多枝冠動脈疾患へのFFRガイド下PCI、5年後も転帰良好/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2015/09/17

 

 多枝冠動脈疾患患者に対する血流予備量比(FFR)ガイド下の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の長期安全性が確認された。オランダ・Catharina Hospital EindhovenのLokien X van Nunen氏らが、無作為化試験FAMEの5年間の追跡調査の結果、報告した。著者は今回の結果を踏まえて「この手技を大半の患者の標準ケアとすべきであることが示唆された」と述べている。これまでに同試験のフォローアップ2年間の報告でアウトカムの改善が示されていた。Lancet誌オンライン版2015年8月28日号掲載の報告より。

FAME試験の5年フォローアップデータをITT解析

 FAME試験はベルギー、デンマーク、ドイツ、オランダ、スウェーデン、英国、米国の20施設で、18歳以上の多枝冠動脈疾患患者を、血管造影ガイド下PCIまたはFFRガイド下PCIを受ける群に無作為に割り付けて行われた。2006年1月2日~2007年9月26日に1,005例が無作為化を受けた。

 無作為化の前に血管造影でPCIを要する狭窄部位の特定が行われ、血管造影ガイド下PCI群の患者にはすべての狭窄部位に血行再建術が行われ、FFRガイド下PCI群の患者はすべての狭窄部位のFFR測定が行われ、同値が0.80未満の場合にのみPCIが行われた。

 割り付け治療についてマスキングされた人はいなかった。

 主要エンドポイントは1年間の重大有害心イベントで、本報告では5年間のフォローアップデータが報告された。解析はintention to treatにて行われた。

2~5年間のリスクは同等、施術血管およびステントは少数でアウトカム達成

 5年後の重大有害心イベントの発生率は、血管造影ガイド群31%(154/496例)、FFRガイド群28%(143/509例)で有意な差はみられなかった(相対リスク:0.91、95%信頼区間[CI]:0.75~1.10、p=0.31)。

 一方、患者当たり留置ステント数は、血管造影ガイド下群のほうが、FFRガイド群よりも有意に多かった(平均2.7[SD1.2] vs.1.9[1.3]、p<0.0001)。

 著者は、「結果は、多枝疾患患者におけるFFRガイド下PCIの長期安全性を確認するものであった。FFRガイド下PCI戦略は、術後2年間の重大有害心イベントを有意に抑制し、2~5年間のリスクは両群で同等であることが示された。こうしたFFRガイド群の臨床的アウトカムは、施術対象血管数およびステント数も少なく達成されていた」とまとめ、「今回の結果は、FFRガイド下多枝PCIを大半の患者で標準ケアとすべきことを示すものである」と述べている。

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コメンテーター : 中川 義久( なかがわ よしひさ ) 氏

滋賀医科大学 循環器内科 教授

J-CLEAR評議員