者らはUKバイオバンクに登録された43万4,374人(うち糖尿病患者2万1,676例)を主要解析対象とし、カルシウムサプリの使用と糖尿病の状態との相互作用を検証した。Cox比例ハザード回帰モデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・43万4,374人中2万9,360人(6.8%)がベースライン時に習慣的なカルシウムサプリ使用を報告した。糖尿病患者と非患者でサプリの使用率に有意差はなかった。・追跡期間中央値8.1年および11.2年の間に、それぞれ2万6,374件のCVDイベントおよび2万526件の死亡(うち4,007件がCVD)が記録された。・多変量調整後、糖尿病患者においては、習慣的なカルシウムサプリの使用はCVD発症(HR:1.34、95%CI:1.14~1.57)、CVD死亡(HR:1.67、95%CI:1.19~2.33)、全死亡(HR:1.44、95%CI:1.20~1.72)の高リスクと有意に関連していた。一方、糖尿病のない参加者では有意な関連はみられなかった。・CVDイベントおよび死亡のリスクに関して、習慣的なカルシウムサプリの使用と糖尿病の状態との間には有意な乗法的、相加的な相互作用が認められた。一方、食事または血清カルシウムと糖尿病の状態との間には有意な相互作用はみられなかった。 研究者らは、カルシウムサプリの習慣的使用は、糖尿病患者におけるCVDイベントおよび死亡の高リスクと有意に関連していた。糖尿病患者においては、カルシウムサプリの潜在的な有害作用と考えられる有益性とのバランスをとるためにさらなる研究が必要である、としている。

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GLP-1受容体作動薬の投与には適切な患者をSELECTするのが肝要だろう(解説:住谷哲氏)

 注射薬であるGLP-1受容体作動薬セマグルチド(商品名:オゼンピック)が心血管イベントハイリスク2型糖尿病患者の心血管イベント発症を26%減少させることが、SUSTAIN-6試験で報告されている1)。一方で、経口セマグルチド(同:リベルサス)はPIONEER 6試験において心血管イベントハイリスク2型糖尿病患者の心血管イベント発症を増加させないこと、つまり既存の治療に対する非劣性は示されたが優越性は証明されなかった2)。したがって、同じセマグルチドではあるが、心血管イベント抑制を目標とするのであれば経口薬ではなく注射薬を選択するのが妥当だろう。 肥満症は心血管イベント発症のリスク因子であるが、生活習慣改善のみでは目標とする体重減少を達成することは困難であった。しかし、GLP-1受容体作動薬の登場により状況は一変した。GLP-1受容体作動薬には体重減少作用があり、とくにセマグルチド2.4mg(同:ウゴービ)は肥満症治療薬として欧米およびわが国で承認されている。本試験はセマグルチド2.4mgの心血管イベント既往を有する、糖尿病を合併していない肥満症患者の心血管イベント再発抑制に対する有効性を検討したものである。結果は平均観察期間40ヵ月で、3-point MACEの発症を20%抑制することが示された。 RCTの結果を目の前の患者に適用する際には、結果の外的妥当性(generalizability or external validity)の評価が重要となる(EBMのstep 4)。本試験の対象患者は、全例が心血管イベントの既往があり(心筋梗塞が70%)、平均BMI 33kg/m2、糖尿病ではないが70%以上の患者はprediabetes(HbA1c≧5.7%)を合併していた。本文には記載がないが、表3から主要評価項目のNNTを計算すると67/40ヵ月になる。肥満症の有病率を考慮すると、このNNTはこの薬剤の有用性を示唆すると思われるが、やはりリスクとベネフィットとを考慮して適切な患者をSELECTすることが肝要だろう。

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肥満の変形性関節症患者での減量は「ゆるやかに」が重要

 肥満症治療薬を使って体重を徐々に落とすことは変形性関節症(osteoarthritis;OA)患者の延命に役立つことが、新たな研究で明らかになった。ただし、急速な減量は、生存率の改善には寄与しないばかりか、場合によっては心血管疾患のリスクをわずかに上昇させる可能性も示された。中南大学(中国)のJie Wei氏らによるこの研究の詳細は、「Arthritis & Rheumatology」に12月6日掲載された。 肥満は関節炎の悪化要因である上に、早期死亡のリスク因子でもある。現行のガイドラインでは、過体重や肥満の変形性膝関節症/変形性股関節症の患者に対しては減量が推奨されているが、OA患者での減量と死亡との関連に関するデータは少ない。 そこでWei氏らは今回、過体重や肥満の変形性膝関節症/変形性股関節症患者6,524人(平均年齢60.9歳、女性70.2%、平均BMI 38.1)を対象に、肥満症治療薬による1年間の体重減少と全死亡率やその他の疾患との関連を検討した。対象患者のデータは、ウゴービやZepbound(ゼップバウンド)のような肥満症治療薬が登場する前の2000年1月1日から2022年3月31日の間に収集されたものであり、患者は肥満症治療薬としてオルリスタット(5,916人)、シブトラミン(488人)、rimonabant(リモナバント、120人)を服用していた。 5年間の追跡期間中の全死亡率は、1年の間に体重が増加したか変化のなかった人で5.3%、体重減少が緩徐〜中等度(2〜10%の減少)だった人で4.0%、急速(10%以上の減少)だった人で5.4%であった。体重が増加したか変化のなかった人を基準とした場合の全死亡のハザード比は、「緩徐〜中等度」の人では0.72(95%信頼区間0.56〜0.92)と有意に減少していたが、「急速」の人では0.99(0.67〜1.44)と有意ではなかった。さらに、「緩徐〜中等度」と「急速」のいずれの群でも、体重の減少に伴い、高血圧、2型糖尿病、静脈血栓塞栓症のリスクが低下するという減量の保護効果が認められた。しかし、体重減少が急速だった人では、心血管疾患のリスクについては、統計的に有意ではないものの上昇が認められた。一方、がんリスクについては、どちらの群でも有意な関連は認められなかった。 では、なぜ急速に減量した人でのみ、心血管疾患のリスク増加が認められたのだろうか。研究グループによると、先行研究では、急速な減量は心臓にダメージを与える可能性のあるタンパク質や電解質、微量栄養素の欠乏といった不健康な状態に関係することが示されているという。 研究グループは、本研究から学ぶべき重要ポイントとして、「肥満症治療薬によるゆるやかな減量は、過体重や肥満のOA患者の全体的なウェルネスを改善させる可能性がある」とまとめている。また、「今回の結果は、ゆるやかな減量を推奨している、肥満症治療の世界的なガイドラインと一致するものだ」と述べている。

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3月3日開催『第4回アンチエイジングセミナーin鹿児島』【ご案内】

 2024年3月3日(日)、鹿児島市医師会館において『第4回アンチエイジングセミナーin鹿児島』が開催される。参加費は無料で、医師、歯科医師、研究者、メディカルスタッフほか、医療関係者であれば誰でも参加ができる。なお、申込締切は2月26日(月)で、定員100名に達し次第、締め切りとなる。 “最先端の抗加齢医学に触れてみませんか!”と題し、アンチエイジングの分野をリードしてきた各領域のエキスパートが講演を行う。「老化研究の現状と展望」「循環器のアンチエイジング」「ホルモンとアンチエイジング」「自らの行動変容を促す健康教室」など、アンチエイジングにとって重要なテーマを取りそろえており、最新の知識を学び、予防医療への未来へ一歩リードできるようなセミナーを目指している。 主催の日本抗加齢医学会 連携委員会では「鹿児島からアンチエイジング医学の仲間の輪をより広げていくため、知り合いや関係者などでアンチエイジングに興味のある方をお誘い合わせの上、ぜひ参加登録をお願いしたい」と呼び掛ける。 開催概要は以下のとおり。開催日時:3月3日(日)13:00~16:15開催場所:鹿児島市医師会館 大会議室(最寄り駅:鹿児島市電第2期線「加治屋町駅」)     〒892-0846 鹿児島県鹿児島市加治屋町3番10号開催形式:会場開催(WEB配信はなし)参加方法:無料(事前参加登録制)申込締切:2月26日(月)または定員100名になり次第終了■参加登録はこちら【プログラム】 座長:中島 孝哉氏(中島こうやクリニック 院長) 講演1.「健康寿命延伸に向けた老化研究の現状と展望」 尾池 雄一氏(熊本大学大学院生命科学研究部 教授[分子遺伝学講座]/熊本大学大学院生命科学研究部長・医学部長) 講演2.「循環器科の立場からの抗加齢医学」 池田 義之氏(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 心臓血管・高血圧内科学 准教授) 講演3.「ホルモンと健康長寿(DHEAを中心に)」 柳瀬 敏彦氏(誠和会 牟田病院 院長) 講演4.「抗加齢医学をセルフケアに活かす体験型健康医学教室(りんご教室)」 山下 積德氏(つみのり内科クリニック 院長)【主催】 日本抗加齢医学会 連携委員会【お問い合わせ先】 日本抗加齢医学会事務局 〒103-0024 東京都中央区日本橋小舟町6-3 日本橋山大ビル4F TEL:03-5651-7500 FAX:03-5651-7501 E-mail:seminar@anti-aging.gr.jp 学会ホームページはこちら

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脳卒中による認知症を防ぐために!治療可能なリスク因子は

 脳卒中後の認知機能障害および認知症の確立したリスク因子として、高齢や重度の脳卒中が報告されているほか、心房細動や糖尿病の既往歴なども示唆されている。今回、治療可能なリスク因子に焦点を当て、それらの関連の強さを、ドイツ・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのJule Filler氏らがシステマティックレビューおよびメタ解析で明らかにした。Lancet Healthy Longevity誌2024年1月号掲載の報告。 脳卒中後の認知機能障害は脳卒中後4年の時点で最大80%1)に、脳卒中後の認知症は脳卒中後1年の時点で最大40%2)に認められ、患者・介護者・医療制度に大きな負担をもたらしている。研究グループは、システマティックレビューおよびメタ解析を行い、年齢や脳卒中の重症度以外のリスク因子、とくに治療可能なリスク因子に焦点を当てて評価を行った。 研究グループは、MEDLINEとCochraneをデータベースの開設から2023年9月15日まで検索した。急性脳卒中(虚血性/出血性脳卒中、一過性脳虚血発作)患者を対象とした前向きおよび後向きコホート研究、無作為化対照試験の事後解析、ネステッドケースコントロール研究を解析し、ベースライン時のリスク因子と少なくとも3ヵ月の追跡期間における脳卒中後の認知機能障害および認知症との関連を検討した。ランダム効果メタ解析を用いてプールされた相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューの対象となった論文は162報で、このうち113報(89研究、16万783例)がメタ解析の対象となった。・ベースライン時の認知機能障害は、脳卒中後の認知機能障害(RR:2.00、95%CI:1.66~2.40)および脳卒中後の認知症(3.10、2.77~3.47)の最も強いリスク因子であった。・脳卒中後の認知機能障害の治療可能なリスク因子として、糖尿病(RR:1.29、95%CI:1.14~1.45)、心房細動の合併/既往(1.29、1.04~1.60)、中等度または重度の大脳白質病変(1.51、1.20~1.91)、大脳白質病変の重症度(1.30、1.10~1.55[1SD増加当たり])を年齢や脳卒中の重症度とは別に同定した。・脳卒中後の認知症の治療可能なリスク因子は、糖尿病(RR:1.38、95%CI:1.10~1.72)、中等度または重度の大脳白質病変(1.55、1.01~2.38)、大脳白質病変の重症度(1.61、1.20~2.14[1SD増加当たり])であった。・そのほかのリスク因子として、低学歴、脳卒中の既往、左半球の脳卒中、3つ以上の閉塞、脳萎縮、ベースライン時の認知機能の低さなどがあった。・リスク因子と脳卒中後の認知症との関連は、近年に実施・発表された研究では弱かった。 これらの結果より、研究グループは「今後の臨床試験では、脳卒中後の認知機能障害および認知症の予防のための潜在的標的として、これらのリスク因子を検討すべきである」とまとめた。

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第197回 強引過ぎる零売薬局規制とやる気のないスイッチラグ対策で実感する厚労省の守旧派ぶり、GLP-1ダイエット処方規制の方が最優先では?

食事なしのビジネスホテルにポツンと放り込まれた被災者たちこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。能登半島地震から4週間が過ぎました。先週のこの連載では、被災者の地元外にある1.5次や2次避難所への移動が本格化したものの、実際に移ったのは2,607人、避難者全体の17%とほとんど進んでいないと書きましたが、その後、1月26日のNHKニュースでは、2次避難所等への移動が進まない意外な理由を報じていました。それによれば、2次避難所に避難したものの、食事提供がないため再び被災地の避難所に戻る人が少なくないというのです。食事の提供がある旅館などの避難所は既に満員のため、現在、県などが用意するのはビジネスホテルなどの食事提供がない避難所。場合によっては、食事代だけではなく駐車場代も自己負担になるとのことです。被災した高齢者たちを金沢市などのビジネスホテルにポツンと放り込んで、食事はコンビニや外食、自腹でなんとかしろと言っているわけです。被災者たちが「多少不便でも地元の避難所がいい」というのもわかります。「災害関連死予防のため」と言いながら、行政のこの対応は無責任としかいいようがありません。福祉避難所ではないので、おそらく医療や介護の体制も手薄で被災者任せではないかと思われます。国や県はこうした問題をすでに把握しているとのことですが、早急な対応が望まれます。零売は「やむを得ない場合」のみ販売可能にさて、今回は、処方箋なしで一部の医療用医薬品が購入できる「零売薬局」や日本でなかなか進まないスイッチOTC化など薬の販売を巡る動きについて書いてみたいと思います。厚正労働省は昨年12月18日に開いた医薬品の販売制度に関する検討会において、零売の法令規定や、 乱用の恐れのある医薬品の販売規制強化、 一般用医薬品の販売区分の統廃合などを盛り込んだ改正案をとりまとめました。年が明けた1月11日には、「医薬品の販売制度に関する検討会とりまとめ」と題する正式文書を公表しました1)。その中で、かねてから問題視されてきた零売について、「やむを得ない場合」のみ販売可能であることを法令で明記し、販売可能時の条件も法令で定める方針を打ち出しました。法制化は2024年中にも行われるとみられます。2005年4月の薬事法改正時の通知で零売に法的根拠厚労省が「処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売」、すなわち零売を公式に認めたのは、2005年とそんなに昔のことではありません。2005年4月の薬事法改正時に、医薬品分類を現在の分類に刷新するとともに「処方箋医薬品以外」の医療用医薬品の薬局での販売を条件付きで認める通知を発出し、零売に法的な根拠を与えました。零売については本連載でも、「第127回 アマゾン処方薬ネット販売と零売薬局、デジタルとアナログ、その落差と共通点(後編)」で取り上げました。この時は、コロナ禍で医療機関の受診控えが起こったことなどを背景に、東京都内をはじめ大都市圏で零売薬局が急増している状況と、私自身の零売利用体験について記し、「零売は医療機関を受診しない(保険診療ではない)ことで、医療費の削減につながります。国が言う、セルフメディケーション推進の流れにも合っているわけで、風邪や下痢などのコモンディジーズや患者自身も十分に理解している疾患に限っては、零売は『規制』よりも『推進』があるべき形だと考えられます」と書きました。 医薬品の販売制度に関する検討会で零売を法律で規制する方向にしかし、世の中はそうは動きませんでした。利用者にとっては医療機関に受診しないで処方薬が手に入る利便性がある一方で、さまざまな不適切事例(「処方箋なしで病院の薬が買えます」と通知で不適切とされる広告を出していた企業があるなど)を厚労省も把握しており、不適切事例に対する指導を徹底するよう、度々通知を出してきました。そうした流れの延長線で、今回の医薬品の販売制度に関する検討会も議論が進みました。結果、「とりまとめ」では零売を法律でしっかりと規制しようという内容となったわけです。具体的には、医療用医薬品については処方箋に基づく交付が基本処方箋医薬品以外の医療用医薬品は、例外的に「やむを得ない場合」については薬局での販売を認めることを法令上規定上記「やむを得ない場合」は、「医師に処方され服用している医療用医薬品が不測の事態で患者の手元にない状況となり、かつ、診療を受けられない場合」、「OTC医薬品で代用できない場合、又は代用可能と考えられるOTC医薬品が容易に入手できない場合(例:通常利用している薬局及び近隣の薬局等において在庫がない場合等)」に限定。なお、その他の特殊な場合として「社会情勢の影響による物流の停滞・混乱や疾病の急激な流行拡大で薬局での医薬品販売が必要となった時」を付記。となっています。不適切な処方・販売なら「GLP-1ダイエット」の方がよほど悪質零売という販売システムにおいて甚大な健康被害があったわけでもなく、単に広告表現に不適切な事例が散見されただけで、零売という薬剤販売のユニークな仕組みを一律に法律で規制してしまうというのは、相当強引なやり方ではないかと私は思います。薬の不適切な処方、販売ということでは、美容クリニックなどが自由診療でGLP-1受容体作動薬を処方する、通称「GLP-1ダイエット」のほうがよほど悪質なのではないでしょうか。急性すい炎など重篤な副作用の報告や健康被害も報告されているようです。2023年12月20日に国民生活センターはダイエットなどを目的としたオンライン診療でトラブルについて注意喚起を行っています2)。それによると、ダイエットを含む美容医療のオンライン診療に関する相談は、2022年度が205件と前年度の約4.2倍に増加。2023年4月~10月末は169件の相談があり、前年同期比の約1.7倍に上っていたそうです。相談の約半数が、ダイエット目的によるオンライン診療のトラブルで、基礎疾患の問診や副作用の説明が十分行われずに、数ヵ月分の糖尿病治療薬を処方される事例が目立っていました。実際に、頭痛や吐き気、めまいなどの副作用が起きた事例もあったとのことです。また、処方薬の中途解約に条件があり、返品や取り消しができないといった相談も多かったそうです。医師ではない職員がGLP-1受容体作動薬を自由診療で処方との報道も12月11日のNHKの「GLP-1ダイエット」に関する報道によれば、オンラインで診療する医師の医師免許が確認できないクリニックも多数あったとのことです。つまり、対面ではなくオンラインであることを悪用し、医師ではない職員が医師を騙ってGLP-1受容体作動薬を自由診療で処方しまくっているケースが相当あるようなのです。以上を比較してみると、同じ薬の処方、販売に関することなのに、国はGLP-1受容体作動薬を“偽医者”を使ってオンラインで自由診療として処方する医療機関には「とても甘く」、きちんと薬剤師が薬の説明もしてくれる零売薬局には「厳し過ぎる」と言えるのではないでしょうか。オンライン診療については、「第101回 私が見聞きした“アカン”医療機関(中編) オンライン診療、新しいタイプの“粗診粗療”が増える予感」でも、そのゆるさと危険性について書きました。コロナ禍を経たことで、オンライン診療推進という流れに揺るぎはないようです。しかし、ことオンラインにおける自由診療となると多くの悪い奴らが暗躍しているようです。零売規制やスイッチラグ解消に消極的な姿勢から浮かび上がる厚労省の守旧派ぶり薬の販売では、日本におけるスイッチOTC化の遅れも大きな問題と言えます。内閣府の規制改革推進会議の健康・医療・介護ワーキンググループは、12月11日に開いた第3回会合で、規制改革実施計画に盛り込まれているスイッチOTC促進策のフォローアップを行いました。会合では、諸外国における医療用から一般用への転用実績との格差、いわゆる「スイッチラグ」が社会課題であると再確認、厚労省に対して改めて推進を前提に審査期間・手順の見直しを迫るとともに、具体的な数値目標とロードマップの策定を求めました。スイッチラグについては、本連載の「第113回 規制改革推進会議答申で気になったこと(後編)PPIもやっとスイッチOTC化?処方薬の市販化促進に向け厚労省に調査指示」でも書きましたが、厚労省は相変わらず煮え切らない対応を繰り返しているばかりです。12月24日付の薬局新聞の報道によれば、12月11日の規制改革推進会議の健康・医療・介護ワーキンググループの会合では、厚労省がPPIなどスイッチラグの代表的な成分のOTC化に関して「重大な疾患の症状が見落とされる危惧があり、また販売制度実態調査などの状況から薬剤師による説明が十分なされていない実態がある」とそのリスクを説明したところ、ワーキンググループの委員から、「日本の薬剤師はレベルが低いと聞こえる」との疑問が呈されたそうです。理不尽とも思える零売規制やスイッチラグ解消に消極的な姿勢から浮かび上がるのは、厚労省の頑固と言える守旧派ぶりです。その背景には、日本医師会など医師団体に対する“忖度”も少なからずあるのかもしれません。医薬品販売の規制は、実際に多くの健康被害が確認されているところにフォーカスされるべきでしょう。厚労省は規制の矛先を間違えているとしか言いようがありません。参考1)「医薬品の販売制度に関する検討会」の「とりまとめ」 を公表します/厚生労働省2)痩身目的等のオンライン診療トラブル/国民生活センター

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植物性食品ベースの食事で糖尿病リスク24%減

 植物性食品をベースとする健康的な食習慣によって、2型糖尿病の発症リスクが大きく低下することを示唆する研究結果が報告された。ウィーン大学(オーストリア)のTilman Kuhn氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes and Metabolism」1月号に掲載された。遺伝的背景や肥満などの既知のリスク因子の影響を調整後に、最大24%のリスク差が認められたという。 植物性食品ベースの食事スタイルは、健康に良く、かつ環境負荷が少ないことを特徴とする。またそのような食事スタイルは、2型糖尿病のリスク低下と関連のあることも知られている。Kuhn氏らは、健康的な植物性食品ベースの食事スタイルが2型糖尿病リスクを押し下げる、潜在的なメカニズムを探る研究を行った。 研究には、40~69歳の一般成人を対象とした英国の大規模コホート研究であるUKバイオバンクのデータが用いられた。11万3,097人の研究参加者を12年間前向きに追跡したところ、2,628人が新たに2型糖尿病を発症。食生活が健康的な植物性食品ベースか否かを評価する指標(healthful plant-based index;hPDI)の第1四分位群(スコアの低い下位4分の1)を基準として、年齢や肥満、身体活動量、遺伝的背景などの既知の2型糖尿病リスク因子を調整した上で発症リスクを検討した。なお、hPDIは新鮮な果物や野菜、全粒穀物の摂取量が多いほどスコアが高くなる。 多変量Cox回帰モデルでの解析の結果、第4四分位群(スコアの高い上位4分の1)は、2型糖尿病発症リスクが24%低いことが明らかになった〔ハザード比(HR)0.76(95%信頼区間0.68~0.85)〕。媒介分析からは、BMIがこの関連性の28%を媒介し、ウエスト周囲長も28%媒介していることが示された。そのほかに、糖代謝の指標のHbA1cが11%、脂質代謝の指標の中性脂肪が9%、肝機能の指標のALTが5%、γ-GTが4%を媒介。また、炎症の指標であるC反応性蛋白、腎機能の指標のシスタチンC、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、尿酸がそれぞれ4%ずつ媒介していた。このことは、体重や内臓脂肪の管理および糖代謝や脂質代謝が良好であること以外に、肝臓や腎臓の機能が良好であることも、2型糖尿病発症リスクの低さに関与していることを意味している。 hPDIとは反対に、精製穀物の摂取量が多いなどの非健康的な食事スタイルを評価する指標(unhealthful PDI;uPDI)を用いた検討からは、第1四分位群に比べて第4四分位群は2型糖尿病発症リスクが37%高いことが明らかになった〔HR1.37(同1.22~1.53)〕。また媒介分析から、ウエスト周囲長が17%、中性脂肪が13%、BMIが7%、この関連性を媒介していることが示された。 Kuhn氏によると本研究は、「植物性食品ベースの食事スタイルの健康への影響を、代謝関連指標と臓器機能のバイオマーカーを媒介因子として設定し、それらの関連の程度を明らかにした初の研究」だという。結果として、「植物性食品ベースの食事スタイルは、単に体重や内臓脂肪の増加を抑制するにとどまらず、炎症の抑制、腎臓や肝臓の機能の維持・改善を介して、2型糖尿病リスクを低下させることが示された」と、結論付けられている。

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GLP-1受容体作動薬の処方された患者さんへのライフスタイル指導【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第45回

■外来NGワード「きちんと注射しなさい!」(食事療法や運動療法については説明せず)「この注射をすれば、痩せますよ」(副作用について説明せず)■解説GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病治療薬であり、膵β細胞に作用して血糖依存的にインスリン分泌を促進するGLP-1(Glucagon-like peptide-1)に基づいています。このクラスの薬物は血糖改善だけでなく、減量効果も期待されます。わが国では2010年に初めてリラグルチド(商品名:ビクトーザ)が上市され、その後にエキセナチド(同:バイエッタ)、リキシセナチド(同:リキスミア)、デュラグルチド(同:トルリシティ)、セマグルチド(同:オゼンピック)など、現在では5つの注射製剤が利用可能です。あと、GIPも加えたGIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチド(同:マンジャロ)もあります。ただし、GLP-1受容体作動薬を使用する際には、開始直後に嘔気や嘔吐などの消化器症状がよくみられます。これらの症状は通常、時間が経つと軽減する傾向がありますが、患者さんに対しては、事前に十分な説明が必要です。なぜなら、突然の症状に驚いて治療アドヒアランスが低下する可能性があるからです。重大な有害事象としては、腸閉塞が挙げられます。腹部手術の既往がある患者さんや腸閉塞のリスクを抱える患者さんでは、慎重な投与と定期的なモニタリングが必要です。また、GLP-1受容体作動薬であるセマグルチド(同:ウゴービ皮下注)は、肥満症治療薬としても認可されています。臨床試験では、セマグルチドを使用した群では平均で体重が13.2%減少したことが示され、その効果は脳の中枢を刺激して食欲を抑え、胃の運動を制御することによるものです。最大投与量が2.4mgまでできるため、強力な効果が期待される一方で、吐き気、下痢、便秘などの副作用には慎重に対処する必要があります。患者さんには副作用を十分に説明し、ライフスタイルの改善により最小限の用量で管理するように指導することが重要です。■患者さんとの会話でロールプレイ患者食事や運動に気を付けているんですが、血糖がなかなか下がりません。医師それでは、この週1回の注射薬を試してみましょうか。患者注射薬ですか、毎日、注射できるかな…(心配そうな顔)。医師大丈夫です。これは週に1回の注射なので、休みの日などゆっくりとした日に試してみてください。患者それなら、できそうです。医師この薬は血糖値が高いときには膵臓を刺激してインスリンを出して血糖値を改善するんですが、脳にも働いて食欲を抑えることで減量効果も高めます(薬の作用について説明)。患者えっ、それなら私にもピッタリですね。医師ただし、副作用については注意してください。注射してからすぐに、吐いてしまうことがあります。とくに、このくらいならいけると余分なものを食べたり、食べ過ぎたりするのは禁物です。患者了解しました。食べ過ぎは禁物ということですね。医師そうです。薬も少なめから徐々に増やしていこうと思っています。その方が、副作用がでにくいので…。患者それは安心です。それで、お願いします。医師この薬の効果を高めるには、朝晩体重計に乗ったり、お菓子類を目につかない所に置く、ヘルシープレートを使うなどのダイエット作戦を併用しておくといいですよ。ここにパンフレットがありますので、是非、試してみてください。患者はい。ありがとうございます(嬉しそうな顔)。■医師へのお勧めの言葉「この薬の副作用を予防するには、余分なものを食べない、食べ過ぎたり飲みすぎたりしないことが大切ですよ」「この薬の効果を高めるには、朝晩体重計に乗ったり(セルフモニタリング)、お菓子類を目につかない所に置く(刺激統制法)、ヘルシープレートを使う(ポーションコントロール、などのダイエット作戦を一緒にやるといいですよ!」 1)Wilding JPH, et al. N Engl J Med. 2021;384:989-1002.2)Capehorn MS, et al. Diabetes Metab. 2020;46:100-109.

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第199回 コロナ感染でくしゃみが生じる仕組みを発見/コロナ感染でドーパミン神経が老化する

コロナ感染でくしゃみが生じる仕組みを発見新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染でよく生じる症状の1つ、くしゃみを誘発する仕組みが見つかりました。SARS-CoV-2は手持ちのプロテアーゼPLpro(パパイン様プロテアーゼ)を頼りに複製します。そのPLproが感覚神経の一員である侵害受容神経を活性化してくしゃみを誘発することがマウスを使った検討で明らかになりました1)。ウイルス感染の別の主な症状である咳をPLproが促すかどうかは検討されませんでした。というのもマウスの咳を確かめようがなかったからです2)。しかしPLproが咳も引き起こしている可能性はありそうです。PLproは侵害受容神経で発現するイオンチャネルTRPA1を介した作用により、くしゃみや痛みを誘発することが今回の研究で示されました。TRPA1活性化の咳誘発作用が先立つ研究で知られており3)、PLproが咳も誘発するかどうかを調べることは価値がありそうです。PLproはSARS-CoV-2の複製に不可欠なことから、その阻害薬の開発が進んでいます。たとえばビタミンA誘導体イソトレチノンにPLpro阻害作用があると示唆されており、Clinicaltrials.govには同剤による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療の臨床試験がいくつか登録されています。また、米国・Sound Pharmaceuticals社の開発品ebselenもどうやらPLpro阻害作用があるらしく、COVID-19患者を対象にした2つの第II相試験が進行中です。今回の結果によるとそれらPLpro阻害薬はこれまでの見込み以上の症状緩和作用や感染の拡大を防ぐ作用を担いうるかもしれません。くしゃみを誘発するウイルスはほかにもありますが、そもそもウイルス感染のくしゃみの原因はこれまでわかっていませんでした。今回見つかった仕組みはSARS-CoV-2のみならず、そのほかのウイルス感染の症状や感染の伝播を減らす手段の開発にも役立ちそうです2)。コロナ感染でドーパミン神経が老化する続いて、SARS-CoV-2が神経に支障を来す仕組みを同定し、COVID-19患者のパーキンソン病症状の発生に注意する必要があることを示唆した研究成果を紹介します。COVID-19の嗅覚/味覚障害や頭痛などの神経異常はますます広く知られるようになっています。神経のSARS-CoV-2感染のしやすさは一様ではないらしく、たとえばiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作ったドーパミン放出(DA)神経はSARS-CoV-2感染を許し、皮質神経はそうでないことが先立つ研究で示されています。新たな研究の結果、SARS-CoV-2感染したiPS細胞由来DA神経はパーキンソン病と関連する老化状態に陥ることが示されました4,5)。SARS-CoV-2感染で老化経路の活性化がみられたのはDA神経細胞のみで、肺を模す組織(肺オルガノイド)、膵臓細胞、肝臓オルガノイド、心臓細胞のSARS-CoV-2感染では老化経路遺伝子の有意な働きは認められませんでした。そういう神経老化を防ぎうる手段も早くも同定されました。検討されたのは米国FDA承認薬一揃いで、まずそれらをiPS細胞由来DA神経に与え、次にSARS-CoV-2を加えた後に細胞老化の生理指標βガラクトシダーゼ(β-gal)活性が測定されました。その結果やほかの検討により、3つの薬・リルゾール、イマチニブ、メトホルミンがDA神経へのSARS-CoV-2感染を阻止してその老化を防ぐことが判明しました。筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療に使われるリルゾールとSARS-CoV-2感染の関わりは知られていませんが、イマチニブのSARS-CoV-2阻止作用は肺オルガノイドを使った先立つ研究で確認されています。メトホルミンといえばSARS-CoV-2感染した肥満や2型糖尿病患者の死亡率低下と同剤使用の関連が示されており、COVID-19治療効果を担いうることが知られています。それら薬剤がSARS-CoV-2感染に伴う神経病変を解消しうるかどうかは今後調べる価値がありそうです。また、SARS-CoV-2感染した人にパーキンソン病関連症状が発生していないかどうかを注意して観察する必要がありそうです。パーキンソン病で損傷を受けやすいのが脳の黒質のDA神経A9型であるのと同様に、そのA9型はSARS-CoV-2にどうやらとくに影響を受けやすいことが今回の研究で示唆されています。参考1)Mali SS, et al. bioRxiv. 2024 Jan 11. [Epub ahead of print]2)Why does COVID-19 make you sneeze? / Science3)Grace MS, et al. Pulm Pharmacol Ther. 2011;24:286-288.4)Yang L, et al. Cell Stem Cell. 2024 Jan 10. [Epub ahead of print]5)SARS-CoV-2 Can Infect Dopamine Neurons Causing Senescence / Weill Cornell Medicine

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膵臓の治療が自閉症の子どもの症状を改善か

 意外に思うかもしれないが、自閉症がある子どもの膵臓に対する治療が、行動面の問題の軽減に有効である可能性が、米テキサス大学(UT)ヘルス・マクガバンメディカルスクールの精神医学および行動科学教授のDeborah Pearson氏らによる研究で示された。この研究結果は、「JAMA Network Open」に2023年11月30日掲載された。 研究グループは、食事からのタンパク質摂取とセロトニンやドーパミンなどの重要な神経伝達物質との関連がこの結果の重要ポイントだと説明している。これらの神経伝達物質がうまく働かないと、子どもの行動に影響が及ぶ。自閉症スペクトラム障害(ASD)のある子どもの多くはパスタやパンなどの炭水化物の多い食品を好む一方、タンパク質の多い食事には抵抗を示す。しかし、神経伝達物質の合成に必要なアミノ酸はタンパク質からしか得ることができない。 そこで研究グループは、膵酵素の補充により膵臓でのアミノ酸の産生量を増加させることが子どもの脳に有用であり、脳の神経伝達物質の不足に関連する問題行動の軽減につながるのではないかと考えた。Pearson氏は、「ASDのある子どもには、しばしば易刺激性(怒りっぽさ)などの不適応行動が併発する。そのような場合に、副作用のリスクが低い介入で対処できるかどうかを明らかにしたかった」と説明する。 研究は、3~6歳のASDがある子ども190人(平均年齢4.5歳、男児79%)を対象に実施された。まず、12週間にわたって実施された第一段階の研究では、ランダムに選ばれた92人の子どもの食事に1日3回、豚由来の高プロテアーゼ膵酵素(900mg、以下、膵酵素)をふりかけた。一方、残る98人の食事には偽の酵素(プラセボ)をふりかけた。この研究期間中、研究者や子どもの親には、どの子に何が与えられているのかは明かされなかった。 その結果、膵酵素を摂取した子どもでは、親の報告に基づいた子どもの易刺激性や多動性、従順性のなさ、不適切な発言が有意に減少したことが明らかになった。これに対し、プラセボを摂取した子どもでは、このような変化は認められなかった。 次の段階の研究では、24週間にわたって全員に毎日膵酵素が投与された。その結果、この期間も、子どもの親の報告に基づいた易刺激性や多動性、不適切な発言が有意に減少したほか、無気力、引きこもりの程度も低下していた。全研究期間を通じて、膵酵素投与と関連/無関連の重大な有害事象は1件も報告されなかった。 Pearson氏は、「今回の研究では、神経伝達物質の合成に必要なアミノ酸の産生を促すと考えられている膵酵素の補充がASDの未就学児の行動面の機能の改善に関連することと、その副作用は極めて少ないことが示された」と説明している。 なお、本研究は、研究で使用された膵酵素補充剤を開発しているCuremark社の資金提供を受けて実施された。

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抑うつ症状と仮面高血圧に関連あり

 大規模な横断研究から、診察室の血圧は正常でも家庭で測定した血圧は高値を示す「仮面高血圧」と抑うつ症状には関連があることが分かったと、東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門の寳澤篤氏らが「Hypertension Research」に10月31日発表した。抑うつ症状は仮面高血圧の危険因子の一つである可能性が示されたとしている。 高血圧の中でも仮面高血圧の患者は、正常血圧の人と比べて心血管疾患リスクが高く、仮面高血圧は心血管疾患の危険因子の一つだとされている。しかし、その診断には家庭血圧測定が必要なため、見過ごされやすく、適切な治療を受けていない可能性が高い。また、これまでの研究で、仮面高血圧のリスク因子として、男性、喫煙習慣、糖尿病、治療中の高血圧、診察室血圧で正常高値などが挙げられている。さらに、不安や抑うつ、ストレスなどの精神状態も血圧に影響を与える可能性が報告されている。そこで、寳澤氏らは今回、抑うつ症状と仮面高血圧の関連を評価する横断研究を実施した。 この研究は、東北メディカル・メガバンク計画地域住民コホート調査から2013~2016年に宮城県で実施したベースライン調査データを用い、研究センターで測定した血圧が正常血圧〔収縮期血圧(SBP)140mmHg未満かつ拡張期血圧(DBP)90mmHg未満〕だった成人男女6,705人(平均年齢55.7±13.7歳、女性74.9%)を対象に行われた。参加者には、自宅で1日2回(朝・晩)血圧と心拍数を2週間測定してもらった。抑うつ症状の評価には、うつ病自己評価尺度(Center for Epidemiologic Studies Depression Scale;CES-D)日本語版を用いた。仮面高血圧は、研究センターでは正常血圧かつ家庭高血圧の基準(SBP 135mmHg以上またはDBP 85mmHg以上)を満たす場合と定義した。 参加者のうち、男性では18.4%(1,685人中310人)、女性では27.7%(5,020人中1,384人)が抑うつ症状を有していた。男女別に、年齢を調整した上で抑うつ症状の有無と血圧の関連を解析したところ、抑うつ症状のあるグループでは、抑うつ症状のないグループに比べて朝および晩の家庭血圧が有意に高かった(男性:朝のSBP 129.0mmHg対127.0mmHg、晩のSBP 126.0mmHg対124.0mmHg、女性:同順に121.0mmHg対119.5mmHg、117.7mmHg対116.2mmHg)。研究センターで測定した血圧には、男女とも抑うつ症状の有無で差は見られなかった。 また、解析の結果、男女ともに、抑うつ症状のあるグループでは、抑うつ症状のないグループと比べて仮面高血圧の有病率が高いことが分かった。多変量解析によるオッズ比は、男性では1.72(95%信頼区間1.26~2.34)、女性では1.30(同1.06~1.59)と、その傾向は男性の方が強かった。 以上から、著者らは「抑うつ症状と仮面高血圧には関連があり、抑うつ症状は仮面高血圧の危険因子の一つである可能性がある。このことから、抑うつ症状がある人では、家庭血圧測定を行うことで仮面高血圧の早期発見、早期治療に有用な可能性が示唆された」と結論。ただ、今回は横断研究だったため、今後、さらなる研究で因果関係を検証していきたいと付言している。

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花粉症重症化を防いで経済損失をなくす/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

 花粉飛散が気になる季節となった。今後10年を見据えた花粉症への取り組みについて、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(理事長:村上 信五氏)は、都内で「花粉症重症化ゼロ作戦」をテーマにメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、花粉症重症化の身体的、経済的、社会的弊害と鼻アレルギー診療ガイドラインの改訂内容、花粉症重症化ゼロ作戦の概要などがレクチャーされた。アレルギー性鼻炎の経済的損失は年19万円 はじめに村上氏が挨拶し、花粉症は現在10人に4人が発症する国民病であること、低年齢での発症が増加していること、花粉症により経済的損失も多大であることなどを語り、同学会が取り組む「花粉症重症化ゼロ作戦」の概要を説明した。 続いて岡野 光博氏(国際医療福祉大学耳鼻咽喉科学 教授)が「花粉症重症化の意味するもの」をテーマに花粉症による社会・患者の損失について説明した。 2023年に政府は花粉症は国民病として関係閣僚会議を立ち上げ「発生源対策」「飛散対策」「発症等対策」の3本柱で対策を施行することを決定した。具体的には、診療ガイドラインの改訂や舌下免疫療法(SLIT)の推進、リフィル処方箋の活用推進などが予定されている。 花粉症の主な症状である鼻、眼、全身、のど症状について述べ、1日にくしゃみと鼻かみが各11回以上、鼻閉による口呼吸が1日のうちでかなりを占める場合は「重症」と評価し、花粉症が重症化するとQOLが著しく悪化すると説明した。QOLの評価指標であるEQ-5D-5Lを用いた値では、重症花粉症のQOLは糖尿病や骨折、乾癬よりも悪いことが報告された。一例としてアレルギー性鼻炎(AR)の研究ではあるが、重症化が患者の健康状態と労働生産性に重大な影響を与え、とくに労働生産性についてみると平均収入日額で1万5,048円、労働時間で年12.74時間、経済的損失で年19万1,783円と見込まれるとする報告を紹介した1)。 また、重症スギ花粉症患者では、抗ヒスタミン薬と鼻噴霧用ステロイド薬の標準治療を受けていても症状ピーク期には労働や勉強の能率が約35~60%低下するという報告もあり、社会に影響を与える事態を避けるためにも花粉症重症化には対策をするべきと説明を終えた。オマリズマブなどの作用機序の図など追加 大久保 公裕氏(日本医科大学耳鼻咽喉科学 教授)が、「鼻アレルギー診療ガイドラインの改訂点:最新の治療を教えます」をテーマに今年発行が予定されているガイドラインの内容を説明した。 本ガイドラインは、1993年に初版が発行され、不定期ではあるが最新の診療エビデンスを加え改訂され、最新版は改訂第10版となる。 今版では次の内容の改訂が主に予定されている。【第1章 定義・分類】・鼻炎を「感染性」「アレルギー性」「非アレルギー性」に分類・LAR血清IgE陰性アレルギー性鼻炎を追加 【第2章 疫学】・スギ花粉症の有病率は38.8%・マスクが発症予防になる可能性の示唆【第3章 発症のメカニズム】・前段階として感作と鼻粘膜の過敏性亢進が重要・ARはタイプ2炎症【第4章 検査・診断法】・典型的な症状と鼻粘膜所見で臨床的にARと診断し早期治療開始・皮膚テストに際し各種薬剤の中止期間を提示【第5章 治療】・各治療薬の作用機序図、免疫療法の作用機序図、スギSLITの効果を追加 この中で大久保氏は、とくに治療について厚く触れ、治療目標として「症状がないか軽度、日常生活に支障がない」「症状が安定し、急性の増悪がない」「抗原誘発反応がないか軽度」の状態に患者をもっていくことが必要と語った。また、ARの治療アドヒアランスについて、患者の69%が不良であり、その一因として抗ヒスタミン薬の眠気などの作用を上げ、理想的な抗ヒスタミン薬の要件として「速効性、効果持続」「眠気など副作用が少ない」「安全で長期間投与」「1日1~2回」などを提示した。また、重症花粉症では、抗ヒトIgE抗体オマリズマブについて、症状ピーク時に有意に鼻症状のスコアを改善したことを紹介した2)。 そのほか、アレルゲン免疫療法について、症状を改善し、薬用量が減少しうること、全身的・包括的な臨床効果が期待できること、治療終了後にも効果が期待できることを示し、スギSLITについて、3年継続することで治療終了後2年間の効果持続があったことなどを説明した3)。しかし、SLITでは、即効性がなく、長期治療が必要であること、不安定喘息などには禁忌であること、アナフィラキシーの副反応など注意が必要と短所も示した。 最後に治療法の選択を示し、「主治医とよく相談し、自分に合った治療法を決めて欲しい」と述べ、レクチャーを終えた。花粉症重症化の知識を啓発してゼロにする 川島 佳代子氏(大阪はびきの医療センター 耳鼻咽喉・頭頸部外科 主任部長)が、「花粉症重症化ゼロ作戦2024:我々がこの春の花粉症で行うべきこと」をテーマに今年から始まる「花粉症重症化ゼロ作戦」について説明を行った。 先述のように花粉症では重症患者が多く、間接費用も含めると経済損失など多大な額に上るほか、患者個人にも就業や学業で大きな負担を強いるものとなっている。また、患者もありふれた疾患ゆえに自己流の対処を行っているケースが多く、重症であっても適切な治療がなされていないこともあり、こうしたことが社会的損失を起こす一因となっている。こうした背景から、学会として花粉症の正しい病態、治療について発信することが重要との認識に立ち、今回の取り組みが行われることになったと説明した。 花粉症重症化ゼロ作戦2024の診療の柱としては、・初期療法の重要性を周知・重症化したら併用療法や抗IgE抗体療法にスイッチ・根本治療としてアレルゲン免疫療法などを説明し、実践などが掲げられている。 今後、この取り組みのために特設サイトが開設され、「花粉症重症化とは」「重症化度チェック」「患者の声」などのコンテンツ公開が予定され、市民講座やポスター掲示、地元医師会との連携などを実施、2030年までには目標として「花粉症の重症化ゼロを目指す」と説明を終えた。

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地中海食のCVD予防、睡眠不足だと効果が低減

 地中海食は心血管疾患(CVD)の1次予防および2次予防に有効であることが報告されている。しかし、地中海食を遵守していても、睡眠時間が不足していた場合はCVDの予防効果が低減することを、ギリシャ・Harokopio大学のEvangelia Damigou氏らが明らかにした。Nutrients誌2023年12月20日号掲載の報告。 研究グループは、ギリシャの前向きコホート研究であるATTICA研究(2002~22年、3,042人)のデータを用いた。解析には、CVDの既往がなく、睡眠習慣のデータがある成人313人が含まれた。食習慣は食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて評価し、地中海食の遵守は11種類の食品群による地中海食スコア(範囲:1~55、値が高いほど遵守率が高い)を用いて評価した。睡眠習慣は、7時間未満を不十分な睡眠時間、7時間以上を十分な睡眠時間とした(昼寝は除く)。 主な結果は以下のとおり。・20年間の追跡調査中、全体の31.6%にCVDイベントが発生した。地中海食の遵守率が高い群では19.9%、遵守率が低い群では44.1%であった。・多変量調整モデルにおいて、地中海食の遵守は、睡眠時間が十分な群ではCVDリスクが有意に低減して予防効果を示した(地中海食スコアの1/55増加当たりのハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.65~0.98)。しかし、睡眠時間が不十分な群では有意ではなかった(HR:0.95、95%CI:0.82~1.09)。・地中海食の遵守率が高く、かつ十分な睡眠時間の群は、地中海食の遵守率が低く、かつ不十分な睡眠時間の群と比べて、20年間のCVDリスクが有意に70%低減した。 -遵守率低/不十分な睡眠群―基準 -遵守率低/十分な睡眠群―HR:1.31(95%CI:0.58~2.96) -遵守率高/不十分な睡眠群―HR:0.90(95%CI:0.39~2.06) -遵守率高/十分な睡眠群―HR:0.30(95%CI:0.11~0.80) これらの結果より、研究グループは「地中海食とCVDリスクとの関係において、睡眠時間が調節因子であることが判明した。心血管のより良い健康状態を獲得・維持するためには、ほかの生活習慣よりも睡眠が重要視されるべきである」とまとめた。

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早期アルツハイマー病における多剤併用と身体能力との関係

 トルコ・University of Health SciencesのAysegul Akkan Suzan氏らは、早期アルツハイマー病患者の歩行を評価するために用いられる特定の身体能力測定と、多剤併用との関連を評価する目的で本研究を実施した。Current Medical Research and Opinion誌オンライン版2023年12月11日号の報告。 3次医療センターの認知症外来クリニックで横断的研究を実施した。1日当たり5剤以上の薬物治療を多剤併用の定義とし、対象患者から中等度~重度の認知症患者は除外した。身体的パフォーマンスステータスの評価には、通常歩行速度(UGS)、Timed Up & Go(TUG)テスト、椅子立ち上がりテスト(CSST)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者134例(女性の割合:67.9%、平均年齢:80.2±7.9歳)のうち、75例(56%)が多剤併用患者であった。・多剤併用患者はそうでない患者と比較し、身体的パフォーマンスが不良であった(UGS:p=0.005、TUG:p<0.001、CSST:p<0.001)。・多剤併用患者では、次のパラメーターが有意に高かった。 BMI(p=0.026) 高血圧(p=0.013) 糖尿病(p=0.018) 虚血性心疾患(p<0.001) 心房細動(p=0.030) うつ病(p=0.012) 甲状腺機能低下症(p=0.007)・多変量解析では、多剤併用と独立して関連していた因子は次のとおりであった。 UGSの遅さ(オッズ比[OR]:1.248、95%信頼区間[CI]:1.145~1.523、p=0.007) TUGの長さ(OR:1.410、95%CI:1.146~1.736、p=0.001) CSSTの長さ(OR:1.892、95%CI:1.389~2.578、p<0.001) 著者らは、「早期アルツハイマー病患者において、多剤併用と身体的パフォーマンス低下との関連が示唆された。高齢のアルツハイマー病患者における多剤併用および薬剤サブグループと身体的パフォーマンスとの関係を調査する、長期プロスペクティブ研究の実施が望まれる」としている。

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低所得の糖尿病患者に対する野菜などの無料配布でHbA1cが有意に改善―AHA

 所得の低い2型糖尿病患者に対して農産物を無料で配送するというプログラムによって、対象者のHbA1cが有意に低下することを示した研究結果が、米国心臓協会(AHA)学術集会(AHA Scientific Sessions 2023、11月11~13日、フィラデルフィア)で報告された。米カイザーパーマネンテ南カリフォルニア病院のClaudia Nau氏らの研究によるもの。 Nau氏はこの研究の背景を、「食習慣が治療状態に影響を及ぼす疾患を有する人にとって、生鮮食品や野菜を手軽に入手できるか否かという状況の違いは、疾患管理の社会的決定要因の一つと言える。また健康的な食品と食事に関するカウンセリングの提供は、医療を補完する重要な手段となり得、そのような手法によりこの問題に対処することは、社会経済状況による健康格差の改善につながると考えられる」と語っている。なお、無料の農産物引換券や新鮮な果物・野菜の割引配送の有用性は、過去の研究からも示唆されている。Nau氏らはこの点について、無作為化比較試験を行いエビデンスの強化を試みた。 この研究は、成人2型糖尿病患者を対象に行われた。研究参加者は、米国の低所得者対象公的医療保険であるメディケイド加入者、またはカイザーパーマネンテ加入者から募集された450人で、58.3%が米国農務省の食糧不安の定義(活動的で健康的な生活を送るのに十分な食糧を継続的に入手できない状態)に該当した。平均年齢は59歳であり、女性が65%、ヒスパニック系が85%を占め、BMIは平均34.1、HbA1cは9.4%だった。また、約4分の3は血圧が高く、AHAの定義に基づく血圧上昇(収縮期血圧120~129/拡張期血圧80mmHg未満)以上の血圧カテゴリーに該当した。 全体を各群150人ずつの3群に分け、1群は世帯人員に合わせて週に90~270ドル相当の農産物を配送する高介入群、別の1群は配送する農産物の量を90~180ドル相当とする低介入群、残りの1群は非介入の対照群とした。介入を行う2群に対しては、管理栄養士または栄養士による遠隔カウンセリングを無料で提供し、22%の患者がこれを利用した。 HbA1cはベースライン(介入開始前4週間以内)と、6カ月間の介入終了時、および介入終了から60~90日後という3時点で測定された。その結果、介入を行った2群の参加者は、介入後のHbA1cが平均0.32ポイント有意に低値となっていた。高介入群と低介入群とで、HbA1c改善幅に有意差はなかった。二次解析から、対象者が農産物の無料配布を受け取っている期間はHbA1cの改善幅が大きく、介入終了後に改善幅が縮小したことが示された。また対照群との比較において、介入を行った2群は食糧を確保できている割合が約230%、栄養を確保できている割合が約370%高値であったことも分かった。 報告されたこの結果について、コロンビア大学の終身在職教授でAHAのフェローであり最高臨床科学責任者のMitchell S. V. Elkind氏は、AHA発のリリースの中で、「この研究は、人々が健康的な食品を定期的に摂取できれば、健康状態が改善されるという考え方を裏付けるものだ」との論評を述べている。同氏によると米国では現在、1300万人の子どもを含む4400万人以上が食糧不安に直面しているという。 なお、一部の発表者が、生鮮食品関連企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。また、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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経口GLP-1受容体作動薬の処方された患者さんへの服薬指導【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第44回

■外来NGワード「朝食前に飲みなさい」(正しい服用法を説明しない)「たっぷり水を飲んで服用しなさい」(間違った説明をする)■解説代表的なインクレチンであるGLP-1は、小腸下部のL細胞から分泌され、膵β細胞でのインスリン分泌を促進し、膵α細胞でのグルカゴン分泌を抑制します。同時に中枢での摂食抑制ホルモンとしても機能します。これまでGLP-1受容体作動薬はペプチドであり、経口投与しても消化酵素によって分解されてしまい吸収されませんでした。そのため、主に注射薬として使われていました。しかし、経口セマグルチドのリベルサス(商品名)は、吸収促進剤であるサルカプロザートナトリウム(SNAC)を添加することで、胃からの吸収が可能となりました。これが国内初の経口GLP-1受容体作動薬です。この薬は胃内で主に吸収され、SNACがもつ局所でのpH緩衝作用によりセマグルチドの酵素的分解が抑制され、吸収が促進されます。また、SNACによってセマグルチドのモノマー化も促進される仕組みです。薬物動態解析によれば、経口投与後のセマグルチドの絶対的なバイオアベイラビリティは、約1%と推定されています。セマグルチドの吸収を高めるためには、空腹時にコップ半分(120mL以下)の水で服用する必要があります。また、経口セマグルチドの吸収には食事が影響を与えることが確認されています。そのため、服用後は少なくとも30分間は飲食や他の薬剤の経口摂取を避ける必要があります。経口セマグルチドの適応は「2型糖尿病」で、用法用量は「1日1回3mgから始め、4週間以上投与した後、1日1回7mgに増量する」ことが推奨されています。患者の状態により適宜増減させることも可能で、1日1回7mgを維持しても効果が不十分な場合は、1日1回14mgに増量することも考慮されています。服用は14mg錠を1錠摂取し、分割・粉砕・噛むことは避けなければなりません。さらに、湿気と光の影響を受けやすいので、服用直前に錠剤をシートから取り出す必要があります。また、ミシン目以外で切れないため、偶数日数で処方する際には、その点に留意する必要があります。患者さんの朝のルーチンに合わせ、服用後の30分間を有意義に過ごす工夫を一緒に考え、指導することが求められます。■患者さんとの会話でロールプレイ患者食事や運動に気を付けているんですが、血糖値がなかなか下がりません。医師それでは、この薬を試してみましょうか。患者どんな薬なんですか?医師これは小腸から出るGLP-1というホルモンを模倣した薬で、普通は注射薬なんですが、この薬は特別な薬で…。患者特別って?医師吸収を高めるために、特許技術が採用されているんですよ。ですから服用方法を守らないと、ほとんど吸収されません。患者えっ、そうなんですか。どんな風に服用したらいいんですか?医師朝のルーチンを教えてもらえますか?患者7時頃に起きて、顔を洗って7時20分頃にパンとコーヒーの朝食を済ませて…。医師なるほど。この薬は、空腹時に服用します。食べたり、飲んだりすると薬の吸収率が下がるので、コップ半分の水(120mL以下)で飲んで、30分経ってから飲み物を飲んだり、食事をしたり、他の薬を飲んだりすることができます。患者そうすると、薬を飲んですぐにコーヒーはだめですね。医師そうですね。この薬は主に胃で吸収されるのですが、1%くらいしか吸収されないとも言われています。是非、この薬の高める朝のルーチンにして頂けますか。患者はい。わかりました(嬉しそうな顔)。■医師へのお勧めの言葉「この薬は、空腹時に服用します。食べたり飲んだりすると薬の吸収率が下がるので、コップ半分の水(120mL以下)で飲んで、30分経ってから飲み物を飲んだり、食事をしたり、他の薬を飲んだりすることができます」 1)Buckley ST, et al. Sci Transl Med. 2018;10:eaar7047.2)Bækdal TA, et al. Diabetes Ther. 2021;12:1915-1927.

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初潮発来が早いと糖尿病リスクが高い

 より低年齢の時期に月経が始まった女性は、成人後の2型糖尿病リスク、および2型糖尿病に伴う65歳以前の脳卒中リスクが高くなる可能性を示すデータが報告された。米チューレーン大学のSylvia Ley氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Nutrition Prevention & Health」に12月5日掲載された。 これまでにも初潮発来(初めての月経)の早さが肥満や2型糖尿病、心血管疾患のリスクの高さと関連のあることが報告されてきているが、それらの研究は閉経後の女性のみを対象にしているなど、解釈上の限界点があった。そこでLey氏らは、1999~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用いて、20~65歳という幅広い年齢の女性を対象として、初潮年齢と2型糖尿病や心血管疾患(CVD)のリスクとの関係を検討した。 解析対象数は1万7,377人。糖尿病やCVDのリスクに影響を及ぼし得ることを考慮して、がん既往歴のある女性は除外されている。初潮年齢は自己申告に基づき、10歳以下、11歳、12歳、13歳、14歳、15歳以上に分類した。対象全体の10.2%に当たる1,773人が、2型糖尿病であることを報告した。年齢、人種/民族、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、糖尿病家族歴、教育歴、出産歴、閉経前/後、ホルモン補充療法の施行の影響を調整後に、初潮年齢が13歳だった人を基準として2型糖尿病発症リスクを比較。すると、初潮発来が早かった女性ほど2型糖尿病発症リスクが高いという関連のあることが明らかになった(傾向性P=0.03)。 次に、糖尿病患者におけるCVDリスクと初潮年齢との関連を検討。前記と同様の手法による解析の結果、CVD全体では初潮年齢との有意な関連は認められなかった(傾向性P=0.09)。ただし、CVDを冠動脈心疾患(CHD)と脳卒中に分けて解析すると、脳卒中については初潮発来が早いほどそのリスクが高いという有意な関連が認められた(傾向性P=0.02)。特に初潮年齢が10歳以下だった2型糖尿病患者では、13歳に初潮発来のあった2型糖尿病患者に比べて、65歳以前での脳卒中発症のオッズ比(OR)が2倍を超えていた〔OR2.66(95%信頼区間1.07~6.64)〕。CHDの発症に関しては、初潮年齢との関連が見られなかった(傾向性P=0.51)。 なぜ、初潮発来が早いと2型糖尿病やそれに伴う脳卒中のリスクが高いのだろうか。研究グループでは、ジャーナル発のリリースの中で、「本研究は横断研究であって、関連のメカニズムについては特定できない」としながらも、「人生のより早い時期に月経が始まった女性は、より長期間にわたりエストロゲン(女性ホルモン)に曝露されることが関係している可能性もあるのではないか」との推測を記している。また論文中に既報研究からの考察として述べられているところによると、エストロゲンの一種のエストラジオールは、インスリン受容体の切断を誘導してインスリンシグナル伝達を阻害するという、潜在的な作用を持つ可能性があるとのことだ。

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