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日本人の全般性不安症患者が抱える満たされないニーズ判明

 ヴィアトリス製薬の野本 佳介氏らは、臨床試験に参加した日本人の全般性不安症(GAD)患者を対象に、本研究を実施した。疾患認識レベル、過去の医療を求める行動および診断歴、症状と日常生活への影響、診断および臨床評価に対する認識、そして試験参加後の変化を調査した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2026年2月24日号の報告。 本研究は、ウェブベースの質問票を用いた量的(記述的)研究として、2025年4月23日〜5月25日に実施した。対象患者は、DSM-5に基づきGADと診断され、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬ベンラファキシンのB2411367臨床試験に登録歴のある患者。症状と疾患負担に関する患者の直接的な経験は、自由記述式回答によって収集した。 主な結果は以下のとおり。・98例の回答者のデータを分析した。・試験登録時に最も多く報告されたGADの症状は、過度の不安または心配(99.0%)、易疲労性(86.7%)、睡眠障害(82.7%)であった。・回答者の半数以上(53.1%)が、日常生活で最も影響を受けているのは仕事または勉強であると回答し、集中力の低下、効率の低下、身体的負担を訴えた。・疾患認知度に関しては、回答者の72.4%がGADについて聞いたことがなく、71.4%が不安の原因を性格に起因するものであると回答した。・試験参加前に医療機関を受診していた患者は、11.2%であった。その際、最も多かった診断はうつ病(36.4%)であり、GADと診断された患者は9.1%のみであった。 著者らは「多くのGAD患者は、試験参加前に病名を知らず、日常生活に影響を与える症状を抱えていた。患者の直接の体験談は、彼らの負担についてより深い洞察をもたらした。この調査結果は、臨床試験に参加した日本人GAD患者のアンメットニーズ、そして一般の疾患認知度の低さや臨床現場での認知度の低さを浮き彫りにしている。GADの認知度向上に向けた取り組みは、早期診断の促進と適切な治療へのアクセス拡大に役立つ可能性がある」としている。

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第55回 認知症予防に「リチウム」が効く? 新たな治療法を探る「パイロット研究」の意味

物忘れが気になり始めた高齢者の認知機能低下を、古くからある気分安定薬「リチウム」で防げるかもしれない。そんな期待を込めた初期段階の臨床試験(パイロット研究)の結果が、医学誌JAMA Neurology誌に発表されました。決定的な「効果あり」という結論には至りませんでしたが、新しい治療法を生み出すために、こうした地道な研究がいかに重要であるかを解説します。認知症の一歩手前「MCI」とリチウムへの期待軽度認知障害(MCI)は、記憶力などに少し低下が見られるものの、日常生活には支障がない状態のことを指し、健康と認知症の中間段階にあたります。近年、アルツハイマー病の発症メカニズムに「脳内のリチウム不足」が関わっている可能性が動物実験で指摘され、リチウムを補うことが脳の神経を保護し、認知機能の低下を遅らせるのではないかと注目を集めてきました。これを検証するため、米国ピッツバーグ大学の研究チームは、MCIの高齢者80例を対象に臨床試験を行いました。参加者を2つのグループに分け、一方には低用量(1日150〜300mg)のリチウムを、もう一方には偽薬(効果のないプラセボ)を2年間にわたって毎日飲んでもらい、記憶力や脳の容積の変化などを詳しく調べました。気になる研究結果は?結論から言うと、あらかじめ設定されていた6つの主要な評価項目(認知機能テスト、海馬の容積、大脳皮質の容積、血液中のバイオマーカーなど)すべてにおいて、統計学的に明確な「効果がある」という厳しい基準を満たすことはできませんでした。脳の海馬や大脳皮質の容積は、リチウムを飲んでも偽薬を飲んでも、時間とともに同じように減少していく経過が観察されました。しかし、希望が見えるデータもありました。言葉の記憶力を測るテストでは、偽薬のグループが1年で平均1.42点スコアが低下したのに対し、リチウムのグループは0.73点の低下にとどまっていたのです。この差は、厳格な統計基準には届かなかったものの、病気の進行を遅らせる可能性を示すデータと言えます。安全性についても重要なデータが得られました。研究期間中、薬が直接の原因と考えられる深刻な副作用は発生しませんでした。ただし、クレアチニン(腎機能の指標)の上昇、下痢、疲労感、手の震えなどが一部の参加者に見られ、高齢者が無理なく服用できる用量には限界があることも指摘されました。なぜ「効果が証明されなかった研究」が重要なのかこれらの結果を見ると、「なんだ、結局効くかどうかわからないのか」とがっかりされるかもしれません。しかし、今回の研究は「パイロット研究」と呼ばれる非常に重要なステップです。新しい治療法を世に出すためには、最終的に数百人、数千人規模の患者さんが参加する大規模な試験で効果を証明しなければなりません。しかし、いきなり大規模な試験を行うのは、患者さんの安全性や莫大な費用の面でリスクが大きすぎます。そのため、まずは少人数で「そもそもこの薬の量は高齢者にとって安全か?」「患者さんは2年間も薬を毎日飲み続けられるか?」「効果を正確に測るためには、どのテストが最適か?」を確かめる必要があるのです。実際、今回のパイロット研究から「高齢者には1日300mgを超えるリチウムは負担が大きい」という教訓が得られ、将来の大規模試験では150〜300mgの用量で行うべきだという方針が立ちました。また、アルツハイマー病の原因となるアミロイドが脳に蓄積している患者さんに絞って試験を行えば、より明確な効果が確認できる可能性が高いこともみえてきました。未来の医療へ向けた冷静な一歩今回のニュースから私たちが知っておくべきことは、「認知症予防のために、今すぐ焦ってリチウムやサプリメントを自己判断で飲んではいけない」という事実です。現時点では、リチウムがMCIの進行を食い止めると証明されているわけではありません。しかし、医学研究はこうして患者さんの安全を第一に守りながら、一つひとつのデータを積み重ねて慎重に進められています。失敗や「効果なし」というデータも含めて、すべてが次の大きな発見のための重要なピースになります。将来、リチウムが安価で身近な認知症の予防薬として確立される日が来るかもしれません。期待を持ちながらも、焦らず見守っていくことが大切です。1)Gildengers AG, et al. Low-Dose Lithium for Mild Cognitive Impairment: A Pilot Randomized Clinical Trial. JAMA Neurol. 2026 Mar 2. [Epub ahead of print]

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統合失調症におけるLAI抗精神病薬の使用までの期間と入院リスクとの関係

 長時間作用型注射(LAI)抗精神病薬は、統合失調症の初期段階で推奨されることが増加している。韓国・University of Ulsan College of MedicineのSung Woo Joo氏らは、LAI抗精神病薬治療開始時期が初回エピソード統合失調症における治療中止および入院期間にどのような影響を及ぼすかを検討した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2026年2月9日号の報告。 韓国健康保険審査評価院の保険請求データベースを用いて、LAI抗精神病薬による継続治療を受けている初回エピソード統合失調症患者6,380例を特定した。診断からLAI抗精神病薬治療開始までの期間に基づき、6群に分類した(1年未満、1~2年、2~3年、3~4年、4~5年、5年超)。継続的なLAI抗精神病薬使用中の治療中止と精神科入院日数の割合を、Coxモデルと線形回帰モデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・初期のLAI抗精神病薬治療は、時間の経過とともに増加した。しかし、継続的治療期間は減少した。・診断後2年超経過してからLAI抗精神病薬治療を開始した患者は、1年以内に開始した患者よりも治療中止リスクが低かった(2~3年:ハザード比[HR]=0.77[0.69~0.87]、3~4年:HR=0.77[0.68~0.86]、4~5年:HR=0.70[0.61~0.79]、5年超:HR=0.66[0.59~0.74])。・LAI抗精神病薬の治療開始時期の遅れは、とくに入院歴のある患者において、精神科入院の増加と関連が認められた(1~2年:β=0.039、p=0.039、3~4年:β=0.057、p=0.010、5年超:β=0.162、p<0.001)。また、5年超経過した患者群では、治療開始時期の遅れが入院日数の増加をさらに引き起こした(β=1.87×10-4、p<0.001)。 著者らは「LAI抗精神病薬の治療開始時期の遅れは、治療順守率の向上と関連していたものの、LAI抗精神病薬の早期使用は入院負担を軽減した。これは、統合失調症におけるLAI抗精神病薬治療の早期導入を推奨するガイドラインを裏付けている」と結論付けている。

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統合失調症、うつ病のガイドライン教育が日本の精神科治療に及ぼす影響は?

 教育的介入は、直接介入を受ける参加者だけでなく、同じ組織内の非参加者にも影響を与える可能性がある。北海道大学の堀之内 徹氏らは、リアルワールドにおける臨床診療ガイドラインの実施において、組織内における教育的スピルオーバー効果が生じるかどうかを検証した。Asian Journal of Psychiatry誌2026年4月号の報告。 2016〜24年に精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDE)プロジェクトに参加した298施設における、統合失調症(2万2,032例)およびうつ病(1万1,207例)の入院患者の退院データを収集した。患者は、精神科医の参加および施設内での参加状況に基づき、グループ1(精神科医:不参加、施設内:不参加)、グループ2(精神科医:不参加、施設内:参加)、グループ3(精神科医:参加、施設内:参加)の3つのグループに分類した。主要アウトカムは、ガイドライン推奨治療の実施率(品質指標:QI)とした。EGUIDEのトレーニング効果は、順序変数(グループ1<グループ2<グループ3)としてモデル化した。年齢、性別、施設の種類を調整したロジスティック回帰分析を用いてオッズ比(OR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者では11のQIのうち9つ、うつ病患者では7つのQIのうち5つで有意な正の関連が認められた(例:QI-S1:治療抵抗性統合失調症の診断評価、調整OR:1.98、p<2.78×10-192)。・ガイドライン順守率は、グループ1からグループ3にかけて順次増加が認められた。 著者らは「本研究は、非ランダム化実臨床において、教育的スピルオーバー効果が参加した精神科医だけでなく同じ施設内の参加していない精神科医にも影響を及ぼすことを実証した初めての研究である。これらの知見は、ガイドライン実施戦略において施設レベルのスピルオーバー効果を活用することの重要性を強調している」と結論付けている。

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生涯を通じた食生活の質が認知機能と関連している

 食生活は、高齢期における認知機能低下や認知症発症のリスク因子である。しかし、食生活の質と認知機能の長期的な関係は、これまであまりよくわかっていなかった。米国・タフツ大学のKelly C. Cara氏らは、食生活の質と認知機能の傾向、そして生涯にわたるこれらの相互関係について調査を行った。Current Developments in Nutrition誌2025年12月20日号の報告。 1946年英国出生コホート(3,059例、男性の割合:50.2%)のデータを用いて、混合軌跡モデリング(group-based trajectory modeling)により、幼少期から成人期後期までの食生活と認知機能の軌跡およびそれらの関連性、また食生活の軌跡とその後の認知症の徴候との関連性を調査した。Healthy Eating Index-2020のスコアは、4歳、36歳、43歳、53歳、60~64歳における食事の回想および日記から算出した。認知機能の全体的パーセンタイル順位は、8歳、11歳、15歳、43歳、53歳、60~64歳、68~69歳における知的能力と認知機能の検査から算出した。68~69歳におけるアデンブルック認知機能検査IIIのスコアに基づき、認知症の可能性を評価した。多項ロジットモデルを用いて、軌跡群の早期予測因子を決定した。 主な結果は以下のとおり。・3つの食生活の質の軌跡および4つの認知機能の軌跡が特定された。・性別、出生地、幼少期の社会階級、余暇活動は、軌跡群の予測因子であった。・結合軌跡モデルでは、認知機能が最も低い群には、主に食生活の質が低いまたは中程度の参加者がそれぞれ58%、35%含まれていた。・一方、認知機能が最も高い群には、食事の質が中程度または高い参加者がそれぞれ57%、36%含まれていた。・68~69歳で認知症の兆候を示した参加者の割合は、食事の質が低い群で、中程度および高い群と比較し、それぞれ3.8%、7.4%高かった。 著者らは「これらの結果は、生涯を通じた食事の質と認知機能との間に関連があること、そして幼少期から成人期にかけて食事の質が低い人は認知症の可能性が高いことを示唆している。食事ガイドラインに沿った食生活を長期にわたって継続することは、生涯を通じて認知機能にプラスの影響を与える可能性がある。しかし、これらの結果を確認するには、より多くの縦断的研究が求められる」としている。

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日本人統合失調症外来患者における抗精神病薬の多剤併用パターンを調査

 統合失調症治療において抗精神病薬単剤療法が推奨される標準療法であるにもかかわらず、2種類以上の抗精神病薬の併用と定義される多剤併用は、臨床現場で依然として一般的に行われている。佐賀大学の祖川 倫太郎氏らは、日本の統合失調症外来患者における抗精神病薬の多剤併用率とその要因について調査するため、全国横断調査を実施した。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2026年2月18日号の報告。 2024年10月21~25日に、医療機関36施設より3,657例の外来患者データを収集した。患者は、抗精神病薬の単剤療法群と多剤併用群に分類され、年齢、性別、薬剤投与頻度、長時間作用型注射剤(LAI)、クロザピン、併用向精神薬の使用状況などの人口統計学的および臨床的特徴を比較した。抗精神病薬の投与量はクロルプロマジン換算量に標準化し、性別および年齢層別に解析した。 主な内容は以下のとおり。・抗精神病薬の多剤併用は、40.8%の患者で認められた。・多変量解析では、抗精神病薬の多剤併用は、男性、高齢、LAIの使用、抗パーキンソン病薬、抗不安薬/睡眠薬、気分安定薬の併用と有意な関連が認められた。一方、クロザピンの使用とは逆相関が認められた。・クロルプロマジン換算量は、処方された抗精神病薬の数に応じて増加し、40~59歳の患者でピークに達し、その後減少していた。・全体として、第2世代抗精神病薬が優勢であったが、第1世代抗精神病薬の使用は多剤併用に伴い増加が認められた。 著者らは「これらの知見は、性別および年齢に関連した処方パターンを考慮した抗精神病薬のマネジメントが重要であることを示唆している」とまとめている。

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中年期の健康的な食事は認知機能低下リスクを抑制する?

 今日の食卓に並んでいるものが、高齢になったときの脳の老化に影響を与える可能性があるようだ。中年期に健康的な食事をしている人では高齢期に認知機能が低下するリスクが低いことが、新たな研究で示された。米ハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院疫学・栄養学分野のKjetil Bjornevik氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Neurology」に2月23日掲載された。 Bjornevik氏らは、「野菜や魚を豊富に、ワインは適量を摂取することは、認知機能低下リスクの抑制に寄与していた一方、赤肉や加工肉、フライドポテト、糖分の多い飲料は認知機能の低下に関連していた。この結果は、健康的な食事が将来の脳の健康に有益である可能性を示唆している」と述べている。 今回の研究では、米国の女性看護師と男性医療従事者を対象に、健康状態を生涯にわたって追跡した3件の大規模研究のデータを統合し、合計で15万9,347人(平均年齢44.3歳、女性82.6%)を対象に解析が行われた。Bjornevik氏らは、各参加者の食事内容を調べ、心臓の健康に良いとされるDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食、健康的な植物性食品ベースの食事指数(Healthful Plant-Based Diet Index;hPDI)、プラネタリーヘルスダイエット指数(Planetary Health Diet Index;PHDI)、代替健康食指数(Alternative Healthy Eating Index 2010;AHEI-2010)など、6種類の健康的な食事法の遵守度をスコア化した。その上で、同スコアと高齢期の自己申告に基づいた主観的な認知機能低下との関係を調べた。 その結果、脳の健康を守る効果が最も高いのはDASH食であることが示された。具体的には、DASH食の遵守度が上位10%の人では下位10%の人と比べて、認知機能低下のリスクが41%低かった(リスク比0.59、95%信頼区間0.57〜0.62)。特に、45~54歳の時点でDASH食の遵守度が高いことは、認知機能低下リスクが低いことと最も強く関連していた。また、血糖値や炎症の抑制を目的とした食事法も認知機能低下のリスクを下げることが示された。 45〜54歳の人で関連が最も強かった点について、今回の研究には関与していない米ノースウェル・ヘルスの管理栄養士であるStephanie Schiff氏は、「この年代の人は『年をとれば記憶力は衰えるし、頭の回転も鈍くなってぼんやりするものだ。それが老化現象であり、どうすることもできない』と思いがちだ。だからこそ、適切な食事法を守れば、あるいはDASH食に従えば、記憶力や認知機能、注意力、言語能力、実行機能を改善できる可能性があることを示したこのハーバード発の研究結果には心を躍らされる」と付け加えている。 本研究では、DASH食以外の健康的な食事法も認知機能低下のリスクを11~24%低下させることが示された。さらに、野菜、果物、魚、ワイン、紅茶、ドレッシングはいずれも良好な認知機能に関連していた一方、フライドポテト、赤肉や加工肉、卵、甘い飲み物、菓子類は認知機能の悪化に関連していた。 Schiff氏は、DASH食が脳に大きなメリットをもたらすことが示されたことに驚きはなかったと話す。「心臓の健康に良いDASH食に従った食事を摂取することには利点しかない。心臓を健康に保つことは、脳を健康に保つことにつながるからだ」と同氏は言う。 また、DASH食は血圧を下げることを重視しているが、このことが脳の老化に対する有益性の多くを説明している可能性があるとSchiff氏は考察している。高血圧は血管に損傷を与えるが、その中には脳に血液を送る血管も含まれる。「脳に十分な血液が送られなくなると酸素が不足し、脳細胞の損傷をもたらす。その結果、認知機能や記憶力の低下、さらにはアルツハイマー病のリスクが上昇する可能性がある」と同氏は説明している。

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認知症患者に対する抗精神病薬使用が死亡リスクに及ぼす影響は

 神経精神症状は、認知症で頻繁にみられ、機能低下、介護者の負担、死亡率の主要な要因となっている。症状が重症化したり、非薬物療法に反応しなくなったりすると、抗精神病薬を使用することが多いが、いまだに安全性への懸念が残っている。とくに、地域社会で生活する神経精神症状を有する患者において抗精神病薬の使用が生存率に及ぼす影響は依然として明らかになっていない。スペイン・Clinica Josefina ArreguiのKevin O'Hara-Veintimilla氏らは、認知症および神経精神症状を有する高齢者における抗精神病薬使用と全死亡率との関連性を検討するため、以前発表したシステマティックレビューおよびメタ解析の2次解析を行った。Dementia and Geriatric Cognitive Disorders誌オンライン版2026年2月10日号の報告。 本解析は、PROSPERO(CRD42024621462)に登録、コクランハンドブックに従って実施、PRISMA 2020ガイドラインに準じて報告された。神経精神症状が記録されている65歳以上の地域在住の認知症患者を対象に、抗精神病薬の使用と全死亡率の調整ハザード比(aHR)を報告した研究を適格な観察研究とした。プール推定値は、固定効果モデルを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・5件の観察コホート研究より抽出された1万4,183例を対象に解析を行った。・抗精神病薬の使用と全死亡率との間に有意な関連は認められなかった(プールされたaHR:1.06、95%信頼区間[CI]:0.97〜1.16、p=0.21、I2=43%)。・サブグループ解析では、定型抗精神病薬ではaHRが0.79(95%CI:0.62〜1.01)、非定型抗精神病薬ではaHRが1.23(95%CI:0.97〜1.56)であり、クラス間で有意差が認められた(p=0.03)。 著者らは「認知症および神経精神症状を有する地域在住高齢者において、抗精神病薬の使用と全死亡率の間に統計的に有意な関連は認められなかった。しかし、利用可能なエビデンスは限定的で不正確であるため、不確実性が大きかった。そのため、これらの知見は慎重に解釈する必要がある」と結論付けている。

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ニセ警察からの電話【Dr. 中島の 新・徒然草】(624)

六百二十四の段 ニセ警察からの電話だんだん暖かくなってきましたね。花粉さえなければ最高の季節なんですけど。ChatGPTの厳しい指導のもと、私は毎日6,000歩のウォーキングを続けています。花粉の多い日でも何とかノルマを達成しなくてはなりません。なので、家の中をグルグルと歩いて辻褄を合わせております。さて、先日は外来で患者さん(50代、女性)に驚くべき録音を聞かされました。なんと、ニセ警察からスマホにかかってきた詐欺電話です。早速、診察室で再生してもらいました。 ニセ 「大阪府警ですが静岡県警から捜査協力の要請を受けて○田○子さんにご連絡しております」 患者 「はいはい」 ニセ 「現在静岡県警と合同捜査中の事件に関する内容で、○田さんにお伝えしなくてはならない重要な事項がありますので」 患者 「はい、は~い」 このニセ警察、妙に爽やかです。好青年すぎて逆に違和感しかありません。ホンモノの大阪府警って、もっと馴れ馴れしいオッチャンたちばっかりな気がします。まあ、関西人というのは、私も含めて全体に爽やかさが足りないわけですが。 ニセ 「本人確認書類となる身分証明書をお持ちのうえで、本日ですね、大阪府警の警察本部にお越しいただくことは可能でしょうか」 患者 「はい」 ここでニセ警察にちょっとした戸惑いが感じられました。電話をかけた相手が、まさか大阪に住んでいるとは思っていなかったのかもしれません。詐欺の場合は「そんな遠くは行けません」と言わせておいて、「それではビデオ通話で取り調べを行います」と提案し、ニセの警察手帳や逮捕状を見せて本物と信じ込ませるのが通常の手口なのだとか。さらにやり取りは続きます。 ニセ 「お越しいただくことは可能ですか」 患者 「行きますよ」 ニセ 「何時頃来られますか」 患者 「何時でも」 ニセ 「すぐに来られる、と」 ここで急に患者さんの声が大きくなります。 患者 「どういったご用件ですか」 ニセ 「すぐに来られるということですか」 患者 「どういうご用件ですか。静岡県警の誰ですか!」 「ブチッ」という音とともに電話は切れてしまいました。あまりにも面白いやり取り、そのまま聞き流すのももったいない。そこで診察室でもう一度再生してもらって、自分のスマホで録音しました。自分も詐欺に遭わないためには、何回も聴く必要があります。家に持って帰って、女房にもこの録音を聞かせたところ…… 女房 「この人、何をいきなりキレているわけ?」 中島 「キレてるのかなあ。このくらい平常運転でしょう」 女房 「こんなに怒鳴られたら、ニセ警察もビックリしたと思うわ。いったい何の病気なの?」 中島 「高次脳機能障害やけど」 女房は「やっぱり!」という表情になりました。この患者さんはいつもこんな感じなので、私もすっかり慣れてしまっていました。確かにご本人は「私、腹が立ったら自分でも止められへんねん」と普段から言っています。たまたまこの患者さん、詐欺電話を受けた日にお姉さんが自宅に来ていたとのこと。このお姉さんは以前に警察に勤めていたこともあって、詐欺の手口もよく知っていました。横から「スピーカーにしろ」とか「録音しろ」とか紙に書いて指示されたそうです。さらに、警察からの連絡の場合は電話番号の下4桁が「1234」になるのだとか。言われてみれば、警察署の代表番号は常に「1234」です。詐欺を見破る有力な方法ですが、気が付きませんでした。ただ、最近は詐欺師のやり方も手が込んできて、こちらのディスプレイに表示される番号の下4桁が「1234」となることもあるとのこと。そうなると何が正しいのか、わからなくなってしまいます。が、少なくとも「1234」以外の番号から警察を名乗る電話がかかってきたら、疑ってかかったほうがよさそうですね。詐欺を巡っては、ほかにもいろいろな報道がされています。ニュースによると、最近の警察は「仮想身分捜査」なるものを行っているのだとか。これは捜査員が架空の身分で闇バイトに応募・潜入するもので、2025年には13件実施し、5人を摘発し、7件を未然防止したそうです。「ひょっとして捜査員が紛れ込んでいるかも」と犯罪組織に思わせたら、抑止効果のほうも期待できるかもしれません。ともあれ、読者の皆さんも、ニセ警察からの詐欺電話に引っ掛からないようご注意ください。最後に1句 彼岸過ぎ 詐欺師相手に ブチ切れる

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双極症患者の心理社会的機能回復を阻害している症状は?

 閾値下うつ症状は、双極症患者の機能回復を著しく阻害することが知られている。これまでの多くの研究では、これらの症状が機能に与える影響を評価するために全体的スコアが用いられてきた。スペイン・サン・パウ病院のC. M. Bonnin氏らは、寛解期双極症患者において、どの閾値下うつ症状が最も機能回復を阻害するのかを検証するため、本研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2026年2月14日号の報告。 対象は、双極症患者413例。17項目からなるハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)を用いて閾値下うつ症状を評価し、機能評価簡易検査(FAST)を用いて心理社会的機能を測定した。HAM-Dの項目に加え、機能障害に関連するその他の臨床的および人口統計学的変数を同定するために、二変量解析を行った。二変量解析において有意な関連を示した変数を用いて、多変量線形回帰分析を実施した。主な結果は以下のとおり。・FAST合計スコアの線形回帰モデルでは、「精神運動遅滞」(項目8)が心理社会的機能と最も強い関連を示し(β=6.9、p<0.001)、次いで「罪悪感」(項目2)(β=5.75、p<0.001)、「仕事と活動」(項目7)(β=5.38、p<0.001)、「身体不安」(項目11)(β=3.45、p<0.001)が続いた。・その他の有意な臨床変数は、抗精神病薬の使用、高齢、教育歴の少なさ、男性などであった。・このモデルは、FAST合計スコアの分散の39.6%を説明した(R2=0.396、調整R2=0.375、F(399.13)=20.04、p<0.001)。 著者らは「精神運動遅滞、アパシー、罪悪感、身体不安といった特定の閾値下症状は、心理社会的機能に有意な影響を及ぼすことが示唆された。本知見は、患者が臨床的に安定している場合であっても、機能回復の達成には、これらの症状を具体的に標的とすることの重要性を強調している」としている。

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日本における認知症介護者、BPSDによる負担増加とQOL低下が明らかに

 アルツハイマー病患者における認知症の行動・心理症状(BPSD)は、介護者の負担、ひいてはケアの質に深刻な影響を及ぼす可能性がある。東京慈恵会医科大学の品川 俊一郎氏らは、日本のアルツハイマー病患者の介護者において、BPSDおよびBPSDのサブタイプと介護者の負担およびQOLとの関連を明らかにするため、本研究を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2026年1月28日号の報告。 本調査では、マクロミルに登録されているアルツハイマー病患者の同居介護者を対象に、ウェブベースのアンケートを実施した。BPSDの有病率は、Neuropsychiatric Inventory-Questionnaire(NPI-Q)の日本語版を用いて測定した。介護者の負担、健康関連QOL、ソーシャルケア関連QOLを評価するため、それぞれZarit介護者負担尺度日本語版(J-ZBI)、EQ-5D-5L、介護者向け成人ソーシャルケア成果ツールキット(ASCOT-Carer)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・回答者705人中、BPSDを有する患者を介護していたのは639人(90.6%)、BPSDのない患者を介護していたのは66人(9.4%)であった。・介護者の平均年齢は54.6歳であり、男性の割合が56.9%、両親または義理の両親を介護していた人の割合は84.0%であった。・BPSDを有する患者を介護していた人は、BPSDのない患者を介護していた人と比較し、J-ZBIスコアが高かった(平均差[MD]:6.7、95%信頼区間[CI]:4.5〜9.0、p<0.001)。一方、EQ-5D-5Lスコア(MD:-0.076、95%CI:-0.134〜-0.018、p=0.010)およびASCOT-Carerスコア(MD:-0.101、95%CI:-0.168〜-0.033、p=0.003)は低かった。 著者らは「日本のアルツハイマー病患者の介護者において、介護負担増加とBPSDの間に有意な関連が示された。これは、日本の介護者の医療および社会福祉関連QOLの低下と関連している可能性を示唆している」としている。

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65歳を過ぎてからの予防でも遅くはない! Lancetの14の危険因子を読み解く(その2)【外来で役立つ!認知症Topics】第39回

前回に続き、今回もLancet誌が掲げる認知症の修正可能な危険因子(リスクファクター)を扱う1)。当初は、前回解説した「難聴」と「高LDLコレステロール(LDL-C)」以外の12因子について個々に述べる予定であったが、その前に筆者自身、見落としがあると反省している。改めて注意喚起すべきは、これらはあくまで「認知症」の危険因子であって、必ずしも「アルツハイマー病(AD)」のみを指すものではないことだ。認知症の危険因子は70以上に及ぶとよく言われるが、示された14の危険因子がすべての認知症原因疾患(AD、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、その他)に当てはまるとは考え難い。一方で世界的に見ても、認知症の3分の2はADが占める。だから実際には、広く認知症全般に対する危険因子を論じているはずが、無意識に「ADの危険因子」として捉えてしまいがちだ。実際に、関係論文を読み込んでみても、こうした分野の知見の大部分はADに関するものであり、それ以外では血管性認知症とレビー小体型認知症に関するものがわずかにあるに過ぎない。たとえば血管性認知症については高血圧と糖尿病などが該当し、レビー小体型認知症なら大気汚染のPM2.5だろうか。いずれにせよ、認知症の危険因子を語るうえでは、ADに関わるものが主体になっている。こうした背景を踏まえ、危険因子とその対策を考えるうえで、基本でありながら見失いがちな「3つの視点」を整理しておきたい。ライフステージに沿った病理の段階を理解するまずLancetによる報告の1つの特徴は、危険因子を年代別に分けていることである。筆者は、これが「若年期・中年期・老年期」の3段階に分けられているのは、ADの発症から進行という病理の段階に沿って危険因子を説明したいからではないかと思う。その段階とは、「発病以前・発病の芽生え・発病前夜」である。1)若年期(発病以前):若年期の教育が、脳の神経回路や「認知予備能」という脳の骨格を作る。つまり大脳の基礎力がこの時期に形成されるわけだ。そして後年、これを維持し育てていくことが予防につながると考えればいいだろう。2)中年期(発病の芽生え):中年期は脳内でアミロイドの沈着が始まるという意味で、AD脳の芽生えの時期だと考えられる。この時期の危険因子では、通称「悪玉コレステロール」のLDL-Cや難聴、糖尿病などの疾病や障害が主体である。これらは中年期に発症しやすくAD病理の悪化を促進させるため、この時期に「悪の芽」を摘んでおくことが重要だ。3)老年期(発症前夜):老年期の危険因子である孤独や大気汚染、視力低下などは、発症の準備がほぼ整ったステージにおける「とどめの一押し」になりうる。これら3つの危険因子は、いずれもアミロイド仮説との直接的な関係は薄いかもしれないが、むしろ脳の衰弱ぶりを露呈させてしまう「最後の悪役」とみなすべきだろう。こうした要因はこれら3つに限らない。たとえば、せん妄や大腿骨頸部骨折、さらに入院など生活の場の変化といった要因もまた、認知症発症のとどめの一押しだったと経験された読者も多いだろう。画像を拡大する「疾患・障害」と「生活・環境」に分けて考える14の危険因子は、大きく2つのグループに分類できる。一つは、「疾患・障害リスク」である。糖尿病やLDL-Cが代表的で、これらは従来のアミロイド仮説を軸に、そこから派生した慢性炎症や抗酸化、また血管脳関門の観点から説明しやすい。もう一つは、「生活・環境リスク」だ。アミロイド仮説では説明し難いものである。上記の「教育」のように、若年期に基礎が作られた脳内ネットワーク・認知予備能といった別の考え方で説明される傾向がある。このように分類する理由を、次のように換言することもできるだろう。つまり前者の危険因子に注目することで、ADという病気の進行プロセスをくい止めようという表街道の予防法があることがわかる。また後者へ注目すれば、健常な神経細胞を増やす、あるいは減少させないという狙いの予防法もあるとわかる。前者が表街道なら、後者は側面からの援護射撃と例えられるだろう。65歳を過ぎてからの「予防」の留意点以上を踏まえて、65歳以上で現在は認知症ではない人を想定して、危険因子と予防を説明する際の留意点を述べたい。まず伝えたいのは、「若年期・中年期の危険因子は、老年期に入ったら無関係になるわけではない」ということだ。たとえば、若い頃の教育が不十分だったとしても、「生涯学習」の言葉どおり、人生を通して学び続ける姿勢は脳の維持につながるはずだ。この考え方は、中年期の危険因子の大半、とくに糖尿病や高血圧といった生活習慣病の管理にも当てはまる。一方で、こうした「老年期からの予防でも遅くはない」という考え方では難しい危険因子もある。その代表は「頭部外傷」だろう。というのは、過去の頭部外傷がもたらした脳へのダメージを癒したり進行を阻止させたりする確たる方法は、今のところなさそうだからである。実際、これまで調べた範囲では、頭部外傷という危険因子への対応の多くは、これからの転倒・転落を防ぐための方法であった。再発防止がポイントという意味で、「うつ病」への対応もそれに似ているかもしれない。最後に、老年期特有の因子として、「孤独」「大気汚染」「視力低下」がある。具体的には次回述べるが、これらは上記の「過去の蓄積」の危険因子とは異なり、「今現在の問題」である。実際の対応がそう容易だとも思われないが、これらへの備えを一念発起して始めるのに遅すぎるということはない。今からでも着手できるという意味で、最も重要かもしれない。1)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404:572-628.

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境界性パーソナリティ障害に対する薬物療法の比較~ネットワークメタ解析

 境界性パーソナリティ障害(BPD)は、精神科医療において大きな割合を占めており、自殺による死亡率は一般人口と比較して著しく高いことが知られている。フランス・エクス・マルセイユ大学のCyril Gerolymos氏らは、BPD症状に対する薬物療法の有効性と安全性を評価・比較するためシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2026年2月10日号の報告。 2024年1月15日~2月12日に、Medline、Web of Science、Google Scholarよりシステマティックに検索した。実薬群とプラセボ群または他剤群を比較したランダム化臨床試験を対象とした。標準化平均差は、ランダム効果ペアワイズ法およびネットワークメタ解析を用いて推定した。薬剤とプラセボの有意差を比較したエビデンスレベルの評価には、GRADE NMAガイダンスを用いた。 主な結果は以下のとおり。・2,551例を対象とした35件の試験において、26種類の治療法がプラセボと比較されていた。バイアスリスクは、低い18件、中程度5件、高い12件であった。・トピラマート(200~250mg/日、8~10週間)、ラモトリギン(50~200mg/日、8週間)、アリピプラゾール(15mg/日、8週間)は、敵意、攻撃性、怒りを最も効果的に軽減し、怒りのコントロールを改善した。・カルバマゼピン(200~1,200mg/日、6週間)とアセナピン(5~10mg/日、12週間)は、それぞれ衝動性と感情の調節不全を改善した。・トピラマート、ラモトリギン、アリピプラゾールは、敵意と怒りの軽減について、それぞれ高い、中程度、中程度のエビデンスレベルを示した。・カルバマゼピンとアセナピンは、衝動性と情緒調節障害に対する有効性について、低いまたはきわめて低いエビデンスレベルを示した。・一方、アルプラゾラム、メチルフェニデート、ハロペリドール、バルプロ酸は、ランダムに抽出されたBPDサンプルにおいて確実性の低いエビデンスしか得られず、優先されるべきではないことが示された。 著者は、「BPDに対する薬物療法は慎重な臨床評価を行ったうえで、パニック、併存するADHD、一過性の精神病的特徴など、特定の個別化された適応症に限定されるべきであると考えられる」とまとめている。

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妊娠後期の抗てんかん薬曝露、児の神経発達障害との関連は?/BMJ

 米国・ブリガム&ウィメンズ病院のLoreen Straub氏らは、米国の2つの医療利用データベースを用いて、妊娠後半期の抗てんかん薬への曝露が出生児の神経発達障害(NDD)のリスクに及ぼす影響を解析し、妊娠中のバルプロ酸曝露による児のNDDリスク増加についてさらに強固なエビデンスが得られたことを報告した。「ゾニサミドも複数のアウトカムとの関連性が示唆されたが、さらなる評価が必要である。他の抗てんかん薬についても、複数の比較やまれなアウトカムにおいて潜在的なシグナルが観察されているが、データの蓄積と確認が必要である」と述べている。BMJ誌2026年3月11日号掲載の報告。NDD(ADHD、ASD、学習障害など)のリスクを曝露群vs.非曝露群で検証 本検討には、米国における公的および民間の医療保険加入者の医療利用データ(Medicaid Analytic eXtract/Transformed Medicaid Statistical Information System Analytic Files[MAX/TAF]の2000~18年、およびMerative MarketScan Commercial Claims and Encounters Database[MarketScan]の2003~21年)が用いられた。 解析対象は、妊娠の3ヵ月以上前から出産後1ヵ月まで継続して保険に加入していた12~55歳のてんかんを有する女性とその児で、児の出生から保険加入期間終了、対象となるNDDの診断、研究期間終了または死亡のいずれか早い時点まで追跡した。 妊娠後半期に少なくとも1回の抗てんかん薬の処方(単剤療法または併用療法)を受けた妊婦とその児を曝露群、てんかんと診断されているが妊娠の3ヵ月以上前から出産後1ヵ月まで抗てんかん薬の投与を受けていない妊婦とその児を非曝露群とした。 抗てんかん薬は、カルバマゼピン、ラコサミド、ラモトリギン、レベチラセタム、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、トピラマート、バルプロ酸、ゾニサミドを対象とした。バルプロ酸はNDDとの関連が確立されていることから陽性対照として、ラモトリギンは一般的にNDDリスクと関連していないため陰性対照として用いた。 主要アウトカムは、検証済みのアルゴリズムを用いて特定されたNDD(ADHD、ASD、行動障害、発達性協調運動障害、知的障害、学習障害、発話または言語障害のいずれかを有すると定義)で、曝露群と非曝露群のNDDリスクを比較した。バルプロ酸とゾニサミドは複数のアウトカムと関連 解析対象は、MAX/TAFの1万7,590例(非曝露群7,245例、曝露群1万345例)、MarketScanの6,290例(それぞれ1,642例、4,648例)で、曝露群の個々の曝露件数はラコサミドの219例からレベチラセタムの5,261例の範囲にわたった。 ほとんどのNDDが診断されると予想される8歳時点でのNDDの累積発生率は、非曝露群で34.3%(95%信頼区間[CI]:32.0~36.7)に対し、曝露群ではラコサミド曝露の22.7%(95%CI:12.2~39.8)からゾニサミド曝露の42.6%(95%CI:31.9~55.3)にわたった。 バルプロ酸とゾニサミドは複数のアウトカムとの関連を示したが(補正後ハザード比[HR]の範囲:1.26~4.50)、レベチラセタムとフェニトインはいずれのアウトカムとも関連していなかった。 いくつかの薬剤は知的障害のリスクが増加したが、当該障害児が少なく正確な推定値を得られなかった。トピラマートとラモトリギンは、ほとんどのアウトカムにおいて有意な関連は認められなかったが、知的障害(両薬剤)および学習障害(トピラマートのみ、少数例に基づくHR:1.23)については潜在的なシグナルが認められた。 カルバマゼピンとオクスカルバゼピンは、ADHDおよび行動障害のリスクが中等度に増加した(HRの範囲:1.23~1.40)。 これらの結果は、ラモトリギンを対照薬として用いた場合を含む複数の感度解析においても一貫していた。

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AIチャットボットの使用は精神疾患患者の症状悪化と関連

 AIチャットボットを安価な「セラピー代わり」として利用することは、かえって精神疾患を悪化させる恐れのあることが、新たな研究で示された。すでに精神疾患と診断されている人がAIチャットボットに頼った結果、妄想の悪化、躁状態の増強、自殺念慮の出現、摂食障害の悪化などの問題が生じたケースが確認されたという。オーフス大学病院(デンマーク)の精神科医であるSøren Dinesen Østergaard氏らによるこの研究結果は、「Acta Psychiatrica Scandinavica」に2月6日掲載された。 Østergaard氏は、「AIチャットボットの利用は、精神疾患を抱える人に深刻な悪影響を及ぼす可能性がある」と懸念を示している。研究グループによると、問題の一つは、AIチャットボットが利用者の不健全な思考や信念を正すのではなく、むしろそれを肯定・強化する傾向がある点だという。この点についてØstergaard氏は、「AIチャットボットには本質的に、利用者の信念を肯定する傾向が備わっている。すでに妄想を抱いているか、妄想を抱きつつある人にとって、これが大きな問題になることは明らかだ。実際、AIチャットボットが誇大妄想や被害妄想などを固定化させる要因になっているように思われる」と述べている。 ここ数年、AIチャットボットの利用が自殺と関連付けられた事例が複数報告されており、AIチャットボットが自殺に関与したとして、遺族がOpenAIやCharacter.AIを相手取り訴訟を起こすケースも出ている。 今回の研究では、2022年9月1日から2025年6月12日の間に精神科サービスを1回以上利用したデンマークの精神疾患患者5万3,974人(女性52%、年齢中央値27歳)の医療記録が分析された。その結果、126人の患者に関する「チャットボット/ChatGPT」という語を含む記録が181件見つかり、そのうち38人の患者の記録は、「AIチャットボットの使用が精神状態に悪影響を与えた可能性がある」と判断された。具体的には、AIチャットボットが妄想を助長したり、躁状態の傾向を強めたり、摂食障害患者のカロリー計算を手助けしたり、自殺方法に関する情報を提供したりしていた。 Østergaard氏は、「この問題は、多くの人が考えている以上に広がっているのではないかと懸念している。本研究で確認できたのは電子カルテに記載されていた症例のみであり、氷山の一角に過ぎない可能性がある」と述べている。 一方で、本研究では、AIチャットボットを症状理解や孤独感の軽減といった建設的な目的で利用していた患者も確認された。ただし、研究グループは、AIチャットボットは治療を目的として開発・検証されたものではない点を強調している。Østergaard氏は、「AIチャットボットを、心理教育や心理療法の分野で活用できる可能性はあるが、他の治療法と同様に厳密な臨床試験で検証する必要がある。これまでに行われた試験は十分に評価できるものではないと思われるし、そもそも私は、訓練を受けた心理療法士をAIチャットボットに置き換えることには懐疑的だ」と述べている。 Østergaard氏はさらに、AIチャットボットの運用に規則がない点を指摘し、「現状では、自社製品の安全性は企業の判断に委ねられている。しかし私は、この仕組みはあまりにもリスクが高いと結論付けるに足る証拠がそろっていると考えている」と述べている。 ただし、研究グループは、今回の研究がAIチャットボットの利用と精神状態の悪化との間に因果関係があることを証明したわけではないことも指摘している。Østergaard氏は、「AIチャットボットの使用と心理的な悪影響との因果関係を証明するのは困難だ。さまざまな角度から検討する必要がある。世界中で多くの研究プロジェクトが進行中であり、われわれだけがこの問題に真剣に取り組んでいるわけではない」と述べている。

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認知症リスクが上昇するコーヒー摂取量は?

 認知症は神経変性疾患であり、環境因子や食習慣を含む生活習慣因子が重要な病因として関与していると考えられる。とくに、コーヒーや紅茶の摂取が認知症の予防効果とリスク因子の両方を示していることから、その影響については依然として議論が続いている。イタリア・University of Modena and Reggio EmiliaのElena Mazzoleni氏らは、コーヒーおよび紅茶の摂取と認知症リスクの用量反応関係を評価するため、メタ解析を実施した。Journal of Epidemiology and Population Health誌2026年2月号の報告。 2025年12月9日までに公表された研究をPubMed、EMBASEよりシステマティックに検索した。対象者の選定基準は、慢性疾患がなく、認知症の既往歴がない集団を対象にコーヒーまたは紅茶の摂取量および認知症発症リスクを評価したコホート研究またはコホート・ネストテッド・ケース・コントロール研究とした。研究の質の評価にはROBINS-Eツールを用いた。コーヒーと紅茶の摂取量増加と認知症の関係について、非線形用量反応モデルを作成した。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には10件の研究を含めた。ベースライン時点で45万人超が参加し、平均フォローアップ期間は11.5年であった。・紅茶の摂取量の増加に伴い、すべての原因による認知症リスクは漸進的かつ直線的に減少することが明らかとなった。これは、すべての種類の紅茶と緑茶のみの場合でも同様の結果であった。・コーヒーはU字型の関係を示し、1日2~3杯(約300~450mL/日)でリスクが最も低かった。・アルツハイマー型認知症との関連では、1日3杯までのコーヒー摂取はリスクに差がみられなかったが、それ以上の量になるとリスクの増加が認められた。 著者らは「本研究では、適度なコーヒー摂取は認知症リスクに影響を及ぼさないが、1日3杯以上のコーヒー摂取は、すべての原因による認知症およびアルツハイマー型認知症のリスクを上昇させる可能性が示唆された。一方、紅茶の摂取はすべての原因による認知症リスクを直線的に低下させるようである。しかし、アルツハイマー型認知症については、1日1杯超の摂取ではリスクのさらなる低下は認められなかった」と結論付けている。

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日本の健康アウトカムに地域差、「へき地度」で示された疾患別死亡率との関連

 日本では地域によって医療資源や人口構成が異なり、健康アウトカムの差が指摘されている。今回、こうした地域特性を定量的に評価する指標「へき地度(Rurality Index for Japan:RIJ)」を用いた全国規模の研究で、RIJが高い地域ほど脳血管疾患の死亡率や男性の自死率が高い傾向が示された。研究は、横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻の金子惇氏、山形大学大学院医学系研究科医療政策学講座の池田登顕氏によるもので、詳細は1月26日付で「BMJ Open」に掲載された。 世界的に都市と地方では健康状態や医療アクセスの格差が報告されているが、日本では「へき地性(rurality)」の定義や評価方法が研究ごとに異なり、統一指標による検討は十分に行われていなかった。離島や過疎地域、無医地区など医療アクセスに課題を抱える地域も存在する中、客観的な指標を用いた全国的評価の必要性が指摘されてきた。そこで本研究は、日本の医療におけるへき地尺度(RIJ)を用い、主要5疾患における地域差を評価するとともに、へき地性と高齢化率や社会経済状況との関連を検討した。 研究は、生態学的研究デザインを用い、日本の自治体および政令指定都市の行政区を対象に実施された。人口が0人の地域を除く1,897自治体・行政区、総人口約1億2,600万人を解析対象とした。地域のへき地度はRIJを用いて評価し、RIJスコアは分布に基づいて四分位(Q1〜Q4)に分類した。急性心筋梗塞(AMI)、脳血管疾患(脳卒中・脳出血)、がん、自死について標準化死亡比(SMR)を算出し、死亡データが利用できない糖尿病については外来診療の標準化受療比(SCR)を代替指標として用いた。 解析対象となった1,897の自治体・行政区の解析から、RIJが高い地域ほど、脳血管疾患および男性自死のSMRが高いことが示された。いずれもRIJの上昇に伴い段階的に増加する傾向(用量反応関係)が認められた。 男性の脳卒中・脳出血のSMRは、最もRIJが低い地域(Q1)を基準とすると、RIJのSMRに対する回帰係数がQ2で11.5、Q3で12.7、Q4で18.4と増加し、女性でも同様の傾向がみられた。また男性の自死のSMRでも同様に、Q2で8.7、Q3で12.9、Q4で14.1と、RIJが高いほど回帰係数が上昇した。 AMIでは、RIJが高い地域でSMRが高い傾向がみられたが、明確な段階的増加は確認されなかった。一方、がん死亡率および糖尿病外来受療のSCRについては、RIJとの有意な関連は認められなかった。 さらに、RIJは地域の高齢化率および地理的剥奪指標(ADI)と正の相関を示し、RIJが高いほど高齢者割合や社会経済的困難を抱える傾向が示された(Spearmanの相関係数はそれぞれ0.67、0.55)。これらの結果は、へき地度の高い地域では医療アクセスや社会的支援の面で課題が集中していることを示唆している。 著者らは、「これらの結果は、救急医療へのアクセス改善およびメンタルヘルス支援の強化を含む、へき地度の高い地域に焦点を当てた医療政策の重要性を示している」と述べている。 なお、本研究では自治体単位の解析で個人レベルの因果関係は示せない点や、人口2000人未満の地域が含まれておらず、最もへき地度の高い地域における格差を過小評価した可能性がある点などが限界として挙げられる。またSCRは受療行動や患者移動の影響を受けるため、医療ニーズを直接反映していない可能性もある。 地域差を単なる都市・地方の二分法ではなく、連続的な「へき地度」として捉えた点は、今後の地域医療政策や研究のあり方にも示唆を与える結果といえそうだ。

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アイトラッキング診断ツール、神経変性疾患の鑑別や評価の一助となるか

 眼球運動異常は、神経変性疾患においてよくみられる。これは、眼球運動を制御する神経経路および脳領域の変性が原因であると考えられる。背外側前頭前皮質、基底核、上丘、小脳の病理学的変化は、臨床検査では検出されない可能性のある眼球運動指標の微妙な変化を引き起こす。カナダ・Montreal Neurological InstituteのPaul S. Giacomini氏らは、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病およびその他の認知症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患における眼球運動バイオマーカーの潜在的な用途について考察した。Journal of Neurology誌2026年2月10日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・サッカード、アンチサッカード、固視、滑動追跡などの眼球運動指標は、疾患進行の予後を予測し、診断の補助として病理学的サブタイプを鑑別することができる。そのため、臨床医が運動機能および認知機能の早期悪化を評価することを可能にすると考えられる。・医療技術のコストが、臨床現場における最適な活用とアクセスを制限している。・専門の神経科医の不足は、医療へのアクセスをさらに制限している。・スマートフォンやタブレットなどの広く普及しているデジタル機器に組み込まれた新しいアイトラッキング技術は、最小限の機器で詳細な評価を可能にし、日常の臨床現場における患者評価や治療方針の決定を支援するための、非侵襲的かつ費用対効果の高い重要な方法であると考えられる。・デジタルバイオマーカーは、かかりつけ医、看護師、薬剤師などの医療専門家がケアのギャップを埋めるために容易に活用でき、神経変性疾患の患者へのケア提供を改善するために広く採用できる強力なツールとなる可能性がある。

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寝室の温度は高齢者の睡眠に影響

 暑くて寝苦しい夜、眠れずに寝返りを打ち、枕をひっくり返したりした経験はないだろうか?オーストラリアの高齢者を対象とした研究で、寝室の温度が睡眠の質に大きな影響を与える可能性のあることが示された。グリフィス大学(オーストラリア)保健医療・スポーツ・ソーシャルワーク学分野のFergus O’Connor氏らによるこの研究の詳細は、「BMC Medicine」に12月29日掲載された。 この研究では、2024年12月から2025年3月の夏季に、オーストラリアの65歳以上の高齢者を対象に、寝室の温度が睡眠にどのような影響を与えるのかが検討された。研究参加者は、睡眠中の心臓の活動を測定するため、利き手ではない方の手首にフィットネストラッカーを装着した。また、寝室に設置した温度センサーで夜9時から朝7時までの室温を記録した。夜間の室温は、24℃未満、24〜26℃、26〜28℃、28〜32℃の4群に分類した。 解析の結果、夜間の室温が24℃未満に保たれていた群と比べて、それ以上の室温だった群では、副交感神経(リラックス・回復を担う神経)の働きを反映する心拍変動の指標であるlnRMSSDに、臨床的に意味のある低下が認められた。lnRMSSD低下のオッズ比は、24〜26℃の群で1.4(95%信頼区間1.2〜1.6)、26〜28℃の群で2.0(同1.8〜2.3)、28〜32℃の群で2.9(同2.5〜3.4)であり、室温が高くなるほど、睡眠中の自律神経の回復が妨げられる可能性が示された。また、心拍変動の周波数解析においては、室温が高いほど、HF(副交感神経の活動を主に反映する高周波成分)とLF(交感・副交感神経の影響を受ける低周波成分)がいずれも低下し、交感神経の優位性の程度を示す指標であるLF/HF比は上昇していた。さらに、心拍数も上昇していた。 O’Connor氏は、「65歳以上の人にとって、夜間の寝室の温度を24℃未満に保つことは、睡眠中のストレス反応の上昇を抑える効果があった」とニュースリリースの中で述べている。同氏はまた、暑さは心臓に過度の負担をかけることを指摘し、「人体が暑さにさらされると、正常な生理的反応として、心臓は心拍数を上昇させて血液を皮膚表面へ循環させて身体を冷やそうとする。しかし、心臓がより激しく働き、それが長時間続くとストレスとなり、その日にさらされた暑さからの回復力が阻害されてしまう」と説明している。研究グループによると、今回の研究は、このような影響を実際の家庭環境という現実的な状況で示した最初の研究の一つだとしている。 なお、この研究結果は、気候変動によって夜間の気温が上昇し続けている中で報告された。O’Connor氏は、「気候変動は暑い夜の増加をもたらしているが、このことは睡眠や自律神経の回復を妨げ、心血管疾患の発症や死亡に独立して影響する可能性がある」と指摘する。同氏はまた、「日中の屋内の温度の上限を26℃とするガイドラインはあるが、夜間の環境については推奨が示されていない」と述べ、公衆衛生上の指針における課題も指摘している。

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血液検査でアルツハイマー病の発症時期を高精度で予測

 脳がいつ衰え始めるのかが正確に分かるとしたらどうだろう。まるで近未来映画のストーリーのようだが、新たに開発された「生物学的時計」によって、それが現実になるかもしれない。米ワシントン大学医学部のKellen Petersen氏らが、p-tau217(リン酸化タウ217)と呼ばれるタンパク質に焦点を当てた血液検査により、アルツハイマー病(AD)の症状が現れ始める時期をわずか3.0~3.7年の誤差で予測できたとする研究結果を発表した。p-tau217は、ADで生じるタウタンパク質の異常(凝集体の形成)を反映する指標であり、その上昇はアミロイドβの蓄積とも密接に関連している。この研究の詳細は、「Nature Medicine」に2月19日掲載された。 研究グループによると、本研究では、脳内での有害なタンパク質の蓄積は、驚くほど一定で予測可能なスケジュールに従って進むことが示された。Petersen氏は、「アミロイドβとタウタンパク質のレベルは、まるで木の年輪のようなものだ。年輪を数えれば木が何歳か分かるのと同じように、これらのタンパク質も一貫したパターンで蓄積していき、値が陽性になる年齢が分かれば、その人がいつADの症状を発症するかを高い精度で予測できる」と話している。 研究グループは、独立した2つの高齢者コホート(Knight ADRCコホート258人、ADNIコホート345人)から得たデータを用いて、p-tau217の増加パターンから生物学的時計を新たに構築し、血液中のp-tau217値を測定することでAD症状の発現時期を予測できるかを検討した。 その結果、血漿中のp-tau217のパーセンテージ値(%p-tau217)が陽性(>4.06%)となる推定年齢から、AD症状の発現時期を平均3.0〜3.7年の誤差で予測し得ることが示された。また、p-tau217が陽性となってからAD症状が現れるまでの期間は、高齢になるほど短いことも示唆された。例えば、60歳で陽性となった人は、AD症状の発現まで約20年かかる可能性がある一方で、同じ陽性でも80歳の人の場合は、症状発現までわずか11年と推定された。 現在、ADリスクを特定するには高額な脳画像検査や侵襲的な脳脊髄液検査を要することが多い。それに対し、この血液検査はより迅速で、安価かつアクセスしやすい代替手段となる可能性を秘めており、医療や研究のアプローチを大きく変える可能性もある。 この検査は、現在は主に、研究の場で使用されている。研究グループは、開発した予測モデルの詳細と、他の研究者が探索・改良できるウェブアプリケーションも公開している。論文の上席著者であるワシントン大学医学部のSuzanne Schindler氏は、「短期的には、これらの予測モデルは、研究や臨床試験を加速させるだろう。最終的な目標は、個々の患者に、症状がいつ発現するかを伝えられるようにすることだ。そうすることで、患者や医師が症状を防いだり遅らせたりするための計画を立てられるようになる」と述べている。 なお、本研究には、AbbVie社、アルツハイマー病協会、アルツハイマー創薬財団(ADDF)の研究プログラムであるDiagnostics Accelerator、Biogen社、Janssen Research & Development社、武田薬品工業株式会社などが資金提供を行った。

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