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青年期の抑うつ症状とビタミンDレベルとの関係

 クウェートは、ビタミンD欠乏症の有病率が高い国の1つである。また、ビタミンD不足はうつ病のリスク因子であるといわれている。クウェート大学のReem Al-Sabah氏らは、同国の青年期における25-ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)と抑うつ症状との関連を調査した。その結果、ビタミンDの状態は、青年期の抑うつ症状と関連していないことを報告した。しかし著者らは、他の健康へのベネフィットを考慮し、青年期に十分なビタミンDレベルを維持することは重要であるとしている。Child and Adolescent Psychiatry and Mental Health誌2022年6月27日号の報告。ビタミンD不足と抑うつ症状との間に有意な関連は認められず クウェートの中学校でランダムに選択された青年704人を対象に、学校ベースの横断的研究を実施した。抑うつ症状に関するデータは、小児抑うつ尺度(CDI)を用いて収集した。共変量に関するデータは、対象の青年より対面式インタビューで、その両親より自己記入式アンケートを用いて収集した。血液サンプルの分析は、認定された研究所で実施した。25[OH]Dの測定には、液体クロマトグラフィータンデム質量分析を用いた。 ビタミンD不足はうつ病のリスク因子であるかを研究した主な結果は以下のとおり。・抑うつ症状(CDIスコア19以上)が認められた青年は、94人(13.35%、95%CI:10.35~17.06)であった。・ビタミンDの状態の違いによるCDIスコア(中央値)に、有意差は認められなかった(p=0.366)。・血清25[OH]D濃度とCDIスコアとの間に有意な関連は認められなかった(Spearman's rank correlation=0.01、p=0.825)。・さまざまな分析でも、25[OH]Dと抑うつ症状との間に有意な関連は認められなかった。●25[OH]Dを連続変数として適応(粗オッズ比:0.99、95%CI:0.98~1.01、p=0.458)(調整オッズ比:1.01、95%CI:0.99~1.02、p=0.233)●許容可能なカットオフ値によるカテゴリ変数(粗分析:p=0.376、調整済み分析:p=0.736)●四分位数によるカテゴリ変数(粗分析:p=0.760、調整済み分析:p=0.549)

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テオフィリン鼻洗浄でコロナの嗅覚障害は改善するか

 気管支喘息治療薬でおなじみのテオフィリンは、細胞内のcAMP濃度を上昇させることで神経の興奮性を高める作用があり、これを利用した嗅覚の改善効果が以前より立証されている1)。また、最近の研究では生理食塩水鼻洗浄(SNI)にテオフィリンを追加することで、新型コロナウイルス感染後の嗅覚機能障害(OD:olfactory dysfunction)の効果的な治療になり得ることが示唆されている。 そこで、米国・ワシントン大学・セントルイス校のShruti Gupta氏らは新型コロナウイルス関連のODに対し、テオフィリン鼻洗浄の有効性と安全性を評価した。その結果、テオフィリン鼻洗浄の臨床的利点は決定的ではないことが示唆された。JAMA Otolaryngology-Head&Neck Surgery誌オンライン版2022年7月7日号掲載の報告。 本試験は三重盲検プラセボ対照第II相ランダム化試験で、2021年3月15日~8月31日にミズーリ州またはイリノイ州に居住し新型コロナによるODが持続する成人(コロナ感染疑いから3〜12ヵ月が経過した者)を対象に実施された。生理食塩水とテオフィリン400mgのキットを治療群用に、生理食塩水と乳糖粉末500mgのキットを対照群用として用意し、参加者はカプセル内容物を生理食塩水に溶解し、6週間にわたり朝と晩の1日2回の鼻腔洗浄を行った。 主要評価項目は治療群・対照群間で反応した人の割合の差で、CGI-I(Clinical Global Impression-Improvement)で少なくともわずかに改善を示す反応として定義した。副次評価の測定には、ペンシルベニア大学の嗅覚識別テスト(UPSIT)、嗅覚障害に関する質問、一般的な36項目の健康調査、新型コロナ関連の質問が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・51例が研究に登録され、平均年齢±SDは46.0±13.1歳で、女性は36例(71%)。テオフィリン鼻洗浄群(n=26)とプラセボ鼻洗浄群(n=25)にランダムに割り付けられた。・参加者のうち45例が研究を完遂した。治療後、テオフィリン群13例(59%)はプラセボ群10例(43%)と比較して、CGI-Iスケール(反応した人)でわずかな改善を報告した(絶対偏差:15.6%、95%信頼区間[CI]:13.2~44.5%)。・ベースラインと6週間の嗅覚識別テストUPSITでの中央値の差は、テオフィリン群で3.0(95%CI:-1.0~7.0)、プラセボ群で0.0(95%CI:-2.0~6.0)だった。・混合モデル分析により、UPSITスコアの変化は2つの研究群間で統計学的に有意差が得られなかったことが明らかになった。・テオフィリン群の11例(50%)とプラセボ群の6例(26%)は、ベースラインから6週間までにUPSITスコアで4ポイント以上の変化があった。また、UPSITで反応した人の割合の差は、テオフィリン群で24%(95%CI:-4~52%)だった。

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コロナPCR検査等の誤判定、日本での要因は?

 新型コロナウイルス感染症の診断において、PCRをはじめとする核酸検査には高い信頼性が求められており、厚生労働省では、その測定性能や施設の能力の違いの実態把握と改善を目的として、2年にわたり「新型コロナウイルス感染症のPCR検査等にかかる精度管理調査業務」委託事業を行っている。今回、令和3年度調査結果について報告書がまとめられ、日本臨床検査薬協会(臨薬協)と日本分析機器工業会(分析工)がメディア勉強会を開催。同調査を実施、報告をとりまとめた宮地 勇人氏(新渡戸文化短期大学 副学長)が講演した。<外部精度管理調査の概要>実施期間:2021年11月7~25日参加施設(1,191施設):病院74.1%、衛生検査所14.7%、診療所3.8%、保健所3.1%、地方衛生研究所2.0%、検疫所1.6%など(自費検査の実施は、診療所 [93.3%]および臨時衛生検査所[80%]で多く、陰性証明書の発行を行っている施設は診療所[88.9%]で多い傾向がみられた。測定原理はリアルタイム PCR 法 が73.9%と最も多く、その他LAMP法、SmartAmp法などさまざまな等温核酸増幅法が用いられていた。プール法の実施施設は6.4%だった)。評価方法:陰性を含む濃度の異なる6試料について正答率を評価し、施設カテゴリーや測定法(機器・試薬およびその組み合わせで10施設以上で実施されていた21パターン)ごとに解析、誤判定要因の特定を行った。PCR等の偽陰性は医療機関で多い傾向、要因として挙がったのは 全体として、試料別にみた正答率は93.0~99.4%と総じて良好だったが、98施設(延べ139検体)で誤判定(偽陽性・偽陰性)があり、主に医療機関(病院・診療所)であった。試料別正答率を施設カテゴリー別にみると、地方衛生研究所や検疫所(100%)、保健所(96.7~100%)で高かったのに対し、病院(91.9~99.7%)や診療所(83.3~100%)で低かった。とくに診療所では、PCR検査等の偽陰性結果が比較的多くみられた。 偽陰性結果について詳細をみると、測定機器に依存する傾向がみられ、SmartGene(19施設)、TRCReady(26施設)、ミュータスワコーg1(19施設)使用施設に多く認められた(計64施設)。その他の要因を検討するため、上記測定機器を使用していた64施設を除く34施設で特性をみると、測定者に臨床検査技師や認定微生物検査技師等の認定資格なしの施設の割合が高く、導入時の性能評価未実施の施設の割合が高かった。 さらに34施設に対して誤判定要因についてヒアリング調査を行ったところ、「検出限界の未確認・再現性不良の可能性」といった試薬・機器に依存するものが22施設と最も多かった一方、測定前後の作業手順等に関わる下記5点も要因となっていることが明らかになった。・試料の取り違い(5施設15件)・陽性/陰性の判定指標の不適切さの可能性(3施設4件)・キャリーオーバー汚染(2施設2件)・測定試薬の管理の不適切さの可能性(1施設2件)・判定結果の転記ミスの可能性(1施設1件) 上記のうちとくに試料の取り違いについて、宮地氏は「1つの取り違いで必ず複数の誤判定が生じてしまう。今回の調査のように、事前に準備をしている状況でも起きているということは、大量検体が舞い込むような状況下ではさらに誤判定リスクが増していると懸念される」と指摘した。 そのほか今回の調査では、輸送培地に含まれる塩酸グアニジンが偽陰性リスクにつながりうることが示された。検査の拡大により、輸送培地として塩酸グアニジン溶液を含有して感染リスクを最小化した製品(SARS-CoV-2不活化試薬、PCRメディアSG、輸送用スワブキットなど)が使用されるようになっており、塩酸グアニジンが残存しているとPCR反応阻害による偽陰性リスクがあるため、使用している核酸抽出法がその影響を除外することを確認する必要がある。コロナ誤判定にスワブの種類は日本では影響なし スワブの素材により、ウイルス回収量が異なるということが世界的に指摘されている。今回の調査では、ウイルス回収量が最も高く臨床的感度が高いと報告されているナイロン製をはじめ、ポリアミド製、ポリウレタン製、ポリエステル製などの多様な素材の綿球が使用されていたが、明らかな差は認められなかった。宮地氏はこの結果から、「日本で一般的に使われているものは広く支障なく使えることが明らかになった。サプライ停滞時には、代替製品を使うことが可能」とした。 プール法の精度については、54施設を対象に3試料(5プール)の外部精度管理調査が実施された。正答率は94.4~100%と総じて良好で、誤判定があった施設は3施設であった。プールの個別試料の正答率は96.1~100%と総じて良好で、誤判定があった施設は3施設であった。計6施設で誤判定があり、その施設カテゴリーとしては病院等が多く、要因としては、・測定性能の確保(検出限界、再現性)・作業手順(検体の取り違い)・測定システム(ダイレクトPCRの使用)のほか、上述の6試料についての外部精度管理調査での誤判定ありの施設と、プール法での誤判定ありの施設に重複がみられた。 厚労省では、令和2年度調査の結果を踏まえて「新型コロナウイルス感染症のPCR検査等における精度管理マニュアル」を公開しているが、今回の調査で同マニュアルを利用していると答えた施設は39.2%と低く、とくに病院(32.6%)、診療所(28.9%)で低かった。マニュアルは今回の調査結果も反映して改訂されており、誤判定要因とその対策についてもまとめられている。

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アレルギー予防のため、ピーナッツは1歳までに摂取すべき?/JAMA

 オーストラリアでは、2016年、幼児の食事ガイドラインが改訂され、ピーナッツアレルギーの予防のために生後12ヵ月までのピーナッツ導入が推奨されるようになった。同国マードック子ども研究所のVictoria X. Soriano氏らは、今回、この改訂の前後におけるピーナッツアレルギーの発生状況を調査し、ピーナッツの早期導入の推奨により有病率が0.5%低下したが、これは統計学的に有意な差ではないことを確認した。研究の詳細は、JAMA誌2022年7月5日号で報告された。10年間隔の2つの調査結果を比較 研究グループは、オーストラリアにおける生後12ヵ月までのピーナッツ導入の推奨が、幼児のピーナッツアレルギー発生の抑制に寄与するかの検証を目的に、一般住民を対象とした2つの横断的調査の結果を比較した。 解析には、経時的な変化を評価するために、10年の間隔をあけて同じ枠組と方法を用いて参加者の登録が行われた2つの調査(2007~11年と2018~19年に参加者を登録)のデータが用いられた。オーストラリア・メルボルン市とその近郊の施設で、ピーナッツ曝露やアレルギーの既往歴を問わずに、生後11~15ヵ月の幼児が募集された。 質問票を用いて、人口統計学的因子や食物アレルギーのリスク因子、ピーナッツ導入、アレルギー反応に関するデータが収集された。 すべての幼児でピーナッツの皮膚プリックテストが行われ、陽性者は食物経口負荷試験を受けた。有病率の推定値は、経時的な人口統計学的因子の変化を考慮して標準化された。リスク因子は増加したが、アレルギーは増加せず 解析には7,209例の幼児が含まれた。このうち2018~19年の調査に参加した幼児が1,933例(年齢中央値12.5ヵ月[IQR:12.2~13.0]、男児51.8%)、2007~11年は5,276例(12.4ヵ月[12.2~12.9]、50.8%)であった。オーストラリアで食物アレルギーのリスク因子とされる東アジア系の幼児(両親が東アジア生まれ)は、経時的に増加していた(2007~11年の10.5%から、2018~19年に16.5%に増加、p<0.001)。 幼児の家系や他の人口統計学的因子の変化を標準化すると、ピーナッツアレルギーの有病率は、2018~19年の調査では2.6%(95%信頼区間[CI]:1.9~3.4)であり、2007~11年の3.1%(2.7~3.6)と比較して有意な差はみられなかった(群間差:-0.5%、95%CI:-1.4~0.4、p=0.26)。 2018~19年の調査では、オーストラリア系の幼児は、より早い年齢でピーナッツを導入したほうがピーナッツアレルギーのリスクが低く、生後12ヵ月以降の導入と比較した生後6ヵ月以下での導入の補正後オッズ比(OR)は0.08(95%CI:0.02~0.36)、同様に7~<10ヵ月での導入の補正後ORは0.09(0.02~0.53)であった。一方、東アジア系の幼児では、より早期のピーナッツ導入とピーナッツアレルギーの発生には有意な関連はなかった。 著者は、「ガイドラインによる早期ピーナッツ導入の推奨により、1歳時におけるピーナッツアレルギーの発生は減少も増加もしなかった」とまとめ、「2018~19年の調査で食物アレルギーのリスク因子である東アジア系の幼児が増加したにもかかわらず、ピーナッツアレルギーは増加しておらず、幼児期にピーナッツ製品を早期に広く導入することで、これを実施しない場合に起こりえたピーナッツアレルギーの発生が抑制された可能性がある」と指摘している。

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肩関節鏡視、術後90日以内の有害事象は1.2%/BMJ

 肩関節鏡視下手術は、英国で一般的に行われるようになっているが、有害事象のデータはほとんどないという。同国オックスフォード大学のJonathan L. Rees氏らは、待機的な肩関節鏡視下手術に伴う有害事象について調査し、90日以内の重篤な有害事象のリスクは低いものの、再手術(1年以内に26例に1例の割合)などの重篤な合併症のリスクがあることを示した。研究の詳細は、BMJ誌2022年7月6日号に掲載された。英国の約29万件の手術のコホート研究 研究グループは、待機的な肩関節鏡視下手術における重篤な有害事象の正確なリスクを推定し、医師および患者に情報を提供する目的で、地域住民ベースのコホート研究を行った(英国国立健康研究所[NIHR]オックスフォード生物医学研究センター[BRC]の助成による)。 解析には、英国国家統計局の市民登録死亡データを含むイングランド国民保健サービス(NHS)の病院エピソード統計(Hospital Episode Statistics)のデータが用いられた。 対象は、2009年4月1日~2017年3月31日の期間に、16歳以上の26万1,248例に施行された28万8,250件の肩関節鏡視下手術(肩峰下除圧術、腱板修復術、肩鎖関節切除術、肩関節安定化術、凍結肩関節授動術)であった。 主要アウトカムは、術後90日以内の入院治療を要する重篤な有害事象(死亡、肺塞栓症、肺炎、心筋梗塞、急性腎障害、脳卒中、尿路感染症)の割合とされた。深部感染症は腱板修復術で高い 全体の年齢中央値は55歳(IQR:46~64)で、手技別の年齢中央値は、肩関節安定化術の27歳(IQR:22~35)から腱板修復術の61歳(53~68)までの幅が認められた。47.8%が女性であった。試験期間を通じて、肩峰下除圧術の件数は減少したが、これを除く肩関節鏡視下手術の件数は増加していた。 肩関節鏡視下手術後90日以内の有害事象(再手術を含む)の発生率は、1.2%(95%信頼区間[CI]:1.2~1.3)と低く、81例に1例の割合であり、肩関節安定化術の0.6%(95%CI:0.5~0.8)から凍結肩関節授動術の1.7%(1.5~1.8)までの幅が認められた。年齢、併存症、性別で調整すると、手技の種類による影響はみられなくなった。 最も頻度の高い有害事象は肺炎(発生率:0.3%、95%CI:0.3~0.4)で、303例に1例の割合であった。一方、最もまれな有害事象は肺塞栓症(0.1%、0.1~0.1)で、1,428例に1例の割合だった。 1年以内に再手術を要した患者は3.8%(95%CI:3.8~3.9)と比較的高く、26例に1例の割合であり、肩関節安定化術の2.7%(95%CI:2.5~3.0)から凍結肩関節授動術の5.7%(5.4~6.1)までの幅がみられた。 深部感染症に対する追加手術は全体で0.1%(95%CI:0.1~0.1)と低く、1,111例に1例の割合であったが、腱板修復術に伴う深部感染症の発生率は0.2%(0.2~0.2)と高く、526例に1例の割合だった。 著者は、「膝関節鏡視下手術に比べて90日以内の肺炎の発生率が高かった理由は不明であり、今後、その原因の解明と予防法の確立が求められる。また、今後の研究では、腱板修復術に伴う感染症の増加に関連する因子の検討も行うべきであろう」としている。

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1回の接種で効果が期待できる新型コロナワクチン「ジェコビデン筋注」【下平博士のDIノート】第102回

1回の接種で効果が期待できる新型コロナワクチン「ジェコビデン筋注」今回は、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン(遺伝子組換えアデノウイルスベクター)(商品名:ジェコビデン筋注、製造販売元:ヤンセンファーマ)」を紹介します。本剤は、わが国で2剤目として承認されたウイルスベクターワクチンであり、1回の接種で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を予防することが期待されています。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症の予防の適応で、2022年5月30日に承認されました。なお、現時点では本剤の予防効果の持続期間は確立していません。本剤の接種は18歳以上が対象です。<用法・用量>通常、1回0.5mLを筋肉内に接種します。追加免疫については、本剤の初回接種から少なくとも2ヵ月経過した後に2回目の接種を行うことができます。<安全性>主な副反応として、注射部位疼痛(57.9%)、疲労(46.1%)、頭痛(44.7%)、筋肉痛(40.4%)などが報告されています。また、重大な副反応として、ショック、アナフィラキシー、血栓症・血栓塞栓症(脳静脈血栓症・脳静脈洞血栓症、内臓静脈血栓症等)、ギラン・バレー症候群(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.このワクチンを接種することで新型コロナウイルスに対する免疫ができ、新型コロナウイルス感染症の発症を予防します。2.医師による問診や検温、診察の結果から接種できるかどうかが判断されます。発熱している人などは本剤の接種を受けることができません。3.本剤の接種当日は激しい運動を避け、接種部位を清潔に保ってください。接種後は健康状態に留意し、接種部位の異常や体調の変化、高熱、痙攣など普段と違う症状がある場合には、速やかに医師の診察を受けてください。4.1回の接種で予防できるワクチンです。初回接種から2ヵ月以上経過した後に2回目の接種(追加免疫)を受けることができます。追加免疫の要否は医師により判断されます。5.本剤の接種直後または接種後に、心因性反応を含む血管迷走神経反射として失神が現れることがあります。接種後一定時間は接種施設で待機し、帰宅後もすぐに医師と連絡を取れるようにしておいてください。6.ワクチン接種後に、鼻血、青あざができる、出血が止まりにくい、ふくらはぎの痛み・腫れ、手足のしびれ、鋭い胸の痛みなどが起こった場合には、血栓症の恐れがありますので、すぐに受診してください。<Shimo's eyes>本剤は、わが国で5番目の新型コロナウイルスワクチンとして承認された1回接種で予防効果が期待できるワクチンです。これまで承認されているワクチンは、mRNAワクチンであるコミナティ筋注/同5~11歳用、スパイクバックス筋注と、アデノウイルスベクターワクチンであるバキスゼブリア筋注、および組み換えスパイクタンパクを抗原としたヌバキソビッド筋注がありました。本剤はバキスゼブリア筋注に続く2剤目のウイルスベクターワクチンです。本剤は新型コロナウイルスワクチンとして初めての1回接種型です。ワクチンを1回接種した場合、中等症や重症になるリスクを、未接種群と比較して約66%低減させたと報告されています。なお、予防効果を高めるために、2ヵ月以上経過してからの追加免疫が認められています。ただし、ほかのワクチンとの交互接種についての有効性および安全性は評価されていません。1回接種は0.5mLで、本剤1バイアルには5回接種分が含まれています。特徴としては、発熱の副反応の頻度が少ないことが挙げられます。一方、「重要な基本的注意」に血小板減少を伴う血栓症(TTS)について注意喚起されています。本症の多くは接種後3週間以内に発現し、致死的転帰の症例も報告されているため、血栓塞栓症もしくは血小板減少症のリスク因子を有する者への接種には注意が必要です。なお、本剤について現時点では公費負担での接種とはならないため、接種希望者は自費での接種が想定されています。参考1)PMDA 添付文書 ジェコビデン筋注

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英語で「抗凝固薬」は?【1分★医療英語】第37回

第37回 英語で「抗凝固薬」は?Why do I need to take a blood thinner?(何で抗凝固薬を飲まなければいけないのですか?)Blood thinners are recommended to prevent blood clots from forming.(抗凝固薬は血栓が作られるのを防ぐために使われます)《例文1》What are the most common side effects of blood thinners?(抗凝固薬によくある副作用は何ですか?)《例文2》Are you on blood thinner medications?(抗凝固薬を服用していますか?)《解説》抗凝固薬は正式には“anticoagulant”ですが、患者さんへの説明には“blood thinner”を使います。日本語でも「血液をサラサラにする薬」と定番の言い方をするのと同様です。“blood thinner”を広義に「抗血栓薬」として、“antiplatelet”(抗血小板薬)を含むことも多く、患者さんへ抗血小板薬を説明する時は、“There are two different types of blood thinners, and antiplatelets  keep your platelets from sticking together.”(2種類の抗血栓薬があり、抗血小板薬は血小板がくっ付くのを防いでいます)と説明すると理解しやすくなります。“blood thinner”の副作用の確認には、“black or tarry stool”(黒色便やタール便 = 血便)、“prolonged nosebleed”(長引く鼻血)、“excessive bleeding gums”(過剰な歯茎からの出血)などの単語を使って説明します。ちなみに抗凝固薬のイグザレルト(Xarelto、一般名:リバーロキサバン)の発音は「ゼロート」という感じで、頭のXはZの音になるので注意が必要です。講師紹介

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ASCO2022 レポート 肺がん

レポーター紹介2022年のASCOは久しぶりの現地開催とWeb開催のハイブリッド形式で実施された。肺がん領域については昨年にも増して大きな話題に乏しく、Phase I試験のExpansion、Phase II試験、さらにはサブセット解析などが主体で、PivotalなPhase IIIの公表はあってもNegativeという状況であった。本稿では、その中から重要な知見について解説したい。SKYSCRAPER-02試験ASCO2022の肺がん領域において、Positiveであれば肺がんだけでなく臓器横断的に大きなインパクトを残したであろう試験がSKYSCRAPER-02試験である。残念ながらProgression-free survival(PFS)、Overall survival(OS)ともにNegativeであったこの試験は、進展型小細胞肺がんにおいて、カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブというIMpower133試験で確立された標準治療に、tiragolumab(抗TIGIT抗体)を上乗せすることの優越性を検証するために実施された。TIGIT(T cell immunoreceptor with Ig and ITIM domains)はT細胞やNK細胞に発現する免疫チェックポイント分子である。tiragolumabは非小細胞肺がんを対象に実施された無作為化Phase II試験であるCITYSCAPE試験の結果、PD-L1高発現の患者集団においてアテゾリズマブに対する上乗せが示され、大きな期待を集めていた。SKYSCRAPER-01試験では進行非小細胞肺がんPD-L1高発現群において、SKYSCRAPER-03試験では切除不能III期非小細胞肺がんの化学放射線療法後の地固め療法として、そして進展型小細胞肺がんにおいてはSKYSCRAPER-02試験が実施されている。その中で最も早く結果が公表されたSKYSCRAPER-02試験は、前述のとおりPFS、OSともにカルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブに対する上乗せを示すことができなかった。さらに、ASCO直前にSKYSCRAPER-01試験においても、PFSが統計学的にNegativeであり、OSの結果は追跡中というプレスリリースが発行され、大きな話題となった。SKYSCRAPER-01試験についても、PFSはNumerical improvementを示しているとされており、OSの結果は追跡中、さらにSKYSCRAPER-03試験は結果を待っている状態であり、今後の報告が待たれる。CITYSCAPE試験の成功以降、多数の薬剤が同時に開発される状況となった抗TIGIT抗体についても、今後、他の領域、他の薬剤の結果を含め注目したい。PD-L1高発現群に対するFDAのPooled analysis2021年前半にESMO virtual plenaryにおいて、Flatiron社の技術を用いた電子カルテデータの解析に基づき、免疫チェックポイント阻害薬単剤(IO-only)と、免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用療法(Chemo-IO)が、PD-L1高発現の集団において有効性に大きな違いがないことが報告され大きく注目された。今年のASCOにおいては、FDAがこれまでの臨床試験のデータのPooled analysis結果をまとめ、ASCO2022の進行肺がんOralセッションの1番目という栄誉を得た。Chemo-IOとしては、KEYNOTE-021試験、KEYNOTE-189試験、KEYNOTE-407試験、IMpower150試験、IMpower130試験、CheckMate9LA試験が、IO-onlyとしては、CheckMate026試験、KEYNOTE-024試験、KEYNOTE-042試験、IMpower110試験、CheckMate227試験、EMPOWER-Lung 1試験が対象となっている。これらの試験に登録された9,000例以上の患者から、PD-L1 50%以上のChemo-IO 455例、IO-only 1,298例が解析対象となっている。OSはIO-onlyで20.9ヵ月、Chemo-IOで25.0ヵ月、Hazard ratio(HR)は0.82(95%信頼区間[CI]:0.62~1.08)であり、わずかにChemo-IOで良いものの信頼区間は1をまたいでいるという結果であった。とくに、年齢別のサブセットで異なる傾向を認め、65歳以下ではChemo-IOが良好な傾向があるのに対して、75歳以上ではIO-onlyが良好であった。確かにPost-hocの解析であり、限界も多いものの、PD-L1高発現の集団において、IO-onlyの治療戦略の重要性が再度示される結果であった。ニボルマブ+イピリムマブに関連したフォローアップデータPoster発表ではあったものの、CheckMate227試験の5年アップデートの結果が公表された。抗PD-1抗体ニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法の、進行非小細胞肺がんにおけるベンチマークとなる報告である。今回の報告では、PD-L1 1%以上と、1%未満に大別した成績が報告されている。1%以上においては、5年OS割合が24%、5年PFS割合が12%であった。1%未満においては、5年OS割合が19%、5年PFS割合が10%であり、従来指摘されてきたように、PD-L1の発現によらず、ほぼ同等の成績が5年のデータとしても確認された。PD-L1 1%以上のKEYNOTE-042試験においては、5年OS割合が16.6%、5年PFS割合が6.9%とすでに報告されている。異なる試験の結果であり直接比較は難しいものの、ニボルマブ+イピリムマブの併用により長期生存にプラスに働く可能性があることが示唆される結果といえる。今回PD-L1高発現群でのサブセット解析の結果は示されていないため、KEYNOTE-024試験との比較や、KEYNOTE-598試験などで検証されているPD-L1高発現の部分については、新たな情報がなく、今後追加の発表が期待される。さらに、同じくPosterであるが、CheckMate9LA試験については3年のアップデート結果が報告された。PD-L1の発現によらない全体集団において、化学療法2サイクル+ニボルマブ+イピリムマブは、3年OS割合27%、3年PFS割合13%を示した。この傾向はPD-L1の発現によらず維持されており、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法の特徴が表れている。CheckMate9LA試験についても今後5年のフォローアップデータなどが待たれるものの、おおむねCheckMate227試験を踏襲する傾向であった。ただ、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)で実施されているJCOG2007(NIPPON)試験において、化学療法+ニボルマブ+イピリムマブ群の安全性の問題により登録が中断されており、実施に際しては免疫関連の有害事象を中心とした安全管理に留意が必要である(JCOG2007[NIPPON試験]における重篤な有害事象発生について)。周術期治療の話題切除可能非小細胞肺がんに対して、初めてニボルマブによる術前治療を実施した試験がNew England Journal of Medicine誌に掲載されたことを記憶されている方も多いと思われる。ASCO2022では、この試験の5年フォローアップデータがPosterセッションではあるものの報告されている。20例の対象患者全体において、5年のOS割合が80%、無再発生存割合が60%であり、ニボルマブによる術前治療によりMPR(Major pathologic response、切除検体でViable tumorが10%以下)を達成した9例の患者のうち、8例(89%)が5年無再発生存しているという良好な結果であった。確かに非常に限られた症例での報告ではあるものの、現在実施中、フォローアップ中のさまざまな周術期免疫チェックポイント阻害薬の試験の結果を先取りする内容として確認しておきたい。最近の試験としては、CheckMate816試験について、術前ニボルマブ+化学療法後の病理学的奏効に基づく、EFS(Event-free survival)のサブセット解析の結果が報告されている。本試験はすでにAACR2022において、EFSにおいて術前化学療法に対してニボルマブを上乗せする意義が証明されたとする報告が行われている。AACRでの発表においても、pCR(pathologic complete response)を達成した患者において、ニボルマブの有無にかかわらず明らかにEFSが良いという結果、すなわちpCRが術前治療後の患者にとって明確な予後因子であることが報告されている。今回の報告ではその点をさらに解析し、pCRやMPRだけでなく、70%以上、20%以上などのさまざまなカットオフで評価しており、おおむね病理学的奏効の深さとEFSの良さが相関することが示された。ESMOが主導する、ESMO Virtual plenaryシリーズは、通常開催の学会とは独立して、重要演題を速報的に公開する方法として徐々にその地位を固めつつある。今年のESMO Virtual plenaryにおける肺がん領域の話題は、完全切除後の非小細胞肺がんにおいて、術後補助療法としてペムブロリズマブの意義を検証する、Phase III試験であるEORTC-1416-LCG/ETOP 8-15(PEARLS/KEYNOTE-091)試験であった。本試験においては、何よりもPD-L1高発現の集団においてペムブロリズマブの優越性が示されなかった点が話題となり、今後さまざまな観点からの解析結果が待たれる状態である。ASCO2022においてはサブグループ解析が報告され、割付調整因子に含まれていた術後プラチナ併用療法の有無において実施群のほうで明らかにペムブロリズマブの追加が良い傾向を認め、探索的な結果ながらも術後プラチナ併用療法としてカルボプラチン+パクリタキセルを実施した場合にペムブロリズマブの追加の効果が乏しいことが示されている。本試験については今後もさまざまな追加解析が実施されると思われ、それらの結果からIMpower010試験のアテゾリズマブと合わせて、周術期免疫療法の理解が深まることを期待している。

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第121回 脳の不調が続くCOVID-19患者に高圧酸素投与が有効

高圧室で100%の酸素を吸う高圧酸素治療(HBOT;hyperbaric oxygen therapy)が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)後の不調(post-COVID-19 condition)に有効なことがプラセボ対照二重盲検無作為化試験で示されました1-4)。老化と関連する認知や身体機能の衰えの治療に取り組み、人が持てる力をHBOTを頼りに最大限に引き出すことを目指す病院Aviv Clinicsが試験を手掛けました。Aviv Clinicsの本拠は米国フロリダ州で、試験はイスラエルにあるその研究所Shamir Medical Centerで実施されました。集中できない、頭がもやもやする(brain fog)、忘れっぽくなった、目当ての単語や考えを思い出すのが困難といった認知症状(cognitive symptom)がSARS-CoV-2感染後3ヵ月超続く患者73人が試験参加に同意し、その約半数の37人がHBOTを受ける群、残り36人がプラセボ群に割り振られました。試験ではドイツのHAUX社製の高圧室(Starmed-2700 chamber)が使われ、HBOT実施群は2絶対気圧(2ATA)の環境でマスクから100%の酸素を吸う所要時間90分間の治療を週に5日の頻度で合計40回受けました。プラセボ群の患者は高圧室には入るもののHBOT群のような高圧にはせずいつもの気圧(1.03 ATA)で普段の酸素濃度(21%)の空気を吸いました。40回が済んでから1~3週間後に検査したところ、HBOT群の方がプラセボ群に比べて認知機能全般、注意、遂行機能がより改善していました。活力(energy)、睡眠、うつや不安などの精神症状、嗅覚、痛み指標も改善しました。それら体調の改善はMRIで調べた脳血流の改善と関連しました。また、HBOTに伴う脳前方領域の神経新生も認められました。神経新生が認められた領域は注意、精神状態、遂行機能を担います。HBOTの安全性懸念は認められず、副作用の発現率にプラセボ治療との有意差はありませんでした。副作用のせいで治療を止めた患者はいませんでした。研究者は今後取り組むべき課題を幾つか挙げています。1つはより大規模な試験を実施してHBOTが最も有効な患者特徴を割り出すことです。また、今回の試験の治療回数は40回でしたが、それが果たして最適な回数かどうかは不明であり、今後調べる必要があります。それに、今回の試験での効果は治療を終えてから1~3週間後のものであり、より長期の経過を調べなくてはなりません。なお今回の試験で使われたプロトコールや手順はAviv Clinicsや試験実施研究所Shamir Medical Centerから入手可能です2)。参考1)Zilberman-Itskovich S,et al. Sci Rep. 2022 Jul 12;12:11252.2)Effective treatment is now available for millions suffering with long COVID symptoms / GLOBE NEWSWIRE3)High-pressure oxygen treatment may help long COVID / Reuters4)Better brain function, fewer long-COVID symptoms after hyperbaric oxygen / University of Minnesota

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双極性障害の入院予防、リチウム中止後の気分安定薬と抗精神病薬の有効性比較

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のM. Holm氏らは、双極性障害患者におけるリチウム中止後の精神科入院および治療失敗の予防に対する気分安定薬および抗精神病薬の実際の有効性を比較検討するため、双極性コホート研究を実施した。その結果、双極性障害患者のリチウム中止後の精神科入院を予防するためには、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬がとくに効果的であることが示唆された。また、著者らは、リチウムの再開は投薬変更のリスクが最も低くなる可能性があることを報告した。European Neuropsychopharmacology誌オンライン版2022年6月25日号の報告。 フィンランドのヘルスケアレジスターを用いて、1987~2018年に双極性障害と診断され、リチウム治療を1年以上行った後に中止した同国内のすべての患者4,052例(中止前のリチウム治療期間:中央値2.7年)を特定した。精神科入院および治療失敗(精神科入院、死亡、投薬変更)リスクの調査には、個人内Cox回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・気分安定薬単剤療法のうち、バルプロ酸の使用は、気分安定薬未使用の場合と比較し、入院リスクが低かった(HR:0.83、95%CI:0.71~0.97)。・抗精神病薬単剤療法のうち、LAI抗精神病薬(HR:0.48、95%CI:0.26~0.88)およびchlorprothixene(HR:0.62、95%CI:0.44~0.88)の使用は、抗精神病薬未使用の場合と比較し精神科入院リスク低く、クエチアピン(HR:1.26、95%CI:1.07~1.48)および経口オランザピン(HR:1.23、95%CI:1.01~1.49)の使用は、抗精神病薬未使用の場合と比較し精神科入院リスクが高かった。・気分安定薬単剤療法のうち、リチウムの使用は、バルプロ酸の使用と比較し、治療失敗のリスクが低かった(HR:0.82、95%CI:0.76~0.88)。

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膝OAへのヒアルロン酸注射、軽減効果はわずか/BMJ

 変形性膝関節症(膝OA)に対するヒアルロン酸関節内注射(関節内補充療法)は、プラセボと比較して痛みの軽減効果はわずかであり、両者間の臨床的意義のある差はごくわずかであるという強力で決定的なエビデンスが示されたと、カナダ・St. Michael’s HospitalのTiago V. Pereira氏らがシステマティック・レビューとメタ解析の結果、報告した。また、同様に強力で決定的なエビデンスとして、関節内補充療法はプラセボと比較して重篤な有害事象のリスク増加と関連することも示されたという。関節内補充療法は、50歳以上の膝OAの治療に用いられているが、その有効性と安全性についてはいまだ論争の的となっている。直近では、治療効果が従前に報告されたものよりも小さい可能性があるとのエビデンスが示唆されていた。著者は、「今回の検討結果は、膝OAの治療としての関節内補充療法の多用を支持しないものであった」とまとめている。BMJ誌2022年7月6日号掲載の報告。大規模プラセボ対照無作為化試験についてメタ解析 研究グループは、膝OA患者の痛みと機能に関する関節内補充療法の有効性と安全性を評価するため、無作為化試験を対象としたシステマティック・レビューとメタ解析を行った。 Medline、Embase、the Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)のデータベースで、各媒体創刊~2021年9月11日について検索。また、灰色文献(grey literature)と試験レジストリで未発表試験を特定した。適格試験は、膝OA治療として関節内補充療法とプラセボまたは未介入を比較した無作為化試験であった。 2人の研究者がそれぞれ関連データを抽出し、コクランバイアスリスクツールを用いて試験のバイアスリスクを評価した。事前規定の主要解析は、大規模プラセボ対照試験(各群被験者100例以上)のみをベースとして行った。要約結果は、ランダム効果メタ解析モデルにより入手し、ランダム効果モデル下で、累積メタ解析と逐次解析を行った。 事前規定の主要アウトカムは、痛みの強度。副次アウトカムは、機能および重篤な有害事象であった。痛みと機能は標準化平均差(SMD)で解析し、事前規定の臨床的意義のある群間最小差は-0.37SMDとした。重篤な有害事象は、相対リスクで解析した。痛みの強度の群間差は-0.08、重篤な有害事象リスク1.49倍 169試験・無作為化を受けた被験者2万1,163例のデータが特定された。 痛みと機能について、小規模試験の影響と出版バイアスのエビデンス(Egger’s検定のp<0.001、ファンネルプロットが非対称)が認められた。 24の大規模プラセボ対照試験(無作為化を受けた被験者8, 997例)において、関節内補充療法群はプラセボ群と比較して痛みの強度の低下は小さく(SMD:-0.08、95%信頼区間[CI]:-0.15~-0.02)、臨床的意義のある群間最小差を満たすことがないばかりか95%CI下限値をみても、わずかであった。その効果は、視覚的アナログスケールでみると群間スコア差は-2.0mm(95%CI:-3.8~-0.5)であった。また逐次解析で、2009年以降の痛みの試験について、関節内補充療法vs.プラセボの臨床的同等性の決定的なエビデンスがあることが示された。 同様の結果は、機能についても確認された。 重篤な有害事象リスクは、15の大規模プラセボ対照試験(無作為化を受けた被験者6,462例)において、関節内補充療法がプラセボよりも統計学的に有意に高いことが認められた(相対リスク:1.49、95%CI:1.12~1.98)。

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米国、人種-民族間の健康格差、地域ごとに違いはあるか/Lancet

 米国の2000~19年の健康格差を体系的に分析したところ、5つの人種-民族別にみた平均余命の格差は広範かつ永続的に存在していたことを、米国・ワシントン大学のLaura Dwyer-Lindgren氏らGBD US Health Disparities Collaboratorsが報告した。米国の人種-民族間の平均余命には大きく永続的な格差が存在するとされていたが、これまでそのパターンが地域規模でどの程度異なるかは明らかになっていなかったという。今回、研究グループは、米国3,110郡について20年間にわたり、5つの人種-民族の平均余命を推定し、平均余命の時空間でみた変動および人種-民族間の格差を明らかにする解析を行った。Lancet誌2022年7月2日号掲載の報告。5つの人種-民族別に2000~19年の平均余命の変化を推定し評価 研究グループは、US National Vital Statistics Systemからの死亡登録データとUS National Center for Health Statisticsからの人口統計データを、新規の小規模エリア推定モデルに適用し、2000~19年の郡および5つの人種-民族(非ラテン・非ヒスパニック系白人[白人グループ]、非ラテン・非ヒスパニック系黒人[黒人グループ]、非ラテン・非ヒスパニック系アメリカ先住民/アラスカ先住民[AIANグループ]、非ラテン・非ヒスパニック系アジア・太平洋諸島系アメリカ人[APIグループ]、ラテン・ヒスパニック系アメリカ人[ラテン系グループ])で層別化した、年間性別死亡率と年間年齢別死亡率を推定した。 これらの死亡率について、死亡診断書で人種および民族の誤りを修正し、その後に簡易生命表を作成して出生時の平均余命を推定した。健康格差をなくし寿命を延伸するには、地域がカギ 2000~19年の平均余命の変動傾向は、人種-民族グループおよび郡で異なっていた。米国全体で平均余命の伸長が認められたのは、黒人グループ(変化:3.9歳[95%不確定区間[UI]:3.8~4.0]、2019年の平均余命:75.3歳[75.2~75.4])、APIグループ(2.9歳[2.7~3.0]、85.7歳[85.3~86.0])、ラテン系グループ(2.7歳[2.6~2.8]、82.2歳[82.0~82.5])、そして白人グループ(1.7歳[1.6~1.7]、78.9歳[78.9~79.0])だった。一方、AIANグループは変化が認められなかった(0.0歳[-0.3~0.4]、73.1歳[71.5~74.8])。 全米レベルでは、黒人グループと白人グループの平均余命の格差は対象期間中に縮小していた。しかしAIANグループと白人グループの同差は拡大していた。これらのパターンは、郡レベルにおいても広く認められた。 APIおよびラテン系グループと白人グループの平均余命の格差(白人グループのほうが平均余命は下回る)は、全米レベルでは2000~19年に拡大していた。しかし、郡レベルでみると、ラテン系グループは少数とはいえかなりの数(615/1,465郡[42.0%])でその差が縮小しており、APIグループは多数(401/666郡[60.2%])でその差が縮小していた。 すべての人種-民族グループで、平均余命の改善は対象期間の後期10年(2010~19年)よりも前期10年(2000~10年)のほうが郡全体にわたっており、大きかった。 結果を踏まえて著者は、「米国における社会的弱者の健康状態悪化と早期死亡の根本的原因に対処し、健康格差をなくして、すべての人の寿命を延伸するには、地域レベルのデータが不可欠である」と述べている。

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ペルツズマブ併用HER2+乳がん術後療法、8年時の解析結果(APHINITY)/ロシュ

 ロシュ・ダイアグノスティックスは2022年7月15日付けのプレスリリースで、HER2陽性乳がんの術後化学療法+トラスツズマブへのペルツズマブの上乗せを検証した第III相APHINITY試験について、8年の長期フォローアップデータを発表した。なお、本データは欧州臨床腫瘍学会(ESMO)バーチャル・プレナリー(VP6-2022)で発表されたもの。トラスツズマブ+ペルツズマブ併用群は再発または死亡リスクを23%削減 APHINITY試験は、HER2陽性早期乳がん患者の術後療法として、化学療法+トラスツズマブにペルツズマブを併用した際のプラセボ群に対する無浸潤疾患生存期間(iDFS)における優越性を検証した無作為化二重盲検プラセボ対照二群間比較試験。主要評価項目のiDFSについて、トラスツズマブ+ペルツズマブ併用群の有意な改善が報告されている。 今回発表された、HER2陽性乳がんの術後化学療法+トラスツズマブへのペルツズマブの上乗せを検証した第III相APHINITY試験の8年時の中間解析結果は以下の通り。・追跡期間中央値は8.4年(101ヵ月)。・トラスツズマブ+ペルツズマブ併用群では、プラセボ群と比較して死亡例が少なかった(168 [7.0%] vs.202 [8.4%]、ハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.68~1.02)。ただし、OSデータは未成熟であり、統計学的有意性はまだ達成されていない。・トラスツズマブ+ペルツズマブ併用群では、プラセボ群と比較して乳がんの再発または死亡リスクを、ITT集団全体で23%削減し続けていた(iDFS;HR:0.77、95%CI:0.66~0.91)。・とくにリンパ節転移陽性患者で最も大きなベネフィットが観察され、トラスツズマブ+ペルツズマブ併用群では再発または死亡リスクを28%削減していた(iDFS;HR:0.72、95%CI:0.60~0.87)。・以前の解析結果と同様に、ホルモン受容体の状態に関係なくトラスツズマブ+ペルツズマブ併用群のベネフィットが観察された。ホルモン受容体陽性群での再発または死亡のリスクは25%削減され(iDFS;HR:0.75、95%CI:0.61~0.92)、ホルモン受容体陰性群では18%削減された(iDFS;HR:0.82、95%CI:0.64~1.06)。・心臓に対する安全性を含め、安全性プロファイルは以前の研究と一致しており、新たなまたは予期しない安全性シグナルは特定されなかった。

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片頭痛の有病率や割合を日本人で調査

 片頭痛は、反復性の頭痛発作で特徴付けられる慢性疾患であるにもかかわらず、日本におけるその疫学や治療状況に関して、最近の研究は十分に行われていない。埼玉精神神経センターの坂井 文彦氏らは、日本における片頭痛の有病率および治療状況を明らかにするため、健康保険協会員を対象に、レセプトデータおよび片頭痛・頭痛に関するオンライン調査のデータを用いて実態調査を行った。その結果、日本人片頭痛患者の80%が医療機関での治療を受けておらず、苦痛を感じながら日常生活を続けていることが明らかとなった。著者らは、革新的な治療アプローチが利用可能になることに併せ、片頭痛は単なる頭痛ではなく、診断や治療が必要な疾患であることを啓発していく必要があるとしている。The Journal of Headache and Pain誌2022年6月23日号の報告。片頭痛の有病率は女性が男性の4.4倍 データソース(DeSCヘルスケアのデータベースおよびオンライン調査)の組み合わせによる独自のアプローチを利用した調査を行った。主要アウトカムは、片頭痛患者の総数・割合、片頭痛の全体的な有病率、年齢や性別で層別化された片頭痛の全体的な有病率とした。副次的アウトカムは、医療利用状況、臨床的特徴、頭痛症状とした。 片頭痛患者の患者数や割合、有病率などを調査した主な結果は以下のとおり。・データの母集団は、2万1,480人。・可能性のある症例を含む片頭痛の全体的な有病率は、3.2%であった。・片頭痛の有病率が最も高かった年齢層は、30~39歳であった。・女性の片頭痛の有病率は、男性の4.4倍であった。・医師の診断を受けていない片頭痛患者の割合は、81.0%であった。・片頭痛患者の80%以上は市販薬を使用しており、処方薬を使用していた患者は4.8%であった。・頭痛症状が重症であると考えていた患者は、約52.9%であった。・片頭痛患者の大部分(72.9%)は、日常生活活動の障害程度が中等度~重度であると考えていた。

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皮膚の色が濃いと酸素飽和度は高く表示される?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第214回

皮膚の色が濃いと酸素飽和度は高く表示される?pixabayより使用いつもふざけた態度で連載を書いているトンデモドクターみたいな扱いになっていることもありますが、たまには臨床的に大事なおどろき論文も紹介しましょう。皮膚の色が濃いと、酸素飽和度が正しく表示されないとして、2021年にFDA(米国食品医薬品局)から注意喚起が発令されました1)。この発令はNEJM誌2020年12月17日号に掲載された研究結果に基づいており、同研究において、黒人の患者の11.7%が、経皮的酸素飽和度が正常であるにもかかわらず、動脈血液ガス分析で酸素飽和度が88%を下回っている「隠れ低酸素血症」を有していることが示されています2)。さて、呼吸器内科のトップジャーナルであるEuropean Respiratory Journalで、人種ごとの経皮的酸素飽和度を調べた研究が報告されています。Crooks CJ, et al. Pulse oximeter measurements vary across ethnic groups: an observational study in patients with COVID-19.Eur Respir J. 2022 Apr 7;59(4):2103246.2020年2月1日~2021年9月5日の間に、ノッティンガム大学病院にCOVID-19疑いまたは確定で入院した患者のデータを収集し、30分の間に血液ガス分析による酸素分圧+パルスオキシメーターの経皮的酸素飽和度のペアが揃ったデータを、主要アウトカムとして使用しました。ICUのデータは入手できなかったため、それ以外の患者さんが対象となりました。動脈血液ガス分析と比較して、パルスオキシメーターで測定した経皮的酸素飽和度の平均差には差が確認され(p=0.02)、2種類以上の人種が混ざった集団で、最も差が大きいことがわかりました(+6.9%、95%信頼区間[CI]:−21.9~+35.8)。反面、白人(+3.2%、95%CI:−22.8~+29.1)がその差が最も低く、黒人(+5.4、95%CI:−25.9~+36.8)とアジア人(+5.1%、95%CI:−23.8~+34.0)は中程度の差異が確認されました。動脈血液ガス分析による酸素飽和度の測定値が90%未満の集団では、パルスオキシメーターはすべての人種において酸素飽和度を過大評価し、95%以上の集団では過小評価することがわかりました(p<0.0001)。混合効果線形モデルでも、白人と比較した場合、黒人・アジア人・2種類以上の人種が混ざった集団において、動脈血液ガス分析よりもパルスオキシメーターで測定した酸素飽和度の数値が高いことがわかりました。そのため、皮膚の色が濃い人は、真の酸素飽和度が90%未満というとても重要なゾーンにおいて、過大評価されがちであり、隠れ低酸素血症を見逃すリスクが高いことがわかりました。ちなみに、マニキュアは一般的に測定エラーを引き起こすため、真っ黒や真っ赤なものは、できるだけ避けることが望ましいですが3)、光が散乱するので低めに出たり高めに出たりします。1)Pulse Oximeter Accuracy and Limitations: FDA Safety Communication. 2022 Feb. 19, UPDATE 2022 June 21.2)Sjoding MW, et al. Racial Bias in Pulse Oximetry Measurement. N Engl J Med. 2020;383:2477-2478.3)真茅孝志, 他. パルスオキシメータにおけるマニキュア使用と外乱光の影響についての基礎的検討. 医科器械学. 2003;73(4):207.

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第117回 なぜその情報が必要か―安倍氏銃撃事件から医療者や報道陣が学ぶべきこと

参議院選挙最中の7月8日、奈良県奈良市の近鉄大和西大寺駅前で選挙応援中だった安倍 晋三元首相が凶弾に倒れた。殺人未遂(後に殺人に切り替え)の現行犯で逮捕された容疑者は、母親が宗教団体に入信し、その寄付が原因で家庭が崩壊。この団体と安倍元首相が親しいと考え、安倍元首相を標的にしたとしている。安倍元首相は現場で応急処置後に救急車とドクターヘリを使って奈良県立医科大学(以下、奈良医大)高度救命救急センターに搬送されたが、同日午後5時3分、死亡が確認された。日本国内では明治期の内閣制採用以降これまで64人の首相経験者がいるが、在任中あるいは退任後に殺害されたのは、安倍氏を含め7人。第二次世界大戦後では安倍氏が初めてである。今回、この件を医療・報道の側面から振り返りたい。まず、事件が発生したのは8日午前11時31分ごろ。奈良県選挙区の自由民主党公認候補の応援演説のため、奈良県入りした安倍氏は近鉄大和西大寺駅前の横断歩道中ごろにあるカードレールで囲まれた安全地帯で午前11時29分ごろから演説を開始。その直後、背後の車道に侵入してきた容疑者が安倍氏の背後約3mの距離から自作銃で発砲し、爆音と白煙が発生。一瞬後方を振り返った安倍氏だったが、容疑者がすぐさま2発目を発射した直後、避難するかのようにうずくまったまま倒れ込んだ。その後のタイムラインは以下のようになる。▽午前11時31分:奈良市消防局に通報▽午前11時32分:救急隊出動▽午前11時36分:消防局がドクターヘリを要請▽午前11時37分:救急隊などが現場に到着▽午前11時54分:現場から安倍元首相を搬送開始▽午後 0時 9分:平城京跡歴史公園で搬送をドクターヘリに引き継ぐ▽午後 0時20分:ドクターヘリが奈良県立医科大学到着安倍元首相が搬送される直前、現場の写真がネット上に公開されているが、そこで写っていた安倍元首相の顔面は蒼白。当時、駆け付けた現場近くのクリニックの医師の証言では、すでに看護師と思われる女性が心臓マッサージ中で自発呼吸はなく、ほぼ心肺停止状態。眼球結膜が真っ白でかなり出血していると考えられ、瞳孔も開きかけていたという。さらに周囲の呼びかけにはすでに反応がなく、痛覚を確認するための爪床刺激にも反応はなかった。この医師は、クリニックにあった自動体外式除細動器(AED)を装着させるも、解析の結果、適応はないと判断されたと語っている。適応がないということはすでに心停止ということになる。そこで心臓マッサージが再開されたという。同時に脳に血流が少しでも行くように医師が下肢挙上を行った。その後は上記のタイムライン通り。死亡確認後に行われた奈良医大による記者会見で、高度救命救急センター長で教授の福島 英賢氏が語った内容を箇条書きにする。救急隊接触時・搬送時にすでに心肺停止状態右頸部に約5cm間隔で2ヵ所の銃創らしきもの、左肩に射出口らしき傷処置中に体内から弾丸は未発見心臓および大血管の損傷による心肺停止と推定心室にも損傷対応は外来処置室で実施処置内容は蘇生的開胸による胸部止血と輸血輸血量は100単位以上一部止血をできたところもあったが、凝固能が失われさまざまなところから出血死因は失血死奈良県警が同日午後10時40分から翌日早朝にかけて約6時間半にわたって行った司法解剖の結果では、銃弾による傷は首と左上腕部の計2カ所。奈良医大の会見で射出口の可能性があると説明されていた左肩は射入口で、右頸部の銃創と思われた2か所のうち、片方については県警の司法解剖では銃創であるかは判別できなかったという。そのうえで死因は「左上腕部射創による左右鎖骨下動脈損傷にもとづく失血死」とされている。前述の奈良医大の会見での質疑については、SNS上で医療関係者を中心に“質問内容が稚拙”と批判も多かった。この印象はほぼ私も同じだが、その一部を改めて振り返り論評を加えたい。まず、記者と福島氏との間では同じようなやり取りが何度か繰り返されている。 記者A 無くなられた時間は5時3分ということですが、家族が到着されていたのは確か5時過ぎだったような気がするのですが、到着されていた時はすでにお亡くなりになられていたということでしょうか?福島氏救急隊接触時からずっと心肺停止状態であられました 記者B 今回、撃たれた現場で即死したという理解でよろしいでしょうか?福島氏撃たれた現場で心肺停止状態になったという表現になるかと思います 記者C 搬送された時点で手遅れという言い方をしてもよろしいでしょうか?福島氏すでにかなり大きな怪我があったことには違いありませんので、一般的にはそういうご理解になるのかもしれませんが、われわれとしては心肺停止状態ということで対応しています 当初の報道では救急隊の現場到着時に意識があったとも伝えられていたが、前述の現場で対応した医師の証言や会見を聞く限りでは、救急隊到着時から心肺停止状態だったことは間違いないようである。意識があったという報道は、おそらく銃撃のまさに直後の周囲の呼びかけに対してだったのだろう。本サイトの読者に対しては釈迦に説法だが、心停止、自発呼吸の停止、瞳孔散大の3点を医師が確認して死亡と判定されるまでは、心肺停止と定義されることが多い。一般人からすると、この状態は「死亡判定を受けていない事実上の死体」と捉えられがちで、海外の一部ではこの状態では報道上死亡扱いをすることも少なくない。その点で実は日本の報道のほうがきわめて厳格な扱いをしている。にもかかわらず、会見で上記のようなちぐはぐな応答が散見されたのは、おそらく記者の配置上の問題だろう。この「死亡」と「心肺停止」の定義について最も敏感と思われるのが、事件、事故、災害時を担当する社会部の警察担当記者、あるいは科学部記者。しかし、今回の事件の重大さを考えれば警察担当記者はおそらく奈良県警察本部に詰めていただろうし、事件時に科学部記者が出動することは少ない。つまり奈良医大の会見では、そのどちらでもない記者が大勢を占めていただろうと推定される。それゆえのちぐはぐさが上記のやり取りには表れていると思う。なお、SNS上では奈良医大に到着した昭恵夫人の様子を聞き出そうとしたかのような質問をした記者と、そのことには触れなかった福島氏のやり取りについて記者を批判しているケースが少なくない。私個人としてはどちらの立場も正しいと敢えて言及しておきたい。記者は聞けることは、真空ポンプで空気を吸い取るがごとくすべて聞くのが鉄則。初めから「どうせ答えてもらえないだろうから」と尻込みする記者は記者とは言えない。一方で患者を治療した際の医学的側面のみを語り、みだりにプライバシーや推定を語らない福島氏の立場も医療従事者として当然かつ正しい在り方である。メディア全般に不信感を持つ人にとってはこの評価は「身内びいき」と思われるかもしれないが、取材とは例えは悪いが「狐と狸の化かし合い」が常である。そのうえでこのやり取りの記者側の意図を私なりに推測すると、単純にどれだけ搬送時の安倍氏の状態がどれだけ深刻なものだったかを知りたかったということだろう。たぶん私が会見場にいたら、回答が得られたかどうかは別にして搬送時の推定失血量を聞いただろう。銃創の場合、発生から10分以内に開胸が行える医療機関への搬送ができるか否かが救命のカギを握る。また、循環血液量の30%以上の出血があれば生命の危機となる。以前官邸ホームページで公開されていた安倍氏の身長は175cm、体重は70kgだったことから、おおよその循環血液量は体重の約13分の1である5.8L。約1.7Lの出血で致命的だ。会見時に福島氏が説明した輸血量100単位以上について、記者から100単位以上とは何mLか問われ、福島氏は現時点でわからないと回答をしている。これはたぶん輸血したのが赤血球濃厚液(1単位140mL)、濃厚血小板液(10単位約200mL)、新鮮凍結血漿液(1単位約120mL)が入り混じって使われたからだろうと推察される。100単位を単純計算すれば、赤血球濃厚液換算で14L、濃厚血小板換算で2L、新鮮凍結血漿液で12Lとなる。治療時間5時間ということを加味しても搬送時点ですでに生命の危機の失血量だったことはほぼ確実と言って良いだろう。ちなみに事件発生当初、搬送時に意識があったと誤報(あくまで結果論だが)されたこともあり、私個人はなぜ奈良医大に搬送したのだろうと考えていた。もちろん奈良県内で重篤な患者を受け入れる三次救命救急施設3ヵ所のうち、ドクターヘリも有している奈良県立医科大学附属病院高度救命救急センターが最高位にあることから考えれば、常道ではある。ただ、繰り返しになるが銃創は発生から10分以内に開胸が行える医療機関への搬送が救命の鉄則。そうした中で同県内の三次救命救急施設3ヵ所のうち奈良県立病院機構奈良県総合医療センター救急・集中治療センターが現場から車で15分ほどだったことから、当初は私は上記のように思った。しかしながら、前述の奈良医大の会見を聞けば、極端な言い方をすれば事件現場で開胸して止血・輸血でも行わなければ、救命の可能性を見いだすことは難しかっただろうと考えた。また、輸血量からしても奈良医大のほうがそのストックが多かったと考えられるので、その点からも最終的には合点がいった。また、奈良医大の会見で、ある記者が心臓への損傷が疑われる際のAED使用や心臓マッサージを行うことの是非について尋ね、福島氏が一般論として正しい処置だと答えた件について、SNS上では記者に向けてやや批判めいた言説が目立つ。これは福島氏の答え次第では現場で処置した人が非難されかねないことを危惧した言説だろう。ただ、一般人ならば心臓に損傷の可能性がある時に本当にこうした処置をしていいものか悩むのはある意味当然である。というか、一般人はそうした知識がほとんどない。そうしたことを加味すれば、このやり取りは一般人に応急措置に対する知識を普及する上では有用なものだったと個人的には考えている。一方、今回の事件に関して私が1つだけ完全にNGと思った報道人の言動がある。安倍元首相に関する著作もある元民放記者が安倍氏の死亡時刻の1時間半ほど前に「安倍さんがお亡くなりになった」とのタイトルでSNSに投稿を行ったことだ。当然ながらこの投稿は批判されたが、元記者は正式な死亡発表後に「(投稿した時点で)家族にもすでに情報が伝わっていた」と強弁。しかし、最終的には提供された情報が誤っていた(その時点で家族は知らされていなかった)として謝罪している。そもそも人一人の死を外部にどのように伝えるかは例え公人でもあっても相当な慎重さが必要である。まして元民放記者の投稿時点で安倍元首相の妻である昭恵夫人は奈良に向けて移動中で、報道でも移動状況が逐次報じられていた。元民放記者はSNS投稿時点ですでに昭恵夫人が奈良に到着済みと聞いていたとの弁解を後に投稿していたが、リアルタイムの報道で得られる情報すら確認できていなかったのはお粗末としか言いようがない。元民放記者本人が弁解として書いていた「『確認された情報は出来るだけ早く報道する』というジャーナリズムの基本に立ち返って」という点は完全には否定しないが、たとえ家族の死亡確認後であってもそれをいつ報じるかの判断は各方面への影響を考えると容易ではない。一例を挙げると、公人の死去の報道は株式市場に影響を与えることもある。報道というのはそうしたことなども多角的に踏まえて行う仕事であり、いかように元民放記者が弁解しようが今回の行動は唾棄に値する。すでに一部の人はSNS上で見聞きしているかもしれないが、安倍氏の容体については当日の午後2~3時に「蘇生はほぼ不可能」という情報が永田町界隈に駆け回っていたことを一部の記者が死亡の公表後に明らかにしている。これは確かに事実で、筆者も耳にしている。しかしながら、例え家族による死亡確認後であってもそれを公にすることは、報道人としての確実な事実確認に加え、社会的にも心理的にも、いくつものハードルを超えなければならない。そのためこの元記者のような言動には私個人は驚きを隠せないのが本音ではある。

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医師の生活を破壊するインフレ!「あの方法」で乗り越えよう【医師のためのお金の話】第58回

ついにインフレが到来しました。バブル崩壊後30年もの長きにわたって続いたデフレがいよいよ終わろうとしています。持続的に物価が上昇するインフレの世界では、「これまでの常識」がまったく通用しません。数年単位の欧米への留学経験のある医師以外は、リアルなインフレ経験のある人はほとんどいないのではないでしょうか。私も含めて、ほとんどの日本人はデフレの世界が永遠に続くと思っていたはずです…。インフレになっても収入が増えれば問題ありません。ところが医師の収入は医療財政で規定されています。つまりインフレに連動して収入が増えるわけではないのです。収入が増えないのに支出が増える…。このピンチを乗り切るための対策を考えてみましょう。インフレの持つすべてを轢き潰す破壊力インフレの世界では、あらゆるモノが値上がりしていきます。しかも今年だけ2%上昇して終わりというわけではありません。来年も2%、再来年も2%というように物価が持続的に上昇します。投資の世界では「複利」が重要視されています。毎年の利子が少しずつ増加して雪だるま式に資産が増えていく複利効果は、長期投資が推奨される理由の1つです。物理学者のアインシュタインが「複利は人類最大の発明」と呼んだことでも有名ですね。毎年2%の利子が続くと雪だるま式に資産が増えていきますが、インフレではこれと逆の状況が発生します。つまり、年率2%のインフレが持続すると「雪だるま式に」物価が上昇していくのです。米国の物価は、私たち日本人の感覚からすると驚くほど高いです。2022年度版のビックマック指数(ビッグマック1個の価格を比較して各国の経済力を測るための指数)は、米国5.81ドルに対して、日本3.38ドルでした。3月以降の急激な円安進行のために、足元では差はさらに開いています。おおむね2倍程度と思ってよいでしょう。1990年のバブル経済絶頂期では日本の物価の方が高かったのです。その後30年の間、米国では毎年2~3%のインフレが続きました。一方、日本はデフレ経済が続いていたため、平均すると物価上昇率は0%台でした。わずかなインフレ率の差で、30年後の物価は2倍近くも開きました。2~3%のインフレでさえ、これほどの影響力があります。現在欧米で進行中の10%近いインフレが、いかに深刻な問題かがわかりますね。医師がインフレに弱い理由医師の収入は医療財政から捻出されています。しかし周知のように日本の財政は火の車。インフレに連動して診療報酬がアップするとは考え難いですね。つまり、医師の収入は増えないのにモノの価格だけ上昇する、という悪夢のような状況が現実化するのです。医師はバブル経済崩壊後で唯一の勝ち組でした。なぜ医師は勝ち組になれたのでしょうか。その理由は医師の収入が“減少しなかった”からです。決して収入が大幅に増加したからではないのがポイントです。大して収入が増加したわけではないのに医師が勝ち組と目されるのは、その他の職種の収入が減少したからです。さらにデフレが続いたために、医師の実質的購買力は増加しました。まさに医師にとってはわが世の春だったのです。ところが、デフレからインフレに転換するとすべてが逆回転し始めます。収入は増加しないのに物価は上昇する。しかも他の職種の場合、収入は上昇する余地があります。彼らの多くは国家財政に収入が規定されているわけではないからです。マーケットの海賊、インフレに打ち克つ方法インフレは投資の世界にも大きな影響を及ぼします。比較的インフレに強いと思われている投資の世界でさえ、インフレによって手痛いダメージを受けてしまいます。インフレは“マーケットの海賊”といわれるほどです。米国の研究では、株式投資の収益率は10%、債券投資の収益率は5%程度といわれています。ところがインフレが年率3%の場合、株式投資の収益率は7%、債券投資にいたっては2%にまで低下してしまいます。収入が減って購買力が低下した分を投資で補おうとしても意味がないのでしょうか? 私はそうではないと思います。確かにインフレは投資成果にも悪影響を及ぼしますが、それでもプラスを維持していることに注目すべきです。インフレ率が2%の状況では、何も対策を打たなければマイナス2%です。一方、米国のケースでは株式投資なら7%、債券投資でも2%と、立派にインフレに対抗できています。もちろん、日本株や日本国債ではもう少し収益率は低い可能性が高くはなります。とくに債券投資はマイナス圏に沈んでいる可能性も否定できません。しかし、株式投資であれば、インフレに対抗できる可能性が高いでしょう。そして、株式投資が一般的になっているのは喜ばしいことです。私たちの生活を破壊するインフレに対抗するには、何らかのアクションを起こさなければいけません。株式投資はその候補の筆頭といえるでしょう。今からでも遅くありません。しっかり勉強してインフレの世界に備えましょう。

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この心電図、QT延長ですか? 休薬すべきですか?【見落とさない!がんの心毒性】第13回

抗がん薬の中にはQT延長に注意すべきものが21種類もあります[第6回]。顕著なQT延長は命を脅かす不整脈であるトルサード・ド・ポアント(TdP:torsades de pointes、倒錯心室頻拍)のリスクになるため、投与開始前および投与開始後も定期的に心電図検査が推奨されています。治療開始前にQT延長を認めたために抗がん薬を開始できない、あるいは治療中にQT延長が発生したことで抗がん薬を中断・中止しなければならないケースもあります。QT時間が患者の命運を左右しかねないため、測定する側の責任は重大です。心電計にはレポート機能が付いている物が普及しており、自動計測されたQT時間が表示されたり、“QT延長”と自動診断が表示されたりする物があります。心電図の自動診断に任せっきりにしていると、自動診断の間違えに気付かずにQT延長と診断し、不要な休薬を招くことがあるので注意が必要です。今回は知っているようで知らないQT延長診断の裏側について、クイズを通して学んでいきましょう。【問題】心電図のQT時間について正しいのはどれでしょうか? 3つ選んでください。a.QT時間の測定はII誘導とV5誘導が推奨されることがあるが、QT時間が最長となる誘導での測定が原則である。b.自動計測のQT時間は手動計測のQT時間よりも短くなる傾向がある。c.自動計測の精度が向上したため、医薬品規制調和国際会議において手動計測は推奨されていない。d.自動計測ではU波が存在することでQT時間を誤って測定することが少なくない。e.右脚ブロックではQT時間が長くなる傾向がある。講師紹介

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創部の縫合後の処置【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q24

創部の縫合後の処置Q24症例とくに既往、アレルギー歴のない28歳男性、自宅でリンゴの皮剥きをしていた際に誤って左中指DIP腹側を切ってしまった。左中指DIP腹側に深さ3~4mm程度、長さ20mm程度の切創あり。明らかな神経障害や動脈性出血、腱損傷はなさそう。バイタルは安定しているが、止血をえられず、縫合処置が必要と判断される。非滅菌手袋もつけたし、指ブロックのうえ、創部を水道水でしっかり洗ったぞ。縫合自体は、過去と大きく変わりはないな。なんとか終えたぞ。処置後の創部は浸出液多いな。ガーゼと包帯で固定がよかったかな。乾燥させるとよいって習った気がするけども、合っていたかな?

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