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高齢者の前立腺がん疑い、本当にすぐに検査すべき?【高齢者がん治療 虎の巻】第9回

講師紹介<今回のPoint>高齢者のPSA高値では、前立腺がんの早期発見という利益だけでなく、前立腺生検の負担や過剰診断の不利益も考える必要がある。PSAが軽度〜中等度に上昇している場合には、PHIなどのバイオマーカーやMRIを活用することで、前立腺生検に進むべきかをより慎重に判断できる可能性がある。高齢者では、期待余命、フレイル、併存疾患、患者の価値観を踏まえたshared decision making(SDM)が重要である。<症例>78歳、男性。検診でPSA 6.9ng/mLを指摘され、クリニックを受診。一昨年に狭心症発作に対して冠動脈ステント留置術を受けており、糖尿病、高血圧の薬に加えて抗血小板薬を内服している。PSA高値について総合病院での精査を提案すると、「症状なんて何にもない。おしっこの悩みもないのに、精密検査は絶対に受けなければならないのか?」と話され、精査については躊躇される気持ちがあった。この患者に対して、すぐに侵襲的な検査である前立腺生検を勧めるべきでしょうか。それとも、患者と相談し、慎重に経過をみることを選択肢に持つべきでしょうか。“PSA高値=すぐ前立腺生検”でよいのか?PSA検査と、それに続く前立腺生検の目的は、前立腺がんを見つけて、必要な患者を根治に導くことです。しかし、高齢男性においては、「がんを見つけること」そのものが、必ずしも患者の利益につながるとは限りません。PSAスクリーニングの有効性を示した代表的な試験として、欧州で行われたERSPC trialがあります1)。この試験では、PSAスクリーニングにより前立腺がん死亡リスクが低下することが示されました。しかし、この16年間の追跡結果では、前立腺がん死を1人減らすためには570人にスクリーニングを行い、18人の前立腺がんを診断する必要があると報告されています。この数字を見ると、PSA検査には確かに意義がある一方で、多くの方が検査や精査の対象となることがわかります。とくに高齢者では、前立腺がんを見つける利益だけでなく、検査による負担や過剰診断の不利益もあわせて考える必要があります。さらに、PSA高値の患者に対して行われる前立腺生検は、決して無害な検査ではありません。血尿は4〜66%、直腸出血は1〜37%、発熱は0.6〜17%に認められると報告されています。多くは軽微ですが、膀胱洗浄を要する血尿は0.4%、処置を要する直腸出血は0.3%、敗血症は0.1〜3.1%とされており2)、まれながら重篤な合併症も起こり得ます。高齢者では、一度の感染や入院をきっかけにADLが低下することもあります。抗血小板薬や抗凝固薬を内服している患者では、出血リスクへの配慮も必要です。したがって、高齢者のPSA高値をみたときには、前立腺生検へ進む前に、その検査によって「本当に患者にとって利益が得られるものなのか」を一度立ち止まって考えることが大切です。高齢者では「見つけること」の不利益も考える前立腺がんには、生命予後にほとんど影響しない、いわゆる“おとなしいがん”が少なくありません。剖検研究では、ラテント前立腺がんの頻度は加齢とともに上昇し、80歳以上では約6割に認められると報告されています3)。高齢者に対するPSA検査や前立腺生検は、このような臨床的に問題とならないがんまで見つけてしまう可能性があります。ここで問題になるのが過剰診断です。過剰診断そのものは患者に症状を起こさないかもしれませんが、いったん「がん」と診断されると、不安や医療機関受診の負担、さらには将来的な過剰治療へつながることがあります。前立腺がん診療では、次回(前立腺がんに対する監視療法)で述べるように過剰治療への懸念もありますが、その前段階として「調べすぎ」「見つけすぎ」も高齢者では重要な課題です。もちろん、これは「高齢者には前立腺生検をすべきではない」という意味ではありません。臨床的に重要な生命予後に関わる前立腺がん(significant cancer)が疑われる患者では、適切な検査を進める必要があります。重要なのは、すべての前立腺がんを早期に見つけることではなく、転移性がんやsignificant cancerを見逃さず、一方で不必要な生検や過剰診断を減らすことです。PSAだけで判断せず、新規バイオマーカーとMRIも活用するこのような利益と不利益のバランスを考えるうえで、PSA値だけで判断するのではなく、PHI(Prostate Health Index)などの新規バイオマーカーやMRIを組み合わせて評価するという考え方もあります。とくにPSAが軽度〜中等度に上昇している高齢者では、すぐに前立腺生検へ進むのではなく、泌尿器科専門医のもとでリスクを段階的に評価し、前立腺生検が本当に必要かを患者と相談しながら判断することが重要です。PHIは、PSA高値患者における臨床的に意義のある前立腺がん、すなわちsignificant cancerのリスク評価に役立つ指標です4)。PHIが27未満の場合、91%が非がんまたはGleason score 6以下であったと報告されています5)。一方で、PHIが36以上ではGleason score 7以上のsignificant cancerのリスクが高まるとされています6)。これらの報告を踏まえると、PSAが軽度に上昇している高齢者、とくに複数の併存疾患を有しているケースでは、PHIが低い場合には慎重なPSAフォローを選択し、PHIが高い場合にはMRIなどの追加評価を検討するという段階的な考え方が成り立ちます。この段階的な評価において、MRIは前立腺生検へ進むべきかを判断するうえで重要な役割を担います。PI-RADSに基づくMRI評価は、significant cancerの検出を高める一方で、生命予後に大きく影響しにくい前立腺がんの過剰診断を減らすことにも役立ちます7)。PROMIS trialでは、significant cancerの検出において、mpMRIの感度は93%、特異度は41%、陰性的中率は89%と報告しています8)。また、MRIを先行することで約27%の患者が前立腺生検を回避でき、生命予後に大きく影響しにくい前立腺がんの診断を減らしながら、significant cancerの検出精度を高められる可能性が示されました。したがって、PSAが軽度〜中等度に上昇している高齢者では、「PSA高値だからすぐ生検」ではなく、PHIなどの新規バイオマーカーでリスクを見積もり、必要に応じてMRIを行い、その結果を踏まえて前立腺生検を検討するという段階的なアプローチも選択肢の1つとなり得ます。高齢者のPSA高値で考えるポイントさらに、高齢者のPSA高値を見たとき、最初に考えるべきことは「前立腺がんがあるか」だけではありません。期待余命はどのくらいかフレイルや認知機能低下はないか併存疾患や内服薬はどうか仮に前立腺がんが見つかった場合、生検やその後の治療に耐えられるか患者本人はどこまで検査や治療を望んでいるかこれらを踏まえたうえで、PHIやMRIを活用し、前立腺生検へ進むべきかを患者と相談しながら判断することが大切です。PSA値に応じて考える、高齢者への段階的アプローチ高齢者にPSA検査を行った後の対応としては、次のような段階的アプローチもあります。<PSA 4ng/mL未満の場合>日本泌尿器科学会の検診ガイドラインの考え方を参考に、PSA値に応じて1〜3年ごとの再検を検討します。ただし、再検を勧める際にも、その時点での期待余命やフレイルを再評価することが大切です。(図1)PSA<4ng/mLのフォローアップ戦略画像を拡大する<PSA 4〜10ng/mL、軽度PSA高値の場合>PHIでリスク層別化を行い、PHI高値であればMRIを検討します。MRIでPI-RADS3以上の病変があれば前立腺生検を考慮し、PI-RADS2以下で臨床的な疑いが低い場合にはPSAフォローを継続する、という流れも一つの選択肢になります。(図2)PSA 4〜10ng/mLに対するフォローアップ戦略画像を拡大する<PSA 10〜20ng/mL、中等度PSA高値の場合>MRIをより積極的に検討し、MRI所見やPSAの推移、患者の全身状態を踏まえて前立腺生検の要否を判断します。(図3)PSA10〜20ng/mLに対するフォローアップ戦略画像を拡大するもちろん、これらはあくまで一つの考え方であり、すべての患者に機械的に当てはめるものではありません。大切なのは、前立腺生検を避けること自体が目的なのではなく、本当に生検が必要な患者を見極めることです。終わりに高齢者の前立腺がん疑いでは、PSA高値をみたときにすぐ前立腺生検へ進むのではなく、期待余命、フレイル、併存疾患、患者の価値観を踏まえて、検査の利益と不利益を慎重に考える必要があります。PHIなどの新規バイオマーカーやMRIを活用し、significant cancerを見逃さず、不必要な前立腺生検や過剰診断を減らすことが重要です。高齢者のPSA高値では、患者と相談しながら、一人ひとりに合った検査戦略を考えることが大切です。 1) Hugosson J, et al. Eur Urol. 2019;76:43-51. 2) 日本泌尿器科学会編. 前立腺がん検診ガイドライン2018年版. 2018. p.111-116. 3) Bell KJL, et al. Int J Cancer. 2015;137:1749-1757. 4) Catalona WJ, et al. J Urol 2011;185:1650-1655. 5) Tosoian JJ, et al. Prostate Cancer Prostatic Dis. 2017;20:228-233. 6) White J, Shenoy BV, et al. Prostate Cancer Prostatic Dis. 2018;21:78-84. 7) 高橋 哲. 臨床泌尿器科. 2022;76:770-777. 8) Ahmed HU, et al. Lancet. 2017;389:815-822.

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バージンオリーブオイルが脳に良い可能性とその理由

 バージンオリーブオイル(VOO)は、腸や脳に良い影響を及ぼす可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。一方、一般的により安価で販売されている精製オリーブオイルには、そのような効果が認められないという。ルビーラ・イ・ビルジーリ大学(スペイン)のJiaqi Ni氏らの研究によるもので、詳細は「Microbiome」に1月24日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「全てのオリーブオイルが認知機能に良い影響を与えるわけではない」と述べている。 Ni氏らは、55~75歳で過体重・肥満およびメタボリックシンドロームを有する656人(平均年齢65.0±4.9歳、女性47.9%)の食生活を調査して2年間追跡。ベースライン時と追跡調査時に神経心理学的検査を行い、ベースライン時の食事調査や便検体を用いた腸内細菌叢の検査結果との関連を検討した。食事調査の項目には、オリーブオイルのタイプ別摂取量も含まれていた。 解析の結果、VOOを習慣的に摂取していた人は、追跡期間中に認知機能の維持との関連や、腸内細菌叢の多様性の高さが認められたが、精製オリーブオイルを摂取していた人ではそのような変化は認められなかった。なお、腸内細菌叢の多様性の高さは、腸の健康状態および代謝が良好であることを示唆している。 研究チームでは、VOO摂取によるそれらの変化に、Adlercreutzia属という特定の腸内細菌が関係している可能性を見いだした。Adlercreutziaは、VOO摂取と認知機能の変化との関連を媒介している可能性が示唆された。つまりVOOの脳への有益な影響の一部は、腸内細菌叢を変化させることによるものであると考えられた。 では、なぜVOOは精製オリーブオイルよりも、好ましい影響を及ぼすのだろうか? それは両者の製造方法の違いにあると言える。VOOは、有益な成分を保持できるような機械的手法で製造される。一方、精製オリーブオイルは、不純物を取り除く、保存期間を延ばす、安定した風味を出すといった意図で加工が加えられる。それらの処理によって、オリーブオイルに含まれている、抗酸化物質、ポリフェノール、ビタミンなどの体に良い成分が減ってしまう。 論文の上席著者である同大学のJordi Salas-Salvadó氏は、「今回の研究は、摂取する脂質の『質』が『量』と同じくらい重要であるという考え方を裏付けるものだ。VOOは心臓を保護するだけでなく、加齢に伴う脳機能の低下を防ぐのにも役立つ」と総括。また、「これらの効果をもたらす腸内細菌を特定することが、認知機能を維持するための新たな栄養戦略を確立することにつながる可能性がある」と付け加えている。

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つなぐべきか、つながざるべきか、それが問題だ(解説:山地杏平氏)

 弁膜症の外科手術を行う際には、左主幹部病変であれば50%以上、その他の主要冠動脈であれば70%以上の狭窄を合併している場合、冠動脈バイパス術(CABG)を同時に施行することが推奨されます。また、中等度大動脈弁狭窄症など、本来であれば単独では手術適応とならない弁膜症であっても、CABGが必要な症例では同時手術が検討されることもあります。 開胸するのであれば、冠血行再建も同時に行うという考え方はリーズナブルだと思います。とくに内胸動脈グラフトや、近年良好な成績が報告されている静脈グラフトを用いることで、将来的な冠動脈イベントの抑制が期待されます。 一方で、せっかく作成したグラフトも長期的には閉塞することがあります。グラフトを冠動脈遠位部へ吻合すると、ネイティブ冠動脈近位部の病変が進行し、完全閉塞へ至ることも少なくありません。そのような状況でグラフトが閉塞すると、慢性完全閉塞病変に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が必要になったり、場合によってはグラフトそのものへの治療が必要になったりすることもあります。そのため、「どの病変にグラフトをつなぐべきか」という問題は、長期予後を考えるうえできわめて重要です。 このような背景の下、弁膜症手術時に冠動脈病変を認めた場合、冠動脈造影による解剖学的狭窄度に基づいてバイパスを行うべきか、それともangiography-derived fractional flow reserve(FFR)による生理学的評価に基づいてバイパスを行うべきかを検討したFAVOR IV-QVAS試験が、2026年にLancet誌に報告されました。 本試験では、angiography-derived FFRを用いた群において、作成されるグラフト数が減少し、人工心肺時間および大動脈遮断時間が短縮されました。さらに、30日以内の死亡、心筋梗塞、脳卒中、予定外血行再建、透析導入を含む主要複合エンドポイントは、FFR群で7.8%、冠動脈造影群で13.4%と有意に低下しました。 この結果はどちらかというと当たり前かとは感じます。CABGは周術期リスクを伴う一方で、遠隔期の冠動脈イベントを抑制することを目的とした治療です。そのため、短期成績のみを評価した場合には、介入を減らした群のほうが有利な結果を示す可能性があります。本試験の意義を正しく評価するためには、グラフト開存率や5年以上の遠隔期成績に関する今後の解析を待つ必要があります。 PCI領域ではFFRをはじめとする生理学的評価が広く普及しており、FAME試験やFAME 2試験をはじめとする多くの研究によって、解剖学的評価のみに基づく治療戦略よりも優れた臨床成績が示されてきました。現在の日本の保険診療においても、PCI施行前には何らかの虚血評価を行うことが求められています。しかし、重症三枝病変に対してCABGを行う際、「どの冠動脈にグラフトを吻合するべきか」という問題については、依然として議論の余地があります。たとえ病変がFFR陽性であっても、ネイティブ冠動脈の血流が比較的保たれている場合には、グラフト閉塞のリスクが高くなる可能性があります。実際、経験豊富な心臓外科医の中には、「FFR陽性であっても、この程度の狭窄であればグラフトは長期的に開存しにくい」と判断する場合があります。 PCIにおいては「その病変を治療すべきか」が主な論点であるのに対し、CABGでは「その病変にグラフトをつないだ際に長期的に機能するか」という別の視点が加わります。そのため、PCIの適応判断に有用であるFFRを、そのままCABGの吻合部位選択に応用できるかどうかについては、まだわかっていないように思います。FFRは虚血の有無を評価する指標としてきわめて優れていますが、グラフトの長期開存性を規定するのは、むしろ実際の血流需要かもしれません。その意味では、将来的にはFFRだけでなく、冠血流予備能(CFR)や冠血流量そのもの、さらには術中のエコーでのグラフト血流評価など、より「流量」に着目した指標の重要性が明らかになる可能性があるかもしれません。 FAVOR IV-QVAS試験の、長期予後やグラフト開存率に関する追加データ次第では、冠動脈バイパス術においても「狭窄があるからバイパスする」のではなく、「実際に虚血や血流障害を生じている血管のみを治療する」ということになるかもしれません。

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開発中の塩基編集治療薬、単回投与でPCSK9およびLDL-Cを低下/NEJM

 LDLコレステロール(LDL-C)を管理する現行の治療モデルの限界を打ち破るために開発中のVERVE-102の第I相試験の結果が、米国・Verve Therapeutics(Eli Lillyの完全子会社)のScott B. Vafai氏らによって報告された。単回投与により、PCSK9およびLDL-C値が用量依存的に持続的かつ顕著に低下したことが示されたという。PCSK9機能喪失型変異を有する人は有さない人よりも、LDL-C値が低く、アテローム動脈硬化性心血管疾患を呈する人が少ないことが知られている。VERVE-102は、肝臓でのPCSK9産生を永続的に抑制するようデザインされた、体内で塩基編集を行う治療薬であり、アデニン塩基編集タンパク質をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)と、PCSK9を標的とするガイドRNA(gRNA)から構成され、これらがN-アセチルガラクトサミンを含む脂質ナノ粒子(LNP)に封入されている。NEJM誌オンライン版2026年5月25日号掲載の報告。35例に6用量のいずれかを投与した第I相試験 第I相試験は非盲検の単回投与漸増デザインにて行われた。  研究グループは、ヘテロ接合型家族性高コレステロール血症または早発性冠動脈疾患(PCAD)を有する成人患者に、6用量のVERVE-102(総RNA量の範囲:0.3~1.0mg/kg)のうち、いずれか1用量を静脈内投与した。  本試験の目的は、安全性の評価と血中PCSK9値およびLDL-C値の変化を評価することであった。  35例がVERVE-102の静脈内投与を受けた。内訳は、0.3mg/kgが4例、0.45mg/kgが6例、0.6mg/kgが4例、0.7mg/kgが8例、0.8mg/kgが6例、1.0mg/kgが7例であった。  本報告では、中間解析の結果が報告された。15例で少なくとも1年間、血中のPCSK9値、LDL-C値の低下を確認 平均年齢は52歳(範囲:27~66)、男性が24例(69%)、29例(83%)がヘテロ接合型家族性高コレステロール血症を有し、うち9例がPCADも有していた。PCADのみは6例(17%)。アジア人は6例(17%)で、黒人1例(3%)、白人30例(86%)(参加者自身による複数の人種の申告が可能)であった。ベースラインの平均LDL-C値は129mg/dL。32例(91%)がベースラインでスタチン治療を受けており、うち25例(71%)は強化スタチン療法を受けていた。 全被験者の追跡評価期間中央値は約9ヵ月で、2026年2月27日のデータカットオフ時点で、少なくとも28日間の追跡評価を受けていた(最終試験来院は投与後28日~18ヵ月)。 用量制限毒性は認められなかった。軽度~中等度の注入に伴う反応が7例(すべてGrade1または2で7例)、ALT値の一時的な上昇(正常範囲上限の2倍以上となるも8日目までに2倍未満に低下)が3例(0.7mg/kg群1例、1.0mg/kg群2例)に観察された。また、胃食道逆流症の被験者1例で誤嚥性肺炎が発生した。 血中PCSK9値の用量依存的な低下がみられ、平均低下率は、0.3mg/kg投与群で51%、1.0mg/kg投与群で88%であった。LDL-C値の平均低下率は、0.3mg/kg投与群の9%から1.0mg/kg投与群の62%にわたり、1.0mg/kg群では絶対値で78mg/dLの低下が認められた。  これらの低下は、被験者15例で少なくとも1年間にわたって持続的に認められた。

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ACC/AHA脂質異常症GLで格上げの石灰化スコア、30分の心臓ドックで評価/CVIC

 心臓画像診断を専門とする医療法人社団CVIC心臓画像クリニック飯田橋(以下、CVIC)は、30分で心血管リスクを可視化する新サービス「スピーディー心臓ドック」の提供を開始した。これは冠動脈石灰化スコア、大動脈石灰化スコア、心血管バイオマーカー検査を組み合わせたもので、非造影CTおよび血液検査によって行われる。この中に含まれる冠動脈石灰化スコアは、近年その重要性が明らかになっており、米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)の合同委員会が関連学会とともに2026年3月に公開した『脂質異常症管理ガイドライン2026年版』1)において、推奨度が引き上げられた。そこで、CVICは2026年5月27日にメディアラウンドテーブルを開催し、CVIC理事長の寺島 正浩氏が、突然死を防げない日本の健診制度の課題、心血管病予防における画像診断の役割について解説した。最初の発作が最後の発作、突然死の半数以上は症状なし 寺島氏がまず指摘したのは、一般的な健康診断だけでは冠動脈疾患のリスクを十分に把握しにくく、心臓突然死を防ぐことが難しいという問題である。日本の健診で広く行われている心電図や胸部X線は、低コストで簡便なスクリーニング検査として有用である一方、冠動脈の狭窄や動脈硬化の進展を直接評価する検査ではない。 米国のフラミンガム研究では、突然死の50%以上はまったく症状がなかったことが報告されている。また、急性心筋梗塞の68%は50%未満の軽度冠動脈狭窄から生じていたという報告もある。寺島氏は、この突然性が心臓病の問題であると述べる。 一方で、心筋梗塞の多くは予防可能でもある。INTERHEART研究に基づき、喫煙、脂質異常、高血圧、糖尿病、内臓脂肪、ストレス、食事、運動、飲酒といった9つの修正可能な危険因子により、心筋梗塞リスクの9割が説明されることを紹介した。寺島氏は、9割予防可能な病気で死亡する人が後を絶たないことを指摘。その背景には「自分は大丈夫と考え、行動変容に至らない人が多いことがある」と述べた。数字は忘れても自分の画像は忘れない そこで重要になるのが、リスクの「可視化」である。寺島氏は、血圧、LDL-C、血糖値といった数値は忘れてしまうが、冠動脈や大動脈に石灰化がある画像を見れば、その画像は忘れないと指摘する。実際に、画像を提示することで、真剣に治療に取り組むようになった症例を多く経験してきたとのことだ。また、2018年のVIPVIZA試験では頸動脈エコーの結果を視覚的なレポートとして提示することで、治療効果が増大することも報告されている。クラス1推奨に引き上げられた冠動脈石灰化スコア ACC/AHAの『脂質異常症管理ガイドライン2026年版』では、動脈硬化性疾患のリスク評価方法が変更され、PREVENT-ASCVD方程式が採用された。また、PREVENT-ASCVD方程式で中等度リスク、ボーダーラインリスクと判定され、脂質低下療法の開始・強度について判断が難しい場合に、冠動脈石灰化スコアを用いてリスクを再分類することがクラス1推奨として位置付けられた。 冠動脈石灰化スコアは、非造影CTで冠動脈壁の石灰化を定量化する指標である。冠動脈石灰化スコアによる石灰化の分類は、0をなし、1~99を軽度、100~299を中等度、300~999を高度、1000~を超高度とする。このスコアが、冠動脈疾患死亡率や心血管病死亡率と強く関連する。 さらにCVICでは、冠動脈だけでなく大動脈の石灰化にも注目する。大動脈石灰化は冠動脈石灰化よりも先に出現する早期の動脈硬化マーカーとされ、冠動脈石灰化スコアが0であっても60%で大動脈石灰化が認められるとのことだ。30分で完了する「スピーディー心臓ドック」 今回発表された「スピーディー心臓ドック」は、こうした心血管リスク評価を短時間で実施するサービスである。所要時間は来院から検査終了まで約30分。検査方法は非造影CTによる冠動脈・大動脈評価と採血で、検査内容は冠動脈石灰化スコア、大動脈石灰化スコア、心血管バイオマーカー検査で構成される。心血管バイオマーカーは、NT-proBNP、高感度心筋トロポニン、apoB、高感度CRPの4項目である。 寺島氏は、通常の健診では測定されないこれらの項目を組み合わせることで、より詳細な心血管リスクを把握できると説明した。CVICでは、以下をすべて満たす場合を「パーフェクトスコア」とし、心血管リスクがきわめて低い状態として示している。冠動脈石灰化スコア0大動脈石灰化スコア0NT-proBNP<55pg/mLapoB<65mg/dL(または70mg/dL)心筋トロポニンT<0.003ng/mL高感度CRP<0.02mg/dL 講演では、実際の症例も紹介された。そのなかで紹介された60歳女性は、LDL-C、HDL-C、TG、総コレステロールは、健康診断の正常値の範囲に収まっていたという。冠動脈石灰化スコアも0であったが、大動脈石灰化スコアをみると約700であり、中等度の石灰化が認められた。また、apoBも106mg/dLと軽度高値であった。寺島氏は「大動脈石灰化スコアをとることで、このような方が見つかることがある。可視化することで、行動変容につながっていくのではないかと期待している」と語った。Q&A――石灰化スコアは不可逆とのことであるがどれくらいの頻度で実施すべきか? 1回測定したらその後は不要とする意見があるなど、議論が分かれているが、一般的には5年ほどの間隔を空けて測定するのがよいのではないかとされている。しかし、CVICとしては、冠動脈石灰化スコアが100以上、ないしは300以上の方は、2~3年に1回は検査を実施したほうがよいと考えている。このような方のなかで、生活習慣を気にしない方は次回の測定でスコアが2倍になっている場合もある。一方で、生活習慣が改善されてスコアの変動がみられないという方もいる。このような経過を追うために、石灰化スコアを活用するのもよいのではないか。 石灰化は不可逆であるからこそ、早めの対策が重要である。9つの修正可能な危険因子を修正することで、動脈硬化の進行を遅らせることができる。 なお、「スピーディー心臓ドック」は自費検査で、CVICは通常価格を8万8,000円としているが、2026年10月末日まで3万3,000円で提供する予定とのことだ。

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「肥満症治療薬中止後のリバウンド」が気になる患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第49回

■外来NGワード「元に戻らないように、気を付けなさい」(あいまいな医学的アドバイス)「リバウンドするかしないかは、あなたの生活習慣の問題です」(患者責任に帰結させ、自己スティグマを強める)「ちゃんと続けないと意味がありませんよ」(努力不足のニュアンスとなり、動機付けを低下させる)■解説肥満症治療薬の1つであるインクレチン関連注射薬は、投与期間が最大68週間とされており、治療開始時から中止を見据えた計画が必要です。そのため、投与中止後のリバウンドを懸念する患者さんは少なくありません。実際、システマティックレビューおよびメタ解析によると、薬物療法中止後には体重が再増加(リバウンド)することが示されています。その程度は、認知行動療法を用いた体重管理プログラムと比較して、薬物療法中止後の体重の再増加(リバウンド)はより速いとされています。その報告によると、平均すると体重は月0.4kg程度増加し、改善していた代謝指標も約1.4年でベースラインに近付きます。こうした体重の再増加(リバウンド)は、生活習慣介入、手術、薬物療法といった減量手段に関わらず生じる現象です。その背景には、体脂肪から分泌されるレプチンによる「脂肪定常説」や除脂肪量の減少によるエネルギー消費量の減少などが関与すると考えられています。したがって、肥満症治療薬中止後のリバウンドを予防には、減量中からリバウンド対策をしておくことが大切です。具体的には、体重測定の習慣化、無理のない運動の継続、満足感を得られる食事とつい食べてしまう習慣対策、そして、リバウンドが始まる休薬後の対策が鍵となります。■患者さんとの会話でロールプレイ医師減量の方は順調なようですね。患者はい。ありがとうございます。けど、この薬、止めたらリバウンドしませんかね。それが今から心配で…。医師なるほど。そうでしたか。その点を気にされる方はとても多いですし、この薬を止めた後、体重が少しずつ戻ることはよく知られています。患者やっぱり…。(残念そうな顔)医師大丈夫です。今から、そのリバウンド対策をしておくといいですよ。患者それはどんな対策ですか。(興味津々)医師どんなダイエット法でも、リバウンドする人には特徴が3つあります。患者その3つって、何ですか?医師まずは、体重計に乗らなくなります。順調に体重が減っているときは体重計に喜んで乗るんですが、少し体重が増えてくると、だんだん乗りたくなりますね。患者確かに…。体重が減っているときは面白くて、1日に何回も体重計に乗りますが、停滞していると乗らなくなりますね。まずは、体重計に乗る習慣を続けるということですね。2つ目は?(メモメモ)医師2つ目は、運動をしなくなることです。逆に、運動習慣がある人はリバウンドしにくいことがよく知られています。患者なるほど。運動を継続するということですね。3つ目は?医師極端な食事療法を行わないことです。極端な食事療法では、食事に満足できず、何かをつまんでしまいます。患者なるほど。減量中に、少しの量で満足できる食事をみつけないといけませんね。医師そうですね。他にも注意点があるのですが、次回、お話しましょう!患者ぜひ、お願いします。(嬉しそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「薬の服用を止めた後にリバウンドしないためのコツは、毎日体重計に乗る、運動を習慣化する、少しの量で満足できる食事を探すことです」 1) West S, et al. BMJ. 2026 Jan 7;392:e085304. 2) Berg S, et al. Obes Rev. 2025 Aug;26(8):e13929. 3) Budini B, et al. EClinicalMedicine. 2026 Mar 4;93:103796. 4) van Baak MA, et al. Curr Obes Rep. 2025 Mar 31;14:28.

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クロノタイプに合わせた運動で効果がより高まる可能性

 運動が健康に良いことは広く知られている。しかし、自分のクロノタイプ(朝型か夜型か)を意識して運動する時間帯を決めると、その効果がさらに高まる可能性を示唆するデータが報告された。血圧や血糖値、LDL(悪玉)コレステロールなど、心臓病のリスク因子がより良好になるという。ラホール大学(パキスタン)のArsalan Tariq氏らの研究の結果であり、詳細は「Open Heart」に4月14日掲載された。研究者らによると、クロノタイプに合わせて運動をすることで睡眠の質の向上も認められ、それも心臓病のリスク因子の改善に寄与している可能性があるとのことだ。 この研究には、心臓病のリスク因子を一つ以上持っている40~60歳の成人150人が参加した。参加者はまずクロノタイプを把握した後に、自分のクロノタイプと一致する時間帯、もしくは一致しない時間帯に運動を行う2群にランダムに割り付けられた。運動の時間帯は、午前8時~11時の間、または午後6時~9時の間のいずれかだった。参加者全員が研究者の監督下で1回40分の中強度の有酸素運動(速歩など)を週5回、12週間にわたり実施した。 計60回の運動を完遂した134人の主な特徴は、平均年齢48.6±8.1歳、男性58.2%、BMI28.7±3.4だった。解析の結果、運動の時間帯がクロノタイプに一致していたか否かにかかわらず全体的に、心臓病のリスク因子、有酸素運動能力、睡眠の質が改善していた。しかし、クロノタイプに一致した時間帯に運動をした群は、血圧、心拍数、血糖値、コレステロール、有酸素運動能力、睡眠の質が、より大きく改善していた。 例えば、クロノタイプに一致しない時間帯に運動をした群の収縮期血圧の低下幅は5.5mmHgだったのに対して、クロノタイプに一致した時間帯に運動をした群は10.8mmHg低下していた(P=0.002)。高血圧患者に限って解析すると、7.1対13.6mmHgという差が認められた(P<0.001)。これらの結果に基づきTariq氏は、「個人の生体リズムに合わせて調整された時間帯に行う運動は、臨床や公衆衛生における実用的な介入戦略となり、より高い効果や継続意欲の向上につながる可能性がある」と結論付けている。 Tariq氏らの報告について、米レノックス・ヒル病院のスポーツ心臓専門医であるChristopher Tanayan氏は、「運動する時間帯をクロノタイプに合わせることで血糖コントロールが改善されることを示した先行研究と一致する結果である」と論評。同氏によると、これらの研究結果は、運動のタイミングがクロノタイプと一致することで、身体がより効率的に働くことを反映している可能性が高いという。「クロノタイプを考慮に入れることで、ホルモン分泌が盛んな時間に運動を行え、その結果、より高い負荷をかけることが可能になって運動によるメリットも大きくなるのではないか」と同氏は解説している。

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第297回 改正健康保険法が成立、出産無償化とOTC類似薬負担増を導入/国会

<先週の動き> 1.改正健康保険法が成立、出産無償化とOTC類似薬負担増を導入/国会 2.診療報酬改定目前、キャンセル料を巡る混乱で厚労相が陳謝/厚労省 3.AIの悪用リスク踏まえ病院のサイバー対策強化を/厚労省 4.直近100日の薬剤情報を表示、ワクチン接種歴も/デジタル庁 5.糖尿病薬の個人間取引に警告 X投稿の7割超がマンジャロ/東京都 6.東京女子医大2歳児死亡事故、ICU責任医に有罪判決/東京地裁 1.改正健康保険法が成立、出産無償化とOTC類似薬負担増を導入/国会改正健康保険法など医療保険制度改革の関連法は5月29日の参議院本会議で、与党自民党や日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決、成立した。柱は、正常分娩の実質無償化と、市販薬と成分や効能が似る「OTC類似薬」を処方された患者への追加負担の導入である。政府は給付と負担を見直し、現役世代の社会保険料負担を軽減すると説明しているが、患者団体や野党からは受診控えや家計圧迫への懸念がされている。出産費用については、現在は正常分娩が公的医療保険の対象外で、出産育児一時金50万円の支給で対応している。しかし、都市部を中心に費用が一時金を上回るケースが目立つため、厚生労働省が全国一律の基本単価を設定し、公的保険から医療機関へ全額給付する仕組みに改める。改正法の公布後2年以内、遅くとも2028年夏ごろまでの施行を目指す。すべての妊婦を対象に定額の現金給付も設ける。帝王切開は、従来通り保険診療で原則3割負担となり、正常分娩でも個室料などは自己負担となる。当面は医療機関の判断で出産育児一時金を継続できる経過措置も置き、産科経営や地域の周産期医療体制への影響に配慮する。OTC類似薬では、保湿薬、抗アレルギー薬、解熱鎮痛薬、胃腸薬など77成分、約1,100品目を対象とする案が示されている。薬剤費の4分の1を公的保険の給付対象から外し、患者の1~3割負担に上乗せする。2027年3月の開始を目指す。政府は市販薬を購入する人との公平性や、必要性の低い受診の抑制を狙う。その一方で、がんや難病の患者、子供、低所得者、医師が通年処方を必要と判断する患者などには追加負担を求めない方針であり、具体的な範囲は今後、専門家の意見を踏まえて定めるとしている。改正法には、75歳以上の後期高齢者の保険料や窓口負担の算定に、上場株式の配当など金融所得を反映させる仕組みの強化も盛り込まれた。さらに高額療養費制度について、将来の見直し時に、長期療養者の家計への影響を考慮することも明記した。参院厚生労働委員会は、OTC類似薬の対象を薬剤以外の診療行為に広げないよう検討することや、必要な受診が抑制されないよう影響を検証し、必要に応じて見直すことなど19項目の付帯決議を採択した。立憲民主党、公明党、共産党、れいわ新選組などは反対し、国民皆保険の維持と患者負担増の線引きが今後の焦点となる。 参考 1) 健康保険法等の一部を改正する法律案について(厚労省) 2) 「OTC類似薬」処方された患者に追加負担求める法律が成立(NHK) 3) 改正健康保険法が成立…OTC類似薬の患者追加負担、出産費用の実質無償化など柱(読売新聞) 4) 出産費用を無償に、改正法成立 厚労省が全国一律価格を設定へ(日経新聞) 5) 健保法等改正案 参院厚労委で賛成多数で可決 29日の参院本会議での採決を経て成立へ(ミクスオンライン) 2.診療報酬改定目前、キャンセル料を巡る混乱で厚労相が陳謝/厚労省厚生労働省は6月1日に診療報酬を改定する。物価高と賃上げへの対応が柱で、外来の初診料本体は2,910円に据え置く一方で、物価上昇分20円と職員の基本給引き上げに充てるベースアップ評価料170円が上乗せされ、初診時の患者負担は少なくとも190円引き上げられる。また、2026年3月以前からベースアップ評価料を算定していた医療機関でも、現行60円から230円へ引き上げられ、これらの上乗せは1年後にさらに拡大する予定となっている。薬局でも調剤基本料が立地や規模に応じて10~20円引き上げられ、3ヵ月に1回、物価上昇対応分として10円が加算できる。薬局版のベースアップ評価料も新設され、処方箋1回につき40円が上乗せされる。また、後発医薬品がある先発品を患者が希望する場合に、保険の窓口負担とは別に支払う選定療養費は、先発品と後発品の価格差の4分の1から2分の1へ引き上げられる。その一方で、注目された診察予約のキャンセル料について、厚労省は5月29日、「対象は『予約料』を設定し、選定療養として地方厚生局に届け出ている医療機関に限られる」と通知を訂正した。予約を受け付けていても予約料を徴収していない通常診療では、キャンセル料は取れない。対象は2024年8月時点で全国928施設にとどまる。徴収できるのは、患者都合による診察直前のキャンセルに限られ、窓口やウェブサイトなどで事前に説明し、患者の同意を得る必要がある。3月の通知では対象が選定療養に限られることが明確でなく、すべての医療機関でキャンセル料を取れるとの誤解が広がった。上野 賢一郎厚労相は「現場に混乱を生じさせた」と陳謝した。医療機関には、価格改定や人件費対応の一方で、患者説明と同意、掲示、届出の適正な運用が求められる。 参考 1) 診察予約キャンセル料 一定条件で請求可能に 厚労省が周知へ(NHK) 2) 診察キャンセル料めぐり厚労相謝罪 6月から一部医療機関で徴収可へ(朝日新聞) 3) 診察キャンセル料は一部病院のみ 厚労省が通知訂正、周知不足陳謝(共同通信) 4) 診療報酬、来月1日に改定 キャンセル料徴収可に 初診190円上げ(日経新聞) 3.AIの悪用リスク踏まえ病院のサイバー対策強化を/厚労省厚生労働省は5月27日、都道府県を通じ、医療機関に高性能AIの悪用リスクを踏まえたサイバーセキュリティ対策の再確認を求める事務連絡を発出した。AI技術の急速な進展により、脆弱性探索や攻撃手法の自動化が進み、攻撃のスピードや規模が拡大する恐れがあるための措置。医療分野は国民の生命・健康を支える重要インフラであり、電子カルテや医療機器、院内ネットワークが停止すれば診療継続に重大な支障が生じるとして、厚労省は経営層のリーダーシップによる対策強化を求めている。通知では、米Anthropic社が4月に公表した「Claude Mythos Preview」など、脆弱性の発見・修正能力を高めたフロンティアAIモデルの登場を例示。内閣官房国家サイバー統括室などが5月18日に発出した重要インフラ向け注意喚起を踏まえ、医療情報システムの安全管理ガイドラインを要約し、医療機関が優先的に確認すべき事項を整理した。重点項目では、サイバーセキュリティを経営課題に位置付け、責任者や意思決定体制、連絡系統を明確にすることを求めている。さらに、電子カルテ、医療機器、院内ネットワークなど重要システムの把握とリスク評価、ネットワーク分離やアクセス制御、外部委託・クラウド利用時の責任分担の明確化を要請するほか、機器の棚卸し、セキュリティパッチの迅速な適用、サポート終了機器の見直しも明記した。ランサムウェア対策では、オフラインを含むバックアップの取得・保管と復旧訓練、不審メール対応、感染兆候の早期検知体制を挙げた。インシデント発生時には、初動対応、影響範囲の確認、厚労省やベンダーとの連携、原因分析と再発防止策が必要とした。全職員への定期的な教育、標的型攻撃訓練、医療機器メーカーとの情報共有、調達段階からのセキュリティ要件確認も求めている。厚労省は、サイバー攻撃を想定したBCP(事業継続計画)の策定・見直しや、システム停止時の紙運用など代替手段の確保も促し、チェックリストを用いた点検を呼びかけている。 参考 1) 「高性能AIの悪用リスクを踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化について(医療機関等向け注意喚起)」(厚労省) 2) 最新AI攻撃の対策確認を要請 医療機関に厚労省(毎日新聞) 3) 医療機関は最新AI対策の確認を サイバー攻撃悪用で厚労省(東京新聞) 4.直近100日の薬剤情報を表示、ワクチン接種歴も/デジタル庁デジタル庁は、マイナポータルの「薬」のページをリニューアルし、直近100日以内に受け取った薬の情報を確認できるようにした。従来は診療報酬明細書、いわゆるレセプト情報を基にしていたため、反映は前月分までに限られ、実臨床で使うにはタイムラグが大きかった。今回の改善により、電子処方箋に対応する薬局や医療機関で薬を受け取った場合、原則として当日中に情報が表示される。画面には「最近の薬」「最近の処方箋」が新設され、受け取った日付、薬局名、薬剤名、用法・用量が確認できる。政府によると、現在は薬局の89%が電子処方箋に対応している。その一方で、厚生労働省は6月から、ワクチン接種歴や副反応疑い事例を集約する新たな予防接種データベースの運用を始める。対象は公費助成を受けられる定期接種ワクチンで、接種したワクチンの種類や接種日などを市区町村から収集し、2028年春までに全国民の情報を集める計画である。国民はマイナポータルなどを通じて、自身の接種歴を確認できるようになる。6月以降の情報が中心で、5月以前の接種分の提供は任意となる。新データベースは、接種情報に加えて死亡情報、副反応疑い事例、レセプト情報とも連結される予定であり、2028年度から研究者らがワクチンの有効性や安全性、副反応疑い事例の発生頻度を活用し、分析しやすくする。今後、麻しん、風しんなどの流行時には、本人が接種歴を確認し、未接種であれば接種行動につながることも期待されている。医療者にとっては、問診時の服薬歴・接種歴確認の精度向上が見込まれる。救急外来、入院時、周術期、ポリファーマシー対策、ワクチン接種相談などで活用の余地は大きい。ただし、情報の反映範囲や過去接種歴の欠落、患者本人の閲覧・提示への依存といった限界もある。マイナポータル情報を補助線として使いつつ、従来の問診、お薬手帳、紹介状、薬剤師との連携を組み合わせる運用が求められる。 参考 1) 薬の画面で最近の薬や処方せんの情報を確認できるようになりました(デジタル庁) 2) 100日以内に受け取った薬の情報確認 マイナポータル改善、電子処方箋対応なら当日表示(産経新聞) 3) ワクチン接種歴、マイナポータルなどで確認可能に…新DB6月に運用開始・「効果」「副反応」分析にも活用へ(読売新聞) 5.糖尿病薬の個人間取引に警告 X投稿の7割超がマンジャロ/東京都東京都が2025年度、X(旧ツイッター)上で医薬品の不正販売が疑われる投稿に警告した497件のうち、約75%に当たる375件が、2型糖尿病治療薬チルゼパチド(商品名:マンジャロ)など糖尿病薬の取引に関するものだったことがわかった。都は公式アカウント「東京都庁薬務課」から、販売をうたう投稿に対し「医薬品であるマンジャロを許可等なく販売等することは医薬品医療機器等法に違反します。直ちに販売を中止して下さい」とリプライで警告している。マンジャロは2型糖尿病治療薬として承認されている一方で、近年は体重減少効果への関心から、ダイエットや美容目的での使用が広がっている。医療用医薬品を入手するには原則として医師の診察と処方が必要で、個人が許可なく販売する行為は、たとえ1回であっても医薬品医療機器等法に違反する恐れがある。東京都は、フリマサイトやオークションサイト、SNSでの医薬品販売に注意を呼びかけており、改善がない場合はX側に投稿削除を要請している。糖尿病薬をめぐっては、適応外使用や自己判断での使用による健康被害も懸念される。厚生労働省も、添付文書に基づく適切な使用がなされない場合、思わぬ健康被害につながる可能性があるとして注意喚起している。とくにGLP-1受容体作動薬などの使用では、消化器症状、低血糖リスク、既往歴や併用薬への配慮が必要であり、医師の管理を離れた流通は安全性の面で大きな問題となる。都による警告件数は、2023年度は62件、2024年度は78件だったが、2025年度は検索業務を外部委託したことで大幅に増えた。糖尿病薬関連に関して2023・24年度はいずれも2件にとどまっており、今回の急増はマンジャロ人気とSNS上の流通拡大を映している。Xから秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」に誘導するケースも確認されており、都は2026年度からテレグラム上でも警告を始める方針。医療者には、処方時の適正使用説明に加え、患者がSNS経由で医薬品を入手しないよう啓発する役割も求められる。 参考 1) 薬の不正販売疑い投稿、糖尿病薬が7割超 昨年度 都が「X」で確認・警告(日経新聞) 2) 「直ちに販売を中止して下さい」東京都庁薬務課、「マンジャロ」めぐりXで警告 歓迎の声相次ぐ(J-CASTニュース) 6.東京女子医大2歳児死亡事故、ICU責任医に有罪判決/東京地裁東京女子医科大学病院で2014年、手術後の2歳男児に鎮静剤プロポフォールが長時間・高用量で投与され死亡した医療事故を巡り、東京地裁は5月29日、業務上過失致死罪に問われた当時ICUの現場責任者の麻酔科医に禁錮1年6月、執行猶予3年を言い渡した。その一方で、当時後期研修医だった医師については無罪とした。プロポフォールは手術麻酔や鎮静に広く使われるが、添付文書では集中治療における人工呼吸中の小児への投与が禁忌とされている。裁判では、投与と死亡の因果関係、当時の医療水準からみた注意義務違反の有無が争点となった。判決では、医師の裁量で禁忌薬を使用する余地はあり得るとしつつ、本件では「投与量・投与時間が目安を大きく超え、心電図異常も継続していたことから、副作用リスクが高まった段階で投与を中止すべきだった」と認定。「通常の専門医であれば到底行わない高用量、長時間投与」として、責任者の過失を重くみた。その一方で、後期研修医については、当時は専門医資格を持たず、鎮静薬選択を日常的に担う立場ではなかったとして、死亡を具体的に予見できたとは認められないと判断した。判決は、チーム医療において職位、専門性、権限に応じて刑事責任を分けた点でも注目される。医療現場への示唆は大きい。禁忌薬や安全性が十分確認されていない医療行為を行う場合、医学的合理性、家族への説明と同意、リスク監視、投与量・時間の記録、異常時の中止基準を組織として明確化する必要がある。女子医大は事故後、特定機能病院の承認を取り消されており、厚生労働省は2016年、特定機能病院に対し安全性未確立の薬剤使用時の院内審査体制を義務付けた。今回の判決は、個人の裁量に依存せず、病院全体で高リスク医療を管理する体制整備の重要性を改めて示したものといえる。 参考 1) 2歳児死亡、麻酔科医に有罪 元研修医は無罪、東京女子医大(東京新聞) 2) 東京女子医大病院で2歳児死亡 医師1人に無罪判決、もう1人は有罪(朝日新聞) 3) 東京女子医大の2歳児死亡、元准教授に有罪判決 元研修医は無罪(日経新聞) 4) 東京女子医大 鎮静剤投与で2歳児死亡 責任者の医師に有罪判決(NHK)

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「肥満のスティグマ」が気になる患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第48回

■外来NGワード「肥満は自己責任の病気です」(スティグマを助長する発言)「減量できないのは、意志が弱いからです」(意志が弱いと強調)「もっと、努力しないと」(努力不足を責める発言)■解説「スティグマ(stigma)」とは、特定の人や集団に対して否定的な評価や差別的なレッテルを貼ることを指します。語源はギリシャ語の「烙印」に由来します。スティグマは、実際に経験する「経験的スティグマ」と、スティグマに対する恐れである「予期的スティグマ」に大別され、さらに「社会的スティグマ」「罪悪的スティグマ」「自己スティグマ」といった側面があります。社会的スティグマとしては、「採用や昇進で不利に扱われた」「太っているからだらしない」「検査値が悪いのは肥満のせいだ」などと言われることがあります。また、体型について指摘されることを避けるために人前に出ることを控えたり、スポーツジムや医療機関の受診をためらったりする場合があります。罪悪的スティグマとしては、「自己管理ができていないと非難された」「食べ過ぎや運動不足と決めつけられた」「努力不足とみなされた」といった経験が挙げられます。また、生活習慣のせいにされることを懸念して、食事内容を過少に申告することもあります。自己スティグマとしては、「自分は意志が弱くてだめな人間だ」と自己評価を低くしたり、受診や相談をためらったり、「自分は痩せられない」と思い込んだりすることが見られます。これらのスティグマは相互に関連しており、受療行動の抑制や生活習慣改善への動機低下を介して、長期的な健康アウトカムに影響を及ぼす可能性があります。そのため、臨床現場ではスティグマを軽減するための配慮あるコミュニケーションが求められます。■患者さんとの会話でロールプレイ患者先生、この間、ある人から「あなた太っているわね」って言われて…「私、意志が弱くて、だめなんですよね」…(「太っている=自己管理ができていない」と認識)。医師そう感じられる方は多いですね。でも、肥満症は「自己責任」だけではなく、体質・遺伝・ホルモン・心理的ストレスなど、いろんな要因が重なって起こる“病気”の1つなんですよ。患者えっ、そうなんですか? でも周りから「食べすぎ」「運動不足」って言われると、「意志が弱い」って、自分を責めてしまって…。医師なるほど。それが「スティグマ(偏見)」の典型ですね。実際、大半の太っている人が「自分のせい」だと感じているという調査もありますが、肥満症という病気は慢性疾患の1つで、糖尿病や高血圧と同じように適切な診断と治療が必要なんですよ。患者えっ、そうなんですか。肥満症の治療って、薬を飲むことですか?医師場合によってはお薬も使いますが、生活の中でできる範囲から一緒に取り組むのが基本になります。患者なるほど。どんなことに気を付けたらいいですか?医師体重増加は30kcal、もったいないからと、ちょこっとだけ余分なものを食べることから始まります。患者その一口が…ですね。30 kcalというとどのくらいですか?医師クッキー1枚とか、チョコ1かけになりますね。これがその一覧です(表をみせながら説明)。患者そのくらいなら我慢できそうです。医師まずは、余分なものを食べない習慣を取り入れてもらうと、チリも積もれば山となるので、少しずつ体重が減ると思いますよ!患者はい。わかりました。頑張ってやってみます。(うれしそうな顔)何より大切です。■医師へのお勧めの言葉「意志が弱いと思っている方にダイエット法がありますよ!」「体重増加は、もったいないと思って食べる、その1口、30 kcalから始まっています。まずは余分なものを食べないことから始めてみませんか?」

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働き盛り世代の心房細動が腎機能低下の加速と関連/京大

 日本の就労世代を対象とした全国規模のコホート研究において、新規に確認された心房細動(AF)は、eGFR低下の加速およびeGFRが30%以上低下するリスクの増加と関連していたことを、京都大学の森 雄一郎氏らが示した。JAMA Network Open誌2026年5月14日号掲載の報告。 AFは心不全や慢性腎臓病(CKD)の合併症としてよく知られているが、就労世代の成人では単独の所見として健康診断で偶然見つかることもある。若年~中年層のAFは将来的な心不全リスク上昇と関連することが知られている一方、その後の腎機能低下と関連するかどうかは明らかになっていない。そこで研究グループは、就労世代におけるAF確認後の腎機能推移を検討するため、後ろ向きコホート研究を実施した。 研究では、2015年4月1日~2023年3月31日の全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康診断記録(心電図およびeGFR)と保険請求データを用いた。対象は、ベースライン時に洞調律で、AFや心血管疾患、末期腎不全の既往歴のない35~59歳の健康診断受診者であった。その後約1年間の外来受診歴および次回健診時の心電図所見から新たにAFが確認された個人を、確認されなかった個人と1対5で傾向スコアマッチングした。主要アウトカムは線形混合効果モデルを用いて推定したeGFRの年間低下率、副次アウトカムはCox比例ハザードモデルを用いて評価したeGFRの30%以上の低下とした。参加者を、全死因死亡イベント、腎代替療法開始、保険資格喪失、2023年3月31日のうち最も早い時点まで追跡した。 主な結果は以下のとおり。●解析対象は、マッチング後の14万1,060例(新規AF群2万3,510例、非AF群11万7,550例)であった。平均年齢49.8歳、男性81.8%、追跡期間中央値4.73年。●新規AF群では、非AF群と比較してeGFRの年間低下率が有意に大きかった。 ・新規AF群 -1.23mL/分/1.73m2/年(95%信頼区間[CI]:-1.26~-1.21) ・非AF群 -0.94mL/分/1.73m2/年(95%CI:-0.95~-0.93) ・群間差 -0.29mL/分/1.73m2/年(95%CI:-0.32~-0.26)(p<0.001)●AF確認前のeGFR低下は両群ともに-0.99mL/分/1.73m2/年であり、AF確認後に腎機能低下が加速した可能性が示唆された。●新規AFは、eGFRが30%以上低下するリスク増加と関連していた(ハザード比:2.91、95%CI:2.72~3.11、p<0.001)。●7年時点でのeGFRの30%以上低下の累積発生率は、新規AF群で11.0%(95%CI:10.2~11.7)、非AF群で4.9%(95%CI:4.7~5.2)であった。●女性および糖尿病患者ではAF確認後のeGFR低下がさらに顕著であった。一方、ベースラインの蛋白尿の有無による有意な交互作用は認められず、蛋白尿の有無にかかわらず同様にeGFRが低下していた。●その後の健康診断でもAFが再確認された群は、洞調律へ復帰していた群と比較してeGFR年間低下率が有意に大きかった(-1.55 vs.-1.15mL/分/1.73m2/年、p<0.001)。 研究グループは「これらの結果は、就労世代のAF管理では腎機能も重要であることを示唆している。AFがCKD進行に及ぼす累積的な影響やAF治療による腎保護効果についてはさらなる研究が必要」としている。

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日本のがん死亡率低下も、大腸がん・膵がん・子宮頸がんは依然高水準

 日本では全がんの年齢調整死亡率(ASR)が着実に低下している一方で、大腸がん、膵がん、子宮頸がんなど一部のがん種では依然として国際的に高い死亡率が続いていることが明らかになった。胃がんと肝がんでは大幅な改善が認められたものの、予防や検診による死亡率低下が期待されるがん種において十分な成果が得られていない実態が浮き彫りとなった。国立がん研究センターの片野田 耕太氏らによる本研究の結果はJapanese Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年3月5日号に掲載された。 研究では、国際がん研究機関(IARC)のGlobal Cancer Observatoryデータベースおよび各国の人口動態統計を用い、日本、韓国、米国、英国、カナダ、オーストラリアなどの高所得国における1980~2024年のがん死亡率の推移を比較した。解析対象は全がんに加え、胃がん、大腸がん、肝がん、膵がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、子宮頸がん、子宮体がんだった。肝がん・胃がんは日本の成功事例 歴史的に日本で死亡率が高かった胃がんと肝がんについては、長期的に大幅な減少がみられ、欧米諸国との国際格差は大幅に縮小した。とくに女性の肝がん死亡率については、日本が欧米諸国を下回る水準にまで低下した。著者らはこの背景として、B型・C型肝炎ウイルス検査の全国的な実施、妊婦へのHBs抗原検査、さらには直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の普及といった一連の肝炎対策が有効に機能したと考えられ、WHOが掲げる2030年までのC型肝炎排除目標に向け、国際的なモデルケースになり得る、としている。 一方、胃がんも日本における死亡率は低下し続けているものの、韓国の減少速度には及ばなかった。日本ではヘリコバクター・ピロリ除菌の保険適用拡大など1次予防が進む一方、韓国では内視鏡検診を中心とした2次予防が強力に推進されている。また、韓国では国家健康保険制度により検診データが一元管理されているのに対し、日本では職域検診の精度管理やデータ統合に課題が残ることが示唆された。大腸がん・膵がん・子宮頸がんは深刻な高水準 大腸がん死亡率は1980年代には欧米のほうが高かったが、その後減少が進んだ。これに対し日本では明確な低下傾向がみられず、近年では比較対象国の中でも高い水準となっている。韓国も近年減少傾向に転じており、日本との差が広がっている。 膵がんは、日本において男女とも死亡率の上昇が続いており、国際的にみても高い水準が際立っている。早期発見が困難で予後不良な疾患であるが、喫煙や2型糖尿病が重要なリスク因子であり、禁煙や糖尿病管理といった1次予防の重要性が改めて示された。 子宮頸がんにおいても、日本の相対的な立ち位置は悪化した。欧米諸国や韓国では死亡率が大幅に減少した一方、日本では高止まりが続いている。HPVワクチンの積極的勧奨の中止と再開の経緯もあって接種率はいまだ不十分であり、ワクチン接種と検診の双方を速やかに強化する必要性が示された。乳がん・肺がんでも改善が緩やか 女性の乳がん死亡率は欧米では着実に低下している一方、日本では増加傾向が続き、差は縮小している。男性の肺がんでも欧米に比べて死亡率低下が緩やかであり、近年では日本の死亡率が欧米を上回る状況となっている。一部のがんでは予防を強化する必要性 本研究により、日本の全がんのASRは他国と同様に引き続き低下していることが示された。とくに、かつて日本の死亡率の高さの要因となっていた胃がん、肝がんで持続的な低下がみられ、欧米諸国との差は縮小し、女性の肝がんでみられるように一部では逆転している。一方で、日本は大腸がん、膵がん、および子宮頸がんにおいて依然として最も高い死亡率を示している。女性の乳がんおよび男性の肺がんでは、日本における低下の遅れ、あるいは継続的な増加により、死亡率が欧米諸国の水準に近づいている。これらのがんの多くでは、1次予防および2次予防の方法が確立されており、胃がん、肝がんで達成された死亡率低下を再現するために、予防対策を強化する必要性が示唆される。

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過体重・高齢の持続性AFの減量、重症度スコア改善につながらず/JAMA

 過体重を呈する持続性心房細動(AF)の高齢患者では、低カロリー食と行動支援プログラムを併用した介入は、安全上の懸念なく有意かつ持続的な体重減少をもたらすが、AF症状の重症度・負担や心臓リモデリング、追加のリズムコントロール介入の必要性には影響を及ぼさないことを、英国・オックスフォード大学のMatteo Sclafani氏らが、「LOSE-AF試験」の結果で示した。過体重はAFの強力なリスク因子であり、欧米の診療ガイドラインでは、肥満とAFを併発するすべての患者に対して減量が推奨されている。一方、既存のエビデンスは比較的若年のAF患者(平均年齢約60歳)に基づくものであり、より高齢の患者では、減量はサルコペニアやフレイルを招く恐れがあるため治療的価値が制限される可能性が示唆されていた。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年5月20日号で報告された。英国の研究者主導型無作為化試験 LOSE-AF試験は、英国の2施設で実施した研究者主導型の非盲検無作為化試験(英国国立健康研究所[NIHR]オックスフォード生物医学研究センター[BRC]などの助成を受けた)。2018年11月~2025年4月に、年齢60~85歳、BMI値27以上で、持続性AFと診断され、直流カルディオバージョン(DCCV)が適応の患者118例(平均年齢68[SD 6]歳、女性33%)を登録した。 被験者を、8ヵ月間の低カロリー食と行動支援プログラムを受ける群(介入群、59例)、または通常治療を受ける群(対照群、59例)に無作為に割り付けた。 ベースラインの平均体重は、介入群103.2(SD 16.2)kg、対照群101.9(16.8)kg、BMI値はそれぞれ34.6(SD 4.8)および34.1(5.4)、平均心拍数は78(SD 17)および76(15)拍/分、CHA2DS2VAScスコア中央値は2(四分位範囲[IQR]:2~3)点および2(1~3)点であった。 また、DCCV治療歴のある患者は、介入群47%および対照群27%、AFアブレーション治療歴のある患者はそれぞれ20%および17%であり、AF罹患期間中央値は9.6(IQR:4.2~54)ヵ月および13.1(5~49)ヵ月であった。 心房細動重症度尺度(AF Severity Scale:AFSS)の平均症状重症度スコア(0~35点、高スコアほど症状が重度)は介入群13.8(SD 5.9)点および対照群12.8(5.9)点、AFSSの平均症状負担スコア(3.25~30点、高スコアほどAF症状の全般的な負担が大きい)は24.4(SD 3.7)点および24.2(4.0)点だった。9.7%の減量、症状重症度に差はない 8ヵ月の時点で、ベースライン補正後平均体重は、介入群が92.6(SD 0.85)kgと対照群99.4(0.85)kgに対し有意に低かった(推定群間差:-6.9kg、95%信頼区間[CI]:-9.2~-4.5、 p<0.001)。体重減少率は、介入群が9.7%、対照群は3.1%であった(p<0.001)。 一方、この体重差にもかかわらず、主要アウトカムである8ヵ月時のAFSSの症状重症度スコア(臨床的に意義のある差は4点とした)のベースライン補正後平均値は、介入群が7.9(SE 0.84)点、対照群は8.9(0.84)点であり、両群間に有意差を認めなかった(群間差:-0.9点、95%CI:-3.3~1.4、p=0.43)。減量は有効な治療戦略ではない 8ヵ月時の身体機能検査(PPTスコア[0~36点、高スコアほど身体機能が良好]:介入群32.6[SE 0.44]点vs.対照群32.6[0.44]点、群間差:0点、95%CI:-1.2~1.2、p=0.99)と、AFSS症状負担スコア(15.8[1.08]点vs.15.0[1.08]点、群間差:0.8点、95%CI:-2.2~3.8、p=0.59)に関して両群間に有意な差はなく、心臓MRIパラメーターや血圧、脂質プロファイルの変化に関しても差を認めなかった。 また、追跡期間中のAF再発率(ハザード比[HR]:1.04、95%CI:0.69~1.58、p=0.85)や、再DCCV(HR:0.64、95%CI:0.35~1.16、p=0.14)、再AFアブレーション(HR:1.00、95%CI:0.48~2.10、p>0.99)の施行率も両群で同程度であった。試験への参加に関連した重篤な有害事象は発現しなかった。 著者は、「過体重の持続性AF高齢患者では、食事療法による適度な減量は有効な治療戦略ではなかった」としている。 また、「AFSSスコアは、主に心拍の状態に起因する症状の変化を捉えるよう設計されているため、AFの負担の変化とは関連のない、減量によるより広範な症状の改善効果を検出する感度は限定的であった可能性がある」と指摘している。

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GLP-1Rを介さず肥満を改善?GIPR/GCGR標的薬の可能性

 体重減少にGLP-1受容体(GLP-1R)作動薬は本当に必要なのか――人気の肥満症治療薬の前提となっている考え方の一つに疑問を投げかける、新たな減量アプローチに関する研究成果が報告された。マウスやラットを用いた初期段階のこの研究により、GLP-1Rではなく、GIPおよびグルカゴンの受容体(GIPR/GCGR)を標的とする薬剤でも、GLP-1Rと同等の体重減少効果が得られる可能性が示唆された。米インディアナ大学ブルーミントン校化学科のRichard DiMarchi氏らによるこの研究結果は、「Molecular Metabolism」に4月15日掲載された。 DiMarchi氏はSTAT Newsの取材に対し、「われわれはGLP-1Rの重要性に強くとらわれてきた」と語った。一方、この新アプローチは、GLP-1Rを標的にしていない。同氏は、「われわれは、これを引き算による足し算と呼んでいる。つまり、何かを取り除くことで、より良い結果が得られる可能性があるということだ」と説明している。 複数の受容体を標的とする多重作動薬は、肥満および2型糖尿病治療において高い有効性を示す薬剤クラスとして注目されている。例えばGIPR/GLP-1Rを標的とする二重作動薬であるチルゼパチドは、GLP-1R作動薬のセマグルチドと比較してより大きな体重減少効果を示している。さらに、レタトルチドのようなGIPR/GCGR/GLP-1R三重作動薬では、24%前後の体重減少が報告されている。一方で、GLP-1R作動薬は吐き気や嘔吐などの副作用を伴い、そのため使用可能な用量が制限されることがある。こうした背景から、GLP-1R作動薬を用いずに、GIPRおよびGCGRの活性化のみで肥満を改善できるかが検討されている。 本研究では、GIPR、GCGR、GLP-1Rの選択的作動薬、二重作動薬、および三重作動薬が、食餌誘導性肥満マウス(野生型およびGLP-1R欠損マウス)における体重および血糖制御に与える影響が評価された。 その結果、選択的GIPR作動薬と選択的GCGR作動薬を併用すると、肥満モデルマウスにおいて体重減少と血糖改善が認められた。また、GLP-1R/GIPR/GCGR三重作動薬のレタトルチド投与により、GLP-1R欠損肥満マウスの体重が正常化した。さらに、GIPR/GCGR二重作動薬BWB3054は、GLP-1Rに対する活性は100倍以上低いにもかかわらず、レタトルチドと同等レベルの環状アデノシン一リン酸(cAMP)を産生し、肥満モデルマウスにおいてもレタトルチドと同程度の体重減少効果を示した。 安全性についても検討が行われた。サルを用いた試験では、高用量の新薬を投与しても苦痛の兆候は認められなかった。一方で、チルゼパチドなどの既存の薬剤では、サルでは高用量に対する忍容性が認められなかった。 ただし、動物実験の結果がそのままヒトに当てはまるとは限らない。また、GLP-1R作動薬は、心血管系への有益な効果が知られているが、新たな薬剤が同様の効果を持つか否かについては不明である。 本研究について、米ミシガン栄養肥満研究センターのディレクターであるRandy Seeley氏は、「この研究結果は有用で印象的だ。体重減少の仕組みについての新しい見方を提示している」と述べている。

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心血管疾患2次予防、LDL-C 55mg/dL未満の達成後も高Lp(a)は強力な残余リスクに/EAS2026

 欧州心臓病学会(ESC)などのガイドラインでは、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の2次予防において、LDL-C 55mg/dL未満への厳格な管理を推奨している1)。しかし、依然として残る心血管リスク因子として、遺伝的要因の強いリポ蛋白(a)[Lp(a)]が注目されている。現在、具体的なLp(a)低下療法が確立されていない中、LDL-Cを徹底的に低下させることでLp(a)によるリスクをどこまで軽減できるか、とくに日本人患者における検証は不十分であった。 ギリシャ・アテネで開催された欧州動脈硬化学会(EAS2026)にて、国立循環器病研究センターの片岡 有氏らの研究グループがこの課題に関する多施設共同研究「Lp(a)-JAPAN study」の成果を発表した。なお、本研究はEuropean Heart Journal誌オンライン版2026年5月24日号に同時掲載された。 本研究は、2017年1月1日~2022年8月31日の期間に、国内3施設において経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行され、3年以上の臨床フォローアップが可能であった冠動脈疾患(CAD)患者1,581例を対象とした。PCIから2ヵ月後のLDL-CおよびLp(a)測定値を基準として、その後の予後との関連を評価した。主要評価項目はMACE(心臓死、非致死性心筋梗塞、非責任病変への臨床的に誘発された冠血行再建術)の発生率とした。追跡期間の中央値は5.1年であった。 主な結果は以下のとおり。・解析対象の1,581例の平均年齢は68.3歳、女性23.6%、Lp(a)値の中央値は12.8mg/dLであった。・LDL-C 55mg/dL以上の患者(1,069例)におけるMACE発生率は21.3%であった。そのリスクはLp(a)レベルの上昇に伴って有意に増加した(100人年当たり、Lp(a) 30mg/dL未満で3.9、30〜50mg/dL未満で7.9、50mg/dL以上で11.0、log-rank p<0.001)。・LDL-C 55mg/dL未満を達成した患者(512例)におけるMACE発生率は4.3%と有意に低かった(p<0.001)。しかし、Lp(a)レベルの高値は、MACEの高リスク患者を明確に特定した(100人年当たり、Lp(a) 30mg/dL未満で1.4、30〜50mg/dL未満で4.7、50mg/dL以上で7.5、p<0.001)。・5年標準化MACE発生率では、Lp(a) 30mg/dL未満の群の5.0%に対し、Lp(a) 30〜50mg/dL未満の群では17.0%(調整ハザード比[aHR]:3.80、95%信頼区間[CI]:1.78~8.11、p<0.001)、Lp(a) 50mg/dL以上の群では33.4%(aHR:6.90、95%CI:3.53~13.46、p<0.001)と高値を示した。・ROC曲線分析の結果、将来のMACE発生を予測するLp(a)の閾値(カットオフ値)は28.2mg/dL以上であることが判明した(p<0.001)。 研究グループは、ガイドラインが推奨する厳格なLDL-C低下療法がLp(a)に起因する心血管リスクを部分的に軽減するものの、完全に消失させることはできず、Lp(a)が独立した重大な残余リスク因子であることを実証したと結論付けた。  現在海外で進行中の新規Lp(a)低下薬(RNA薬など)の臨床試験では、登録基準となるLp(a)の閾値が一律で高く設定されている(60~80mg/dLに相当)。しかし、本研究で判明した日本人CAD患者におけるリスク閾値(28.2mg/dL)は欧米人より大幅に低い。そのため、欧米人より低いLp(a)レベルでも脆弱性を持つ集団を対象とした新たな臨床試験を行う必要があると論文内で指摘されている。

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糖尿病患者の将来リスクをAI活用で予測/福島医大・日本糖尿病学会ほか

 福島県立医科大学と千葉大学、国立健康危機管理研究機構(JIHS)らの研究グループは、株式会社エフコムとの共同研究により、AIを活用して糖尿病を5つのサブタイプに分類し、将来の合併症・併存症リスク(糖尿病関連腎臓病、透析導入、心血管障害など)を推計するウェブプラットフォーム「福島医大 糖尿病未来予測ナビ」を研究・開発した。このウェブプラットフォームは、2026年5月20日に福島県立医科大学附属病院、日本糖尿病学会、てだこ浦西駅循環器・糖尿病クリニックの各ホームページ上で公開された。 糖尿病患者では、合併症の進行に大きな個人差がある。この研究は、国内最大級のデータベース「J-DREAMS」(日本糖尿病学会運営)を活用し、日本人の病態に最適化された予測モデルの構築を目的に開発され、患者の将来リスクを推計する。 ウェブプラットフォームの主なポイントは以下の3点。1)AIが糖尿病を5つのタイプに分類 日常診療で得られるデータ(年齢、BMI、血糖値など)を解析し、患者を5つのサブタイプ(クラスター)に分類、合併症リスクを可視化する。2)診断時点で将来の「透析リスク」を推計 早期段階のデータから将来の透析導入リスクを推計できる。とくに「重症インスリン抵抗性(SIRD)」は、8年間で透析導入リスクが約4%に達することを特定している。3)日常診療ですぐに活用可能な「ゼロセットアップ」設計 特別な検査を必要とせず、一部データが不足していてもAIが補完する独自技術を搭載。幅広い医療現場での活用が期待される。 研究・開発者の1人である島袋 充⽣氏(福島県立医科大学医学部糖尿病内分泌代謝内科学講座 教授)は、「患者と医療者が同じ未来を共有し、ともに歩んでいく。そんな新しい糖尿病医療のスタンダードを、福島から全国へ広げていきたい」と期待を寄せている。

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標的試験エミュレーション、無作為化比較試験との一致度は中程度/BMJ

 現在の標的試験エミュレーションは、対応する無作為化比較試験の再現に関して、一致度は中程度であることが、英国・キングス・カレッジ・ロンドンのCanlong Wang氏らによるシステマティックレビューおよびメタ解析の結果で示された。標的試験エミュレーションが、対象とした無作為化比較試験で観察された効果を、どの程度再現できるかは依然として不明であった。著者は、「ベースラインの特性やアウトカムのエミュレーションの質を向上し、複数の情報源を連結したデータベースを活用するなど、エミュレーションデザインを改善することで、一致度は高めることができる」と述べている。BMJ誌2026年5月19日号掲載の報告。システマティックレビューとメタ解析で一致度を評価 研究グループは、Medline、EMBASE、Scopus、PsycINFOおよびWeb of Scienceを用い2010年1月1日~2025年10月1日に発表された観察研究を検索した。 適格基準は、薬剤、外科手術または医療機器の使用に関するベンチマークとなる無作為化比較試験(標的試験)の模倣を目的とすることが明示されている英語の論文とした。 2人の研究者がそれぞれ、各エミュレーション研究とそれに対応する無作為化比較試験について、研究領域、対象集団、介入、対照群、およびアウトカムに関するデータを抽出するとともに、エミュレーション研究はROBINS-Iツール、無作為化比較試験はコクランバイアスリスクツール(バージョン2)を用いてバイアスリスクを評価した。 21の事前に定義されたエミュレーションデザインの特徴について、エミュレーション研究と無作為化比較試験のペア間の一致度を、8つの指標(2値指標は標準化差、点推定値、統計学的有意性の完全一致、統計学的有意性の部分一致、連続指標はピアソン相関係数、クラス内相関係数、比率の相対偏差、比率の比)を用いて検討し、研究特性と一致度の関連について、サブグループ解析および回帰分析を実施した。ピアソン相関係数は0.59、標準化差の一致率は79%、比率の比は0.96など エミュレーション研究と無作為化比較試験のペア107組において、ピアソン相関係数は0.59(95%信頼区間[CI]:0.45~0.70)、標準化差の一致度は79%(85/107組)、比率の比は0.96(95%CI:0.92~1.01、I2=36%)であった。 試験デザインをより忠実にエミュレートしていた63組では、より高い一致性が観察され、ピアソン相関係数は0.83(95%CI:0.73~0.89)、標準化差の一致度は87%(55/63組)であった。 サブグループ解析では、無作為化比較試験のエミュレーションは、静脈血栓塞栓症および主要心血管イベントに関連する特定のアウトカムについて、無作為化比較試験の治療効果を系統的に過小評価する傾向がみられた。一方、呼吸器系のアウトカムについては過大評価する傾向があり、統合した比率の比はそれぞれ0.76(95%CI:0.58~1.00、I2=40%)、0.91(95%CI:0.86~0.96、I2=32%)、1.20(95%CI:1.03~1.40、I2=40%)であった。さらに、請求データに基づくエミュレーションは、治療効果を過小評価する傾向にあった(0.90、95%CI:0.82~0.99、I2=38%)。 単変量回帰分析では、エミュレーション研究と無作為化比較試験の一致度の低さは、ベースラインの対象集団の特性に不均衡があるエミュレーションデザイン、入院中に治療が開始されるデザイン、およびアウトカムエミュレーションの質が低いことと関連していた。

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1次予防における脂質低下療法の指標としてapoBは費用対効果に優れる(解説:佐田政隆氏)

 高コレステロール血症、高血圧、喫煙、糖尿病、肥満などが心臓病の危険因子であることは現代では当たり前となっているが、1948年に米国で開始されたフラミンガム研究によって初めて明らかにされた。 コレステロールや中性脂肪といった脂質は疎水性であり、アポ蛋白と結合して「リポ蛋白」と呼ばれる球状の複合体粒子として血液中を運搬される。 リポ蛋白粒子の中で、LDLは末梢にコレステロールを供給する動脈硬化惹起性の「悪玉」、HDLは末梢からコレステロールを引き抜く「善玉」として知られている。LDL中のコレステロール値や、総コレステロール値からHDLコレステロール値を引いたnon-HDLコレステロール値が、冠動脈疾患のリスク評価や脂質低下療法の指標として現在広く用いられている。 最近の研究では、LDLの中でも粒子サイズが大きいものは動脈硬化惹起性が低い一方、粒子が小さいものは血管壁の隙間に入り込みやすく動脈硬化のリスクを大幅に高めることがわかってきた。大型LDL粒子が多い場合、LDLコレステロール値としては高く検出される一方、小型LDL粒子が多い場合、動脈硬化惹起性が高いにもかかわらずLDLコレステロール値としては低く検出されることが問題視されてきた。 apoBはLDLを形成するアポ蛋白であるが、個々のLDL粒子に1個存在するために、apoB値を測定すればLDL粒子数を評価することができる。メタボリックシンドロームなど代謝的に不健康な状態ではLDLコレステロール値とapoB値が乖離しており、リスクの予測や脂質低下療法の指針として、LDLコレステロールやnon-HDLコレステロールより、apoBのほうが優れていることが報告されてきた。最近発表された2026年版AHA/ACC脂質異常症管理ガイドラインでも、apoB測定がIIa(脂質低下療法中)もしくはIIb(脂質低下療法をしていない場合)として推奨されている(エビデンスレベルB-NR)。日本においても、apoB測定は「脂質異常症(高脂血症)」の診療で保険が適用される。しかし、apoB測定に関する費用対効果に関する評価はまだなされておらず、実臨床ではほとんど用いられていないのが現状である。 そこで本研究では、1次予防としてスタチン治療が適格な米国成人25万人を対象としてシミュレーションモデルを行い、LDLコレステロール値、non-HDLコレステロール値、apoB値を目標とした場合の脂質低下療法の費用対効果を比較検討した。 目標値としてLDLコレステロール値(100mg/dL未満)を用いる場合と比較してnon-HDLコレステロール値(118mg/dL未満)を用いるほうが、質調整生存年が965QALY改善し、費用が210万ドル削減された。 apoB値(78.7mg/dL未満)を目標にすると、non-HDLコレステロール値を目標とする場合と比較して質調整生存年が1,324QALY増加し、費用が4,020万ドル増加した。増分費用効果比(ICER)は、約3万ドル/1QALYであり、米国や日本で、費用対効果が良いと判断される基準を下回っていた。 現在、冠動脈疾患のリスク評価と脂質低下療法の戦略決定にはLDLコレステロール値が圧倒的に主流として使われている。「急性冠症候群などハイリスク症例ではLDLコレステロールを55mg/dLや40mg/dLを目標にした積極的な脂質低下療法が必要だ」と、PCSK9阻害薬の講演会で何度も強調されている。しかし、LDLコレステロール値を大きく低下させても冠動脈疾患を引き起こす患者がいるのも事実である。今後、各種の前向き研究が行われて、LDLコレステロール値ばかりでなく、apoBや最近注目されているLp(a)、高感度CRP値を指標にして、有効な冠動脈疾患の予防法が開発されていくことが望まれる。その場合、費用対効果も考慮する必要がある。

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チルゼパチドが中等症以上のOSASに適応拡大

 厚生労働省薬事審議会・医薬品第一部会は4月24日、日本イーライリリーの肥満症治療薬チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド皮下注)について、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対する適応拡大および肥満症に関する効能又は効果の一部変更の承認を了承。5月18日の承認に伴い、チルゼパチドの添付文書が改訂された。本剤の使用に当たっては、最適使用推進ガイドラインを参照されたい。チルゼパチド、肥満症についての一部変更点とOSASへの適応拡大 主な改訂点は以下のとおり。[効能又は効果](下線部分を改訂)◯肥満症ただし、高血圧、脂質異常症又は耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常等)のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する・BMIが35kg/m2以上◯中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群ただし、BMIが27kg/m2以上に該当する場合に限る。※各効能又は効果に関連する注意は添付文書を参照[用法及び用量]◯肥満症通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回10mgを皮下注射する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回5mgまで減量、又は4週間以上の間隔で2.5mgずつ週1回15mgまで増量できる。◯中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回15mgを皮下注射する。なお、忍容性が認められない場合には、週1回10~15mgの範囲で投与量を調整することができる。

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介助犬は介護者並みのケアを提供する

 介助犬は私たちが考えている以上に、障害や病気を抱える人の「積極的なケア提供者」として行動しているようだ。人間と介助犬との協働的な相互作用を調査した新たな研究で、介助犬は、飼い主の健康状態を予測したり、移動を補助したり、人間やロボットでは代替できない方法で精神的な支えを提供したりするなど、目に見えないケア活動を行っていることが明らかになった。アールト大学(フィンランド)経営学部のAstrid Huopalainen氏とトゥルク大学(フィンランド)経済学部のSuvi Satama氏によるこの研究の詳細は、「Human Relations」に3月20日掲載された。 この研究では、盲導犬や医療アラート犬などの介助犬13匹とその飼い主との日常生活の様子を、インタビュー、エスノグラフィー(民族誌)に基づく観察(集団や社会の行動様式を直接観察により理解する方法)、写真を通じて分析した。 その結果、人と犬は言葉を使わず、しぐさや動き、反応を通じて互いを読み取り合っていることが示された。例えば、研究参加者の1人は、自宅で履くお気に入りのウールの靴下についてのエピソードを次のように語っている。「昨日帰宅したとき、靴下をどこに置いたのか分からなくて家の中を探しまわっていた。そのあとソファに座ると、犬が隣に来て、靴下を私の手に落とした。まるで、『ほら、これを探してたんでしょ』と言っているかのようだった。私が靴下のことを口にしたわけでもないのに、『これ、もうすぐ必要になるよね』と思ったようだった」。 また、介助犬はケアの担い手としての役割を果たし、人間は自分の判断よりも犬の判断に頼らざるを得ない場合があることも明らかになった。「例えば、糖尿病の人は、犬が血糖値の変化を検知した際、その知らせに頼ることになる。犬の合図に従って血糖値を確認したり、必要な薬を適切なタイミングで使用したりすれば、深刻な事態を回避できる」とSatama氏は述べている。 研究グループは、このような関係性によって、人と犬の従来の関係が、人間が犬の世話をするという一方向的なものではなくなり、その境界が曖昧なものになると指摘する。Satama氏は、「介助犬は人間を支え、人間もまた精一杯、介助犬の世話をする。このようにして、弱さが関係性となり、双方がケアを与え、そして受け取ることになる」と話す。 Satama氏によると、研究中には、介助犬が「勤務時間外」であることを認識し、時には飼い主にいたずらをしたり、自分の判断で物事を進めたりする様子が見られたという。同氏は、「視覚障害のある人とその介助犬の集まりを観察していたときのことだ。犬たちは、飼い主のそばで床に伏せているよう指示されていた。突然、1匹の犬が、別の犬やにおいのする方へこっそり移動し始めたが、その犬の飼い主は、視覚障害のため気付かなかったが、その犬が自分の意思で行動していると感じた」と振り返った。 研究グループは、この研究が、さまざまな組織における動物の多様な役割と、職場での動物の福祉についての議論を巻き起こすことを期待している。また、犬が単に、指示されたことを行うだけではなく、自分で状況を判断し、行動する能力を持ち合わせていると理解することが、より良いケアの実現につながる可能性があるとの見方を示している。 その上で研究グループは、「本研究結果は、犬が主体的に判断し、行動するケアのあり方に光を当てることで議論を広げるものだ。同時に、人と動物の間のケア関係は、『彼らにとっての利益とは何か』『どのように相互の利益を実現できるのか』という観点から、動物の立場を真剣に考える倫理的責任を私たちに問いかけている」と結論付けている。

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1回の大腸内視鏡検査により大腸がんの死亡率は減少するか?(解説:上村直実氏)

世界と日本の大腸がん検診の動向について 世界で毎年200万件の新規症例が発生する大腸がんは3番目に多いがんであり、世界中で早期発見のための検診が盛んに行われている。日本における2024年の大腸がん死亡者数は、男性約2万8,800例、女性約2万5,600例、合計約5万4,400例で、全がん死亡者数の約14%を占めているが、重要なのは検診および大腸内視鏡検査(CS)による早期発見で予防可能な疾患という点である。 検診方法は、主に直接CSを行う米国に対して、日本・欧州・オーストラリアなどでは最初に免疫学的便潜血検査(FIT)を用いる検診が主流である。いずれの方法においても、大腸がん死亡率の減少には検診の受診率が最も重要であることが明らかとなっている。ちなみに、最近大腸がん死亡者数の低下を認めている米国の受診率は70%で、日本の40%を大きく上回っている。大腸内視鏡検査の有用性を示す報告について 大腸がん検診におけるCSの有用性を示した有名な臨床研究は、1993年NEJM誌に報告された米国発の「National Polyp Study」である。この研究は、内視鏡的に発見された腺腫を切除した後の長期追跡調査により大腸がんの発症率および死亡率が著明に低下し、大腸がん予防に対するCSの有用性を示したのみならず、大腸がんのadenoma-carcinoma sequence説を実際に証明したものとされている。日本で2006年から経過観察された日本版の「Japan Polyp Study」では、「腺腫切除による大腸がん予防」および「CSの適切な間隔は3年間が妥当」との結論が2020年のGUT誌と2024年のCGH誌に報告されており、大腸がん予防にCSによるポリープ切除が確立したものとなっている。その他、観察研究によりCSを用いる検診法の有効性が数多く報告されているものの、検診におけるCS勧奨の有用性を検証するための直接的な大規模無作為化比較試験(RCT)はなかった。 一般住民を対象としたCS勧奨群と通常診療群による世界初の大規模RCTは、ノルウェー、ポーランド、スウェーデンで行われたNordICC試験である。このNordICC試験の10年経過観察の結果は2022年にすでにNEJM誌に報告されている(CLEAR!ジャーナル四天王「大腸内視鏡検診が大腸がんおよび関連死亡のリスクに及ぼす影響」筆者解説)。今回は、さらに3年後の追跡調査の結果が2026年5月のLancet誌に報告された。その結果は前回の報告と同様、「1回のCSは大腸がん発生率を減少させたが、死亡率に対する影響は有意なものではなくCSを受けなかった人とほぼ同じ」であり、研究グループには少し期待外れのものだった。大腸がん死亡率に有意な影響を与えない結果となった最大の要因は、「CS勧奨群のうち実際にCSを受けた者が42%と低率であった」と考察されており、ここでも受診率を上げる工夫が課題となっている。日本の実臨床における対処 日本の臨床現場においてCSは有症状者やFIT陽性者に対して施行されているが、筆者の個人的経験では、CSを行った患者が大腸がんで死亡したという話に遭遇したことはほとんどなく、大腸がん死亡の予防には何らかの機会に一度だけでもCSを受けることが最善の方法だと考えている。最善の検診法と思われるCSにはコストやマンパワーの課題があるため、現在考慮すべきはFIT検診の陽性者に対する精密検査であるCS受診率を100%とするための種々の努力であろう。ちなみに企業検診の受診率は70%と高率になっていることから、住民検診のほうも受診率を上げるための制度設計を考慮すべき時代になっていると思われる。一方、臨床現場においては、消化器領域のみではなく循環器や糖尿病などの診療医師にも、血便や貧血などの症状から可能であればFITの実施を習慣とすることも重要である。

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