分娩後出血は、ミソプロストールを追加しても改善しない

提供元:ケアネット

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公開日:2010/06/03

 



分娩後出血の治療において、標準的な子宮収縮薬注射に加えミソプロストール(商品名:サイトテック)600μgを舌下投与しても、失血は改善されないことが、WHO(スイス)リプロダクティブヘルス研究部門のMariana Widmer氏らが、アジア、アフリカ、南米諸国の参加のもとに実施した無作為化試験で示された。分娩後出血は世界的に妊婦の罹病および死亡の主原因である。ミソプロストールは子宮収縮作用を持つプロスタグランジンのアナログ製剤であり、経口投与が可能で安定性に優れ、安価であるため治療選択肢として有望視されているという。Lancet誌2010年5月22日号掲載の報告。

5ヵ国の施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化試験




研究グループは、分娩後出血の治療として、標準的子宮収縮薬単独とこれにミソプロストールを補助的に併用する方法の効果を評価する二重盲検無作為化試験を実施した。

2005年7月~2008年8月までに、アルゼンチン、エジプト、南アフリカ、タイ、ベトナムの施設から、経膣分娩後に、臨床的に子宮弛緩による分娩後出血と診断された女性が登録され、ルーチンの子宮収縮薬注射とともにミソプロストール600μgを投与する群あるいはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。

医師と患者には、治療の割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は無作為割り付け後60分以内の500mL以上の失血とし、intention-to-treat解析を行った。

500mL失血率は両群とも14%、震え、発熱がミソプロストール群で高頻度に




1,422人の女性が登録され、ミソプロストール群に705人が、プラセボ群には717人が割り付けられた。

60分以内に500mL以上の失血がみられた女性の割合は、ミソプロストール群が14%(100/705人)、プラセボ群も14%(100/717人)であり、両群で同等であった(相対リスク:1.02、95%信頼区間:0.79~1.32)。

身体の震えが、ミソプロストール群の65%(455/704人)にみられ、プラセボ群の32%(230/717人)に比し有意に高頻度であった(相対リスク:2.01、95%信頼区間:1.79~2.27)。38℃以上の発熱も、ミソプロストール群は43%(303/704人)と、プラセボ群の15%(107/717人)に比べ有意に多く認められた(同:2.88、同:2.37~2.50)。

著者は、「本試験の知見により、分娩後出血の治療において標準的な子宮収縮薬注射の補助としてミソプロストール600μgを舌下投与する方法は支持されない」と結論し、「今後は、標準的な子宮収縮薬が使用できない状況におけるミソプロストールの有効性について研究を進めるべき」としている。

(菅野守:医学ライター)