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【CASE REPORT】腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症 症例解説

■症例:65歳 女性 腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症腰椎圧迫骨折の急性期に、NSAIDs抵抗性の侵害受容性疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を段階的に導入して十分な鎮痛効果が得られ、痛みの緩和だけでなくADLの改善が達成された症例である。高齢者の腰椎圧迫骨折後の5年生存率は30%との報告(Lau E, et al. J Bone Joint Surg Am. 2008; 90: 1479-1486)もあり、腰椎圧迫骨折による疼痛(とくに体動時痛)→安静臥床の遷延→廃用症候群→寝たきり→誤嚥性肺炎→生命危機という経過が考えられる。オピオイド鎮痛薬は最も強力な鎮痛薬であることから、痛みの程度に応じて使用しADLを改善することはきわめて重要な意義を持つ。さらに、オピオイド鎮痛薬の導入にあたっては嘔気や便秘といった副作用対策も予防的に行われており、患者のオピオイド鎮痛薬に対する忍容性も達成されていた。本症例のように腰椎圧迫骨折後に痛みが遷延することは決して珍しくはない。しかしながら、このような遷延する痛みが骨折に伴う侵害受容性疼痛だといえるだろうか。言い換えると、「遷延する痛みが器質的な原因の結果として妥当であるか否か」ということだが、これは必ずしも明確に妥当であるとは言えないことが多い。確かに、本症例では、通常組織傷害が治癒すると考えられる3ヵ月を経過しても、体動とは無関係な持続痛が徐々に増悪・拡大しており、当初の腰椎圧迫骨折だけが痛みの原因とは考えにくい。したがって、われわれは非特異的腰痛症と診断した。このような症例に対して、オピオイド鎮痛薬の効果が明確では無いにもかかわらず、オピオイド鎮痛薬をやみくもに漸増し、さらに頓用薬を併用していたことは不適切であるといわざるを得ない。オピオイド鎮痛薬の使用にあたっては、1. Analgesia (オピオイド鎮痛薬を適切に使用し痛みを緩和させること)、2. Activities of daily living(オピオイド鎮痛薬の使用はADLを改善するためであることを医師が理解し患者に教育すること)、3. Adverse effects(オピオイド鎮痛薬による副作用対策を十分に実施すること)、4. Aberrant drug taking behavior(精神依存や濫用を含む不適切な使用を常に評価し、患者教育を行うこと)の頭文字をとって4Asという注意事項が知られている。本症例は急性期のAnalgesiaとAdverse effectsへの対処は適切であったと考えられるが、腰椎圧迫骨折から3ヵ月が経過した慢性期での対応については検討の余地がある。日本ペインクリニック学会が発行した「非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン」では、オピオイド鎮痛薬の使用目的として、痛みを単に緩和するだけでなくADLを改善するために使用することを推奨している。したがって、組織修復(骨癒合)がある程度進んだであろう時期には、痛みが残存している状況でもオピオイド鎮痛薬を増加させずに運動療法の導入やADL改善の意義について教育すべきであったと考えられる。このことは、慢性腰痛に対して長期安静がred flagとして認識されていることと同義である。よって本症例で慢性期に痛みが残存しておりオピオイド鎮痛薬を増量しても痛みが緩和しないことから、医師が安静を指示していたことは適切であるとは言い難い。また、器質的障害による疼痛(侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛)に対してオピオイド鎮痛薬を使用する場合には精神依存や濫用を引き起こしにくいことが基礎研究によって示されているが、この知見は言い換えるとオピオイド鎮痛薬を非器質的な疼痛に対して使用する場合には精神依存を防止し難いことを意味する。また、オピオイド鎮痛薬の血中濃度が乱高下すると精神依存を形成しやすい。したがって、日本ペインクリニック学会の指針でも、オピオイド鎮痛薬は器質的障害が明確な疼痛疾患に対して使用し、その使用時にはオピオイド鎮痛薬の血中濃度を一定にするために徐放製剤(2013年3月現在、非がん性慢性疼痛に対して保険適応を持つ製剤は、デュロテップMTパッチ®、トラムセット®、ノルスパンテープ®である)を使用することが推奨されている。また、このようなオピオイド鎮痛薬を使用する場合にも、非がん性慢性疼痛に対しては一日量として経口モルヒネ製剤120mg換算までにとどめることも推奨されている。これは、鎮痛薬を増量することとQOLの改善効果が必ずしも線形相関にはならず天井効果が現れることがあり、高用量では精神依存や濫用への懸念があるからである。さらに、オピオイド鎮痛薬の使用期間が長くなればなるほど精神依存や濫用、不適切使用が増加することも報告されており、オピオイド鎮痛薬の使用期間は可能な限り短期間にとどめなければならない。このほか、患者自身が鎮痛薬を管理する能力が低下している場合には、家族など患者の介護者にオピオイド鎮痛薬についての知識を教育し、その管理に関与するように指導することも重要である。本症例をまとめると、急性期の腰椎圧迫骨折に対してオピオイド鎮痛薬を早期から導入し、疼痛緩和とADLの改善を達成したことは適切であった。慢性期の腰痛に対して、オピオイド鎮痛薬を増量するとともに頓用させていた点は不適切であった。したがって、オピオイド鎮痛薬の使用にあたっては、治療指針などの推奨事項を十分に理解したうえで適切に使用し、そのことを患者に教育しなければならない。つまり、オピオイド鎮痛薬に対する精神依存や濫用の形成から患者を保護することは医師の義務であると同時に、これらが疑われる患者やオピオイド鎮痛薬の不適切使用が認められる患者に対しては、痛みの重症度にかかわらずオピオイド鎮痛薬を処方しないことは医師の権利であると考えている。

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rhBMP-2を用いた椎体間固定術で注意すべきこと

 遺伝子組換えヒト骨形成タンパク質-2(rhBMP-2)は、すでに欧米では脊椎固定などに広く使用されているが、異所性骨形成、局所の骨吸収、神経根炎などさまざまな合併症が知られている。米国・ニューヨーク大学病院のShaun D. Rodgers氏らは、rhBMP-2を用いた椎体間固定術後の再手術中に致命的な血管損傷が発生した症例について考察した。その結果、rhBMP-2によって誘発された宿主炎症反応が、血管線維化と瘢痕化の一因となり血管損傷が引き起こされた可能性を指摘し、「脊椎外科医はrhBMP-2使用時の合併症として炎症性線維化に注意しなければならない」とまとめている。Journal of Neurosurgery: Spine誌オンライン版2013年4月5日の掲載報告。 本論文は症例報告である。症例は、L4-5の脊椎すべり症(グレード1)を有する63歳の男性。1年前より難治性腰痛および神経根障害の悪化を来し、rhBMP-2を充填した椎体間ケージを用いた経椎間孔腰椎椎体間固定術(TLIF)が施行された。 その後の経過は以下のとおりであった。・症状はわずかに改善したが、1年半後には保存的治療に反応しない慢性腰痛と神経性跛行を呈した。 ・放射線学的画像診断の結果、ネジのゆるみと偽関節が認められた。・ケージの除去、椎間板切除および大腿輪留置を行うため、前方後腹膜アプローチにて再手術を施行した。・アプローチ中、腸骨静脈が瘢痕化および線維化を伴い以前手術したL4-5椎体間スペースに癒着していることが観察された。・モビライゼーション中に左腸骨静脈が破れ失血と心停止を来したが、心臓マッサージ、除細動および輸血にて回復し、手術は終了した。 ・数日後、患者の神経学的症状は消失した。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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慢性腰痛患者におけるオピオイド療法の効果はうつや不安に影響される

 非がん性慢性疼痛患者ではしばしば、抑うつや不安といったネガティブ感情がみられる。こうしたネガティブ感情は疼痛の強さと関連しており、オピオイド治療が長期化する可能性が高い。米国・ハーバード大学ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のRobert N. Jamison氏らは、ヒドロモルフォン徐放性製剤のプラセボ対照二重盲検試験について2次分析を行い、ネガティブ感情はオピオイド療法のベネフィットを減弱させ、臨床試験においては脱落の予測因子となることを報告した。Pain Practice誌2013年3月号(オンライン版2012年1月11日号)の掲載報告。 慢性腰痛を有するオピオイド耐性患者を対象としたヒドロモルフォン徐放性製剤のプラセボ対照二重盲検試験の2次分析を行い、試験開始時のネガティブ感情のレベルが治療関連予後を予測できるかについて検証した。 2~4週間の用量調節/変更期に459例が参加し、このうち268例がヒドロモルフォン群またはプラセボ群に無作為化された(二重盲検期)。 試験開始時、病院不安およびうつ尺度(HADS)を用いて評価し、そのスコアに基づきネガティブ感情が低群(157例)、中群(155例)、高群(147例)の3群に均等に分け、試験期間中に自宅や病院で測定した疼痛スコア、ローランドモリス障害スコア、主観的オピオイド離脱症状スコア(SOWS)を分析した。 主な結果は以下のとおり。・二重盲検期を完了したのは268例中110例であった。・ネガティブ感情が中および高群は、低群と比較して用量調節/変更期に有害事象または無効のため脱落例がより多かった(p<0.05)。・ネガティブ感情が中および高群は、低群と比較して疼痛スコア(p<0.05)およびローランドモリス障害スコア(p<0.01)が有意に高く、SOWSで高頻度に禁断症状がみられた(p<0.05)。・ネガティブ感情のスコアの高さは、用量調節期における試験薬に対する好感度の低さも予測した(p<0.05)。・プラセボ群では、ネガティブ感情が高群で最も大きな疼痛改善が示された(p<0.05)。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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I型の複合性局所疼痛症候群の運動障害には筋痛覚が関与している

 I型の複合性局所疼痛症候群(CRPS)患者でよく観察される運動障害に、感覚処理障害がどのような役割を果たしているかは、現在のところ不明である。オランダ・ライデン大学病院のDiana E. van Rooijen氏らは、初めてCRPSにおける感覚機能と運動機能との関連について研究を行い、筋痛覚がCRPSにおける運動制御の障害に重要な役割を果たしている可能性があることを明らかにした。The Journal of Pain誌オンライン版2013年3月27日の掲載報告。 本研究は、CRPS患者における感覚機能と運動機能との関連を調査することが目的であった。 対象は、ジストニアを伴うCRPS患者、ジストニアを伴わないCRPS患者および健常者(対照群)で、定量的感覚検査(QST)および指タップ運動機能解析を行った。  主な結果は以下のとおり。・両CRPS群は、寒冷刺激ならびに温熱刺激に対する温度覚鈍麻と、寒冷刺激に対する痛覚過敏を示した。 ・両CRPS群で筋痛覚過敏を反映する圧痛閾値の減少が認められ、とくにジストニアを伴うCRPS群で顕著であった。 ・両CRPS群および対照群において、圧痛閾値のみが指タップ運動機能のパラメータと相関した。 ・ジストニアを伴うCRPS群は、対照群およびジストニアを伴わないCRPS群と比較して2点識別覚が増強していた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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頸椎の軽度外傷による急性脊髄損傷のリスクはMRIで評価可能

 頸椎の軽度外傷後に急性脊髄損傷(SCI)を呈する患者が報告されているが、外傷の重症度と脊髄損傷の重症度が一致しない理由として脊柱管狭窄症の関与が考えられる。スイス・対麻痺センターのNikolaus Aebli氏らは、これまで脊柱管狭窄症の評価にはX線像における脊柱管/椎体比が用いられてきたが、椎間板レベルでの軟組織狭窄症や管狭窄を評価できないため、MRI画像におけるパラメータのほうが有用である可能性があることから、これを実証するためのレトロスペクティブな放射線学的研究を行った。その結果、椎間板レベルの脊柱管前後径カットオフ値を8mmとすることで、頸椎の軽度外傷後に急性SCIのリスクを有する患者を特定できることを報告した。The Spine Journal誌オンライン版2013年3月25日掲載の報告。 本研究の目的は、頸椎のMRIパラメータが軽度外傷後の急性SCIのリスクと重症度の予測に使用できるかを検討することであった。 対象は、連続する急性SCI患者52例(SCI群)および神経障害のない頸椎の軽度外傷患者131例(対照群)とした。 頸椎(C3~C7)のMRI矢状断面像(T2強調画像)にて、椎体前後径、頸椎中間位の脊柱管前後径、椎間板レベルでの脊柱管前後径および脊髄前後径を計測し脊柱管/椎体比、脊髄余裕空間、脊柱管/脊髄比を算出した。また、単純X線側面像にて椎体前後径と頸椎中間位での脊柱管前後径を計測し脊柱管/椎体比を算出し、SCIのリスク、重症度および経過を予測する各パラメータの分類精度を、ROC曲線を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・SCI群におけるすべてのMRIパラメータは、対照群と比較して有意に小さかった(p<0.001)。・椎間板レベルでの脊柱管前後径最小値が8.0mmをカットオフ値とした場合に、SCI予測に関する陽性予測値ならびに尤度比が最大となった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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デュロキセチン、がん化学療法薬による末梢神経障害に伴う疼痛を緩和/JAMA

 セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬デュロキセチン(商品名:サインバルタ)が、疼痛を伴う化学療法薬誘発性の末梢神経障害の軽減に有効なことが、米国・ミシガン大学のEllen M. Lavoie Smith氏らが実施したCALGB-170601試験で示された。タキサン系、プラチナ製剤、ビンカ・アルカロイド系、ボルテゾミブなどの化学療法薬により、がん患者の約20~40%に疼痛を伴う末梢神経障害が発現し、治療終了後も数ヵ月~数年にわたり持続する場合があるが、有効な治療法は確立されていない。同氏らは、第III相試験で疼痛を伴う糖尿病性神経障害に対する有効性が示されているデュロキセチンが、化学療法薬誘発性末梢神経障害に伴う疼痛の軽減にも有効ではないかと考えたという。JAMA誌2013年4月3日号掲載の報告。神経障害性疼痛の軽減効果をプラセボ対照クロスオーバー試験で評価 CALGB-170601試験は、化学療法薬誘発性末梢神経障害に伴う疼痛に対するデュロキセチンの効果を評価する二重盲検プラセボ対照クロスオーバー第III相試験。 対象は、25歳以上、化学療法薬(パクリタキセル、オキサリプラチン、ドセタキセル、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル、シスプラチン)によって誘発された末梢神経障害と診断され、治療終了後3ヵ月以上持続するGrade 1以上の神経障害性の疼痛(NCI-CTCAE ver3.0)を伴う患者とした。がん種や進行度は問わなかった。 これらの患者が、化学療法薬および疼痛リスクで層別化されたのち、デュロキセチン治療後にプラセボ投与に切り替える群(A群)またはプラセボ投与後にデュロキセチン治療に切り替える群(B群)に無作為に割り付けられた。両群とも5週の治療を行い、2週休薬後にクロスオーバーしてさらに5週の治療を行った。投与量は第1週が30mg/日、第2~5週は60mg/日とした。 疼痛の重症度の評価には、簡易的疼痛評価用紙短縮版(Brief Pain Inventory-Short Form)の疼痛スコアを用いた(疼痛なしを0とし、重症度を1~10で評価)。とくにオキサリプラチンによる疼痛に有効な可能性が 2008年4月~2011年3月までに220例(平均年齢59歳、女性63%、パクリタキセル40%、オキサリプラチン59%、乳がん38%、消化器がん56%)が登録され、A群に109例、B群には111例が割り付けられた。フォローアップは2012年7月まで行われた。 最初の5週の治療における疼痛スコアの低下は、デュロキセチン治療(A群)が平均1.06[95%信頼区間(CI):0.72~1.40]と、プラセボ(B群)の0.34(95%CI:0.01~0.66)に比べ有意に優れていた(p=0.003)。低下した疼痛スコアの両群間の差は0.73(95%CI:026~1.20)だった。 最初の5週の治療で疼痛が軽減したと答えた患者の割合は、デュロキセチン治療が59%と、プラセボの38%に比べ高かった。デュロキセチン治療の30%が疼痛は不変とし、10%は増大したと答えた。 クロスオーバー後の治療期間中の疼痛スコアの低下は、プラセボ(A群)が0.41(95%CI:0.06~0.89)、デュロキセチン治療(B群)は1.42(95%CI:0.97~1.87)であり、低下した疼痛スコアの差は1.01(95%CI:0.36~1.65)であった。 著者は、「デュロキセチン治療はプラセボに比べ、化学療法薬誘発性の末梢神経障害による疼痛の軽減効果が統計学的、臨床的に有意に良好であった」と結論し、「探索的解析では、デュロキセチンはタキサン系薬剤よりもオキサリプラチンによる末梢神経障害性疼痛に有効な可能性が示唆された」と述べている。

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脊椎大手術における硬膜外麻酔および持続硬膜外鎮痛の有用性

 硬膜外麻酔は、術後硬膜外鎮痛の有無にかかわらず手術侵襲反応を軽減する可能性があることが示唆されているが、脊椎大手術を受ける患者については十分な研究がされていなかった。今回、ロシア・Nizhny Novgorod Research Institute of Traumatology and OrthopedicsのAnna A.Ezhevskaya氏らによる前向き無作為化試験の結果、硬膜外麻酔/全身麻酔+術後硬膜外鎮痛の併用は、全身麻酔+麻薬性鎮痛薬の全身投与と比較して、疼痛をより良好にコントロールでき、出血量ならびに手術侵襲反応も少ないことが示された。Spine誌オンライン版2013年3月19日の掲載報告。 本研究の目的は、脊椎再建手術における臨床転帰と手術侵襲反応に対する麻酔ならびに鎮痛法の有効性を比較検討することであった。 85例が次の2群に無作為に割り付けられた。 ・E群(45例):セボフルラン(商品名:セボフレンほか)による硬膜外麻酔と気管内麻酔+術後ロピバカイン(同:アナペイン)、フェンタニル(同:フェンタニルほか)およびエピネフリン(同:ボスミンほか)による持続硬膜外鎮痛 ・G群(40例):セボフルランによる全身麻酔+術後フェンタニルおよびオピオイド全身投与 術中および術後にコルチゾール、グルコース、IL-1β、IL-6およびIL-10濃度を測定するとともに、術後の疼痛、悪心、運動性および満足度を評価した。 主な結果は以下のとおり。・E群ではG群と比較して、疼痛、悪心が有意に少なく、より早期に運動を開始することができ、満足度も有意に高かった。・E群は、術中および術後の出血量が有意に少なく、術後のグルコース、コルチゾール、IL-1β、IL-6およびIL-10濃度も低値であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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整形外科医によるインプラントや器具の選択に影響するものは何か?

 整形外科領域のインプラントや器具の製造メーカーは、整形外科医がそれらを選択する際の意思決定に影響を与えるべく多くの資金をかけて資材を制作しているが、オンライン調査の結果、整形外科医はそのような資材より独立して査読された情報源を好むことがわかった。本調査を行ったドイツ・リューベック大学のArndt P. Schulz氏らは、マーケット活動に人員を割くより、論文審査の対象となる研究プロジェクトに資金を向けたほうがはるかに効果的ではないかとまとめている。BMC Musculoskeletal Disorders誌2013年3月14日の掲載報告。 Schulz氏らは、新しいインプラントまたは器具を導入する際に、整形外科医が選択の根拠とする情報源の主観的な有用性および利用について評価することを目的とした。 オンライン調査を行い、世界中の整形外科医1,174名(うち305名はその部門の責任者)から回答を得た。 アンケートは34項目からなり、質問形式は回答が一つのクローズ質問、または回答が複数あるセミオープン質問であった。回答期間は2週間で、1回のみ回答可とした。質問には回答者の背景として国、経験レベル、整形外科の専門分野が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・治療の決定に最も影響を与えたのは、独立した科学的証拠であった。・一方、最も影響が少なかったのは、ニュースレター、白書あるいはワークショップなどメーカー主導の活動であった。・回答が多かった3ヵ国(ドイツ、イギリス、アメリカ)を比較すると、いくつかの大きな違いが認められた。・科学論文や学会は、すべての国の整形外科医が非常に重要視していた。なかでもアメリカでは、英国やドイツに比べ有意に重視する傾向が示された。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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むち打ち関連障害(外傷性頸部症候群)の治療、活動への恐怖心軽減が重要

 外傷性頸部症候群(whiplash-associated disorders:WAD)では、活動への恐怖と回避が障害を助長する一因となる可能性がある。米国・ワシントン大学のJames P. Robinson氏らは、WAD患者を対象に恐怖の役割について検討し、恐怖を軽減させることが治療効果に影響を及ぼすことを明らかにした。Pain誌2013年3月号(オンライン版2012年12月1日)の掲載報告。 Robinson氏らは、WAD後の恐怖の役割を検討するため、3つの治療法の有効性を評価した。 対象は約3ヵ月間症状を有するグレードI~IIのWAD患者191例で、次の3群のいずれかに無作為に割り付け、Neck Disability Index(NDI)等の質問票を用いて評価した。 IB群:WADおよび活動再開の重要性を解説している小冊子の提供 DD群:小冊子提供+医師による説明 ET群:小冊子提供+恐れている活動に対する想像および直接的な曝露療法 (DD群およびET群の患者は2時間の治療を3回受けた) 主な結果は以下のとおり。・NDIスコアの改善は予想どおりET群が最も大きかった(絶対値:ET群14.7、DD群11.9、IB群9.9)。・治療後の疼痛スコアは、ET群がIB群ならびにDD群と比較して有意に低かった(ET群vs IB群:1.5 vs 2.3、p<0.001/ET群vs DD群:1.5 vs 2.0、p=0.039)。・NDIスコアの改善における最も重要な予測因子は、恐怖心の軽減(β=0.30、p<0.001)で、次いで痛みの軽減(β=0.20、p=0.003)、うつ症状軽減(β=0.18、p=0.004)であった。・以上から、亜急性期の外傷性頸部症候群においては、曝露療法や教育的介入による恐怖への対処が重要であることが示唆された。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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慢性腰痛症の高齢者、体重が痛みや歩行時間と関連

 腰痛を有する高齢者で肥満者は過体重者より、歩行および階段昇段時の疼痛が強く腰椎の強度が低いことが、米国・フロリダ大学のHeather K. Vincent氏らの比較記述的研究で示された。腰椎伸展強化を含むリハビリテーション戦略は機能的な可動性と歩行時間を改善し、そのどちらも慢性腰痛症を有する肥満高齢者の体重管理に役立つ可能性がある、とまとめている。American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation誌オンライン版2013年3月8日号掲載の報告。 対象は慢性腰痛を有する過体重以上の高齢者(60〜85歳)55人で、BMIに基づき過体重群(25~29.9kg/m2)、肥満群(30~34.9kg/m2))、高度肥満群(35kg/m2)以上)に分け、機能検査(歩行耐久、椅子立ち上がり、階段昇段、7日間の行動監視および歩行パラメータ)を行うとともに動作時の痛みの程度を評価した。  主な結果は以下のとおり。・歩行および階段昇段中の疼痛スコアは、高度肥満群が最も高く過体重群と比較して有意差を認めたが(p<0.05)、機能検査スコアにおいてはBMIによる有意差はみられなかった。・高度肥満群は、過体重群と比較して歩行時の支持基底面が36%多く(p<0.05)、片脚支持時間/両脚支持時間は3.1%~6.1%高値であった(p<0.05)。・女性は男性より椅子立ち上がりと階段昇段が緩徐で、歩行速度も遅かった。・毎日の歩数は、過体重群および肥満群と比較して高度肥満群が最も低かったが(1日当たり4,421歩 vs 3,511歩vs 2,971歩、p<0.05)、性別による差はみられなかった。・腰椎伸展、腹筋カールアップ、レッグプレスの強度は高度肥満群で最も低かった。また、3つのエクササイズすべてにおいて女性は男性より18%~34%低かった(p<0.05)。・腰椎伸展の強度は階段昇段、椅子立ち上がり、歩行耐久時間と関連していた。・BMIは、1日当たりの歩数ではなく歩行耐久時間の独立した予測因子であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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100歳以上を理由に、股関節骨折手術の対象から除外すべきではない

 大腿骨近位部は骨粗鬆症により骨折しやすい部位である。米国では100歳以上の超高齢者における股関節骨折が増加しているが、こうした症例の機能的予後と死亡率に関する報告は少ない。米国・トーマス ジェファーソン大学病院のT. David Tarity氏らは、レトロスペクティブな調査を行い、100歳以上で手術した高齢者の死亡率は容認できるものであり、年齢を理由に股関節骨折手術の対象から除外すべきではないとの考えを示した。Orthopedics誌2013年3月1日号の掲載報告。 本研究の目的は、100歳以上の股関節骨折患者の死亡率を評価し、手術介入が安全で適切であるかどうかを検討することであった。 2003年~2010年に股関節骨折の治療を受けた100歳以上の高齢者23例(女性22例、男性1例)について調査した。死亡日の確認は、患者のカルテや社会保障死亡指数を使用した。  主な結果は以下のとおり。・23例中21例は手術治療を、2例は保存的治療を受けていた。 ・Charlson併存疾患指数平均値は2(範囲0~5)であった。 ・股関節骨折時の平均年齢は101.9歳、死亡時の平均年齢は102.8歳であった。・手術治療群において、累積入院日数が30日未満、30日~、90日~、6ヵ月~、12ヵ月~、2年~、3年~および6年~である患者の死亡率はそれぞれ15%、20%、30%、45%、60%、70%、90%、95%であった。 ・保存的治療群は2例全例が90日以内に死亡した。 ・手術治療群のうち1例は、術後6年が経過してもなお生存している。・術後合併症は9例(43%)にみられた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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痛みと大脳メカニズムをさぐる

神経障害性疼痛の大脳レベルのメカニズム神経障害性疼痛のメカニズムについては、末梢神経の一次ニューロンあるいは脊髄レベルでの研究が非常に進んだのですが、その一方で大脳レベルでのメカニズムも明らかにされてきています。脳の一次体性感覚野と一次運動野には、体部位再現地図(somatotopy)があり、身体各部位からの感覚入力や身体各部位への運動指令の出力を担う脳領域が決まっています。神経障害に伴って末梢神経からの入力がなくなると、その地図が描き換わることがわかっています。具体的には、腕を切断された後に起こる幻肢痛の患者さんの体部位再現地図を調べてみると、手の領域がなくなってしまい、その代わり手の領域の隣にある顔の領域が拡大しています。脊髄損傷の患者さんの場合では、足の領域や腰の領域がなくなる代わりに顔や手の領域が拡大しています。神経障害性疼痛を発生している患者さんは体部位再現地図の描き換えが明確に現れますが、神経障害があっても痛みのない方は描き換えが非常に少ないことがわかっており、体部位再現地図の描き換えが、痛みの発症に関わっていると考えられています。リハビリテーションなどにより神経の入力を増やす治療を行うと、体部位再現地図は再び描き直されて、それとともに痛みが軽減してくることもわかっています。体部位再現地図の描き換えは、末梢からの感覚入力がなくなった神経系のために脳の神経細胞のスペースを使うのは無駄である、その代わり感覚入力のある神経系に利用してもらおう、という生体の代償的な反応と考えられます。なぜ、脳の地図が描き換わると痛みが起こるのかは今のところわかっていません。描き換わるときに、エラーとして痛みの信号を発生してしまうのだと考えられます。 画像を拡大する新しいリハビリテーションの可能性神経リハビリテーションにはさまざまなものがありますが、従来から行われている理学療法や作業療法以外に、私たちの施設では鏡を使った治療を行っています。対象となるのは、脊髄損傷や腕の切断あるいは腕神経叢引き抜き損傷といった運動麻痺を伴う神経障害性疼痛の患者さんです。身体の中央に鏡を立て掛けて健常な手あるいは足を動かすと、あたかも鏡の中で患肢が動いているようなイメージを作ることができます。この鏡を使ったイメージトレーニングにより、脳内の地図が新たに描き換えられることが示されています。われわれはこの治療法で痛みや患肢の運動麻痺が軽減した患者さんをたくさん経験しています。画像を拡大するさらに、より有効な治療法として、リハビリテーション支援ロボットスーツを開発しています。健肢の運動を、人工筋肉によって麻痺している患肢に模倣させる装置です。鏡の治療では視覚的な入力だけですが、リハビリテーション支援ロボットスーツでは実際に患肢が運動をします。したがって、視覚的な情報だけではなくて、筋肉の伸び縮みや関節の屈伸といった体性感覚情報も脳にフィードバックされるので、より強力に運動のイメージを脳内につくることができると期待しています。これから患者さんの協力を得て、臨床応用を進めたいと計画しています。痛みの破局的思考痛みと一次体性感覚野、運動野の関連性は明らかになってきたものの、実際の患者さんでは心理的要因が強く影響します。痛みの事を何度も考えてしまう、痛みを必要以上に大きな存在と考えてしまう、自分が感じている痛みは救い(治療法)がないと考えてしまう、などの性格的な傾向を持つ方がいます。こういった考え方を痛みの破局的思考と呼んでいますが、このような患者さんでは、心の問題が痛みの認識を歪め、不眠や不安、痛みに対する恐怖、抑うつ症状を引き起こし、その結果、行動制限が生じ、ひいては身体機能障害をもたらすという悪循環が起こります。近年では、このような心の問題による痛み悪化のメカニズムに、脳の扁桃体、島皮質、前頭前野という理性・感情・気分を司る領域が関連しているという事も明らかになっています。画像を拡大する脊髄刺激療法の有用性最後に脊髄刺激療法のお話をさせていただきます。神経障害性疼痛で薬物療法抵抗性であったり、あるいは高齢の患者さん等で副作用が忍容できない症例では、脊髄刺激療法を施行します。脊椎硬膜外腔に電気のリードを入れて脊髄を刺激することによって、疼痛を感じている範囲に電気的な刺激を与えて痛みを緩和させる治療法です。鎮痛効果のメカニズムとしては、痛み情報を伝える神経伝達物質の分泌を抑える、抑制性の神経伝達物質の分泌を促進する、脊髄レベルで神経細胞の興奮を抑える、といった作用が報告されています。障害されている神経レベルよりも上位の脊髄領域を電気刺激することで鎮痛効果が得られる患者さんがたくさんいますので、大脳レベルでも効果を発揮しているのではないかとわれわれは考えています。まず電気リードだけを硬膜外腔に挿入して治療効果の確認をし、効果が得られれば皮下に電気の発生装置であるジェネレーターを植え込みます。患者さんは自宅でも痛みが強くなったときにスイッチを入れることで痛みを緩和できます。合併症は、非常にまれですが感染が起こる可能性があります。薬物療法と違って眠気や便秘などの副作用は起こりません。最近は治療機器が進歩して小型化され、10年くらい電池寿命があるジェネレーターも使用できるようになり、より有用性が高くなっています。このように、研究の進歩により痛みのメカニズムが解明されると共に日々新たな治療法が開発されています。

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人工膝関節全置換術後の患膝の痛みは、対側膝の痛みと関連するか?

 人工膝関節全置換術(TKA)後の患膝の持続的な痛みは、反対側の膝の痛みにつながる可能性が示唆されている。しかし、英国・ブリストル大学のH.K. Smith氏らがKinemax Outcomes Studyのコホートで調査した結果、TKA術後3ヵ月における患膝の疼痛は術後2年までの対側膝の症状増悪と関連していなかった。著者は、対側膝に関しては、症状について問診する以外に追加の観察は必要なかったとまとめている。The Journal of Bone & Joint Surgery誌2013年2月20日号掲載の報告。 Kinemax型人工膝関節を用いて初回片側TKAを施行した変形性関節症患者772例(Kinemax Outcomes Studyのコホート)を対象に、患膝の術後疼痛が対側膝の痛みの自然経過と関連するかを検討した。 術前および術後3、12、24ヵ月に患膝と対側膝それぞれの痛みをWOMAC(Western Ontario McMaster University arthritis index)(100点満点、100点が最もよい状態)で評価した。 対側膝のWOMAC疼痛スコアの変化が、術後3ヵ月における患膝のWOMAC疼痛スコアと関連があるかどうかを、性別、年齢、国籍、BMIなどで調整し解析した。 主な結果は以下のとおり。・患膝および対側膝のいずれも、術前に比べ術後3ヵ月に疼痛が改善した。・対側膝のWOMAC疼痛スコアは3.5/年(標準偏差9.8/年)悪化した(p<0.001)。・しかし、術後3ヵ月における患膝のWOMAC疼痛スコアとの関連性は認められなかった(p>0.6)。・著者は、「対側膝に関しては、症状について問診する以外に追加の観察は必要なかった」と結論している。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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「頻発する腰痛」と「頭痛」の関係

 頻発する腰痛と、慢性片頭痛ならびに慢性緊張型頭痛とは関連があることが、ドイツ・頭痛コンソーシアム研究において示された。腰痛と頭痛との関連についてドイツ・エッセン大学病院のMin-Suk Yoon氏らは、異常な全身痛の処理の一部という概念も含め複数の可能性が考えられるとまとめている。Pain誌2013年3月号(オンライン版2012年12月28日号)の掲載報告。 ドイツの一般住民を対象に、腰痛と慢性片頭痛ならびに慢性緊張型頭痛との関係を評価した。 頭痛は、国際頭痛分類第2版にしたがって診断し、頻度(発作性:1~14日/月、慢性:15日以上/月)と種類(片頭痛、緊張型頭痛)によって分類した。 腰痛は、自己報告により15日以上/月の場合を「頻発腰痛」と定義した。 主な結果は以下のとおり。・前年に頭痛があったと報告した回答者は5,605人で、255人(4.5%)は慢性であった。・5,605人中、片頭痛は2,933人、緊張型頭痛は1,253人で、そのうちそれぞれ182人(6.2%)および50人(4.0%)が慢性であった。・9,944人の回答者のうち腰痛があったと報告した回答者は6,030人で、そのうち1,267人(21.0%)が頻発腰痛であった。・頻発腰痛のオッズ比は、すべての頭痛サブタイプで頭痛なし群と比較し2.1(95%CI:1.7~2.6)~2.7倍(同:2.3~3.2)であった。・慢性頭痛の場合はさらに高く、すべてのサブタイプで13.7(同:7.4~25.3)~18.3倍(同:11.9~28.0)であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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腰痛患者の椎体骨折スクリーニングで“レッドフラッグ”の診断精度は低い

 各国の腰痛診療ガイドラインでは、椎体骨折など追加検査や特別な治療を要する病変を有している可能性が高い患者を特定するため“レッドフラッグ”の使用を勧告している。しかし、オーストラリア・シドニー大学のChristopher M Williams氏らによるシステマティックレビューの結果、ほとんどのレッドフラッグが椎体骨折のスクリーニングには役に立たないことが明らかとなった。レッドフラッグを複数組み合わせた場合は有用性が改善する可能性はあるものの、多くは偽陽性率が高く、レッドフラッグに基づいた腰痛の診療は医療費と治療成績に影響するだろうとまとめている。Cochrane database of systematic reviews 2013年1月31日掲載の報告。 腰痛患者における椎体骨折のスクリーニングに関する“レッドフラッグ”の診断精度を評価することを目的とした。 電子データベースから主要な研究論文ならびに被引用・引用論文を検索し(最も初期から2012年3月7日まで)、腰痛患者の既往歴や検査結果を参照基準(画像診断)の結果と比較した研究を2名のレビュアーが別々に選択した。 3名のレビュアーがそれぞれ、11項目からなる診断精度研究の質評価(QUADAS)ツールを用いてバイアスリスクを評価するとともに、研究デザインの特性、患者、指標検査および参照基準に関するデータを抽出して各検査に関する尤度比を算出し、臨床的有用性の指標とした。 主な結果は以下のとおり。・8件の研究(プライマリ・ケア4件、二次医療1件、三次医療[救命救急]3件)がレビューに組み込まれた。・バイアスリスクは中等度で、指標検査と参照基準の報告は不良であった。・椎体骨折の有病率は、プライマリ・ケアで0.7~4.5%、3次医療で6.5~11%であった。・指標検査は29種あったが、2件以上の研究で採用されたのは2種だけであった。・陽性尤度比が得られた“レッドフラッグ”は、プライマリ・ケアでは3項目あったものの大部分は不正確であった(著しい外傷、年齢[高齢]、ステロイド使用:尤度比推定値範囲はそれぞれ3.42~12.85、3.69~9.39、3.97~48.50)。一方、3次医療では1項目であった(挫傷/擦過傷:尤度比推定値31.09、95%CI:18.25~52.96)。・複数の“レッドフラッグ”の組み合わせは、陽性尤度比が大きく単独より有用と思われた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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パーキンソン病患者は骨折リスクが高い

 パーキンソン病(PD)患者は非PD患者と比べ骨折リスクが有意に高いことが、オランダ・ユトレヒト大学のS. Pouwels氏らが行った後向きコホート研究で明らかになった。PD患者では、一般的な骨折リスクとされる高齢者および女性のほかにも、最近の選択的セロトニン再取込み阻害薬または高用量抗精神病薬の使用歴、骨折歴、転倒、BMI低値、腎疾患がある場合は骨折リスクを評価することが望ましいと考えられる。Osteoporosis International誌オンライン版2013年2月22日掲載報告。 研究の目的は、新規発症PD患者の骨折リスクを治療、重症度、罹病期間および関連合併症で層別化し評価することであった。  英国のGeneral Practice Research Database(GPRD)を用い、1987年から2011年の間にPDと初めて診断された4,687例を同定し、年齢、性別、出生年および診療所をマッチさせた非PD患者(対照群)と比較した。 主な結果は以下のとおり。・PD患者は対照群と比較して全骨折、骨粗鬆症性骨折および股関節骨折のいずれも骨折リスクが有意に増加した(全骨折 補正ハザード比(AHR):1.89、95%CI:1.67~2.14/骨粗鬆症性骨折 AHR:1.99、95%CI:1.72~2.30/股関節骨折 AHR:3.08、95%CI:2.43~3.89)。・骨折リスクは、骨折歴、転倒、BMI低値、腎疾患、抗うつ薬の使用および抗精神病薬の高用量使用により増加した。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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大腿骨転子部骨折に対するINTERTANの治療成績はsliding hip screwと類似

 大腿骨転子間・転子下骨折の治療では髄内釘またはsliding hip screwが用いられる。ノルウェー・ベルゲン大学ハウケランド病院のKjell Matre氏らは多施設前向き無作為化比較試験を行い、TRIGEN INTERTAN nail使用時の術後12ヵ月における疼痛、運動機能および再手術率はsliding hip screws使用時と類似していることを示した。The Journal of Bone & Joint Surgery誌2013年2月6日号の掲載報告。 本研究は、転子間・転子下骨折患者に対するTRIGEN INTERTAN nailの使用がsliding hip screw(SHS)使用時と比較して術後疼痛を軽減し、運動機能を改善させ、外科合併症の発生率を減少させるかどうかを評価することが目的であった。 転子間・転子下骨折高齢患者684例をINTERTAN群またはSHS群に無作為化し、入院中、術後3ヵ月および12ヵ月に疼痛(視覚アナログ尺度;VAS)、運動機能(Timed Up & Go Test)、股関節機能(Harris hip score)、QOL(EuroQol-5D;EQ-5D)を評価した。X線所見ならびに術中・術後合併症についても記録・分析した。 主な結果は以下のとおり。・INTERTAN群において術後早期の動作時疼痛VASスコアがわずかに低かったが(48対52、p = 0.042)、入院期間への影響はなく、術後3ヵ月および12ヵ月では両群に差はみられなかった。・骨折およびインプラントのタイプにかかわらず、術後3ヵ月および12ヵ月における運動機能、股関節機能、患者満足度およびQOLは、両群で類似していた。・術後の外科的合併症の発生は両群で同程度であった。(INTERTAN群32例、SHS群29例、p=0.67)。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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患者評価の変形性関節症治療の疼痛改善報告、実臨床と臨床試験で異なる

 疼痛管理をより適切に行うため患者自身による治療効果評価(Patient-reported outcomes;PRO)尺度が開発されているが、フランス・INSERM/パリ第5大学のSerge Perrot氏らによる多施設前向きコホート研究の結果、患者が容認できる症状状態(patient acceptable symptom state:PASS)スコアならびに疼痛が改善したと報告した患者の疼痛スコアの変化の最小値(minimal clinically important improvement:MCII)は、実臨床と臨床試験とで異なっていることが明らかとなった。疼痛を伴う変形性関節症の治療効果は関節症の部位に左右される可能性があるという。個々の患者に応じた疼痛管理を行うため、治療効果の評価は患者の特性や日常生活に適したものでなければならない、とまとめている。Pain誌2013年2月号(オンライン版2012年10月30日号)の掲載報告。 変形性膝関節症または変形性股関節症に対する日常の疼痛管理におけるPASSおよびMCIIのカットオフ値を決めることが目的であった。 対象は、一般開業医を受診し7日以上治療を要した50歳以上の疼痛を有する変形性膝関節症または変形性股関節症患者2,414例である(男性50.2%、平均年齢67.3歳、BMI 27.9kg/m2、変形性股関節症33.5%)。 主な結果は以下のとおり。・治療7日後のPASSスコアは、変形性膝関節症患者および変形性股関節症患者のいずれも疼痛の数値評価スケール(以下、疼痛スケール)で安静時4ならびに動作時5と推定された。これは、臨床試験におけるPASSより高値であった。・PASSを得られやすかったのは、変形性膝関節症では男性、非高齢患者、治療開始時において安静時または動作時の疼痛スケールが低い非高齢者、特にスポーツ活動での疼痛の影響が最も大きかった患者、変形性股関節症では治療開始時の安静時疼痛スケールが低かった患者および非肥満患者であった。・治療7日後のMCIIは、変形性膝関節症患者および変形性股関節症患者のいずれも、安静時ならびに動作時ともに疼痛スケールで-1であった。この改善の度合いは、ランダム化比較試験で記録された値より小さかった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中! ・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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腰椎椎間板切除術、日帰り手術により短期合併症が減少

 腰椎椎間板切除術は最も頻度の高い脊椎手術で、外来でも実施可能である。同外来手術は、低コストでより大きな患者満足度が得られ安全性に問題はないことがこれまで報告されていたが、今回、米国・アイオワ大学病院のAndrew J. Pugely氏らによる前向きコホート研究において、入院手術に比べ術後短期合併症が少ないことが確認された。腰椎椎間板切除術を行う場合、適切な症例には外来手術を考慮すべきであるとまとめている。Spine誌2月1日号の掲載報告。 本研究の目的は、単一レベル腰椎椎間板切除術後30日以内の合併症発生率を入院手術および外来手術で比較するとともに、合併症の独立した危険因子を同定することであった。 2005~2010年に、米国外科学会の外科手術質改善プログラム(NSQIP)データベースを用い医師診療行為用語(CPT)コードに基づいて初回単一レベル腰椎椎間板切除術を受ける患者4,310例を選出した。 術後30日以内の合併症発生率ならびに術前患者特性について検討した。統計解析は、傾向スコアマッチング法および多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・4,310例中、2,658例(61.7%)が入院手術、1,652例(38.3%)が外来手術であった。・合併症発生率は、未調整時ならびに傾向スコアマッチング後のいずれも入院手術群が外来手術群より高率であった(未調整時6.5% vs 3.5%、p<0.0001/マッチング後5.4% vs 3.5%、p=0.0068)。・多変量ロジスティック回帰分析でも、入院手術で合併症発生率が有意に高率となることが示された(調整済みオッズ比:1.521、95%CI:1.048~2.206)。・年齢、糖尿病、術前創傷感染、輸血、手術時間および入院手術が術後短期合併症の独立した危険因子であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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