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ST上昇型急性心筋梗塞の再潅流、ガイドライン勧告時間外の実施で30日死亡リスクは2倍超

ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)に対し、フィブリン溶解など再潅流治療をガイドライン勧告時間外に実施した場合、30日死亡リスクは、2倍超に増大することがわかった。カナダQuebec Healthcare Assessment AgencyのLaurie Lambert氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2010年6月2日号で発表した。STEMI患者に対する、迅速な再潅流治療実施の重要性については知られているが、実際の医療現場における、実施までの経過時間とアウトカムとの関係を評価したものはほとんどないという。勧告時間外の再潅流治療実施で30日死亡リスクは2.14倍Lambert氏らは、2006~2007年にかけて、ケベック州における急性心筋梗塞治療の95%以上を担う、80ヵ所の病院で試験を行った。その結果、試験期間中にSTEMI患者で再潅流治療を行ったのは1,832人で、うちフィブリン溶解が392人(21.4%)、主要経皮的冠動脈血管形成術(PPCI)が1,440人(78.6%)だった。フィブリン溶解を行った患者のうち、ガイドライン勧告の30分以内に実施できなかったのは54%だった。またPPCI実施患者のうち、同勧告の90分以内に実施できなかったのは68%だった。両治療群を合わせると、ガイドライン勧告時間内に治療を実施しなかった群の補正後30日死亡リスクは6.6%と、時間内に治療を行った群の3.3%に比べ、有意に高率だった(オッズ比:2.14、95%信頼区間:1.21~3.93)。なお、1年後死亡リスクについては、両群で有意差はみられなかった(オッズ比:1.61、同:1.00~2.66)。1年後死亡や再入院、時間外実施でリスクは1.57倍に1年後の死亡と、うっ血性心不全や急性心筋梗塞による再入院の統合アウトカムの発生率も、再潅流治療を勧告時間内に実施しなかった群は15.0%、実施した群は9.2%と、実施しなかった群で有意にリスクが高かった(オッズ比:1.57、同:1.08~2.30)。ケベック州において、STEMI患者で再潅流治療を時間内に実施する人の割合が10%増すごとに、地域の30日死亡率は20%程度減少する計算になった(オッズ比:0.80、同:0.65~0.98)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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スタチン投与中の糖尿病例において最低限到達しなければならないLDLコレステロール値は?

糖尿病合併例におけるLDLコレステロール値の管理目標値は120mg/dL未満が推奨されているが、アドヒアランス不良のため、コントロールが不十分な例も少なくはない。フルバスタチンが投与された高コレステロール血症合併糖尿病患者の大規模市販後調査の結果より、心イベント発症抑制のためにはLDLコレステロール値を最低限180mg/dL未満に管理することが重要であることが、東京医科大学 小田原雅人氏より第53回日本糖尿病学会学術集会にて発表された。これはフルバスタチンが投与された高コレステロール血症の長期投与時における心イベント発症率とその危険因子を検討した市販後調査Lochol Event Monitoring(LEM) Studyの糖尿病患者におけるサブ解析より得られた知見。3,000例を超える糖尿病と高コレステロール血症の併発例を3年以上追跡 LEM StudyはHMG-CoA還元酵素阻害薬フルバスタチン(販売名:ローコール)20~60mg/日が投与された高コレステロール血症患者を一次予防群で5年、二次予防群で3年追跡した調査。2000年4月1日から2002年3月31日まで中央登録方式で21,139症例が登録され、その内19,084例が安全性評価対象例とされた。LEM Studyの結果は2009年に開催された第41回日本動脈硬化学会学術集会において発表されているが、今回、糖尿病合併の有無で層別解析した結果が発表された。評価対象例のうち、糖尿病患者は3,325例(17.4%)、非糖尿病患者は15,759例(82.6%)であり、高血圧合併例、心疾患合併例は糖尿病患者群で多かった。糖尿病合併の有無にかかわらず、LDLコレステロール値、総コレステロール値、トリグリセリド値はフルバスタチン投与前より有意に低下した。255例に心イベントが発現し、糖尿病患者群で2.1倍多く発現していた(p

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2型糖尿病でメトホルミン服用患者、ビタミンB12値の管理が強く勧められる

2型糖尿病患者へのメトホルミン長期投与は、ビタミンB12欠乏症のリスクを増大すると、オランダ・Academic Medical Center眼科部門のJolien de Jager氏らが、無作為化プラセボ対照試験を行い明らかにした。「ビタミン12欠乏症は予防可能で、試験の結果は、ビタミンB12値の定期的な測定が強く考慮されなければならないことを示唆するもの」と結論している。BMJ誌2010年5月29日号(オンライン版2010年5月10日号)掲載より。無作為化プラセボ対照試験で、メトホルミン長期投与の提供を検証Jager氏らは、2型糖尿病でインスリン治療を受けている患者で、メトホルミン(商品名:メトグルコ、メルビンほか)長期投与によるビタミンB12欠乏症(150pmol/L未満)、ビタミンB12不足(150~220pmol/L)の発症率の影響と、血中葉酸濃度、血中ホモシステイン濃度について検討を行った。被験者は、オランダの3つの非大学病院外来クリニックから、390例が集められ、メトホルミン850mgを1日3回服用群と、プラセボ服用群に無作為化され、4.3年治療を受けた。主要評価項目は、基線から4、17、30、43、52ヵ月時点の、ビタミンB12、葉酸、ホモシステインの各変化%値とした。4.3年でビタミンB12は19%低下プラセボ群と比べてメトホルミン治療群は、ビタミンB12、葉酸の低下との関連が認められた。平均低下%値は、ビタミンB12が-19%(95%信頼区間:-24~-14、P

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中国成人の糖尿病診断、HbA1c値を用いるなら6.3%が適切

糖尿病診断のHbA1c値について、中国での最適な基準値を特定することを目的とした多段階階層断面疫学調査が行われた。上海糖尿病センターのYuqian Bao氏らが、中国人成人4,886例のデータを解析した。BMJ誌2010年5月29日号(オンライン版2010年5月17日号)掲載より。結果、欧米で診断基準として使用されている6.5%以上よりも6.3%が優れていることが明らかになったという。なお、日本では5月末の第53回日本糖尿病学会で、診断基準「6.5%以上」(JDS値6.1%以上)で統一を図っていくことが発表されている。上海住民4,886例のデータから、HbA1c値の感度、特異度を調査調査は、2007年5月~2008年8月の間に上海市内6地点で集められた、糖尿病歴のない20歳以上中国人4,886例(男性1,828例、女性3,058例、平均年齢49.4歳)を対象に行われた。糖尿病診断は、FPG値の基準(1999年版WHO基準)を用い、一方で測定したHbA1c値の診断検出力のパフォーマンス変化が最も高い閾値を検討した。両者の相関にはピアソン相関分析を用い、ROC曲線検定でHbA1c値の糖尿病診断の感度と特異度を調べた。被験者全員を対象に検討された閾値は、標準値(5.8%以下)を上回った値の四分位範囲で4つの値(標準偏差SD値の各中央値をとって5.9%、6.3%、6.7%、7.1%とした)と、欧米での診断基準6.5%以上について行われた。また、6.0%~6.5%だった被験者を糖尿病ハイリスク群(3,639例)とし、6.0%、6.1%、6.2%、6.3%、6.4%、6.5%の閾値についても検討された。6.3%の特異度が最も高く、感度はFPG値7.0mmol/Lと同等ROC曲線検定から、診断未確定の糖尿病の検出力を示すAUC(ROC曲線下面積)は、HbA1c値単独で0.856(95%信頼区間:0.828~0.883)、空腹時血糖値単独は0.920(同:0.900~0.941)で、いずれからも有意差が認められた(P

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富士フイルム子会社が肺がんの新規RI標識抗体を開発 米国核医学会にて発表

富士フイルム株式会社の子会社である、株式会社ペルセウスプロテオミクスと富士フイルムRIファーマ株式会社は8日、肺がんの新規RI標識抗体を開発し、その成果を6月7日(日本時間6月8日)に米国ソルトレークシティーで開催された米国核医学会において発表した。ペルセウスプロテオミクスは、東京大学先端科学技術研究センターと共同でヒト遺伝子の発現解析により、がん細胞に特異的に発現するたんぱく質を特定し、そのたんぱく質が肺がん、膵(すい)がん、大腸がんをはじめとする広範ながんで高く発現することを見いだしたという。ペルセウスプロテオミクスはこのたんぱく質に対する抗体を作製し、富士フイルムRIファーマとの共同研究により、その中からがん組織に集積性が高く、かつ正常組織への影響が少ない抗体をイットリウム(Y-90)で標識することに成功した。この「Armed抗体」が、マウスの肺がんモデルにおいて顕著な腫瘍の増殖抑制効果を示すことを確認し、今回の発表に至ったとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_0400.html

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アメリカで品切れ続出!“脳波トイ”が7月に日本上陸へ

株式会社セガトイズは8日、脳波トイ『マインドフレックス』を2010年7月31日より発売すると発表した。『マインドフレックス』は、アメリカの2010年のトイオブザイヤー3部門でファイナリストに選出された“脳派トイ”。日本でも、日経トレンディの「2010ヒット予測ランキング」で5位にランクインしており、これまで医療の現場でしか使用されていなかった脳波の技術を利用したゲームは、発売前から注目されている。基本的な遊び方は、頭につけたヘッドセットが脳波をセンサーで読み取った計測データが本体へ送信され、その時の集中の度合いによってファンが回転し、ボールを高く浮かせたり移動させたりしながら障害物をクリアする。子どもから大人まで遊ぶことができ、1~4人で楽しめるゲームが4つ内蔵されている。7月15日から開催される「2010年東京おもちゃショー」の同社ブースにて、体験会を実施するとのこと。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.segatoys.co.jp/company_information/press_release/pdf/20100608.pdf

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企業向けメンタルヘルス対策用「eラーニングサービス」を販売

株式会社セーフティネットは7日、社員の「セルフケア意識の向上」を目的とした、企業向けのメンタルヘルス対策用『eラーニングサービス』を同日より販売を開始すると発表した。同サービスは同社の顧問精神科医・医学博士を務める児玉芳夫氏監修のもと開発したもの。昨今の景気悪化に伴う労働環境の悪化により、うつ病など「こころの病」にかかる社員が増え、多くの企業が対応や対策に取り組んでいる。厚生労働省の調査によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業の割合は全体の33.6%[前回23.5%]で前回調査から10.1%増えており、取り組む企業が増加傾向にあることがうかがえる。同サービスは、「自分もかかるかもしれない病気」であることを認識させ、さらに、予防法、早期気づきの時期、かかってしまった場合どうすべきか、周囲の対応は、などが身に付くようになっているとのこと。そのため、月1回、簡単にできる学習を12回実施するという特異な方法を用いている。また、アンケート機能も付加してあり、社員個々の健康状態などを調査することもできるという。詳細はプレスリリースへhttp://www.safetynet.co.jp/images/press100607.pdf

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フィブラート系高脂血症薬、主要心血管イベントリスクを低下:メタ解析

メタ解析の結果、フィブラート系高脂血症薬には、主として冠動脈イベントの予防により主要な心血管イベントリスクを低下すること、心血管イベントのハイリスク患者、脂質異常症を合併する患者で有用である可能性が明らかになった。オーストラリア・シドニー大学・The George Institute for International HealthのMin Jun氏らの報告で、Lancet誌2010年5月29日号(オンライン版2010年5月11日号)に掲載された。心血管リスクのフィブラート系高脂血症薬の有効性に関する知見は一貫していないことから、Jun氏らは、主要な臨床アウトカムの有効性について検討することを目的にシステマティックレビュー、メタ解析を行った。18のプラセボ無作為化試験4万5,000例分のデータを解析研究グループは、Medline、Embase、Cochrane Libraryで1950年~2010年3月の間に発表された試験論文をシステマティックレビューした。適格としたのは、前向き無作為化試験で、心血管アウトカムについてフィブラート系高脂血症薬とプラセボを比較検討した試験とした。ランダム効果モデルを使って相対リスク(RR)低下を算出し、主要な心血管イベント、冠動脈イベント、脳卒中、心不全、冠動脈再建、全死因死亡率、心血管死亡、非血管死亡、突然死、蛋白尿新規発症、薬物関連有害事象について解析した。対象となったのは18試験だった。被験者は計4万5,058例、主要な心血管イベント2,870例、冠動脈イベント4,552例、死亡3,880例を含んだ。冠動脈イベント13%低下、脳卒中はベネフィット認められずフィブラート系高脂血症薬治療は、主要な心血管イベントを10%低下(95%信頼区間:0~18、p=0.048)した。ただし冠動脈イベントが13%低下(同:7~19、p<0.0001)する一方、脳卒中(-3%、-16~9、p=0.69)はベネフィットが認められなかった。また、全死因死亡(0%、-8~7、p=0.92)、心血管死亡(3%、-7~12、p=0.59)、突然死(11%、-6~26、p=0.19)、非血管死亡(-10%、-21~0.5、p=0.063)は、効果が認められなかった。蛋白尿新規発症は14%低下(2~25、p=0.028)が認められた。重大な薬物関連有害事象については、血清クレアチニン値の増加がみられたが(RR:1.99、1.46~2.70、p

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エボラウイルスに対する実験的治療、マウスに次いでサルでも有効性確認

ボストン大学全米新興感染症研究所のThomas W Geisbert氏らは、致死性のザイールエボラウイルス(ZEBOV)に感染したアカゲサル(マカク属)のモデルを使った実験的治療で、RNA干渉を引き起こすsiRNA(small interfering RNAs)治療が有効であったことを報告した。Lancet誌2010年5月29日号掲載より。同治療の有効性は、マウスを使った実験的治療で確認されていた。siRNA治療は、安定核酸脂質分子(SNALPs)に調製したsiRNAを、ZEBOVのRNAポリメラーゼLたんぱく質をターゲットに投与するというもの。3つの蛋白質をターゲットにした混合siRNAを4回もしくは7回投与Geisbert氏らは、マウスで有効だった本治療について、ヒト以外の霊長類での有効性を評価することを目的に実験的治療を行った。投与されたのは、ZEBOVのRNAポリメラーゼL(EK-1 mod)、およびウイルスタンパク質(VP)24(VP24-1160 mod)、VP35(VP35-855 mod)をターゲットしSNALPs化された混合siRNA。第1試験のサル群(3例)に本剤を1回2mg/kgボーラス静注で、ZEBOV曝露後、30分、1、3、5日後にそれぞれ投与した。第2試験のサル群(4例)には、同剤を、曝露後、30分、1、2、3、4、5、6日後に投与した。曝露直後の7回投与が治療戦略として有効か4回投与の第1群は、プロテクトされたのは3例のうち2例(66%)だった。一方、7回投与の第2群は、全例プロテクトに成功した。第2群は、ウイルス感染に関連する肝酵素の値の変化も軽度で、治療としての忍容性が高いことも確認された。Geisbert氏は、「今回の結果、本治療戦略がヒトにおいても有効である可能性が示された。また、他の新生ウイルス感染の治療戦略としての可能性も示唆されたと言える」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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死亡原因の3割は、2009年人口動態統計月報年計

厚生労働省が発表した「2009年人口動態統計月報年計」概数によると、09年の死亡数は114万1920人(前年より487人減少)だったが、死因原因の1位はの34万3954人(前年比991人増)だったことがわかった。その割合は30.1%になる。部位別で見ると、男性で最も多いのは「肺」となっていて、上昇傾向が著しい。以下、「胃」「大腸」と続く。女性では「大腸」「肺」「胃」の順に多く、「大腸」と「肺」は上昇傾向が続いている。●詳細は厚生労働省のページへhttp://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai09/index.html 

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以前のように働きたい、でもどうすればいい?  -東京都世田谷区と精神科医がうつ病患者さんの就労を支援-

近年、うつ病患者数の急増が注目されている。その中でも、働き盛りの世代のうつ病は単なる疾患の問題にとどまらず、経済的な損失の観点からも大きな社会問題として指摘されている。そのような中、東京都世田谷区では精神科医や心理士らと共に、うつ病に悩む区民の就労を支援するため、2008年からうつ病に関する講演会や就労支援講座を実施してきた。同企画の3年目となる今年は、5月17日(月)に世田谷区役所第3庁舎ブライトホールにて、区民約100名を集めた講演会が開催された。そこで、同企画の立ち上げから参加し、講演会の講師を務めている仮屋暢聡氏(まいんずたわーメンタルクリニック〔渋谷区〕)に同企画の趣旨と今後の展望についてお話を伺った。行政との二人三脚で始まったうつ病患者さんの就労支援世田谷区の東京都立松沢病院、東京都健康局の精神保健福祉課長などの経歴を持つ仮屋氏は、地域活動の一環として十数年、同区の保健所に様々な支援をしてきた。このような経緯を経て、世田谷区の保健所からうつ病患者さんの就労支援の相談を受けたのが3年前に遡る。「本企画を立ち上げた3年前は、なかなか復職できずに会社を辞めてしまう患者さんも多く、患者さんの家族からも『どのように患者さんを支えてよいかわからない』という悩みを多く聞いていた」と仮屋氏は振り返る。うつ病に対する認識が広がりつつあるものの、3年前はうつ病に対する認識はまだまだ低く、相談できるところがないような状況だった。そこで、その対策として立ち上げたのがこの企画だ。患者さんやご家族が本当に知りたいことに応える講演会の内容は、“うつ病とは何か?”という全般的な話を一通り説明した上で、今、うつ病で何が問題になっているのかなどの視点や、うつ病に対して自分の臨床経験が深まっていくからこそできる話も織り交ぜ、毎年少しずつ話を変える工夫をしている。現在、インターネットやメディアからの情報で、一般の人たちもうつ病について大まかには知られるようになってきた。しかし、「うつ病は治るのか、いつ治るのか」「どこに受診すればいいのか」「どのような治療法があるのか」「薬はどの程度効くのか」「家族はどうしたらいいのか」など、まだまだうつ病患者さんやご家族ではわからないことが多いと、仮屋氏は指摘する。仮屋氏は、今回の講演会においてうつ病と神経の関連についても言及し、今回はうつ病によって引き起こされる体の変化についても触れた。実際のデータも見せ、自律神経の亢進が身体に及ぼす影響を説明した。そして、「打たれ弱いから、心が弱いからうつ病になったのではない」「何かのショックによってうつ病になったのではない」ことを今回の講演会で最も強調した。仮屋氏は「心を抽象的に捉えてしまうとどうしてもわかりにくくなってしまうが、目に見える形で提示するとうつ病患者さんの理解が得られる」と、講演会の手応えをしっかり感じていた。本企画は、仮屋氏によるうつ病患者さんへの疾患の説明にとどまらない。別の日程で、うつ病患者さんのご家族に対しても、個別にご家族の悩みを聞き、どうしたらよいか相談に乗る機会を設けた。さらに、うつ病患者さんの就労のためのセミナーも用意している。「頑張ったらいけない」ことが、いけないこと?うつ病患者に対して「頑張り過ぎない」「頑張ったらいけない」とよく言われる。この点について逆説的に「頑張らなければならない時は頑張らなければならないのだから、「どういう部分を頑張ればよいのか」「どういう部分は頑張ってはいけないのか」と説明すると患者さんもご家族の方もよくわかってくださる」と、うつ病患者さんに対する対処方法も披露した。聴講者も最後までしっかり聞き入り、「よくわかった」と感想を話していたという。全国に先駆けた世田谷区の取り組み仮屋氏は「うつ病患者さん本人やご家族へのうつ病の講演はあるが、うつ病患者さんの就労支援や患者さん本人のスキルアップのためのセミナーまでやっているところは全国でも少ないのではないか」という。 自治体ができることには限度があるが、「その中でも、少しでも本企画のような動きが広まってくれることを世田谷区も期待している」とのことだ。就労を希望するうつ病患者さんは、一体何に困っている?「今のうつ病患者さんの就労の問題は、就労のための実際のやり方がわからないということ。だから本企画では、私が講演会でうつ病の疾患や治療、対応、家族の基本的な考え方などについて話し、精神保健福祉士やケースワーカーの人たちがセミナーで就労支援の制度の大枠、たとえば障害基礎年金や傷病手当金、失業保険など制度について大まかに説明している。」と、仮屋氏は本企画の特徴を述べた。「世田谷区でもこの事業を毎年総括し、成果がよければまたこの形で続けていくことになるかもしれない」と今後の見解も示した。世田谷区内へ、そして全国へ。 うつ病患者の就労支援は広まるか?仮屋氏は「本企画は世田谷区内の小さいエリアへの展開も考えられる。世田谷区は5つくらいの地区に分かれるので、区が実施した企画が、より小さい地区においても細かくフォローされていくことを実現したいと考えているようだ」と、今後の発展の可能性があることを示唆した。また、これらの成果を、「公衆衛生学会や保健師の学会などで発表できれば、他の地区にも波及して様々な方法が検討され全国に広まっていく。世田谷区がそのような雛形作りになればいい」と仮屋氏は語った。過去世田谷区では、今回のうつ病同様に、全国に先駆けて虐待やアルコール依存症対策などについても取組んできた歴史がある。結果として、この動きは全国に広まっていった。このような世田谷区の特徴を仮屋氏は「世田谷区は80万人という人口を抱えており、いろんな資源もある。区長も積極的にこのような事業に力を入れているという伝統がある。逆にいえば、世田谷区は恵まれているのかもしれない」と説明する。うつ病対策の主力は「コ・メディカル」?もう一つ、仮屋氏が熱い視線を送っているのがコ・メディカルだ。仮屋氏によれば、「世田谷区は心の問題、たとえばアルコール依存症などは今でもコ・メディカルの方々が、「家族が変われば患者さんも変わるのではないか」「コ・メディカルがこの問題に自発的に取り組むことでさらに成果が上がるのではないか」と考え、患者さんの家族に対するアプローチを開始して成果を上げている。このような医師以外のコ・メディカルの運動が、実は地方のような医師が少ない地域でもうつも防げるのではないか。」とコ・メディカルの活動に大きな期待を寄せている。「実際に地方では、臨床に対するアプローチとして、医師がすべてできない部分を保健師などがフォローしていくというように進んでいるようだ」と地方のうつ病診療にまで話が及んだ。最後に仮屋氏は「精神科医も含め医師は不足している。コ・メディカルや職場の産業医、一般の内科医などいろんな職域が上手く連携し、うつ病患者を早期に発見して早期にアプローチしていくということが必要なのだろう。精神科医の仕事として、そういった人たちに対して教育していくということも重要だ」と言葉を結んだ。(ケアネット 高橋 洋明)

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早産児への酸素飽和度の目標は?

早産児の有害転帰を増加することなく未熟児網膜症を最小限とするには、どれぐらいの酸素投与が適しているのか? 米国のSUPPORT Study Group of the Eunice Kennedy Shriver NICHD Neonatal Research Networkが、超早産児1,316例を対象に行った多施設共同無作為化試験の結果をNEJM誌2010年5月27日号(オンライン版2010年5月16日号)で報告している。これまでの研究で、未熟児網膜症発症率の低下と目標酸素飽和度低値との関連は明らかになっているが、有害転帰と酸素飽和度の関連については明らかでなかった。1,316例を、「85~89%」群、「91~95%」群に無作為化し転帰を比較本研究は、超早産児に対する早期CPAP(持続陽圧呼吸療法)と早期サーファクタント療法を比較する研究の一部として検討された。研究グループは、在胎24週0日~27週6日で生まれた超早産児1,316例を対象に、2×2多施設共同無作為化試験を行った。対象児は、CPAP群かサーファクタント投与群に無作為化後、それぞれ酸素飽和度目標範囲「85~89%」群か、「91~95%」群に割り付けられ転帰が比較された。解析された超早産児数は、低酸素飽和度の「85~89%」群は654例、高酸素飽和度の「91~95%」群が662例。各群の基線特性は同様だった。主要転帰は、重症未熟児網膜症(閾値に達する網膜症が存在し外科的手術を要する、あるいはベバシズマブ*使用)、退院前死亡の複合転帰とした。*商品名:アバスチン(保険適応はない)低酸素飽和度群は、未熟児網膜症発症率は半減するも、死亡児が3割増主要複合転帰(重症未熟児網膜症・退院前死亡)について、「85~89%」群28.3%、「91~95%」群32.1%、相対リスク0.90(95%信頼区間:0.76~1.06、P=0.21)で、両群間に有意差は認められなかった。しかし転帰を個別にみると、退院前死亡の頻度は「85~89%」群の方が高かった。死亡発生は19.9%対16.2%、相対リスクは1.27(95%信頼区間:1.01~1.60、P=0.04)。一方で、重症未熟児網膜症の頻度は、「91~95%」群の方が倍近く高かった。発症率は、8.6%対17.9%、相対リスクは0.52(0.37~0.73、P

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早産児に、早期CPAPも選択の余地あり

早産児に、生後2時間以内にサーファクタントを投与することで死亡や気管支肺異形成症を低減できることが示されていることから、予防的治療として早期サーファクタント療法が行われるようになっている。しかし超早産児では挿管を必要とする場合もあってCPAP(持続陽圧呼吸療法)が検討されたり、また、より早期のサーファクタント療法群では筋緊張が高頻度にみられたり寝返り動作がなかなかできるようにならないといった報告もある。そこで米国のSUPPORT Study Group of the Eunice Kennedy Shriver NICHD Neonatal Research Networkが、超早産児1,316例を対象に、早期CPAPと早期サーファクタント治療とを比較する多施設共同無作為化試験を行った。NEJM誌2010年5月27日号(オンライン版2010年5月16日号)掲載より。1,316例を、「早期CPAP」群、「挿管+早期サーファクタント」群に無作為化し転帰を比較研究グループは、2005年2月~2009年2月の間に、在胎24週0日~27週6日で生まれた超早産児1,316例を対象に、2×2多施設共同無作為化試験を行った。対象児は無作為に、挿管後サーファクタント療法(生後1時間以内)を受ける群(早期サーファクタント群:653例)か、CPAPを分娩室で開始し換気治療戦略のプロトコールに従い実行された群(早期CPAP群:663例)に割り付けられた。またその後、両群児は、酸素飽和度目標範囲「85~89%」群(在胎24週0日~25週6日:565例)か、「91~95%」群(在胎26週0日~27週6日:751例)にも割り付けられた。主要転帰は、36週までの死亡もしくは気管支肺異形成症の複合転帰とした。気管支肺異形成症は、酸素補充を必要とした児(酸素補充30%未満で酸素補充離脱を試みた児も含む)と定義された。死亡、気管支肺異形成症発症に、両群で有意差はない主要複合転帰は、在胎期間、施設、家族内集積で補正後も、両群間で有意差は認められなかった。「早期CPAP」群47.8%、「早期サーファクタント」群51.0%、相対リスクは0.95(95%信頼区間:0.85~1.05)だった。気管支肺異形成症の発症についても両群で同様だった。発症率は同48.7%、54.1%、相対リスクは0.91(同:0.83~1.01)だった。早期CPAPを受けた早産児の方が、挿管や気管支肺異形成症のための副腎皮質ステロイド投与の頻度が少なく(P

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米国過去20年で血圧コントロール割合27.3%→50.1%に

米国では、1988~2008年にかけて、血圧がコントロールされている人の割合が、27.3%から50.1%にまで改善したことが明らかになった。特に1999~2000年から2007~2008年にかけては、同割合は18.6ポイント増加していた。米国サウスカロライナ大学のBrent M. Egan氏らが、4万人超の18歳以上について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年5月26日号で発表した。全米の健康政策「Healthy People 2010」の中で、血圧コントロール率の目標は50%となっていた。血圧コントロールの定義は140/90mmHg未満同氏らは、1988~1994年と1999~2008年のNational Health and Nutrition Examination Survey(NHANES)データを用い、18歳以上の4万2,856人について、2年ごとの血圧コントロールなどに関するデータを分析した。高血圧の定義は、「平均収縮期血圧140mmHg以上、平均拡張期血圧90mmHg以上」、「降圧薬の服用」のいずれかだった。血圧コントロールの定義は、収縮期血圧140mmHg未満/拡張期血圧90mmHg未満だった。患者の認識の割合、降圧薬服用の割合も増大その結果、高血圧の罹患率は、1988~1994年の23.9%から、1999~2000年には28.5%へと増加していた。ただし2007~2008年は29.0%で、2000年以降の間の有意な変化はなかった。一方、高血圧コントロールについては、1988~1994年の27.3%から、2007~2008年は50.1%へと、大幅に改善した(p=0.006)。同期間の高血圧患者の血圧も、143.0/80.4mmHgから135.2/74.1mmHgへと、有意に低下していた(p=0.02/p

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RCT論文、「有意差なし」なのにタイトル曲解18%、要約結論曲解58%

無作為化コントール試験(RCT)の論文で、主要アウトカムで統計的有意差がみられなかったにもかかわらず、筆者により内容がゆがめられた曲解表現が使われていた論文タイトルが18%、またアブストラクトの結論部分で曲解表現が使われていたのは58%あったことが報告された。英国オックスフォード大学のIsabelle Boutron氏らが、2006年12月までに発表されていた616のRCT論文について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年5月26日号で発表している。有意差のみられなかった試験結果を報告する際、筆者が意識・無意識にかかわらず、読者に誤解を与えるようなゆがんだ表現を使うことがあることは知られていたが、この点について体系的に評価をした研究はほとんどなかった。主要アウトカムに有意差のない、72のRCTを調査同氏らは、2007年3月、MEDLINEを使い、2006年12月までに発表されていた616のRCT論文を抽出した。そのうち、パラレル比較をしたRCTで、明記された主要アウトカムの結果が、p値0.05以上と統計的有意差がみられなかったのは、72試験だった。それらの論文について、「spin」(スピン)と呼ばれる、統計的有意差がないにもかかわらず、実験的治療が有効であるような印象を与える表現や、有意差のない結果から読者の注意をそらすような表現の有無について、詳しく調査した。4割以上の論文で、本文の「結果」「ディスカッション」「結論」のいずれか2ヵ所に歪曲表現その結果、72試験のうち、論文タイトルにスピンがみられたのは13論文(18.0%、95%信頼区間:10.0~28.9)だった。また、論文アブストラクトの結果にスピンが認められたのは27論文(37.5%、同:26.4~49.7)、結論部分にあったのは42論文(58.3%、同:46.1~69.8)だった。なかでも17論文(23.6%、同:14.4~35.1)では、結論部分で治療の効用についてのみ論じられていた。またスピンが、論文本文の「結果」「ディスカッション」「結論」部分でみられた論文は、それぞれ、21論文(29.2%)、31論文(43.1%)、36論文(50.0%)だった。これらの2ヵ所以上の部分にスピンがみられた論文は、40%超に上った。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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緑内障診断前、半数以上が視野欠損の可能性がある「見えづらさ」を経験

緑内障フレンド・ネットワークが行った調査によると、緑内障患者の半数以上が診断を受ける前に視野欠損の可能性がある「見えづらさ」を経験、さらに、そのうちの3人に1人が「思いがけない見落とし」をしていることがわかった。また、見えづらさを感じていなかった人でも、6割は診断時に視野欠損が認められた。調査は今年4月24日から5月12日、緑内障フレンド・ネットワークが患者会員を対象に郵送形式で実施し、744人から回答を得たもの。緑内障と診断される前に視野欠損の可能性がある見えづらさがあったと回答した人は全体の56.0%で、具体的な見えづらさとしては、「文字がスムーズに読みづらかった」や「視界に入っているはずなのに、思いがけない見落としをした」、「階段などの段差が分かりにくかった」などが挙げられた。思いがけない見落としをした人の中には、「段差」や「信号や標識」、「電柱等の路上障害物」、「走行中の自転車」、「走行中の車」といった危険な見落としもあった。●詳細はプレスリリースへhttp://xoops.gfnet.gr.jp/pdf/2010/100527_MemberResearch.pdf

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足首捻挫時は、安静よりも運動療法

4年に一度のサッカーの祭典W杯が間もなく始まる。そのサッカー選手でも頻度が高い、足首捻挫の治療について、受傷後は安静、アイシング、加圧、固定をするよりも、すぐに運動療法を始めた方が、短期間で機能が快復することが報告された。イギリス・北アイルランドのUlster大学健康科学校健康・リハビリテーション科学研究所のChris M Bleakley氏らが、無作為化試験を行い明らかにした。BMJ誌2010年5月22日号(オンライン版2010年5月10日号)掲載より。101例の急性足首捻挫患者を無作為化し16週間追跡Bleakley氏らは、2007年7月~2008年8月に大学病院の救急外来もしくはスポーツ外傷クリニックを受診した、急性(受傷後7日未満)足首関節捻挫グレード1、2の101例の患者を対象に、アウトカムの評価者盲検無作為化試験を行った。被験者は、すぐに運動療法の介入を受ける群(運動群、50例、平均25.3歳)か、標準的ケア(安静、アイシング、加圧、固定)の介入を受ける群(標準群、51例、26.6歳)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、下肢機能スケールを用いた足首関節機能の自覚状態。副次評価項目は、基線および傷害後1、2、3、4週時点の、安静時と運動時の疼痛、腫脹の程度、身体活動度だった。足首関節機能、再受傷率の評価は、16週時点で行われた。治療効果は一貫して運動群に治療効果は一貫して、運動群の方が認められた(P=0.0077)。1週時点での両群間の治療効果の差は5.28(98.75%信頼区間:0.31~10.26、P=0.008)、2週時点では4.92(同:0.27~9.57、P=0.0083)だった。活動レベルは、いずれの測定時点でも運動群で有意に高かった。歩行時間は運動群1.6時間に対し、標準群は1.2時間、歩数は同7,886歩対5,621歩、軽い運動時間は76分対53分。安静時・運動時疼痛および腫脹について、群間差は認められなかった。再受傷率は4%だった(両群とも2例)。

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かかりつけ医の抗菌薬処方が、地域に耐性菌を出現・増大

プライマリ・ケア医(かかりつけ医)の抗菌薬処方が、地域に第1選択薬の耐性菌を出現・増加させ、第2選択薬の乱用をもたらしていることが報告された。イギリス・ブリストル大学地域医療部門のCe'ire Costelloe氏らが行ったメタ解析によるもので、BMJ誌2010年5月22日号(オンライン版2010年5月18日号)に掲載された。システマティックレビューで24論文をメタ解析Costelloe氏らは、Medline、Embase、Cochraneをデータベース(1955~2009年5月)に、システマティックレビュー、メタ解析を行った。電子検索で「抗菌薬治療」「薬剤耐性」などの単語にヒットした4,373論文から、2人の独立したレビュアーが、かかりつけ医が処方した抗菌薬とその後の耐性菌出現との定量的関係性を調査したものを選定。24論文がレビューされた。22件は感染症状を有した患者が関与、2件は健康なボランティアが関与しており、19件は観察研究(うち2件は前向き研究)で、無作為化試験は5件だった。長期投与・多剤投与で耐性菌出現率高める尿路感染に関する5試験で、耐性菌出現の統合オッズ比は、抗菌薬処方後2ヵ月間2.5(95%信頼区間:2.1~2.9)、12ヵ月間1.33(1.2~1.5)であった。呼吸器感染に関する7試験では、耐性菌出現の統合オッズ比は各期間とも2.4(1.4~3.9)、2.4(1.3~4.5)だった。また、抗菌薬処方量が報告されていた試験で、長期投与・多剤投与がより高い耐性菌出現率と関連していることが認められた。前向き試験で、長期にわたり耐性菌出現が低下したことが報告されていたのは1試験だけだった。統合オッズは、1週12.2(6.8~22.1)、1ヵ月6.1(2.8~13.4)、2ヵ月3.6(2.2~6.0)、6ヵ月2.2(1.3~3.6)だった。

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超多剤耐性結核患者の予後に、HIV感染は影響するか?

超多剤耐性(XDR)結核患者は、HIV感染の有無にかかわらず予後不良であるが、HIV感染者の予後は以前に比べ改善していることが、南アフリカCape Town大学のKeertan Dheda氏らが行ったコホート試験で明らかとなった。Kwazulu Natal(南アフリカ)のデータによれば、XDR結核に感染している患者のほとんどがHIV感染者であり、致死的な転帰をとることが示唆される。しかし、HIV感染率が高い状況におけるXDR結核の治療効果を評価したデータはほとんどないという。Lancet誌2010年5月22日号(オンライン版2010年5月19日号)掲載の報告。XDR結核とHIV感染の関連を評価する後ろ向きコホート試験研究グループは、疾患対策に向けた勧告を策定するために、XDR結核とHIV感染の関連についてレトロスペクティブなコホート試験を行った。2002年8月~2008年2月までに、南アフリカの4つの地域の指定治療施設において、診断時の培養検査でXDR結核が確認された16歳以上の患者記録を解析した。Cox比例ハザード回帰モデルを用いて予後に関連するリスク因子の評価を行った。HIV感染XDR結核患者の死亡率は41%、HIV非感染XDR結核患者は30%XDR結核患者227例が登録され195例が解析の対象となった。そのうち21例は治療開始前に死亡し、治療を受けたのは174例(HIV感染者は82例)であった。62例(36%)がフォローアップ期間中に死亡した。HIVに感染したXDR結核患者の死亡率は41%(34/82例)、HIV非感染XDR結核患者の死亡率は30%(28/92例)であり、両群間に有意な差は認めなかった(p=0.13)。死亡の予測因子の解析では、モキシフロキサシン(商品名:アベロックス)を使用すると死亡率が89%低下し(ハザード比:0.11、p=0.03)、培養検査で多剤耐性結核の検出歴があると死亡率が5倍以上になり(同:5.21、p=0.001)、使用薬剤数が多いと死亡率が41%低下した(同:0.59、p<0.0001)。高活性抗レトロウイルス療法(HAART)を受けたHIV感染XDR結核患者は、受けていない患者に比べ死亡数が少なかった(ハザード比:0.38、p=0.01)。174例中33例(19%)で培養陰性化が示され、そのうち23例(70%)は治療開始から6カ月以内に陰性化した。著者は、「南アフリカでは、XDR結核患者の予後は、HIVに感染していなくても不良であった。しかし、HIV感染者の生存率は以前の報告に比べ改善している」と結論し、「優先度はXDR結核感染の予防の方が高く、治療プログラムや検査能力を強化することで多剤耐性およびXDR結核を早期に検出して治療を行うべきである」としている。(菅野守:医学ライター)

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分娩後出血は、ミソプロストールを追加しても改善しない

分娩後出血の治療において、標準的な子宮収縮薬注射に加えミソプロストール(商品名:サイトテック)600μgを舌下投与しても、失血は改善されないことが、WHO(スイス)リプロダクティブヘルス研究部門のMariana Widmer氏らが、アジア、アフリカ、南米諸国の参加のもとに実施した無作為化試験で示された。分娩後出血は世界的に妊婦の罹病および死亡の主原因である。ミソプロストールは子宮収縮作用を持つプロスタグランジンのアナログ製剤であり、経口投与が可能で安定性に優れ、安価であるため治療選択肢として有望視されているという。Lancet誌2010年5月22日号掲載の報告。5ヵ国の施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化試験研究グループは、分娩後出血の治療として、標準的子宮収縮薬単独とこれにミソプロストールを補助的に併用する方法の効果を評価する二重盲検無作為化試験を実施した。2005年7月~2008年8月までに、アルゼンチン、エジプト、南アフリカ、タイ、ベトナムの施設から、経膣分娩後に、臨床的に子宮弛緩による分娩後出血と診断された女性が登録され、ルーチンの子宮収縮薬注射とともにミソプロストール600μgを投与する群あるいはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。医師と患者には、治療の割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は無作為割り付け後60分以内の500mL以上の失血とし、intention-to-treat解析を行った。500mL失血率は両群とも14%、震え、発熱がミソプロストール群で高頻度に1,422人の女性が登録され、ミソプロストール群に705人が、プラセボ群には717人が割り付けられた。60分以内に500mL以上の失血がみられた女性の割合は、ミソプロストール群が14%(100/705人)、プラセボ群も14%(100/717人)であり、両群で同等であった(相対リスク:1.02、95%信頼区間:0.79~1.32)。身体の震えが、ミソプロストール群の65%(455/704人)にみられ、プラセボ群の32%(230/717人)に比し有意に高頻度であった(相対リスク:2.01、95%信頼区間:1.79~2.27)。38℃以上の発熱も、ミソプロストール群は43%(303/704人)と、プラセボ群の15%(107/717人)に比べ有意に多く認められた(同:2.88、同:2.37~2.50)。著者は、「本試験の知見により、分娩後出血の治療において標準的な子宮収縮薬注射の補助としてミソプロストール600μgを舌下投与する方法は支持されない」と結論し、「今後は、標準的な子宮収縮薬が使用できない状況におけるミソプロストールの有効性について研究を進めるべき」としている。(菅野守:医学ライター)

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