中国成人の糖尿病診断、HbA1c値を用いるなら6.3%が適切

提供元:ケアネット

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公開日:2010/06/11

 



糖尿病診断のHbA1c値について、中国での最適な基準値を特定することを目的とした多段階階層断面疫学調査が行われた。上海糖尿病センターのYuqian Bao氏らが、中国人成人4,886例のデータを解析した。BMJ誌2010年5月29日号(オンライン版2010年5月17日号)掲載より。結果、欧米で診断基準として使用されている6.5%以上よりも6.3%が優れていることが明らかになったという。なお、日本では5月末の第53回日本糖尿病学会で、診断基準「6.5%以上」(JDS値6.1%以上)で統一を図っていくことが発表されている。

上海住民4,886例のデータから、HbA1c値の感度、特異度を調査




調査は、2007年5月~2008年8月の間に上海市内6地点で集められた、糖尿病歴のない20歳以上中国人4,886例(男性1,828例、女性3,058例、平均年齢49.4歳)を対象に行われた。

糖尿病診断は、FPG値の基準(1999年版WHO基準)を用い、一方で測定したHbA1c値の診断検出力のパフォーマンス変化が最も高い閾値を検討した。両者の相関にはピアソン相関分析を用い、ROC曲線検定でHbA1c値の糖尿病診断の感度と特異度を調べた。

被験者全員を対象に検討された閾値は、標準値(5.8%以下)を上回った値の四分位範囲で4つの値(標準偏差SD値の各中央値をとって5.9%、6.3%、6.7%、7.1%とした)と、欧米での診断基準6.5%以上について行われた。また、6.0%~6.5%だった被験者を糖尿病ハイリスク群(3,639例)とし、6.0%、6.1%、6.2%、6.3%、6.4%、6.5%の閾値についても検討された。

6.3%の特異度が最も高く、感度はFPG値7.0mmol/Lと同等




ROC曲線検定から、診断未確定の糖尿病の検出力を示すAUC(ROC曲線下面積)は、HbA1c値単独で0.856(95%信頼区間:0.828~0.883)、空腹時血糖値単独は0.920(同:0.900~0.941)で、いずれからも有意差が認められた(P<0.001)。

全被験者の解析から特異度が最も高いHbA1c値は6.3%だった(特異度:96.1%、95%信頼区間:95.5~96.7)。6.3%の感度は62.8%で5.9%に次いで高く、FPG値7.0mmol/Lの感度57.5%(同:51.7~63.1)と同等だった。

ハイリスク群での検討で、6.3%の感度はFPG値7.0mmol/L以上および6.5%以上よりも有意に高かった。それぞれの感度は、6.3%が66.9%(同:61.0~72.5)、FPG値7.0mmol/L以上が54.4%(同:48.3~60.4)、6.5%以上が53.7%(同:47.6~59.7)だった(P<0.01)。

研究グループは、「中国人成人で診断未確定の糖尿病を検出するには、HbA1c値は6.3%の特異度が高く、感度はFPG値7.0mmol/Lを用いることと同等の検出力があった。FPG値あるいや経口ブドウ糖負荷試験のデータが入手不可能なときは、HbA1c値6.3%が診断基準として適切だろう」と結論している。