RCT論文、「有意差なし」なのにタイトル曲解18%、要約結論曲解58%

提供元:ケアネット

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公開日:2010/06/08

 



無作為化コントール試験(RCT)の論文で、主要アウトカムで統計的有意差がみられなかったにもかかわらず、筆者により内容がゆがめられた曲解表現が使われていた論文タイトルが18%、またアブストラクトの結論部分で曲解表現が使われていたのは58%あったことが報告された。英国オックスフォード大学のIsabelle Boutron氏らが、2006年12月までに発表されていた616のRCT論文について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年5月26日号で発表している。有意差のみられなかった試験結果を報告する際、筆者が意識・無意識にかかわらず、読者に誤解を与えるようなゆがんだ表現を使うことがあることは知られていたが、この点について体系的に評価をした研究はほとんどなかった。

主要アウトカムに有意差のない、72のRCTを調査




同氏らは、2007年3月、MEDLINEを使い、2006年12月までに発表されていた616のRCT論文を抽出した。そのうち、パラレル比較をしたRCTで、明記された主要アウトカムの結果が、p値0.05以上と統計的有意差がみられなかったのは、72試験だった。

それらの論文について、「spin」(スピン)と呼ばれる、統計的有意差がないにもかかわらず、実験的治療が有効であるような印象を与える表現や、有意差のない結果から読者の注意をそらすような表現の有無について、詳しく調査した。

4割以上の論文で、本文の「結果」「ディスカッション」「結論」のいずれか2ヵ所に歪曲表現




その結果、72試験のうち、論文タイトルにスピンがみられたのは13論文(18.0%、95%信頼区間:10.0~28.9)だった。また、論文アブストラクトの結果にスピンが認められたのは27論文(37.5%、同:26.4~49.7)、結論部分にあったのは42論文(58.3%、同:46.1~69.8)だった。なかでも17論文(23.6%、同:14.4~35.1)では、結論部分で治療の効用についてのみ論じられていた。

またスピンが、論文本文の「結果」「ディスカッション」「結論」部分でみられた論文は、それぞれ、21論文(29.2%)、31論文(43.1%)、36論文(50.0%)だった。これらの2ヵ所以上の部分にスピンがみられた論文は、40%超に上った。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)