長期的な体重変化とその後の認知症リスク

提供元:ケアネット

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公開日:2022/05/18

 

 中高年期の体重減少は、その後の認知症リスクの上昇と関連しているといわれている。しかし、多くの研究では、身体的フレイル(PF)の潜在的な影響について検討が不十分であり、フォローアップ期間が限られているか、対照が最適化されていないなどの問題がある。中国・浙江大学のJie Shen氏らは、米国の中年期成人および高齢者の体重変化と認知症リスクとの長期的および時間的な関係を調査するため、検討を行った。その結果、中年期成人および高齢者の認知症リスクと体重減少との関連が認められた。この関連は、PFの状態とは無関係であり、最近の体重減少だけでなく、10年以上前の体重減少との関連が確認された。The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism誌オンライン版2022年4月14日号の報告。

 米国の健康と退職に関する研究(Health and Retirement Study:HRS)より、50歳以上の5,985人を対象とした。長期的な体重変化の推移は、1992~2008年の期間に9回のBMI測定を繰り返し実施し算出した。その後、2008~18年に認知症の発症状況をフォローアップした。分析には、多変量Cox比例ハザードモデルを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・フォローアップ期間中(平均7.54年)における認知症の発症は682例(11.39%)であった。
・基本的な人口統計学的およびライフスタイルのデータで調整した後、体重減少が認められた群(中央値:-0.23kg/m2/年)は、体重が安定していた群(中央値:0.11kg/m2/年)と比較し、認知症リスクが有意に高かった(HR:1.60、95%CI:1.33~1.92)。
・さらにPFで調整した後、これらの関連性は弱まったが、強力かつ有意なままであった(HR:1.57、95%CI:1.30~1.89)。
・認知症と診断される約14~18年前に評価された体重減少においても、有意な関連が観察され(HR:1.30、95%CI:1.07~1.58)、その後も同様の関連が認められた。

(鷹野 敦夫)