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頭痛専門医試験 問題・解説集 第2版

10年ぶりの改訂版!2015年に発行された頭痛専門医試験問題・解答集の第2版。本書には2019~24年に実際に出題された1,200の試験問題から266問を精選して収載し、詳細な解説を行った。なお、Part1~3の3章構成で問題を振り分けており、Part1では実地臨床からの出題、Part2では臨床問題に加えて頭痛医学の基礎となる解剖や神経生理、生化学、遺伝学などの分野からの出題、Part3では画像や図を扱う問題が中心となっている。また、第2版では索引を設けており、キーワードによる出題検索が可能となった。代表的な2つのガイドライン『国際頭痛分類 第3版』『頭痛の診療ガイドライン2021』に準拠している。読者対象は、神経内科医・脳神経外科医・麻酔科医、その他小児科医、産婦人科医、耳鼻咽喉科医、精神科医、眼科医、リハビリ医・救急医、プライマリ・ケア医、および関連職種の医療従事者と多岐にわたる。2021年承認のCGRP関連抗体薬など頭痛診療は日々発展しており、頭痛による疾病負担や労働生産性の損失が問題視されるなかで、頭痛専門医の果たす役割は大きい。専門医を目指す受験生や知識を整理するための自己学習に役立つ1冊である。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する頭痛専門医試験 問題・解説集 第2版定価7,480円(税込)判型B5判(並製)頁数312頁(写真・図・表:70点)発行2025年3月編集日本頭痛学会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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神経発達障害を併発する強迫症に関与する免疫学的メカニズム

 強迫症(OCD)は、有病率が2〜3%といわれている精神疾患である。OCD治療では、セロトニン再取り込み阻害薬などの抗うつ薬の有効性が示されているが、病因は依然としてよくわかっていない。最近の研究では、とくに自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、トゥレット症などの神経発達障害を併発したOCD患者では、免疫学的メカニズムの関与が示唆されている。兵庫医科大学の櫻井 正彦氏らは、これらのメカニズムを明らかにするため、神経発達障害を併発したOCD患者と併発していないOCD患者における免疫学的因子を調査した。Psychiatric Research誌2025年4月号の報告。 対象は、兵庫医科大学病院で治療したOCD患者28例。神経発達障害を併発したOCD患者(OCD+NDD群)14例と併発していないOCD患者(OCD群)14例との比較を行った。血液サンプルからRNAを抽出し、RNAシーケンシングおよびIngenuity Pathway Analysis(IPA)を用いて分析した。IL11およびIL17Aの血漿レベルの測定には、ELISAを用いた。 主な結果は以下のとおり。・RNAシーケンシングでは、OCD+NDD群とOCD群との比較において、有意に異なる遺伝子が716個特定され、そのうち47個は免疫機能と関連していた。・IL11およびIL17Aが中心であり、IL11は好中球産生、IL17AはT細胞の遊走やサイトカイン分泌と関連が認められた。・パスウェイ解析では、これらの遺伝子間の複雑な相互作用が確認された。 著者らは「本結果は、神経発達障害を伴うOCD患者における免疫学的変化の重要性を示している。抗炎症性のIL11の減少、炎症誘発性のIL17Aの増加は、炎症へのシフトを示唆しており、神経発達の問題と関連していると考えられる」としたうえで、「神経発達障害を伴うOCDにおける免疫学的異常は、潜在的な治療ターゲットとなる可能性がある。治療抵抗性OCD患者、とくに神経発達障害を合併する患者に対する治療戦略を改善するためにも、免疫学的遺伝子の相互作用をさらに調査する必要がある」と結論付けている。

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「胃治療ガイドライン」改訂のポイント~薬物療法編~/日本胃学会

 2025年3月、「胃治療ガイドライン」(日本胃学会編)が改訂された。2021年から4年ぶりの改訂で、第7版となる。3月12~14日に行われた第97回日本胃学会では、「胃治療ガイドライン第7版 改訂のポイント」と題したシンポジウムが開催され、外科治療、内視鏡治療、薬物療法の3つのパートに分け、改訂ポイントが解説された。改訂点の多かった外科療法と薬物療法の主な改訂ポイントを2回に分けて紹介する。本稿では薬物療法に関する主な改訂点を取り上げる。「外科治療編」はこちら【薬物療法の改訂ポイント】原 浩樹氏(埼玉県立がんセンター 消化器内科) 内科系(薬物療法)については非常に多くの改訂があった。多くはガイドラインを一読すれば理解いただけると思うが、多くの方が関心を持っているであろうMSI、CPS、CLDN18、HER2といったバイオマーカーとそれに基づく治療選択と、今後避けて通れない高齢者診療に関する新たな推奨に絞って、改訂ポイントを紹介する。CQ12 切除不能進行・再発胃に対する一次化学療法CQ12 HER2陰性の切除不能進行・再発胃の一次治療において免疫チェックポイント阻害剤は推奨されるか?・HER2 陰性の切除不能な進行・再発胃/食道胃接合部において、一次治療として、化学療法+免疫チェックポイント阻害剤(ニボルマブまたはペムブロリズマブ)併用療法を行うことを強く推奨する。バイオマーカー(PD-L1[CPS]、MSI/MMR、CLDN18)や患者の全身状態を考慮する。(合意率100%、エビデンスの強さA)CQ13 切除不能進行・再発胃におけるバイオマーカーCQ13-1 バイオマーカーに基づいて一次治療を選択することは推奨されるか?・切除不能進行・再発胃患者に対し、バイオマーカーに基づいて一次治療を選択することを強く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さA) HER2陰性切除不能進行・再発胃の一次治療として、「推奨される化学療法レジメン」として新たに承認された抗CLDN18.2抗体のゾルベツキシマブ、チェックポイント阻害薬(ICI)のニボルマブ・ペムブロリズマブ、それぞれの化学療法との併用レジメンが追加された。「条件付きで推奨される化学療法レジメン」としてはSOX+ペムブロリズマブが追加となった。各レジメンの推奨根拠となった試験を紹介する。・ニボルマブ+化学療法/CheckMate 649PD-L1 CPS≧5の患者群における全生存期間(OS)中央値は、ニボルマブ+化学療法群で14.4ヵ月、化学療法単独群で11.1ヵ月であり、ハザード比(HR)は0.71であった。CPS≧1集団、全体集団でも改善傾向は見られたものの効果は低減する傾向だった。一方、MSI-H症例では強いOS延長効果が確認され、HRは0.34だった。ただし、MSI-Hは全体の3~4%という希少な集団である一方で、CPS<5の集団にもMSI-H症例が隠れていることに留意が必要だ。・ペムブロリズマブ+化学療法/KEYNOTE-859CPS≧1、CPS≧10、全体集団いずれにおいてもOSの有意な改善が示された。CheckMate 649試験と同様に、CPS値が高いほどHRが改善する傾向が見られた。CPS高値例にICIの効果が高いことは明らかだが、カットオフ値をどこに定めるべきかについては、引き続き議論が必要だろう。・ゾルベツキシマブ+化学療法/SPOTLIGHT・GLOW 両試験とも、ゾルベツキシマブ+化学療法群(mFOLFOX6またはCAPOX)は、主要評価項目である無増悪生存期間および重要な副次評価項目であるOSに対し統計的に有意な延長を示した。 昨年、日本胃学会から「切除不能進行・再発胃バイオマーカー検査の手引き」1)が発表された。この手引きでは一次薬物療法開始前に4つのバイオマーカー(HER2、PD-L1、MSI、CLDN18)をすべて測定することを強く推奨している。ただし、施設の状況や患者の状態によっては、すべての検査が実施できない場合もあるだろう。そうした場合は、一次療法開始に不可欠なバイオマーカーであるHER2とCLDN18検査を優先して実施することが推奨される。 HER2陰性の推奨レジメンは、CLDN18陽性の場合は6つ、陰性の場合は4つあり、この使い分けが論点となっている。ガイドライン作成委員会の中で一番議論となったのがHER2陰性+CLDN18陽性のケースだ。CPS<1では抗PD-1抗体による生存延長効果がほとんどないことを考慮すると、 ・CPS<1:ゾルベツキシマブを優先 ・CPS≧1:ゾルベツキシマブおよびICI2剤のいずれも選択肢と考えられる。ここからは私見になるが、CPS≧10はICI優先、1≦CPS<10はゾルベツキシマブがやや優先かと考えている。実臨床においてはバイオマーカーのみならず、年齢、PS、全身状態、患者希望などを総合的に考慮したうえで、治療方針を決定することになる。CQ10 高齢者CQ10-2 全身化学療法の適応を決める際に、年齢を考慮することは推奨されるか?・高齢の切除不能進行・再発胃症例では、患者の全身状態や意欲を慎重に評価したうえで、患者本人が状態良好(fit)かつ意思決定能力を有し治療意欲があれば、化学療法を計画するときに年齢を考慮することを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さB) 日本の胃がん患者の85%が65歳以上という現状があるが、主要な臨床試験における65歳以上の参加者は3分の1程度である。一方、「一般的な若年者と同じ標準治療を受けることは難しいが、何らかの治療は受けられる」という「vulnerable」という多数派層が存在し、この層に向けた治療戦略が必要だ。この層を対象に減量投与の非劣性を報告する試験や、高齢者の状態を評価する「G8」スコア別に薬剤の有用性を評価する試験など、エビデンスも集積しつつある。高齢者の化学療法においては減量や薬剤選択による投与継続をはじめ、適切な個別化戦略が一層重要となる。

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「心不全診療ガイドライン」全面改訂、定義や診断・評価の変更点とは/日本循環器学会

 日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドラインである『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』が、2025年3月28日にオンライン上で公開された1)。2018年に『急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)』が発刊され、2021年にはフォーカスアップデート版が出された。今回は国内外の最新のエビデンスを反映し、7年ぶりの全面改訂となる。2025年3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会にて、本ガイドライン(GL)の合同研究班員である北井 豪氏(国立循環器病研究センター 心不全・移植部門 心不全部)が、GL改訂の要点を解説した。 本GLの改訂に当たって、高齢化の進行を考慮した高齢者心不全診療の課題や特異性に注目し、最新の知見・エビデンスを盛り込んで、実臨床に即した推奨が行われた。専門医だけでなく、一般医やすべての医療従事者に理解しやすく、実践的な内容とするため、図表を充実することが重視されている。また、エビデンスが十分ではない領域も、臨床上重要な課題や実際の診療に役立つ内容は積極的に取り上げられている。本GLは全16章で構成され、最後に3つのクリニカルクエスチョン(CQ)が記載された。本GLはオンライン版のほか、アプリ版も発表されている。また、本GLの英語版が、Circulation Journal誌とJournal of Cardiac Failure誌に同時掲載された2,3)。 北井氏が解説した重要な改訂点は以下のとおり。心不全の定義 日米欧の心不全学会3学会合同で策定された「Universal definition and classification of heart failure(UD)」4)に基づき、「心不全とは、心臓の構造・機能的な異常により、うっ血や心内圧上昇、およびあるいは心拍出量低下や組織低灌流をきたし、呼吸困難、浮腫、倦怠感などの症状や運動耐容能低下を呈する症候群」と定義が改訂された。心不全症状・徴候は、「ナトリウム利尿ペプチド(BNP/NT-proBNP)の上昇」あるいは「心臓由来の肺うっ血または体うっ血の客観的所見」のいずれかによって裏付けられるとしている。診断と経時的評価:BNP/NT-proBNPカットオフ値 心不全診断のプロセスがフローチャートで表示された。症状、身体所見、一般検査に加えて、「ナトリウム利尿ペプチド(BNP/NT-proBNP)」と「心エコー」が診断の中心となっている。身体所見としてのうっ血や、バイオマーカーが重要視され、診断だけでなく予後評価目的でも、BNP/NT-proBNPを測定することが推奨されている。BNP/NT-proBNPのカットオフ値は、2023年に日本心不全学会から発表されたステートメント5)に準拠し、以下のように設定された。・前心不全―心不全の可能性がある、外来でのカットオフ値BNP≧35pg/mLNT-proBNP≧125pg/mL・心不全の可能性が高い、入院/心不全増悪時のカットオフ値BNP≧100pg/mLNT-proBNP≧300pg/mL左室駆出率(LVEF)による分類 UDを参考に、左室駆出率(LVEF)による心不全の分類が、国際的な基準に合わせて統一された。・HFrEF(LVEFの低下した心不全):LVEF≦40%・HFmrEF(LVEFの軽度低下した心不全):LVEF 41~49%・HFpEF(LVEFの保たれた心不全):LVEF≧50% HFmrEFについて、2021年フォーカスアップデート版では、HF with mid-range EFと記載していたが、本GLではHF with mildly-reduced EFの呼称を採用している。上記のほか、HFrEFだった患者がLVEF40%超へ改善し、LVEFが10%以上向上した場合をHFimpEF(LVEFの回復した心不全)と定義している。心不全ステージと病の軌跡 心不全の進行について、A~Dのステージに分類している。・ステージA(心不全リスクあり):高血圧、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、肥満など・ステージB(前心不全):構造的/機能的心疾患はあるが、心不全の症状や徴候がない・ステージC(症候性心不全):ナトリウム利尿ペプチド上昇、うっ血などの症状が出現・ステージD(治療抵抗性心不全):薬物療法に反応せず、補助循環や移植が必要 前GLから踏襲し「心不全ステージの治療目標と病の軌跡」の図が掲載されている。従来は病状経過に伴うQOLの悪化の軌跡のみ示されていたが、今回のGLより、治療介入することでイベントやステージ移行を遅らせる改善した場合の軌跡が加えられた。遺伝学的検査 心不全・心筋症において遺伝学的検査が近年より重視されてきている。特徴的な臨床所見等により遺伝性心疾患が疑われる場合は、診断・治療・予後予測に役立てるために、発端者に対する遺伝学的検査を考慮することが推奨クラスIIa。また、遺伝学的検査を行う際には、遺伝カウンセリングを提供する、または紹介する体制を整えることが推奨クラスI。ADL/QOL評価、リスクスコア ADL(日常生活動作)・QOL(生活の質)の向上は、予後の改善と同様に心不全患者の重要な治療目標であり、臨床試験でもアウトカムとして採用されている。日常診療でも患者報告アウトカムを評価することを考慮することや、患者の予後を示すリスクスコアを使用して予後予測を行うことが推奨に挙げられている。心不全予防(ステージA・B) ステージA(心不全リスク)において、高血圧、糖尿病、肥満、動脈硬化性疾患、冠動脈疾患に加え、本GLにて慢性腎臓病(CKD)が新たなリスク因子に加えられた。ステージAへの介入として、2型糖尿病かつCKD患者に対して、心不全発症あるいは心血管死予防のために、SGLT2阻害薬あるいはフィネレノンの使用が推奨クラスIとされた。 ステージB(前心不全)について、「構造的心疾患および左室内圧上昇のカットオフ値の目安」が表にまとめられている。ステージBへの介入として、患者の状況によりACE阻害薬、ARB、β遮断薬、スタチンといった薬剤が推奨クラスIとなっている。心不全に対する治療(ステージC・D) 2021年のフォーカスアップデート版では、HFrEFに対してQuadruple Therapy(β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬[MRA]、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬[ARNI]、SGLT2阻害薬)の推奨が記載され、HFmrEF、HFpEFに関してはうっ血に対する利尿薬の使用のみにとどまっていたが、本GLでは、HFmrEF、HFpEFに対する薬物治療の新たなエビデンスが反映された。薬物治療の推奨について、各薬剤、EF、推奨クラスをまとめた図「心不全治療のアルゴリズム」を掲載している。・SGLT2阻害薬:HFmrEF、HFpEFに対して2つの大規模無作為化比較試験により、予後改善効果が相次いで報告されたため、HFrEF、HFmrEF、HFpEFのいずれの患者においても、エンパグリフロジン、ダパグリフロジンを推奨クラスI。・ARNI:HFrEFに対して推奨クラスI、HFmrEFに対して推奨クラスIIa、HFpEFに対して推奨クラスIIb。 ・MRA:HFrEFに対するスピロノラクトン、エプレレノンが推奨クラスI、HFmrEFとHFpEFに対して、新たな薬剤のフィネレノンが推奨クラスIIa、スピロノラクトン、エプレレノンが推奨クラスIIb。急性非代償性心不全 UDで「うっ血」の評価が非常に重視されているため、本GLでも、うっ血、低心拍出、組織低灌流に分けて血行動態の評価・治療していくことを強調している。「急性非代償性心不全患者におけるうっ血の評価と管理のフローチャート」と推奨、「心原性ショック患者の管理に関するフローチャート」と推奨を記載している。急性心不全の治療においては、入院中の治療だけでなく、退院後のケア(移行期ケア)の重要性が増している。本GLでは、新たに移行期間に関する項目が設けられ、推奨が示されている。治療抵抗性心不全(ステージD) 治療抵抗性心不全(ステージD)では、治療開始前に治療目標を設定することが非常に重要であり、それに関連する推奨が示されている。また、2021年に本邦でも保険適用となった移植を目的としない植込型補助人工心臓(LVAD)治療(Destination therapy:DT)が、本GLに初めて収載され、DTも含めたステージDの「重症心不全における補助循環治療アルゴリズム」がフローチャートで示されている。特別な病態・疾患 心不全に関連する9つの病態・疾患が取り上げられ、最新の知見に基づいて内容がアップデートされている。とくに、以下の疾患において、新たな治療薬や診断法に関する重要な情報が追記されている。・肥大型心筋症:閉塞性肥大型心筋症に対する圧較差軽減薬マバカムテンが承認され、推奨クラスIとして記載。・心アミロイドーシス:トランスサイレチン(ATTR)心アミロイドーシスに対するTTR四量体安定化薬としてアコラミジスが新たに承認された。タファミジスまたはアコラミジスの投与は、NYHA心機能分類I/II度の患者に対しては推奨クラスI。III度の患者に対しては推奨クラスIIa。I~III度の患者に対して、低分子干渉RNA製剤ブトリシランが推奨クラスIIa。・心臓サルコイドーシス:突然死予防としての植込み型除細動器(ICD)に関する推奨が、『2024年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版 不整脈治療』6)に準拠して記載。併存症 心不全診療で特に問題となる併存症として、CKD、肥満、貧血・鉄欠乏、抑うつ・認知機能障害が追加された。3つの項目について、詳しく説明された。・貧血・鉄欠乏:鉄欠乏を有するHFrEF/HFmrEF患者に対する心不全症状や運動耐容能改善を目的とした静注鉄剤の使用を考慮することが推奨クラスIIa。・高カリウム血症:高カリウム血症を合併したRAAS阻害薬(ARNI/ACE阻害薬/ARBおよびMRA)服用中の心不全患者に対して、RAAS阻害薬(特にMRA)による治療最適化のために、カリウム吸着薬の使用を考慮することが推奨クラスIIa。・肥満:肥満を合併する心不全患者に対する心血管死減少・再入院予防を目的としたGLP-1受容体作動薬セマグルチドあるいはチルゼパチドの投与を考慮することが推奨クラスIIa。心不全診療における質の評価 心不全診療は非常に多岐にわたるため、心不全診療の質の評価の統一化が課題となっている。AHA/ACCのPerformance Measures(PM)やQuality Indicators(QI)を参考に、心不全診療の質の評価に関する章が新設され、質指標が表にまとめられている。クリニカルクエスチョン(CQ) 今回の改訂では、CQが3つに絞られた。システマティックレビューを行い、解説と共に推奨とエビデンスレベルが示されている。・CQ1:eGFR 30mL/分/1.73m2未満の心不全患者へのSGLT2阻害薬の投与開始は推奨されるか?推奨:CKD合併心不全患者での有益性を示唆するエビデンスは認めるが、eGFR 20mL/分/1.73m2未満のRCTでのエビデンスはない。eGFR 20mL/分/1.73m2以上に限って条件付きで推奨する(エビデンスレベル:C[弱])。・CQ2:フレイル合併心不全患者へのSGLT2阻害薬の投与開始は推奨されるか?推奨:弱く推奨する(エビデンスレベル:C[弱])。・CQ3:代償期の心不全患者に対する水分制限を推奨すべきか?推奨:1日水分摂取量1~1.5Lを目標とした水分制限を弱く推奨する(エビデンスレベル:A[弱])。■参考文献1)日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン. 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン.2)Kitai T, et al. Circ J. 2025 Mar 28. [Epub ahead of print]3)Kitai T, et al. J Card Fail. 2025 Mar 27. [Epub ahead of print]4)Bozkurt B, Coats AJS, Tsutsui H, et al. Eur J Heart Fail. 2021;23:352-380.5)日本心不全学会. 血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版.6)日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン. 2024年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版 不整脈治療.(ケアネット 古賀 公子)そのほかのJCS2025記事はこちら

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未治療多発性骨髄腫の新しい治療選択肢:パラダイムシフトは起こるか

未治療多発性骨髄腫の患者さんへの新しい選択肢 2025年3月27日、サノフィは未治療の多発性骨髄腫の治療薬として、ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾンによるVRd療法にイサツキシマブ(商品名:サークリサ®)を追加する4剤併用療法の適応追加承認を取得したCD38受容体を標的としたイサツキシマブに関するメディアセミナーを開催した。 今回のセミナーでは、イサツキシマブの適応拡大の意義や新たな治療戦略について、芹澤 憲太郎氏(近畿大学 医学部 血液・膠原病内科)と鈴木 憲史氏(日本赤十字社医療センター アミロイドーシスセンター)が解説した。サークリサ®が挑む多発性骨髄腫の治癒への挑戦 多発性骨髄腫の好発年齢の中央値は67歳と高齢者に多く発症する疾患であり、罹患率は年々上昇している。一方、治療の進歩に伴い、2006年以降死亡率は横ばいで推移している。とくに、近年は再発・難治の状態に使用できる新薬が多く登場しており、劇的な進歩を遂げている。 さらに、最近では多発性骨髄腫の治療戦略はPFSの延長だけではなく、微小残存病変/測定可能残存病変(MRD)を陰性化し、長期生存を目指すことが主流となっている。そして、多発性骨髄腫は再発を重ねるごとに奏効期間が短縮するため、初発時により深く、長く奏効する治療が必要とされていた。 イサツキシマブは再発・難治性の患者さんを対象としたIKEMA試験で現行治療法の中で最もMRD陰性化率が高く、CD8+T細胞の活性化や制御性T細胞の抑制効果が報告されており、次治療が必要な場合もその効果を高める可能性が考えられる。そのため、イサツキシマブをより早い段階で使用することがより治療成績を向上させることに寄与するのではないか、と芹澤氏は語った。 イサツキシマブ、ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾンによる治療(IsaVRd療法)の意義としては、サブクローンの駆逐が見込めるだけでなく、イサツキシマブのアポトーシス誘導とボルテゾミブ、レナリドミドのROS産生による細胞傷害の相乗作用が期待できるため、より深く、長い奏効が期待できるレジメンであると考えられる。 今後の治療戦略としては、IsaVRd療法を最初に行うことで、移植適応ではより移植への到達度を高め、移植非適応ではFunctional Cureを目指した治療を考えられる、として芹澤氏は鈴木氏にバトンを渡した。サークリサ®による新たな治療戦略~IsaVRdでFunctional Cureを目指す~ 多発性骨髄腫はこれまで完治できない疾患であったが、新しい治療選択肢が増えた今、MRD陰性が維持できており、無治療でも病態を抑えられている状態、Functional Cureが目指せるパラダイムシフトが起こっている、と鈴木氏は冒頭で語った。 そのために、これからの多発性骨髄腫治療で重要なのは初期治療から再発をさせない治療戦略である。つまり、良好な予後を得るために必要なのはMRD陰性を維持できる治療が必要だ、ということだ。 実際に移植非適応の患者さんを対象にしたIMROZ試験では下記のような結果が示された。・主要評価項目であるPFSはIsaVRd群で中央値未到達、60ヵ月時点のPFSは63.2%・副次評価項目のsCR+CRの割合はIsaVRd群で74.7%・安全性プロファイルはVRd療法と同様であった 今後は年齢でなくnon-frailかFrailで治療を選択し、FrailでなければIsaVRd療法でMRD陰性化とFunctional Cureを目指すという治療戦略が考えられる。 鈴木氏は「多発性骨髄腫の治療は新時代を迎え、今後は治癒や予防を考えられるようになるのではないか。『早く行きたければ1人で行け、遠くにいきたければみんなで行け』という言葉の通り、医療従事者、製薬メーカー、患者さん、みんながより幸せになれる時代が来たと感じている」として講演を締めくくった。

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PADを有する2型DM、セマグルチドは歩行距離を改善/Lancet

 症候性末梢動脈疾患(PAD)を有する2型糖尿病(DM)患者において、セマグルチドはプラセボと比較して歩行距離の改善が大きかったことが示された。米国・コロラド大学のMarc P. Bonaca氏らSTRIDE Trial Investigatorsが、第IIIb相二重盲検無作為化プラセボ対照試験「STRIDE試験」の結果を報告した。PADは世界中で2億3,000万人超が罹患しており、有病率は高齢化により上昇していて、2型DMを含む心代謝性疾患の負担を増している。PAD患者に最も早期に発現し、最も多くみられ、最も支障を来す症状は機能低下と身体的障害であるが、機能や健康関連QOLを改善する治療法はほとんどなかった。Lancet誌オンライン版2025年3月29日号掲載の報告。52週時点の最大歩行距離の対ベースライン比を評価、セマグルチド群vs.プラセボ群 STRIDE試験は、PADを有する2型DM患者において、セマグルチドが歩行能力、症状、および自己報告に基づくアウトカムを改善するかどうかを評価するため、北米、アジア、欧州の20ヵ国における112の外来臨床試験施設で行われた。 18歳以上の2型DMで間欠性跛行を伴うPAD(Fontaine分類IIa度、歩行可能距離>200m)を有し、足関節上腕血圧比(ABI)≦0.90または足趾上腕血圧比(TBI)≦0.70の患者を適格とした。 被験者は、双方向ウェブ応答システムを用いて、セマグルチド1.0mgを週1回52週間皮下投与する群またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、全解析セットにおける定荷重トレッドミルで測定した52週時点の最大歩行距離の対ベースライン比であった。安全性は、安全性解析セットで評価した。推定治療群間比1.13で、セマグルチド群の歩行距離改善が有意に大きい 2020年10月1日~2024年7月12日に、1,363例が適格性のスクリーニングを受け、792例がセマグルチド群(396例)またはプラセボ群(396例)に無作為化された。被験者792例のベースライン特性は、195例(25%)が女性、597例(75%)が男性で、年齢中央値は68.0歳(四分位範囲[IQR]:61.0~73.0)、2型DM罹病期間が10年以上の患者が480例(61%)であり、ベースラインのABIの幾何平均値は0.75、同TBIは0.48、最大歩行距離中央値185.5m(IQR:130.0~267.0)などであった。 追跡期間中央値は、13.2ヵ月(IQR:13.2~13.3)。セマグルチド群57/396例(14%)、プラセボ群43/396例(11%)が、試験治療を中途で恒久的に中止した。 主要エンドポイントである52週時点の最大歩行距離の対ベースライン比中央値は、セマグルチド群(1.21[IQR:0.95~1.55])がプラセボ群(1.08[0.86~1.36])よりも有意に大きかった(推定治療群間比:1.13[95%信頼区間[CI]:1.06~1.21]、p=0.0004)。 探索的解析では、52週時点の最大歩行距離の絶対改善中央値は、セマグルチド群37m(IQR:-8~109.0)、プラセボ群13m(-26.5~70.0)であった。 重篤な有害事象の発現は、セマグルチド群は被験者74例(19%)で130件(100人年当たり32.5件)、プラセボ群は78例(20%)で111件(100人年当たり26.9件)が報告された。このうち試験薬に関連(possiblyまたはprobably)した重篤な有害事象は、セマグルチド群では被験者5例(1%)で6件、プラセボ群は同6例(2%)で9件が報告され、重篤な胃腸障害の頻度が最も高かった(セマグルチド群は2例[1%]で2件、プラセボ群は3例[1%]で5件が報告)。 治療に関連した死亡はなかった。 著者は、「これらの結果は、PADを有する2型DMへのセマグルチドの使用を支持するものであり、これら集団への治療ではセマグルチドを優先すべきであることが示唆された」とまとめている。同時に、「今回の研究結果がもたらす意義には、セマグルチドがもたらすベネフィットのメカニズムを明らかにするため、および2型DMを有さないPAD患者におけるセマグルチドの有効性と安全性を評価するための、さらなる研究が必要であることが含まれる」と述べている。

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鉄欠乏心不全、カルボキシマルトース第二鉄vs.プラセボ/JAMA

 鉄欠乏性貧血を伴う心不全患者において、カルボキシマルトース第二鉄はプラセボと比較して、心不全による初回入院または心血管死までの期間を有意に短縮せず、心不全による入院総数も低減しなかった。ドイツ・Deutsches Herzzentrum der ChariteのStefan D. Anker氏らが行った多施設共同無作為化試験「FAIR-HF2 DZHK05試験」で、試験全コホートまたはトランスフェリン飽和度(TSAT)<20%の患者集団いずれにおいても同様の結果が示された。JAMA誌オンライン版2025年3月30日号掲載の報告。欧州6ヵ国の診療施設70ヵ所で試験 研究グループは2017年3月~2023年11月に、欧州6ヵ国の診療施設70ヵ所で、鉄欠乏性貧血(血清フェリチン値<100ng/mLまたはTSAT<20%かつ血清フェリチン値100~299ng/mLと定義)を伴う心不全(左室駆出率≦45%と定義)患者におけるカルボキシマルトース第二鉄の有効性と安全性を評価した。 被験者は、カルボキシマルトース第二鉄の静脈内投与群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。カルボキシマルトース第二鉄群は、当初の受診2回(ベースラインと4週時)に最大2,000mgの投与を受け、その後、投与中止の基準を満たさない限り4ヵ月ごとに500mgの投与を受けた。 主要エンドポイントは、(1)心不全による初回入院または心血管死までの期間、(2)心不全による入院総数、(3)TSAT<20%の患者における心不全による初回入院または心血管死までの期間であった。すべてのエンドポイントは、追跡期間を通して評価された。 エンドポイントの統計学的有意性は、Hochberg法による評価で、次の3つのうち少なくとも1つを満たしている場合とした。(1)3つのエンドポイントすべてでp≦0.05、(2)2つのエンドポイントでp≦0.025、(3)いずれかのエンドポイントでp≦0.0167。3つの主要アウトカムいずれも統計学的有意性を満たさず 1,105例(平均年齢70[SD 12]歳、女性33%)が無作為化された(カルボキシマルトース第二鉄群558例、プラセボ群547例)。追跡期間中央値は16.6ヵ月(四分位範囲:7.9~29.9)であった。 第1主要アウトカム(心不全による初回入院または心血管死)の発生は、カルボキシマルトース第二鉄群141例、プラセボ群166例であった(ハザード比[HR]:0.79[95%信頼区間[CI]:0.63~0.99]、p=0.04)。 第2主要アウトカム(心不全による入院総数)は、カルボキシマルトース第二鉄群264回、プラセボ群320回であった(率比:0.80[95%CI:0.60~1.06]、p=0.12)。 第3主要アウトカム(TSAT<20%の患者における心不全による初回入院または心血管死)の発生は、カルボキシマルトース第二鉄群103例、プラセボ群128例であった(HR:0.79[95%CI:0.61~1.02]、p=0.07)。 1回以上の重篤な有害事象を発現した患者数は、カルボキシマルトース第二鉄群(269例、48.2%)とプラセボ群(273例、49.9%)でほぼ同数であった。

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ストレスは若年女性の原因不明脳梗塞のリスク

 50歳未満の女性における原因を特定できない脳梗塞と、ストレスとの関連が報告された。男性ではこの関連が認められないという。ヘルシンキ大学病院(フィンランド)のNicolas Martinez-Majander氏らの研究によるもので、詳細は「Neurology」に3月5日掲載された。 脳梗塞のリスクは、加齢や性別などの修正不能な因子と、喫煙や高血圧などの修正可能な因子によって規定されることが明らかになっているが、それらのリスク因子が該当しない原因不明の脳梗塞(cryptogenic ischemic stroke;CIS)もあり、近年、特に若年者のCIS増加が報告されている。これを背景に著者らは、若年者のCISにストレスが関与している可能性を想定し、以下の研究を行った。 この研究には欧州の19の医療機関が参加し、18~49歳の初発CIS患者群426人(年齢中央値41歳、女性47.7%)と、性別・年齢がマッチする脳卒中既往のない対照群426人を対象として、過去1カ月間に感じたストレスの程度を10項目の質問で評価した。各質問には0~4の範囲で回答してもらい、合計点が13点以下は「低ストレス」、14~26点は「中ストレス」、27点以上は「高ストレス」と判定。すると、患者群は対照群に比較して、中ストレス以上の割合が有意に高かった(46.2対33.3%、P<0.001)。 次に、結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、喫煙、肥満、非健康的食習慣、大量飲酒、運動不足、高血圧、心血管疾患、糖尿病、うつ病、前兆を伴う片頭痛、教育歴)を統計学的に調整した検討を実施。その結果、ストレススコアが1点高いごとにCIS発症オッズ比(OR)が1.04(95%信頼区間1.01~1.07)であり、ストレスの強さとCISリスクとの独立した有意な関連が明らかになった。ストレスの強さ別に解析すると、中ストレスは有意な関連が示されたが(OR1.47〔同1.00~2.14〕)、高ストレスは非有意だった(OR2.62〔0.81~8.45〕)。 性別に解析した場合、女性では有意な関連があり(OR1.06〔1.02~1.11〕)、特に中ストレスとの強い関連が認められた(OR1.78〔1.07~2.96〕)。一方、男性では関連が見られなかった。 Martinez-Majander氏は、「ストレスを感じる女性はCISリスクが高く、男性はそうでない理由を理解するにはさらなる研究が求められる。高ストレスではなく中ストレスがリスクに関連している理由も明らかにする必要がある。それらの解明が脳梗塞予防につながる可能性がある」と話している。 また、本研究では、男性よりも女性の方がストレスを強く感じている割合が高いことも示された。具体的には、中ストレス以上の割合が女性では患者群57.6%、対照群41.4%であったのに対して、男性は同順に35.9%、26.0%だった。このような性差の理由についてMartinez-Majander氏は、「女性は家庭、介護、仕事など複数の役割をこなし、より強いストレスを受けていることが多いのではないか」と推測。一方で著者らは、「男性はストレスを我慢すべきものと考える傾向がある」として、「そのことが本研究の結果に影響を及ぼした可能性も否定できない」と述べている。

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新たな冠動脈リスク予測モデルで女性のMACEリスクを4段階に層別化可能

 新たに開発された女性の冠動脈リスクスコア(COronary Risk Score in WOmen;CORSWO)は、女性の冠動脈リスクを効果的に層別化し、特に高リスクおよび非常に高リスクの検出に優れていることから、主要心血管イベント(MACE)発生の予測に有効であるとする研究結果が、「Radiology: Cardiothoracic Imaging」に2024年12月5日掲載された。 女性の冠動脈疾患(CAD)の発症は男性と比較して7~10年遅く、非典型的な症状を伴うため、女性におけるMACE発生を予測するツールが求められている。バルデブロン大学病院(スペイン)のGuillermo Romero-Farina氏らは、前向きに収集された臨床データを用いた後ろ向き解析を行い、女性でのMACE発生を予測するためのモデル(CORSWO)を構築し、その予測能を検証した。対象は、2000年から2018年の間に心電図同期SPECT(単一光子放射断層撮影)心筋血流イメージング(gSPECT MPI)を受けた2万5,943人の連続した患者の中から抽出した女性患者2,226人(平均年齢66.7±11.6歳)とし、平均4±2.7年間追跡し、MACE(不安定狭心症、非致死的な心筋梗塞、冠動脈血行再建術、心臓死)の発生を評価した。 対象者は、トレーニング群(65.6%、1,460人)と検証群(34%、766人)に分けられた。まず、トレーニング群のデータから多変量解析によりMACEの予測に有用な変数を特定し、それらを基にLASSO回帰分析と多変量Cox回帰分析を用いてMACEリスクを予測するモデルを構築した。両モデルのROC曲線下面積(AUC)はいずれも0.79であったが、後者の方が変数が少なかったため、最終的にCox回帰モデルを採用した。 次に、1)臨床的変数、2)ストレステスト変数、3)安静時gSPECT MPI変数、4)これらのモデルから得られた予測変数を用いて4つのモデルを構築し、MACE発生のハザード比(HR)を算出するとともに、その予測精度をBrierスコアにより評価した。その上でCox回帰分析により、患者ごとにMACEの年発生率を計算してZスコア(0〜24点)に換算し、リスクレベルを低(年1回未満)、中(年1~2回)、高(年3~5回)、非常に高(年5回以上)に分類した。 その結果、トレーニング群において女性でのMACE発生を予測する最良のモデルは、それぞれのモデルで特定された予測変数を全て組み込んだ4つ目のモデルであり、AUCは0.80(95%信頼区間〔CI〕0.74〜0.84)、Brierスコアは0.08であった。予測変数は、年齢>69歳、糖尿病、硝酸薬使用、心筋梗塞の既往、薬理学的テストの実施、ST低下≧1mm、SRS(安静時心血流スコアの合計)%>9.6、SSS(ストレス時心血流スコアの合計)%>6.6、SDS(SSDとSRSの差)%>5.2、EDV(拡張末期容積)指数>38mL、ESV(収縮末期容積)指数>15mLであった。 トレーニング群で得られたZスコアを検証群に適用したところ、リスクは、低(0〜3点)、中(4〜6点)、高(7〜11点)、および非常に高(>11点)の4段階に層別化された。ROC曲線とBrierスコア分析によりモデルの性能を評価し、さらにCox回帰分析を用いてリスクレベルごとにMACEの発生率を比較した。その結果、低~中リスクと比較して高~非常に高リスクの患者群(HR 5.29、95%CI 3.92〜7.16、P<0.001)で、モデルが良好な予測能を示した(AUC 0.78、95%CI 0.72〜0.80、Brierスコア0.13)。これにより、CORSWOはMACE発生の予測において有用であることが確認された。 著者らは、「CORSWOは、複数の画像検査に基づく情報を必要とするものの、MACEリスクを高リスクおよび非常に高リスクを含む4段階に高い精度で分類できる、効果的なツールである」と述べている。

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4月9日 子宮頸がんを予防する日【今日は何の日?】

【4月9日 子宮頸がんを予防する日】〔由来〕「し(4)きゅう(9)」(子宮)の語呂合わせから、「子宮頸がん」予防の啓発活動を行っている「子宮頸がんを考える市民の会」(東京)が制定。この日を中心に「子宮頸がん」についてのセミナーなどを開催している。関連コンテンツウイルスと関連するがん【1分間で学べる感染症】子宮頸がん、どの年齢層で多い?【患者説明用スライド】再発・転移子宮頸がんへのtisotumab vedotin、日本人でも有望な結果/日本治療学会再発・転移子宮頸がん、化学療法+cadonilimabがPFS・OS改善/Lancet局所進行子宮頸がん、導入化学療法+CRTがPFS・OS改善/Lancet

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尿臭、尿色は尿路感染に関連するのか?【とことん極める!腎盂腎炎】第14回

尿臭、尿色は尿路感染に関連するのか?Teaching point(1)尿臭は尿路感染に対する診断特性は不十分であるが、一部の微生物・病態での尿路感染では特徴的な臭いのものがある(2)尿色の変化は体内変化を示唆するも、尿路感染での尿色変化はほとんどない。しかし、尿道留置カテーテルでの一部の細菌感染でのpurple urine bag syndrome はたまにみられ、滅多にみることはないが緑膿菌による緑色変化は特異性がある1.尿臭と尿路感染疾患の一部には特異的な尿臭があるものがあるが、尿路感染に関しては、特異的なものはほとんどない。尿中に細菌が存在し、その細菌がアンモニアを生成すると異常な刺激臭となるが、細菌の有無に関係なく尿pHによって尿中に多く含まれるアンモニアイオンがアンモニアとなる。これは感染を示唆するものではないため、その違いを判別することは難しい。また尿の通常の臭いはウリノイドと呼ばれ、濃縮された検体ではこの臭いが強くなることがあり、こちらとの判別も困難である。中国で行われた、高齢者の尿パッドの臭気と顕微鏡・培養検査とを比較した研究では、過剰診断にも見逃しにもなり、尿臭が尿路感染の診断にも除外にも寄与しづらいことが示唆されている1)。尿臭で尿路感染の原因診断に寄与するものは限られるが、知られているのは腐敗臭となる細菌尿関連の2病態である。1つが腸管からの腸内細菌が膀胱へ移行することで尿が便臭となる腸管膀胱瘻2)、もう1つが尿路感染症としては珍しいが、時として重要な病原体になり得るAerococcus urinaeである3)。細菌ではないが、真菌であるCandida尿路感染は、アルコール発酵によりbeer urineといわれるビール様の臭いがすることがある4)。以上から、尿臭で尿路感染を心配する家族や介護職員もいるが、細菌や真菌が尿路に存在する可能性を示唆するのみで、そもそも細菌や真菌が存在することと感染症が成立していることとは別であること、それらが存在すること以外にも尿臭の原因があることなどを説明することで安心を促し、尿路感染かどうかの判断は、尿臭以外の要素で行うことが肝要である。2.尿色と尿路感染正常の尿は透明で淡黄色である。そのため、尿の混濁化や色の変化は、体内の変化を示唆する徴候となり、食物、薬剤、代謝産物、感染症などが色調変化の原因となる。尿路感染そのものによる尿の色調変化は滅多にないが、比較的みられるのは、尿道留置カテーテルを使用している患者の細菌尿で、尿・バッグ・チューブが紫色に変化するpurple urine bag syndrome5)と呼ばれるものである(図1)。図1 purple urine bag syndrome画像を拡大する尿中のアルカリ環境と細菌の酵素によって形成された生化学反応の代謝産物によるもので、腸内細菌により摂取したトリプトファンがインドールに分解され、その後、門脈循環に吸収されてインドキシル硫酸塩に変換され、尿中に排泄される。尿中のアルカリ環境と細菌の酵素(インドキシルスルファターゼ、インドキシルホスファターゼ)が存在する場合、インドキシルに分解される。分解産物である青色のインジゴと赤色のインジルビンが合わさった結果、紫となる(図2)。その酵素を産生できる細菌は報告だけでも、Escherichia coli、Providencia属、Klebsiella pneumoniae、Proteus属など多岐にわたるため、起因菌の特定は困難である。図2 purple urine bag syndromeの原理画像を拡大するその他の色調変化は、まれながら緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)による緑色変化がある。色の変化ごとのアセスメント方法はあるが、感染にかかわらないものも多く、本項では省略し、色調変化の原因の一部を表2,6,7)に挙げる。感染症そのものによる変化とは異なるが、抗微生物薬など薬剤による尿色変化は、患者が驚いて自己中断することもあり、処方前の説明が必要となる。とくにリファンピシンによる赤色変化は有名で、中断による結核治療失敗や耐性化リスクもあるため重要である。表 尿の色調変化の原因画像を拡大する1)Midthun SJ, et al. J Gerontol Nurs. 2004;30:4-9.2)Simerville JA, et al. Am Fam Physician. 2005;71:1153-1162.3)Lenherr N, et al. Eur J Pediatr. 2014;173:1115-1117.4)Mulholland JH, Townsend FJ. Trans Am Clin Climatol Assoc. 1984;95:34-39.5)Plaçais L, Denier C. N Engl J Med. 2019;381:e33.6)Cavanaugh C, Perazella MA. Am J Kidney Dis. 2019;73:258-272.7)Echeverry G, et al. Methods Mol Biol. 2010;641:1-12.

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第258回 フジテレビ第三者委員会報告書が指摘・批判する、年配男性中心の「オールドボーイズクラブ」の弊害は医療の世界でも

フジテレビ第三者委員会調査報告書、トランプ関税、任天堂「Nintendo Switch 2」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週はたくさんの大きな出来事がありました。本連載でも何度か書いてきたフジテレビの一連の問題について、第三者委員会(委員長・竹内 朗弁護士)が調査報告書を3月31日に公表、4月2日にはトランプ米大統領が全世界を対象にした相互関税を発表しました。さらに同日、任天堂が「Nintendo Switch 2」の仕様と発売日を発表しました。どれも日本の医療とは関係なさそうですが、いえいえ、そんなことはありません(Switch 2は当面は無関係かもしれませんが)。ということで今回は、フジテレビの第三者委員会調査報告書について、教訓とするべきポイントや特に興味深かった内容について書いてみたいと思います。中居氏の性暴力を認定、2人だけの食事会は「業務の延長線上」フジテレビの第三者委員会調査報告書の公表版は別紙含め実に300ページ超に及びます1)。報告書は、元アナウンサーだった女性が中居 正広氏から「性暴力を受けた」と認定、週刊文春などの報道にあった2人だけの食事会は「業務の延長線上」にあったとしました。そして、対応に当たった当時の港 浩一社長ら経営幹部について、性暴力への理解を欠いており、被害者救済の視点を欠いていたとしました。1月に開かれた記者会見で、中居氏の番組を漫然と継続していたことについて港社長は「番組を突然中止すると被害者に刺激となるので中止しなかった」と意味不明な理由を述べていましたが、第三者委員会は「これらの対応は間違いだった」と断定、女性を番組から降板させたことなども含めて「二次加害行為にあたる」としました。報告書はさらに、役職員に対するアンケートや、専用ホットラインを用いた調査などから、全社的にハラスメントが蔓延していたと指摘、「性別・年齢・容姿」を理由に呼ばれる業務の延長線上の会合が恒常的に存在し、そうした場で性暴力やハラスメントに遭う例が多数あったとしています。第三者委員会の報告書が公開された翌日の4月3日には、放送事業者の監督官庁である総務省は「今回の事態は放送事業者による自主・自律を基本とする放送法の枠組みを揺るがすもので、放送法の目的に照らし極めて遺憾」などとしてフジテレビと親会社のフジ・メディア・ホールディングスに対して「厳重注意」の行政指導を行いました。放送局の人権やコンプライアンスへの対応を問題視した行政指導は異例のことだそうです。さらに4月4日には、事件当時フジテレビ専務で、その後系列局の関西テレビ(大阪市)の社長となっていた大多 亮社長が辞任を発表しています。大多氏は中居氏の性暴力が発覚した当初、港社長、編成制作局長とともに最初の対応を協議した一人で、この3人が中居氏の性暴力を「プライベートな男女間のトラブル」と即断したことについて、報告書は「リスク認識・評価を誤り、会社の危機管理としての対処をしなかった」と断じています。「BSフジLIVE プライムニュース」のキャスターの過去のハラスメントも公表この報告書の注目点の一つは、中居氏の事案だけでなく、複数の「重要な社内ハラスメント事案」についても赤裸々にその事実を公にしたことです。その一つがBSフジ「BSフジLIVE プライムニュース」のキャスターを務めているフジテレビ報道局の反町 理解説委員長の事案です。2006〜07年頃、反町氏は報道局の後輩女性社員2人に対し、それぞれ1対1の食事に誘ったり、プライベートの写真を送るよう求めたりしていました。その後、女性社員が反町氏からの誘いを断るようになると、業務上必要なメモを共有しなかったり、不当な叱責を部内全体に送信したり、威圧的な態度を取ったりしたとのことです。この事案は、2018年に週刊文春でも記事となっていますが、フジテレビは当時の記者会見で「事実無根」として否定していました。先週、3月31日の第三者委員会の記者会見でも竹内弁護士はこの事案を敢えて口頭で紹介、当事者について「その後、役員になっています」とコメントしました。記者会見では実名は明かされませんでしたが、報告書(公表版)の150ページ以降に、「反町 理氏」の事案として約9ページに渡って克明に記述されています。報告書は、ハラスメントがあってもまともに社内で調査されず、当事者に処分も下されなかったこの事案について、「フジテレビ社員に与えた負の影響は大きい」と書いています。なお、反町氏は、第三者委員会の記者会見が開かれる4日前の3月27日に取締役を退任しており、記者会見の当日、3月31日夜に予定されていたBSフジ「BSフジLIVE プライムニュース」を突如欠席(前週までは出演)、その後も出演見合わせが続いています。「女性の役員や上級管理職への登用が一向に進まず、旧態依然とした昭和的な組織風土がいまだに残存」報告書の中でもう一点興味深いのは、「オールドボーイズクラブ」の弊害に対する指摘です。中居氏の事案や反町氏の事案が起こった原因の一つとして報告書は、「『思慮の浅さ』『集団浅慮』を生む組織の同質性・閉鎖性・硬直性」を挙げており、その理由を「取締役会による役員指名ガバナンスが機能不全に陥っている」ためとしています。その上で、「杜撰な役員指名の背景には、組織の強い同質性・閉鎖性・硬直性と、人材多様性(ダイバーシティ)の欠如がある。年配の男性を中心とする組織運営は、『オールドボーイズクラブ』と揶揄される。現場ではセクハラを中心とするハラスメントの寛容な企業体質が形成され、女性の役員や上級管理職への登用が一向に進まず、旧態依然とした昭和的な組織風土がいまだに残存している」と、古い価値観を持った男たちだけで組織運営をしてきたことが、内部統制の不備を生み、今回の事案を招くに至ったと結論付けています。なお、フジテレビの「オールドボーイズクラブ」については、フジ・メディア・ホールディングスの大株主で米投資ファンドのダルトン・インベストメンツも4月3日に発表したコメントの中で、新経営陣について、「ただ人数を減らし、女性比率を高め、平均年齢を下げたというだけで、実態は5名のオールドボーイズクラブ出身者が引き続き経営の中枢を担うもので、『経営刷新』というにはほど遠い内容」と厳しく批判しています。元社長の港氏はバラエティ畑出身で、とんねるずの「とんねるずのみなさんのおかげです」のディレクター、プロデューサーとして有名です。また、元専務の大多氏は、ドラマ畑出身で、いわゆるフジテレビの「月9」ドラマの企画・プロデュースを多数手掛けました。いずれも時代の最先端を行くテレビマンでしたが、結局“旧態依然とした昭和的な組織風土”を温存し、のさばらせる張本人となってしまったわけです。大学医学部など医療界にも残る「オールドボーイズクラブ」この「オールドボーイズクラブ」の弊害は、医療の世界でも当てはまる点が多いのではないでしょうか。特に大学医学部、中でも外科系医局ではこうした組織風土が未だに存在しているところが少なくないようです。本連載の「第134回 『消化器外科手術に男女の性差なし』、女性外科医たちがBMJに研究成果を発表」では、日本では指導的立場の女性消化器外科医は少ないことから、男女の消化器外科医による手術成績に差があるのか、女性が外科医として十分活躍できる存在であるのかを調査・分析した論文がBMJ誌に掲載されたというニュースを紹介しました。この研究発表の記者会見で、調査・分析を行った女性外科医らが、女性外科医による腹腔鏡下手術が少なかった理由について「女性消化器外科医にはそもそも腹腔鏡手術困難症例の割り当てが多く、腹腔鏡技術を習得する機会が少なかった可能性がある」、「新規技術を医局で導入するときは、まず男子にやらせるといった状況もある」と指摘していたのが印象的でした。これこそ、医療界の「オールドボーイズクラブ」そのものと言えるでしょう。現在、「オールドボーイズクラブ」の中で悪戦苦闘している女性医師たちも、今回の一連のフジテレビ問題で考えるところが多々あったのではないでしょうか。というわけで、第三者委員会の調査報告書には、放送業界、エンターテインメント業界に限らず、あらゆる組織が学ぶべき教訓が数多く盛り込まれています。今後、セクハラやパワハラを認定する場合のお手本となる可能性もあります。公表版の最後には約50ページの要約版もついています。病院や医局などで管理職に就いている方は、要約版だけでも一読されることをお勧めします。参考1)調査報告書(公表版)

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転倒予防に一番効果的な介入は?【論文から学ぶ看護の新常識】第10回

転倒予防に一番効果的な介入は?病院内での転倒予防介入の効果を調べた研究により、患者および医療従事者への教育介入のみが統計的有意に転倒を減少させる効果があることが示された。Meg E Morris氏らの研究で、Age and Ageing誌2022年5月06日号に掲載された。病院内転倒を減少させる介入:システマティックレビューとメタアナリシス研究グループは、転倒予防介入が病院内における転倒率および転倒リスクに与える影響を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタアナリシスを実施した。分析対象となったのは、入院中の成人患者を対象に転倒予防介入を行った45件の研究であり、そのうち43件がシステマティックレビュー、23件がメタアナリシスに含まれた。介入方法は、患者および医療従事者向け教育、環境改善、補助用具の使用(アラーム、センサー、歩行補助具、低床ベッドなど)、転倒予防に関連する方針・システムなどの変更、リハビリテーション、薬剤管理(ビタミンDによる栄養補助を含む)が含まれた。評価指標には、転倒率比(RaR)と転倒リスク(オッズ比[OR])が用いられ、単独介入および複合的介入(2つ以上の介入の組み合わせ)の両方を評価した。主な結果は以下の通り。教育介入のみが統計的に有意な結果を示し、転倒率(RaR:0.70、95%信頼区間[CI]:0.51~0.96、p=0.03)および転倒リスク(OR:0.62、95%CI:0.47~0.83、p=0.001)を有意に低下させた。エビデンスの質は高いと評価された(GRADE評価)。転倒予防に関するシステムについての研究(9件)は、効果量が報告されていないためメタアナリシスに含まれなかった。1時間ごとの巡回、ベッドサイドでの申し送り、電子監視または患者安全管理者の配置を調べた5つの研究では、いずれも転倒率の有意な低下は示されなかった。医学的評価とそれに基づく介入を行った研究では、1000患者日あたりの転倒率が、対照群10.6に対し、介入群1.5と有意に低下(p<0.004)した。複合的介入は、転倒率(RaR:0.8、95%CI:0.63~1.01、Z=−1.88、p=0.06)に低下傾向がみられたが、統計的有意な低下は認められなかった。スコア化転倒リスクスクリーニングツール(FRAT)は、2つの大規模RCTの結果より、スコア化を行わなくても転倒率に影響がないことが示された(統計的有意性の記載なし)。システマティックレビューに含まれた個別研究の中で、医療従事者教育、一部の複合的介入、特定のリハビリテーション、システム関連介入では、特定の介入において効果を示唆するエビデンスが報告されたが、バイアスリスクは低~中程度と評価された。院内転倒率および転倒リスクを効果的に減少させるには、患者および医療従事者への教育が最も効果的であり、複合的介入はプラスの影響をもたらす傾向があった。アラーム、センサー、スコア化転倒リスク評価ツールの使用と転倒減少との関連は確認されなかった。転倒って恐ろしいですよね…。2022年のメタアナリシス(いろんな論文を組み合わせて評価した論文)では、患者とスタッフへの教育が転倒率と転倒リスクの減少に最も効果的であることが示されました。患者教育では、入院中の転倒リスクに対する認識を高めることが重要です。65歳以上や複数の併存疾患がある50歳以上の患者は特に高リスクであり、教育プログラムを通して自身の転倒リスクを理解することで、予防行動を取ることができます。一方、スタッフ教育も重要です。転倒リスクのアセスメント、予防策の実施、転倒発生時の対応などに加えて、とくに新人や中途採用者の方には、疾患特性による転倒リスクを理解してもらうための教育が必要です。教育によるスタッフのスキル向上が、効果的な転倒予防につながります。またそれ以外の介入を組み合わせることも重要です。例えば、環境整備、補助用具の活用、リハビリテーションなど、多面的なアプローチがあります。しかし、メタアナリシスの結果では、補助用具の使用やリハビリテーションの単独での効果は限定的であり、他の介入と組み合わせることが重要だと示唆されています。入院時の環境整備や補助用具の活用、リハビリテーションによる身体機能の改善などを組み合わせることで、より効果的な転倒リスクの軽減が期待できます。転倒転落の対策は教育を軸としつつ、環境整備、補助用具、リハビリテーションなど多角的な視点からのアプローチを組み合わせることが求められます。一つの介入方法にこだわらずに、広い視野を持ちながら転倒転落を予防していきましょう!論文はこちらMorris ME, et al. Age Ageing. 2022;51(5): afac077.

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働き方改革スタートから1年、「変化を感じる」は35%/ウォルターズ・クルワー調査

 医師の働き方改革がスタートして1年。医療業界向けの情報サービス事業のウォルターズ・クルワー・ヘルスは医師を対象に「『医師の働き方改革』に関する調査」と題したアンケートを行い、その結果を発表した。1)働き方改革は進むも「自身の変化」の実感は乏しい「自身の勤務先の働き方改革の取り組み」を聞いた設問には、「取り組んでいる」との回答が83%だったが、その中で自身の働き方にも「変化を感じる」と答えた人は35%に留まった。2)「賃金・報酬制度の見直し」は35%が望むも、実施は5.8%「実際に行われている取り組み(複数回答)」を聞いた設問では、「業務の効率化」(23%)、「ミーティング・カンファレンス時間の短縮」(20%)、「ワークライフバランスの向上」(17%)が多かった。一方、医師が「取り組みが必要だと考えること」と「実際の取り組み」の間にはギャップが見られ、「業務の効率化」「ワークライフバランスの向上」は15ポイント以上の差が見られた。この差はとくに「賃金・報酬制度の見直し」の項目で大きく、約30ポイントの差があった。3)過半数が「特に成果はない」「医師の働き方改革における効果と課題」を聞いた設問では、「労働時間が短くなった」が15%、「業務が効率化された」が12%と上位に挙がったものの、「特に成果はない」が56%と過半数を占めた。4)診療・研究時間が「減った」のは2割「実際に、診療や研究にかける時間の変化」を聞いた設問では「治療方針決定にかける時間」「研究にかける時間」が「減少した」と答えたのは2割未満。7割以上が「変わらない」としており、質を維持しながら改革を進める難しさが伺える結果となった。「1日3件以上の臨床疑問がある」と答えた医師は約35%超で、うち9割以上が「すべては解決できていない」と回答した。5)過半数はDX導入に期待「勤務先のDX化(デジタル技術の導入や活用の推進)の取り組み」を聞いた設問では、45%が「勤務先はDX化に取り組んでいる」と回答したが、「自身の働き方にも変化がある」としたのはうち16%だった。「DXの導入によって働き方が改善されると思う」との回答は56%だった。「必要な取り組み・ツール」(複数回答)としては「手続きや書類管理の自動化ツール(29%)、「業務を分担するためのタスクシフト導入」(27%)、「柔軟な勤務時間制度」(25%)などが多かった。【アンケートに寄せられた声(一部抜粋)】「人材不足のままでは働き方改革の限界。離職者も増えている。行政による介入が必要」(小児科・勤続20年以上)「他社製品と比べて20年遅れた電子カルテが原因で業務に時間がかかる」(内分泌内科・10〜20年)「研修医や若手医師だけが時間短縮され、中堅医師にしわ寄せが来ている」(内科・10〜20年)「時間外労働の短縮が給与減につながるため、改革に抵抗がある」(その他診療科・10〜20年)「小手先の医療者側の改革は意味がない。患者側(国民側)の改革も必要」(麻酔科・5年未満)アンケートの概要・調査期間:2024年11月29日~12月2日・対象:全国の200床以上の医療機関の勤務医、24~69歳、206名・手法:インターネット

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医師の喫煙率、男女・診療科で差/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、4月2日に定例の記者会見を開催した。会見では、松本氏が3月28日に発生したミャンマー大地震の犠牲者などに哀悼の意を示すとともに、支援金として医師会より合計1,000万円を支援したことを報告した。また、2000年より医師会と日本大学が共同調査を行っている「喫煙意識調査報告」の内容、4月19日に開催されるシンポジウム「未来ビジョン若手医師の挑戦」の開催概要が説明された。男性会員医師の喫煙率は下げ止まり 「第7回(2024年)日本医師会員喫煙意識調査報告」について副会長の茂松 茂人氏(茂松整形外科 院長)がその概要を述べ、調査を行った兼板 佳孝氏(日本大学医学部社会医学系公衆衛生学分野 教授)が詳細を説明した。 この調査は、医師会の禁煙推進活動の一環として2000年より4年ごとに実施され、医師会員の喫煙の現状とその関連要因の把握を目的に行われている。 今回の主な調査目的は、「喫煙率の推移」、「喫煙に関する意識」、「加熱式たばこの使用実態」、「加熱式たばこに関する意識」の4点であり、調査方法としては日本医師会員の中より性別・年齢階級で層別化した上で無作為に抽出した男性6,000人、女性1,500人に自記式質問調査票の郵送で実施した。調査時期は2024年2~12月で、有効回答数は4,139人(反応率58.0%)だった。 主な結果は以下のとおり。・男性の喫煙率は6.9%(前回7.1%)、女性は0.9%(前回2.1%)。・年齢階級別の喫煙率につき、男性では50~59歳が8.8%、女性では70歳以上が2.3%で1番高かった。・診療科別の喫煙率につき、男性では皮膚科(12.1%)、精神科(9.7%)、整形外科(9.6%)の順で多く、参考までに呼吸器科は3.2%と低く、健診科は0%だった。・診療科別の喫煙率につき、女性では循環器科(4.0%)、健診科(3.4%)、精神科(2.0%)の順で多く、0%の診療科が呼吸器科、消化器科など8診療科あった。・現在使用しているたばこ製品については、紙巻たばこ(70.9%)、加熱式たばこ(32.7%)、そのほか(2.6%)の順で多かった。・「加熱式たばこへの心配や懸念」については、「長期間の安全性のエビデンスがないこと」(54.0%)で1番多かった。・「加熱式たばこについて質問された経験」では、「ある」が20.6%、「ない」が78.8%だった。・「加熱式たばこの正確な情報を患者に説明できるか」では、「できる」が11.4%、「できない」が87.7%だった。 今回の調査結果から茂松氏らは、「男性の喫煙率が下げ止まりとなったこと」、「男女ともに20~39歳の喫煙率の低下が顕著だったこと」、「喫煙者の中で加熱式たばこの使用者割合が増加したこと」などが判明したと言及し、「これらの研究結果を踏まえた上で、日本医師会による喫煙防止啓発活動がさらに推進されていくことが期待され、引き続き、定期的に同様の調査を実施し、医師会員の喫煙率、喫煙習慣をモニタリングしていく必要がある」と語った。 最後に常任理事の笹本 洋一氏(ささもと眼科クリニック 院長)が、シンポジウム「未来ビジョン若手医師の挑戦」について、4月19日にライブ配信で開催されること、内容は若手医師のさまざまな挑戦とシンポジウムを中心に行われることを紹介し、会見を終えた。

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白斑患者はがんリスクが高いのか?

 尋常性白斑患者におけるがんの発症率に関する研究では、一貫性のない結果が報告されている。イスラエル・テルアビブ大学のYochai Schonmann氏らは、約2万5千例の尋常性白斑患者を含む大規模コホートでがん発症リスクの評価を行い、結果をJournal of the American Academy of Dermatology誌2025年4月号に報告した。 研究者らは、イスラエルのClalit Health Servicesデータベース(2000~23年)を利用した人口ベースコホート研究を実施し、多変量Cox回帰モデルを用いて調整ハザード比(HR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・本研究には、尋常性白斑患者2万5,008例およびマッチさせた対照群24万5,550例が含まれた。尋常性白斑患者の平均年齢(SD)は35.96歳(22.39歳)、1万2,679例(50.70%)が男性であった。・がんの発症率は、尋常性白斑患者で10万人年当たり499例(95%信頼区間[CI]:468~532)、対照群で10万人年当たり487例(95%CI:476~497)であった(調整ハザード比[HR]:1.00、95%CI:0.93~1.07、p=0.999)。・尋常性白斑患者では、対照群と比較して悪性黒色腫(調整HR:0.70、95%CI:0.50~0.99、p=0.0337)、肺がん(調整HR:0.73、95%CI:0.57~0.93、p=0.007)、膀胱がん(調整HR:0.70、95%CI:0.52~0.94、p=0.0138)のリスクが低かった。 著者らは、尋常性白斑患者のがん発症率は上昇していないことが示されたとし、同患者に対するがん検診は、一般集団に推奨されている標準的なガイドラインに従って実施すべきとまとめている。

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ドパミンD2受容体ブロックが初発統合失調症患者の長期転機に及ぼす影響

 初回エピソード統合失調症において、持続的なドパミンD2受容体ブロックを行っているにもかかわらず再発してしまう患者の割合やD2受容体ブロック作用を有する抗精神病薬の長期使用によりブレイクスルー精神疾患を引き起こすかどうかについては、明らかになっていない。東フィンランド大学のJari Tiihonen氏らは、再発歴がなく、5年超の持続的なD2受容体ブロックによる治療を行った患者において、ブレイクスルー精神疾患の発生率が加速するとの仮説を検証するため、本研究を実施した。The American Journal of Psychiatry誌2025年4月1日号の報告。 フィンランド全国コホートのデータを用いて、1996〜2014年の45歳以下の初回エピソード統合失調症入院患者を特定した。主要アウトカムは、持続的に長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬で治療を行った患者における入院につながる重度の再発とした。副次的アウトカムは、1年目を基準とした2〜10年目までの再発の発生率比(IRR)とした。主な結果は以下のとおり。・フォローアップ後30日間でLAI抗精神病薬の使用を開始した患者305例が特定された。 ・カプランマイヤー分析では、10年間のフォローアップ期間中の再発の累積発生率は45%(95%信頼区間[CI]:35〜57)であった。 ・1人年当たりの年間再発発生率は、1年目で0.26(95%CI:0.20〜0.35)であったが、5年目には0.05(95%CI:0.01〜0.19)まで減少し、IRRは0.18(95%CI:0.04〜0.74)であった。 ・6〜10年目には、128人年の再発は4件のみであり、1年目と比較したIRRは0.12(95%CI:0.03〜0.33)であった。 著者らは「初回エピソード統合失調症患者の約40〜50%は、持続的なD2受容体ブロックにもかかわらず再発する。これは、統合失調症の病態生理学における非ドパミン作動性の要因によるものであると考えられる。また、長期的なドパミンD2受容体ブロックは、ブレイクスルー精神疾患のリスク増加とは関連がないことが明らかとなった」と結論付けている。

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「胃治療ガイドライン」改訂のポイント~外科治療編~/日本胃学会

 2025年3月、「胃治療ガイドライン」(日本胃学会編)が改訂された。2021年から4年ぶりの改訂で、第7版となる。3月12~14日に行われた第97回日本胃学会では、「胃治療ガイドライン第7版 改訂のポイント」と題したシンポジウムが開催され、外科治療、内視鏡治療、薬物療法の3つのパートに分け、改訂ポイントが解説された。改訂点の多かった外科治療と薬物療法の主な改訂ポイントを2回に分けて紹介する。本稿では外科治療に関する主な改訂点を取り上げる。「薬物療法編」はこちら【外科治療の改訂ポイント】木下 敬弘氏(国立がん研究センター東病院 胃外科) 総論部分の大きな改訂点としては、胃の切除範囲として従来の6つの術式に加えて「胃亜全摘術(小彎側をほぼ全長に渡って切離し、短胃動脈を一部切離する幽門側の胃切除)」を追加したこと、これまであいまいだったコンバージョン手術の定義を「初回診察時に根治切除不能と診断され薬物療法が導入された症例で、薬物療法が奏効した後に根治切除を企図して行われる手術」と定めたことがある。クリニカル・クエスチョンに関する改訂点としては、「低侵襲手術の推奨度を全体的に強化」、「コンバージョン手術の推奨度を変更」、「胃切除後長期障害・高齢患者に関するCQを追加」、「病態進行(PD)の適応・断端陽性例などのCQを追加」が大きな点だ。具体的に新設・変更された主なCQは以下となっている。CQ1-1【変更】切除可能な胃に対して、腹腔鏡下手術は推奨されるか?・標準治療の選択肢の一つとして腹腔鏡下幽門側胃切除術は行うことを強く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さA)・c StageI胃に対して胃全摘術、噴門側胃切除術は行うことを強く推奨する。(合意率78%、エビデンスの強さC)CQ1-2【変更】切除可能な胃に対して、ロボット支援手術は推奨されるか?・切除可能な胃に対して、ロボット支援手術を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)「前版では、ロボット支援手術はStageIまでの推奨だったが、今版からその記載が外れ、より広範な推奨となった。現在行われているJCOG1907試験(胃がんにおけるロボット支援下胃切除術の腹腔鏡下胃切除術に対する優越性を検証するランダム化比較試験)の結果によって、将来的には推奨度が変わる可能性がある」CQ1-3【新設】進行胃に対する腹腔鏡下胃全摘術は推奨されるか?・標準治療の選択肢の一つとして進行胃に対する腹腔鏡下胃全摘術は行うことを弱く推奨する。(合意率90%、エビデンスの強さC)「多くの後ろ向き研究で、腹腔鏡下胃全摘術は手術時間は延長するものの、出血量は少なく、再発・生存期間で開腹手術と差がないと報告されている。現在、韓国で胃全摘を要する進行胃がんを対象とした後ろ向き試験(KLASS-06)が行われており、登録が完了した段階だ」CQ1-4【新設】術前化学療法に対する低侵襲手術(腹腔鏡下手術/ロボット支援手術)は推奨されるか?・術前化学療法に対して、低侵襲手術を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)「欧州と中国から、腹腔鏡下手術と開腹手術を比較した前向き研究の報告がある。生存期間や術後短期成績においては差がないと考えられるが、観察期間が短く、エビデンスレベルは高くないと判断した」CQ2-3【新設】胃上部のに対して噴門側の極小胃を温存した幽門側胃切除術は推奨されるか?・適切な切除断端が確保できれば、胃上部の早期に対して噴門側の極小胃を温存した幽門側胃切除術を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)「新たに設定した胃亜全摘術に関するCQとなる。後ろ向き研究のレビューで、手術時間、合併症発生割合、術後栄養状態、術後障害などの点において胃全摘術よりも優れている可能性が示唆されている」CQ3-3【新設】十二指腸浸潤・膵頭部浸潤を来した進行胃に対して膵頭十二指腸切除は推奨されるか?・十二指腸浸潤・膵頭部浸潤を来した進行胃に対して膵頭十二指腸切除を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)「リンパ節転移が比較的軽度で、R0切除が得られる、患者の全身状態が良好という条件を満たした場合に、行うことを弱く推奨とした」CQ5-2【変更】Conversion手術は推奨されるか?(術後化学療法も含む)・StageIV胃症例に対してconversion手術を行うことは、現時点ではエビデンスに乏しく明確な推奨ができない。(合意率78.9%、エビデンスの強さC)・また、conversion手術でR0切除が達成されたStageIV胃に対しては、術後補助化学療法に関する明確な推奨ができない。(合意率78.9%、エビデンスの強さC)「前版では、『化学療法により一定の抗腫瘍効果が得られ、R0切除が可能と判断される』との条件付きで『弱く推奨』としていたが、今回は投票結果が80%に至らず、推奨が出せなかった。化学療法が奏効した患者を対象にconversion手術を行い、その生存期間を報告した研究は単群の後ろ向き研究が大半で、患者選択バイアスも大きい。現在、国内で化学療法奏効例に対するConversion surgeryの意義を検討する第III相試験JCOG2301が進行中だ」CQ5-3【新設】出血/狭窄の姑息切除やバイパス手術、ステント留置術は推奨されるか?・出血/狭窄の姑息切除やバイパス手術、ステント留置術を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さD)「ステントは短期的な有用性は高いが長期的には再狭窄のリスクがある。胃空腸バイパスは短期的な合併症リスクは高いものの長期的なQOL維持に優れているとの報告が多いなど、それぞれの特徴を理解して選択することが重要だ」CQ5-4【新設】CY1に対する胃切除術は推奨されるか?(術後化学療法も含む)・胃切除時にCY1が判明した場合は、手術を先行し、術後化学療法を行うことを弱く推奨する。(合意率94.7%、エビデンスの強さC)・また、初回治療前に審査腹腔鏡でCY1が判明した場合は、化学療法後にCY0になった時点で胃切除を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)「腹腔洗浄細胞診陽性(CY1)胃がんは、2パターンに分けた推奨となった。胃切除後に化学療法を行うことにより、再現性をもって25%前後の5年生存率が示されている。また、化学療法でCY0に陰転化した場合、5年生存率は34.2%と高く、陰転化なし群と比較したハザード比は2.04と報告されている」CQ6-3【新設】食道胃接合部に対する腹腔鏡下手術/ロボット支援手術は推奨されるか?・食道胃接合部に対する手術療法として、腹腔鏡下手術またはロボット支援手術を行うことを弱く推奨する。(合意率70%、エビデンスの強さD)「食道胃接合部がんを対象に、開腹と腹腔鏡下手術を比較したランダム化比較試験の報告はない。単施設後ろ向き比較研究や症例集積研究においては、低侵襲手術で出血量が少なく、早期回復が認められたと報告されている」CQ7-2【新設】残胃に対して腹腔鏡下手術/ロボット支援手術は推奨されるか?・残胃に対する腹腔鏡下手術/ロボット支援手術について、現時点では明確な推奨ができない。(合意率70%、エビデンスの強さD)CQ7-3【新設】残胃空腸吻合部の残胃に対して空腸間膜リンパ節郭清は推奨されるか?・残胃空腸吻合部の残胃に対して、空腸間膜リンパ節郭清を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)CQ8【新設】切除断端が永久標本で陽性と診断された場合に再手術は推奨されるか?・胃切除後に永久標本で切除断端が陽性と診断された場合の再手術に関しては明確な推奨ができない。(合意率100%、エビデンスの強さD)「後ろ向き研究で、早期がんでは切除断端陽性を予後不良因子とする報告が多いが、高度進行例では再手術の意義は薄れる可能性が示唆されている」CQ9【新設】胃切除後長期障害への対応・CQ9-1:脾摘後の肺炎球菌のワクチンの接種:弱く推奨(合意率90%、エビデンスの強さD)・CQ9-2:胃全摘後のVitB12投与:弱く推奨(合意率90%、エビデンスの強さC)・CQ9-3:胃切除後のヘリコバクター・ピロリ除菌:明確な推奨ができない(合意率100%、エビデンスの強さC)CQ10-1【新設】手術の術式を決める際に、年齢を考慮することは推奨されるか?・高齢者に対してはリンパ節郭清範囲を縮小した縮小手術や低侵襲手術を行うことを弱く推奨する。(合意率70%、エビデンスの強さD)CQ10-4【新設】高齢者・サルコペニア患者に対する周術期の栄養/運動療法は推奨されるか?・高齢者・サルコペニア患者に対する周術期の栄養/運動療法については明確な推奨ができない。(合意率94.7%、エビデンスの強さD)「長期生存と術後合併症についてレビューした。術後合併症については減少可能性が示唆されるが、対象患者と介入方法のばらつきが大きく、エビデンスに乏しいと判断した」

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前立腺がんの生検、マイクロ超音波ガイド下vs.MRI/超音波融合ガイド下/JAMA

 臨床的に重要な前立腺がんの検出において、高解像度マイクロ超音波ガイド下生検はMRI/従来型超音波融合画像ガイド下生検に対し非劣性であり、画像ガイド下前立腺生検においてMRIの代替法となる可能性があることが、カナダ・アルバータ大学のAdam Kinnaird氏らOPTIMUM Investigatorsが実施した「OPTIMUM試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年3月23日号に掲載された。8ヵ国20施設の無作為化非劣性試験 OPTIMUM試験は、前立腺がんの検出におけるマイクロ超音波ガイド下生検とMRI融合画像ガイド下生検の有用性の比較を目的とする第III相非盲検無作為化非劣性試験であり、2021年12月~2024年9月に8ヵ国20施設で患者を登録した(Exact Imagingの助成を受けた)。 年齢18歳以上、臨床的に前立腺がんが疑われ(前立腺特異抗原[PSA]上昇または直腸診で異常所見、あるいはこれら双方)、前立腺生検の適応とされ、生検を受けたことがない男性678例(年齢中央値65歳[四分位範囲[IQR]:59~70]、PSA中央値6.9ng/mL[IQR:5.2~9.8]、白人83%)を対象とした。 被験者を、マイクロ超音波ガイド下生検を受ける群(マイクロ超音波群、121例)、マイクロ超音波/MRI融合画像ガイド下生検を受ける群(マイクロ超音波/MRI群、226例、MRIを非盲検化する前にマイクロ超音波ガイド下生検を施行)、MRI/従来型超音波融合画像ガイド下生検を受ける群(MRI/従来型超音波群、331例)の3つの群に無作為に割り付けた。全例で、これらと同時に系統的生検が行われた。 主要評価項目は、マイクロ超音波ガイド下生検+系統的生検と、MRI/従来型超音波融合画像ガイド下生検+系統的生検を用いて検出された臨床的に重要な前立腺がん(Gleason Grade Group≧2と定義)の差とした。非劣性マージンは10%に設定した。マイクロ超音波/MRI群も非劣性 Gleason Grade Group≧2のがんは、マイクロ超音波群57例(47.1%)、マイクロ超音波/MRI群106例(46.9%)、MRI/従来型超音波群141例(42.6%)で検出された。 Gleason Grade Group≧2のがんの検出に関して、マイクロ超音波群はMRI/従来型超音波群に対し非劣性であった(群間差:3.52%[95%信頼区間[CI]:-3.95~10.92]、非劣性のp<0.001)。また、副次評価項目として、マイクロ超音波/MRI群もMRI/従来型超音波群に対し非劣性だった(群間差:4.29%[95%CI:-4.06~12.63]、非劣性のp<0.001)。とくにMRI禁忌例にとって利用しやすい新たな生検法 標的生検だけで診断されたGleason Grade Group≧2のがんは、マイクロ超音波群46例(38.0%)、マイクロ超音波/MRI群91例(40.3%)、MRI/従来型超音波群113例(34.1%)であり、これらの差は有意ではなかった。 著者は、「マイクロ超音波は、前立腺生検を検討している患者、とくにMRIが禁忌の患者にとって、より利用しやすい方法となる可能性がある新たな画像診断法、生検法である」「本試験の結果は、一方の画像技術でしか見えず、他方の画像技術では見えない腫瘍が存在するという、これまでの知見を裏付けるものである。マイクロ超音波で可視、MRIで不可視の腫瘍が、マイクロ超音波で不可視、MRIで可視の腫瘍と予後が異なるかは明らかにされていない」としている。

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