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迅速分子検査法、超多剤耐性結核菌を検出可能か/NEJM

 試薬カートリッジを用いて喀痰検体から直接、薬剤耐性結核菌の同定が可能な自動分子検査法について、研究開発中の試薬カートリッジを臨床評価した結果、イソニアジド、フルオロキノロン系薬、アミノグリコシド系薬への耐性と関連する結核菌の変異を、正確に検出可能であることが確認された。米国・国立アレルギー・感染症研究所のYingda L. Xie氏らが、NEJM誌2017年9月14日号で報告した。同検査法については、試薬カートリッジXpert MTB/RIFと解析器GeneXpertを用いたシステムが、2時間で結核菌群およびリファンピシン耐性遺伝子を検出可能であり、世界中の結核プログラムで使用されている。一方、フルオロキノロン系薬と注射二次薬は、多剤耐性結核の治療の柱であるが、これらに耐性を示す場合は超多剤耐性結核と定義される。開発中の試薬カートリッジは、そうした患者の迅速な検出や、リファンピシン耐性患者の適切な抗菌薬選択に有用なものと期待されていた。表現型薬剤感受性試験、DNAシーケンスと比較検証 研究グループは、中国の鄭州と韓国のソウルで結核症状を呈する成人を登録し、開発中の試薬カートリッジ(GeneXpertで分析)アッセイと、表現型薬剤感受性試験およびDNAシーケンスを比較する、前向き診断精度研究を行った。 各参加者の喀痰検体を用いて、まず、ダイレクトに開発中アッセイおよびXpert MTB/RIFアッセイを行い、さらに、喀痰検体を前処理後に塗抹法、液体培養、固体培養を行った。結核菌分離株を用いて、表現型薬剤感受性試験と、katG、gyrA、gyrB、rrsの各遺伝子と、eis、inhAのプロモーター領域のDNA塩基配列決定を行った。迅速ポイントオブケア検査としての将来性は十分 2014年6月~2015年6月に、総計405例が登録され、401例が試験適格基準を満たした。このうち、結核菌培養陽性であった308例が、主要解析集団に包含された。 308例において、表現型薬剤感受性試験を参照基準とした場合、開発中アッセイの表現型耐性検出の感度は、イソニアジドが83.3%(95%信頼区間[CI]:77.1~88.5)、オフロキサシンは88.4%(95%CI:80.2~94.1)、モキシフロキサシン(限界濃度0.5μg/mL)87.6%(95%CI:79.0~93.7)、モキシフロキサシン(限界濃度2.0μg/mL)は96.2%(95%CI:87.0~99.5)、カナマイシン71.4%(95%CI:56.7~83.4)、アミカシン70.7%(95%CI:54.5~83.9)であった。 また、表現型耐性検出の特異度は、モキシフロキサシン(限界濃度2.0μg/mL)については84.0%(95%CI:78.9~88.3)であったが、それ以外のすべての薬剤については94.3%以上であった。 DNA塩基配列決定を参照基準とした場合、開発中アッセイの耐性関連変異検出感度は、イソニアジド98.1%(95%CI:94.4~99.6)、フルオロキノロン系薬が95.8%(95%CI:89.6~98.8)、カナマイシン92.7%(95%CI:80.1~98.5)、アミカシンは96.8%(95%CI:83.3~99.9)であった。特異度はすべての薬剤について99.6%(95%CI:97.9~100)以上であった。 今回の結果を踏まえて著者は、「開発中のアッセイは、結核患者の治療決定をガイドするための、迅速ポイントオブケア検査としての将来性が確信される」とまとめている。

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虫垂炎の非外科的治療後、腸がん罹患率が4倍に

 虫垂炎に虫垂切除ではなく抗菌薬で治療された患者では、診断の難しさと長年の炎症によって腸がん罹患率が増加する恐れがある。今回、スウェーデン・ウプサラ大学のMalin Enblad氏らの研究で、虫垂炎の非外科的治療を受けた患者では短期および長期における腸がん罹患率が増加したことが報告された。著者らは、「虫垂炎患者の最適な管理に関する議論ではこの結果を考慮すべき」としている。European Journal of Surgical Oncology誌オンライン版2017年9月7日号に掲載。 著者らは、スウェーデン全国入院患者登録1987~2013から、虫垂炎と診断されたが虫垂切除の外科的手順コードのない患者を検索した。次にこのコホートをスウェーデンがん登録とマッチさせ、虫垂がん・大腸がん・小腸がんの標準化罹患比(SIR)と95%信頼区間(95%CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・虫垂炎の非外科的治療を受けた1万3,595例のうち352例(2.6%)が、虫垂がんまたは大腸がんまたは小腸がんと診断された(SIR:4.1、95%CI:3.7~4.6)。・虫垂がん(SIR:35、95%CI:26~46)および右側大腸がん(SIR:7.5、95%CI:6.6~8.6)で罹患率の増加が最大であった。・虫垂炎後12ヵ月未満の患者を除外した場合、SIRは依然として増加を示し、虫垂炎後5年間の右側大腸がんのSIRは3.5(95%CI:2.1~5.4)であった。・膿瘍を合併した虫垂炎後のSIRは4.6(95%CI:4.0~5.2)、合併していない虫垂炎後のSIRは3.5(95%CI:2.9~4.1)であった。

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目がテン! 最新DESのストラットは髪より細い! 進化する金属製DESを科学する(中川義久 氏)-734

 金属製薬物溶出ステント(DES)の進化は著しいものがあり、完成度は高い。先日、バルセロナで開催された欧州心臓病学会2017において、新規DESであるOrsiro stent(オシロ・ステント)について最新の知見が発表された。Orsiroは超薄型ストラット生体吸収性ポリマー・シロリムス溶出ステントである。これと非生体吸収性ポリマー・エベロリムス溶出ステントであるXienceとを比較したものが「BIOFLOW V試験」であり、Lancet誌オンライン版2017年8月26日号に結果が掲載されている。本研究の主要エンドポイントは、12ヵ月時点の標的病変不全(TLF:心血管死、標的血管に関連するMI、虚血由来のTLR)の発生である。OrsiroとXienceの両ステントに無作為に2:1に割り付けている。その結果、12ヵ月時点のTLFの発生は、Orsiro群は52/883例(6%)、Xience群では41/427例(10%)であった(95%信頼区間[CI]:-6.84~-0.29、p=0.0399)。このようにOrsiroが有意に優れる結果であった。本発表の真の目的は、他の2つの無作為化試験の結果と統合して解析し、非劣性を示すことにあった。その検討でも、OrsiroはXienceに対して非劣性を示すことに成功した。 Xienceは金属製DESの1つの完成形として捉えられており、それに対して非劣性を示すことは新規DESにとって勲章とされる。ここまで目標とされるXienceに敬意を示し、金属製DES界の横綱という称号を贈りたい。一方で、横綱に対して金星をあげたOrsiroに興味が引かれるのは当然である。 そこでOrsiroについて科学してみた。皆さまは髪の毛の太さを知っていますか。日本人女性の髪の太さは、平均約0.08mmつまり80μmとのこと。当然だが個人差があり、太い人で100μm、細い人でも60μm程度。欧米人の女性の金髪の髪の毛の太さが60μm前後とされる。Orsiroのストラットは、超薄型の60μmで金髪女性の髪の域に達している。ストラットを構成する金属はコバルトクロム合金で、これは高い強度と柔軟性を併せ持ち、生体への親和性が高いという特徴を持つとされる。 金属製DESの1つの弱点は、低頻度であるが「金属アレルギー」という問題を持つことである。ここで免疫学の復習として「ハプテン」という用語を紹介したい。抗原として抗体の産生を引き起こす性質を「免疫原性」という。単独で免疫原性を持つ物質が「完全抗原」である。しかし、抗原の中には単独では免疫原性を持たず、体内に存在する何らかのタンパク質に結合することで「免疫原性」を持つ場合がある。これを、「不完全抗原(ハプテン)」と呼び、ハプテンにくっついた「タンパク質」が「キャリア」である。一例を示すと、ペニシリン系抗生物質は単独では抗体産生を引き起こすことはないが、ペニシリン分子が赤血球表面のタンパク質と結合して免疫原性物質となってしまうのがペニシリン・アレルギーである。ペニシリン分子がハプテンであり、赤血球表面タンパク質がキャリアである。 金属アレルギーも金属がハプテンになり、同様のメカニズムでアレルギー反応を引き起こすことにより生じる。金属アレルギーは、いわゆるアレルギー反応として全身的な臨床症状が表現される場合だけでなく、病理学的に冠動脈病変局所の炎症反応として捉えられており、再狭窄や新規動脈硬化進展のメカニズムにも関与する問題である。 ここで重要なことは金属がイオン化していない場合には、ハプテンにならないことである。イオン化した金属はハプテンになることができる。ここで面白いことを紹介しよう。電子を1個、または3個というように奇数個失ってイオン化する金属は通常はハプテンにはならない。例:ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、鉄イオン(Fe3+)。電子を2個、4個、6個というように偶数個失ってイオン化した金属はハプテンになりうる。例:ニッケルイオン(Ni2+)、水銀イオン(Hg2+)、クロムイオン(Cr6+)、コバルトイオン(Co2+)。コバルトクロム合金は、「生体への親和性が高い」と紹介したが、金属アレルギーを引き起こす可能性はゼロではない。金属イオン溶出を抑えることが金属アレルギー予防の鍵であることは、賢明な皆さまは推察できよう。 Orsiroは、コバルトクロム合金の表面にシリコンカーバイド(炭化ケイ素[SiC]半導体)によるコーティングを施し、金属イオン溶出を抑制している。このコーティングはナノ単位の非常に薄いもので、ストラット厚には影響を与えないという。さらに、その表面の生体吸収性ポリマーにより薬剤溶出をコントロールしている。 このように最新の金属製DESは、多くの英知の集積によって成立していることがわかる。今日は、Orsiroを科学してみた。

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非喘息性急性下気道感染症に経口ステロイドは無効/JAMA

 非喘息性急性下気道感染症の成人患者において、経口ステロイド薬は症状の持続期間や重症度を改善せず、使用すべきではないと、英国・ブリストル大学のAlastair D. Hay氏らが、プラセボ対照無作為化比較試験Oral Steroids for Acute Cough(OSAC)試験の結果、報告した。急性下気道感染症は最も一般的な疾患の1つだが、プライマリケアではしばしば抗菌薬による不適切な治療が行われている。その中で、経口ステロイド薬の使用も増加しているが、非喘息性急性下気道感染症に対する有効性については十分なエビデンスがない。JAMA誌2017年8月22・29日号掲載の報告。約400例をプレドニゾロン群とプラセボ群に無作為化 OSAC試験は、2013年7月~2014年10月、英国のプライマリケア54施設において実施された、多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験である。対象は、下気道感染症の症状(喀痰、胸痛、喘鳴、息切れ)のうち1つ以上および急性咳嗽を有し、即時的な抗菌薬治療を必要とせず、慢性肺疾患の既往歴なし、または過去5年間に喘息治療薬の投与歴がない18歳以上の患者401例であった。プレドニゾロン(20mg×2錠)群(199例)またはプラセボ群(202例)に無作為に割り付け、それぞれ1日1回5日間投与した。 主要評価項目は、中等度以上の咳嗽の持続期間(観察期間28日間、臨床的に重要な差の最低値は3.79日と設定)、および2~4日目の症状(咳嗽、喀痰、息切れ、睡眠障害、全体的な体調不良、活動障害)の重症度(0点[影響なし]~6点[最も悪い]、臨床的に重要な差の最低値は1.66点と設定)。副次評価項目は、急性下気道感染症の症状の持続期間と重症度、ピークフロー異常値の持続期間、抗菌薬の使用および有害事象であった。咳嗽持続期間や症状重症度に両群で差はなし 401例中2例は無作為化後すぐに離脱、1例は重複していたため除外となり、解析対象は398例であった(平均年齢47[SD 16.0]歳、女性63%、喫煙者17%、痰77%、息切れ70%、喘鳴47%、胸痛46%、ピークフロー値異常42%)。このうち334例(84%)で咳嗽持続期間が、369例(93%)で症状の重症度に関するデータが得られた。 平均咳嗽持続期間は、プレドニゾロン群で5日(四分位範囲[IQR]:3~8)、プラセボ群で5日(IQR:3~10)であった(補正ハザード比:1.11、95%信頼区間[CI]:0.89~1.39、α=0.05でp=0.36)。また、平均症状重症度は、プレドニゾロン群1.99点、プラセボ群2.16点であった(補正群間差:-0.20、95%CI:-0.40~0.00、α=0.001でp=0.05)。 その他の下気道感染症の持続期間や重症度、ピークフロー異常値の持続期間、抗菌薬の使用、重篤ではない有害事象に関しても、両群で差はなかった。重篤な有害事象は認められなかった。

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丹毒

【皮膚疾患】丹毒◆病状急に顔面などが腫れて赤くなり、熱が高くなります。時に水ぶくれを伴い、痛みがあります。◆原因主にA群β溶血性レンサ球菌による感染で起こり、高齢者や糖尿病患者さんに多くみられます。溶血性レンサ球菌の合併症で腎障害が起こることもあり、注意が必要です。◆治療と予防・ペニシリン系やセフェム系抗菌薬の内服で治療します。再発や腎炎の可能性も考えて、改善後も10日ほど内服を続けます。●一言アドバイス小さな傷、扁桃炎、みずむしなどから、発症することがあるので注意しましょう。監修:ふくろ皮膚科クリニック 院長 袋 秀平氏Copyright © 2017 CareNet,Inc. All rights reserved.

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遺伝子組み換えインフルエンザワクチンの有効性(解説:小金丸 博 氏)-712

 インフルエンザの流行の抑制を期待されているワクチンの1つが、遺伝子組み換えワクチンである。遺伝子組み換え法は、ベクターを用いてウイルスの遺伝子を特殊な細胞に挿入し、ウイルスの抗原性に関わる蛋白を細胞に作らせ精製する方法である。この方法では、卵の蛋白成分、ホルムアルデヒド、抗菌薬、防腐剤を含まないワクチンを製造することができる。また、鶏卵培養法では6ヵ月間かかる製造期間が、6~8週間に短縮できることが大きな利点となる。 本研究は、2014~15シーズンに行われた、遺伝子組み換え4価インフルエンザワクチン(RIV4)と鶏卵培養4価不活化インフルエンザワクチン(IIV4)の有効性を比較した第III-IV相のランダム化二重盲検実薬対照試験である。50歳以上の成人を対象とし、急性疾患に罹患している患者や免疫抑制治療中の患者は除外された。その結果、per-protocol解析を行えた8,604例において、RT-PCRで確定診断されたインフルエンザ発症率は、RIV4接種群が2.2%、IIV4接種群が3.2%であり、インフルエンザ様疾患が確認された割合はRIV4接種群がIIV4接種群より30%低かった(95%信頼区間:10~47、p=0.006)。修正intention-to-treat集団で行った有効性の事後解析でも同様の結果であった。 本研究は、遺伝子組み換えワクチンと既存のインフルエンザワクチンである鶏卵培養不活化ワクチンを、head-to-headで臨床効果を比較したものである。鶏卵培養で製造されるワクチンでは、製造過程でインフルエンザの抗原性に関わるヘマグルチニン(HI)をコードする遺伝子の変異が生じることでワクチンの有効性が低下する可能性が指摘されており、遺伝子組み換えワクチンの有効性が勝る一因になっていると推察される。 本研究の対象は50歳以上の成人であり、75歳以上の割合は12%程度であった。インフルエンザワクチンの恩恵を受けやすい高齢者、小児、妊婦、免疫不全者などに対する遺伝子組み換えワクチンの有効性や安全性については本試験では評価できない。 研究が実施された2014~15シーズンは、インフルエンザA/H3N2の流行株とワクチン株の不一致がみられたシーズンであった。このようなシーズンでより有効性を示したことは評価できるが、流行株とワクチン株が一致した場合でも本試験と同様の結果が得られるのかはわからない。B型インフルエンザに対しては有効性に差がなかったという結果も興味深い。遺伝子組み換えワクチンは利点の多いワクチンでもあるため、安全性の評価も含めて、今後さらなる研究が待たれる。

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ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)【皮膚疾患】◆病状口や目の周りやわきの下などにびらんやかさぶたが出現し、発熱します。全身に痛みのある赤いブツブツが出る場合もあります。一見正常そうな皮膚もこすると剥けたりします。乳幼児に多くみられます。◆原因黄色ブドウ球菌という細菌が出す毒素による全身中毒性反応です。◆治療と予防治療は、入院が必要になることが多く、抗菌薬の点滴や内服と水分補給などで全身管理を行います。●一言アドバイス「新生児剥脱性皮膚炎」という別の名前もあり、6歳くらいまでの乳幼児に多いですが、成人も罹ることがあります。監修:浅井皮膚科クリニック 院長Copyright © 2017 CareNet,Inc. All rights reserved.浅井 俊弥氏

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敗血症に対する初期治療戦略完了までの時間と院内死亡率の関係(解説:小金丸 博 氏)-700

 敗血症は迅速な診断、治療が求められる緊急度の高い感染症である。2013年に米国のニューヨーク州保健局は、敗血症の初期治療戦略として“3時間バンドル”プロトコールの実施を病院に義務付けた。“3時間バンドル”には、(1)1時間以内に広域抗菌薬を投与すること、(2)抗菌薬投与前に血液培養を採取すること、(3)3時間以内に血清乳酸値を測定すること、が含まれる。さらに収縮期血圧が90mmHg未満に低下していたり血清乳酸値が高値の場合は、“6時間バンドル”として急速輸液(30mL/kg)や昇圧剤の投与、血清乳酸値の再測定を求めている。これらの初期治療戦略が敗血症の予後を改善するかは、まだ議論のあるところだった。 本研究は、ニューヨーク州保健局に報告された敗血症および敗血症性ショックを呈した患者のデータベースを検討したレトロスペクティブ研究である。“3時間バンドル”完遂までの時間とリスク補正後の院内死亡率との関係を評価した。その結果、“3時間バンドル”完遂までの時間が長いほど院内死亡率は上昇していた(1時間ごとのオッズ比:1.04、95%信頼区間:1.02~1.05、p<0.001)。同様に、広域抗菌薬投与までの時間が長いほど院内死亡率は上昇していた(同:1.04、1.03~1.06、p<0.001)。しかしながら、急速輸液完遂までの時間の長さは院内死亡率上昇と関連がなかった(同:1.01、0.99~1.02、p=0.21)。 広域抗菌薬をプロトコール開始後3~12時間で投与した群では、3時間以内に投与した群と比べて院内死亡率が上昇していた。とくにうっ血性心不全や慢性肺疾患などの基礎疾患を有する群や昇圧剤投与が必要だった群で強く相関しており、重症例ほど早期に抗菌薬を投与することの重要性が示された。 本研究では、初期の急速輸液完了までの時間は、敗血症の予後に関連しないという結果であった。理由として、死に至るような超重症例ほど初期急速輸液が行われていることや、急速大量輸液によって起こる肺浮腫などの有害事象が予後に関与した可能性が考えられる。 2016年に新しい敗血症の定義(Sepsis-3)が提唱された。敗血症性ショックの診断には、本研究の“3時間バンドル”にも含まれる血清乳酸値の測定が必須であるが、本邦では大規模病院以外では困難と思われる。現在の本邦においてはバンドルの遵守にこだわらず、病歴や理学所見からいかに敗血症を疑い、初期対応につなげるかが重要と考える。

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コントロール不良の喘息にあの抗菌薬が有用?/Lancet

 中~高用量の吸入ステロイド+長時間作用型気管支拡張薬服用ではコントロール不良の喘息成人患者に対し、マクロライド系抗菌薬の経口アジスロマイシンの追加投与は、喘息増悪リスクを約4割減少し、喘息関連QOLも改善することが示された。オーストラリア・Hunter Medical Research InstituteのPeter G. Gibson氏らが、420例を対象に行った48週間にわたる無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果で、著者は「アジスロマイシンは喘息コントロールの追加療法として有用と思われる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年7月4日号掲載の報告。アジスロマイシン500mg、週3回48週間投与 研究グループは2009年6月12日~2015年1月31日にかけて、吸入ステロイドや長時間作用型気管支拡張薬の服用にもかかわらず喘息症状が認められる、18歳以上の患者420例を対象に、経口アジスロマイシンの追加で喘息増悪の頻度が減少可能かを調べる試験を行った。被験者は、聴覚障害や補正QT間隔延長が認められない場合を適格とした。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはアジスロマイシン500mgを(213例)、もう一方にはプラセボを(207例)、それぞれ週3回48週間投与した。試験を行った医療センターと喫煙歴について、層別化も行った。 主要評価項目は、48週間の中等度~重度の喘息増悪の頻度、および喘息症状関連の生活の質(QOL)で、intention-to-treatにてデータを分析・評価した。喘息増悪1回以上の発症率も減少 喘息増悪の発現頻度は、プラセボ群が1.86/人年だったのに対し、アジスロマイシン群は1.07/人年と、約4割低かった(罹患率比:0.59、95%信頼区間[CI]:0.47~0.74、p<0.0001)。 また、試験期間中に1回以上の増悪が発現した患者の割合も、アジスロマイシン群で有意に低率で、プラセボ群61%(207例中127例)だったのに対し、アジスロマイシン群は44%(213例中94例)だった(p<0.0001)。さらに、アジスロマイシン群はプラセボ群に比べ、喘息関連QOLも有意に改善し、喘息QOL質問票(AQLQ)スコアの補正後平均値格差は0.36(95%CI:0.21~0.52、p=0.001)だった。 なお、下痢の発症がプラセボ群19%に対し、アジスロマイシン群で34%と有意に高率に認められた(p=0.001)。

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皮下膿瘍、切開排膿に抗菌薬併用が有効/NEJM

 5cm以下の単純性皮下膿瘍について、切開排膿単独と比較し、切開排膿にクリンダマイシンまたはトリメトプリム・スルファメトキサゾール(TMP-SMX)を併用することで、短期アウトカムは改善することが示された。米国・シカゴ大学病院のRobert S. Daum氏らが、成人および小児外来患者を対象とした、多施設共同二重盲検プラセボ対照比較試験の結果を報告した。ただし著者は、「この治療のベネフィットとこれら抗菌薬の既知の副作用プロファイルを、比較検討する必要がある」とまとめている。合併症のない皮下膿瘍はよくみられるが、市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の時代における適切な治療は明らかになっていない。NEJM誌2017年6月29日号掲載の報告。クリンダマイシン vs. TMP-SMX vs.プラセボ、10日間投与の治癒率を評価 研究グループは2009年5月~2015年1月に、6施設にて直径5cm以下の単一の皮下膿瘍を有する成人および小児患者(ただし、6~11ヵ月児は3cm以下、1~8歳児は4cm以下)を登録した。外科的に排膿可能な膿瘍の存在、膿瘍の大きさ、皮膚感染部位の数、非化膿性蜂窩織炎の有無で患者を層別化し、膿瘍の切開排膿後に、ブロックランダム化法によりクリンダマイシン群、TMP-SMX群およびプラセボ群に1対1対1の割合で割り付け、試験薬を10日間投与した。 主要評価項目は、治療終了後7~10日時点での臨床的治癒とした。 登録された患者は計786例で、うち成人505例(64.2%)、小児281例(35.8%)であった。また、男性は448例(57.0%)であった。黄色ブドウ球菌(S. aureus)は527例(67.0%)から、MRSAは388例(49.4%)から分離された。治癒率は、プラセボ69%に対し、抗菌薬で82~83%に改善 治療後10日時点のintention-to-treat集団における治癒率は、クリンダマイシン群83.1%(221/266例)、TMP-SMX群81.7%(215/263例)で、実薬群は類似しており(p=0.73)、いずれもプラセボ群の68.9%(177/257例)より高率であった(両群ともp<0.001)。評価可能集団(試験薬を10日間服用し、治療終了後7~10日時点の評価を完遂した患者)における結果も同様であった。なお、この有益な効果は、黄色ブドウ球菌感染者に限定された。 治癒例における追跡1ヵ月後の新規感染率は、クリンダマイシン群(6.8%:15/221例)が、TMP-SMX群(13.5%:29/215例、p=0.03)またはプラセボ群(12.4%:22/177例、p=0.06)より低かった。 有害事象の発現率は、クリンダマイシン群(21.9%:58/265例)が、TMP-SMX群(11.1%:29/261例)およびプラセボ群(12.5%:32/255例)より高かった。主な有害事象は下痢と悪心で、クロストリジウム・ディフィシル関連下痢症は確認されなかった。重篤な有害事象を8例、過敏反応(発熱、発疹、血小板減少症、肝炎)をTMP-SMX群の1例で認めたが、すべての有害事象は後遺症なく消失した。

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蜂窩織炎の初期治療にMRSAカバーは必要か?(解説:小金丸 博 氏)-691

 蜂窩織炎の原因微生物を特定することは一般的に困難であるが、膿瘍形成のない蜂窩織炎の原因菌で最も多いのはA群溶連菌などのβ溶血性レンサ球菌と考えられている。そのため米国感染症学会(IDSA)のガイドラインでは、貫通性の外傷や注射薬物使用者などでない場合、レンサ球菌をターゲットに初期抗菌薬を選択することを推奨している。しかしながら、近年、市中感染型MRSAの増加が問題となっており、蜂窩織炎の初期治療でMRSAをカバーできる抗菌薬を使用すべきか議論になっていた。 本研究は、12歳以上を対象に、単純性蜂窩織炎に対するST合剤併用の有効性を検討した二重盲検ランダム化比較試験である。第一世代セフェム系抗菌薬であるセファレキシンに抗MRSA活性を有するST合剤を併用した群と、セファレキシンにプラセボを併用した群に分け、臨床的治癒率を比較した。すべての被験者で軟部組織エコーを実施し、膿瘍形成がある患者は除外された。Per-protocol集団における14~21日時点での臨床的治癒率は、セファレキシン+ST合剤投与群で83.5%、セファレキシン+プラセボ投与群で85.5%であり、両群間で有意差は認めなかった(群間差:-2.0%、95%信頼区間:-9.7~5.7、p=0.50)。 本研究では、治療開始時に38度以上の発熱を呈していた患者の割合は1%程度と低率であり、経口抗菌薬で外来加療できるレベルの軽症患者が対象となっている。全身状態がそれほど悪くなく、明らかな膿瘍形成がなさそうであれば、蜂窩織炎の初期治療における抗MRSA活性を有する抗菌薬の有用性は高くないと考える。これは、現在の本邦における実臨床の感覚とも一致するものである。 治療失敗例をみてみると、どちらの抗菌薬投与群でも経過中に膿瘍形成した例を多数認めており、抗MRSA活性を有する薬を選択したかどうかは大きな問題ではなさそうである。蜂窩織炎の治療経過が思わしくない場合は膿瘍合併を疑い、ドレナージなど適切な処置を施すことが重要である。 本研究は2009~12年にかけて米国の施設で実施されたものである。市中感染型MRSAの検出率が今後も増加するのであれば、抗菌薬の選択に影響を与えるのは間違いない。本邦の発生動向についても注視していく必要がある。

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「抗微生物薬適正使用の手引き」完成

 2017年6月1日、厚生労働省健康局結核感染症課は、薬剤耐性(AMR)対策の一環として「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版」(以下「手引き」)を発行した。 世界的に不適正な抗微生物薬使用による薬剤耐性菌の脅威が叫ばれている中で、わが国でも適正な感染症診療に関わる指針を明確にすることで、抗微生物薬の適正使用を推進していくことを目指している。 今回の「手引き」の作成で、抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会委員の座長として取りまとめを行った大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター長)に、作成の経緯や「手引き」のポイント、今後の展望について聞いた。極端に使用量が多い3種類の抗微生物薬 「手引き」作成までの経緯について簡単に述べると、まず、現在使用されている抗微生物薬に対して微生物が耐性を持ってしまい、治療ができなくなる状況がやってくる危険性への懸念があります。そのため2016年4月に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」が決められ、議論が重ねられました。抗微生物薬を使う感染症診療の場で、あまり適切な使用が行われていないところがあるかもしれず、必要以上の抗微生物薬が使われていることが薬剤耐性を増悪させているかもしれない。では、抗微生物薬を適正に使用する「手引き」を作ろうとなったのが、作成の出発点です。 そして、このような形の「手引き」になった理由として、次の3点があります。1)日本の抗微生物薬の使用量自体は多くないものの、広範囲に有効であるセファロスポリン、マクロライド、キノロンの使用割合が諸外国と比べて極めて高いこと。2)内服か静注かの内訳調査では、大部分が内服剤であること(外来での多用が示唆される)。3)その外来でよく診療される感染症を考えた場合、頻度の高い急性気道感染症や腸炎、尿路感染症(今回の手引きでは割愛)などが挙げられ、その中でも、適切な見分けをしていけば抗微生物薬を使わずに済むケースも多く、かつ、診療もある程度の型が決まっているものとして、急性気道感染症と急性下痢症に絞られること。 以上を踏まえ、抗微生物薬の適正使用を総論として構成し、今回の「手引き」を作成しました。 「手引き」を熟読し診療に生かしていただきたいところですが、情報量も多いので、ゆくゆくはこの「手引き」を要約してポケットサイズのカードを作成し、いつでも臨床の現場で活用できるようにしたいと考えています。 また、一般臨床に携わる医師、医療従事者はもちろん、医学教育の場、保健衛生の場、一般の方々への啓発の場でも活用してもらい、抗微生物薬の適正使用への理解を深めていければと思います。「風邪」は単なる風邪ではないことへの理解 「手引き」の中でとくに読んでいただきたい所は、「本手引きで扱う急性気道感染症の概念と区分」(p.8)という、概念を理解するために作られた図です。 今回「急性気道感染症」をターゲット疾患としたのは、いわゆるウイルス性の感冒と急性鼻副鼻腔炎、急性咽頭炎、急性気管支炎に分けられることを知ってもらう狙いがあります。「『風邪』は風邪ではない」と理解することが大切で、きちんと診察し、必要な検査をすれば、これらをえり分けられます。それにより抗微生物薬が必要かどうかのマネジメントが異なってきます。ただ、患者さんが「風邪」を主訴に来院したとき、風邪以外の怖い病態(急性心筋炎など)も隠れているのが「風邪」だということを認識するのも同じく大事です。2020年に全体の抗微生物薬使用量を33%減 最後に展望として、AMR対策という観点からさまざまな広域抗菌薬の使用が抑えられて、2020年までにセファロスポリン、マクロライド、キノロンの使用量を半減させ、全体の使用量も33%減少させるという大きな目標があります。 ただ個人的には、少なくとも「手引き」の内容が浸透することで、これまで「風邪」と診断され、漠然と片付けられていた患者さんに正確で適切な診断がなされ、見逃してはいけない重大なリスクのある患者さんが早く拾い上げられて、個々の患者さんの健康に貢献すること、結果的には医療全体のレベルが上がることを最も期待しています。 今後もっと対象疾患を広げるかどうかなど、臨床現場の声や患者さんの声を取り入れて議論され、改訂の機会もあると思います。しかし、今回の「手引き」で示した基本的な考え方は、この5年や10年単位では変わらないものと考えています。 「手引き」で取り上げた疾患は、広い意味での「風邪」と「急性胃腸炎」ですが、この領域だけでも実臨床における、原則的な診療を示すことができたと思います。これらの実践により、診療は必ず良いものとなるだけでなく、診療者である医師の自信にもつながると考えます。 どうか「手引き」を活用していただきたいと思います。

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敗血症の治療は早めるほどよい?/NEJM

 敗血症の治療において、3時間ケアバンドルの完了と抗菌薬投与をより早めることは、院内死亡率の低下と関連することが示された。なお、静脈内輸液の初回ボーラス投与完了を早めることは、関連していなかったという。2013年、米国ニューヨーク州は医療機関に対して、敗血症の迅速な同定と治療のためにプロトコルに従うことを義務づけたが、敗血症の治療を早めることが患者の転帰を改善するかについては議論されていた。米国・ピッツバーグ大学のChristopher W. Seymour氏らは、義務化後の状況を調査、検討した。NEJM誌2017年6月8日号(オンライン版2017年5月21日号)掲載の報告。敗血症に対する3時間ケアバンドル義務化後のニューヨーク州の状況を分析 検討は、2014年4月1日~2016年6月30日にニューヨーク州保健局に報告された、敗血症および敗血症性ショックを呈した患者のデータを分析して行われた。 ニューヨーク州が義務づけたプロトコルには、患者が救急部門に搬送されて6時間以内に敗血症プロトコルを開始すること、敗血症患者に対する3時間ケアバンドル(抗菌薬投与前の血液培養、血清乳酸値の測定、広域抗菌薬投与)の全項目を12時間以内に完了することが含まれていた。 多変量モデルを用いて、敗血症患者の3時間ケアバンドル完了までの時間とリスク補正後の死亡との関連を評価した。また、抗菌薬投与までの時間、静脈内輸液の初回ボーラス投与完了までの時間についても調べた。敗血症患者の3時間バンドル完了の時間が長くなるほど院内死亡率の上昇と関連 評価には、149病院の4万9,331例が含まれた。 そのうち4万696例(82.5%)が、敗血症に対する3時間ケアバンドルを3時間以内に完了していた。敗血症患者の3時間ケアバンドル完了までの時間中央値は1.30時間(四分位範囲:0.65~2.35)、抗菌薬投与までの時間中央値は0.95時間(四分位範囲:0.35~1.95)であり、静脈内輸液の初回ボーラス投与完了までの時間中央値は2.56時間(四分位範囲:1.33~4.20)であった。 12時間以内に3時間ケアバンドルを完了した敗血症患者において、バンドル完了の時間が長くなるほど、リスク補正後の院内死亡率の上昇と関連していた(オッズ比:1.04/時間、95%信頼区間[CI]:1.02~1.05、p<0.001)。同様の関連は、抗菌薬投与までの時間が長い場合にもみられた(同:1.04/時間、1.03~1.06、p<0.001)。しかしながら、静脈内輸液の初回ボーラス投与完了までの時間が長い場合にはみられなかった(同:1.01/時間、0.99~1.02、p=0.21)。

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伝染性膿痂疹(とびひ)

【皮膚疾患】伝染性膿痂疹(とびひ)◆病状体のあちこちに紅斑、痂皮(かさぶた)、水ぶくれなどが出て、周囲や遠くの部位に次々と拡大する皮膚疾患です。◆原因皮膚表面への細菌感染が原因で、水ぶくれをつくる黄色ブドウ球菌、かさぶたをつくる溶血性レンサ球菌とに分かれます。ほとんどが前者の方です。小児に多く発症します。湿疹や虫刺され、けがなどから始まることがあります。◆治療と予防・抗菌薬の内服と外用薬で治療します。搔きこわして広がっていくことが多いので、ステロイド外用薬を併用することもあります。・抗菌薬の効果をみるため、2~3日後にあらためて診察をします。・多くの薬剤に耐性をもつMRSAなどの菌がついていると治りにくいです。・皮膚を清潔にする、湿疹をきちんと治す、爪を短く切っておく、手をよく洗うなどして予防しましょう。監修:浅井皮膚科クリニック 院長Copyright © 2017 CareNet,Inc. All rights reserved.浅井 俊弥氏

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既存の抗生物質は多発性硬化症を病初期の段階で押さえ込めるか?(解説:森本 悟 氏)-686

 多発性硬化症(Multiple sclerosis:MS)は若年成人に発症し、重篤な神経障害を来す、中枢神経系の慢性炎症性脱髄性疾患である。根本的治療は確立されていないが、インターフェロンβなどの治療薬による再発予防が身体機能障害の進行の抑止に重要とされている。 また、一般に炎症性脱髄性疾患を示唆する中枢神経病巣を呈する状態が24時間以上続く急性発作で、それ以前には脱髄性疾患を示唆する発作がないものをclinically isolated syndrome(CIS)と称す。CIS患者のうち38~68%程度が、2回目のエピソードを発症しMSと診断されるが、必ずしもMSに進展しないうえに、MSの治療薬には重篤な副作用が報告されているため、いつの段階で治療を開始するべきか長らく議論されている。 このような背景から、CISの段階でMSへの進展を抑制できる効果が高く、重篤な副作用が少ない治療法が望まれている。本研究は、もともと抗生物質として広く使用されており、安価で比較的副作用の少ないミノサイクリンにMSの進展を遅らせる効果があると報告した。 CISと診断されて180日以内にミノサイクリンを100mg内服し続けた群とプラセボ群を比較したrandomized controlled trialであるが、ミノサイクリン群とプラセボ群で登録患者数に差があること、MSの予後不良因子とされている男性がプラセボ群で多い傾向にあること、登録時の造影病変がプラセボ群で有意に多い(造影病変の存在は疾患活動性が高いことを示唆する)ことは留意すべきである。 統計処理において、造影病変の「数」を調整しているが、プラセボ群で6ヵ月以内に再発した症例のうち、登録時に造影病変を有していた症例の割合が記載されていないため、疾患活動性の差が結果に与えた影響は否定できない。また、CISからMSへは数ヵ月後に進展する症例もあれば、20年以上経過してから進展する症例もあり、その中央値は約2年と報告されている。本研究では6ヶ月時点での再発がミノサイクリン群でわずかな有意差をもって少なかったが、24ヵ月後にはその差はなくなっていた。本研究は症例数が少なく観察期間も短いため、臨床的に有用と判断するにはさらなるデータの蓄積が必要と考える。

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ミノサイクリンは多発性硬化症進展リスクを抑制するか/NEJM

 初回の局所性脱髄イベント(clinically isolated syndrome:CIS)の発症後は、多発性硬化症への進展リスクが増大する。カナダ・カルガリー大学/フットヒルズ医療センターのLuanne M. Metz氏らは、CIS発症時にミノサイクリン投与を開始すると、6ヵ月時にはこの進展リスクが抑制されたが、24ヵ月時には効果は消失したとの研究結果を、NEJM誌2017年6月1日号で報告した。テトラサイクリン系抗菌薬ミノサイクリンは免疫調節特性を持ち、予備的なデータでは多発性硬化症への活性が示され、2つの小規模な臨床試験で有望な成果が提示されている。副作用として発疹、頭痛、めまい、光線過敏症がみられるものの、安全性プロファイルは良好とされ、まれだが重篤な合併症として偽脳腫瘍や過敏症症候群があり、長期の使用により色素沈着が生じる可能性があるという。カナダの142例が対象のプラセボ対照無作為化試験 研究グループは、脱髄イベントから多発性硬化症への進展リスクに及ぼすミノサイクリンの効果を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した(カナダ多発性硬化症協会の助成による)。 初回CISの発現から180日以内の患者が、ミノサイクリン(100mg、1日2回)を経口投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。治療は、多発性硬化症の診断が確定するか、無作為割り付けから24ヵ月のいずれかまで継続した。 主要評価項目は、無作為割り付けから6ヵ月以内の多発性硬化症(2005年版McDonald診断基準で診断)への進展とした。副次評価項目は、無作為割り付けから24ヵ月以内の多発性硬化症への進展、そして6ヵ月および24ヵ月時のMRI上の変化(T2強調MRI上の病巣の体積、T1強調MRI上の新たに増強された病巣[増強病巣]の累積数、個々の病巣の累積合計数[T1強調MRI上の新規増強病巣、およびT2強調MRI上の新規病巣と新たに増大した病巣])などであった。 2009年1月~2013年7月に、カナダの12の多発性硬化症クリニックで142例が登録され、ミノサイクリン群に72例、プラセボ群には70例が割り付けられた。さらなる試験で検証を ベースライン(CIS発症時)の全体の平均年齢は35.8(SD 9.2)歳、68.3%が女性であった。脊髄病巣(ミノサイクリン群:34.7%、プラセボ群:51.4%、p=0.04)およびMRI上の増強病巣数≧2(9.7 vs.25.7%、p=0.04)がミノサイクリン群で少なかったが、これ以外の因子は両群に差はなかった。 6ヵ月以内にミノサイクリン群の23例、プラセボ群の41例が多発性硬化症を発症した。6ヵ月以内の多発性硬化症への進展の未補正リスクは、ミノサイクリン群が33.4%と、プラセボ群の61.0%に比べ有意に低かった(群間差:27.6%、95%信頼区間[CI]:11.4~43.9、p=0.001)。ベースラインの増強病巣数で補正すると、進展リスクの差は18.5%(95%CI:3.7~33.3)と小さくなったが、有意な差は保持されていた(p=0.01)。 副次評価項目である24ヵ月時の進展の未補正リスクには、有意差は認めなかった(ミノサイクリン群:55.3% vs.プラセボ群:72.0%、群間差:16.7%、95%CI:-0.6~34.0、p=0.06)。 6ヵ月時のMRI関連の副次評価項目は3項目とも、未補正ではミノサイクリン群がプラセボ群よりも有意に良好であり、補正後も有意差は保持された。これに対し、24ヵ月時は、未補正ではミノサイクリン群がいずれも有意に良好であったが、補正後は有意な差はなくなった。 有害事象の頻度は、ミノサイクリン群がプラセボ群に比べて高かった(86.1 vs.61.4%、p=0.001)。とくに発疹(15.3 vs.2.9%、p=0.01)、歯の変色(8.3 vs.0%、p=0.01)、めまい(13.9 vs.1.4%、p=0.005)には有意な差がみられた。4例(両群2例ずつ)に臨床検査で検出された一過性のGrade 3/4の有害事象が、4例(ミノサイクリン群:1例、プラセボ群:3例)に5件の重篤な有害事象が認められた。 著者は、「これらの結果は、事前に規定された6ヵ月時の未補正リスクの25%の絶対差を満たし、補正すると差は縮小したものの有意差は保持されており、MRI関連の転帰も良好であったが、この差は24ヵ月時までは持続しなかった」とまとめ、「さらなる試験による検証が求められる」と指摘している。

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蜂窩織炎、ST合剤追加は必要か/JAMA

 単純性蜂窩織炎の抗菌薬治療では、セファレキシンにスルファメトキサゾール・トリメトプリム配合薬(ST合剤)を併用しても、臨床的治癒率は改善しないことが、米国・オリーブ・ビューUCLA医療センターのGregory J. Moran氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年5月23日号に掲載された。米国では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の出現に伴い、皮膚感染症による救急診療部への受診が増加しているという。排膿がみられない蜂窩織炎は、β溶血性レンサ球菌が主な病原菌と推定されるが、in vitroでMRSA活性を有する抗菌薬レジメンが、MRSA活性のない治療に比べ転帰の改善をもたらすかは不明とされる。ST合剤の上乗せ効果をプラセボ対照試験で評価 研究グループは、セファレキシン+ST合剤による治療が、セファレキシン単剤に比べ単純性蜂窩織炎の臨床的治癒率を改善するかを検討する多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した(米国国立アレルギー感染病研究所[NIAID]の助成による)。 対象は、年齢12歳以上で、単純性蜂窩織炎(膿瘍、排膿、創傷を伴わない紅斑[erythema]がみられ、感染性の病因が確認されている)と診断された患者であった。登録時に軟部組織の超音波検査が行われ、膿瘍を有する患者は除外された。 被験者は、セファレキシン(500mg、1日4回)+ST合剤(1,600/320mg、1日2回)またはセファレキシン+プラセボを投与する群にランダムに割り付けられ、7日間の治療が行われた。 主要評価項目は、per-protocol(PP)集団における臨床的治癒率とした。臨床的治癒は、フォローアップの受診時に以下の臨床的治療不成功の判定基準を満たさない場合と定義した。(1)第3~4日:発熱(感染症に起因すると考えられる)または紅斑の増大(>25%)、腫脹、圧痛の増悪、(2)第8~10日:発熱または紅斑、腫脹、圧痛の軽減がみられない、(3)第14~21日:発熱または紅斑、腫脹、圧痛が最低限度を超える。95%信頼区間(CI)の下限値が10%を超える場合に、併用群に優越性ありと判定することとした。 2009年4月~2012年6月に、米国の5つの救急診療部に500例が登録され、496例(99%)が修正intention-to-treat(mITT)解析、411例(82.2%)がPP解析の対象となった。PP解析で有意差なし、mITT解析では良好な傾向 PP集団(併用群:218例、プラセボ群:193例)の年齢中央値は40歳(範囲:15~78)、男性が58.4%で、糖尿病が10.9%、MRSA感染の既往が3.9%、登録の前の週の発熱の既往が19.7%にみられた。紅斑の長さと幅の中央値は13.0cm、10.0cmだった。 PP解析では、併用群の臨床的治癒率は83.5%(182/218例)であり、プラセボ群の85.5%(165/193例)と比較して有意な差を認めなかった(群間差:-2.0%、95%CI:-9.7~5.7、p=0.50)。 mITT解析による臨床的治癒率は、併用群が76.2%(189/248例)、プラセボ群は69.0%(171/248例)と、やはり両群間に有意差はみられなかったが、95%CIの範囲内に臨床的に重要な最小限の差(10%)が含まれた(群間差:7.3%、95%CI:-1.0~15.5、p=0.07)。 有害事象および副次評価項目(1泊入院、皮膚感染症の再発、家族との接触による同様の感染症の発症など)にも有意な差はなかった。 著者は、「mITT解析の知見には、併用群の臨床的治癒率が良好な傾向を示す、臨床的に重要な差を含む不正確性がみられたため、さらなる研究を要する可能性がある」と指摘している。

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未就学児への不適切な抗菌薬処方、小児科以外で多い

 未就学児の上気道感染症(URI)への抗菌薬処方に関する、全国の診療報酬請求データベースを用いた京都大学の吉田 都美氏らの後ろ向き研究から、非細菌性URIへの不適切な抗菌薬処方が、年齢の上昇、男児、施設の特性、小児科以外の診療科、時間外診療に関連することがわかった。Journal of public health誌オンライン版2017年4月27日号に掲載。 著者らは、わが国における2005年1月~2014年9月の診療報酬請求データベースから、外来での抗菌薬処方を特定し、各被験者の出生時から6歳までの処方パターンを調べた。また、ロジスティック回帰分析により、不適切な抗菌薬処方に関連する因子のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・データベースにおいて小児が15万5,556人、うち男児が51.6%、女児が48.4%であった。・コホートの66.4%に抗菌薬が処方されており、第3世代セファロスポリンが最も多く(38.3%)、次いでマクロライド系(25.8%)、ペニシリン系(16.0%)であった。・非細菌性URIへの抗菌薬処方は、男児(OR:1.06、95%CI:1.05~1.07)、施設規模、小児科以外の診療科(OR:2.11、95%CI:2.08~2.14)、時間外診療(OR:1.64、95%CI:1.61~1.68)と関連していた。

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下気道感染症の抗菌薬処方戦略/BMJ

 合併症のない下気道感染症の若年および成人患者において、抗菌薬を即時処方してもその後の入院または死亡は減少しない。もともと、このような入院や死亡はまれである。英国・サウサンプトン大学のPaul Little氏らが、異なる抗菌薬処方戦略による有害転帰への影響を評価する前向きコホート研究(Cough Complication Cohort:3C)の結果を報告した。英国のGeneral Practice Research Database(GPRD)を用いた2つの試験では、抗菌薬の処方により肺炎リスクが減少する可能性が示唆されている。しかし、どちらの試験も、入院や死亡といった有害転帰への影響は記録されておらず、交絡因子も調整されていなかった。著者は、「医師が抗菌薬の処方を検討しているなら、病状悪化による再診の減少が認められた延期処方のほうが望ましい」と結論づけている。BMJ誌2017年5月22日号掲載の報告。抗菌薬処方戦略別に再診、入院/死亡を追跡調査 研究グループは、英国の一般診療クリニックを受診した16歳以上の下気道感染症患者2万8,883例を登録し、初回診察時に患者の症状や所見、抗菌薬処方戦略(処方なし、即時処方、延期処方)について記録した。初回診察時にX線検査で肺炎と診断された患者や、当日入院した患者、他の原因による急性の咳嗽、免疫不全患者などは除外した。 主要評価項目は、初回診察後30日以内の下気道感染症症状による再診、入院、死亡である。抗菌薬の処方傾向に関連する因子および医師のクラスタリングについて調整し、多変量解析を行った。延期処方で入院/死亡は19%、再診は36%減少、即時処方ではどちらも減少せず 登録された2万8,883例中、初回診察日にX線検査や入院目的で他院へ紹介、またはがんで入院した104例(0.4%)を除く2万8,779例が解析対象となった。2万8,779例において、初回診察日以降に入院または死亡した患者の割合は、抗菌薬処方なし群が0.3%(26/7,332例)、即時処方群が0.9%(156/1万7,628例)、延期処方群(延期日数中央値3日、四分位範囲:2~3日)が0.4%(14/3,819例)であった。 多変量解析の結果、延期処方群では統計学的に有意ではなかったものの入院および死亡が減少したが(多変量リスク比:0.81、95%信頼区間[CI]:0.41~1.64、p=0.61)、即時処方群では減少しなかった(多変量リスク比:1.06、95%CI:0.63~1.81、p=0.84)。新たな症状による再診(1,443/7,332例[19.7%])、症状悪化による再診(4,455/1万7,628例[25.3%])、症状が改善しないことによる再診(538/3,819例[14.1%])はよくみられ、これらは延期処方群で有意に減少したが(多変量リスク比:0.64、95%CI:0.57~0.72、p<0.001)、即時処方群では減少しなかった(多変量リスク比:0.98、95%CI:0.90~1.07、p=0.66)。

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CDC「手術部位感染予防のためのガイドライン」18年ぶりの改訂

 米国疾病管理予防センター(CDC)は、「手術部位感染予防のためのガイドライン」を1999年以来18年ぶりに改訂し、エビデンスに基づく勧告を発表した。手術部位感染治療のための人的および財政的負担の増加を背景に、専門家の意見を基に作成された1999年版から、エビデンスベースの新たなガイドラインに改訂された。著者らは「これらの勧告に基づく手術戦略を用いることで、手術部位感染のおよそ半分が予防可能と推定される」と記している。手術部位感染予防のためのガイドラインはコアセクションと人工関節置換術セクションで構成 CDCの医療感染管理諮問委員会(HICPAC)は、1998年から2014年4月の間に発表された論文を対象にシステマティックレビューを実施し、5,000超の関連論文を特定。さらにスクリーニングを行った結果、170の論文を抽出し、エビデンスを評価・分類した。 新しい手術部位感染予防のためのガイドラインは、外科手術全般の手術部位感染予防のための勧告(30件)を含む「コアセクション」と人工関節置換術に適用される勧告(12件)を含む「人工関節置換術セクション」によって構成されている。 改訂された手術部位感染予防のためのガイドラインで更新された勧告の中で主なものは以下のとおり。・手術前、少なくとも手術前夜には、患者は石けん(抗菌性もしくは非抗菌性)または消毒薬を用いたシャワーや入浴(全身)をすべきである。・予防抗菌薬は、公開されている臨床実践ガイドラインに基づいた適用のときのみに投与する。そして、切開が行われるときに、血清および組織における抗菌薬の殺菌濃度が確保されるタイミングで投与する。・帝王切開においては、皮膚切開の前に適切な予防抗菌薬を投与する。・術前の皮膚処置は、禁忌の場合を除き、アルコール系消毒薬を使用して行う。・清潔および準清潔手術では、手術室内で閉創した後はドレーンが留置されていても、予防抗菌薬を追加投与しない。・手術部位感染予防のために、外科切開部に抗菌薬の局所的な適用は行わない。・周術期の血糖コントロールを実施し、すべての患者で血糖の目標レベルを200mg/dL未満として、正常体温を維持する。・全身麻酔を受けており気管内挿管がある正常な肺機能を有する患者では、手術中および手術直後の抜管後に、吸入酸素濃度を増加させる。・手術部位感染予防のために、手術患者への必要な血液製剤の輸血を控える必要はない。 新しい手術部位感染予防のためのガイドラインはJAMA surgeryオンライン版2017年5月3日号に掲載された。

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