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第33回 日医・中川会長「社会保障のやさしさがない」75歳以上の患者負担、議論保留

<先週の動き>1.日医・中川会長「社会保障のやさしさがない」75歳以上の患者負担、議論保留2.地域医療構想、一人当たり医療費の地域差半減を/経済財政諮問会議3.年末年始に連絡可能な新型コロナ相談窓口の公表などを都道府県に要請/厚労省4.常勤医師の不在、秋田の介護老人保健施設の開設取り消し5.生殖補助医療の民法特例法案が成立、提供卵子でも産んだ母親と親子に6.外来機能報告制度、医療計画の見直しで2022年から開始1.日医・中川会長「社会保障のやさしさがない」75歳以上の患者負担、議論保留12月2日、「第15回 国民医療推進協議会総会」がテレビ会議システムにて開催され、後期高齢者の患者負担割合2割への引き上げについて、「慎重に対応するよう、強く要望する」との決議文が採択された。この日の総会には、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会など41団体が参加した。日医・中川会長は「このような時期に後期高齢者の患者負担割合を1割から倍にするという議論事態が社会保障としてのやさしさをまったく感じられない」と強調した。これにより、12月4日に開催される予定であった全世代型社会保障検討会議が取りやめになった。政府が求める年収170万円以上の人を対象とする方針に対し、公明党は年金生活者である高齢者にとっては負担が大き過ぎるとして、年収240万円以上とするよう求めていた。政府は今週明けに、「全世代型社会保障検討会議」を開いて結論を出す予定だが、来年は引き上げの対象範囲や実施時期などで、さらに議論が重ねられる見込み。(参考)国民医療推進協議会 後期高齢者の患者負担割合で決議「慎重に対応を」(ミクスonline)75歳以上の医療費2割負担 対象範囲めぐり調整難航(NHK)2.地域医療構想、一人当たり医療費の地域差半減を/経済財政諮問会議政府は4日、「経済財政諮問会議」を開催した。社会保障について、経済・財政一体改革の推進により、一人当たり医療・介護費の地域差縮減を求める資料が提示された。地域医療構想の実現には、後発医薬品の使用割合の上昇などを必須目標として医療費適正化計画が盛り込まれ、目標達成のために都道府県へのインセンティブ強化、毎年度の医療費見込みの改訂、保険者協議会の役割強化などを求めている。田村厚生労働大臣からは、2024年度からの第4期医療費適正化計画に向け、都道府県の意見を聞きながら、国と地方が連携し医療費の適正化のために取り組む事項や効果的なPDCA管理ができる新たな仕組みなどについて検討を行い、医療等データの利活用、介護ロボット、ICTなどの活用推進を通して、医療・福祉サービスの生産性向上などを検討することが発表された。2022年度以降の後期高齢者の増加による社会保障費の急増対策として、今後もさまざまな政策立案が進むだろう。(参考)諮問会議 医療費の地域間格差是正はデータの可視化から 医療費適正化計画に後発品使用割合など明示(ミクスonline)令和2年 第18回 経済財政諮問会議 議事次第・資料(内閣府)3.年末年始に連絡可能な新型コロナ相談窓口の公表などを都道府県に要請/厚労省厚生労働省は2日に、新型コロナウイルス感染症対策推進本部などから各都道府県ならびに保健所設置市に対して、年末年始は例年の対応以外に、発熱患者などへの診療・検査を担う医療機関や救急・入院患者の受け入れ医療機関について、十分な医療提供体制を整備できるよう、各地の医療機関や医師会などと事前に調整を行っておくことを求める事務連絡を発出した。年末年始の受診、電話相談、受診調整に対応可能な医療機関を事前に調整のうえ、確保しておくこと。また、発熱患者等が円滑に相談できるよう、年末年始に連絡可能な相談窓口などの公表を行うことを要請している。発熱患者などが医療機関を受診した場合の流れについては、2020年10月16日付けの事務連絡も参考にするように求めている。(参考)年末年始に向けた医療提供体制の確保に関する対応について(令和2年12月2日 事務連絡)(厚労省)次のインフルエンザ流行に備えた発熱患者等が医療機関を受診した場合の流れについて(令和2年10月16日 事務連絡)(同)4.常勤医師の不在、秋田の介護老人保健施設の開設取り消し3日、秋田県は、介護老人保健施設「男鹿の郷」が、2億4,000万円の介護報酬を不正受給していたため、施設の開設許可を取り消した。処分を受けた施設は、介護保険法により老健施設で定められる常勤医師の勤務時間(1週間当たり32時間以上)に従わず、2018年2月から今年6月まで、医師の勤務時間が十数時間と短時間であったにもかかわらず、常勤と偽って請求し、不正受給を受けていた。(参考)介護報酬2億4千万円を不正受給 男鹿の老人保健施設(秋田魁新報)5.生殖補助医療の民法特例法案が成立、提供卵子でも産んだ母親と親子に第三者から精子や卵子の提供を受けて、生殖補助医療によって子供を授かった場合の親子関係を定める民法特例法案が4日、衆院本会議で可決・成立した。生殖補助医療によって、親子関係が不安定にならないよう法律で定めるのが狙いで、議論を重ねてきた。法案成立により、卵子提供では産んだ女性が母、精子提供では夫が父となる。親子関係部分の施行は公布から1年後から。なお、生まれた子が自分の出自を知る権利や、代理母出産をめぐる規制については、今後おおむね2年をめどに必要な法制上の措置を講じるとされた。海外で認められている生殖補助医療の対象の範囲に同性パートナーや独身女性を含むのかなど、今回の法案には含まれなかった論点についてはさらに議論が必要となる。(参考)社説:生殖医療法成立 ルール整備の出発点にしたい(読売新聞)生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案(衆議院)6.外来機能報告制度、医療計画の見直しで2022年から開始3日に開催された「医療計画の見直し等に関する検討会」で、外来機能報告制度について「外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等に関する報告書」が取りまとめられ、2022年度から開始されることが承認された。現在、各医療機関について医療機能情報提供制度もあるが、患者側から見ると、外来医療の機能についての情報が十分に得られにくいこと、再診患者の逆紹介が十分に進んでいないことなどがある。一部の医療機関の外来患者が多くなることによる、患者の待ち時間や勤務医の外来負担などの課題を解消するため、地域での協議で各医療機関が「手上げ」して、「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」を明確化することになった。対象となる医療資源を重点的に活用する外来としては(1)医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来(2)高額等の医療機器・設備を必要とする外来(3)特定の領域に特化した機能を有する外来(紹介患者に対する外来等)が想定されている。病床機能報告と同様に、外来機能報告制度にも診療レセプト情報や特定健診等情報データベース(NDB)を活用して、国から各医療機関に対して、当該医療機関の「医療資源を重点的に活用する外来」に関する実施状況のデータを提供することになっている。今回の報告書は、次回の社会保障審議会医療部会に報告され、医療法等の改正となる見込み。(参考)外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等に関する報告書(厚労省)第24回 医療計画の見直し等に関する検討会(同)

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高齢者でも積極的なコレステロール低下治療が有用だが個別的治療は常に念頭に置くべき(解説:桑島巌氏)-1323

 本論文は24の大規模臨床試験における75歳以上の高齢者2万1,492例について、コレステロール治療と心血管合併症リスク低下との関連をメタ解析した成績である。結果から言うと、75歳以上の高齢者でも若・中年者同様にコレステロール値は下げたほうが心筋梗塞、脳卒中などの心血管イベントリスクは有意に低下するという結果であった。 LDLコレステロール値を1mmol/L(38.67mg/dL)下げると心血管イベント低下率は26%で75歳未満の低下率15%と差がないという結果は、高齢者でもコレステロールの高い症例では心血管イベントは抑制できることを明瞭に示した。 このメタ解析は心血管リスクを有している高コレステロール例を下げることのメリットを実証したものであり、一般住民での追跡研究のメタ解析ではない。したがって、一般住民でのコレステロール値が低いほうが生命予後がよいか否かとの論争とは論点が異なる。 メタ解析の課題の1つである臨床試験の選択における恣意性に関しては、Cholesterol Treatment Trialist’s Collaboration(CTTC)の24試験も含んでおり問題がないと思われる。 メタ解析の避けられない短所として注意すべき点である患者背景の非均一性に関しては、多様性を特徴とする高齢者対象であるだけに、本研究の結果をそのまま臨床の場における高齢者の治療に当てはめるわけにはいかない。本メタ解析に含まれている臨床研究では、フレイルや認知機能障害、腎機能障害例の多くは除外されていることは念頭に置くべきである。また、有効性を検証するメタ解析では、有害事象や安全性に関する情報が希薄になりがちであることにも注意が必要である。 高齢者におけるリスクのある高コレステロール血症に対しても若・中年者同様に、厳格なコレステロール管理が重要であることを念頭に置きつつ、安全性を考慮しながら個別的な治療を心掛ける必要がある。

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生活改善にサポートが必要な患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第39回

■外来NGワード「意思を強く持ちなさい!」(長くは続かない)「ご家族の言うことに従いなさい!」(本人の気持ちを尋ねず)「きちんとしないと合併症が出ますよ!」(医学的脅し)■解説 誰の助けも必要とせず、意思を強く持って一人で頑張る患者さんがいる一方で、家族や知人のサポートが必要な患者さんもいます。こういった社会的サポートについて、ハウス(J.S.House)は4つの分類を提唱しています。金銭面の援助や車による送迎など、直接的に力を貸すのは『道具的サポート』、知識や情報を「こんな運動をしたらいいよ!」「近くのフィットネスジムに行ってみれば?」などと提供するのは『情報的サポート』といいます。また、「頑張っているね!」と励ましたり、愚痴を聞いたりして相談に乗るのは『情緒的サポート』、食事や運動、服薬がうまくいっているかどうかの確認は『評価的サポート』といいます。これらの社会的サポートを必要としているにもかかわらず、うまく得られていない患者さんには、サポーター向けの文書(手紙)を作るという手があります。 たとえば、「一緒に運動しませんか?」「お菓子は週1回までがいいですね?」など、自分にできることについての問い掛けや、「頑張っているわね。応援しています」など、励ましの声掛けをお願いします。逆に、「ダイエットしているのにあまり変わらないわね」「私は普通に食べるけど」などと言って、モチベーションを下げるような言動には気を付けていただけると助かります。などの内容が有効です。 ■患者さんとの会話でロールプレイ医師調子はいかがですか?患者頑張っていますが、なかなか一人では難しいですね。医師どなたか、身近で○○さんをサポートしてくれる人はいませんか?患者うーん、旦那と娘ですかね。医師そうですか。では、お二人に対して思うことはありますか?患者娘は甘いものをよく買ってくるので、つい食べてしまうんですよね。医師なるほど。お母さんの分まで買って来るんですね。旦那さんは?患者少し痩せたのに「あまり変わらないな」ですって…。医師それでは、今の気持ちを基にして、旦那さんと娘さんにお手紙を書いておきますね。患者本当ですか。ありがとうございます。(うれしそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「○○さんをサポートしてくれる人はいますか?」(サポーターの確認)「サポーターさんへのお願いのお手紙を作っておきますね」(サポートの内容、やる気が出る声掛けとNGワードを記載)Williams DR, House JS. WHO Reg Publ Eur Ser. 1991;37:147-172.

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1日1回の経口服用で腎性貧血を治療する「バフセオ錠150mg/300mg」【下平博士のDIノート】第63回

1日1回の経口服用で腎性貧血を治療する「バフセオ錠150mg/300mg」今回は、低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬「バダデュスタット錠(商品名:バフセオ錠150mg/300mg、製造販売元:田辺三菱製薬)」を紹介します。本剤は、保存期・透析期にかかわらず、1日1回の経口服用で腎性貧血を改善し、患者さんのQOLやアドヒアランスの向上が期待されています。<効能・効果>本剤は、腎性貧血の適応で、2020年6月29日に承認され、2020年8月26日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはバダデュスタットとして1回300mgを開始用量とし、1日1回経口投与します。以後は、患者の状態に応じて最高用量1日1回600mgを超えない範囲で適宜増減します。増量する場合は、150mg単位を4週間以上の間隔を空けて行います。休薬した場合は、1段階低い用量で投与を再開します。なお、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)で未治療の場合、本剤投与開始の目安は、保存期の慢性腎臓病(CKD)患者および腹膜透析患者ではヘモグロビン濃度で11g/dL未満、血液透析患者ではヘモグロビン濃度で10g/dL未満とされています。<安全性>CKD患者を対象とした国内全臨床試験において、副作用(臨床検査値異常を含む)は、総症例数481例中61例(12.7%)に認められました。主な副作用は、下痢19例(4.0%)、悪心8例(1.7%)、高血圧7例(1.5%)、腹部不快感、嘔吐各4例(0.8%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、血栓塞栓症(4.2%)、肝機能障害(頻度不明)が現れることがあります。本剤の投与開始前に血栓塞栓症のリスクを評価し、本剤投与中も血栓塞栓症が疑われる徴候や症状を確認する必要があります。<相互作用>本剤はOAT1およびOAT3の基質であり、BCRPおよびOAT3に対して阻害作用を有します。したがって、BCRPの基質となる薬剤(ロスバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、サラゾスルファピリジンなど)、OAT3の基質となる薬剤(フロセミド、メトトレキサートなど)との相互作用には注意が必要です。また、多価陽イオンを含有する経口薬(カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウムなどを含む製剤)と併用した場合にキレートを形成し、本剤の作用が減弱する恐れがあるため、併用する場合は本剤の服用前後2時間以上を空けて投与します。<患者さんへの指導例>1.この薬は、赤血球のもとになる細胞を刺激し血液中の赤血球を増やすことで、貧血を改善します。2.吐き気、嘔吐、手足の麻痺、しびれ、脱力、激しい頭痛、胸の痛み、息切れ、呼吸困難などが現れた場合は、すぐに医師に連絡してください。3.この薬には飲み合わせに注意が必要な薬があります。新たに薬やサプリメントを使用する場合は、必ず医師または薬剤師に本剤の服用を伝えてください。<Shimo's eyes>腎性貧血は、腎機能の低下に伴いエリスロポエチン(EPO)の産生が減少することによって生じる貧血です。これまで、腎性貧血の治療にはEPOの補給を行うために、ダルベポエチンアルファ(商品名:ネスプ)やエポエチンベータペゴル(同:ミルセラ)などのESAが投与されてきました。これらの製剤は注射薬ですが、近年は内服薬であるHIF-PH阻害薬が開発され、患者さんの負担を軽減し、QOLが維持されやすくなりました。HIF-PH阻害薬は、低酸素応答機構がEPO産生を調節することを利用した、まったく新しい機序の腎性貧血治療薬であり、その機構解明の功績により、William G. Kaelin Jr.、Sir Peter J. Ratcliffe、Gregg L. Semenzaが2019年ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。2020年11月時点でロキサデュスタット錠(同:エベレンゾ)、ダプロデュスタット錠(同:ダーブロック)、エナロデュスタット錠(同:エナロイ)、そして本剤の4種類が発売されています。それぞれ適応、服用回数、腎機能などによる投与量、増量段階の回数や間隔、食事の影響などに違いがあります。本剤は食事の影響が比較的少なく、どのタイミングでも服用できます。また、CKD保存期でも透析期でも同じ投与量であり、腎機能によって投与量が異なることもありません。調節範囲も4段階と比較的少なくなっています。腎性貧血患者は、リン吸着剤などの併用により服用時点が多くなりがちなので、シンプルな服用方法はアドヒアランスの向上に役立つと考えられます。HIF-PH阻害薬の登場によって、腎性貧血治療が薬局薬剤師にとって身近なものになります。日本腎臓学会から「HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation」が公表されていますので、一度目を通しておくとよいでしょう。参考1)PMDA 添付文書 バフセオ錠150mg/バフセオ錠300mg2)日本腎臓学会 HIF-PH 阻害薬適正使用に関するrecommendation

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第36回 PfizerやModernaの第III相試験成功でmRNAワクチンの展望が開けた

先月11月の早くに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防ワクチン2つの期待の持てる発表がありました。広く報じられている通り、1つはPfizer/BioNTech、もう1つはModernaの開発品のどちらも第III相試験の途中解析でCOVID-19の9割超を防いだのです。2つのワクチンはどちらも90%超の有効性を引き出したことに加えて別の共通項も有します。それは成分がどちらもメッセンジャーRNA(mRNA)ということです。投与されたmRNAは体内で細胞にウイルスタンパク質を作らせ、そのタンパク質の起源であるウイルスへの免疫反応を備わらせます。理論的にはmRNAで作れないタンパク質はありません。それにmRNAは昔なじみのワクチンで使われている弱毒化ウイルスやタンパク質より手軽に製造でき、有望視されてきました。mRNAワクチンの端緒となる取り組みは30年以上前から続いており、すでに1990年にはDNAやRNAをマウスの筋肉に注射してタンパク質を作らせることに成功したことを米国の研究チームが報告しています1)。しかし単にmRNAを注射しただけではすぐに分解されてしまい、タンパク質はほんの僅かしか作られません。それにRNAはそれが生み出すタンパク質への目当ての免疫反応とは別の余計な免疫反応の心配があります。ペンシルバニア大学のmRNAワクチン研究専門家Norbert Pardi氏によるとRNAを単に注射したのでは非常に深刻な炎症を引き起こしかねません2)。2つの技術の進歩がそれらの課題を克服し、Pfizer/BioNTechやModernaのCOVID-19ワクチン誕生へと通じるmRNAワクチン開発の道を開きました。1つは体内でタンパク質をより作り、mRNA自体への免疫反応を生じ難くするようにRNA構成要素・ヌクレオシドを加工する技術が生み出されたことです。免疫分野ジャーナル最高峰のImmunity誌に2005年に報告されたその成果3)は仲間内では大手柄となっているとInternational Society for Vaccinesの会長Margaret Liu氏は科学ニュースTheScientistに話しています2)。2つめの進歩はmRNAを脂質ナノ粒子(LNP)と呼ばれる脂肪の細かな泡に封入して体内で分解されにくくする技術が開発されたことです4)。LNPのおかげで細胞内へのmRNAの輸送が改善しました。それら技術の甲斐あってmRNAワクチンは人へ投与できるまでに至り、小規模ながら狂犬病・インフルエンザ・ジカウイルス(ZIKV)などへのmRNAワクチンの試験が実施できるようになりました。しかしそれらmRNAワクチンの先駆けはどういうわけかCOVID-19へのPfizer/BioNTechやModernaのmRNAワクチンほどの効果はなく、なぜCOVID-19へのそれらmRNAワクチンがとりわけ有効なのかは今後調べていく必要があります。また、COVID-19へのmRNAワクチンの安全性も隈なく調べねばなりません。それにmRNAワクチンを世界の隅々に届けるのには保冷設備の準備も必要です。ModernaのワクチンmRNA-1273は2~8℃で30日間、マイナス20℃なら最大6ヵ月安定なので標準的な冷蔵/冷凍庫があれば事足りそうですが、Pfizer/BioNTechのmRNAワクチンBNT162b2はいまのところマイナス70℃もの低温で保管しなければなりません。そのような解決が必要な課題があるとはいえ、Pfizer/BioNTechやModernaの開発品の第III相試験のひとまずの成功はmRNAワクチンの明るい展望を切り開きました。英国はPfizer/BioNTechのBNT162b2を数日以内に承認し、注文済みの4,000万回分の投与が早ければ今月7日から始まると同国の経済紙ファイナンシャル・タイムズ(FT)が先月28日に報じています5)。英国はModernaのワクチンの段階的承認審査も進めており、合計700万回投与分を注文済みです6)。mRNAワクチンはCOVID-19をはじめとする感染症への使用に加えてがんへの免疫反応を引き出す用途の開発も複数進んでおり7)、今後は多くの企業がmRNAワクチンに関心を示すだろうとCOVID-19ワクチン助成組織・Coalition for Epidemic Preparedness Innovations(CEPI) の企画/技術リーダーNick Jackson氏は言っています2)。参考1)Wolff JA, et al. Science. 1990 Mar 23;247:1465-8.2)The Promise of mRNA Vaccines / TheScientist3)Kariko K, et al. Immunity. 2005 Aug;23:165-75.4)Reichmuth AM, et al. Ther Deliv. 2016;7:319-34.5)UK set to approve Pfizer-BioNTech Covid vaccine within days / FINANTIAL TIMES6)Moderna Announces Amendment to Current Supply Agreement with United Kingdom Government for an Additional 2 Million Doses of mRNA Vaccine Against COVID-19 (mRNA-1273) / businesswire7)Pardi N, et al. Nat Rev Drug Discov. 2018 Apr;17:261-279.

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COVID-19と精神疾患、相互に発症リスク高める

 COVID-19患者において精神疾患の後遺症リスクが高く、また精神疾患がCOVID-19の独立したリスク因子である可能性が、英国・オックスフォード大学のMaxime Taquet氏らによる電子健康記録ネットワークコホート研究で示唆された。Lancet Psychiatry誌オンライン版2020年11月9日号に掲載。 本研究は、米国の54施設の患者6,980万人の電子健康記録から匿名化データを収集しているTriNetX Analytics Networkを使用した。TriNetXには2020年1月20日~8月1日にCOVID-19と診断された6万2,354人のデータが含まれ、COVID-19および他のさまざまなイベントを発症した患者コホートを作成し評価した。傾向スコアマッチングを用いて、COVID-19のリスク因子による交絡と重症度を調整した。COVID-19診断後14〜90日における精神疾患、認知症、不眠症の発症率とハザード比(HR)を調べた。 主な結果は以下のとおり。・精神疾患歴のない場合、COVID-19の発症は他の6イベントと比較して、診断後14~90日における精神疾患の発症率の増加と関連した(すべてp<0.0001)。 - インフルエンザに対するHR:2.1、95%CI:1.8~2.5 - 他の呼吸器感染症に対するHR:1.7、95%CI:1.5~1.9 - 皮膚感染症に対するHR:1.6、95%CI:1.4~1.9 - 胆石症に対するHR:1.6、95%CI:1.3~1.9 - 尿路結石症に対するHR:2.2、95%CI:1.9~2.6 - 大きな骨の骨折に対するHR:2.1、95%CI:1.9~2.5・不安障害、不眠症、認知症のHRが最も高かった。・COVID-19診断後14〜90日における何らかの精神疾患の発症率は18.1%(95%CI:17.6~18.6)、うち新規発症では5.8%(95%CI:5.2~6.4)であった。同期間における認知症の新規発症率は、65歳以上で1.6%(95%CI:1.2~2.1)であった。・前年に精神疾患と診断された人は、COVID-19発症率が高かった(相対リスク:1.65、95%CI:1.59~1.71、p<0.0001)。このリスクはCOVID-19の既知の身体的リスク因子とは独立していたが、社会経済的因子による残留交絡の可能性を排除できない。

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みんパピ! HPVワクチン説明補助フライヤーを無料配布

 一般社団法人HPVについての情報を広く発信する会-みんなで知ろう!HPVプロジェクト(通称みんパピ!)が11月17日に厚生労働省記者クラブで記者発表を行った。 同団体は8月から実施したクラウドファンディングで約2,600万円の資金調達を達成。その後の活動としてHPVワクチン説明補助用フライヤーの無料配布開始を報告した。 フライヤーは、小児科医をはじめとしたかかりつけ医がHPVワクチンについて説明をしやすいよう、同団体の事前アンケートに基づいて設計されている。 HPVワクチンの定期接種対象年齢は、小学校6年生~高校1年生。この年齢層の子供や保護者が予防接種について相談するのは主に小児科医だ。小児科医を対象にHPVワクチンについて聞いた事前アンケートでは、83%が家族に接種を勧めると回答した一方、患者への説明ではメディアで繰り返し報道された様々な反応への不安(40%)、注射部位の局所症状への不安(40%)といった副反応への不安が多く見受けられた。 そこでフライヤーは、接種後の反応の説明に重点を置き、限られた診察時間で医師が説明しやすいよう作成された。母子手帳に挟めるサイズの厚紙を使い、デザインにはイラストを多用している。内容からデザインまで子供と保護者が親しみやすく、接種年齢まで保管してもらえるよう設計されている。 11月から行った試験配布で、31都道府県118ヵ所に17,000枚が配布されており、使用者アンケートでは、内容のわかりやすさに100%、内容の充実度や全体的なデザインは95%の医師が満足と回答している。 小児科のほかに皮膚科や腫瘍内科からの申し込みもあり、とくに皮膚科の医師からは定期接種年齢の子供を診察することが多いため、積極的に活用しているとの声が寄せられている。 使用を希望する場合は、みんパピ! HPの問い合わせフォームから申し込みが可能だ。 申し込みの際は氏名、医療機関名、郵送先住所、電話番号、希望枚数(50~300枚、300枚以上は要相談)を明記のこと。印刷から配送まで無料で対応してもらえる。 診療科を問わず、接種世代の子供を診療する医師はぜひ活用を。

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手洗い・マスク着用、一般市民は何割が実施?/感染症に関する意識・実態調査

 日本感染症学会(理事長:舘田 一博)と日本環境感染学会(理事長:吉田 正樹)は、感染症予防連携プロジェクト「FUSEGU2020」の活動として「感染症に関する意識・実態調査」と題し、首都圏に住む20~60代の男女1,000名を対象としたアンケート調査を実施。その結果、感染症予防の基本対策(手洗い、マスクの使用、手の消毒)を多くの人が実施し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を機にほかの感染症に対する関心が高まった人が6割以上に上ることが明らかとなった。手洗い87.7%、マスク使用87.4%という意識・実態調査の結果 この感染症に関する意識・実態調査は、COVID-19拡大の大きな波を経て手洗いやマスクの使用など感染症予防のための行動が浸透しているか、2~3月に実施した調査結果と比較し実態を把握することとともに、東京オリンピック・パラリンピック開催などに向け、発生・流行する可能性のあるさまざまな感染症に対する意識を調べることを目的に実施された。 手洗いやマスクの使用など、感染症に関する意識・実態調査の主な結果は以下のとおり。・アンケートはWEB調査で、2020年10月9日~12日に実施された。・感染予防策として実施していたのは、手洗いが87.7%、マスクの使用が87.4%、手の消毒が65.9%だった。・感染予防策それぞれについて「大切である」との意識は女性で高く、若い男性で低い傾向だった。・自身に発熱がある場合、「人にうつる病気であることを意識する」人が4.5割から7割に増加した。・COVID-19などの「感染症をうつされるかもしれない」と警戒心が引き締まるのは、同居する家族12.4%、別居している家族25.6%、友人33.9%、職場の同僚 39.6%で、家族間の意識が低い傾向だった。・ほかの感染症に対する関心が高まったという人が6割以上だった。・感染症への関心が高まる一方で、COVID-19以外に対する認知・理解は進んでいなかった。・ワクチン接種を感染症の予防手段の1つとして考えている人は6割以上だった。・実際にワクチン接種を受けたり、検討したりした人は約4割にとどまった。・インフルエンザ以外の感染症については、ほとんどの人がワクチン接種を受けていない、もしくは検討していなかった。

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研修医は総合診療科も研修したほうがいい

 近年、医師の初期臨床研修において総合診療領域は重要視されている。実際、総合診療科(GM)を研修ローテートした研修医の臨床能力はどの程度向上するのだろう。順天堂大学医学教育研究室 西崎 祐史氏らは、全国の臨床研修施設で調査を行い、初期臨床研修医の基本的臨床能力評価試験(GM-ITE)のスコアとGMローテートとの関連性を評価した。 本研究は、2016~18年にJAMEP基本的臨床能力評価試験を受験した初期研修医1万1,244人を対象とした多施設共同横断研究(参加した病院数は2016年381施設、2017年459施設、2018年503施設)である。 研究方法として、教育環境(病院情報を含む)とGM-ITE総合スコアとの関連をマルチレベル分析にて評価した。なお、GM-ITEは「医療面接/プロフェッショナリズム」「症候学/臨床推論」「身体診察/臨床手技」「疾病各論」の4つのカテゴリーで構成され、幅広い疾患領域(内科・外科・小児科・産婦人科・精神科など)が網羅されている。総合診療科研修とGM-ITEスコアの間には正の相関がある 合計4,464人(39.7%)の研修医がGMローテートを経験した。GMローテートを経験した研修医のGM-ITE(60点満点)の平均スコア38.1(±標準偏差12.1)点は、GMローテートを経験しなかった研修医[36.8±11.7点(総合診療科があるがGMローテ―トなし)および36.5±11.5点(総合診療科がなくGMローテ―トなし)]よりも高得点を示した。座学時間や研修中の担当入院患者数などを調整したうえでも、GMローテート経験者の得点は、総合診療科のない施設でのGMローテ―ト未経験者に比べてGM-ITEスコアが平均1.18点(標準誤差0.30点、p=0.0001)高く推定された。 以上から、GMローテートと研修医のGM-ITEスコアの間には正の相関を認めた。今後、初期研修医の基本的臨床能力向上のために、GMのローテートの必須化を検討する必要があるとしている。

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家族構成とうつ病との関係

 配偶者またはパートナーや子供の人数などの家族構成と生涯うつ病有病率との関連を、英国・キングス・カレッジ・ロンドンのAlexandros Giannelis氏らが調査を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年10月10日号の報告。 中高年を対象としたプロスペクティブ研究であるUKバイオバンクのデータを使用した。生涯うつ病は、フォローアップ時のメンタルヘルス関連の質問票の一部を用いて評価した。家族構成とうつ病との関連は、ロジスティック回帰を用いて推定した。うつ病の多遺伝子性リスクスコア(polygenic risk score)を含む社会的、人口統計学的およびその他の潜在的な交絡因子で調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・成人5万2,078人(平均年齢:63.6±7.6歳、女性の割合:52%)を対象に分析を行った。・生涯うつ病オッズ比は、配偶者またはパートナーと生活している人において大幅に低かった(OR:0.67、95%CI:0.62~0.74)。・生涯うつ病オッズ比は、子供がいない人と比較し、子供が1人(OR:1.17、95%CI:1.07~1.27)、子供が3人(OR:1.11、95%CI:1.03~1.20)、子供が4人以上(OR:1.27、95%CI:1.14~1.42)いる人で高いことが示唆された。・配偶者やパートナーと同居していないが子供がいる人では、生涯うつ病オッズ比が高かった。・年齢、性別、経済的に裕福でない地域での居住(neighbourhood deprivation)、うつ病の遺伝的リスクで調整した場合でも、この結果は一貫していた。・メンデルランダム化解析では、生涯うつ病に対する子供の人数との関連が示唆された。・本検討の限界として、婚姻の有無が確認できなかったことが挙げられる。 著者らは「配偶者やパートナーとの生活は、うつ病の可能性を低下させることに寄与する。また、1人または3人以上子供がいる場合、とくに同居している配偶者やパートナーがいない人では、うつ病有病率が上昇する」としている。

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スタチン+降圧薬のポリピル、アスピリン併用で心血管イベント抑制/NEJM

 心血管疾患がなく、中等度以上の心血管リスクを有する集団において、スタチンと3つの降圧薬の合剤であるポリピル(polypill)とアスピリンの併用療法はプラセボ+プラセボと比較して、心血管イベントの発生率が約3割低いことが、カナダ・マックマスター大学のSalim Yusuf氏らが行ったTIPS-3試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年11月13日号に掲載された。世界では毎年、心血管疾患による死亡が約1,800万件発生しており、その80%以上を低~中所得国が占めるという。血圧上昇とLDLコレステロール値上昇は、心血管疾患の最も重要な修正可能なリスク因子であり、降圧薬と脂質低下薬を組み合わせたポリピルが有益な可能性が示唆されている。一方、アスピリンは、心血管疾患患者に対する有用性が証明されているが、心血管疾患の1次予防における単独での役割、あるいはポリピルに含まれる1剤としての役割は明らかにされていない。ポリピル単独とアスピリン単独とポリピル+アスピリン併用を比較 本研究は、2×2×2ファクトリアルデザインの二重盲検プラセボ対照無作為化試験であり、9ヵ国(インド、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア、インドネシア、コロンビア、カナダ、タンザニア、チュニジア)の86施設が参加し、2012年7月~2017年8月の期間に患者登録が行われた(Wellcome Trustなどの助成による)。 対象は、心血管疾患がなく、INTERHEARTリスクスコア(0~48点、点数が高いほど心血管リスクが高い)で中等度または高リスクの50歳以上の男性および55歳以上の女性であった。被験者は、ポリピル(シンバスタチン40mg、アテノロール100mg、ヒドロクロロチアジド25mg、ramipril 10mgを含有)またはプラセボを毎日、アスピリン75mgまたはプラセボを毎日、ビタミンDまたはプラセボを毎月投与する群に無作為に割り付けられた。 今回は、ポリピル単独とプラセボ、アスピリン単独とプラセボ、ポリピル+アスピリンとダブルプラセボの比較の結果が報告された。 ポリピル単独およびポリピル+アスピリンとそれぞれのプラセボとの比較における主要アウトカムは、主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心停止への蘇生術、心不全、動脈血行再建)の複合とした。アスピリンとプラセボの比較における主要アウトカムは、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合であった。ポリピル+アスピリン併用群の主要アウトカム:4.1% vs.5.8% 5,713例が無作為化の対象となり、平均フォローアップ期間は4.6年であった。参加者はインドが47.9%と最も多く、次いでフィリピンが29.3%であった。ベースラインの平均年齢は63.9歳、52.9%が女性で、高血圧/血圧上昇が83.8%、糖尿病/血糖値上昇が36.7%で認められ、平均収縮期血圧は144.5mmHg、平均心拍数は77.0拍/分、平均LDLコレステロール値は120.7mg/dL(3.1mmol/L)だった。 試験期間中、ポリピル単独とポリピル+アスピリン併用を合わせた群はプラセボ群と比較して、平均収縮期血圧が5.8mmHg低く、平均心拍数が4.6拍/分少なく、平均LDLコレステロール値が19.0mg/dL(0.50mmol/L)低かった。 ポリピル比較の主要アウトカムは、ポリピル群(2,861例)が126例(4.4%)、プラセボ群(2,852例)は157例(5.5%)で発生した(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.63~1.00)。また、アスピリン比較の主要アウトカムは、アスピリン群(2,860例)が116例(4.1%)、プラセボ群(2,853例)は134例(4.7%)で発生した(HR:0.86、95%CI:0.67~1.10)。 ポリピル+アスピリン比較の主要アウトカム(初発)は、ポリピル+アスピリン群(1,429例)が59例(4.1%)、ダブルプラセボ群(1,421例)は83例(5.8%)で発生した(HR:0.69、95%CI:0.50~0.97)。初発と再発を合わせた主要アウトカムは、ポリピル+アスピリン群が64例、ダブルプラセボ群は93例で発生した(HR:0.68、95%CI:0.48〜0.96)。 副作用により試験を中止した参加者数は、ポリピル+アスピリン群とダブルプラセボ群で同程度であった(筋肉症状:5例、7例、消化管出血:3例、1例、胃腸症[dyspepsia]:3例、3例、胃炎:19例、22例、消化性潰瘍:3例、3例)。また、低血圧およびめまいの発生率は、ポリピルを投与された群が、それぞれに対応するプラセボ群に比べて高かった。低血圧およびめまいにより試験薬を中止した参加者は、ポリピル+アスピリン群が45例、ダブルプラセボ群は22例だった。大出血は、ポリピル+アスピリン群が9例、ダブルプラセボ群は12例で報告された。 著者は、「併用群の心血管イベントに関する有益性は、LDLコレステロール値と血圧の適度な低下に、アスピリンによる有益性が加わった場合に予測されたものと一致していた」としている。

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第32回 新型コロナと向き合う医療従事者を守る制度が発足

<先週の動き>1.新型コロナと向き合う医療従事者を守る制度が発足2.財政制度等審議会、受益者と負担のバランスを求める建議を提出3.政府、後期高齢者の窓口2割負担へ見直しに議論を加速4.経済財政諮問会議で、厚生労働大臣、令和3年度介護報酬改定に向けた方針を発表5.コロナ感染拡大第3波、患者団体から要望書相次ぐ6.医療計画の見直し、新興感染症に対する医療を6事業目に追加1.新型コロナと向き合う医療従事者を守る制度が発足新型コロナウイルス感染に対応する医療機関で働く医療従事者を支援する「新型コロナウイルス感染症対応医療従事者支援制度」が新しく11月より発足した。この制度は、新型コロナウイルスと向き合う医療従事者の支援として寄せられた寄付金を活用して、万が一コロナウイルスに感染した場合でも一定の収入を補償することを目的に、新型コロナウイルス感染症患者に対応した医療従事者が感染し休業した場合の支援制度(医療従事者支援制度)に対する補助を要望して発足したもの。医療機関の開設者・管理者から加入の申し込みによって、政府労災などの認定を受けて4日以上休業した場合、休業補償保険金20万円、死亡すれば死亡補償金最大500万円を受け取れる。保険料は医療従事者1名あたり1,000円/年と負担も軽く、医療資格者以外も補償対象となる。加入できるのは国内の病院や診療所(共に保険医療機関)、介護医療院、助産所、訪問看護ステーションで、募集期間は4期に分かれ、最終締め切りは2021年2月15日。詳細は下記を参照されたい。(参考)日本医療機能評価機構新型コロナウイルス感染症対応医療従事者支援制度特設サイト2.財政制度等審議会、受益者と負担のバランスを求める建議を提出財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会は、11月25日に2021年度予算の編成に向けて「秋の建議」をまとめ、麻生財務相に提出した。この中で、社会保障については、2022年に団塊の世代が後期高齢者となることを見据え、給付が高齢者中心・負担は現役世代中心となっている患者負担の仕組みの見直しを求め、後期高齢者の自己負担を、可能な限り広範囲で8割給付(2割負担)の導入と現役世代の拠出金負担の軽減を求めている。また、薬価については2021年度から毎年改定を行うため、初年度にあたっては全品改定の実施を求めている。このほか都道府県医療費適正化計画の見直し、国保の都道府県単位化の趣旨の徹底やデジタル化の推進、医療扶助については、頻回受診や長期入院への対策を求める内容となっている。(参考)令和3年度予算の編成等に関する建議3.政府、後期高齢者の窓口2割負担へ見直しに議論を加速11月24日、菅内閣は全世代型社会保障検討会議を首相官邸で開催し、75歳以上の後期高齢者が医療機関で支払う窓口負担をめぐる問題について議論を行い、1割負担から負担増となる後期高齢者の対象範囲について、菅総理からは「能力に応じた負担」について、年内に取りまとめる最終報告を求めた。日本医師会からは、後期高齢者は1人当たり医療費が高いので、患者負担の割合はすでに十分に高いとし、患者負担の引き上げによって、受診控えや負担増による必要な医療を遠慮する可能性を指摘していた。厚生労働省は11月26日に社会保障審議会医療保険部会を開催し、医療保険制度改革について討論し、現状の75歳以上の後期高齢者医療を支援するために、現役世代の保険料で負担を見直さないままでいると、今年度6兆8,000億円が5年後には8兆2,000億円になるという見通しを示した。会議では、現状の高齢者医療の持続可能とするために、現役世代の負担軽減を図る改革は待ったなしの課題としており、現行の窓口負担1割のままでは現役世代の負担が急増することから先送りは認めない、とする意見も出たものの、コロナ感染拡大の中、国民の不安を増す制度改正について異論が出され、結論は出ないまま引き続き検討を行なうこととなった。(参考)全世代型社会保障検討会議(第11回)配布資料 令和2年11月24日第135回社会保障審議会医療保険部会 資料 令和2年11月26日4.経済財政諮問会議で、厚生労働大臣、令和3年度介護報酬改定に向けた方針を発表11月27日、内閣府は経済財政諮問会議を開催し、この中で田村 憲久厚生労働大臣が医療・介護分野の取り組みを発表した。コロナ感染拡大下でも「地域医療構想」は、基本的な枠組み(病床必要量の推計等)を維持した上で、着実に取り組みを実施し、病床機能再編支援制度等に消費税財源を充当するなどの対応を実施するとした。また令和3年度介護報酬改定については、感染症や災害への対応力強化、地域包括ケアシステムの推進、自立支援・重度化防止の取組の推進、介護人材の確保・介護現場の革新を実現し、制度の安定性・持続可能性の確保を求めるために改訂を行っていくことを明らかにした。このほかオンライン資格確認、オンライン診療、後発薬の使用促進などについて述べた。(参考)第17回経済財政諮問会議  田村臨時議員提出資料 令和2年11月27日 令和3年度予算に向けた社会保障の課題・取組と今後の雇用政策の方向性第17回経済財政諮問会議 令和2年11月27日 会議資料5.コロナ感染拡大第3波、患者団体から要望書相次ぐ急速な新型コロナウイルスの感染拡大により、大学病院などの病床が逼迫しつつあることなどを背景に、がん患者や難病患者の団体は、治療継続が困難にならないよう、国に対策を求める要望書を提出した。2020年11月25日は難病患者の団体である日本難病・疾病団体協議会が、27日には全国がん患者団体連合会が、国に対し「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急要望書」を提出している。要望書では、感染対策強化と、手術や検査、オンライン診療の実施と拡充を求め、コロナ対策の病床確保のためにがん患者が転院せざるを得ない状況を回避するために、速やかに必要な施策をとることを求める内容となっている。(参考)全国がん患者団体連合会 新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急要望書2020年11月27日日本難病・疾病団体協議会 緊急要望書2020年11月25日6.医療計画の見直し、新興感染症に対する医療を6事業目に追加厚生労働省は11月19日に「医療計画の見直し等に関する検討会」を開催し、現行の医療計画の5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患.)・5事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児救急医療を含む小児医療)に、新たに「新興感染症等の感染拡大時における医療」への対応を6事業目として加えることで合意した。今後は、医療法の改正し、2024年度に策定する第8次医療計画に盛り込まれることになる。また「外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等について」も議論され、医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関を明確にするために、各医療機関から都道府県に、外来機能のうち、「医療資源を重点的に活用する外来」(仮称)に関する医療機能の報告(=外来機能報告〈仮称〉)を行うこととし、これにより、地域ごとに、どの医療機関で、どの程度、「医療資源を重点的に活用する外来」が実施されているかの明確化を図ることになる。(参考)第23回 医療計画の見直し等に関する検討会 令和2年11月19日

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蟻の一穴が全身の代謝と機能不全を改善するとは(SGLT2阻害薬とHFrEFの話)(解説:絹川弘一郎氏)-1322

 EMPEROR-Reducedは心血管死亡を抑制できず、DAPA-HFほどのインパクトは正直なかったが、メタ解析しても本質的違いは認められず、SGLT2阻害薬は完全にクラスエフェクトかどうかは微妙だが、この2剤(とカナグリフロジンも?)を考えている限り、HFrEFのNYHA IIには必ず使用すべきものとなった。あらためて言うまでもないが、糖尿病の有無にはまったく関係ない。まず、EMPEROR-ReducedとDAPA-HFの違いを説明する。EMPEROR-ReducedでEF30~40%の患者で全然イベントが減っていない。これが差をもたらしている。DAPA-HFでのEF別解析を見ると微妙にEF40%近くでHRが1の方向に向かっており、DECLARE-TIMI58のサブ解析(ちなみにこの京大加藤先生のCirculationは素晴らしいの一言、読んでいない人は一読を!)でも示されているようにSGLT2阻害薬はどうやらHFrEF(あとはMI後―これはHFrEFと考え方は同じ―これもDECLARE-TIMI58のサブ解析でCirculationになってる)の薬剤であるようだが、さすがにEF35%で効きませんと言われたらびっくりである。これはEMPEROR-Reducedのエントリー基準が悪い。EFが30%以上の患者ではイベント発生率を均てん化するという目的でNT-proBNP高値(EF31~35%で1,000以上、36~40%で2,500以上)の患者しかエントリーしないとしてしまった。おそらくその場合NYHA的には重症であろうし、腎機能低下例も多いはずで、DAPA-HFはこのような訳のわからないことはしていない。EFもBNPも予後のサロゲートマーカーであり、イベント発生率を調整するために全体でEF<40%プラスNT-proBNP>600などとするのは最近一般化しているが、今回あまりにいじり過ぎで失敗したといえよう。そもそも1,000とか2,500になんの根拠があるのか全然わからない。なお、DAPA-HFとのメタ解析を見てもNYHA III-IVにはSGLT2阻害薬は予後改善効果がほとんどないので、あまりBNPが高い症例は不向きである。そのための薬剤はvericiguatとomecamtiv mecarbilが待っている。 上記でも触れたようにSGLT2阻害薬はそんなに重症でないNYHA IIのHFrEF患者がスイートスポットである。ある意味ARNIと同じくらい(もちろん、併用すべき)。EF別のDAPA-HFの解析を見てもEF<15%ではあまり効いていない。心筋梗塞後の少しEFが低下した症例などはミッドレンジEF40~50%でも効くかもしれない(これは今後検証される予定)。私はSGLT2阻害薬をHFrEF治療のファーストラインドラッグ(ARNI/β遮断薬/MRAに加えて)と考える理由は、この薬剤の有効性のメカニズムが交感神経系やRAAS系とほとんどオーバーラップしていないながら、HFrEFの予後改善の作法どおり、リバースリモデリングを起こしているからである。まずカプランマイヤー曲線を見ても投与直後から心不全入院を抑制するメカニズムはいろいろ考えてもやはり利尿しかない。交感神経系については利尿後に心拍数が上がらないところからある程度の抑制的作用があると思われるが、さほど強い交感神経抑制作用は今まで報告はないようである(仮にあってもβ遮断薬が要りませんということはありえない、ちなみにCANVASではβ遮断薬不使用でイベント抑制効果が消える)。RAAS系についてはこの利尿期にむしろわずかながら活性化されることは私たちも示しているが、他のグループも同様の結果を得ている(だからARNIとMRAは入れておく必要あり)。つまり、今までの神経体液性因子のストーリーとは別の作用点があるはずである。また遠隔期の予後改善効果を利尿一本やりではやはり無理がある。さらに急性期の利尿効果は(自明ともいえるが)血糖依存性であることはわれわれも示しており、non-DMの患者でのEMPEROR-Reducedの解析を見ると最初の3ヵ月心不全入院のカプランマイヤー曲線が分離していないことは非糖尿病心不全患者での急性期利尿作用の貢献度が相対的に低いことは感じられる。 ケトン体増加による心筋代謝改善については一定の役割はあると思われる。しかし、問題もある。糖尿病を有しないHFrEFで糖代謝依存になっているときにケトン体が代替燃料というのはわかりやすいが、そうたくさんはケトン体は増えていない。一方糖尿病患者ではSGLT2阻害薬でケトン体は増えるものの、インスリン抵抗性で糖代謝が減少しているときにそれで糖代謝が改善するというVerma論文のロジックがよくわからない。さらに糖尿病とHFrEFが共存するとき、代謝がどうなっているのか、ほとんど知られていない。心筋代謝は百人いれば百の説があるくらい混乱を極めており、まだまだこれからの分野である。 近位尿細管細胞のATP消費抑制とhypoxia改善によるHIF-1α減少と腎保護効果に合わせてエリスロポエチンとヘモグロビンの増加についてはHIF-2α増加を介するといわれてきているが、ヘモグロビンの増加自体は0.5程度であり、以前のRED-HF試験の結果(ダルベポエチンで1.5増加させた)を見てもその程度で心不全の予後は改善しない。補助的には効いているかもしれないが、ヘモグロビン値はHIF-2αシグナリングのマーカーと考えるのが良いと思われる。HIF-2αの活性化はSGLT2阻害薬による擬似飢餓状態のシグナリングSIRT1から来るようである(SIRT1シグナリングからオートファジーの活性化とか酸化ストレス障害の抑制とかなってくるとホント?感が強くなってくるが)。ここが臨床的に検証されるのはとても困難であろうし、この擬似飢餓状態シグナリングが心筋細胞でも生じるというのが必要であるが、少なくともエリスロポエチンとヘモグロビンとヘマトクリットが増えているという部分は間違いない事実であり、mediation解析でも心血管死を説明するのにヘモグロビンが最強の因子であるわけで、擬似飢餓状態のシグナリングが一番魅力的な仮説のように思われる。SGLT2阻害薬は近位尿細管にのみ直接作用点があるにしてはその蟻の一穴を通して全身への波及効果が力強く、糖尿病治療薬から脱皮して、今までに遭遇したことのないCKD治療薬(DAPA-CKD)と心不全治療薬となったようである。

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医業における「費用」、大きな部分を占める◯◯に着目せよ!【今さら聞けない!医療者のための決算書の読み方】第2回

<登場人物>実家の診療所を継ぐことを決め、病院で同期だったコンサルタントの田中に定期的に相談するようになった宮路。前回は病院の収益について学んだが、今回も気になっていることがあるようだ。宮路田中さん、この間はありがとう。財務諸表って今まで見るのも嫌だったけど、財務の構造を教えてもらったことで少しずつ勉強していく気になったよ。田中それはよかった。それで、今日はどうしたの?宮路この前は、医業利益の基になる収益について教えてもらったじゃない? でも、実家の病院の状況を考えると、すぐに収益を改善するのは難しそうで…。赤字を改善するためには、まずは費用について考えるべきなのかと思って。田中いい流れだね。じゃあ今回は、医業における費用の基本を押さえよう。田中からの解説前回に話したとおり、医療機関の損益計算書は収益も費用も、「医業」と「医業外」に分けることができる。そして、医療機関の収支で主要部分は「医業」部分だ。医業収益から医業費用を引いたものが医業利益(損失)となる。式にすれば、医業利益=医業収益-医業費用となる。だから、黒字化のために医業利益を上げるには、医業収益を上げるか医業費用を下げるかのどちらかとなる。医業収益を上げる方法は前回に話したので、今回は医業費用を見てみよう。損益計算書の医業費用の部分を見てみると、そのうち大きな部分を占めるのが給与費、つまり人件費であることがわかる(表1)。表1:損益計算書の医業費用部分の例(単位:億円)費用について分析する際は、まずは自院の人件費が適正な水準かを見てみよう。人件費の適正性を見る指標の1つが、医業収益に対する人件費の割合である人件費率だ。人件費率(%)=人件費/医業収益人件費率の目安は、病院の種別によって異なる(表2)。したがって、まずはこれらの種別の目安に対して自院の人件費率は高いか低いかを確認して、高い場合はその原因を確認する必要がある。表2:病院種別 人件費率の比較画像を拡大する人件費率が同カテゴリのほかの病院よりも高い場合には、原因として1)人員が多い2)1人当たりの人件費が高いの2つが考えられる。では、人員が多い、もしくは人件費が高いことが判明した場合、即座に職員を減らしたり、給与や賞与を減らしたりできるかというと、それは法令上からも組織運営上からもかなり難しい。だから、きちんとした採用計画を立てて人を採用したり、生産性向上に資する人材配置や業務改善をしたり、といった未来志向の対策が求められるんだ。宮路そうか。確かに費用の大半を人件費が占めるからといって、単純に人を減らすなんてできないもんなあ…。実家の病院も古くからのスタッフは給与が高いけれど、その医師や看護師を目当てに来院する患者さんも多いって聞くし…。田中そうだよね。一般的に、病院のように職員のサービス提供で収益を得るビジネスモデルは「労働集約型ビジネス」と呼ばれていて、労働集約型ビジネスでは人件費はコストの大半を占める一方で収益源でもある。経営改善のためには、収益性との兼ね合いも考慮して人材戦略を練ることが欠かせないんだ。宮路経営改善と人材戦略にそんな深い関わりがあるって考えたことなかったな…。今日も勉強になったよ。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー その1【「実践的」臨床研究入門】第2回

第1回では、クリニカル・クエスチョン(CQ)とリサーチ・クエスチョン(RQ)の違いと、臨床上の疑問をRQの代表的な「鋳型」であるPE(I)COにざっくりと流し込む手順について説明しました。第2回からは、PE(I)COを具体的にブラッシュアップする過程の最初のステップである、RQに関連する先行研究のレビューについて解説します。PE(I)COにならないRQRQの関連論文のレビューについて解説する前に、お断りしたいことがあります。実は、RQがPE(I)COにうまく当てはまらない臨床研究も多くあるのです。症例や患者集団などの臨床経過や治療内容などを含めた特徴を要約した、いわゆる記述的研究はPE(I)COになりません。なぜなら、記述的研究にはPE(I)COのC(比較対照)がないからです。症例(集積)報告、疾患分布や診療実態の調査などは記述的研究に分類されます。また、O(アウトカム)に関連するリスク要因を調べたり、Oを予測する、診断・予後などの予測モデルの開発やその精度を評価する臨床研究1)も、PE(I)COに当てはまりにくいです。これらの研究はOに関連する要因を探索的に検討することが目的であり、主たるE(曝露要因)やI(介入)とC(比較対照)を端的に表すことができないからです。一方、EもしくはIとOの因果関係(影響や効果など)の推論や検証を目的としたRQはPE(I)COの「鋳型」に流し込みやすく、現場の医療者の「臨床上の疑問」にシンプルに答えやすいRQです。本連載では、このPE(I)COによって定式化でき、診療ガイドラインでも多く使用されており臨床判断の参考にしやすい、「因果推論」や「仮説検証型」と呼ばれるRQに焦点を当てて解説することをご了承ください。先行研究を吟味する―巨人の肩の上に立つ下記は第1回で作成した架空の臨床シナリオに基づいたCQとPECOです。CQ:食事療法を遵守すると慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうか↓P:慢性腎臓病患者 E:食事療法の遵守C:食事療法の非遵守O:腎予後上記のように、あなたの「漠然とした臨床上の疑問」である CQ をPE(I)COで定式化された RQに、とりあえずは落とし込めたとしましょう。その次の段階であるRQのブラッシュアップの過程の最初のステップでは、RQに関連する先行研究を十分吟味する必要があります。データ収集、統計解析など、実際に「臨床研究を始める前」に、先行論文をレビューすることが重要です。まず、あなたのRQのテーマについて、これまでに、何がわかっているのか(”What is already known”)、まだわかっていないことは何か(”What is still unknown”)、をはっきりさせましょう。”What is already known”、”What is still unknown”は 、論文のイントロダクションを構成する重要な要素になります。世界4大医学雑誌のひとつに数えられるBMJの原著論文では、このパートを”What is already known on this topic”でまとめたうえで、新しい知見は何か(”What this study adds”)ということを、本文とは独立した”Summary boxes”として簡潔に記述することが求められています2)。「巨人の肩の上に立つ」(”Standing on the sholders of giants”)という言葉をご存じでしょうか。この言葉は、「万有引力の法則」を発見したアイザック・ニュートンの手紙の一節(下記)に由来するとされています。“If I have seen further it is by standing on the shoulders of giants.(私が遠くを見渡せたのだとしたら、それは巨人の肩の上に乗っていたからです)”この言葉の解釈は、新しい科学の発見は先人が積み重ねた研究成果に基づいている、とでもなるでしょうか。先行研究の吟味、すなわち先人たちの研究成果を学ぶことによって、新たな臨床研究を行うための礎ができるのです。ちなみに、イギリスの2ポンド硬貨の側面には、このニュートンの言葉、”Standing on the shoulders of giants”が刻印されています。「臨床研究トリビア」?でした。 さて、PECOもざっくり決まっているし、早速PubMedでRQに関連する先行研究を検索、となりませんでしょうか。筆者は、個別の論文(1次情報)をいきなり!検索する前に、まずは質の高いエビデンスをまとめた2次情報を活用することをお勧めしています。第3回からは、2次情報を中心とした関連研究レビューの実際について解説します。1)Hasegawa T,et al. Clin Exp Nephrol. 2019;23:189-198.2)BMJ Guidance for Authors.1)福原俊一. 臨床研究の道標 第2版. 健康医療評価研究機構;2017.2)木原雅子ほか訳. 医学的研究のデザイン 第4版. メディカル・サイエンス・インターナショナル;2014.3)矢野 栄二ほか訳. ロスマンの疫学 第2版. 篠原出版新社;2013.4)中村 好一. 基礎から学ぶ楽しい疫学 第4版. 医学書院;2020.

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がん治療の進歩で注意すべき心血管リスクとその対策/日本医療薬学会

 近年、腫瘍循環器学という新しい概念が提唱されている。10月24日~11月1日にWeb開催された第30回日本医療薬学会総会のシンポジウム「腫瘍循環器(Onco-Cardiology)学を学ぼう~タスクシェア・シフト時代にマネジメントする薬剤師力の発揮~」において、腫瘍循環器領域の第一人者である向井 幹夫氏(大阪国際がんセンター成人病ドック科主任部長)が「腫瘍循環器学とは?臨床現場で薬剤師に求めること」と題し、腫瘍循環器学における新たな視点について語った。がん治療の進歩で注意すべき心血管リスクも変化 がん患者の心血管リスクは、がん治療時の急性期/慢性期心毒性をピークに回復・寛解期には一度低下傾向を示す。しかし、転移・再発に対するがん治療の開始やがんサバイバーとして生き長らえる中で、潜在的心血管リスクの増悪による晩期心毒性によりリスクは再び上向きに転じることが報告1)されている。向井氏はその1つとして、28種がんのがんサバイバーの治療経過と心臓病による死亡リスクの検討2)から、がん診断後から5~10年の時点で全領域のがんサバイバー、なかでも乳がん、皮膚がん(メラノーマ)、前立腺がん患者などの死亡リスクが上昇する報告を示した。同氏は「新規薬剤によるがん治療の進歩とそれに伴う生存率上昇の反面、心毒性が増加していることが影響している」と述べ、最新のがん治療にも心血管リスクが潜んでいる点を指摘した。投与終了後の経過観察は生涯必要 がん治療による心毒性・心血管リスクの歴史は1970年代に遡る。殺細胞系抗がん剤アントラサイクリンによる心筋症が明らかになって以降、2000年代には分子標的薬のトラスツズマブにより生じる心筋症が、近年では免疫チェックポイント阻害薬による劇症心筋炎と心血管合併症が問題になっている。さらに、血管新生阻害薬(抗VEGF薬)は心毒性リスクが投与用量に比して増加し、かつ経時的に変化する特徴があり、投与初期には毛細血管攣縮による血圧上昇、数ヵ月後に毛細血管循環障害(密度希薄化)による高血圧症や尿蛋白が出現する。その後、年単位の治療が継続されることでプラーク形成による血栓症・出血が発生し、3~5年の長期治療によって心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な心血管疾患発症に至る。このような症例を実際に目の当たりにした同氏は「がん治療が進歩する一方でこれまでにない晩期合併症が増加している」と危惧した。 心毒性発症の原因は多様性を示し、がん自体の作用、心血管疾患の既往、ゲノムの関与、そしてがん治療が影響していることから、「心毒性に対し循環器医の介入はもちろんのこと実際に薬剤を扱う薬剤師も、近年頻度が増加しているがん関連血栓症や動脈硬化血管障害(虚血性心疾患)、不整脈などを幅広く理解しておく必要がある」とも述べた。がんと循環器疾患の共通点、危険因子と発症機序 がんの危険因子を列挙すると循環器疾患の危険因子との共通項目が非常に多く、たとえば、喫煙、飲酒、食塩摂取、運動不足などが挙げられる。また、がんと動脈硬化発症の機序において、腫瘍が増殖する際の血管新生に影響を及ぼすVEGFは、循環器領域ではプラーク形成にかかわる血管新生や血管内皮障害を起こす。そのほかにもがんの進展と動脈硬化の発症メカニズムには多くの共通点が指摘されており3)、同氏は「遠い存在であったがんと循環器は共通の性格を持つ疾患である」とし、「いずれも生活習慣病として、遺伝子的因子、エピジェネティク因子、環境因子、生活習慣などが原因で酸化ストレス、炎症、増殖、アポトーシス、血管新生などを生じ動脈硬化やがんに発展する。心不全や血栓症などの晩期心毒性はこれらの危険因子を抑えることで発症予防につながることが期待されている」と話した。薬剤師によるがんサバイバーへの貢献に期待 このようにがんと循環器のリスクの共通性が解明される一方、増加するがんサバイバーへの対応は現在模索中である。しかし、がん診療をがん発症予防、診断と治療計画、がん治療、がんサバイバーの4つのステージに分けて考えた時、どのステージにおいてもこれから薬剤師が活躍すると同氏は期待を寄せる。とくにがん治療が終わった後のがんサバイバーは、自分を知っていてくれるかかりつけ薬剤師に調剤薬局やドラッグストアで接することになる。そこでは、がんサバイバーが直面する晩期合併症、なかでも晩期心毒性に対応するためにがん診療における薬薬連携による情報交換と幅広い理解が求められている。 最後に同氏は「腫瘍循環器学を学び、がんと循環器の共通点を知りタスクシフト・シェア時代に対応することで、がんサバイバーの不安を軽減し支援することができるよう薬剤師の皆さまに“薬剤師力”を発揮していただきたい」と締めくくった。

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新型コロナ、マスク着用率95%で米国死者数は3分の1に?

 米国では、2020年2月初旬に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による初の死亡者が記録されて以来、9月21日までの累計死者数は19万9,213人と報告されている。そんななか、米国ではマスクの着用について今でも論争の的となっており、米国居住者で“常に”公共の場でマスクを着用しているのはわずか49%である。州レベルで見ると、バージニア州、フロリダ州、カリフォルニア州での着用率は60%超の状況である。このように人口全体でのマスク着用率95%の達成および維持は高い閾値のように見えるが、ニューヨーク州のように達成している地域もある。 今回、社会的距離の確保やマスク着用などさまざまな生活規制がどのような効果を生み出すのかを検証するため、米国・IHME* COVID-19 Forecasting Teamの研究員らが独自のCOVID-19死亡数予測モデルを作成した。その結果、米国全土で2021年2月28日までにCOVID-19による累積死亡者数は51万1,373人(46万9,578~57万8,347)にのぼると予測された。*:IHME=Institute for Health Metrics and Evaluation 一方で、マスクの着用が普遍的となれば、2020年9月22日~2021年2月末までの間に12万9,574(8万5,284~17万0,867)の命を救うことができると研究者らは明らかにした。仮にマスク着用率を85%とした場合は、着用率95%よりは少なくなるものの、9万5,814人(6万731~13万3,077)の命を救うことができることから、公共の場でのマスク着用率95%、つまりユニバーサルマスクの達成が多数の州での流行復活の最悪な状況の打開策になることが示された。Nature Medicine誌オンライン版10月23日号掲載の報告。 まず、予測モデルを構築するために研究者らは3つの境界シナリオを確定。1つ目は州が社会的距離の規制を緩和し、人と人との接触の数が増加した場合の結果を予測した。2つ目は、州が再び社会・経済活動を人口100万人あたり8人の死亡率、つまり90パーセンタイルの閾値でロックダウンすると仮定して、パンデミックの進展を予測した。ここでは州が過去に社会的距離の規制を実施したときに観測された分布を分析し、社会的距離の規制が6週間で緩和することを前提とした。さらに、マスクの有効性に関する新たなデータが利用可能になったことから、3つ目にユニバーサルマスク実施時の予測を加えた。ここでの“ユニバーサル”を公共の場でのマスク着用者95%と定義したのは、これまでのCOVID-19パンデミック時の世界(とくにシンガポール)でのマスク着用の報道に基づいている。  このなかで、州が社会的距離の緩和を行ったという予測モデルでは、米国全体の累積死亡者数は2020年9月22日~2021年2月28日までに105万3,206人(75万9,693~145万2,397)に達する可能性があることも明らかにした。その死亡者の約3分の1はカリフォルニア州で14万6,501人(8万4,828~22万1,194)、フロリダ州で6万6,943(4万0,826~9万6,282)、ペンシルベニア州で4万6,943(4万826~9万6,282)と3州で発生することが見込まれていた。 研究者らはユニバーサルマスクや社会的距離の維持を達成すれば、多数の州で経済への損害を最小限に抑えながら多くの命を救える可能性があるとしている。

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“みえない”健康課題に対して、どのように向き合っていくか?

 2020年11月18日(水)に日本イーライリリー株式会社主催のオンラインプレスセミナーが開催され、“みえない多様性”について、社会医療法人 寿会 富永病院 副院長 脳神経内科部長・頭痛センター長の竹島 多賀夫氏が、職場に与える影響を片頭痛の事例から語った。また、日本イーライリリー コーポレート・アフェアーズ本部の山縣 実句氏からは、「“みえない多様性”に優しい職場づくりプロジェクト」の紹介があった。 竹島氏は、「片頭痛など、みえない健康課題を抱える人を理解し、職場環境の整備や発作時に配慮することが大切。仕事の生産性が向上するだけでなく、患者さんの人生にも良い影響を及ぼすだろう」と述べた。 「健康で働きやすい職場」の環境づくりを考えるうえで、このような啓発活動は重要であり、今後も広がっていくと考える。みえない健康課題の代表「片頭痛」が日常生活や職場に与える影響 片頭痛は女性に多く、症状として頭痛以外にも疲労や感覚過敏、光過敏などが生じることから、患者のQOLを著しく低下させ、日常生活に支障を来す。日常生活への支障を重症度で表すと、活動性精神病や認知症、四肢麻痺と同レベルの、重症度が一番高いところに位置する。片頭痛の患者では、日常生活や仕事への支障による生産性低下の割合も多くみられている。片頭痛を我慢して働く人は90%以上 片頭痛の症状が仕事に及ぼす影響に関して、日本イーライリリーが独自で実施したインターネット調査※では、疾患のつらさを我慢しながら働く人は90%以上いることがわかった。症状を我慢して周囲に伝達できない理由として、「伝える必要がないと思ったから」が49%、「伝える機会がなかったから」が36%と、1人で「つらさ」と向き合っている人が多いことも確認された。みえない「つらさ」を抱えながら働く人に、伝える機会やきっかけが必要とされている。“みえない多様性”に優しい職場づくりプロジェクトの発足 このようなことから、片頭痛をはじめ、さまざまな健康課題による痛みなどの症状や、周囲に理解されないことにより生じる当事者の「不安、支障、働きづらさ」は、“みえない多様性”と定義された。この“みえない多様性”があることを知り、当事者と周囲の人との相互理解を深めることで、一人ひとりが行動を変え、誰もが働きやすい環境をつくることを目的として、同社は健康経営に取り組む企業とともに「“みえない多様性”に優しい職場づくりプロジェクト」を発足させた。社員のみえない健康課題を理解するためのツール “みえない多様性”に優しい職場づくりプロジェクトでは、健康経営に関心がある人、管理職、健康課題を抱える当事者を対象とした、みえない多様性に関する解説・事例紹介・カードゲームを使用して議論しながら理解を深めていく啓発ツールが開発された。啓発ツールを使って片頭痛のみならず、さまざまな健康課題を抱える人にとって、働きやすい職場環境が社会全体に広がることが期待されている。まとめ “みえない多様性”に優しい職場づくりプロジェクトの活動が社会全体に広がっていくことで、健康に悩みを抱えていても、周囲の人へ伝えてよい、我慢しなくても大丈夫であるという安心感が生まれ、働くことに対して価値を見いだすことができるのではないだろうか。それが生産性の向上につながり、より良い社会の実現に必要であると考える。※インターネット調査の概要・調査名:「片頭痛、腰痛、およびアレルギー性鼻炎の患者さんの症状と仕事への影響に関するインターネット調査」(実施:日本イーライリリー株式会社)・調査期間:2020年10月5日~15日・調査手法:インターネット調査・調査地域:全国・調査対象と回収サンプルサイズ:合計674件(片頭痛:168件、腰痛:169件、アレルギー性鼻炎:165件)

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再発難治性多発性骨髄腫、ベネトクラクス+ボルテゾミブ+デキサメタゾンの成績(BELLINI)/Lancet Oncol

 再発難治性多発性骨髄腫に対するベネトクラクス+ボルテゾミブ+デキサメタゾン療法(VBd療法)の、第III相多施設共同二重盲検無作為化試験「BELLINI試験」の結果が、米国・メイヨー・クリニックのShaji K. Kumar氏らにより論文発表された。VBd療法は、第I相試験で忍容性と安全性が確認され、臨床効果が示唆されていた。BELLINI試験は16ヵ国90病院で行われ、VBd療法はボルテゾミブ+デキサメタゾン療法(Bd療法)と比較して、主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間を有意に改善することが示された。ただし、主に感染症の発現増加によりVBd療法において死亡の増加がみられ、著者は「VBd療法については患者を適切に選択することが重要である」とまとめている。Lancet Oncology誌オンライン版2020年10月29日号掲載の報告。 BELLINI試験は、ECOG PSが2以下で1~3レジメンの治療歴がある18歳以上の再発難治性多発性骨髄腫患者を対象とし、被験者はVBd群またはプラセボ+Bd群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。ベネトクラクスは800mg/日、ボルテゾミブは1.3mg/m2、デキサメタゾンは20mgとし、最初の8サイクルは1サイクル21日、9サイクル以降は1サイクル35日として、病勢進行、許容できない毒性発現または患者の同意撤回まで投与を継続した。 主要評価項目は、ITT集団における独立評価委員会判定によるPFS。安全性については、治験薬を少なくとも1回投与された患者を解析対象集団に包含し評価した。 主な結果は以下のとおり。・2016年7月19日~2017年10月31日に、291例がVBd群(194例)またはBd群(97例)に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値18.7ヵ月において、主要評価項目のPFS中央値は、VBd群22.4ヵ月、Bd群11.5ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.63、95%CI:0.44~0.90、p=0.010)。・主なGrade3以上の有害事象は、好中球減少(VBd群193例中35例[18%]vs.Bd群96例中7例[7%])、肺炎(30例[16%]vs.9例[9%])、血小板減少(28例[15%]vs.29例[30%])、貧血(28例[15%]vs.14例[15%])、下痢(28例[15%]vs.11例[11%])であった。・重篤な有害事象は、VBd群で93例(48%)、Bd群で48例(50%)に発現した。・治療下で発現した致死的感染症は、VBd群8例(4%)、Bd群0例であった。・VBd群の3例の死亡(肺炎2例、敗血症性ショック1例)は、治療との因果関係ありと判定された。Bd群で治療と関連のある死亡は報告されなかった。

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セマグルチド、NASH治療に有効な可能性/NEJM

 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療において、セマグルチドはプラセボに比べ、肝線維化の悪化を伴わないNASH消散が達成された患者の割合が有意に高いが、肝線維化の改善効果には差がないことが、英国・バーミンガム大学のPhilip N. Newsome氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年11月13日号で報告された。NASHは、脂肪蓄積と肝細胞損傷、炎症を特徴とする重度の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)であり、肝線維化や肝硬変と関連し、肝細胞がんや心血管疾患、慢性腎臓病、死亡のリスク増大をもたらす。また、インスリン抵抗性は2型糖尿病と肥満に共通の特徴で、NASHの主要な病因とされる。2型糖尿病治療薬であるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬セマグルチドは、肥満および2型糖尿病患者の減量に有効で、血糖コントロールを改善し、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値や炎症マーカーを抑制すると報告されているが、NASH治療における安全性や有効性は明らかにされていない。16ヵ国143施設が参加したプラセボ対照無作為化第II相試験 本研究は、セマグルチドが組織学的なNASHの消散に及ぼす効果を評価する目的で実施された二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であり、日本を含む16ヵ国、143施設が参加し、2017年1月~2018年9月の期間に患者登録が行われた(Novo Nordiskの助成による)。 対象は、年齢18~75歳(日本は20~75歳)、生検でNASHが証明され、ステージF1、F2、F3の肝線維化を有し、2型糖尿病の有無は問われず、BMI>25の患者であった。被験者は、3つの用量(0.1、0.2、0.4mg)のセマグルチドまたはそれぞれに対応するプラセボを1日1回皮下投与する群に、各用量群とも3対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、72週の時点における肝線維化の悪化のないNASHの消散とした。NASH消散は、NASH Clinical Research Networkの分類で炎症性細胞の軽度残存以下(スコア0~1点)で、かつ肝細胞の風船様腫大がない(スコア0点)場合と定義された。副次エンドポイントは、NASHの悪化がなく、かつ肝線維化の1ステージ以上の改善であった。これらのエンドポイントの解析は、肝線維化がステージF2またはF3の患者に限定して行われ、他の解析は全ステージの患者で実施された。肝酵素や体重減少も用量依存性に改善 320例(肝線維化のステージF2、F3は230例)が登録され、セマグルチド0.1mg群に80例、同0.2mg群に78例、同0.4mg群に82例、プラセボ群には80例が割り付けられた。全体の平均年齢は55歳、61%が女性、62%が2型糖尿病であり、平均体重は98.4kg、平均BMIは35.8であった。肝線維化のステージ別では、F1が90例(28%)、F2が72例(22%)、F3は158例(49%)だった。 72週時において線維化の悪化がなくNASHが消散した患者の割合は、0.1mg群が40%、0.2mg群が36%、0.4mg群が59%で、プラセボ群は17%であった。0.4mg群のプラセボ群に対するオッズ比(OR)は、6.87(95%信頼区間[CI]:2.60~17.63)であり、0.4mg群で有意に優れた(p<0.001)。一方、72週時の肝線維化の1ステージ以上の改善は、0.4mg群では43%、プラセボ群では33%の患者で達成されたが、両群間に有意な差は認められなかった(OR:1.42、95%CI:0.62~3.28、p=0.48)。 ALTおよびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)は、いずれもセマグルチドの用量依存性に低下し、72週時のベースライン時に対する測定値の比は、0.4mg群が0.42であったのに対し、プラセボ群は0.81だった(比が小さいほど、低下率が大きい)。また、72週時の体重減少率は用量依存性に増加し、0.4mg群が12.51%、プラセボ群は0.61%であった。セマグルチド群では、2型糖尿病の有無を問わず、糖化ヘモグロビン値の低下率が大きかった。 0.4mg群はプラセボ群に比べ、悪心(42% vs.11%)、便秘(22% vs.12%)、嘔吐(15% vs.2%)の発生率が高かった。悪性新生物は、セマグルチド群で3例(1%)報告されたが、プラセボ群ではみられなかった。全体として、新生物(良性、悪性、詳細不明)の発生率はセマグルチド群で15%、プラセボ群では8%と報告され、特定の臓器での発生のパターンは観察されなかった。 著者は、「NASH消散と用量依存性の体重減少に関して大きな有益性が得られたとはいえ、肝線維化の改善に有意差がなかったという事実は予想外であった。肝線維化の重症度が高い患者が多かったことから、72週という期間では、肝線維化のステージの改善が明確になるまでの時間が十分でなかった可能性がある」としている。

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