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コリンエステラーゼ阻害薬の副作用、全世界の報告を分析

 アルツハイマー病(AD)に対してコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)が臨床使用できるようになって以来、AD患者におけるChEIの副作用スペクトラムを評価する世界的な医薬品安全性監視(ファーマコビジランス)研究は実施されていない。カナダ・ラバル大学のEdeltraut Kroger氏らは、WHO国際医薬品モニタリングプログラムのデータベース(VigiBase)を用い、16年にわたるADにおけるChEI関連副作用を分析した。その結果、精神神経系障害の副作用が最も多いこと、心血管系障害の副作用の重要性が過小評価されていた可能性があることなどを示した。結果を踏まえ、著者らは「患者のフレイルや高頻度の併用薬使用によっては、ChEIの投与を開始する前に副作用について注意が必要である」とまとめている。Annals of Pharmacotherapy誌2015年11月号(オンライン版2015年8月31日号)掲載報告。コリンエステラーゼ阻害薬関連副作用を抽出して分析 研究グループは、1998年~2013年の間に5大陸からVigiBaseへ報告されたすべてのChEI(ドネペジル、リバスチミン、ガランタミン)関連副作用を抽出し、全般的な副作用、重篤な副作用、重篤でない副作用に関して分析した。 主な結果は以下のとおり。・58ヵ国から合計1万8,955件(副作用件数4万3,753件)の報告があった(女性60.1%、平均年齢77.4±9.1歳)。・欧州(47.6%)と北米(40.4%)からの報告が多くを占めた。・ほとんどの報告に、リバスチグミンとドネペジルが含まれていた(それぞれ41.4%)。・副作用は精神神経系障害(31.4%)が最も多く、胃腸障害(15.9%)、全身障害(11.9%)、心血管障害(11.7%)が続いた。・2006~13年の報告は、重篤でない副作用よりも重篤な副作用が多かった。重篤な副作用は精神神経系障害(34.0%)が最も多く、全身障害(14.0%)、心血管系障害(12.1%)、胃腸障害(11.6%)であった。・投薬過誤は重症例の2.0%で報告された。・死亡例は全体の2.3%であった。関連医療ニュース 抗認知症薬は何ヵ月効果が持続するか:国内長期大規模研究 認知症治療、薬物療法にどの程度期待してよいのか 抗認知症薬4剤のメタ解析結果:AChE阻害薬は、重症認知症に対し有用か?

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重症肺気腫に気管支バルブ治療は有用か/NEJM

 気管支バルブ治療が葉間側副換気がない重症肺気腫患者の、肺機能および運動耐容能を有意に改善したことが、オランダ・フローニンゲン大学のKarin Klooster氏らによる無作為化試験の結果、報告された。一方向性の気管支バルブを用いた気管支鏡下肺容量減少療法は、重症肺気腫患者の治療として有望視されているが、これまでに報告された有益性はわずかなものであった。一方で先行研究において、葉間側副換気がない患者における有益性の可能性が示唆されており、研究グループはその仮説について検証した。NEJM誌2015年12月10日号掲載の報告。葉間側副換気がない重症肺気腫患者を対象に、標準内科治療と比較 試験は、葉間側副換気がない重症肺気腫患者を、気管支鏡下で行う気管支バルブ治療(EBV)群または継続的標準内科治療(対照)群に無作為に割り付けて行った。 主要アウトカムは、1秒量(FEV1)、努力肺活量(FVC)、6分間歩行距離の、ベースラインから6ヵ月時点までの変化であった。 試験には患者84例が参加。そのうち側副換気が認められた13例と、気管支バルブが肺葉に未到達であった3例の計16例を除外し、68例についてintention-to-treat解析にて評価した。同被験者(EBV群34例、対照群34例)は、年齢59±9歳、女性が46例。ベースラインにおけるFEV1は予測値の29±7%、FVCは同77±18%、6分間歩行距離は374±86mであった。6ヵ月時点でFEV1、FVC、6分間歩行距離の有意な増大を確認 解析の結果、ベースラインから6ヵ月時点の変化について、EBV群が対照群よりも有意に大きな改善が認められた。EBV群が対照群よりも、FEV1は140mL(95%信頼区間[CI]:55~225)、FVCは347mL(同:107~588)、6分間歩行距離は74m(同:47~100)、それぞれ増大が認められた(すべての比較のp<0.01)。 6ヵ月間に報告された重篤有害事象は、対照群5例、EBV群は23例であった(p<0.001)。また、EBV群で1例の死亡が報告。EBV群における重篤な治療関連有害事象は、気胸(18%)、バルブの置換(12%)または除去(15%)を要したイベントなどであった。

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高齢者のSU薬とワルファリンの併用、低血糖リスク増大/BMJ

 高齢者のワルファリンとスルホニル尿素薬(SU薬)の同時服用は、SU薬単独服用時に比べ、低血糖による病院救急部門受診・入院リスクを約1.2倍に増大することが、また、転倒リスクも約1.5倍に増大することが明らかにされた。米国・南カリフォルニア大学のJohn A. Romley氏らが、65歳以上のメディケア出来高払いプラン加入者の保険請求データを基に後ろ向きコホート試験を行った結果、示されたという。著者は、「結果は、これら薬物間の重大な相互作用の可能性を示唆するものだ」と指摘している。BMJ誌オンライン版2015年12月7日号掲載の報告。2006~11年の保険請求データを基に併用群 vs.SU薬単独群を分析 研究グループは、メディケア出来高払いプラン加入者の20%に相当する保険請求データを基に、SU薬(glipizideまたはグリメピリド)服用高齢者において、ワルファリンの併用が、低血糖などによる病院救急部門受診または入院リスク増大と関連するのかを調べた。被験者は、2006~11年にSU薬を処方されていた46万5,918例。そのうちワルファリンを処方されていたのは、7万1,895例(15.4%)だった。 主要評価項目は、ワルファリンとSU薬を同時処方されていた四半期(併用群)と、SU薬のみ処方されていた四半期(単独群)とで比較した、低血糖による病院救急部門受診または入院の発生率だった。多変量ロジスティック回帰法にて各被験者特性を補正し分析した。併用群で低血糖1.22倍、転倒1.47倍、精神状態関連1.22倍 結果、低血糖による病院救急部門受診または入院の発生は、併用群1,903件/393万8,939人・四半期、単独群は294件/41万6,479人・四半期で、併用群が有意に高率だった(補正後オッズ比[OR]:1.22、95%信頼区間[CI]:1.05~1.42)。 その中でも同時服用による低血糖発症リスクは、ワルファリンを初めて服用する人や、65~74歳の人で高かった。 また、ワルファリンとSU薬の同時服用時は、転倒(補正後OR:1.47、95%CI:1.41~1.54)や変性意識状態・精神状態関連(同:1.22、1.16~1.29)の病院救急部門受診や入院リスクについても、SU薬単独服用時に比べて有意に高率だった。なお、結果について著者は、ワルファリン使用と重症低血糖の関連については交絡因子の存在が否定できないこと、また今回の所見をもって高齢者全般について言えるものではないとしている。

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血栓吸引療法に引導は渡ったか?TOTAL試験1年追跡(解説:香坂 俊 氏)-463

このところ血栓吸引療法の旗色がよろしくない。 (1)急性心筋梗塞では冠動脈内でプラークが破裂し、血栓を形成する (2)その血栓はバルーンやステントを行う前に吸引しておいたほうが良さそうだ (3)実際、小規模のランダム化試験ではうまくいった(TAPAS試験)この三段論法で、とくに日本のカテーテルインターベンション(PCI)の現場では広く行われてきた。自分たちでもKiCSという関東一円の多施設共同PCIレジストリで集計してみたところ、ST上昇心筋梗塞症例に対するPCIの実に65.4%で血栓吸引が行われていた1)。ただ、2年ほど前にヨーロッパよりレジストリベースのRCT(レジストリに登録するとほぼ自動的にランダム化される)であるTASTE試験(北欧諸国)の結果が公表され、30日でまったく予後に差が認められなかった2)。これに続き、国際共同TOTAL試験(全世界20ヵ国)でも180日予後に差が認められず3)、これはにっちもさっちもいかないというところで、今回発表されたのが最後のTOTAL試験の長期フォロー結果(1年間)である。実は、TASTE試験やTOTAL試験の短期の結果をみたときに、遠位塞栓やST偏位など、血栓吸引で「改善した」というSurrogate項目(代理項目:メインの試験のターゲットではなかったが、臨床的に有用と考えられる項目)もあるにはあった。よって、長い期間追跡すれば血栓吸引の良さが検出されるのではないかと期待されたのであるが、その結果は下図のとおりであった。これほど見事に一致したカプランマイヤー曲線はそうみることはできない。ハザード比[HR] 1.00というのもドンピシャリである。この結果を踏まえて思うことは、この試験のinvestigatorたちがきわめて見事にランダム化を成し遂げたということであり、そのうえでやはり血栓吸引には明確な予後改善効果は認められない、ということである。論文の中には種々のサブグループ解析の結果も記載されているが、これも見事にハザード比1.0を軸にトーテムポールを形成している(下図)。図 サブグループ解析のForest Plot。赤線部がハザード比1.0を軸とした「トーテムポール」であり、とくに血栓吸引療法が有効性を示したサブグループがないことを示している。 これを踏まえてどう考えるか? ルーチンの血栓吸引療法の使用には引導が何重にも渡されており、自分としては現状の使用は少し行き過ぎているのではないかと思う。循環器内科ではしばしば病気が「見え過ぎる」ために、医師が手を出し過ぎてしまうことが起こる(アレとか、コレとか)。血栓吸引も、これは吸い出しておいたほうが良いだろうと現場判断で動くこともあるだろうが、65%の使用率というのは高い。自分たちの解析でも、STEMIよりもNSTEMI(非ST上昇心筋梗塞)、NSTEMIよりもUA(不安定狭心症)で血栓吸引の成績は(さらに)悪く、根本的に見直さなければならない時期に来ているように思える。

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ADHD発症にトリプトファンが関連か

 ノルウェー・ベルゲン大学のTore Ivar Malmei Aarsland氏らは、成人の注意欠如・多動症(ADHD)とトリプトファンおよびその代謝物の血清中濃度との関連を検討した。その結果、トリプトファン、キヌレン酸、キサンツレン酸、3-ヒドロキシアントラニル酸などの血清中濃度低値、およびコチニンの血清中濃度高値がADHDと有意に関連していたことを報告した。必須アミノ酸のトリプトファンは、主にキヌレニン経路によって異化される。一方で、慢性炎症状態およびうつ病や統合失調症などいくつかの神経精神障害において、循環血中キヌレニン濃度に変化が認められるとの報告があり、また候補遺伝子研究により、キヌレニン異化に関連する遺伝子とADHDとの関連が示唆されていた。さらに、ADHD患者はうつ病や不安をしばしば併存していることが報告されており、研究グループは、ノルウェーの成人ADHD患者および成人対照における血清キヌレニン濃度を検討した。Behavioral and Brain Functions誌2015年11月号の掲載報告。 成人ADHD患者133例と成人対照131例(18~40歳)において、トリプトファンおよび7種類のトリプトファン代謝物であるキヌレニン、キヌレン酸、アントラニル酸、3-ヒドロキシキヌレニン、キサンツレン酸、3-ヒドロキシアントラニル酸、キノリン酸の血清中濃度を比較した。リボフラビン(ビタミンB2)、総ビタミンB6およびニコチン代謝物コチニンについても測定した。質量分析法により血清サンプルを分析。患者および対照は、併存疾患と過去(幼少期)および現在のADHD症状について、Wender Utah Rating Scale(WURS)およびAdult ADHD Self-report Scale(ASRS)を用いて報告した。各代謝物の血清濃度別に、ADHD診断に対するオッズ比をロジスティック回帰により算出。さらに、スピアマン相関分析を用いて、トリプトファンおよびキヌレニンの血清中濃度とADHD症状スコアとの関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・トリプトファン(オッズ比:0.61、95%信頼区間:0.45~0.83)、キヌレン酸(0.73、0.53~0.99)、キサンツレン酸(0.65、0.48~0.89)、3-ヒドロキシアントラニル酸(0.63、0.46~0.85)の血清中低濃度、およびコチニン(7.17、4.37~12.58)の血清中高濃度は、いずれもADHDと有意に関連していた。・トリプトファン濃度で補正後、3-ヒドロキシアントラニル酸とコチニンのみ有意な関連がみられた。・喫煙と年齢で補正すると、トリプトファンおよびキヌレニンの低濃度は、総ASRSスコア高値および総WURSスコア高値と関連していた。・以上より、成人ADHD患者と成人対照とでは、トリプトファンおよびキヌレニンの血清中濃度に違いがある可能性が示唆された。・本知見においてADHDにおける慢性免疫活性は示されていないが、ADHDの発症機序および血清中濃度の相違による臨床的意義について、さらに探索を進めるべきと思われた。関連医療ニュース 9割の成人ADHD、小児期の病歴とは無関係 成人ADHDをどう見極める 2つのADHD治療薬、安全性の違いは

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「怠薬防止」に統合失調症治療のカギあり

 「統合失調症のリカバリー実現に向けた有力な治療選択肢」というテーマで、大塚製薬株式会社主催のプレスセミナーが2015年12月9日に開催された。統合失調症患者は社会コミュニティに参加できないことも多く、患者は苦しみを抱えている。患者のQOLを向上し、健常人と変わりない生活を続けてもらう、いわゆる「リカバリー」を実現するためには、どのような点が重要となるのだろうか。統合失調症治療のゴールは「リカバリー」 昨年5月、アメリカ精神医学会から「Schizophrenia:time to commit to policy change」という宣言が出された。そのなかで、統合失調症治療は「リカバリー」を目指すことが重要だということが示された。 リカバリーは「症状を回復させ、健常者とほぼ変わらない生活を維持すること」を指し、統合失調症治療の目指すべきゴールとして最近用いられている概念である。統合失調症は、考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続く疾患で、その症状が原因で学校・会社を辞めるケースも多く、患者は日常生活・社会生活に大きな支障を抱えている。そのため治療においては健常者とほぼ変わらない生活を維持すること、つまり「リカバリー」を目指すことが重要である。「怠薬」がリカバリーを困難にする原因 一方で、リカバリーは非常に難しいといわれている。初めて治療を開始する統合失調症患者118例の追跡調査では、5年間の累積リカバリー到達率はわずか13.7%ときわめて低かった。1) リカバリーを目指すうえで重要となるのが「再発させない」ことだ。再発を起こす要因にはさまざまなものが挙げられるが、なかでも大きな原因となっているのが「怠薬」である。実際、「服薬を中断すると再発リスクは約5倍になる」と示唆されている。2)怠薬に関しては、「服薬アドヒアランスは1ヵ月で20%悪化、その後経時的に悪化する」「患者の約半数がときどき服薬するのを忘れる」などのデータが報告されている。3,4) しかし、患者の服薬アドヒアランスを確認することは難しい。服薬モニタリングシステムを用いた研究では、服薬アドヒアランス不良の患者は57%であったのに対し、医師が服薬アドヒアランス不良を把握していた患者の割合は7%であった。5)「怠薬」させないポイントとは? では「怠薬」を防ぐにはどうしたらよいか。セミナーで講演した、藤田保健衛生大学医学部 精神神経科学講座 教授 岩田 仲生氏は、「服薬アドヒアランスが良好でないのであれば他の許容可能な薬剤を考慮することも必要であり、その選択肢の1つとして持続性注射剤(LAI)が挙げられる」と語る。 注射剤のLAIは4週間に1度の来院で投薬が済むため、患者にとって大きなメリットとなる。患者アンケートではLAIを「ぜひ試したい」「試しても良い」が41%となっており、その一番の理由が「4週間に1回の通院が楽」であった。6) またLAIは再発のリスクを抑制したというデータも得られている。7) しかし、LAIは日本ではあまり使用されない傾向にある。LAIが広まらない一番の原因としては、「患者がLAIを知らない」「医師がLAIでの成功体験が少ない」ことがあると岩田氏は話す。患者におけるLAIの浸透、そして医師にもLAIをもっと理解してもらうことが、今後のLAIの課題といえる。 統合失調症患者をリカバリーまで到達させるためには「服薬アドヒアランスの向上」が大きなカギを握っている。そのためには、患者の訴えに耳を傾け、患者の希望やライフスタイルに合わせて処方をカスタマイズすることが非常に重要である。■参考1)Robinson DG, et al. Am J Psychiatry. 2004; 161: 473-479.2)Robinson D, et al. Arch Gen Psychiatry. 1999; 56: 241-247.3)趙 岳人, 岩田仲生ほか. 臨床精神薬理. 2011; 14(9).4)Dibonaventura M, et al. BMC Psychiatry. 2012; 12: 20.5)Byerly MJ, et al. Psychiatr Serv. 2007; 58: 844-847.6)西尾洋平, 亀井浩行:アリピプラゾール持続性注射剤発売時の患者アンケートより7)Hogarty GE, et al. Arch Gen Psychiatry. 1979; 36: 1283-1294.

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成人T細胞白血病・リンパ腫〔ATLL : adult T-cell leukemia-lymphoma〕

1 疾患概要■ 概念・定義成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)は、レトロウイルスであるヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)に感染したT細胞が、腫瘍化して起こる悪性腫瘍である。■ 疫学HTLV-1の推定感染者数は最近の統計では108万人で、以前より減少傾向にあるとされる。しかしながら、1,000人/年ほどのATLLの発症数があるとされている。九州、沖縄のほか、紀伊半島、三陸海岸、北海道などの沿海地域に感染者数の多い地域がある。また、人口の移動に伴い東京・大阪などの大都市圏での感染者も増えている。HTLV-1の感染経路としては母児感染(主に母乳を介する)、輸血(現在はスクリーニングにより新たな感染はない)、性的接触などがある。HTLV-1感染者が生涯にわたって、ATLLを発症するリスクは5%程度と考えられており、通常、40年近い潜伏期間を経て発症するので、発症年齢中央値は70歳前後と高齢である。■ 病因HTLV-1のpX領域にコードされるTax遺伝子やpX領域のマイナス鎖にコードされるHBZなどが、HTLV-1感染T細胞の不死化や細胞増殖に関与していると考えられている。キャリアの状態では、これらの遺伝子の働きによる細胞増殖と宿主の免疫とのバランスがとれているが、新たな遺伝子異常が加わることや宿主免疫に異常を来すことが、腫瘍化に関与していると考えられている。■ 症状(表)画像を拡大する1)血液中異常細胞(フラワー細胞)出現ATLLの典型的な血液腫瘍細胞の形態は、強い分葉のある核をもつフラワー細胞である。多くの場合、CD4+、 CD25+で、CD7発現が消失していることが多い。2)リンパ節腫大・肝脾腫3)皮膚病変紅斑や腫瘤などがみられる。4)高カルシウム血症ATLL細胞が、血清カルシウム値を上昇させる副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)を産生するために起こる。高カルシウム血症のため全身倦怠感、多尿、腎障害、意識障害を来す。5)日和見感染症ATLL患者では、正常T細胞の減少がみられ、その結果として細胞性免疫低下に関連した日和見感染症(帯状疱疹、サイトメガロウイルス感染症、ニューモシスチス感染症、各種真菌症、糞線虫症などの寄生虫感染症など)を起こしやすい。■ 予後急性型・リンパ腫型の予後は、きわめて不良とされている。最近行われた多施設後方視研究では、生存期間中央値7.7ヵ月であった。Ann Arbor分類で病期3以上、身体活動度2以上、年齢・血清アルブミン、可溶性IL-2受容体などの連続変数からなるATL予後指数が報告されており、高・中間・低リスク群での生存期間中央値はそれぞれ3.6、7.3、16.2ヵ月、2年生存割合は4、17、39%であった。しかし、同種造血幹細胞移植施行例では、一定の割合で長期無増悪生存が得られ、治癒が期待できる。慢性型・くすぶり型の患者の予後は、従来良好とされていたが、長崎大学からの報告では生存期間中央値4.1年で5、10、15年生存割合はそれぞれ、47.2、25.4、14.1%と必ずしも予後良好とはいえない結果であった。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)さまざまな症状で医療機関を受診した際に、一般血液検査で白血球増加症、とくに末梢血塗抹標本でフラワー細胞の出現がみられたり(図)、異常T細胞の増加がみられた場合にATLLが疑われる。このほか、リンパ節腫大の鑑別診断も挙げられる。画像を拡大する日本人でリンパ節や節外病変の生検でT細胞リンパ腫と診断された際には、ATLLの可能性を鑑別する必要がある。特徴的な検査値異常として、可溶性IL-2受容体(sIL-2R)高値、血清カルシウム高値などがある。1)HTLV-1抗体まず、粒子凝集(PA)法や化学発光法などによる、スクリーニング検査を行う。ただし、これらの検査は、高感度であるものの偽陽性の可能性があるため、確認検査としてウエスタンブロット(WB)法を行う。2)HTLV-1プロウイルスDNA定量(保険未収載)WB法で判定保留の際に、HTLV-1感染の有無を確認するために用いられる。3)リンパ節生検・皮膚生検他疾患との鑑別のため、腫大リンパ節や皮膚などの節外病変の生検を行い、病理組織検査、フローサイトメトリー、染色体検査、HTLV-1プロウイルスDNAサザンブロットなどを行う。4)骨髄検査骨髄浸潤を確認するために行われる。白血病化している場合でも、骨髄中の腫瘍細胞は目立たないことが多い。5)HTLV-1プロウイルスDNAサザンブロット(保険未収載)HTLV-1感染患者に発症したT細胞腫瘍をATLLとみなすこともあるが、ATLLと正確に診断するためには、腫瘍細胞でHTLV-1が単クローン性に増殖していることをサザンブロットにより確認する。6)フローサイトメトリーATLL細胞は形態的には、正常リンパ球との区別が困難な場合があるため、フローサイトメトリーで異常な免疫形質のT細胞集団の有無を確認する。ATLL細胞の典型的な免疫形質は、CD3+、CD4+、CD7-、CD8-、CD25+、CCR4+である。7)画像検査・内視鏡検査病変の広がりを確認するため、CT、PET-CT、上部消化管内視鏡検査などを行う。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 急性型・リンパ腫型アントラサイクリン系抗腫瘍薬を用いた多剤併用化学療法を行う。初回多剤併用化学療法としては、mLSG15(VCAP-AMP-VECP)療法、CHOP療法、EPOCH療法などが用いられている。また、中枢神経再発予防として抗腫瘍薬の髄注を行う。65~70歳未満の患者では、多剤併用化学療法に引き続いて、同種造血幹細胞移植を行うことが勧められる。このため治療開始とともにドナー検索も進めていく。血縁者にHLA一致同胞ドナーがいる場合には血縁者間同種移植、ドナーがいない場合には非血縁者間骨髄移植や臍帯血移植の可能性を検討する。移植前処置として、50~55歳未満で臓器障害のない患者では骨髄破壊的前処置、50~55歳以上の患者や臓器障害のある患者などでは、強度減弱前処置が用いられることが多い。年齢・臓器障害などのために多剤併用化学療法が行えない場合には、経口抗腫瘍薬を投与する。エトポシド(商品名:ベプシド、ラステット)、ソブゾキサン(同:ペラゾリン)などが用いられることが多い。CCR4陽性の再発・治療抵抗性例に対して、抗CCR4抗体モガムリズマブ(同:ポテリジオ)が治療選択肢となる。なお、CCR4陽性ATLL初発例に対して、モガムリズマブ併用mLSG15療法の臨床試験の結果が報告されており、mLSG15療法単独と比較して完全奏効割合が高くなることが示されている。■ くすぶり型、予後不良因子を伴わない慢性型無治療で経過観察を行い、進行がみられた時点で治療を開始するのが一般的である。しかし、これらの病型の患者の予後が必ずしも良好でないことから、インターフェロンα/ジドブジン(同:レトロビル)併用療法による介入治療の意義をみるため、ランダム化第3相試験が行われている(2015年12月)。皮膚病変を有する患者では、外科的切除、放射線療法、PUVA療法などの局所療法が行われる。■ 予後不良因子のある慢性型慢性型でもLDH>正常値上限、BUN>正常値上限、アルブミン<正常値下限、に該当する場合には予後不良とされるため、急性型・リンパ腫型と同様の治療が行われることが多い。4 今後の展望妊婦健診の導入や献血時のスクリーニングによって、今後、新たなHTLV-1感染は減少することが期待される。しかし、100万人近くいるHTLV-1感染者からのATLLの発症は今後も続くと思われる。同種造血幹細胞移植によって、ATLL患者の一部で治癒が期待できるようになったことは画期的であり、ATLLに対する同種免疫効果が有効であることを強く示唆する。同種移植については、今後も有利な移植片源や前処置を探る研究が引き続き必要だろう。一方、多くのATLL患者は高齢であったり、初回化学療法に対して抵抗性であったりして、同種造血幹細胞の恩恵を得られていない現状もある。抗CCR4抗体モガムリズマブの位置づけの検討や、さらなる新規治療薬の開発が重要な課題であろう。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療に関する情報HTLV-1情報サービス(厚生労働省科学研究費補助金 がん臨床研究事業 「HTLV-1キャリア・ATL患者に対する相談機能の強化と正しい知識の普及の促進」)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報グループ・NEXUS(悪性リンパ腫の患者、患者家族の全国団体の情報)1)Shimoyama M, et al. Br J Haematol.1991;79:428-437.2)Tsukasaki K, et al. J Clin Oncol.2009;27:453-459.3)Katsuya H, et al. J Clin Oncol.2012;30:1635-1640.4)Tsukasaki K, et al. J Clin Oncol.2007;25:5458-5464.5)Ishitsuka K, et al. Lancet Oncol.2014;15:e517-526.公開履歴初回2013年07月18日更新2015年12月22日

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医師が選んだ「2015年の漢字」を発表!【CareNet.com会員アンケート結果発表】

12月15日に日本漢字能力検定協会が発表した『今年の漢字』では、「安」が1位に選ばれました。ところで、今年の世相を表す漢字について、医師に聞いてみたらどんな結果になるのでしょうか?CareNet.com医師会員を対象に募集したところ、1位に選ばれたのは「乱」でした。2位以下にランクインした漢字にも、今年らしさがよく表れています。アンケートの結果から、トップ5を発表します。※発表にあたって今年もケアネットの達筆社員が筆を執りました。書を持つ5人も弊社社員です。1位乱安保法案可決やマイナンバー法施行による政治の混乱、東京オリンピックのエンブレム騒動、ISによる数々の人質事件やテロ事件など。今年も多くの出来事が物議を醸したり恐怖に陥れたり、何かと「混乱」の一年だったというコメントが、「乱」の字を挙げた先生方からいくつも寄せられました。世の中と、そして人々の心の動揺までもを言い表すかのような一文字ですね。 「乱」を選んだ理由(コメント抜粋)安保闘争、ISISなど何かと乱れた1年だったように思います。(30代 呼吸器内科医/富山県)安保法、マイナンバーなど国民の理解が進まないまま乱立したため。それによって混乱をきたしているから。(30代 整形外科医/福岡県)安全保障問題、TPPや無差別テロなどで世の中が混乱している様に感じる。(40代 消化器外科医/沖縄県)安全保障問題、自然災害や大きな飛行機事故や船舶事故、ISのテロ行為など、世の中を混乱させる事柄が多かった様に思うからです。(50代 内科医/広島県)宗教戦争とはいいませんが、あまりにも寛容さがなさ過ぎます。経済・政治・宗教の混乱が「ごちゃごちゃ感」があり、選びました。(60代 内科医/東京都)2位戦第2位に選ばれた「戦」も、安保法案や沖縄の米軍基地移設問題など、戦争を想起させるため、この字を選んだというご意見が多く寄せられました。もう1つ、ラグビー日本代表の活躍と五郎丸歩選手の人気というポジティブなイメージをこの字に当てはめているというコメントもいくつかありました。 「戦」を選んだ理由(コメント抜粋)安全保障関連法案や沖縄辺野古基地移転など戦争に関する話題が多かったのに加えて、ラグビーのようにスポーツにおける戦いで躍進があったため。(40代 脳神経外科医/大阪府)世界中で戦争がなくならないのは厳然とした事実です。その中で、憲法9条だけでは国民の命を守れない事に目を向けるようになった転機の年です。(50代 内科医/広島県)ISによる人質事件に始まり、今回のパリのテロなど、テロ組織の「戦い」に明け暮れた一年だったように思います。安全保障法制も「戦」争法案と騒がれたこともあります。(50代 内科医/和歌山県)安全保障法案の成立やISのテロ、人質殺害など戦争の機運が高まるニュースが多かった。(20代 泌尿器科/群馬県)3位偽横浜のマンション杭打ちデータ偽装、欧州自動車大手の排出ガスデータ改ざん問題、国内大手電機メーカーの粉飾決算など、今年も数々の偽装の発覚が目立ちました。それを物語るかのような一文字です。このようなニュースはなかなかなくならないですね。 「偽」を選んだ理由(コメント抜粋)ここ毎年、この漢字しか思いつかない。(40代 外科医/京都府)東芝の粉飾決算、東京五輪エンブレムパクリ、マンション杭打ちデータ偽装、ギリシアの借金問題、フォルクスワーゲンの排気ガスデータ偽装……などなど。(30代 消化器内科医/静岡県)くい打ちデータ改ざんをはじめとして、日本の物作りは高品質であると思っていたものが、そうではないということが明らかとなったニュースが多いため。(40代 医師/山口県)4位争過激派組織ISが次々に仕掛けた人質事件やテロ事件に、世界中が恐怖に陥れられることが多かったこの一年を表している漢字です。また、安保法案や中国との領土問題など国内外の政治に関しても「争」の字を想起させるというご意見も多く寄せられました。 「争」を選んだ理由(コメント抜粋)国同士の争いやISの問題、TPPもまた争いであろう。(30代 小児科医/愛知県)戦争法案可決、パリでのテロ、ISの台頭、中国の南・東シナ海の侵攻など戦争や争いごとを感じる一年だったから。(40代 精神科医/岡山県)今年もあちこちで起こっている様々な争い。フランスの同時多発テロ、争いの負のスパイラルは繰り返されます。(50代 整形外科医/新潟県)5位安日本漢字能力検定協会発表の『今年の漢字』に選ばれた「安」は、CareNet.com医師会員では5位にランクイン。安倍政権の下で安保法案が可決されたという2つの「安」という意味を含んでいるようです。ほかにも、流行語大賞のトップ10に入ったお笑い芸人のセリフが連想されるというコメントもありました。 「安」を選んだ理由(コメント抜粋)安保関連法、ISによるテロ、マイナンバーの安全性に対する懸念など、安全、安心に関する事柄が多かった印象があるため。(40代 糖尿病・代謝・内分泌内科医/北海道)安保関連法案、安心してください、など。(30代 放射線科医/富山県)円安、安倍総理、安保にちなんで。(60代 呼吸器内科/埼玉県) アンケート概要アンケート名 :『医師が選ぶ!今年の漢字』実施日    :2015年11月18日調査方法   :インターネット対象     :CareNet.com会員医師有効回答数  :1,016件

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うつ病の新規発症予防へ、早期介入プログラム

 うつ病の新規発症への認知行動予防(CBP)プログラムは、早期に開始するほど有効であり、6年後も明らかな効果がみられるなど持続的効果があることが明らかにされた。米国・ピッツバーグ大学医学部のDavid A. Brent氏らが、通常ケアと比較した無作為化比較試験の結果、報告した。両親がうつ病歴を有する子供は、青年期にうつ病や機能障害を発症するリスクがある。しかし、青年期うつや機能障害に対する予防プログラムの長期効果については知られていなかった。今回の結果を踏まえ、著者らは「CBPの効果は、ブースターセッションの追加や両親のうつ病に対する同時治療により増強される可能性がある」と述べている。JAMA Psychiatry誌2015年11月号の掲載報告。 研究グループは、CBPプログラムがうつ病エピソードの発生を減少させるか、うつ症状のない日を増加させるか、そして実施6年後の発達能改善に寄与するかどうかを調べるため、CBP+通常ケアと通常ケア単独を比較検討した。健康維持組織(HMO)、大学医療センター、地域のメンタルヘルスセンターなど4ヵ所で被験者を登録。年齢13~17歳で、少なくともどちらか一方の親に現在あるいは過去にうつ病エピソードあり、被験者自身は現時点でうつ病エピソードはないが、亜症候性うつ症状を有するか、過去にうつ病エピソードがあり現在は寛解している症例を適格とした。CBPプログラムは、週1回90分のグループセッションを8回、以降は継続セッションを月1回6回実施した。通常ケアは、家族主導によるメンタルヘルス治療とした。主要アウトカムは、うつ病エピソードの新規発症で、うつ症状評価スケールを用いて評価した。また同スケールで、うつ症状のない日を算出した。改訂Status Questionnaireで、青年期における発達能(例:学術的あるいは対人関係)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・2003年8月~06年2月に被験者316例を登録。介入後、75ヵ月間追跡し(維持率88%)、2014年8月~15年6月に解析を行った。・登録時点での親のうつ病状態、登録施設、すべての相互作用因子を補正後、追跡期間75ヵ月にわたってCBP群の青年期うつ病発症率が低下した(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.53~0.96)。・CBPプログラムの有意な効果は、登録初期9ヵ月間の、うつ病エピソードの発生低下によるものであった。・CBPプログラムのベネフィットは、登録時、親が非うつ病の青年において、うつ病発症(HR:0.54、95%CI:0.36~0.81)、うつ症状のない日(d=0.34、p=0 .01)、発達能(d=0.36、p=0.04)に関して認められた。・発達能に関する効果は、CBPプログラムのうつ症状のない日々に対する効果を介してもたらされたものであった。関連医療ニュース 青年期からの適切な対策で精神疾患の発症予防は可能か 魚をよく食べるほど、うつ病予防に:日医大 これからのうつ病治療、どんな介入を行うべきか  担当者へのご意見箱はこちら

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腰椎分離症の新たな後方固定術、成績良好

 腰椎分離症に対する手術療法の成績は比較的良好であるが、現在の手術法には隣接椎間の変性、軟部組織の損傷、適応の制限などまだ多くの限界がある。中国・West China Hospital of Sichuan UniversityのXing Rong氏らは、wiltseアプローチを用いた分離部修復を伴うISOBAR TTLによる腰椎後方固定の有効性を後ろ向き研究で評価した。結果、すべり症の有無にかかわらず腰椎分離症における臨床成績は良好であった。著者は、「この新しい手術手技は幅広い症例に適応でき、技術的な限界を克服できる」とまとめている。Spine誌オンライン版2015年11月27日号の掲載報告。 対象は、2010年8月~13年1月に、腰椎分離症(軽微なすべり症の有無は問わない)で、wiltseアプローチを用いた分離部修復を伴うISOBAR TTLによる、腰椎後方固定を受けた患者13例であった。全例、24ヵ月以上にわたり、外来受診時または電話により追跡調査した。 術前および術後の放射線学評価は前後、側方および屈曲X線画像、3次元再構築CTおよびMRI画像により行った。評価項目は、手術時の失血、手術時間、視覚的アナログスケール(VAS)、オスウェストリー障害指数(ODI)など。 主な結果は以下のとおり。・被験者(13例)は、男性9例、女性4例、平均年齢28.2歳であった。・追跡期間中央値は、36ヵ月(範囲:24~53ヵ月)であった。・手術は合併症もなく全例で成功した(分離部骨融合は、術後2年時にCTで確認された)。・椎間板性疼痛、30歳超、重度の椎間板変性を有する患者を含む全例において、有意な疼痛改善が得られた(p<0.01)。

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過度のHbA1c検査が糖尿病治療の過剰化をもたらす/BMJ

 血糖コントロールが安定した2型糖尿病患者の多くでは、糖化ヘモグロビン(HbA1c)の検査回数が多過ぎ、そのため血糖降下薬による治療が過剰となる可能性があることが、米国メイヨークリニックのRozalina G McCoy氏らの検討で示された。米国では、インスリン製剤を使用せずに血糖コントロールが達成、維持され、直近の糖尿病関連の急性合併症がみられない成人2型糖尿病患者(妊婦を除く)には、年に1~2回のHbA1c検査が推奨されている。一方、HbA1cの検査回数が多いと保健医療における冗長性(redundancy)や無駄が増えることが報告されているが、これらの試験は規模が小さいため、過剰なHbA1c検査が治療に及ぼす影響の評価は難しいという。BMJ誌オンライン版2015年12月8日号掲載の報告。HbA1c検査頻度別の治療変更への影響を後ろ向きに評価 研究グループは、2型糖尿病患者におけるHbA1c検査の実施状況およびその治療への影響を評価するために、地域住民ベースのレトロスペクティブな観察試験を行った(米国医療研究・品質調査機構[AHRQ]などの助成による)。 解析には、全米の8,600万人以上の民間保険加入者を対象とした診療報酬請求データベースであるOptum Labs Data Warehouseおよびメディケア・アドバンテージの2001~14年のデータを用いた。 対象は、年齢18歳以上、血糖コントロールが安定し(24ヵ月以内の2回の検査でいずれもHbA1c<7.0%)、インスリン製剤を使用しておらず、重症の低血糖や高血糖の既往がない2型糖尿病患者であり、妊婦は除外した。 HbA1c検査の頻度は、2回目を起点としてその後24ヵ月までの実施回数を数え、ガイドラインの推奨回数(0~2回/年)、高頻度(3~4回/年)、過剰(5回以上/年)に分類した。 治療レジメンの変更は、検査の3ヵ月後と3ヵ月前の薬剤の診療報酬請求を比較することで確認した。治療の強化は、血糖降下薬の薬剤数の増加およびインスリン製剤の追加と定義し、脱強化は1つ以上の薬剤を中止した場合とした。HbA1c検査は60%以上が推奨回数以上、過剰群は強化療法が1.35倍 解析の対象となった3万1,545例のベースラインの平均年齢は58±11歳、起点の検査時の平均HbA1cは6.2±0.4%であった。32.9%が血糖降下薬の投与を受けておらず、1剤が37.7%、2剤が21.3%、3剤以上は8.2%であった。 HbA1c検査の頻度は、過剰が5.8%(1,828例)、高頻度が54.5%(1万7,182例)、推奨回数は39.7%(1万2,535例)であった。再検査までの期間中央値は、それぞれ4週、12週、27週だった。 検査回数の多い患者は、年齢が高く、合併症罹患率が高く、糖尿病治療薬の数が多く、HbA1cが高値であった(いずれも、p<0.001)。 また、年間の医療提供者の数が、HbA1c検査頻度が推奨回数の患者に比べ過剰群(オッズ比[OR]:1.14、95%信頼区間[CI]:1.10~.1.18、p<0.001)および高頻度群(OR:1.05、95%CI:1.04~1.07、p<0.001)はともに有意に多かった。 起点のHbA1c検査後に、81.6%の患者は治療を変更しなかったが、血糖コントロールが推奨目標値を満たしたにもかかわらず、治療が強化された患者が8.4%認められた。その内訳は、過剰群が13%、高頻度群が9%、推奨回数群は7%だった(p<0.001)。 HbA1c検査頻度の過剰群は、推奨回数群に比べ強化療法が施行される可能性が有意に高かった(OR:1.35、95%CI:1.22~1.50)が、脱強化療法への移行には有意な差はなかった(同:1.08、0.97~1.20)。 過剰な検査の割合は、2001~08年には大きな変動はなかったが、09年以降は有意に減少した。11年の過剰検査率は、2001~02年に比べ46%低下した(OR:0.54、95%CI:0.46~0.64、p<0.001)。 著者は、「60%以上が推奨回数以上の検査を受けており、これが過剰な血糖降下薬治療をもたらす可能性がある」とまとめ、「過剰な検査は、保健医療における無駄を増やし、糖尿病管理における患者の負担を増大させる」としている。

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梅毒に気を付けろッ! その3【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第15回となる今回は梅毒の続きで、梅毒の診断と治療についてです。梅毒を見付けろッ!はじめは検査についてです。当然のことですが、梅毒の検査は、梅毒を疑ったときに行います。しかしながら、今も古き伝統にならって術前検査としてHIV抗体とかHBs抗原とかと一緒に梅毒の検査を行っている施設も多いのではないでしょうか。なかには「入院時セット」として測定されているところもあるという話です。ところが、実際のところ針刺し事故での梅毒感染事例は、きわめてまれであることがわかっており、今日的には梅毒を術前に検査する必要性はないとされます。しかし、実際にはまだ測定している施設が多いのではないでしょうか。感染症科的には、ときどき「術前検査で陽性なんですけど。どうしたらいいですか」というご相談をいただきます。たとえば術前検査で「RPR 0.9 TPHA 2048」という結果だったら、どう解釈すればよいでしょうか。梅毒の検査には、主に病原体であるTreponema pallidumを暗視野顕微鏡やPCRなどで証明する方法と、間接的に梅毒血清反応検査で診断する方法の2通りがありますが、検査の簡便さや保険収載の点から、現在の日本では大半が後者で診断されています。梅毒血清反応検査もさらに2つに分かれます。いわゆる非トレポネーマ検査(rapid plasma reagin:RPRやvenereal disease research laboratory:VDRL)と特異的トレポネーマ検査(Treponema pallidum hemagglutination assay:TPHAやFluorescent treponemal antibody-absorption test:FTA-ABS)です。簡単にいうと、非トレポネーマ検査は現在の活動性を意味し、特異的トレポネーマ検査は1度感染すると生涯陽性が続きます。非トレポネーマ検査は、現在、感染中かどうかの評価や治療効果の判定に用いることができますが、感染早期には偽陰性になることがある点や膠原病、妊娠、肝疾患などで生物学的偽陽性となることがある欠点を持っています。RPRの数値は、一般的には8より大きい場合には活動性があると考えて治療を行いますが、8未満であっても臨床症状でかなり疑わしい場合や特異的検査は陽性なのに、これまでに1度も治療を受けたことがない場合には治療を考慮します。RPRは従来「○倍」という表示で結果が示されていましたが、最近は自動化によって数値で表示されるようになりました。しかし、この数値もこれまでどおり「8以上であれば活動性があると考える」という原則は変わりません1)。特異的トレポネーマ検査が陽性であった場合は、まず間違いなく現在または過去の梅毒感染を意味しますが、活動性についてはわかりませんので、非トレポネーマ検査と組み合わせて解釈する必要があります。以上をまとめますと、表のようになります。先ほどの「術前検査で梅毒検査が陽性なんですけど…」っていう事例は、RPR陰性、TPHA陽性ですから、おそらく過去の感染でよいと思われますが、感染して間もない1期梅毒の可能性もあるので注意が必要です。画像を拡大する梅毒の治療では再感染に気を付けろッ!梅毒に活動性があるとわかったら抗菌薬治療を行います。神経梅毒と眼梅毒以外の梅毒の治療は、海外ではベンザチンペニシリンGの筋注一発でOKなのですが、日本では残念ながらありませんので、アモキシシリンに加えて、血中濃度を高めるためにプロベネシドを組み合わせるという治療が、伝統的に用いられていました。最近この治療の有効性が証明されましたので2)、どうぞ安心してお使いください。処方例は、アモキシシリン 3g分2~4、プロベネシド 1g分1~2という感じです。ただし、治療開始時にヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応(JH反応)という「梅毒トレポネーマの最後っぺ」的な発熱が起こることがあるのと、治療開始から7~10日後くらいにアモキシシリンによる皮疹が出ることがありますので、その説明を事前にしておく必要があります。私はJH反応が起こったときのために、アセトアミノフェンを頓服で処方するのと、「皮疹が出たら病院に来てください」と説明しています。治療期間は1期梅毒・2期梅毒・早期潜伏期梅毒では14日間、後期潜伏期梅毒では適切な治療期間はまだ十分にわかっていませんが、4週以上治療されることが多いです3)。神経梅毒と眼梅毒は、一般的には髄液移行を考慮して点滴治療が推奨されます。処方例としては、ペニシリンG 300~400万単位 4時間ごと(または1,800~2,400万単位/日を持続投与)を10~14日間投与する、というレジメンがガイドラインでは推奨されています3)。治療効果の判定は非トレポネーマ検査を用いて行います。といっても、治療開始してすぐにRPRが低下するわけではなく、ゆ~っくり時間をかけて下がっていきます。治療から半年~1年以内(後期潜伏期梅毒では2年以内)に、治療開始時のRPRから4分の1以下になっていれば治療は成功ということになります。この期間を過ぎても4分の1以下に下がりきらない場合には、治療は失敗または再感染と判断し、再度治療を行うことになります。性感染症の患者さんは、しばしば再感染しますから、梅毒治療後のフォローアップは非常に重要です!感染拡大に気を付けろッ!性感染症を診たときに大事な2つのポイントがありましたよね。そう、梅毒以外の性感染症のスクリーニングとパートナーの検査です。たとえば梅毒を診たらHIV、B型肝炎、淋菌・クラミジアなど他の性感染症もスクリーニングしましょう。また、患者さんに特定のパートナーがいる場合は、その相手にも梅毒の検査を行い、陽性であれば治療を行います。ただし、診断の90日以内に患者と性交渉がある場合は、RPRなどの非トレポネーマ検査が陰性であっても偽陰性の可能性を考慮して、治療してしまうことが推奨されます3)。先日もパートナーの治療が遅れてしまったがために、再感染してしまった事例を経験してしまいました…。パートナーの検査・治療は、患者さん自身がパートナーに性感染症のことを知られたくないという思いから、なかなか難しいこともありますが、パートナーに重要性を根気強く説明し、何とか一緒に検査・治療を行いたいところです。というわけで、3回にわたってお送りいたしました梅毒の回もようやく終わりです。再興感染症である梅毒は、まだまだ見逃されているのではないかと思っています。しっかり診断・治療して梅毒の流行を終わらせましょう!次回は、今話題になっている蚊媒介感染症の「ジカ熱」ですッ! 今を逃したら他に紹介するタイミングがないくらい、ホットなタイミングですッ!!1)井戸田一朗. 感染症誌.2014;88:275-281.2)Tanizaki R, et al. Clin Infect Dis. 2015;61:177-183.3)Workowski KA,et al. MMWR Recomm Rep. 2015;64:1-137.

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双極性障害と強迫症、併存率が高い患者の特徴

 双極性障害と強迫症の併存は小児期・思春期および双極I型障害患者に多いことが、イタリア・パルマ大学のA. Amerio氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、明らかにされた。ただし、著者らは、本研究の限界として「ほとんどの研究は、真の自我異和的な強迫観念と抑うつ的な反芻の区別において感度の低い後ろ向き評価尺度を使用しているため、強迫症状の有病率を過大評価する方向へバイアスが生じている可能性がある」と述べている。Journal of Affective Disorders誌2015年11月1日号の掲載報告。 双極性障害と不安症の併発については最近、調査が行われたが、双極性障害と強迫症の併発に関する研究は不十分なままであった。双極性障害と強迫症の併存率と予測因子を明らかにすることは、疾病分類学においても臨床・治療のうえでも重要な意味を持つ。研究グループは、2015年3月30日までに発表された関連論文を、電子データベース(MEDLINE、Embase、PsycINFO、Cochrane Library)を用いて検索し、システマティックレビューならびにメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・論文46本が選択基準を満たした。・双極性障害における強迫症の有病率は17.0%(95%信頼区間[CI]:12.7~22.4%)、強迫症における双極性障害の有病率は18.35%(95%CI:13.2~24.8%)で、ほぼ同等であった。・双極性障害患者における強迫症の有病率が低いことの予測因子は平均年齢が高いことであった。・サブグループメタ解析において、双極性障害患者において強迫症の併存率が高かったのは、小児・思春期[24.2%(vs.成人13.5%)]、双極I型[24.6%(vs.混合状態13.6%)]、住民ベース研究[22.2%(vs.病院ベースの研究13.2%)]であった。関連医療ニュース うつ病と双極性障害を見分けるポイントは 双極性障害患者の約半数が不安障害を併存 治療抵抗性強迫症に抗精神病薬の増強療法は有効か  担当者へのご意見箱はこちら

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幸せだと長生きするとは本当か?/Lancet

 幸福であることで寿命が伸びたり、ストレスによる苦痛が死亡を早めることはないとの研究結果が、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のBette Liu氏らにより報告された。幸福や、精神的負担感(ストレス)が少ない、落ち着いて、くつろぎ感(リラックス)のある生活は、死亡率を低下させることが示唆されている。一方、不幸は、喫煙、アルコールの過剰摂取、肥満、運動不足など、疾患の危険のある生活様式をもたらす可能性があるが、むしろ不健康が不幸の原因となる逆因果関係の重要性が指摘されており、これらの交絡因子で補正すると、不幸は死亡率の上昇とは関連しないとする研究もあり、統一的な見解は得られていないという。Lancet誌オンライン版2015年12月9日号掲載の報告。約72万人の女性で幸福が死亡に及ぼす影響を評価 研究グループは、Million Women Studyのデータを用いて、幸福やそれに関連する健康的な生活の主観的指標(ストレスが少ない、落ち着き、リラックス)が、逆因果関係や交絡因子を適切に考慮しても、直接的に死亡を低減するかとの疑問に答えるための検討を行った。 Million Women Study(http://www.millionwomenstudy.org/introduction/)は、女性のさまざまな健康問題の解決を目的とする英国の全国調査である。1996年5月1日~2001年12月31日に、イングランドおよびスコットランドの50~69歳の女性約130万人が登録され、電子記録により原因別の死亡の追跡調査が行われた。 被験者には、登録から3年後にベースラインの質問票が送付され、社会人口学的因子や生活様式のほか、健康状態、幸福、ストレス、落ち着き、リラックスに関する質問に、自己評価で回答するよう求められた。 ベースラインの質問票への回答時に心疾患、脳卒中、COPD、がんが認められなかった女性において、2012年1月1日までの死亡(全死因、虚血性心疾患、がん)について解析を行った。 Cox回帰を用いてベースラインの自己評価による健康状態と生活様式の因子で補正したうえで、「不幸」(幸福を感じる頻度が「ときどき」「ほとんど/まったくない」)と回答した女性の死亡率を、「ほとんどいつも幸福」と答えた女性と比較し、死亡の率比(RR)を算出した。 71万9,671例(年齢中央値:59歳、四分位範囲:55~63)が解析の対象となり、平均9.6年(SD 1.9)の追跡期間中に4%(3万1,531人)が死亡した。不健康は不幸をもたらすが、不幸で死亡率は上昇しない 「ほとんどいつも幸福」と答えた女性が39%(28万2,619人)、「たいていは幸福」が44%(31万5,874人)であり、「不幸」との回答は17%(12万1,178人)だった。 ベースライン時に自己評価による健康状態が「不良」または「普通」と答えた女性では、「不幸」と強い関連が認められた(補正RR:0.298、99%信頼区間[CI]:0.293~0.303)。 年齢、自己評価による健康状態、高血圧・糖尿病・喘息・関節炎・うつ状態・不安の治療、社会人口学的因子や生活様式因子(喫煙、窮乏、BMIなど)で補正すると、「不幸」は全死因死亡(「ほとんどいつも幸福」に対する「不幸」の補正RR:0.98、95%CI:0.94~1.01)、虚血性心疾患死(補正RR:0.97、95%CI:0.87~1.10)、がん死(補正RR:0.98、95%CI:0.93~1.02)とは関連しなかった。 ベースライン時に健康状態が「良好」「きわめて良好」と答えた女性では、「不幸」は虚血性心疾患死およびがん死とは関連がなかった。 また、健康状態が「良好」「きわめて良好」と答えた女性では、「ストレスがある」「リラックスできない」「落ち着かない」のいずれの場合でも、全死因死亡率が上昇することはなかった。 著者は、「中年女性では、不健康が不幸の原因となる可能性はある。これを考慮したうえで交絡因子で補正すると、幸福やストレスは、死亡に対し直接的に重大な影響は及ぼさない」と結論している。

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