外傷性脳損傷への入院前トラネキサム酸投与開始は有益か/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2020/09/28

 

 中等度~重度の外傷性脳損傷(TBI)患者において、受傷2時間以内の入院前トラネキサム酸投与は、プラセボ投与と比較して6ヵ月後の神経学的アウトカム(Glasgow Outcome Scale-Extendedで測定)を有意に改善しないことが示された。米国・オレゴン健康科学大学のSusan E. Rowell氏らが、米国とカナダの外傷センターおよび救急医療機関で行った多施設共同二重盲検無作為化試験の結果を報告した。TBIは、外傷性の死亡および障害をもたらすが、早期のトラネキサム酸投与がベネフィットをもたらす可能性が示唆されていた。JAMA誌2020年9月8日号掲載の報告。

受傷2時間以内のトラネキサム酸投与開始の有益性を対プラセボで評価

 研究グループは、中等度~重度TBI患者において、受傷2時間以内に院外にて開始するトラネキサム酸治療が、神経学的アウトカムを改善するかを検討した。試験は2015年5月~2017年11月に、米国およびカナダの外傷センター20ヵ所と救急医療機関39ヵ所で実施した。

 適格患者は、Glasgow Coma Scaleスコア12以下および収縮期血圧90mmHg以上である15歳以上のTBI入院前患者(1,280例)で、受傷2時間以内に治療を開始する以下の3つの介入について評価した。(1)入院前にトラネキサム酸(1g)をボーラス投与し、入院後に同薬を8時間点滴投与(ボーラス継続群、312例)、(2)入院前にトラネキサム酸(2g)をボーラス投与し、入院後にプラセボを8時間点滴投与(ボーラスのみ群、345例)、(3)入院前にプラセボをボーラス投与し、入院後にプラセボを8時間点滴投与(プラセボ群、309例)。

 主要アウトカムは、両トラネキサム酸投与群とプラセボ群を比較した、6ヵ月時点の良好な神経学的アウトカム(Glasgow Outcome Scale-Extendedスコア4超[中等度障害または良好な回復])であった。非対称有意性の閾値は、有益性が0.1、有害性は0.025とした。

 副次エンドポイントは18項目で、本論ではそのうち5つ(28日死亡率、6ヵ月時のDisability Rating Scaleスコア[0:障害なし~30:死亡]、頭蓋内出血の進行、発作の発生、血栓塞栓症イベントの発生)を報告している。

6ヵ月時の良好な神経学的アウトカム、トラネキサム酸群65% vs.プラセボ群62%

 主要解析に包含された1,063例のうち、割り付け治療が行われなかった96例とその他1例(登録時に収監)が除外され、解析集団は966例(平均年齢42歳、男性255例[74%]、平均Glasgow Coma Scaleスコア:8)であった。このうち819例(84.8%)について、6ヵ月フォローアップ時に主要アウトカム解析のデータが入手できた。

 主要アウトカムの発生は、トラネキサム酸群65%、プラセボ群62%であった(群間差:3.5%、有益性に関する90%片側信頼区間[CI]:-0.9%[p=0.16]、有害性の97.5%片側CI:10.2%[p=0.84])。

 副次エンドポイントの28日死亡率(トラネキサム酸群14% vs.プラセボ群17%、群間差:-2.9%[95%CI:-7.9~2.1]、p=0.26)、6ヵ月時のDisability Rating Scaleスコア(6.8 vs.7.6、-0.9[-2.5~0.7]、p=0.29)、頭蓋内出血の進行(16% vs.20%、-5.4%[-12.8~2.1]、p=0.16)について、有意差はみられなかった。

(ケアネット)

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コメンテーター : 中川原 譲二( なかがわら じょうじ ) 氏

大阪なんばクリニック 院長

国立循環器病研究センター 脳神経外科 客員部長

J-CLEAR評議員

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