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水痘、帯状疱疹ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第2回

今回は、ワクチンで予防できる疾患、VPD(vaccine preventable disease)の第2回のテーマとして、「水痘(水ぼうそう)と帯状疱疹」を取り上げる。医療者の多くにとって、水痘と帯状疱疹は気にも留めないようなありふれた疾患かもしれない。しかし、水痘は、時に重症化し、しかも空気感染によって容易に伝播する。成人、中でも妊婦にとっては最も避けたい感染症の1つである。また、同じ水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)によって発症する帯状疱疹は、神経痛によりQOLを大きく低下させてしまう。このような水痘・帯状疱疹を予防するには、ワクチンが有効かつ重要である。現在、VZVに対してわが国で使用できるワクチンは2種類ある。従来の水痘生ワクチンと、2020年1月に発売された、帯状疱疹予防に特化した不活化ワクチンである。本稿では、水痘と帯状疱疹の特徴と疫学、そしてワクチンの活用法と注意点について取り上げたい。水痘、帯状疱疹の概要1)水痘(1)水痘の概要感染経路:空気感染、飛沫感染潜伏期:約14日間周囲に感染させうる期間:水疱が痂疲化するまで感染力(R0:基本再生産数):8-101)学校保健法:第2種(出席停止期間:すべての発しんがかさぶたになるまで)感染症法:5類(入院例に限る)注)R0(基本再生産数):集団にいるすべての人間が感染症に罹る可能性をもった(感受性を有した)状態で、1人の感染者が何人に感染させうるか、感染力の強さを表す。つまり、数が多い方が感染力は強いということになる。(2)水痘の臨床症状全身性の水疱性発疹と発熱を来たし、多くは軽症で自然に軽快する。しかし成人では、肺炎などの皮膚外病変により重症化しやすく、成人の死亡率は小児の約8倍にもなる2)。成人の中でも最もハイリスクなのは、妊婦である。妊娠第1・2三半期の初感染では先天性水痘症候群(胎児水痘症候群)のリスクとなり、妊娠第3三半期の初感染では10~20%で水痘肺炎を併発し、時に致死的となる3)。さらに分娩5日前から48時間後では重篤な新生児水痘を生じうる3)。そのため、水痘未感染の妊婦への感染予防は、極めて重要である。しかしながら、水痘は感染が広がりやすく、1人の感染者から平均8~10人に感染させうる。家庭や職場での空気感染対策は困難であり、ワクチン接種は重要な感染予防策である。(3)水痘の疫学水痘の罹患率は、ワクチンの定期接種化により激減している(図)。ワクチンギャップや、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)への曝露機会の減少により、水痘の抗体を獲得しないまま成人する層が一定数いると思われる。現在、水痘の報告者数のほとんどは小児だが、今後は成人の水痘例が増加するかもしれない。図 水痘の年間患者数の推移画像を拡大する2)帯状疱疹について(1)帯状疱疹の概要と臨床症状感染経路:接触感染、空気感染周囲に感染させうる期間:皮疹が痂疲化するまでVZVは水痘罹患後に仙髄・腰髄の後根神経節に潜伏感染し、宿主の加齢や免疫力低下に伴う細胞性免疫の低下により再活性化し、帯状疱疹を起こす。発症すると皮膚分節に沿ったチクチクとした痛みに続いて、水疱を伴う皮疹を生じる。多くの場合は片側性であるが、免疫抑制者では全身に広がる汎発性帯状疱疹となりうる。皮疹は7~15日前後で痂疲化し、感染性がなくなる。合併症としては帯状疱疹後神経痛(Post herpetic neuralgia:PNH)が最も多く、ほかにラムゼイ・ハント症候群、脊髄炎、遅発性の脳梗塞などがある。(2)帯状疱疹の疫学帯状疱疹は、約3人に1人が一生のうちに1度以上経験するとされる5)。小豆島における50歳以上の成人を対象とした前向きコホートによると、帯状疱疹の罹患率は4~10人/1,000人年、PHNは2.1/1,000人で、いずれも年齢が上がるにつれて罹患率も上がる6)。帯状疱疹の罹患率は、水痘ワクチン導入後に増えており7,8)、水痘の流行規模の縮小により、自然感染によるブースターの機会が減ったことが原因ではないかと考えられている。実際に、水痘を発症した小児と暮らす成人では、10~20年後に帯状疱疹が発症するリスクは約30%減ると報告されている9)。ワクチンの概要(効果、副反応)と接種スケジュール水痘の予防には水痘生ワクチンが、帯状疱疹の予防には、水痘生ワクチンと帯状疱疹不活化ワクチンの2種類が使用される。1)水痘の予防(表1)画像を拡大する(1)効果発症予防効果は、1回接種で約80%、2回接種で93%である。重症化は、1回接種で約99%、2回接種で100%予防する1)。(2)副反応ワクチン接種により一般的な副反応のほか、水痘ワクチンに特異的な副反応としては、接種後1~3週間後に発熱、3~5%に水痘様発疹がみられることがある。(3)禁忌妊婦、明らかな免疫抑制状態にある人、このワクチンによる重度のアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を呈した既往のある人(4)注意事項生ワクチン接種後は、2ヵ月間は妊娠を避ける。2)帯状疱疹の予防2種類のワクチンを使用することができる(表2)。発症予防効果は不活化ワクチンでより高い。費用が高額であること、副作用が多いことを許容できるならば、不活化ワクチンを活用したい。画像を拡大する以下、不活化ワクチンについて述べる。(1)効果帯状疱疹の発症予防効果は、水痘生ワクチンより不活化ワクチンで高いことが知られている。不活化ワクチン2回接種による帯状疱疹の発症予防効果は50歳以上で97.2%、70歳以上で89.8%、帯状疱疹後神経痛は50歳以上で100%、70歳以上で85.5%である10)。一方の水痘生ワクチンでは、50歳以上における帯状疱疹発症抑制率は51%、帯状疱疹後神経痛の減少率は66%である 。ただし、いずれも免疫原性の持続が証明されているのは10年未満11,12)であり、今後は追加接種などが議論になる。(2)副作用不活化ワクチンの方が、生ワクチンよりも副作用の頻度が高い。生ワクチンの臨床試験の結果では、局所性(注射部位)の副反応が80.8%に認められ、主なものは疼痛(78.0%)、発赤(38.1%)、腫脹(25.9%)であった。全身性の副反応は64.8%に認められ、主なものは筋肉痛(40.0%)、疲労(38.9%)、頭痛(32.6%)であった。他のワクチンに比較して局所性副反応の頻度は高いが、いずれも3日前後で消失することがわかっている10)。(3)禁忌両者とも、このワクチンによる重度のアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を呈した既往のある人。水痘生ワクチンでは妊婦、明らかな免疫抑制状態にある人。(4)対象対象は慢性疾患をもつ50歳以上の成人で、とくに慢性腎不全、糖尿病、関節リウマチ、慢性呼吸器疾患をもつ人に推奨される13)。日常診療で役立つ接種ポイント1)妊娠を希望する女性に対する、水痘ワクチン先に述べたように、妊婦の水痘は重症化のリスクが高い。妊娠中の水痘は何としても防ぎたい。水痘の罹患歴がなく、かつ水痘ワクチンの接種歴のない女性が妊娠を希望する際には、プレコンセプションケアの1つとして水痘ワクチンを接種しておきたい。また、接種後2ヵ月間は妊娠を避けるように伝える必要もある。2)50歳以上に対する帯状疱疹予防のワクチン水痘の罹患歴がある50歳以上の成人には、帯状疱疹不活化ワクチンの2回接種もしくは水痘ワクチンの1回接種を勧めたい(免疫抑制者など生ワクチンが禁忌とされる場合には、帯状疱疹不活化ワクチンを選択する)。帯状疱疹は高齢者ほどリスクが高く、帯状疱疹後神経痛を発症すると著明にQOLが低下する。なお、帯状疱疹は約6.4%に再発が認められる14)ため、帯状疱疹の罹患歴がある場合の再発予防としても有効である。今後の課題・展望小児における水痘ワクチンの定期接種化により、水痘の発症者は今後も減り続けるだろう。一方で、水痘の罹患歴のある者のブースター機会も減るため、今後しばらく帯状疱疹の罹患率は上昇することが予測される。水痘はR0が8-101)と非常に感染力が強く、ワクチン接種による予防が重要である。妊婦の水痘を予防し、帯状疱疹後神経痛を予防するために、妊娠を希望する女性、また、50歳以上の高齢者へのワクチン接種を忘れないようにしたい。参考となるサイトこどもとおとなのワクチンサイト国立成育医療センター プレコンセプションケアセンター1)水痘ワクチンに関するファクトシート(平成22年7月7日版)国立感染症研究所.2)Meyer PA, et al. J Infect Dis. 2000;182:383-390.3)日本産婦人科学会、日本産婦人科医会. 産婦人科診療ガイドライン-産科編2017.p.374-376.4)Morino S, et al. Vaccine. 2018;36:5977-5982.5)Schmader K, et al. Ann Intern Med. 2018;169:ITC19-ITC31.6)Takao Y et al. J Epidemiol. 2015;25:617-625.7)病原微生物検出情報(IASR).2018;39.p.139-141.8)Leung J,et al. Clin Infect Dis. 2011;52:332-340.9)Forbes H, et al. BMJ. 2020;368:l6987.10)帯状疱疹ワクチンファクトシート(平成29年2月10日版)国立感染症研究所.11)Cook SJ, et al. Clin Ther. 2015;37:2388-2397.12)Shwartz TF, et al. Hum Vaccin Immunother. 2018 ;14:1370-1377.13)David K Kim DK,et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2019;68:115-118.14)Shiraki K, et al. Open Forum Infect Dis. 2017;4:ofx007.講師紹介

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ドイツの病院紹介 その1【空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅】第14回

私はドイツに来てから、さまざまな病院の心臓外科で勉強をする機会に恵まれました。「ドイツの病院」と一括りに言っても、手術の数も種類も、仕事に対する姿勢も、それぞれに特徴があります。今回から数回にわたり、実際にそこで働いたり見学にいったりして、素直に感じた感想を書いてみたいと思います。ドイツへの留学を希望されている先生の、進路選択の一助になればうれしいです。Herz-und Diabeteszentrum Nordrhein-Westfalenハノーファーの西に位置する“Bad Oeynhausen”という小さな町にある、ヨーロッパ最大級の症例数を誇る施設です。“Bad”というのは「湯治場」の意味で町には温泉施設があり、古くから療養地として栄えていたそうです。小さな町ですが、他にも総合病院やリハビリ病院などもあります。手術件数が多く、ピーク時は年間で3,600例の開心術を行なっています(小児の先天性疾患も取り扱っています)。開院時の立ち上げメンバーのひとりが日本人の南 和友先生であった縁から、これまでにも多くの日本人の心臓外科医が留学されていました。開院当時から心移植分野に強く、ピーク時には年間で200件以上の心臓移植をこなしていたらしいです。現在は左室補助人工心臓(LVAD)センターを立ち上げ、世界中から見学者が訪れています。なお、現在の院長であるGummert教授は、ドイツ心臓外科学会の理事長です。入院→手術→退院までの流れがシステマティックで、ハイボリュームセンターとはこうやって動いていくのか…ということを感じ取ることができます。Klinikum Grosshardernここはミュンヘン大学の附属病院になります。ミュンヘンの中心街からは地下鉄で20分ほどのところに建っています。たしか建物は15階くらいあったと思います。巨大な建物ですが、倉庫のような外観になっています。中身も愛想の少ない感じでした。総合病院ですので、院内にはたくさんのドクターが歩いています。私が滞在した時期だけかもしれませんが、上級医と研修医の間に大きな隔たりがある感じです。研修医は世界中から集まっていましたが、とにかく上級医の指示を聞くことを最優先に動いている印象でした。手術件数は年間1,500〜2,000例くらいだったと聞きました。大学病院ですので、当時新しかった“Open Stent”などの術式もどんどん取り入れていました。手術は上級医中心で回していて、研修医はひたすら病棟業務に走り回っているという感じでした。ただ、この病院からはたくさんのChef(施設長)が輩出されているので、キャリア形成を目的に働いている研修医が多いという風に思いました。同じくミュンヘンには、ドイツ最大級規模の「ミュンヘン心臓センター」があり、ライバル視しています(向こうはどうか知りませんが)。カンファレンスでも、上級医がチョイチョイ悪口を言ったりしていました。次回もいくつか病院を紹介したいと思います。

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「スーグラ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第10回

第10回 「スーグラ」の名称の由来は?販売名スーグラ®錠25mg/50mg一般名(和名[命名法])イプラグリフロジン L-プロリン(JAN)効能又は効果2型糖尿病1型糖尿病用法及び用量<2型糖尿病>通常、成人にはイプラグリフロジンとして50mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら100mg 1日1回まで増量することができる。<1型糖尿病>インスリン製剤との併用において、通常、成人にはイプラグリフロジンとして50mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら 100mg1日1回まで増量することができる。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡[輸液、インスリン製剤による速やかな高血糖の是正が必須となるので本剤の投与は適さない。]3.重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン製剤による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]※本内容は2020年7月29日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年1月改訂(第11版)医薬品インタビューフォーム「スーグラ®錠25mg/50mg」2)アステラス製薬:製品情報

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第17回 安楽死? 京都ALS患者嘱託殺人事件をどう考えるか(前編)

医師2人を嘱託殺人の容疑で逮捕こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。梅雨空とGo To トラベルキャンペーンに翻弄され、結局、越後の山にはいきませんでした。それなら、とやっと開幕した米国のメジャーリーグをテレビで何試合か観戦しました。大谷 翔平選手やダルビッシュ 有選手はさておき、今年、満を持して米国に渡った筒香 嘉智、秋山 翔吾の2選手には、「日本人野手の大成は難しい」という常識を覆すよう、頑張ってほしいと思います。開幕については2人ともまあまあの立ち上がりで、少し安心しました。さて、この週末は、大きなニュースが飛び込んで来ました。医師によるALS患者の嘱託殺人です。ALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性患者から依頼を受け、京都市内の患者自宅で薬物を投与して殺害したとして、京都府警は7月23日、宮城県で診療所を開業する男性医師(42)と、東京都の男性医師(43)の2人を、嘱託殺人の容疑で逮捕しました。各紙の報道をまとめると、2人は昨年11月、京都市の女性のマンションに知人を装って訪問、薬物(バルビツール酸系の睡眠薬)を投与し、殺害したとのことです。女性は24時間介護が必要な状態であり、当日はヘルパーもいましたが、2人と女性だけになった瞬間に胃ろうから薬物を投与した、とみられています。滞在時間はわずか10分程度だったとのことです。2人の帰宅後、部屋に戻ったヘルパーが意識不明になっている女性を発見、駆けつけた主治医が119番通報し、病院に運ばれた後、死亡が確認されています。体内で普段使っていない薬物が検出されたことなどから事件性が疑われ、京都府警が捜査を開始。SNS上での女性と医師とのやりとりや金銭授受の証拠などが明らかとなり、事件から約8カ月後の先週、逮捕に至ったわけです。「安楽死」議論の流れをおさらいするさて、この事件、SNSで女性が嘱託殺人の依頼をしていた点や、宮城県の医師のブログでの発信内容の過激さ(自身のものとみられるブログに「高齢者を『枯らす』技術」とのタイトルで、安楽死を積極的に肯定するかのような死生観をつづっていたそうです)、さらには東京都の男性医師の医師免許不正取得疑いなども出てきて、事件の本筋が見えにくくなってきていますが、一般向けメディア含め、ALS患者の置かれた状況や、この事件が安楽死にあたるかどうかに注目が集まっているようです。報道によれば、京都府警は、女性の死期が迫っていなかったことや2人が主治医ではなかったことなどを挙げて、「安楽死とは考えていない」としているようです。しかし、この事件をきっかけに、安楽死の是非が改めて議論されることは間違いありません。ということで今回は、日本における「安楽死」に関係するこれまでの代表的な事件と、その時に医師に課せられた「罪」について、簡単に整理しておきたいと思います。家族の要望あっても殺人罪確定の2例「安楽死」については、回復が見込めない患者の死期を医師が薬剤を使用するなどして早める「積極的安楽死」と、終末期の患者の人工呼吸器や人工栄養などを中止する「消極的安楽死」の2つの概念があり、前者の「積極的安楽死」は、現在の日本においては殺人罪や嘱託殺人罪などに問われます。積極的安楽死の罪の根拠となっているのは、1991年に起きた「東海大学安楽死事件」と 1998年に起きた「川崎協同病院事件」です。東海大学安楽死病院事件では、家族の要望を受けて末期がんの患者に塩化カリウムを投与して、患者を死に至らしめた医師が殺人罪に問われました。1995年、横浜地裁は、被告人を有罪(懲役2年執行猶予2年)とする判決を下しました(控訴せず確定)。患者自身による死を望む意思表示がなかったことから、罪名は嘱託殺人罪ではなく、殺人罪になりました。この判決では、医師による積極的安楽死が例外的に許容されるための要件として、1)患者が耐えがたい激しい肉体的苦痛に苦しんでいること2)患者は死が避けられず、その死期が迫っていること3)患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くし他に代替手段がないこと4)生命の短縮を承諾する患者の意思表示が明示されていることという4つが提示されています。もう一つの川崎協同病院事件は、医師が気管支喘息重積発作から心肺停止へ陥り昏睡状態となっていた患者から、家族の要請を受けて人工呼吸器を外したところ、患者の苦悶様呼吸が続いたため、最終的に看護師に筋弛緩剤を静脈注射させ、死に至らしめたという事件です。2007年、東京高裁は家族の要請があったとしても余命が明らかではなく、患者自身の治療中止の意思も不明だとして殺人罪を認め、懲役1年6ヵ月(執行猶予3年)を言い渡しました。医師は上告しましたが、最高裁でも医師の行為は「法律上許容される治療中止にはあたらない」とされ、上告は棄却され刑が確定しました。なお、棄却理由として最高裁は「十分な治療と検査が行われておらず、回復可能性や余命について的確な判断を下せる状況にはなかったこと」「家族に適切な情報が伝えられた上での行為ではなく、患者の推定的意思に基づくということもできないこと」の2点を挙げています。終末期ガイドラインのきっかけとなった事件一方、終末期の患者の人工呼吸器や人工栄養などを中止する「消極的安楽死」については、日本において「認められている」というか、少なくとも「刑事責任を問わない」という一定のコンセンサスが形成されてはいます。ただ、そのコンセンサスは、何十年も前からあったわけではなく、ほんのここ15年あまりの間に起きたいくつかの事件を経て、なんとか形づくられてきたものです。延命治療中止については、2004年の「北海道立羽幌病院事件」と、2006年に発覚した「射水市民病院事件」が有名です。いずれも医師が人工呼吸器を外して患者(羽幌は90歳男性、射水は50代~90代の男女7人でうち5人は末期がん)が死亡した事件で、ともに医師は殺人容疑で書類送検されましたが、その後不起訴になっています。これらの事件をきっかけに、終末期や救命救急の医療現場で「刑事責任を問われかねない」との懸念が広がり、行政や学会で終末期医療に関するガイドラインを作る動きが活発化、そこで厚生労働省が検討会を組織し、2007年に策定、公表したのが「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」1)です。「消極的安楽死」は繰り返しの本人確認を重視このガイドラインにおいては、医療・ケアチームと患者・家族らによる慎重な手続きを踏まえた決定の必要性が強調されています。なお、このガイドラインの冒頭には「生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は対象としない」と書かれており、消極的安楽死に関する指針であることが明示されています。その後、日本救急医学会や日本老年医学会も、治療を中止する手順を盛り込んだ消極的安楽死に関する指針を公表しています。厚労省のガイドラインは、最期まで本人の生き方を尊重し、医療・ケアの提供について検討することが重要であることから、2015年に「終末期医療」から「人生の最終段階における医療」へと名称変更され、さらに、2018年には内容が大きく改訂2)されています。この時の改訂のポイントはACP(アドバンスド・ケア・プランニング)の考え方が盛り込まれたことで、特に以下の3つの点が強調されています。1)本人の意思は変化しうるものであり、医療・ケアの方針についての話し合いは繰り返すことが重要であることを強調すること。2)本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、その場合に本人の意思を推定しうる者となる家族等の信頼できる者も含めて、事前に繰り返し話し合っておくことが重要であること。3)病院だけでなく介護施設・在宅の現場も想定したガイドラインとなるよう、配慮すること。さて、以上の流れを踏まえ、この事件についてもう少し考えてみようと思いましたが、長くなってきましたので、今回はここまでとします。京都の事件は、先述したように、逮捕された医師のSNSやインターネット上での発言や金銭授受の事実、主治医でないこと、身元を偽っての女性宅訪問、医師免許不正取得など、いかにも事件事件しており、ある有識者は「安楽死議論の対象にもならない」と語っています。でも、果たして本当にそうでしょうか。少なくとも、医療関係者も目を逸らしてきた、積極的安楽死についての議論を再開するきっかけにはなると思うのですが、どうでしょう(この項続く)。参考サイト1)終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン/厚生労働省2)人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン/厚生労働省

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COVID-19流行下における緩和ケア、各施設の苦闘と工夫

 日本がんサポーティブケア学会、日本サイコオンコロジー学会、日本緩和医療学会は8月9~10日にオンライン形式で合同学術集会を予定している。これに先立って、7月上旬に特別企画として「COVID19と緩和ケア・支持療法・心のケア」と題するオンラインセミナーが行われた。3学会から立場の異なるメンバーが集まり、COVID-19が緩和ケアに与える影響とその対処法について、それぞれの経験を語り合った。COVID-19が緩和ケアにどのような影響を与えたかアンケートを分析【司会】・里見 絵理子氏(国立がん研究センター中央病院 緩和医療科科長)・林 ゑり子氏(藤沢湘南台病院 がん看護専門看護師)【登壇者】・廣橋 猛氏(永寿総合病院 がん診療支援・緩和ケアセンター長)・柏木 秀行氏(飯塚病院 連携医療・緩和ケア科部長)・秋月 伸哉氏(がん・感染症センター駒込病院 精神腫瘍科科長)・渡邊 清高氏(帝京大学医学部内科学 腫瘍内科准教授) 冒頭に、日本緩和医療学会COVID-19関連特別ワーキンググループらが5月上旬に行った「新型コロナウイルス感染症に対する対応に関するアンケート」の結果1)が共有された。これはCOVID-19が、全国の専門緩和ケアサービスにどのような影響を与えたかを調べる目的で実施されたもので、654件の回答のうち重複を除く598件を分析対象とした。 専門的緩和ケアの提供形態別に「A:ホスピス・緩和ケア病棟(PCU)のみ/109施設」「B:緩和ケアチーム(PCT)のみ/303施設」「C:PCUとPCTの両方/186施設」に分類したうえで、「A+C:緩和ケア病棟群/295施設」「B+C:緩和ケアチーム群/489施設」に分けて分析が行われた。これは全国の緩和ケア病棟の約70%、緩和ケアチームの約50%を占めるという。 緩和ケア病棟群では、「新型コロナウイルス感染症の流行後、緩和ケア病棟の患者受け入れ方針に変化があった」と回答した施設が55%(161施設)あり、うち22施設では緩和ケア病棟がCOVID-19患者用の専門病棟に変更されていた。 続いて、「新型コロナウイルス感染症の流行後、緩和ケア病棟での面会制限はあるか」という質問に対して、緩和ケア病棟群の98%にあたる289施設が「ある」と回答。ここでは、予測される患者の予後によって段階的な対応をする施設が多く、末期近いことが予測される患者には面会制限を緩めるケースが多かった。 面会制限を行っているあいだ、面会以外でのコミュニケーション支援をはかる医療機関もあり、「テレビ電話などでのコミュニケーション支援」が55%と最も多く、「Wi-Fi使用可」が15%、「院内にPC・タブレットを用意」が6%と続いた(複数回答可)。ただ、「とくに何もしていない」という回答が87%と大きな割合を占めており、支援にあたって設備や人員確保の難しさも見える結果となっている。COVID-19感染対策下の面会のため緩和ケア病棟にタブレット 続けて、アンケートの結果も踏まえつつ、登壇者が自施設でのこれまでの対策と現況について情報をシェアした。―COVID-19に対する自施設の対応は? 渡邊氏「流行が懸念される早めの時期から、院内・診療科・部門ごとに感染対策を立て、実行した。通常診療に対しても感染予防策を取り、がん患者さんに対しては個別にリスクの評価を行った上で、治療継続、手術予定の延期、経口の抗がん剤やホルモン薬の使用等の検討を行っている。感染流行の長期化を踏まえ、息の長い対策にしていくことが肝要だ」 秋月氏「患者と同時にスタッフのケアが必要だと考えた。COVID-19感染症病棟のスタッフが孤立しないようリエゾンチームとして感染症病棟を巡回するだけでなく、緩和ケアチームなどを含む院内組織を立ち上げ、院内向けの情報発信にも力を入れた」 廣橋氏「3月に院内でのCOVID-19感染が発生し、これまでに200名以上の感染者を出してしまった。緩和ケア病棟も閉鎖を余儀なくされていたが、5月下旬から診療を再開した。緩和ケアのカギとなる多職種チームの活動も制限せざるを得ず忸怩たる思いだが、現状では感染防止を最優先せざるを得ない状況が続いている」―緩和ケアで重要となる、在宅医療など他施設との連携はどうしていたか? 柏木氏「これまで、電話とFAXと対面で行っていた医療連携だが、対面が使えなくなり、手間がかかるようになったことは事実だ」 廣橋氏「確かに大変にはなったが、以前から『顔の見える連携』をしてきたことが生きている。緩和ケア病棟の事前面談をオンラインで行う試みも開始した」 林氏「対面の機会が限られ、退院前のカンファレンスや家族への介護指導ができないことは痛い。その患者様の安楽な移動方法や介助方法、人工肛門やいろいろな装具を直接見て頂く機会が少ないため、電話で時間をかけてイメージできるまで説明したり、訪問看護に助けて頂いたりするなど、できることを工夫しながら行っている」―患者・スタッフの心のケアをどう行っていたか? 秋月氏「強い呼吸困難を経験した感染患者は、症状が収まってからも強い恐怖感を訴えるケースがある。また、家族や同僚を感染させてしまった、という自責の念に捉われる方もいた。また、異なる視点として、高齢者施設内のクラスターにおいては認知症患者がいる。そうした方はゾーニングを理解できず歩き回ったり、家族と会えずにパニックになったりなど、異なるケアが必要となった」 柏木氏「軽症でホテルに隔離されている患者に対応したが、特殊な環境下で不安を抱える方が多かった。入院されていればすぐに対応できるのだが、やりとりは電話に限られており、診療には限界があった」 秋月氏「スタッフに関しては、感染患者に直接対応しているか、そうでないかで置かれた状況が大きく異なる。直接対応するスタッフは自分や家族への感染リスクに不安を持っており、急ごしらえの対応チームでコミュニケーションミスも起きやすい。直接対応していないスタッフは、対応チームに人員を割かれており、情報のシェアがないと不満がたまりやすい。ストレスチェックやアンケートだけでは現場の実態が把握できないため、『対応策をヒアリングする』と言って個別面接を行った。『声を上げれば、何らかのフィードバックがある』とスタッフに感じてもらえる仕組みづくりが大切だ」―家族へのケア、面会制限はどのように行ったか? 廣橋氏「COVID-19感染対策下におけるご家族との関わりにおいては、日本緩和医療学会の普及啓発ワーキンググループで作成した『感染症対策下における入院患者さんのご家族向けリーフレット』を役立ててもらいたい。面会制限中は、家族に写真やメッセージを持ってきてもらったり、スマートフォンやタブレットのビデオ通話を使った面会を支援したりなど、少しでもコミュニケーションがとれるように工夫している。私を中心に行ったクラウドファンディングでは多くの支援が集まり、今後は希望する緩和ケア病棟にタブレット配置などの環境整備をしていくことができそうだ」 各施設でスタッフ間や患者と家族のコミュニケーション支援においてIT機器やオンラインを使った各種の試みが行われていることが共有され、「今後に活かしていきたい」という声が上がっていた。本セミナーの動画は、合同学術集会の開催時に、参加者に対して公開される予定となっている。

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9価HPVワクチンの製造販売承認を取得/MSD

 わが国では、子宮頸がんに毎年約10,000人の女性が新規罹患し、約2,800人が亡くなっている。とくに子宮頸がんは発症年齢が出産や働き盛りの年齢と重なることもあり、治療によって命を取りとめても女性の人生に大きな影響を及ぼすことが多い疾患であり、本症の予防ではワクチンの接種と定期的な検診が重要となる。 そんな予防の切り札となるワクチンにつきMSD株式会社は、7月21日、ヒトパピローマウイルス(HPV)の9つの型に対応した組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン[酵母由来](商品名:シルガード9水性懸濁筋注シリンジ)の製造販売承認を取得したことを発表した。子宮頸がんに対するHPV型のカバー率は約90% 本ワクチンは、9歳以上の女性を対象に、HPV6、11、16、18、31、33、45、52および58型の感染に起因する子宮頸がん(扁平上皮細胞がんおよび腺がん)およびその前駆病変(子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)1、2および3、並びに上皮内腺がん(AIS))、外陰上皮内腫瘍(VIN)1、2および3、並びに腟上皮内腫瘍(VaIN)1、2および3、尖圭コンジローマの予防を効能・効果としている。 対応している型は、従来の4価HPVワクチンが対応している4つのHPV型(6、11、16、18型)に加え、新たに5つのHPV型(31、33、45、52、58型)のVLP(Virus Like Particle;ウイルス様粒子)を含んでいる。これら9つのHPV型のうち、HPV16、18、31、33、45、52、58型の7つの型は、子宮頸がん、外陰がん、腟がんなどの原因となることが知られている。 子宮頸がんに対するHPV型のカバー率は、HPV16、18型を含む4価HPVワクチンが約65%であるのに対し、本ワクチンでは約90%となる。また、HPV6、11型は、尖圭コンジローマの原因の約90%を占めている。 同社では、「今回の承認は、日本の子宮頸がん予防において新たな道を切り開くものであり、公衆衛生の前進に大きく寄与すると考えている。今後も人々の生命を救い、生活を改善する革新的なワクチンと医薬品の開発に全力で取り組んでいく」と展望を寄せている。シルガード9製品概要製品名:シルガード9水性懸濁筋注シリンジ一般名:組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(酵母由来)効能・効果:ヒトパピローマウイルス6、11、16、18、31、33、45、52および58型の感染に起因する以下の疾患の予防・子宮頸がん(扁平上皮細胞がんおよび腺がん)およびその前駆病変(子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)1、2および3、並びに上皮内腺がん(AIS))・外陰上皮内腫瘍(VIN)1、2および3、並びに腟上皮内腫瘍(VaIN)1、2および3・尖圭コンジローマ用法・用量:9歳以上の女性に、1回0.5mLを合計3回、筋肉内に注射する。通常、2回目は初回接種の2ヵ月後、3回目は6ヵ月後に同様の用法で接種する。承認取得日:2020年7月21日製造販売:MSD株式会社なお、薬価・発売日は未定。

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医師の2020年夏季ボーナス支給、新型コロナの影響は?

 6~7月と言えば、業務に追われるもボーナス支給日を心待ちに日々励んでいる人が多い時期。ところが今年は新型コロナウイルスの影響で状況は一変。外来患者減などが医療施設の経営に大打撃を与え、医療者の給与や将来設計もが脅かされる事態に発展している。 この状況を受け、ケアネットでは7月9日(木)~15日(水)、会員医師1,014名に「夏季ボーナスの支給状況などに関するアンケート」を実施。その結果、全回答者のうち14.6%は本来支給されるはずの夏季ボーナスが不支給または未定であり、支給された方でも25%は例年より減額されていたことが明らかになった。 本アンケートでは30代以上の医師(勤務医、開業医問わず)を対象とし、新型コロナ対応への危険手当の支給有無や夏季ボーナス支給状況を調査。集計結果を年代や病床数、診療科で比較した。ボーナス減の影響を強く受けていた診療科は主に、内科、循環器内科、整形外科、呼吸器内科で、支給状況を病床別でみると、支給されなかった・未定の割合は0床(16%)、1~19床(6%)、20~99床(20%)、100~199床(18%)、200床以上(13%)だった。 今回、ボーナスが支給された医師の中でも「冬季は不支給になりそう」などの懸念を抱いており、不支給だった医師には「ボーナス以前に月給が大幅に減った」 というコメントも。このほか、「異動予定が消滅」「賞与、昇給の取り消し」など自身のキャリアプランに影響した例もあった。 アンケート結果はこちら

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新型コロナウイルス診療の手引きをアップデート/厚生労働省

 7月17日、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は、全国の関係機関ならびに医療機関に向けに作成する「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」を改訂し、2.2版として発表した。  3月17日に第1版が発行されたこの手引きは、5月18日に第2版が発行され、その後も毎月1回のペースで改訂されている。今回の改訂における主なポイントは以下のとおり。・国内データ:直近まで更新・診断:遺伝子増幅検査(LAMP法・PCR法)の解説を追加・診断:抗原定量検査の解説を追加・届出:新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(MIS-G)の解説を追加・重症度分類:重症化マーカーとしてKL-6上昇を追加・薬物療法:承認された薬物療法としてデキサメタゾンを追加・薬物療法:ファビピラビル(商品名:アビガン)に関する臨床試験の経過を追加・環境整備:次亜塩素酸水を使用する場合の注意点を追加・退院基準:抗原定量検査の項目を追加

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認知症関連の行方不明発生とその後の死亡の関連因子

 認知症患者の増加に伴い、認知症に関連する行方不明やその後の死亡が深刻な問題となっている。しかし、認知症関連の行方不明発生率、その後の死亡率、リスク因子についてはよくわかっていない。国立循環器病研究センター研究所の村田 峻輔氏らは、日本の都道府県別に集計されたデータを用いて、生態学的研究を行った。Journal of Epidemiology誌オンライン版2020年6月27日号の報告。 2018年の警察庁の統計より、認知症関連の行方不明とその後の死亡に関するデータを抽出し、これらに影響を及ぼす候補変数として、高齢者の特性、ケア、安全性に関する変数を抽出した。候補変数と行方不明発生率および死亡率との関連は、交絡因子で調整した後、一般化線形モデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・認知症関連の行方不明発生率は10万人年当たり21.72であり、その後の死亡率は10万人年当たり0.652であった。・高齢者向け介護福祉施設の数が65歳以上の人口10万人当たり1施設増加すると、行方不明発生率は7.9%低下した(95%CI:3.3~12.4)。・保健師の数が10万人当たり1人増加すると、行方不明発生率が3.2%低下した(95%CI:1.6~4.9)。・都市部に在住する割合が10%増加すると、行方不明発生率が20.3%上昇し(95%CI:8.7~33.2)、その後の死亡率は12.9%低下した(95%CI:5.6~19.8)。 著者らは「本研究結果は、認知症関連の行方不明発生やその後の死亡を予防もしくは予測するうえで役立つ可能性がある」としている。

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COVID-19流行、 ACSの入院数減に影響か/Lancet

 イングランドでは、急性冠症候群(ACS)による入院患者数が、2019年と比較して2020年3月末には大幅に減少(40%)し、5月末には部分的に増加に転じたものの、この期間の入院数の低下は、心筋梗塞による院外死亡や長期合併症の増加をもたらし、冠動脈性心疾患患者に2次予防治療を提供する機会を逸した可能性があることが、英国・オックスフォード大学のMarion M. Mafham氏らの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年7月14日号に掲載された。COVID-19の世界的流行期に、オーストリアやイタリア、スペイン、米国などでは、ACSによる入院数の低下や、急性心筋梗塞への直接的経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の施行数の減少が報告されているが、入院率の変化の時間的な経過やACSのタイプ別の影響、入院患者への治療などの情報はほとんど得られていないという。ACSのタイプ別に、入院と手技の数、減少率を評価 研究グループは、イングランドにおける種々のタイプのACS入院患者数の変化の規模、性質、期間を把握し、COVID-19の世界的流行の結果としての、患者の院内管理への影響を評価する目的で検討を行った(英国医学研究評議会[MRC]などの助成による)。 解析には、Secondary Uses Service Admitted Patient Careデータベースに記録されたイングランドにおける2019年1月1日~2020年5月24日の、ACSのタイプ別の入院データを用いた。 入院患者は、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)、非STEMI(NSTEMI)、タイプ不明の心筋梗塞、その他のACS(不安定狭心症を含む)に分類された。また、入院期間中に受けた血行再建術(PCIを行わない冠動脈造影、PCI、冠動脈バイパス術[CABG])が同定された。 入院と手技の数を週単位で算出し、入院とACSタイプ別の減少率および95%信頼区間(IC)が算定された。5月最終週の減少率は16%、入院日数も短縮 ACSによる入院は、2020年2月中旬から減少しはじめ、2019年のベースラインの3,017件/週から、2020年3月末には1,813件/週へと40%(95%CI:37~43)低下した。この減少傾向は、2020年4月~5月には部分的に増加に転じて、5月最終週には2,522件/週へと上昇し、ベースラインからの減少率は16%(13~20)となった。 入院数の減少期間中は、ACSのすべてのタイプで入院数が低下したが、STEMIとNSTEMIでは、NSTEMIで減少率が高く、2019年の1,267件/週から2020年3月末の733件/週へと42%(95%CI:38~46)低下した。 並行して、PCI施行数も減少し、STEMIでは2019年の438件/週から2020年3月末には346件へと21%(95%CI:12~29)低下し、NSTEMIでは383件/週から240件/週へと37%(29~45)減少した。 また、ACS患者の入院期間中央値は、2019年は4日(IQR:2~9)であったが、2020年3月末には3日(1~5)へと短くなった。STEMIは3日から2日へ、NSTEMIは5日から3日へ短縮した。 著者は、「ACSの患者管理へのCOVID-19の影響の全容は、これらの解析を更新することで、引き続き評価されるだろう」とし、「COVID-19の次なる流行時に、不必要な死亡や障害を回避するためにも、ACSなどの緊急性の高い疾患の患者が救急診療部を受診しない理由を解明し、速やかに対処すべきである」と指摘している。

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新型コロナ重症例、デキサメタゾンで28日死亡率が低下/NEJM

 英国・RECOVERY試験共同研究グループのPeter Horby氏らは 、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した患者のうち、侵襲的人工呼吸器または酸素吸入を使用した患者に対するデキサメタゾンの投与が28日死亡率を低下させることを明らかにした。NEJM誌オンライン版2020年7月17日号に掲載報告。なお、この論文は、7月17日に改訂された厚生労働省が発刊する「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第2.2版」の“日本国内で承認されている医薬品”のデキサメタゾン投与の参考文献である。 この研究では、2020年3月19日~6月8日の期間にCOVID-19入院患者へのデキサメタゾン投与における有用性を把握するため、非盲検試験が行われた。対象者をデキサメタゾン投与群と通常ケア群にランダムに割り当て28日死亡率を評価し、人工呼吸器管理や酸素吸入の有無によるデキサメタゾン投与の有用性を検証した。デキサメタゾン群には1日1回6 mgを最大10日間、経口または点滴静注で投与した。通常ケア群には、日常臨床でデキサメタゾンを使用している患者が8%含まれていた。薬物療法として、アジスロマイシンは両群で使用(デキサメタゾン群:24% vs.通常ケア群:25%)、そのほか通常ケア群ではヒドロキシクロロキン、ロピナビル・リトナビル、IL-6アンタゴニストなどが投与された。また、レムデシビルは2020年5月26日より使用可能となり一部の症例で投与された。 主な結果は以下のとおり。・全参加者11,303例のうち、他の治療を受けるなどの理由で4,878例が除外された。残り6,425例をデキサメタゾン投与群2,104例(平均年齢±SD:66.9±15.4歳)と通常ケア群4,321例(平均年齢±SD:65.8±15.8歳)に割り付けた。・6,425例の呼吸器補助別の割り付けは、侵襲的人工呼吸器管理が1,007例、酸素吸入が3,883例、呼吸器補助なしは1,535例だった。・28日死亡率は、デキサメタゾン群が482例(22.9%)、通常ケア群は1,110例(25.7%)で、デキサメタゾン群で有意に低下した(Rate Ratio[率比]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.75〜0.93、p<0.001)。・呼吸器補助レベルを考慮した場合、侵襲的人工呼吸器管理の患者において絶対的・相対的ベネフィットが示される傾向で、デキサメタゾン群は通常ケア群より死亡発生率が低く(29.3% vs.41.4%、率比:0.64、95%CI:0.51~0.81)、酸素吸入群においても同様だった(23.3% vs.26.2%、率比:0.82、95%CI:0.72~0.94)。しかし、呼吸器補助を受けていない患者において、デキサメタゾンの効果は明らかではなかった(17.8% vs.14.%、率比:1.19、95%CI:0.91~1.55)。・副次評価項目として、デキサメタゾン群は通常ケア群より入院期間が短く(平均入院日数:12日 vs.13日)、28日以内の退院の可能性が高かった(率比:1.10、95%CI:1.03~1.17)。この最大因子は侵襲的人工呼吸器管理だった。・呼吸器補助を受けていない患者において、副次評価項目である侵襲的人工呼吸器管理や死亡の複合は通常ケア群よりデキサメタゾン群で低かった(率比:0.92、95%CI:0.84~1.01)。

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“do処方”を見直そう…?(解説:今中和人氏)-1263

 誰しもが駆け出しとして医師人生をスタートする。医療におけるさまざまな処置や処方には、往々にして歴史的な変遷や患者限定の根拠があったりして実に奥深く、駆け出しがすべてを理解して対応するのは事実上不可能だが、何でもかんでも先輩に尋ねるわけにもゆかない。まして「これは本当に必要なんですか?」なんて、一昔前の「仕分け」のような質問をすればうっとうしがられること必定だから、いわゆる“do処方”の乱発が起きる。もちろん、自分なりに意味付けをしてのことだが、世の中には実はほとんどアップデートされておらず、もはや伝統芸能の域に達しているような処置や処方も存在する。 黎明期から見れば、開心術は医療器材的にも技術的にも異次元とすらいえる進歩を遂げた。人工心肺による循環変動、コンタクト・サーフェスに由来する著明な炎症反応がサイトカイン・ストーム状態と、それに伴う臓器障害や凝固異常を惹起する、といった触れ込みで昔から使われてきたのがステロイドである。ステロイドには免疫抑制や過血糖などの作用もあるため、誰しも一度は必要性を疑ったはずだが、私が属したほぼすべての施設で人工心肺症例には一律、成人でも小児でも相当な量のステロイドが投与されていたし、それでもサイトカイン・ストームを疑う、妙にFP ratioの低い症例は存在した。だが指導的立場になった後、積極的に「伝統」を廃する決断は、「意外と効いているかも」「自分が知らないだけかも」となかなか難しく、当施設でステロイド投与をやめたのは約10年前からである。やめたところでプラスにもマイナスにも変化を感じていないが、その後2012年にDECS study、2015年にSIRS trialという成人症例対象の大規模RCTが発表され、いずれも大量ステロイド投与に便益なしと結論付けられた。2019年のEACTS等の成人対象のガイドラインでは、ステロイドの一律使用はclass IIIとなっている。 本論文は、一昔前BRICsと注目されたうちの3ヵ国・4施設における約3年間の乳児開心術394例(中央値6ヵ月、新生児5%)に対するRCTで、9割以上はロシアの2施設の症例だった。麻酔導入後、study群はデキサメタゾン1mg/kgを、control群は生食を静注した。平均人工心肺時間は各50分と46分、直腸温36℃で、術後30日以内または在院中死亡、心筋梗塞、ECMO、急性腎障害などをprimary、人工呼吸期間、カテコラミン補助、出血量などをsecondaryエンドポイントと定義した。最終的に10例が人工心肺非使用術式に変更になり、各群15%、22%が主にアレルギー疑いでステロイドを追加投与された。結論は、サブグループ解析も含め、各項目とも大量ステロイドの一発打ちに有意な便益はなかったが、感染症も各2%、1.5%と増えなかった(血糖値は論じられていない)。要するに投与してもしなくてもあまり違わなかったわけだが、小児心臓外科の世界ではステロイド投与に関して見解が割れており、昨今も54%と半数以上の患児がステロイド投与を受けているそうである。評者は、薬剤は投与必要性を吟味すべきで“do処方”は見直そう、という意見だが、最近、コロナ肺炎でサイトカイン・ストームの難治性がクローズアップされている一方、多くの症例で早めのステロイド投与が有効という、理論的に納得しやすい報告もあるので、ステロイドに関しては、相当な大量でも有害事象がほとんど増えないなら、便益も証明されてはいないが、典型的compromised hostである小児開心術患者には投与しておく、でもよいのかも…と、思わず腰が引けてしまう。 諸先生はいかがであろうか?

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再来年から?電子処方箋の導入で薬局業務はどう変わるか【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第51回

2020年6月に内閣府で2020年第9回経済財政諮問会議が開催され、「データヘルスの集中改革プラン」が報告されました。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた“新たな日常”に対応するもので、今後の数年で医療情報のデジタル化、一元化が加速しそうです。厚生労働省は7月9日、社会保障審議会医療保険部会に、マイナンバーカードを利用した「電子処方箋の仕組みの実現に向けた今後の進め方」を示した。現在、紙で発行している処方箋を電子化し、医療機関が登録した処方情報を薬局が取得するというもの。22年夏ごろまでに仕組みを構築する。(2020年7月10日付 RISFAX)この発表は、2023年度に電子処方箋のシステムの運用を開始する予定だったものを、1年ほど前倒しして運用を行うとしたものです。2022年の夏って、あと2年しかありません。しかし、電子処方箋ってなに? 患者さんが来たらどうしたいいの? と困惑されている方も少なくないのではないかと思います。おおまかな電子処方箋対応のフローは下記のとおりです。1.医師は処方箋管理システムにアクセスして処方データを登録する。処方データへのアクセスコード(QRコード)を印字した紙または電子データを患者に渡す。2.患者は薬局でアクセスコードを提示する。3.薬剤師は、本人確認を行ったうえで薬局システムから処方データを参照し、必要に応じて処方内容の照会などを実施したうえで調剤を行う。調剤後は調剤データを登録する。2018年から2019年にかけて電子処方箋運用の実証事業が行われ、その結果である「電子処方箋の本格運用に向けた実証事業一式」最終成果報告が発表されています。この実証事業に参加した医療機関と薬局へのヒアリング結果として、以下のような感想が挙げられています(抜粋、一部改変)。電子処方箋だけでは診療の質には意味をなさないが、PHR(生涯型健康医療情報電子記録)が診療の質を上げると考えている。電子処方箋はその足掛かり。(医療機関)比較的近い薬局が対応してもらえないと実際には発行しづらい。あえて対面で診た患者さんに電子処方箋を出す理由はなさそうと感じた。(医療機関)在宅ではメリットがあるかもしれない。現在はFAXでもらっておいて、患者宅まで薬を届け、その際に処方箋の原本を回収している。(薬局)今回の実証事業の症例では、疑義照会の事例がなく比較的簡単な操作だったが、疑義照会などが起こった際の操作に関しては不安が残る。(薬局)導入にはさまざまな課題がありますが、紙の処方箋の内容をレセプトシステムに入力する手間が省けたり、病名などの患者情報と紐付けやすくなったりするなどのメリットはあるように思います。とくに、在宅やオンライン診療との相性が良さそうです。マイナンバーカードが医療情報の一元化のカギに電子処方箋の導入だけでなく、全国の医療機関などで医療情報を確認できる仕組みの拡大や、患者自身が保健医療情報を活用できる仕組みの拡大も同様に協議されており、同時期に始まる予定です。これらの医療情報の一元管理によるメリットとして、以下のようなものが挙げられています。かかりつけの医療機関が被災した際であっても、別の医療機関が患者の情報を確認し、必要な治療を継続することができる。意識障害のある患者の薬剤情報などを確認することで、より適切で迅速な検査、診断、治療などを実施することができる。複数医療機関を受診する患者の情報を集約して把握することができる。重複投薬などを削減できる。すごい!という感嘆の言葉しか出ません。医療情報の一元管理は国レベルでの調整が必要で、電子処方箋よりもはるかにハードルが高いため、わずか2年後に運用できるとは思い難いですが、夢のような世界ですね。これらのベースとなるのが、マイナンバーカードの活用で、マイナンバーカードを2021年3月から保険証として利用するということを総務省や内閣府が中心となって推進しています。また、生活保護の医療扶助で用いる医療券や調剤券をマイナンバーカードへ置き換える検討に着手し、2023年度からの本格運用が予定されています。しかし、マイナンバーカードの普及率は10%台を推移していて、普及しているとは言えない状況です。マイナポイントのキャンペーンでどのくらいマイナンバーカードの普及率が上がるのか、今後もマイナンバーカードの普及と電子処方箋導入の動きを見守っていきたいと思います。

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第18回 待望のプラセボ対照無作為化試験でCOVID-19にインターフェロンが有効

中国武漢での非無作為化試験1)や香港での無作為化試験2)等で示唆されていたインターフェロン1型(1型IFN)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療効果が小規模ながら待望のプラセボ対照無作為化試験で裏付けられました3,4)。先週月曜日(20日)の速報によると、英国のバイオテクノロジー企業Synairgen社の1型IFN(インターフェロンβ)吸入薬SNG001を使用したCOVID-19入院患者が重体になる割合はプラセボに比べて79%低く、回復した患者の割合はプラセボを2倍以上上回りました。わずか100人ほどの試験は小規模過ぎて決定的な結果とはいい難いと用心する向きもありますが、SNG001は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)食い止めに大いに貢献する吸入薬となりうると試験を率いた英国・サウサンプトン大学の呼吸器科医Tom Wilkinson教授は言っています5)。Synairgen社を率いるCEO・Richard Marsden氏にとっても試験結果は朗報であり、COVID-19入院患者が酸素投与から人工呼吸へと悪化するのをSNG001が大幅に減らしたことを喜びました。投資家も試験結果を歓迎し、Synairgen社の株価は試験発表前には36ポンドだったのが一時は236ポンドへと実に6倍以上上昇しました。この記事を書いている時点でも200ポンド近くを保っています。Synairgen社は入院以外でのSNG001使用も視野に入れており、COVID-19発症から3日までの患者に自宅でSNG001を吸入してもらう初期治療の試験をサウサンプトン大学と協力してすでに英国で始めています6)。米国では1型IFNではなく3型IFN(Peginterferon Lambda-1a)を感染初期の患者に皮下注射する試験がスタンフォード大学によって実施されています7)。インターフェロンは感染の初期治療のみならず予防効果もあるかもしれません。中国・湖北省の病院での試験の結果、インターフェロンを毎日4回点鼻投与した医療従事者2,415人全員がその投与の間(28日間)COVID-19を発症せずに済みました8)。インターフェロンはウイルスの細胞侵入に対してすぐさま強烈な攻撃を仕掛ける引き金の役割を担います。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はどうやらインターフェロンを抑制して複製し、組織を傷める炎症をはびこらせます4,9)。ただしSARS-CoV-2がインターフェロン活性を促すという報告10)や1型IFN反応が重度COVID-19の炎症悪化の首謀因子らしいとする報告11)もあり、インターフェロンは場合によっては逆にCOVID-19に加担する恐れがあります。米国立衛生研究所(NIH)のガイドライン12)では、重度や瀕死のCOVID-19患者へのインターフェロンは臨床試験以外では使うべきでないとされています。2003年に流行したSARS-CoV-2近縁種SARS-CoVや中東で依然として蔓延するMERS-CoVに感染したマウスへのインターフェロン早期投与の効果も確認されており13,14)、どの抗ウイルス薬も感染初期か場合によっては感染前に投与すべきと考えるのが普通だとNIHの研究者Ludmila Prokunina-Olsson氏は言っています15)。参考1)Zhou Q, et al. Front Immunol. 2020 May 15;11:1061.2)Hung IF, et al. Lancet. 2020 May 30;395:1695-1704.3)Synairgen announces positive results from trial of SNG001 in hospitalised COVID-19 patients / GlobeNewswire 4)Can boosting interferons, the body’s frontline virus fighters, beat COVID-19? / Science 5)Inhaled drug prevents COVID-19 patients getting worse in Southampton trial 6)People with early COVID-19 symptoms sought for at home treatment trial 7)OVID-Lambda試験(Clinical Trials.gov)8)An experimental trial of recombinant human interferon alpha nasal drops to prevent coronavirus disease 2019 in medical staff in an epidemic area. medRxiv. May 07, 2020 9)Hadjadj J, et al. Science. 2020 Jul 13:eabc6027.10)Zhuo Zhou, et al. Version 2. Cell Host Microbe. 2020 Jun 10;27(6):883-890.11)Lee JS, et al. Sci Immunol. 2020 Jul 10;5:eabd1554.12)Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Treatment Guidelines,NIH 13)Channappanavar R, et al. Version 2. Cell Host Microbe. 2016 Feb 10;19:181-93. 14)Channappanavar R, et al. J Clin Invest. 2019 Jul 29;129:3625-3639.15)Seeking an Early COVID-19 Drug, Researchers Look to Interferons / TheScientist

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自閉スペクトラム症と統合失調症の鑑別症状

 自閉スペクトラム症(ASD)と統合失調症(SZ)は、類似症状を呈する異種性の神経発達障害である。米国・イェール大学のDominic A. Trevisan氏らは、ASDとSZの重複および鑑別する症状の特定を試みた。Frontiers in Psychiatry誌2020年6月11日号の報告。 対象は、成人のASD患者53例、SZ患者39例、定型発達者40例。すべての対象者に、ASD評価のための半構造化観察検査(ADOS-2)および陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)による評価を行った。ADOSの感度と特異性は、診断カットオフ値を用いて評価した。群間の重複症状の分析には、IQと性別分布による群間差をコントロールした後、ANOVA、ROC曲線、ANCOVAを用いた。 主な結果は以下のとおり。・成人のASDとSZの鑑別にADOSは有用であったが、DSM-VでASD基準を満たさないSZ患者では、偽陽性率が高かった。・SZ患者の特異性が低い理由を特定するため、ASDとSZの症状を正の症状(異常行動あり)と負の症状(通常行動なし)に分類した。・ASDとSZでは、典型的な社会的およびコミュニケーション上の行動の欠如に関連する負の症状に重複が認められたが、疾患特有の正の症状では違いが認められた。・ASDでは、反復繰り返し行動や常同的な言語のスコアが高く、SZでは、幻覚・妄想などの精神病性症状のスコアが高かった。 著者らは「ASDとSZの鑑別では、正の症状に焦点を当てることが有用である可能性が示唆された。ASD症状を正と負に分類するための標準化された測定法は開発されていないが、実行可能な臨床ツールであると考えられる」としている。

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マスク着用で医療者のCOVID-19抑制効果が明らかに/JAMA

 マサチューセッツ州最大の医療システムで12の病院と75,000人超の従業員を抱えるMass General Brigham(MGB)は、2020年3月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において、医療従事者(HCW:health care workers )のCOVID-19の前兆に対する体系的な検査やサージカルマスクを着用した全HCWと患者に対してユニバーサルマスキングを含む多面的な感染対策の研究を実施した。その結果、MGBでのHCWのマスク着用習慣がHCW間の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性率の有意な低下に関連していたと示唆された。また、患者-HCWおよびHCW同士の感染率低下に寄与する可能性も明らかになった。JAMA誌2020年7月14日号リサーチレターでの報告。 研究者らはマスク着用の病院方針とHCW間の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染率との関連性を評価するため、2020年3月1日~4月30日の期間にPCR検査を受けた患者に対して直接的または間接的ケアを行ったHCWを特定した。 1)HCWのユニバーサルマスキング実施前期間(2020年3月1〜24日)2)患者のユニバーサルマスキング実施移行期間(2020年3月25日〜4月5日)と症状発現が認められた際の追加期間(2020年4月6〜10日)3)ユニバーサルマスキング介入期間(2020年4月11〜30日) 陽性率は全HCWの最初の検査結果での陽性を分子とし、検査2回目以降での陽性は除外した。分母には検査を一度も行っていないHCWとその日に検査を行ったHCWが含まれた。解析には重み付き非線形回帰分析を使用した。 主な結果は以下のとおり。・HCW:9,850人のうち、1,271人(12.9%)がSARS-CoV-2陽性だった。・陽性者の年齢中央値は39歳、73%は女性だった。また、陽性者の職種内訳は、医師・研修医(7.4%)、看護師・医師助手(26.5%)、医療技術者・看護助手(17.8%)、その他(48.3%)だった。・介入前のSARS-CoV-2陽性率は、0%から21.32%と指数関数的に増加し、加重平均は1日あたり1.16%増加、倍加時間( Doubling Time) は3.6日だった(95%信頼区間[CI]:3.0~4.5)。 ・介入期間中の陽性率は14.65%から11.46%に直線的に減少し、加重平均は1日あたり0.49%減少した。また、 slope の傾きは1.65%変化し(95%CI:1.13~2.15%、p<0.001 )、介入前と比較して、1日あたり大きく減少した。

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ACE阻害薬とARB、COVID-19死亡・感染リスクと関連せず/JAMA

 ACE阻害薬/ARBの使用と、高血圧症患者における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断率、またはCOVID-19と診断された患者における死亡率や重症化との間に、有意な関連は認められなかった。デンマーク・コペンハーゲン大学病院のEmil L. Fosbol氏らが、デンマークの全国登録を用いた後ろ向きコホート研究の結果を報告した。ACE阻害薬/ARBは、新型コロナウイルスに対する感受性を高め、ウイルスの機能的受容体であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の発現が亢進することによりCOVID-19の予後が悪化するという仮説があったが、今回の結果から著者は「COVID-19のパンデミック下で臨床的に示唆されているACE阻害薬/ARBの投与中止は、支持されない」とまとめている。JAMA誌2020年7月14日号掲載の報告。COVID-19患者の後ろ向きコホート研究と高血圧患者のコホート内症例対照研究で 研究グループは、COVID-19患者の予後を調査する目的で、2020年2月1日以降にCOVID-19と診断された患者(ICD-10の診断コードで確認)を特定し、診断日から2020年5月4日まで追跡した(後ろ向きコホート研究)。主要評価項目は死亡、副次評価項目は死亡または重症COVID-19の複合アウトカムで、ACE阻害薬/ARB使用群と非使用群を比較した。使用群は、診断日前6ヵ月間にACE阻害薬/ARBが1回以上処方された患者と定義した。 また、COVID-19の感受性を調査する目的で、デンマークのすべての高血圧症患者を2020年2月1日~5月4日まで追跡し、コホート内症例対照研究を行った。主要評価項目はCOVID-19の診断で、Cox回帰モデルによりCOVID-19との関連性のACE阻害薬/ARBと他の降圧薬で比較した。使用歴の有無で有意差なし 後ろ向きコホート研究には、COVID-19患者4,480例が組み込まれた(年齢中央値54.7歳、四分位範囲:40.9~72.0歳、男性47.9%)。1例目の診断日は2020年2月22日、最後の症例は2020年5月4日、ACE阻害薬/ARB使用群は895例(20.0%)、非使用群は3,585例(80.0%)であった。 30日死亡率は、ACE阻害薬/ARB群18.1%、非使用群7.3%であり、ACE阻害薬/ARB群で高かったものの有意な関連は認められなかった(年齢、性別、病歴で補正したハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.67~1.03)。死亡または重症COVID-19の30日発生率は、ACE阻害薬/ARB群31.9%、非使用群14.2%であった(補正後HR:1.04、95%CI:0.89~1.23)。 コホート内症例対照研究では、高血圧症の既往があるCOVID-19患者571例(年齢中央値73.9歳、男性54.3%)(COVID-19患者群)と、年齢と性別をマッチさせたCOVID-19を有していない高血圧症患者5,710例(対照群)を比較した。ACE阻害薬/ARBの使用率はCOVID-19患者群で86.5%、対照群は85.4%であった。 ACE阻害薬/ARBの使用は他の降圧薬使用と比較し、COVID-19罹患率との有意な関連は認められなかった(補正後HR:1.05、95%CI:0.80~1.36)。

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急性脳梗塞/TIA、チカグレロル+アスピリン併用で予後改善/NEJM

 軽症~中等症の急性非心原性虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)で、静脈内または血管内血栓溶解療法を受けなかった患者において、チカグレロル+アスピリン併用療法はアスピリン単独療法と比較し、発症後30日時点の脳卒中/死亡の複合アウトカムの発生が低下した。米国・テキサス大学オースティン校のS. Claiborne Johnston氏らが、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「THALES試験」の結果を報告した。先行研究では、チカグレロルはアスピリンと比較して、脳卒中/TIA後の血管イベントまたは死亡の予防という点で良好な結果は示されておらず、脳卒中予防に対するチカグレロル+アスピリン併用療法の有効性は十分検討されていなかった。NEJM誌2020年7月16日号掲載の報告。虚血性脳卒中/TIA患者約1万1,000例を対象に試験 研究グループは、米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)のスコアが5未満(範囲:0~42、スコアが高いほど重症度が高い)の軽症~中等症の急性非心原性虚血性脳卒中、またはTIA患者で、血栓溶解療法または血栓除去を実施していない1万1,016例を、発症後24時間以内にチカグレロル(180mg負荷投与後に90mgを1日2回)+アスピリン(初回投与300~325mg、その後75~100mg/日)併用群、またはプラセボ+アスピリン群に1対1の割合で無作為に割り付け(チカグレロル併用群5,523例、アスピリン単独群5,493例)、それぞれ30日間投与した。 主要評価項目は30日以内の脳卒中または死亡の複合アウトカム、副次評価項目は30日以内の虚血性脳卒中の初回再発および身体障害で、主要安全性評価項目は重度出血(GUSTO出血基準)とし、intention-to-treat解析を実施した。チカグレロル併用により、脳卒中または死亡の複合アウトカムのリスクが低下 主要評価項目のイベントは、チカグレロル併用群で303例(5.5%)、アスピリン単独群で362例(6.6%)発生した(ハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.71~0.96、p=0.02)。虚血性脳卒中は、チカグレロル併用群で276例(5.0%)、アスピリン単独群で345例(6.3%)発生した(HR:0.79、95%CI:0.68~0.93、p=0.004)。障害の発生率については、両群間で有意差は認められなかった。 重度出血は、チカグレロル併用群で28例(0.5%)、アスピリン単独群で7例(0.1%)発生した(p=0.001)。

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第17回 ALS患者の嘱託殺人で医師逮捕、日本緩和医療学会が見解を表明

<先週の動き>1.ALS患者の嘱託殺人で医師逮捕、日本緩和医療学会が見解を表明2.コロナ余波による医業収入の落ち込み、回復の兆し見えず3.不正入試問題の東京医大、元理事長に1億円の申告漏れが発覚4.新型コロナワクチン、入手や流通は国が一元対応する方針5.今年度の薬価調査、規模縮小の上で実施へ1.ALS患者の嘱託殺人で医師逮捕、日本緩和医療学会が見解を表明23日、指定難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者から依頼を受け、薬物を投与し殺害したとして、2人の医師が嘱託殺人の疑いで逮捕された。報道によると、昨年11月30日、京都市中京区の患者宅に知人を装って訪問し、急性薬物中毒で死亡させた疑い。患者の遺体からは、鎮静作用のあるバルビツール酸系の薬物が検出されており、京都府警は、胃瘻チューブから薬物を投与したとみている。なお、医師らは偽名を使うことで身元が発覚しないよう警戒し、計画的に準備していた模様。逮捕された医師のうち1人は、海外の大学の医学部を卒業したとして医師国家試験を受け医師免許を取得していたが、京都府警が調査したところ、医学部の卒業の事実を確認できなかった。今後、倫理的な観点からも大きな問題となるとみられる。この事件を受け、日本緩和医療学会が、「いわゆる積極的安楽死や⾃殺幇助が緩和ケアの⼀環として⾏われることは決してありません」などとの見解を25日に表明した。なお、今回逮捕された医師 2人は本学会の会員ではない。(参考)逮捕された医師は元厚労省官僚 「高齢者は社会の負担」優生思想 京都ALS安楽死事件(京都新聞)ALS嘱託殺人事件 医師2人は偽名で女性宅訪問か(NHK)筋萎縮性側索硬化症の患者に対して2名の医師が嘱託殺⼈罪の疑いで逮捕された件について(日本緩和医療学会)2.コロナ余波による医業収入の落ち込み、回復の兆し見えず日本医師会は22日に定例記者会見を開き、新型コロナウイルス感染症対応下での医業経営の状況について発表した。これによると、2020年5月の入院外保険収入の対前年同期比は病院で11.6%減、診療所で20.2%減であった。また診療所の中には、小児科、耳鼻咽喉科では総点数が50%以上減少したと報告した施設も存在した。1ヵ月単月でも、有床診療所で360万円減、無床診療所で120万円減(小児科は300万円)の赤字。これに対し、医療法人、感染防止策を行う有床診療所には上限200万円、個人開業医、無床診療所には上限100万円の補助金があるが、いずれも1回限りであるなど対応は十分とは言えない。初診料算定回数の対前年同月比は、3月、4月、5月と減少し続けており、5月には病院、診療所とも3~4割減と、回復の兆しが見られていないままだ。(参考)新型コロナウイルス感染症対応下での医業経営の状況―2019年及び2020年3~5月レセプト調査―(日本医師会)3.不正入試問題の東京医大、元理事長に1億円の申告漏れが発覚一昨年の不正入試問題が発覚した東京医科大学の前理事長が、入試の前後に受験生の親から個人的に受け取っていた謝礼をめぐって、東京国税局からおよそ1億円の申告漏れを指摘されていることが25日明らかとなった。この事件では、女子学生や浪人生の入試採点において、合否判定を不利にするような操作が長年続けられたことが明らかになっており、前理事長は辞任している。国税局は、前理事長に一昨年までの5年間でおよそ1億円、前学長も同様に謝礼を受け取ったとして、4年間で数百万円の申告漏れを指摘し、両者ともすでに修正申告したとみられる。(参考)東京医大の前理事長 1億円の申告漏れ 不正入試の謝礼(NHK)4.新型コロナワクチン、入手や流通は国が一元対応する方針政府は、国際的に開発競争が続く新型コロナウイルスワクチンの入手や国内流通について、「安全保障上の重要課題」として、首相官邸主導の元、国家安全保障局が一元的に対応することとした。年内に、ワクチン確保を含む感染症対策の充実対策を盛り込むとしているが、議論の結論をまとめた文書は特定秘密保護法に基づく特定秘密にも指定されており、現時点では具体策などは不明である。(参考)新型コロナ NSS、ワクチン確保 安保戦略改定、一元対応へ(毎日新聞)5.今年度の薬価調査、規模縮小の上で実施へ22日に開催された中央社会保険医療協議会総会において、「2020年の薬価調査」について、規模を縮小した上で実施する方針を固めた。今後、9月を対象月とする調査の実施に向けて準備が進む。これまで、新型コロナウイルス感染症の拡大もあり、医療機関や薬局・卸事業者による納入価格交渉も十分にできていないため、対応が困難であると反対していたが、薬価調査の実施方針が政府から示されたため、条件付きでの調査実施を了承した。2021年度の薬価改定が実施されるかは、あらためて検討される見込み。(参考)令和2年度医薬品価格調査(薬価調査)について(中医協)

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