神経発達障害を併発する強迫症に関与する免疫学的メカニズム

提供元:ケアネット

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公開日:2025/04/10

 

 強迫症(OCD)は、有病率が2〜3%といわれている精神疾患である。OCD治療では、セロトニン再取り込み阻害薬などの抗うつ薬の有効性が示されているが、病因は依然としてよくわかっていない。最近の研究では、とくに自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、トゥレット症などの神経発達障害を併発したOCD患者では、免疫学的メカニズムの関与が示唆されている。兵庫医科大学の櫻井 正彦氏らは、これらのメカニズムを明らかにするため、神経発達障害を併発したOCD患者と併発していないOCD患者における免疫学的因子を調査した。Psychiatric Research誌2025年4月号の報告。

 対象は、兵庫医科大学病院で治療したOCD患者28例。神経発達障害を併発したOCD患者(OCD+NDD群)14例と併発していないOCD患者(OCD群)14例との比較を行った。血液サンプルからRNAを抽出し、RNAシーケンシングおよびIngenuity Pathway Analysis(IPA)を用いて分析した。IL11およびIL17Aの血漿レベルの測定には、ELISAを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・RNAシーケンシングでは、OCD+NDD群とOCD群との比較において、有意に異なる遺伝子が716個特定され、そのうち47個は免疫機能と関連していた。
・IL11およびIL17Aが中心であり、IL11は好中球産生、IL17AはT細胞の遊走やサイトカイン分泌と関連が認められた。
・パスウェイ解析では、これらの遺伝子間の複雑な相互作用が確認された。

 著者らは「本結果は、神経発達障害を伴うOCD患者における免疫学的変化の重要性を示している。抗炎症性のIL11の減少、炎症誘発性のIL17Aの増加は、炎症へのシフトを示唆しており、神経発達の問題と関連していると考えられる」としたうえで、「神経発達障害を伴うOCDにおける免疫学的異常は、潜在的な治療ターゲットとなる可能性がある。治療抵抗性OCD患者、とくに神経発達障害を合併する患者に対する治療戦略を改善するためにも、免疫学的遺伝子の相互作用をさらに調査する必要がある」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)