アテゾリズマブ+パクリタキセル、TN乳がん1次治療でPFS改善せず(IMpassion131)/ESMO2020

提供元:ケアネット

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公開日:2020/09/29

 

 転移を有する/切除不能な局所進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対する1次治療として、アテゾリズマブ+パクリタキセルの併用療法は、無増悪生存期間(PFS)の有意な改善を認めなかった。英国・Mount Vernon Cancer CentreのDavid Miles氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験IMpassion131の結果を報告した。

・対象:進行乳がんに対する化学療法または全身療法歴のない、転移を有する/切除不能な局所進行TNBC患者([ネオ]アジュバント化学療法後≧12ヵ月、ECOG PS≦1)
・試験群:以下の2群に2対1の割合で無作為に割り付け
アテゾリズマブ併用群:28日を1サイクルとし、アテゾリズマブ(840mgを1、15日目投与)、パクリタキセル(90mg/m2を1、8、15日目投与) PD-L1陽性191例/ITT集団431例
※各サイクル少なくとも最初の2回は、デキサメタゾン8~10mgを投与
プラセボ群:28日を1サイクルとし、プラセボ+パクリタキセル(90mg/m2を1、8、15日目投与) PD-L1陽性101例/ITT集団220例
・層別化因子:タキサン治療歴、VENTANA PD-L1 SP142アッセイによるPD-L1発現状況(<1% vs.≧1%)、肝転移の有無、地域(北米 vs.西欧/オーストラリア vs.東欧/アジアvs.南米)
・評価項目:
[主要評価項目]PD-L1陽性患者およびITT集団における治験責任医師評価によるPFS(PD-L1陽性患者で達成された場合にITT集団で解析を行うことを事前に規定)
[副次評価項目]PD-L1陽性患者およびITT集団における全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・両群のベースライン特性はバランスがとれており、PD-L1≧1%の患者は全体の45%であた。
・2019年11月15日データカットオフ時点におけるPD-L1陽性患者でのPFS中央値は併用群6.0ヵ月 vs.プラセボ群5.7ヵ月(層別ハザード比[HR]:0.82、95%CI:0.60~1.12、ログランク検定p=0.20)で、併用による有意な改善はみられなかった。
・ITT集団でのPFS中央値は併用群5.7ヵ月 vs.プラセボ群5.6ヵ月(層別ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.70~1.05、p値は検出せず)であった。
・タキサン治療歴やPD-L1発現状況、肝転移の有無などPFSのサブグループ解析結果も、PD-L1陽性患者全体と同様の傾向で、併用によるベネフィットがみられる因子はみられなかった。
・治験責任医師評価による未確定のORRは、PD-L1陽性患者で併用群63.4% vs.プラセボ群55.4%、ITT集団で53.6% vs.47.5%であった。
・2020年8月19日データカットオフ時点におけるOS中央値は、PD-L1陽性患者で併用群22.1ヵ月 vs.プラセボ群28.3ヵ月(層別HR:1.12、95%CI:0.76~1.65)。ITT集団で19.2ヵ月 vs.22.8ヵ月(層別HR:1.11、95%CI:0.87~1.42)であった。
・安全性プロファイルは各薬剤の既知のリスクと一致していた。

 ディスカッサントを務めた米国・UNC Lineberger Comprehensive Cancer CenterのLisa Carey氏は、PD-L1陽性患者でベネフィットを示したアテゾリズマブ+ナブパクリタキセル併用のIMpassion130試験との間でなぜ結果に差が生じたのかについて考察。試験対象の患者背景に大きな差異はみられず、パクリタキセル投与時に前投与されるステロイドが免疫チェックポイント阻害薬の効果に影響を及ぼす可能性に言及した。しかし、ペムブロリズマブ+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンのうちいずれか)併用の有効性を評価したKEYNOTE-355試験ではPFS改善が報告されており、引き続き検討が必要とした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)

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