ST上昇型急性心筋梗塞の再潅流、ガイドライン勧告時間外の実施で30日死亡リスクは2倍超

提供元:ケアネット

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公開日:2010/06/15

 



ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)に対し、フィブリン溶解など再潅流治療をガイドライン勧告時間外に実施した場合、30日死亡リスクは、2倍超に増大することがわかった。カナダQuebec Healthcare Assessment AgencyのLaurie Lambert氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2010年6月2日号で発表した。STEMI患者に対する、迅速な再潅流治療実施の重要性については知られているが、実際の医療現場における、実施までの経過時間とアウトカムとの関係を評価したものはほとんどないという。

勧告時間外の再潅流治療実施で30日死亡リスクは2.14倍




Lambert氏らは、2006~2007年にかけて、ケベック州における急性心筋梗塞治療の95%以上を担う、80ヵ所の病院で試験を行った。

その結果、試験期間中にSTEMI患者で再潅流治療を行ったのは1,832人で、うちフィブリン溶解が392人(21.4%)、主要経皮的冠動脈血管形成術(PPCI)が1,440人(78.6%)だった。

フィブリン溶解を行った患者のうち、ガイドライン勧告の30分以内に実施できなかったのは54%だった。またPPCI実施患者のうち、同勧告の90分以内に実施できなかったのは68%だった。

両治療群を合わせると、ガイドライン勧告時間内に治療を実施しなかった群の補正後30日死亡リスクは6.6%と、時間内に治療を行った群の3.3%に比べ、有意に高率だった(オッズ比:2.14、95%信頼区間:1.21~3.93)。

なお、1年後死亡リスクについては、両群で有意差はみられなかった(オッズ比:1.61、同:1.00~2.66)。

1年後死亡や再入院、時間外実施でリスクは1.57倍に




1年後の死亡と、うっ血性心不全や急性心筋梗塞による再入院の統合アウトカムの発生率も、再潅流治療を勧告時間内に実施しなかった群は15.0%、実施した群は9.2%と、実施しなかった群で有意にリスクが高かった(オッズ比:1.57、同:1.08~2.30)。

ケベック州において、STEMI患者で再潅流治療を時間内に実施する人の割合が10%増すごとに、地域の30日死亡率は20%程度減少する計算になった(オッズ比:0.80、同:0.65~0.98)。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)