ドパミンD2受容体ブロックが初発統合失調症患者の長期転機に及ぼす影響

提供元:ケアネット

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公開日:2025/04/09

 

 初回エピソード統合失調症において、持続的なドパミンD2受容体ブロックを行っているにもかかわらず再発してしまう患者の割合やD2受容体ブロック作用を有する抗精神病薬の長期使用によりブレイクスルー精神疾患を引き起こすかどうかについては、明らかになっていない。東フィンランド大学のJari Tiihonen氏らは、再発歴がなく、5年超の持続的なD2受容体ブロックによる治療を行った患者において、ブレイクスルー精神疾患の発生率が加速するとの仮説を検証するため、本研究を実施した。The American Journal of Psychiatry誌2025年4月1日号の報告。

 フィンランド全国コホートのデータを用いて、1996〜2014年の45歳以下の初回エピソード統合失調症入院患者を特定した。主要アウトカムは、持続的に長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬で治療を行った患者における入院につながる重度の再発とした。副次的アウトカムは、1年目を基準とした2〜10年目までの再発の発生率比(IRR)とした。

主な結果は以下のとおり。

・フォローアップ後30日間でLAI抗精神病薬の使用を開始した患者305例が特定された。
・カプランマイヤー分析では、10年間のフォローアップ期間中の再発の累積発生率は45%(95%信頼区間[CI]:35〜57)であった。
・1人年当たりの年間再発発生率は、1年目で0.26(95%CI:0.20〜0.35)であったが、5年目には0.05(95%CI:0.01〜0.19)まで減少し、IRRは0.18(95%CI:0.04〜0.74)であった。
・6〜10年目には、128人年の再発は4件のみであり、1年目と比較したIRRは0.12(95%CI:0.03〜0.33)であった。

 著者らは「初回エピソード統合失調症患者の約40〜50%は、持続的なD2受容体ブロックにもかかわらず再発する。これは、統合失調症の病態生理学における非ドパミン作動性の要因によるものであると考えられる。また、長期的なドパミンD2受容体ブロックは、ブレイクスルー精神疾患のリスク増加とは関連がないことが明らかとなった」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)