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認知症の修正可能な14因子、日本人で影響が大きいのは?

 Lancet委員会では、2017年より認知症の修正可能なリスク因子に関する研究結果を報告しており、最新の研究結果は2024年に公開されている。そこでは、修正可能なリスク因子として14因子が挙げられ、難聴と高LDLコレステロール(LDL-C)が最も影響の大きな因子とされた1)。では、これらの因子の日本人における影響はどうだろうか。その疑問に答える研究結果が、和佐野 浩一郎氏(東海大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科 教授)らによって、The Lancet Regional Health – Western Pacific誌2026年1月号で報告された。本研究では、日本人は難聴が最も影響が大きく、14因子を合計すると最大で38.9%(グローバル研究は45%)が理論上予防可能であることが示された。 研究グループは2024年のLancet委員会の報告に基づき、14の修正可能なリスク因子(教育歴の低さ、難聴、高LDL-C、うつ、外傷性脳損傷、身体不活動、糖尿病、喫煙、高血圧、肥満、過度の飲酒、社会的孤立、大気汚染、未治療の視力低下)を調査対象とした。日本の国民健康・栄養調査や大規模コホート研究などのデータを用いて、各リスク因子の日本国内での該当割合を推定し、集団寄与危険割合(PAF)※1 および潜在的影響割合(PIF)※2 を算出した。これにより、本邦における認知症予防の潜在的規模を定量的に評価した。※1:あるリスク因子が存在しなかったと仮定した場合に、どれだけの割合で疾患発生が予防できた可能性があるかを示す指標※2:あるリスク因子を一定割合減らしたと仮定した場合に、どれだけの割合で疾患発生が減少する可能性があるかを示す指標 主な結果は以下のとおり。・全14因子を考慮した場合、認知症の38.9%が理論上予防可能であると推計された。影響が大きい因子(PAFが大きい因子)は、難聴、身体不活動、高LDL-Cであった。詳細は以下のとおり(括弧内はグローバル研究の数値を示す)。<早期(early life)>教育歴の低さ:1.5%(5%)<中年期(midlife)>難聴:6.7%(7%)身体不活動:6.0%(2%)高LDL-C:4.5%(7%)糖尿病:3.0%(2%)高血圧:2.9%(2%)うつ:2.6%(3%)喫煙:2.2%(2%)過度の飲酒:1.3%(1%)外傷性脳損傷:0.8%(3%)肥満:0.7%(1%)<老年期(late life)>社会的孤立:3.5%(5%)大気汚染:2.5%(3%)未治療の視力低下:0.6%(2%)・PIFについて、危険因子を一律に10%低減させた場合は4.7%(約20.8万人)の認知症が予防され、20%低減の場合は9.2%(約40.8万人)予防されると推計された。 本研究結果について、著者らは「日本における認知症予防戦略として、とくに聴覚ケア、身体活動の促進、代謝関連疾患の管理を優先すべきであることを示唆している。2024年に施行された認知症基本法や今後の認知症施策の具体化に向けて、これらの知見が科学的根拠として活用されることが期待される」とまとめている。

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6種類のSSRIの安全性プロファイル比較

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、現在のうつ病の薬物治療において中心的な薬剤であるが、実臨床における安全性プロファイルの比較に関しては、依然として情報が不足している。エビデンス不足は、臨床の意思決定や患者アウトカムに深刻な影響を及ぼす。中国・Bayer PharmaceuticalsのAdrian Chin Yan Chan氏らは、主要な6つのSSRIに関する安全性を分析するため、グローバルファーマコビジランス分析を実施した。Cureus誌2025年12月8日号の報告。 WHOの個別症例安全性報告データベースであるVigiBaseを用いて、主要な6つのSSRI(セルトラリン、fluoxetine、パロキセチン、citalopram、エスシタロプラム、フルボキサミン)に関する34万2,000件超の報告を含む包括的なファーマコビジランス分析を実施した。臨床的に関連する7つの安全性ドメイン(抗コリン作用、性機能障害、代謝作用、錐体外路症状、睡眠障害、離脱症候群、心伝導異常)について、情報成分(IC)値を用いた不均衡解析を実施した。 主な内容は以下のとおり。・各SSRI間で安全性プロファイルに有意な異質性が認められた。また、薬力学的特性と有害事象パターンの間には明らかな相関が認められた。・パロキセチンは、抗コリン作用、性機能障害、体重増加、離脱症候群の発生率が最も高かった。これは、ムスカリン性M1受容体への高い結合親和性(Ki:108nM)と相関していた。・citalopramは、心伝導異常の増加を示した。・fluoxetineは、錐体外路症状の増加を示した。・SSRIの半減期と離脱症候群の報告数との間に強い逆相関が認められた。 著者らは「本解析により、SSRIはそれぞれ異なる安全性プロファイルを示しており、それが薬力学的特性と相関していることが明らかとなった。この結果は、同クラスのSSRIを均質な治療薬群としてみなす従来の考え方に疑問を投げかけるものであった。これらの知見は、個々の患者のリスク因子に基づいた精密な処方アプローチを支持するものであり、エビデンスに基づいたSSRI選択のためのメカニズムに関する知見となりうる」と結論付けている。

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てんかん重積状態に対するジアゼパム点鼻液の利点

 てんかん重積状態(status epilepticus:SE)においては迅速な対応が予後を左右する。新たに登場したジアゼパム点鼻液(商品名:スピジア)が病院前治療にいかなる変革をもたらすのか、3人の専門家が紹介。迅速な発作終息がもたらす神経学的予後の改善と、患者・家族のQOL向上に向けた新たな可能性が示された。薬剤抵抗性てんかんの危険性 日本のてんかん患者は42万例と推定されるが、文献などによれば100万例にのぼる可能性がある。その中で、抗てんかん薬でも発作をコントロールできない薬剤抵抗性患者は20~30%いるとされる。てんかん発作の中でもSEは、「発作がある程度の長さ以上に続くか、または、短い発作でも反復し、その間の意識の回復がないもの」と定義される。SEの中でも5分以上持続するケースは治療対象となり、30分以上持続するSEでは高次脳機能障害、運動障害など深刻な後遺障害のリスクがきわめて高くなる。小児における重積化阻止と早期終息の重要性 国立精神神経医療センターの中川 栄二氏は、SEへの移行を未然に防ぎ、発作を早期に終息させることが、神経学的予後を改善するための最重要戦略であると述べた。 消防庁の報告では入電から医師への引継ぎまでに30分以上要した例は8割。 SEによる後遺症を回避するうえでも、医療機関に着く前の介入(病院前治療)は必要だ。小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023においても病院前治療の必要性が明記されている。 病院前治療としてのレスキュー薬の現状は満足できるものではない。現在のレスキュー薬はジアゼパム坐剤、ミダゾラム口腔用剤、抱水クロラールの坐剤/注腸である。しかし、発作時すぐに使えないなどの問題があり、使用後に救急搬送が必要になる場合も少なくない。簡便に投与でき、効果発現が早く、副作用が少なく、長時間作用を有するレスキュー薬が求められていた。 そのような背景の中、ジアゼパム点鼻液が承認された。点鼻液という特性から発作時にも投与しやすい。同剤は点鼻投与でありながら97%という生体利用効率を示し、非侵襲的で確実な血中濃度の立ち上がりを実現している。 小児患者における臨床試験では良好な成績も示されている。抗てんかん薬使用中も発作を発症した、あるいはジアゼパムによる発作抑制が必要な患者において、初回投与時の奏効率(発作抑制割合)は62.5%、1週以降24週後までの奏効率は80.2%にのぼった。けいれん発作消失までの時間中央値は1.5分で、5〜10分という坐剤の効果発現を考えると臨床的意義は大きい。ジアゼパム点鼻液の治療患者におけるSEの再発抑制は9割を超えていた。有害事象についても口腔用液で懸念される呼吸抑制のような重篤なものは認められておらず、医療機関外での使用における安全性も示されている。 近年、SE移行リスクのある発作に対する迅速介入の治療概念として「FAST(First Aid Seizure Termination)」が提唱されている。「迅速な効果発現と長時間持続を併せ持つジアゼパム点鼻液は新たなFAST治療薬」と中川氏は期待を寄せる。成人のSEにおけるジアゼパム点鼻液の可能性 獨協医科大学の藤本 礼尚氏は、成人てんかん患者のSE治療においてジアゼパム点鼻液の早期介入の可能性を訴えた。 てんかんは小児だけでなく成人にも多い。SEによる死亡率は成人でも高く、日本では8.5%、米国では20%を超えるという報告もある。前述のように現状の救急搬送は30分を超えており、てんかん治療ガイドラインによる5分以内のSE治療開始は困難だ。この「空白の時間に脳損傷が進行してしまうリスクがある」と藤本氏は警鐘を鳴らす。 成人のSEについても日本のレスキュー薬は十分とは言えない。海外ではSEに対する病院前治療の選択肢は豊富だが、日本の成人に対する保険適用は坐剤のみであった。成人の衣服を脱がせて坐剤を投与することはきわめて困難であり、成人SEに対するレスキュー治療の新たな選択肢が求められていた。 ジアゼパム点鼻液は成人にも使用可能であり、臨床試験でも有望な成績を示す。海外の成人を含む臨床試験の結果、作用発現までの時間は2分、発作停止までの時間は4分(いずれも中央値)であった。患者調査では約8割が2時間以内に普段の状態に戻ったと回答している。 「成人てんかんも救急搬送に頼らないで発作対応を目指すべき。将来は海外と同様に救急救命士がレスキュー薬を使用できることが望まれる」と藤本氏は述べる。患者・家族の視点から見たジアゼパム点鼻液の可能性 ドラベ症候群患者家族会の黒岩 ルビー氏は、ジアゼパム点鼻液による早期の発作終息は、不必要な救急搬送を回避し、患者とその家族のQOLを改善すると期待を示した。 ドラベ症候群は乳幼児期からてんかん重積発作を繰り返す希少・難治性のてんかんである。同家族会のアンケートでは、SEによる救急要請の回数は、11~20回が3割弱、31回以上は2割という結果であった。SE後の急性脳症発症を経験した割合は17%、その72%は後遺症を有している。 「元気だった子が、突然一生残る重度の障害を負うリスクがある」と黒岩氏は懸念する。また、頻繁な救急搬送や夜間発作が家族の慢性的な不安やうつ状態を招いてしまう。 ジアゼパム点鼻液により、てんかん発作の遷延を防ぐことができる。 さらに救急搬送が回避できることで、病院から離れられない生活から解放される可能性がある。とはいえ、発作はいつどこで起きるか予測ができない。家族と離れている保育園、学校、施設などにおいても点鼻薬のような簡便な手段があれば、職員の手で迅速な救護が可能となる。「そういった環境を整備していくことが重要だ」と黒岩氏は訴えた。

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うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法、不安レベルにより有効性に違いはあるか

 うつ病患者でよくみられる不安症状は、治療反応の低下と関連している。ブレクスピプラゾールの8週間第IV相オープンラベル試験「ENGAGE試験」において、抗うつ薬への治療反応が不十分なうつ病患者に対するブレクスピプラゾール0.5~2mg/日補助療法により、ライフ・エンゲージメント、抑うつ症状、不安症状の改善が認められた。大塚カナダファーマシューティカルのFrancois Therrien氏らは、臨床的に関連するサブグループにおけるブレクスピプラゾール補助療法の有用性を、ベースライン不安レベル別に明らかにするため、ENGAGE試験の事後解析を実施した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2025年12月29日号の報告。 ベースラインの不安に関するサブグループは、7項目の全般性不安障害評価尺度(GAD-7)の総スコアに基づき、なし/軽度(10未満)、中等度(10~14)、重度(14超)に分類した。各サブグループにおいて、10項目の自己記入式うつ症状尺度(IDS-SR10)のライフ・エンゲージメントサブスケールスコア、IDS-SR総スコア、その他の有効性アウトカムの変化を評価した。安全性についても解析した。 主な結果は以下のとおり。・ブレクスピプラゾール補助療法を受けた患者120例のうち、ベースライン時点での不安症状が、なし/軽度は30例(25.0%)、中等度は43例(35.8%)、重度は47例(39.2%)であった。・IDS-SR10ライフ・エンゲージメントサブスケールスコアおよびIDS-SR総スコアは、ベースラインから8週目までの全サブグループにおいて改善が認められた(nominal p<0.001)。・その他の有効性エンドポイントについても改善が認められた(全サブグループでnominal p<0.05)。・治療下での有害事象の発現率は、76.7%(なし/軽度)、72.1%(中等度)、57.4%(重度)であった。・新たな安全性シグナルは認められなかった。 著者らは「ブレクスピプラゾール補助療法は、ベースラインの不安レベルにかかわらず、患者のライフ・エンゲージメントおよび抑うつ症状の8週間にわたる改善と関連していた。この観察結果は、不安症状の有無にかかわらず、うつ病患者の治療におけるブレクスピプラゾール補助療法の臨床的意思決定を支持している」としている。

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日本における認知症有病率、2012年から変化〜久山町研究

 2010年代以降、アジア地域における認知症の有病率、発症率、生存率がどのように変化したかを調査した集団ベースの研究は、これまでほとんどなかった。九州大学の小原 知之氏らは、日本のコミュニティにおける37年間の疫学データを用いて、認知症の有病率、発症率、生存率の変化を調査した。Alzheimer's Research & Therapy誌2025年12月29日号の報告。 65歳以上の日本の地域住民を対象に、認知症に関する横断調査を7回実施した(1985、1992、1998、2005、2012、2017、2022年)。また、1988年(803例)、2002年(1,231例)、2012年(1,519例)に、認知症を発症していない65歳以上の住民を対象とした3つのコホートを設定し、それぞれ10年間フォローアップ調査を行った。認知症有病率の傾向は、ロジスティック回帰モデルを用いて検証した。年齢と性別で調整した後、コホート間で認知症発症率と認知症発症後の生存率を比較するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・認知症の粗有病率は、1985〜2012年にかけて有意な増加が認められた(1985年:6.7%、1992年:5.7%、1998年:7.1%、2005年:12.5%、2012年:17.9%、p for trend<0.01)。その後、2012〜22年にかけて有意な減少が認められた(2017年:15.8%、2022年:12.1%、p for trend<0.01)。・年齢と性別を調整した後でも、同様の傾向が認められた。・さらに、年齢および性別で調整した認知症発症率は、1988〜2002年のコホートで有意な増加が認められた(調整ハザード比[aHR]:1.68、95%信頼区間[CI]:1.38〜2.06)。その後、2002〜12年のコホートでは有意な減少が認められた(aHR:0.60、95%CI:0.51〜0.70)。・認知症発症後の年齢および性別で調整した5年生存率は、1988〜2002年のコホートでは有意な増加が認められた(47.3%→65.2%、p<0.01)が、2002〜12年のコホートでは有意な変化は認められなかった(65.2→58.9%、p=0.42)。 著者らは「2012年以降、日本における認知症の有病率と発症率は、減少傾向が観察された。認知症の発症率の低下は、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の予防とマネジメントの改善、そして健康的な生活習慣行動への意識向上と促進によるものと考えられる」と結論付けている。

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生成AIの使用頻度が高いほどうつや不安の重症度が高い

 生成AIの使用頻度が高いほどうつの重症度が高く、不安やイライラについても同様の傾向であったことが、米国成人における大規模インターネット調査でわかった。米国・マサチューセッツ総合病院のRoy H. Perlis氏らが生成AIの使用頻度と陰性感情症状との関連を調査した結果が、JAMA Network Open誌2026年1月2日号に掲載された。 本研究は、2025年4~5月に米国50州とコロンビア特別区で実施された18歳以上を対象としたインターネット調査のデータを使用した。参加者全員にAIの使用頻度を質問した(選択肢:「まったく使用しない」「1~2回」「月に1回程度」「週に1回程度」「週に複数回」「1日1回」「1日に複数回」)。陰性感情は、DSM-5の大うつ病性障害の個別の診断基準を含む9項目の患者健康質問票(PHQ-9)を用いて測定した。 主な結果は以下のとおり。・2万847人が参加し、平均年齢は47.3歳(SD:17.1)、女性が1万327人(49.5%)、男性が1万386人(49.8%)、ノンバイナリーが134人(0.6%)だった。・「1日1回」以上を選択した参加者は2,152人(10.3%)で、「1日1回」は1,053人(5.1%)、「1日に複数回」は1,099人(5.3%)だった。・「1日1回」以上使用している参加者のうち、1,033人(48.0%)が仕事、246人(11.4%)が学校、1,875人(87.1%)が個人利用目的で使用していると回答した。・重み付け回帰モデルでは、「1日1回」以上使用している参加者は、男性、若年成人、高学歴・高収入者、都市部在住者で有意に多かった。・社会人口統計学的に調整された回帰モデルにおいて、生成AIの使用頻度が高いほどうつ症状の重症度が高く(「1日1回」:β=1.08、95%信頼区間[CI]:0.55~1.62、「1日に複数回」:β=0.86、95%CI:0.35~1.37)、毎日使用する人は非使用者と比べ、中等度以上のうつ症状を報告する可能性が高かった(オッズ比:1.29、95%CI:1.15~1.46)。不安やイライラについても同様の傾向が観察された。・年齢別では、25~44歳(β=1.22、95%CI:0.70~1.74)または45~64歳(β=1.38、95%CI:0.72~2.05)でAI使用がうつ症状の悪化と有意に関連していた。

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気圧の変化は片頭痛の重症度や頻度に関係しているのか?~メタ解析

 片頭痛は、最も一般的な神経疾患の1つであり、悪心・嘔吐、羞明、音恐怖、感覚・視覚障害などの症状を伴う頭痛発作を特徴とする疾患である。気象条件などのさまざまな因子が潜在的な片頭痛の誘発因子であると考えられている。グレナダ・St. George's UniversityのAbduraheem Farah氏らは、気圧変化が片頭痛の重症度、頻度、持続時間に及ぼす影響を調査した既存エビデンスを評価し、統合することを目的として、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Cureus誌2025年11月14日号の報告。 本システマティックレビューは、PRISMAガイドラインに準拠し、実施した。適格基準を定め、PubMed、SCOPUS、EMBASE、CINAHLより包括的に検索した。関連研究をスクリーニングし、事前に定義されたスプレッドシートを用いてデータを抽出した。研究の質とバイアスのリスクは、NIHの観察研究、コホート研究、横断研究のための品質評価ツールを用いて評価した。 主な内容は以下のとおり。・特定された研究979件のうち、包含基準を満たした14件(1.4%)の2,696例(11〜70歳)を分析に含めた・対象者の2,372例(87.9%)は女性であった。・多くの研究は成人を対象としており、特定の地域で実施されていた。・すべての研究で主要な曝露として気圧が検討されていた。しかし、気圧変化の測定方法、片頭痛の重症度、時期、データソースは、各研究により大きく異なっていた。・結果の一貫性は認められなかった。しかし、いくつかの研究では、気圧の低下または急激な変動と片頭痛の頻度増加との有意な関連が報告されていた。ただし、重症度との関連を認めた研究は少なく、片頭痛の持続期間との関連を特定した研究はなかった。・既存のエビデンスの全体的な質は、測定方法、対象集団の特性、研究デザインにおける異質性など、方法論的な問題や潜在的なバイアスによって制限されていた。 著者らは「気圧の低下または変動と片頭痛の頻度増加との関連を示唆するエビデンスもいくつかあったが、片頭痛の重症度との関連は依然として不明であり、発作持続時間との関連を裏付けるエビデンスも存在しない。気圧の変化と片頭痛の特徴との関係を明らかにするためには、標準化された評価ツールや、より多様性に富んだ大規模な対象集団を用いた質の高い研究が求められる」としている。

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日々の小さな行動変容で寿命が延びる可能性

 健康増進のために、新しい食事計画を立てたりジムの会員になったりする必要はないようだ。あと数分長い睡眠時間を確保する、もう少し体を動かす、食事の質を少しだけ改善するといった日々のごく小さな行動変容が、長生きや健康の維持に寄与する可能性のあることが、新たな研究で示された。シドニー大学(オーストラリア)のNicholas Koemel氏らによるこの研究の詳細は、「eClinicalMedicine」に1月13日掲載された。 この研究でKoemel氏らは、UKバイオバンクのデータを用いて5万9,078人の高齢者(年齢中央値64.0歳、男性45.4%)について調べた。参加者は1週間にわたりリスト型のデバイスを装着し、睡眠と身体活動を測定した。食事内容については、自己申告による食習慣に関する調査結果を基に、食事の質スコア(Diet Quality Score:DQS)を算出した。DQSは0~100点で、スコアが高いほど食事の質が高いことを意味する。 解析の結果、最も不健康な生活習慣の群(夜間の睡眠時間が約5.5時間、1日当たりの運動時間が7.3分、食事スコアが36.9点)を基準とした場合、一晩当たりの睡眠時間が5分長く、1日当たりの運動時間が1.9分多く、DQSが5点高い生活習慣は、平均余命が約1年長いことと関連していると推定された。DQSの5点の上昇は、例えば、野菜を1日当たり0.5サービング増やすか、全粒穀物を1.5サービング多く摂取することに相当する食事改善を意味する。さらに、これら3つの行動変容を同時に達成しなくても、一晩当たりの睡眠時間が25分長いか、1日当たりの運動時間が2.3分多いか、DQSが35.5点高い場合でも、平均余命が約1年長いことと関連していると推定された。 Koemel氏は、「これらの小さな行動変容は、実際には意味のある影響を及ぼし、時間の経過とともに積み重なることで寿命の長さに大きな違いをもたらす」とNBCニュースに語っている。 研究グループは、参加者を8年以上にわたって追跡し、心疾患やがん、認知症、2型糖尿病などの重い疾患を発症することなく生きていた期間(健康寿命)についても調べた。その結果、最も不健康な生活習慣を基準とした場合、一晩当たりの睡眠時間が24分長く、1日当たりの運動時間が3.7分多く、DQSが23点高い生活習慣は、健康寿命が約4年長いことと関連していると推定された。 Koemel氏は、「この研究のポイントは、こうした小さな調整で全てが解決するというものでは必ずしもない。それよりも、どこから最初の一歩を踏み出すか、人々にとって達成可能で無理のない選択肢をどのように作り出すかの方が重要だ」とNBCニュースに語っている。 米疾病対策センター(CDC)のデータによると、米国の成人の約37%が推奨されている1日7時間の睡眠時間を確保できていない。米VCUヘルスのメディカル・ディレクターのMaha Alattar氏は、「睡眠時間を5分増やしても、その日のうちにすぐ効果を感じることはないかもしれない。しかし、1カ月単位で見れば、かなりの時間になる」と指摘する。同氏は、「このことは、長期的には健康状態の改善につながり得ると考えられる。というのも、われわれは逆の視点、つまり睡眠不足から健康を考えているからだ」と言う。 また、運動についても同様の傾向が認められ、ほとんど運動していなかった人が少しでも体を動かすようになった場合に最大の効果が得られることが示唆された。研究グループによると、運動の効果は1日当たり約50分でピークに達することも明らかになったという。 一方、米アリゾナ州立大学運動生理学教授のGlenn Gaesser氏は、「健康上のメリットを得るために生活習慣を大幅に見直す必要はない。将来の行動を予測する最も正確な指標は、過去の行動だ」と述べている。

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認知症予防に「エビデンス」はあるか? Lancetの14の危険因子を読み解く(その1)【外来で役立つ!認知症Topics】第38回

認知症を「予防」できるのか?認知症基本法の2つの軸は、予防と共生だとされる。この法律の成立過程では「認知症を予防できるのか? できもしないものを法律の目玉にするのはいかがなものか」という厳しい意見が相次いだ。背景には、家族が懸命に予防に努めながらも発症を防げなかったという、切実なケースが少なくなかったからだ。「主人はアルツハイマー病予防に良いとされる運動も脳トレも十分やった。睡眠もしっかり取り、栄養面では私が地中海式の食事作りに励んだ。だけどアルツハイマー病になり、最後は何もわからなくなって亡くなった。私たちが予防を怠けていたからこうなったと言うの?」確かに臨床の場においてこのような例は少なくない。血管性認知症なら血圧や血糖管理に一定の予防効果が期待できるだろう。しかし、アルツハイマー型認知症については、少なくとも近年までは「これ!」という手応えのある予防法はなかった。だからこそLancet誌では、2017年からGill Livingston氏を中心に認知症の真の危険因子を特定する試みを始め、2020年、2024年に改訂版が出された1,2,3)。最新の2024年版では「14の因子」が示され、これらに対応することで認知症発症を45%抑制できると述べられている。危険因子の定義と分類そもそも「危険因子(リスクファクター)」とは何か? どんな疾患も、とくに認知症のような生活習慣病においては、科学的根拠に基づき、疾患の発生と関連するとされる個々の因子を指す。科学的根拠があるとは因果関係が証明されていることである。危険因子は以下の5つのカテゴリーに分類される。1)行動危険因子:喫煙・飲酒、運動習慣などライフスタイル。2)生理学的危険因子:高血圧、肥満など主に生活習慣病に関連するもの。3)人口統計学的危険因子:年齢や性別など基本属性。4)環境危険因子:大気汚染や温暖化など。5)遺伝的危険因子:アルツハイマー病ならAPOE遺伝子など。Lancet誌が示したリスク因子は、これら5つのうち、1)行動危険因子、2)生理学的危険因子、4)環境危険因子に関わるものである。3)人口統計学的危険因子と5)遺伝的危険因子といった、個人の努力で修正不可能な因子は除外されている。画像を拡大するLancet誌のリスク因子は、1)として教育、運動、肥満、飲酒、喫煙、孤独、うつ、2)では糖尿病、高血圧、高LDL、難聴、視力低下、頭部外傷、4)として大気汚染に分けられる。アルツハイマー病理の変遷と「リスク」の正体アルツハイマー病研究の源流は、老人斑の主成分アミロイドβ、神経原線維の主成分タウにある。ところが、近年の抗アミロイドβ抗体薬の治験等を通じて、これらを減らしてもアルツハイマー型認知症は進行することが明らかになった。そこで近年では、神経炎症、酸化ストレス、さらに血液脳関門(BBB)などを介して病勢が進むと考えられ、その方向に沿った新薬も開発されつつある。ある要因をアルツハイマー病など認知症の「リスク」と呼ぶ以上、その要因がなぜ認知症の病理を生じさせるのか合理的説明が必要だ。その考え方に沿って、報告されたリスクに関する文献をたどってみた。ほとんどの要因について、アミロイドβやタウといった「伝統的」なものに働きかけるメカニズムだけでなく、神経炎症、酸化ストレス、さらにBBBを介する「新顔」のメカニズムにも言及されていた。以上の、いわばリスク総論に基づいて、これから14の危険因子の特徴を簡潔にまとめていく。今回は、これらのうち発症への寄与率がいずれも7%と最も高い「中年期からの難聴」と「高LDL」について、その具体的なメカニズムを整理したい。1.難聴がもたらす影響難聴については、「社会的孤立」「認知負荷の増大」「脳の構造的変化」という3つの考え方が主流になっている。まず「社会的孤立」は、聞こえにくくなると他人との交わりを避けるようになり、それが脳への刺激を減らし認知機能の低下を招く。次に「認知負荷の増大」は、難聴になると会話を理解するうえで大きな処理能力が必要になり、その負担が本来なら記憶や思考に使われるべき脳のリソースを損なうとする、いわばエネルギー保存の法則である。さらに「脳の構造的変化」は、長期間にわたる聴覚刺激の減少により、脳の聴覚野が萎縮し始め、この変化が脳全体の萎縮や神経回路の変性を促進する。2.高LDLが脳に与えるダメージ高LDLについては、まず「脳血管障害説」がある。脂質プラークが血管壁に蓄積し、血管を狭窄させて脳への血液灌流を減少させるという。またこれは、脳内でアミロイド前駆体タンパク質の分解酵素を活性化してアミロイドβ生成を高める。さらに、高LDLに関連する酸化LDL(Ox-LDL)がミクログリアを活性化することでサイトカイン放出を増加させ、脳内の慢性的な炎症状態が続き、神経細胞死を促進させる。残りの危険因子については、次回に取り上げる。1)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care. Lancet. 2017;390:2673-2734.2)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. Lancet. 2020;396:413-446.3)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404:572-628.

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がんと認知症の発症率は相関している?

 がんと認知症は、高齢化と社会経済の変遷の影響を受ける、主要な世界的健康課題である。いずれも大きな負担を強いるものの、人口レベルでの両者の関係は、これまで十分には検討されていなかった。オーストラリア・アデレード大学のWenpeng You氏らは、発達、人口動態、医療関連因子を考慮したうえで、がんと認知症の発生率の世界的な関連性を調査した。Future Science OA誌2026年12月号の報告。 保健指標評価研究所(IHME)より入手したデータを用いて検討を行った。共変量には、経済的豊かさ、都市化、選択機会の減少、60歳の平均寿命を含めた。204ヵ国を対象とした分析では、相関係数、偏相関係数、主成分分析、重回帰分析(エントロピー法とステップワイズ法)を用いた。サブグループ解析では、所得水準、発展途上国、WHO加盟地域、地政学的グループにより層別化した。 主な結果は以下のとおり。・がんの発生率は、世界全体で認知症の発生率と強い相関を示した(r=0.873、ρ=0.938、p<0.001)。・この関連は地域間で一貫しており、とくに上位中所得国および発展途上国で顕著であった。・偏相関では、調整後もこの関係が持続することが示され、がんは認知症の分散の59.8%であった。・回帰モデルでは、社会経済的および人口統計学的因子は、分散の51.7%であり、がんを含めると80.1%に上昇することが明らかになった。 著者らは「がんの発生率は、世界的に認知症の発症率の主な独立予測因子であり、従来の因子を上回っている。調査結果は、共通の決定因子を浮き彫りにしており、とくにリソースの少ない環境における統合的な慢性疾患戦略の重要性を示唆している」としている。

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医師会員の57%が花粉症と回答、オススメの予防法は

 全国的にスギ花粉の飛散が始まろうとしている。厚生労働省の統計によると、花粉症の有病率は2019年に42.5%となり、年々有病者数は増加しているという。国民病となった花粉症について、医師における有病率の違い、医師ならではの予防や対策などはあるのであろうか。 CareNet.comでは、2026年1月19~25日にかけて、会員医師1,000人(うち耳鼻咽喉科の医師100人を含む)に「医師の花粉症とその実態」についてアンケートを行った。花粉症へのアレルゲン免疫療法、生物学的製剤などの治療数は少ない 質問1で「花粉症かどうか」(単回答)を聞いたところ、「花粉症ではない」が40%と一番回答率高く、(診断を受け)「花粉症である」が33%、(診断を受けず)「花粉症である」が24%、「わからない」が3%の順で多かった。しかしながら、診断の有無を考慮しない場合、全体の57%が「花粉症である」を回答していた。 質問2で「花粉症で困る症状について」(複数回答)を聞いたところ、全体では「鼻汁」が81%、「くしゃみ」が59%、「目、皮膚、喉のかゆみ」が58%の順で多かった。耳鼻咽喉科とそれ以外の診療科の医師との比較では、両方で「鼻汁」が一番多かったが、「くしゃみ」、「目、皮膚、喉のかゆみ」、「鼻閉」などで若干の差がみられた。また、「集中力の低下」と「倦怠感・頭痛」は、それ以外の診療科の医師からの回答数が耳鼻咽喉科の医師の回答の2倍以上だった。 質問3で「花粉症の治療としてどのようなことをしているか」(複数回答)を聞いたところ、全体では「医療用医薬品の内服薬」が72%、「OTC薬の内服薬や外用薬」が29%、「医療用医薬品の外用薬」が26%の順で多かった。耳鼻咽喉科とそれ以外の診療科の医師との比較では、両方で「医療用医薬品の内服薬」が一番多かったが、「OTC薬の内服薬や外用薬」と「医療用医薬品の外用薬」で順位が逆転していた。また、それ以外の診療科の医師では「アレルゲン免疫療法」、「生物学的製剤」、「手術」の治療を行っていたが、耳鼻咽喉科の医師は行っていないという回答結果だった。 質問4で「お勧めの花粉症予防法・対策」(自由記載)について聞いたところ、全体では「マスクの着用」が19%で多く、「専用眼鏡・ゴーグルの着用」と「鼻洗浄・鼻うがい」は4%と同じ回答率だった。耳鼻咽喉科とそれ以外の診療科の医師との比較では、耳鼻咽喉科の医師では「専用眼鏡・ゴーグルの着用」の回答率が多く、「鼻洗浄・鼻うがい」はほぼ同じ回答率だった。 質問5で「花粉症にまつわるエピソード」を聞いたところ、下記のようなコメントが寄せられた。【花粉症の症状のエピソード】・くしゃみが止まらなくて、風邪と判断されることが多々ある(30代/膠原病・リウマチ科)・花粉症の活動期は喘息発作も起きやすくなるので注意している(60代/麻酔科)【治療薬に関するエピソード】・ワセリンの鼻への塗布が有効(40代/麻酔科)・花粉の飛散の日内変動は朝と夕方にあるので、作用時間の長い薬剤の方が効果的(60代/糖尿病・代謝・内分泌内科)【患者への助言などのエピソード】・患者に自分が使っている薬を教えると喜ばれる(50代/耳鼻咽喉科)・処方に合わせて鼻うがいを指導している(30代/耳鼻咽喉科)【花粉症予防に関するエピソード】・だいたいバレンタインデーの頃から花粉症の問診と処方を開始する(50代/心療内科)・花粉に曝露しないことが一番大事。曝露したときは鼻うがいで洗い流すが、真水ではだめ(60代/耳鼻咽喉科)■参考医師の花粉症とその実態について/医師1,000人アンケート

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てんかん患者向けAIチャットボット「えぴろぼ」との会話解析でわかったこと

 人工知能(AI)搭載チャットボットは、患者教育やメンタルヘルス支援での活用が広がっている。今回、てんかん患者や家族を支援する目的で開発されたAIチャットボット「えぴろぼ」との会話を解析した結果、相談内容によって利用者の気持ちの動きが異なることが分かった。医療相談ではポジティブな感情の強度が高まる傾向が示された一方、内省的な会話ではポジティブな感情の変化が小さい傾向がみられたという。研究は、埼玉大学大学院理工学研究科/先端産業国際ラボラトリーの綿貫啓一氏、国立精神・神経医療研究センターの倉持泉氏によるもので、詳細は12月11日付で「Epilepsia Open」に掲載された。 てんかん患者は、発作だけでなく、誤解や偏見に伴う心理社会的な困難にも直面している。こうした背景から、正確な医療情報と心理的支援を、気兼ねなく受けられる新たな支援手段が求められている。近年、AIチャットボットは匿名性や常時利用可能といった特長から、患者教育やメンタルヘルス支援への活用が進んでいる。てんかん向けに開発されたAIチャットボット「えぴろぼ」は、こうしたニーズに応えるツールであり、会話には医学的質問から感情を伴う内容まで多様な要素が含まれる。本研究では、高度な自然言語処理技術を用いて、AIチャットボット「えぴろぼ」の利用パターンを識別することと、会話を通じて利用者の気持ちがどのように変化するかを明らかにすることを目的とした。 チャットボットのプレテスト段階におけるテキスト上のやり取りを分析対象とした。参加者は埼玉医科大学総合医療センターからリクルートされた計23名で、内訳はてんかん患者10名、介護者10名、医療従事者3名であった。会話内容の分類には、日本語の医療文献で事前学習された自然言語処理モデルであるJMedRoBERTaを用い、ユーザーのメッセージを内容クラスターに分類した。感情の変化の解析にはDeBERTaを用いた。感情分析は、「えぴろぼ」とのやり取りが80回以上あったてんかん患者5名を対象とした。内容分析ではUMAP(Uniform Manifold Approximation and Projection)およびk-means法クラスタリングを用い、客観的な医療相談と主観的で緊急性の低い相談を区別した。さらに、感情分析により、チャットボットとの会話が感情的関与に与える影響を検討した。 解析には、「えぴろぼ」利用者23名によるメッセージのうち、意味のある600件のメッセージを用いた。さらにメッセージの長さによる影響を避けるため、50文字以下の492件を最終的な解析対象とした。 会話内容の解析から、解析内容となったメッセージは主に2つの内容クラスターに分類された。JMedRoBERTaで抽出した特徴量をUMAPとk-means法で解析した結果、てんかん治療薬の調整や管理方法など、客観的な医療情報を求める質問が中心の「医療相談クラスター」と、意味の解釈や気持ちの整理など、主観的・内省的な問いが多い「探索的利用クラスター」が同定された。医療相談クラスターは332件、探索的利用クラスターは160件と、医療相談に関するやり取りが多くを占めていた。 さらに、DeBERTaを用いた感情分析では、メッセージごとにポジティブ・中立・ネガティブの3つの感情強度が算出された。その結果、前向きな学習や気分の安定を目的としたやり取りでは、ポジティブな感情の強度が高まる傾向が確認された。一方で、他者からの見え方や自己評価に関する内省的な問いでは、ポジティブな感情の変化は小さい傾向がみられた。 著者らは、「本解析よりAIチャットボットが単なる情報提供にとどまらず、利用者の感情面においても一定の利益をもたらす可能性が示唆された。一方で、今後はより共感的なAI応答や、利用者の状況に応じた個別化支援の強化が課題になるだろう」と述べている。

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アリピプラゾールLAIへの切り替えは患者満足度を向上させるのか?

 統合失調症は、治療アドヒアランスの低さを特徴とする慢性精神疾患であり、再発や機能低下につながることが少なくない。アリピプラゾール月1回投与(AOM)などの長期作用型注射剤(LAI)は、アドヒアランスを改善し、再発率を低下させることで、潜在的な解決策となる可能性がある。イタリア・University of ChietiのGianluca Mancusi氏らは、6ヵ月かけて標準治療の経口非定型抗精神病薬からAOMに切り替えた統合失調症患者における臨床的有効性、安全性、忍容性、患者満足度を評価した。Frontiers in Psychiatry誌2025年12月3日号の報告。 本研究は、非盲検単群ミラーイメージ試験として実施した。対象は、経口抗精神病薬による治療で少なくとも2ヵ月間症状が安定していた統合失調症成人患者40例。6ヵ月間の経口抗精神病薬治療期間をレトロスペクティブに評価した後、AOMへの切り替え後6ヵ月間、プロスペクティブにフォローアップ調査を実施した。臨床評価には、Investigator's Assessment Questionnaire(IAQ)、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)、治療満足度アンケート(TSQM 1.4)を用いた。副作用は、自己申告および医師による評価ツールを用いてモニタリングした。 主な結果は以下のとおり。・最初のフォローアップ診察を完了した患者は25例。・IAQスコアは、経時的に統計的に有意な改善が認められ、全般的な臨床効果の向上が示された(6ヵ月時点:p=0.010)。・CGI-Sスコアも有意な低下が認められ、疾患重症度の低下を示した(6ヵ月時点:p<0.001)。・TSQMで測定した患者満足度は、3ヵ月および6ヵ月時点で有意な増加が認められた(p<0.001)。・AOMは忍容性が良好であり、体重増加、錐体外路症状、プロラクチン値に軽微な変化がみられたが、統計学的に有意な差は認められなかった。・とくに、陰性症状スコアの統計的に有意な改善が認められた(p=0.032)。・有害事象を報告した患者は5例(18%)であり、その多くが中等度で、治療中止には至らなかった。 著者らは「統合失調症患者における経口抗精神病薬からAOMへの切り替えは、臨床転帰、症状の重症度、治療満足度の有意な改善と関連しており、良好な安全性および忍容性プロファイルを示した。これらの知見は、早期統合失調症におけるAOMの使用を支持しており、長期的な服薬順守と機能回復を促進する可能性を示唆している。これらのベネフィットの持続性、再発予防、生活の質への影響を評価するには、さらに長期にわたる研究が求められる」としている。

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ストレス解消目的のオンラインショッピング、実は逆効果かも

 ストレス解消のために、オンラインショッピングをしていないだろうか。新たな研究で、その行為は見当違いである可能性が示唆された。オンラインショッピングは、ニュースを読むことやメールチェックなどよりもストレスとの関連が強いことが明らかになったという。アールト大学(フィンランド)のMohammad Belal氏らによるこの研究結果は、「Journal of Medical Internet Research」に1月9日掲載された。 Belal氏は、「この研究から、ソーシャルメディアやオンラインショッピングの利用時間が増えるほど自己申告によるストレスも増加することが、複数の利用者層やデバイスに共通して確認された」とニュースリリースで述べている。 研究グループは、ドイツ在住の18歳以上の1,490人を7カ月間追跡し、URLレベルでどのサイトをどのくらいの時間見たかを記録できるプログラムを用いてインターネットの利用状況を分析した。また、対象者の社会人口統計学的データを集め、月ごとにストレスレベルを測定した。7カ月間でウェブページ訪問は4,710万701件(ドメインは23万6,955)に上り、モバイルアプリの利用は1,355万3,645件記録された。 解析の結果、インターネットの利用とストレスの間には状況によって異なる複数の関連が認められ、ソーシャルメディア、オンラインショッピング、ゲームは、利用時間が長くなるほどストレスレベルも高くなっていた。例えば、モバイル端末でのオンラインショッピングはストレスレベルの上昇と有意な関連を示した。デスクトップパソコンを使ったオンラインショッピングでもストレスレベルは上昇したが、統計学的に有意ではなかった。一方、生産性に関わるウェブサイトやニュースサイトなどの閲覧時間は、ストレスレベルの低下と関連していた。さらに、高ストレス者がモバイル端末でソーシャルメディアやゲーム、インターネット全般を多く使うと、さらにストレスが増加する傾向も認められた。 Belal氏は、「やや意外なことだが、ニュースサイトの利用時間が長い人ほど、ストレスが低いことが分かった。一方、もともとストレスレベルが高い人は、ニュースをあまり読まない傾向がある。これは、ストレスがニュース消費を減らすという過去の研究結果とも一致する」と話している。 ただし研究グループは、因果関係の方向は不明だとしている。これは、ストレス解消のためにオンラインショッピングをしているのか、それともオンラインショッピングがストレスを増やしているのかは、現時点では不明だということである。 論文の上席著者であるアールト大学のJuhi Kulshrestha氏は、「オンラインショッピングやソーシャルメディアの利用がストレスを生んでいるのか、それともそれらが辛い時期に重要な支えとなっているのか、この『鶏と卵』の問題を解くにはさらなる研究が不可欠だ。特定のインターネットの利用を一律に制限しても、問題解決にならないどころか、苦しんでいる人から重要な支えを奪ってしまう可能性もある」と述べている。 研究グループは今後、ニュースの内容の違いがストレスやウェルビーイングにどう影響するかなど、より詳しい分析を行う予定だとしている。Kulshrestha氏は、「人々のインターネット利用をより正確に把握できるようになれば、閲覧行動を調整し、ウェルビーイングを高める新たなツールの開発も可能になるだろう」と述べている。

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相手の顔が「悪魔」に見える疾患【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第299回

相手の顔が「悪魔」に見える疾患図. prosopometamorphopsiaが見た人の顔(生成AIにて作成)他人の顔がまるで「悪魔」のように見える疾患をご存じでしょうか。2024年にLancet誌に掲載されたため、ご存じの読者も多いかもしれません。顔貌変形視(prosopometamorphopsia)という疾患があります。顔の形状、質感、位置、あるいは色が歪んで知覚される視覚障害であり、世界的にも報告例が限られています。Mello A, et al. Visualising facial distortions in prosopometamorphopsia. Lancet. 2024 Mar 23;403(10432):1176.患者は58歳の男性です。31ヵ月にわたり「人の顔が歪んで見える」という症状が持続しており、精査目的で受診されました。患者の訴えは非常に具体的でした。顔の各パーツが強く引き伸ばされ、額・頬・顎に深い溝が刻まれるように見えるというのです。本人はこの見え方を「悪魔のような顔」と表現しました。この歪みは、患者が出会うすべての人の顔に認められました。家族であろうと、友人であろうと、初対面の人であろうと、例外なく顔が歪んで見えるのです。興味深いことに、この歪みには明確な選択性がありました。家や車などの物体を見たときには、歪みを自覚しないというのです。つまり、この知覚異常は顔に特異的であり、物体認識には影響を及ぼしていませんでした。さらに注目すべき点があります。患者は、顔が歪んで見えていても、相手が誰であるかは認識できたと述べています。これは、顔の同一性認識(誰の顔であるかを判断する機能)が比較的保たれていたことを示唆しています。相貌失認(prosopagnosia)では顔の同一性認識そのものが障害されますが、本症例ではそうではありませんでした。また、「歪んで見える人物が実は別人である」といった妄想的な症状も伴っていませんでした。そして、本症例の最も特異な点は、画面上あるいは紙面上の顔画像を見た場合には歪みが生じないということでした。目の前にいる人の顔は悪魔のように歪んで見えるのに、その同じ人をスマートフォンで撮影した写真を見ると、正常に見えるのです。患者の既往歴を確認すると、双極性障害と心的外傷後ストレス障害(PTSD)がありました。さらに重要な既往として、43歳時に入院を要する重度の頭部外傷がありました。また、55歳時には一酸化炭素中毒の可能性があり、これは顔の歪み症状が出現する4ヵ月前のことでした。受診時点で処方薬の内服はなく、違法薬物の使用も否定されました。頭部外傷と一酸化炭素中毒という二つの脳への侵襲が、本症例の病因として関与している可能性が考えられました。脳のT1強調およびT2強調MRIでは、興味深い所見が認められました。円形の病変が確認され、T1強調像で低信号、T2強調像で高信号を呈していました。最大径は約1cmでした。左海馬頭部の上方に位置しており、左海馬を約3mm下方へ圧排していました。ただし、左海馬の内部構造自体は保たれていました。神経内科医の評価では、この病変はクモ膜嚢胞である可能性が高いとされました。前述のとおり、患者は「画面上や紙面上の顔画像では歪みが起こらない」と述べていました。この特異な現象学を利用して、研究チームは独創的なアプローチを試みました。まず、同一室内で同一の照明条件下に顔写真を撮影しました。そして患者に、その場で直接見る顔(対面の顔)と、コンピュータ画面上に表示された顔写真を交互に観察するよう依頼しました。これにより、顔貌変形視は本当に「悪魔の顔に見える」ことが示されたと言えます。実際の画像は著作権的に提示できませんが、生成AIで作成した冒頭の図のように、目・口・耳などが横長に伸びて見えるらしいです。

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不思議の国のアリス症候群、特定の薬剤が関連か

 不思議の国のアリス症候群(Alice in Wonderland syndrome:AIWS)は、物体や人の大きさが変わって見える、体が宙に浮くような感覚、時間の歪みなどの視覚的・知覚的歪みを伴う神経疾患である。従来から片頭痛やてんかん発作との関連が指摘され、その後、腫瘍や感染症、さらには薬物との関連も報告されている。フランス・ニース大学病院のDiane A. Merino氏らによる研究グループは、世界保健機関(WHO)の医薬品安全性データベースを解析した結果、モンテルカストやアリピプラゾールなどの特定の薬剤がAIWSの発現に関与している可能性を明らかにした。Psychiatry Research誌2026年2月号に掲載。 本研究では、1967年~2024年12月15日までにWHO医薬品安全性データベースVigiBaseに登録されたAIWS症例を抽出し、小児(0〜17歳)と成人(18歳以上)に分けて不均衡分析を実施した。AIWSと薬剤の関連性は、シグナル指標としてInformation Component(IC)と95%信頼区間(CI)を算出し、95%CIの下限値(IC025)が正の値を示す場合をシグナルが検出されたとみなした。 主な結果は以下のとおり。・抽出されたAIWS 87例のうち、小児は26例(29.9%)で平均年齢7.1歳(標準偏差[SD] 4.0)、成人は45例(51.7%)で40.6歳(SD 13.0)であった。・56例(64.4%)が重篤と判断された。転帰が判明している症例のうち43例(79.6%)が回復または回復中であることが確認された。・小児群では、喘息・アレルギー治療薬のモンテルカスト(IC:3.2、95%CI:1.7~4.2)および注意欠如・多動症(ADHD)治療薬のメチルフェニデート(IC:2.3、95%CI:0.3~3.5)において有意なシグナルが検出された。・成人群では、抗うつ薬のセルトラリン(IC:3.4、95%CI:2.1~4.4)、抗てんかん薬のトピラマート(IC:3.1、95%CI:1.3~4.2)、抗精神病薬のアリピプラゾール(IC:3.6、95%CI:2.5~4.4)、およびモンテルカスト(IC:2.7、95%CI:0.7~3.9)に有意な関連が認められた。・新型コロナウイルスワクチンも頻繁に報告されていたが(17例、19.5%)、統計的に有意なシグナルは検出されなかった(IC:0.63、95%CI:-0.26~1.31)。一方で、髄膜炎菌ワクチンについては有意なシグナルが認められた(IC:2.7、95%CI:1.2~3.7)。 本研究により、メチルフェニデートやモンテルカストといった特定の薬剤が年齢層に応じてAIWSを引き起こすトリガーとなる可能性が示唆された。著者らは、AIWSは通常、薬剤の投与中止により回復するが、視覚的・知覚的歪みの症状が患者に混乱をもたらす可能性があるため、慎重なリスク・ベネフィット評価が必要であり、本研究は自発報告データベースに基づくため、今後さらに大規模な集団ベースの調査が必要だとまとめている。

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双極症におけるベネフィットを最大化させるアリピプラゾールLAI使用のタイミングは?

 双極症I型(BP-I)は、慢性かつ再発性の精神疾患であり、躁/軽躁状態およびうつ状態の両極端の気分スペクトルを交互に呈する特徴を有している。2015年、米国におけるBP-Iの推定年間総コストは2,000億ドルを超え、一般人口の約2.5倍に達した。これは主に急性期医療サービスの利用増加によるものであった。アリピプラゾールなどの長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬が開発されたことにより、経口剤と比較して、治療順守に関する患者の負担を大幅に軽減し、一貫した投与量および治療成績の向上が可能となった。これまでのリアルワールドエビデンス研究では、統合失調症患者において、アリピプラゾール月1回注射剤(AOM)を早期に開始することによるベネフィットが示されている。しかし、BP-I患者集団における早期AOM開始の有効性は、いまだ不明であった。米国・大塚ファーマシューティカルD&CのShivanshu Awasthi氏らは、MarketScanメディケイドデータベースの請求データを用いたレトロスペクティブ解析により、リアルワールドにおけるBP-I成人患者に対するAOM 400mg(AOM 400)の有効性を診断後早期開始(180日未満)と遅延開始(365日超)の場合で比較した。Journal of Managed Care & Specialty Pharmacy誌2026年1月号の報告。 アウトカムは、1年間における救急外来、入院、外来、薬局の受診回数と関連コストとした。遅延開始者対照群として、早期、中期、遅延治療開始者における年間コストの比較には、一般化線形モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・BP-I患者866例(年齢中央値:36歳)のうち、早期開始群は161例、後期開始群は591例であった。・早期開始群は、後期開始群と比較し、救急外来受診(発症率比:0.76、95%信頼区間[CI]:0.61〜0.94)、外来薬局受診(発症率比:0.82、95%CI:0.73〜0.93)のリスクが有意に低かった。・早期開始群は、後期開始群と比較し、薬局受診コスト(1万8,787ドルvs.2万3,503ドル、p=0.03)および医療コスト(1万3,898ドルvs.1万8,277ドル、p=0.01)も低かった。・全体として、フォローアップ期間中の総医療コストは、早期開始群が後期開始群よりも大幅に低かった(3万1,086ドルvs.4万599ドル、p<0.001)。・早期開始群は、中期開始群と比較し、総医療コストが有意に低かった(3万1,086ドルvs.4万892ドル、p=0.01)。 著者らは「BP-I患者におけるAOM 400の早期開始は、後期開始と比較し、医療資源利用と関連コストの低減という大きなベネフィットをもたらす可能性がある」と結論付けている。

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知人が死んだ【Dr. 中島の 新・徒然草】(617)

六百十七の段 知人が死んだ寒さが続きますね。家の中にいても寒い。なので、風呂に入って身体を温めたりして何とか凌いでいます。もうすっかり寒さに弱い人になってしまいました。さて、オンライン英会話では講師との話題選びが大切。毎回どのような話をするか、頭を絞っています。話題として鉄板なのは最近の出来事。記憶も感情も新しいことが、英語を喋る駆動力になるからです。今回は、つい先日亡くなった知人についての話をしようと思いました。知人というのは、友達の友達くらいの関係です。同じ中学校に通っていたことになりますが、お互いに知りませんでした。なんせ1学年が12クラスほどあったので、同学年でも知らない人のほうが多かったくらいです。せっかくなので、知人と友人それぞれに名前を付けておきましょう。知人はヒロノリ、友人はトモキくらいにしておきます。昨年の夏ごろ、トモキから数年ぶりに連絡がありました。トモキは中学校時代の卓球部のチームメイト。親友のヒロノリががんになって困っているから相談に乗ってくれないか、というものです。私のよく知らないがんではありましたが、ともかく話を聴くことにしました。トモキとヒロノリは、2時間ほどかかって車でやってきました。一見したところ、ヒロノリはとくにどこも悪くはなさそうです。ステージの進んだがんにしては、しっかりしているというのが第一印象でした。彼は数ヵ月前に体調不良を感じたため、いくつかの医療機関を受診したけれども、どこでも軽くあしらわれたとのこと。で、知り合いの精神科医に頼んでCTを撮影してもらったところ、怪しい影が見つかりました。「このがんなら○○病院の××先生だ」と皆が口を揃えて言うので、○○病院を受診したそうです。××先生はすぐに生検で診断を確定し、治療を開始したのだとか。ただ、すでに進行していたがんのため、治療をしていても先が見えてきません。そこで、今の主治医でいいのだろうか、都会に行けばもっと気の利いた治療があるのではないか、そう思って私にアドバイスを求めてきたのです。彼の話を聴いた私は、現在の治療を続けるように伝えました。その理由はいくつかあります。まず、複数の医師が現在の主治医の名前を挙げたこと。その先生は診断・治療とも即応してくれたこと。さらに医学的な必要性があれば休日出勤を厭わないこと、などなどです。そして私はこうも付け加えました。「標準治療こそが最強だ。この世に奇跡の治療なんぞ存在しない」と。私の説明を聴くにしたがって、徐々にヒロノリの顔が明るくなっていきました。2人は再び車に乗って帰っていきましたが、トモキによると、ヒロノリは目に見えて元気になったとのこと。「頑張って今の治療を続けて、残された時間で孫の成長を見守りたい」と言っていたそうです。その後、時々トモキやヒロノリから連絡をもらいました。抗がん剤の副作用がつらいとか、周囲との人間関係がうまくいっていないとか。進行がんなら当然起こりそうなことです。私も自分にできる範囲でアドバイスを行いました。そしてつい先週のこと。トモキからメールをもらいました。素人目に見ても、ヒロノリは状態が良くないのだとか。治療を中止して家で過ごしたいと言っている、とのこと。それも1つの方法です。なので、在宅緩和ケアについて、一般的なアドバイスをしました。私の患者さんが自宅で眠るように息を引き取ったということもあり、在宅緩和ケアは1つの有力な方法だと思ったからです。が、病状の悪化は予想以上に速く、4日後にトモキから来たメールは、ヒロノリが亡くなったことを知らせるものでした。いずれ起こることではあったので、その時は「そうか」と思っただけです。以上のことを時系列に沿って並べてみました。オンライン英会話で喋るための予習です。文字にしながら、改めて彼らとのやり取りを思い出しました。あくまでも英語の勉強なので、レッスン中には講師相手にできるだけ淡々と喋るよう心掛けたつもりです。でも、喋っているうちに胸につかえるものがありました。私の手元には、彼らが私を訪ねてきた時に撮った写真があります。夏らしく軽装のものでした。ヒロノリが前向きの闘病姿勢になってくれたことを考えると、専門外とはいえ医師として有用なアドバイスができたのではないか、と思います。専門にかかわらず、友人や知人にこういった助言を求められる年齢になったのかもしれません。最後に1句夏の日の 写真の君は 旅立てり

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うつ病予防に最適な睡眠時間が判明!

 睡眠時間とうつ病の関係は、公衆衛生上の重要な懸念事項である。中国・四川農業大学のHansen Li氏らは、米国成人における平日と週末の睡眠時間がうつ病の有病率とどのように関連しているかを調査した。International Journal of Behavioral Medicine誌オンライン版2025年12月19日号の報告。 対象は、パンデミック前の最新の米国国民健康栄養調査(NHANES)2017~20年3月より抽出された、20歳以上の成人4,089人。睡眠時間とうつ病指標との関連を調査するため、相関分析および非線形回帰分析を実施した。さらに、性別による差異の可能性を調査するため、性別ごとに層別化し、分析した。 主な結果は以下のとおり。・スピアマン相関係数および制限付き3次スプライン解析の結果、週末の睡眠時間はうつ病の有病率と相関していた。しかし、うつ病の総スコアやアノイアンスとは相関は認められなかった。・制限付き3次スプライン解析では、睡眠時間とうつ病の有病率、総スコア、アノイアンスとの間にU字型の関連が認められた。・うつ病の有病率の変曲点は、平日で約7.7時間、週末で約8.3時間であった。・睡眠時間中央値を基準とした期待オッズ比に基づくと、より良い睡眠時間は、平日7.5~7.8時間、週末8.0~8.7時間であると特定された。・この関連性には、男女差も認められた。 著者らは「本研究結果は、これまでの知見を裏付け、さらに発展させ、睡眠不足と睡眠過剰の両方がうつ病の有病率の上昇と関連していることを明らかにした。特定された睡眠時間は、性別によって若干の差異はあるものの、うつ病のリスク低減に役立つ可能性がある。また、今回の結果は、睡眠とメンタルヘルスの複雑な関係をさらに強調し、睡眠行動の週内変動にも注意を払う必要性があることを示唆している。これらの知見が、今後より洗練され、個別化されたメンタルヘルス促進戦略の開発に役立つ可能性がある」とまとめている。

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1日2~3杯のコーヒーがメンタルヘルスに有益

 コーヒー摂取と精神疾患リスクとの関連性は、集団ベースの研究において依然として一貫性が認められていない。カフェイン代謝や性別による潜在的な修飾作用については、これまであまり研究されていなかった。中国・復旦大学のBerty Ruping Song氏らは、インスタント、挽きたて、カフェイン抜きなどのさまざまな種類のコーヒーの毎日の摂取量と各種精神疾患との関連性を調査し、カフェイン代謝や性別によって、この関連性が異なるかどうかを調査した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年12月19日号の報告。 本研究では、英国バイオバンクのデータを用いてプロスペクティブ解析を実施した。気分障害およびストレス障害は、入院記録よりICD-10コードを用いて特定した。関連性の評価には、多変量補正Cox比例ハザード回帰モデルおよび制約付き3次スプライン曲線を用いた。さらに、性別およびカフェイン代謝の多遺伝子リスクスコアによる影響の潜在的な修飾作用についても検討した。 主な結果は以下のとおり。・本解析に参加した46万1,586例(男性の割合:46.4%、平均年齢:57±8.1歳、平均BMI:27.3±4.71kg/m2)のフォローアップ期間中央値は13.4年であり、気分障害の発症は1万8,220例、ストレス障害の発症は1万8,547例に認められた。・多変量補正モデルでは、コーヒー摂取量と精神疾患アウトカムとの間にJ字型の関連が認められた。最もリスクが低かったコーヒーの摂取量は、1日2~3杯の中等度の量であった。・コーヒー摂取量と気分障害の関連は、男性でより顕著であった(p for interaction=0.02)。しかし、カフェイン代謝の遺伝子型による影響に関する証拠は認められなかった。 著者らは「コーヒー摂取と精神疾患との間にはJ字型の関連が認められ、適度なコーヒーの摂取は精神衛生に有益である可能性が示唆された」としている。

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