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検索結果 合計:2008件 表示位置:1981 - 2000

1981.

喫煙、固形燃料使用の抑制で、COPD、肺癌、結核の疾病負担が低下

喫煙および固形燃料の使用を抑制すれば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と肺癌の疾病負担が低下し、結核の効果的なコントロールが可能になることが、中国で行われた多リスク因子モデル研究で判明した。2002年の調査によれば、COPDは中国人の死因の第2位を占め、肺癌は第6位、結核は第8位であり、約200万人(全死亡の20.5%)がこれらの疾患で死亡している。一方、中国人男性の半数が喫煙者であり、一般家庭の70%以上が薪、作物残渣、石炭などの固形燃料を暖房や調理に用いているという。アメリカHarvard大学公衆衛生学部疫学科のHsien-Ho Lin氏が、Lancet誌2008年10月25日号(オンライン版2008年10月4日号)で報告した。リスク因子の動向により将来の死亡率や発生率が受ける影響のシナリオを構築本研究の目的は、リスク因子の動向によってCOPD、肺癌、結核の死亡率や発生率にどのような影響が生じるかを予測することである。典型的なデータソースを用いて過去の喫煙および家庭の固形燃料使用の傾向を推定し、将来にわたる一連のシナリオを構築した。中国で実施された疫学研究のメタ解析や大規模試験のデータから、病因としてのリスク因子が疾患に及ぼす影響を評価した。COPDと肺癌に及ぼすリスク因子の有害な影響の経時的な累積、および結核感染リスクへの疾患罹患率の依存度を考慮したうえで、将来のCOPDと肺癌による死亡率および結核の発生率をモデル化した。試験方法およびデータ選択に対する試験結果のsensitivityを定量化した。30年間で2,600万人のCOPD死、630万人の肺癌死が回避可能中国では、現在の喫煙および固形燃料使用の状況が2003~2033年も維持されると仮定した場合、この間に6,500万人がCOPDで、1,800万人が肺癌で死亡すると予測される。COPDによる死亡の82%、肺癌死の75%が喫煙と固形燃料の複合的な影響を受けると考えられた。2033年までに喫煙および固形燃料の使用が段階的に完全に停止されれば、2,600万人のCOPD死および630万人の肺癌死が回避可能と推算された。中等度の介入を行えば、COPD死が6~31%、肺癌死は8~26%低減されると考えられる。2033年の結核の予測年間発生率は、2033年までに喫煙と固形燃料の使用が完全に停止されると仮定した場合に、対象の80%に直接監視下短期化学療法(DOTS)が継続的に施行されれば14~52%低減され、DOTS継続施行率が対象の50%であれば27~62%、20%であれば33~71%低減されると予測された。研究グループは、「喫煙および固形燃料の使用を抑制すれば、COPDと肺癌の疾病負担の予測値が実質的に低下し、結核の効果的なコントロールに寄与する可能性がある」と結論し、「次なる重要なステップは、地域住民ベースの介入試験を実施するとともに、経済、エネルギー、健康部門の関連機関の政策対話を進めることである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

1982.

RAD001単独投与あるいはサンドスタチンLARとの併用で膵内分泌腫瘍の増殖を抑制

ノバルティス ファーマ株式会社は、スウェーデンのストックホルムで開催された「第33回欧州臨床腫瘍学会(ESMO: European Society for Medical Oncology)」において、RAD001(一般名:エベロリムス)とサンドスタチンLAR(一般名:酢酸オクトレオチド)の併用、あるいはRAD001の単独投与によって、稀少疾患で難治性のがんである膵臓の神経内分泌腫瘍(膵内分泌腫瘍: Pancreatic Neuroendocrine Tumors)の患者の腫瘍の増殖が抑制されるという新しいデータが示されたと発表した。化学療法が奏効しなくなった膵内分泌腫瘍の患者を対象にRAD001の1日1回投与とサンドスタチンLARの月1回投与の併用、またはRAD001の1日1回の単独投与を行った結果、併用療法群の患者の82%、単独療法群の患者の77%において、腫瘍の縮小または安定が認められたという。詳細はプレスリリースへhttp://www.novartis.co.jp/news/2008/pr20080929_03.html

1983.

大鵬薬品、ユーゼル錠の国内製造を開始

大鵬薬品工業株式会社は10月1日、従来輸入販売していた還元型葉酸製剤ユーゼル(ホリナートカルシウム)錠の自社国内製造を開始したと発表した。今回の自社国内製造で、錠剤の重量を従来の約半分に小型化することが可能になり、患者さんがより服薬しやすくなることが期待されるという。ユーゼル錠は、抗がん剤テガフール・ウラシル配合剤と併用することにより、結腸・直腸癌に対するテガフール・ウラシルの抗腫瘍効果を増強する働きがある。本療法は「大腸癌治療ガイドライン」に、大腸癌に対する標準化学療法の中でも経口投与可能な治療法として掲載されている。また、EU諸国でもホリナート・テガフール・ウラシル療法(ユーエフティ/ユーゼル療法)として大腸癌に対する効能が得られている。詳細はプレスリリースへhttp://www.taiho.co.jp/corporation/news/20081001.html

1984.

抗ウイルス化学療法剤「ヘプセラ」、他剤との併用可能に

グラクソ・スミスクライン株式会社は、9月24日付で、B型慢性肝疾患(B型慢性肝炎およびB型肝硬変)に対する抗ウイルス化学療法剤「ヘプセラ」(アデホビル ピボキシル)について新しい「効能・効果」、「用法・用量」の承認を取得したと発表した。この承認により、「ヘプセラ」は、B型肝炎ウイルスの増殖を伴い肝機能の異常が確認されたB型慢性肝疾患患者への単独療法および他の抗ウイルス剤との併用療法が可能となった。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2008_07/P1000500.html

1985.

がん患者さんの思い 浮き彫りに

 千葉市にて、千葉県がん患者大集合2008が開催された。「千葉のがん医療を考える」と題し、アンサーパッドを用いた会場参加型のシンポジウムも行われた。現在あるいは過去に受けたがん診療に対するがん患者さんの思いが明らかにされるとともに医療者との意識差が垣間見られている。「がん診療に満足」3割 まず、がん診療に対する安心度合いについて、がん患者とその家族267名に回答を求めた。その結果、「がん医療に満足している」は87名で33%。対象者の3割は満足していると答えたが、逆に7割は満足と答えなかった。 インフォームドコンセントの理解については、「医師の説明が良く理解できないことがあった」は117名と対象者の44% 半数弱が理解できないことがあったと回答した。 よく理解できなかった理由を、上記117名にたずねたところ、「医療用語が難しくて理解できなかった」が75名で70%「説明の時間が短くて理解できなかった」は93名で90%弱「精神的に余裕がなくて理解できなかった」は71名で70%弱医療用語が難解であることも背景にあるが、それ以上に説明時間の短さが理解の障害要因として印象に残っているようである。インフォームドコンセントの受け止め方について、患者さんと家族267名に尋ねたところ、「副作用や合併症、後遺症の説明で不安になった」は144名で70%弱。 しかし、「ごく稀にしか起こらない副作用、合併症、後遺症の説明も説明すべき」は199名と91%にのぼった。 不安ではあるが細かなことも話して欲しいのが患者さん、家族の心理であるようだ。「十分な心のケアを受けていた」2割 心のケアについてがん患者さんと家族に尋ねた。その結果、「十分に心のケアのサポートを受けていた」と答えたのは47名で18%。対象者の8割以上は十分な心のケアを受けていたとは回答しなかった。 また、がん相談窓口について尋ねたところ、「がんの相談窓口があることを知っていた」は93名29% 「相談窓口について担当医から説明を受けたことがある」は23名で9% 3割が相談窓口を知っていたが、ほとんどは担当医からの説明を受けていないことがわかった。 その他、「院内にがん体験者が相談にのる場があれば利用したい」、「同じような立場の人と話してみたいと思うことがある」、「院内に患者同士が交流する場があれば参加したい」は患者さん家族の70%以上であり、患者同士の相談交流への要求の高さが伺える。医療者と患者の相互信頼 引き続き行われた、がん経験者の講演では次のように述べられた。 病気そのものへの不安はなくせないが、診断治療を受ける際の不安は少なくできる。意味がわからない事からくる不安は大きいが、正体がわかってしまえば不安は軽減する。そういう意味でも医師の説明は重要である。 また、悪い知らせを聞くときは、医師の説明に気持ちがついて行かないことが多い。信頼できる人に付き添ってもらいメモを取ってもらうなどの工夫が必要。医師と患者の情報量の違いは明らかであり医療者には病気だけではなく、病気を持つ人を診て欲しい。しかし、患者もお任せにせず自分の病気を知ることが必要。そのようにして、医療者と患者の相互の信頼関係を築いてゆくべきである。 そして、乳がん体験者である耳鼻咽喉科医師小倉恒子氏が自身の体験を説明。今は副作用対策も進化し、自分自身は化学療法を受けていても社会生活に問題はない状態。医師は、重症であっても最期までがん患者を救って欲しいと述べた。

1986.

イレッサ 進行非小細胞肺がん患者を対象とした大規模臨床試験(IPASS)結果が発表される ―欧州臨床腫瘍学会にて―

英国アストラゼネカ社の9月15日の発表によると、ストックホルムで開催されている欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で、臨床背景因子により選択されたアジアの進行非小細胞肺がん患者を対象とした臨床試験IPASS(IRESSA Pan-ASia Study)において、イレッサがカルボプラチン/パクリタキセル併用化学療法に対して無増悪生存期間の非劣性を証明するという主要目的を上回り、優越性を証明したことが報告された。事前に計画されていたバイオマーカーに基づくサブグループ解析では、無増悪生存期間はEGFR遺伝子変異陽性患者ではイレッサ群が化学療法群に比べ有意に長く (HR 0.48, 95% CI 0.36~0.64, p

1987.

緩和化学療法の生存ベネフィットは癌患者に十分に知らされているか

癌患者の多くは症状の緩和を目的とした化学療法(緩和化学療法)の生存ベネフィットについて明確な情報を与えられていないことが、イギリスで実施された調査で判明した。生存ベネフィットは緩和化学療法に関する臨床試験の主要評価項目とされることが多く、患者の意思決定やインフォームドコンセントに及ぼす影響も大きい。最近のイギリスの保健政策ではインフォームドコンセントが重視されているという。Bristol大学社会医学科のSuzanne Audrey氏が、BMJ誌2008年7月31日号で報告した。癌患者と腫瘍医を対象に、コンサルテーションのデータを記録研究グループは、治療法を決定するコンサルテーション中に腫瘍医は緩和化学療法の生存ベネフィットをどの程度患者に伝えているかを調査する質的研究を実施した。イギリス南西部の教育病院および地域総合病院において、実際のコンサルテーションを観察しデジタルデータとして記録した。対象は、癌患者37例(進行非小細胞肺癌12例、膵癌13例、結腸・直腸癌12例)および腫瘍医9名(コンサルタント4名、記録担当5名)であった。すべてのデータは完全に記録され、匿名化され、電子的にコード化された。37例中26例で明確な説明なしコンサルテーション中に、生存ベネフィットについて患者に伝えられた情報は、数値データ(「約4週間」)、時間スケールの知識(「数カ月の延長」)、あいまいな言及(「多少延長します」)、まったく言及しないなどであった。37例中26例(70.3%)のコンサルテーションでは、生存ベネフィットに関する話し合いは不明確であるか、まったく言及されなかった。著者は、「癌患者の多くが、緩和化学療法の生存ベネフィットについて明確な情報を与えられていない」と結論したうえで、「意思決定やインフォームドコンセントを支援するために、腫瘍医は生存ベネフィットを含め緩和化学療法の利点および限界について詳細な説明を行うよう勧告する」とし、「腫瘍医のトレーニングに緩和化学療法の生存ベネフィットを患者に伝える方法に関するガイダンスを加えるべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

1988.

乳がんの最新治療を講演

2008年9月3日、都内で大鵬薬品主催のオンコロジーセミナーが開催された。その中で聖路加国際病院 中村清吾氏、日本医科大学 芳賀駿介氏、坂元記念クリニック 坂元吾偉氏の3氏がそれぞれの立場で最新の乳がん診療の情報について解説した。聖路加国際病院 ブレストセンター長 中村清吾氏 乳がんの治療はがん細胞の増殖メカニズムが解明されTargeted Therapyへ移行した。中でもハーセプチンは乳がんの20%に見られるHER2陽性症例の標準治療である。加えて、術後の患者でも半数の再発を予防することが報告され、本邦でも本年2月から術後補助療法の適応が認められている。 一方、乳がん学会でも班研究を実施しているTriple Negative乳がん(ER感受性-、PgR感受性-、HER2-)では、通常の抗がん剤が無効という症例もあり課題が残る病型である。そのような中、血管新生阻害薬であるアバスチンは再発乳がんの再発抑制に関し良好な結果が報告されるなど、Triple Negative乳がんのキードラッグとしても期待される。日本での乳がんへの保険適応も早期に望まれる。その他、新たな分子標的治療薬ラパチニブなどが登場する。ホルモン感受性、HER2、血管新生阻害薬、他の分子標的治療薬など選択肢が増え、個別化治療はより細密化してくると考えられる。 また、化学療法適応の指標として21種の遺伝子の組み合わせにより再発リスクを評価するOncotypeDXという遺伝子検査法について紹介した。この検査は、同じステージの乳がんでもリスクの重度度を識別し、化学療法の実施の意思決定ツールとなる。米国で爆発的に普及、保険未承認ではあるが日本でも幾つかの先進施設で用いられている。日本医科大学 乳腺科 芳賀駿介氏 乳がんにおけるリンパ節郭清は、その後の治療の指標となる。しかし、郭清によるリンパ浮腫、上肢内側知覚障害、術後のリハビリテーションなど患者さんへの負担とともに入院期間も増加する。 そこで不要な腋下リンパ節郭清を省略するためセンチネルリンパ節生検が実施されるようになってきている。乳がん学会認定施設でのアンケートの結果、87%の施設がセンチネルリンパ生検を実施、行っていない施設でも殆どが実施したいと考えていることがわかった。センチネルリンパ節生検の実施により患者さんの身体的負担の軽減と医療費の削減の双方が実現できる。この手段を保険承認させるため乳がん学会では多施設協同試験を実施し、試験結果を厚生労働省に提出する。中間報告は9月の乳がん学会にて報告予定である。坂元記念クリニック 乳腺病理アカデミー 坂元吾偉氏 乳がんの確定診断は病理組織診断である。実は、治療を受ける前に本当に乳がんなのかを確認することが重要であるともいえる。 乳腺病理には経験が必要である。また、他のがんとの細胞異型の尺度の違い、乳管腺腫などの新たな疾患概念、組織型だけでも39、亜型も含めると100以上という病型の多彩さなどから乳腺病理は非常に難しいものであるといえる。最近は針生検の普及から検体が小さくなり更に難易度が上昇している。 しかし、日本の病理医は米国の1/5というのが現状。病理専門医のいない施設は多く見られ、患者さんだけなく、臨床医さらには病理医も困惑している状況である。乳腺病理医の確保が乳がん治療における非常に重要な課題といえる。経験ある病理医であればリスクを分けることができる。実際、St.Gallen Conferences 2007での7つのリスクカテゴリーのうち6つは病理診断の結果で明らかになるものであり、病理医の適切な診断により適切な治療が可能になる。 そのような中、坂元氏は坂元記念クリニックを設立した。08年4月から病理診断科が標榜可能になったため、乳腺病理を唯一標榜。精度の高い乳腺病理診断を目指し、臨床医病理医に正しい情報を提供することを目的とする。坂元氏は、乳腺病理診断が正しく行われることは社会全体にとっても有益であると考えると語った。《参考リンク》第16回日本乳癌学会総会 http://www.jbcs.gr.jp/meeting/soukai.html 坂元記念クリニック http://www.a-bp.net/index.html(ケアネット 細田雅之)

1989.

慢性リンパ性白血病とモノクローナルB細胞リンパ球増加症の関係

慢性リンパ性白血病(CLL)の診断には、血中CLL表現型細胞数が1立方mm当たり5,000個以上必要であり、CLL表現型細胞が少なく無症候性の患者は、モノクローナルB細胞リンパ球増加症(MBL)とされる。MBLとCLLの関係を調べた、英国・リーズ教育病院のAndy C. Rawstron氏らは、「CLL表現型MBLとリンパ球増加症の患者で、治療を必要とするCLLの発現率は年間1.1%」と報告した。NEJM誌2008年8月7日号より。正常血球1,520例とリンパ球増加症2,228例を比較62~80歳で血球数が正常な1,520例と、リンパ球増加症(血中リンパ球が1立方mm当たり数4,000個以上)の2,228例について、フローサイトメトリ法(flow cytometry)でMBLの存在を検証。モノクローナルB細胞は細胞遺伝学的分析と分子解析によって、より詳しく特徴を検討した。CLL表現型MBLとリンパ球増加症の185例の代表コホートは、中央値6.7年(範囲:0.2~11.8年)にわたり観察した。治療を要するCLL発現率は年間1.1%CLL表現型モノクローナルB細胞は、正常血球数群の5.1%(1,520例中78例)と、リンパ球増加症群の13.9%(2,228例中309例)に認められた。CLL表現型MBLはCLLと同様、13q14染色体欠失と三染色体性12の検出頻度が高く、免疫グロブリン重変数群(IGHV)遺伝子のレパートリーが偏っていた。リンパ球増加症群の185例のうち、進行性は51例(28%)、CLLへの進行性は28例(15%)で認められ、13例(7%)には化学療法が必要だった。B細胞の絶対数は、進行性リンパ球増加症に伴う唯一の独立予後因子だった。中央値6.7年以上の追跡期間中、進行性リンパ球増加症群の34%(185例中62例)が死亡したが、CLLは4例だけだった。死亡の唯一の独立予後因子は、68歳以上の年齢と、1dL当たり12.5g未満のヘモグロビン値だった。Rawstron氏は「一般集団とリンパ球増加症の被験者に認められるCLL表現型細胞には、CLL細胞と同様の特徴がある。CLL表現型MBLとリンパ球増加症の患者に、治療を必要とするCLLの発現率は年間1.1%」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

1990.

近年の婦人科がん医療の進歩:最近の学会報告から がん医療セミナー 「もっと知って欲しい女性のがん」より

 2008年8月10日、NP法人キャンサーネットジャパン、NPO法人ブーゲンビリア、卵巣がん体験者の会スマイリー、NPO法人女性特有のガンサポートグループオレンジティの4団体が主催する婦人科腫瘍啓発セミナーが開催された。セミナーでの、埼玉医大国際医療センター包括的がんセンター婦人腫瘍科、藤原恵一氏の講演の様子をレポートする。主な婦人科腫瘍とそれぞれの進行がん標準治療 婦人科の主な癌種は子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんである。これら3種の進行がん標準治療は概ね下記のようになる。・子宮頸がん:プラチナ製剤ベースの化学療法(CDDP)同時放射線療法・子宮体がん:術後放射線療法・卵巣がん:減量手術後化学療法 パクリタキセル(PTX)+カルボプラチン(CBDCA) 進行度別にみると、子宮頸がん・体がんでは早期例が多く0期からII期が半数以上である。特に頸がんでは0期が40%以上を占める。一方、卵巣がんでは進行例が多くIII期からIV期が半数以上を占める。卵巣がんの予後と治療 卵巣がんは予てから死亡率が高く予後が悪いといわれている。その言葉が示すとおり、卵巣がん(約7000人)罹患数は子宮がん(約18000人)の半分以下であるが、死亡数はほぼ同等である(子宮がん5500人に対し卵巣がん4400人)。その理由は、卵巣がんの進行例の割合が多いため(卵巣がんはIII~IV期が70%、子宮がんでは0期~I期が70%)だと考えられる。 進行卵巣がんはインオペ例とされていたが、1980年のCDDP登場、その後のタキサン系薬剤の登場で生存率は改善し、現在CBDCA+PTXが標準療法となっている。だが、その後は有効率の向上を目指し標準治療への抗がん剤のアドオン試験が行われたが予後改善をもたらすにはいたっていない。卵巣がんの治療の今後 そのような中、有効率の改善を目指すべく幾つかの研究が行われている。投与法も研究され、プラチナ製剤の腹腔内投与の有効性が米国NCI(National Institute of Cancer)が推奨されている。そして、2008年、日本発のエポックメイキングな研究がASCO2008で発表された。これは、医師主導治験JGOG3016で、PTX毎週投与の有効性試験有効性が立証された。今後、保健適応取得に向け行政への働きかけが重要となる。 さらに、分子標的治療薬の有効性も検討されており、医師主導の治験で、ベバシズマブの有効性研究も進行中である(GOG218)。 一方、ドラッグラグの問題も以前残っている。ドキシル(リボゾーマドキソルビシン)は世界80カ国で承認され、標準治療無効例における2ndライン薬剤として期待されておる。しかし、日本では以前未承認であり、現在自費投与1回あたり30~40万/回の金銭的負荷がかかる。子宮頸がんの治療 子宮頸がんは0期が多く、この段階で発見できれば多くの患者さんが助かることになる。 そのためには、まず、検診の普及が非常に重要である。実際、検査の普及率が高い国では子宮頸がんの死亡率は低いが、日本の検診普及率は22%であり後進国並みといえる。そのためか、日本では若年層での罹患数が増加しているという問題もある。 子宮がんの治療は、プラチナ製剤の化学療法(CDDP単独またはCDDP+5FU)と放射線治療同時併用が標準治療である。しかし、本邦での普及は依然高いとはいえない。今後の課題として日本人のCDDP適正ドーズの設定、ガイドラインでの積極的取り上げなど一層の普及が急がれる。子宮頸がんの治療の今後 そして、近年のトピックとして子宮頸がんにおけるHPV(ヒトパピローマウイルス)の関与があげられる。HPVは子宮頸がん患者の大部分が感染しており、確率こそ非常に少ないが子宮頸がんの発症因子である。そのため、HPVワクチンがHPVの感染予防および前がん病変への移行を防止するとして多大な効果が期待できる。現在、米国、オーストラリアをはじめ多くの国で承認されており日本でも早期の承認が望まれる。日本の婦人科腫瘍治療 日本の婦人科がんの取り組みは欧米に比べ遅れている。そこに昨今の婦人科医師不足が重なり、婦人科腫瘍の診療は大変な状況である。 婦人科腫瘍の場合、そのような状況下であっても製薬メーカーの協力を仰がず医師主導治験をしている例は多い。医師主導治験に携わる医師は診療後に何ら報酬もない中、ボランティアで協力している。しかしながら、医師主導治験を国に認めさせるシステムがなく、今後は医師主導治験で行政を動かしてゆく手法を検討する必要がある。 また、ドラックラグについても大きな問題である。ドキシルのように海外で実績があるのに日本では未承認という薬剤は多い。副作用発現などのリスクから優先審査への動き鈍ることも一つの要因であるが、一番の被害者は患者さんであることを忘れて欲しくない。この点については、マスメディアの取り上げ方が大きな影響を及ぼすため、正確な情報提供をお願いしたいと考える。

1991.

家族歴のある大腸癌患者の再発と死亡リスクは低い

一親等親族に大腸癌患者がいた場合、大腸癌発症リスクは増大するが、癌再発と生存に家族歴がどう影響するか明らかではない。米国・ハーバード大学医学部ダナ・ファーバー癌研究所のJennifer A. Chan氏らは、「ステージIIIの大腸癌患者に大腸癌の家族歴がある場合は、再発と死亡は有意に減少する」と報告した。JAMA誌2008年6月4日号より。術後補助治療を受けた患者1,087例を5年間追跡調査1999年4月~2001年5月に行われた無作為補助的化学療法治験「CALGB 89803」に参加したステージIIIの大腸癌患者1,087例を対象に、前向き観察研究を行った。患者はベースラインで家族歴に関するデータを提供しており、2007年3月までの間、疾患再発と死亡を追跡調査した(追跡期間中央値:5.6年)。主要評価項目は、大腸癌の既往歴の有無に従う、疾患のない生存、再発のない生存および全生存とした。一親等親族に既往歴がある人数が多いほどリスク低下1,087例のうち195例(17.9%)は、一親等親族に大腸癌の家族歴があった。癌再発または死亡は、家族歴のある群195例では57例(29%、95%信頼区間:23~36%)だが、家族歴のない群892例では343人(38%、35~42%)だった。家族歴のない群と比べて、家族歴のある群(一親等親族1人以上)の補正ハザード比は、疾患のない生存0.72(95%信頼区間:0.54~0.96)、再発のない生存0.74(0.55~0.99)、全生存0.75(0.54~1.05)だった。家族歴と、癌再発および死亡のリスク減少の関連は、一親等親族の発症経験者が多いほど強い。家族歴のない群に比べ、既往歴のある親族が1人いた群の、疾患のない生存の多変量ハザード比は0.77(95%CI:0.57~1.04)。既往歴のある親族が2人以上の群では、同0.49(0.23~1.04、家族歴のある親族数の増加傾向P=0.01)で、より大幅なリスク低下が見られた。Chan氏は「補助化学療法を受けているステージIIIの大腸癌患者で、家族に大腸癌の既往歴がある場合は、癌再発と死亡が有意に減少する」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

1992.

広がる「がん診療と心のケア」への要求に 精神腫瘍学の学会推薦講師の全国リスト

サイコオンコロジー学会は、ホームページ上に学会推薦講師(精神腫瘍学)のリストを公開した。同推薦講師は学会世話人、研修会受講経験医師から構成され学会推薦の条件を備えた腫瘍精神学の専門家。推薦講師は、現在全国展開している「がん診療に携わる医師10万人に対する緩和ケア研修会」で、3分の1の時間を占める「心とコミュニケーション」を担当、オファーされた研修会にいって講師を行う。内容は、痛み・気持ちのつらさ・せん妄への対応、コミュニケーションスキルなどからなる。がん患者さんの精神疾患の合併率は高く、末期では5割近くに精神疾患の診断がつくと報告されている。また、精神的な障害が治療方針の混乱、化学療法の障害を招くこともある。サイコオンコロジー学会代表世話人の内富庸介氏(国立がんセンター東病院精神腫瘍学開発部)は、精神的な苦痛(ストレス)も痛みなど身体的な苦痛も不快なものとして脳の同じ部位で認識される。そのため、精神的苦痛と身体的苦痛は相互に影響しており、抗がん剤開始の不安から吐き気が増幅するという現象がみられるのも、その関係が考えられるという。内富氏はまた、がん診療医側もがん患者さんへの告知、特に治療終了の告知に大きな精神的負担を感じていると述べた。同時にがん患者さんと医師など医療提供者との意識のずれを指摘した。がん患者さんのメンタル面のケアと同時にコミュニケーションスキル向上という、実践的な観点から拡大する「がん診療と心のケア」へ新たな支援といえるであろう。(ケアネット 細田雅之)

1993.

悪性胸膜中皮腫、化学療法のベネフィットはほとんど期待できないが…

積極的症状コントロール(ASC)に化学療法を追加しても、悪性胸膜中皮腫の生存およびQOLにベネフィットはもたらされないことが、英国Leeds総合診療所のMartin F Muers氏らが実施した多施設共同無作為化試験(MS01)で明らかとなった。悪性胸膜中皮腫はほぼ致死的な疾患であり、現状では治療選択肢はほとんどない。これまでASCが推奨されてきたが、化学療法の役割についてはコンセンサスが得られていなかったという。Lancet誌2008年5月17日号掲載の報告。ASC単独とASCに2種類の化学療法レジメンを追加する3群を比較MS01試験には、2001年9月~2006年7月に英国の76施設およびオーストラリアの2施設から悪性胸膜中皮腫409例が登録され、以下の3群に無作為に割り付けられた。ASC単独群(136例):ステロイド薬、鎮痛薬、気管支拡張薬、緩和的放射線照射などを実施、ASC+MVP群(137例):ASCに加えマイトマイシンC 6mg/m2+ビンブラスチン6mg/m2+シスプラチン50mg/m2の3週ごとの投与を1コースとして4コース施行、ASC+V群(136例):ASCに加えビノレルビン30mg/m2を週1回、12週間投与。無作為割り付けはPS(WHO)、組織型、施設により層別化した。フォローアップは無作為割り付け後から3週ごとに21週行い、その後は8週ごとに実施した。症例登録の進捗が遅かったため、主要評価項目である全体の生存率については2つの化学療法併用群を統合してASC単独群と比較した。探索的な解析ではビノレルビンによる生存ベネフィットの可能性示唆解析時には393例(96%)が死亡していた[ASC単独群:132例(97%)、ASC+MVP群:132例(96%)、ASC+V群:129例(95%)]。ASC単独と比較してASC+化学療法の生存ベネフィットは大きくなく、有意差な差は認めなかった(ハザード比:0.89、95%信頼区間:0.72~1.10、p=0.29)。生存期間中央値はASC単独群が7.6ヵ月、ASC+化学療法群は8.5ヵ月であった。探索的な解析では、ASC+V群の生存期間中央値は9.5ヵ月であり、ASC単独に比べ有意差はないものの生存への寄与が示唆された(0.80、0.63~1.02、p=0.08)。ASC+MVP群の生存ベネフィットを示すエビデンスは得られなかった(0.99、0.78~1.27、p=0.95)。事前に設定されたQOLに関する4つのサブスケール[身体機能、疼痛、呼吸困難、全般的健康状態(global health status)]は、治療開始から6ヵ月間のいずれの時点の評価でも各群間に差は見られなかった。Muers氏は、「悪性胸膜中皮腫の管理では、ASCに化学療法を追加しても生存およびQOLに有意なベネフィットはもたらされない」と結論したうえで、「探索的な解析の結果により、1つの治療選択肢としてビノレルビンにシスプラチンやペメトレキセドを併用するアプローチは試みる価値があることが示唆されるが、他の多くの癌と同様に、悪性胸膜中皮腫の場合も新規抗癌剤や分子標的薬がもっとも有望かもしれない」と考察している。(菅野守:医学ライター)

1994.

乳癌補助療法、生存率改善はパクリタキセル週1回投与に軍配

乳癌の標準的化学療法後に用いられる2種類のタキサン系薬剤(ドセタキセルとパクリタキセル)による補助療法は、週1回投与と3週に1度の投与ではどちらの有効性が高いのか? 検証作業に当たっていた米国Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のJoseph A. Sparano氏らによる報告がNEJM誌2008年4月17日号で掲載された。転移性乳癌の女性4,950例を調査研究は、乳癌女性のうち腋窩リンパ節転移が陽性か、リンパ節転移は陰性だがリスクの高い患者4,950例を対象に実施された。患者は無作為化された後、まずドキソルビシン(国内商品名:アドリアシン)とシクロホスファミド(エンドキサン)静脈内投与を3週に1度4サイクル行い、引き続き、パクリタキセルまたはドセタキセルを、3週に1度4サイクル静脈内投与する群と、週1回12サイクル静脈内投与する群に割り付けられた。主要エンドポイントは無病生存率。HER2陰性、エストロゲン受容体陽性でも効果パクリタキセルを3週に1度投与する標準的な用法の群と比べて、無病生存のオッズ比はそれぞれ、パクリタキセル週1回投与群は1.27(P = 0.006)、ドセタキセル3週に1度投与群は1.23(P = 0.02)、ドセタキセル週1回投与群は1.09(P = 0.29)だった。いずれもオッズ比は1以上で、実験的治療群が支持される結果となった。また、標準用法群に比べてパクリタキセル週1回投与のほうが、生存率が改善していた(オッズ比1.32、P = 0.01)。サブグループ(HER2陰性)解析の結果では、エストロゲン受容体が陽性でも、パクリタキセル週1回投与によって無病生存率と全生存率に同様の改善が見られた。パクリタキセル週1回投与群では、同剤の3週に1度投与群に比べてグレード2、3、4の神経障害の発生頻度が高かった(27%対20%)が、研究グループは、「ドキソルビシンとシクロホスファミドによる標準的化学療法の後に補助療法としてパクリタキセルを週1回投与することは、乳癌女性の無病生存と全生存率を改善する」と結論付けている。(武藤まき:医療ライター)

1995.

乳癌予後予測の精度アップと治療戦略改善にゲノム情報統合が有効

デューク大学(米国)ゲノム研究所のChaitanya R. Acharya氏らは、「遺伝子発現プロファイルの活用が乳癌の予後予測と治療戦略に有益をもたらす」として、ゲノム情報と臨床像および病理学的危険因子(米国で「Adjuvant! Online」と呼ばれている乳癌再発リスクのオンラインシミュレーションシステムの集約情報)を統合し、初期乳癌の予後予測の精度アップと治療戦略改善が図れるかどうかを検討した。JAMA誌2008年4月2日号より。補助化学療法の初期乳癌患者964例対象の後ろ向き研究本研究は、補助化学療法対象となった初期乳癌患者を対象とした後ろ向き研究。マイクロアレイ・データに対応した964例(最初の解析患者群として573例をセット、検証群として391例をセット)の乳房腫瘍サンプルが用いられた。患者は全員、臨床病理学的所見に基づき再発危険スコアに割り付けられ、再発危険スコアとの一致パターン入手と、臨床病理学的予後モデルでの予後予測の精度を高めるため、発癌経路と腫瘍生物学/微小環境状態を現す署名付け(signature)が行われた。化学療法反応の予測因子も、初期乳癌での臨床特異性との関連を特徴づけるため実施された。主要評価項目は、無再発生存と薬物療法への感受性予測を洗練する初期乳癌の遺伝子発現シグネチャーと臨床病理学的変数。再発リスク予測の精度を高める予備的証拠が得られた573例のデータセットで、発癌経路と腫瘍生物学/微小環境状態のパターンを示す予後に有意なクラスタが同定された。乳癌の下位表現型を示す低リスク(ログランク検定P=0.004)、中リスク(ログランク検定P=0.01)と高リスク(ログランク検定P=0.003)の各クラスタ。例えば低リスク群(6つの予後的に有意なクラスタのうち)クラスタ4の患者は、クラスタ1(ログランク検定P=0.004)、クラスタ5(ログランク検定P=0.03)の患者に比べて無再発生存が下位だった。クラスタ4の患者の無再発生存の中央値は、クラスタ5の16ヵ月(95%信頼区間:10.5~27.5ヵ月)よりも、クラスタ1の19ヵ月(7.5~24.5ヵ月)よりも少なかった。 多変量解析の結果からは、ゲノムクラスタの独立した予後的価値が確認された[低リスク(P=0.05)、ハイリスク(P=0.02)]。これら再発リスクパターンの再現性と有効性は検証群でも、クラスタは同一ではなかったが確証された。また予後臨床ゲノムクラスタは、一般的に用いられる細胞毒性治療にユニークな感受性パターンを持つことも明らかとなった。Acharya氏らは、「これらの結果は、臨床リスク階層化に遺伝子発現シグネチャーを組み入れることで予後予測の精度を高めることができるという予備的証拠となる。治療戦略の細分化のためこのアプローチの価値を前向き研究で検証する必要がある」と結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

1996.

結腸・直腸癌の肝転移に対する手術+化学療法は適格例、切除例に有効

結腸・直腸癌の肝転移に対し、手術と術前・後の化学療法を併用すると適格例および切除例の無増悪生存率(PFS)が改善することが、Bernard Nordlinger 氏らEORTC Intergroupの検討で明らかとなった。毎年、世界で約100万人が結腸・直腸癌と診断され、その40~50%に肝転移がみつかる。転移巣が切除可能な場合は5年生存率は35%に達するが、切除しても75%が再発するという。そのため、再発リスクを低減させるアプローチの探索が進められている。Lancet誌2008年3月22日号掲載の報告。術前FOLFOX4+手術+術後FOLFOX4群と手術単独群を比較研究グループは、結腸・直腸癌の切除可能肝転移例(転移巣数≦4)を対象に、手術+術前・後化学療法と手術単独を比較する無作為化対照比較試験を実施した。今回の報告は、プロトコールに規定されていない時点での中間解析によるPFSの最終データについてであり、全生存率は含まれない。2000年10月~2004年7月の間に11か国の78施設から364例が登録され、FOLFOX4(フルオロウラシル/ロイコボリン+オキサリプラチン)を6コース施行後に手術を行い、さらにFOLFOX4を6コース実施する群(182例)と手術単独群(182例)に無作為に割り付けられた。主要評価項目はPFSのハザード比≦0.71とした。intention-to-treat解析のほか、適格例(併用群:171例、単独群:171例)および切除例(併用群:151例、単独群:152例)に限定した解析も行った。ITT解析ではPFSに有意差なし、適格例、切除例で有意に改善術前FOLFOX4施行(中央値6コース)後は151例(83%)が切除可能であり、115例(63%)が術後FOLFOX4(中央値6コース)を受療した。手術単独群では152例(84%)が切除可能であった。3年PFSは、単独群の28.1%に対し併用群は35.4%と7.3%増加したが、ハザード比は0.79であり有意差を認めなかった(p=0.058)。一方、適格例の3年PFSは、単独群28.1%、併用群36.2%と8.1%増加(ハザード比:0.77、p=0.041)し、切除例ではそれぞれ33.2%、42.4%と9.2%増加(ハザード比:0.73、p=0.025)しており、いずれも有意な差が見られた。解析時までに単独群で75例が、併用群では64例が死亡した。回復可能な術後合併症の頻度は、単独群(16%、27/170例)よりも併用群(25%、40/159例)で高かった(p=0.04)。手術関連の死亡例は単独群2例、併用群1例であった。Nordlinger 氏は、「FOLFOX4による化学療法と肝転移巣切除術は併用可能であり、適格例および切除例では再発のリスクを低減する」と結論している。なお、同じ号の本論文に対するコメントで、米国MDアンダーソン癌センターのScott Kopetz 氏とJean-Nicolas Vauthey氏は、ITT解析では有意差がないこと、適格例と切除例の解析は事前にプロトコールに規定のない後付け解析である点に着目し、「本試験では、術前・後の化学療法の併用によるPFSに対するポジティブな効果は証明されていない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

1997.

第6回日本臨床腫瘍学会学術集会プレスセミナー

2008年3月20、21日に福岡国際会議場において開催された「第6回日本臨床腫瘍学会学術集会」に先立ち、19日にプレスセミナーが開催された。そのなかで、「承認相次ぐ分子標的治療薬-世界標準を見据えて-」についてレポートする。初めに、東京医科大学病院呼吸器外科の坪井正博氏より、非小細胞肺癌:エルロチニブ<上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤>が紹介された。国内外の臨床成績、ガイドラインの位置づけ、ゲフィチニブとの違いを紹介した。両剤とも、効果の得られやすい症例に使用したほうが良いと考えられ、その効果が期待できる集団として女性、非喫煙者などをあげたが、まだ明確な根拠はないという。エルロチニブは2次、3次治療として期待できる薬剤ではあるが、肺障害のリスクなどもあるため、リスクとベネフィットのバランスを患者さんと相談しながら薬剤選択することが重要とまとめた。続いて、東京慈恵会医科大学腫瘍・血液内科の薄井紀子氏より慢性骨髄性白血病(以下CML):分子標的療法の現状と課題が紹介された。薄井氏は、CMLの病態・治療についての概要、分子標的薬イマチニブ<ABLチロシンキナーゼ阻害剤>の治療成績、耐性の問題を紹介した。続いて新規チロシンキナーゼ阻害剤、ダサチニブ、ニロチニブなどについて、それぞれの特徴を交えて解説した。最後に薄井氏は、イマチニブをきちんと使うことが一番重要であり、イマチニブ耐性・無効例には変異に応じた薬剤を選択する時代になってくるだろう、その治療法はデータに基づき、きちんと選択しなければならないと結んだ。次に、国立がんセンター東病院内科の大津敦氏より、大腸がん:セツキシマブが紹介された。セツキシマブは2008年3月現在、未承認であることを冒頭に述べ、EGFRについて解説した。続いてセツキシマブの作用機序、特徴、海外・国内臨床成績、安全性を紹介し、大腸がん領域において、アバスチン、セツキシマブの登場により、本邦も海外と同じレベルの治療が出来るようになる、とまとめた。まとめとして、癌研究会有明病院化学療法科の畠清彦氏が、それぞれの講演におけるポイントを紹介し、さらに新規分子標的薬承認に向けて今後わが国において必要とされる対応について述べた。最後のディスカッションにおいては、韓国に比べて日本における申請から承認までの期間が長いこと、治験が中国や韓国に流れていること、分子標的治療薬では医療費が高額となり治療を続けられない患者さんが存在することなど、今後、解決していくべき問題があがった。

1998.

初のヒト顔面部分移植18ヵ月後のアウトカム

フランス・リヨン大学のJean-Michel Dubernard氏らは2005年11月27日、初めてとなるヒト顔面の部分同種移植術を女性患者に対して行った。患者は、同年3月28日に飼い犬に顔面を食いちぎられ、鼻、上下の口唇、頬、顎を失った38歳女性。レシピエントは脳死女性。その事実は2006年初頭にドナーも同席しての記者会見で公表され、世界中のマスメディアで報じられたのでご記憶の方もいるかもしれない。その移植後18ヵ月時点までの予後に関する報告がNEJM誌12月13日号に掲載された。皮膚感覚は術後6ヵ月、運動機能は10ヵ月で回復本ケースでは、術後免疫抑制治療はthymoglobulins、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、プレドニゾンの組み合わせで行われた。患者自身の造血幹細胞は術後4日目と11日目に注入。拒絶反応については、センチネル植皮片、顔面皮膚、口腔粘膜からの生検にて確認、機能回復の状況は、感覚・運動機能検査を毎月実施し評価された。また移植の前後には心理的サポートも提供されている。術後、軽い接触に対する感受性(定位モノフィラメント評価法を利用)と、温冷に対する感受性は移植後6ヵ月で標準状態に戻った。運動機能の回復はそれより遅れ、口を完全に閉じることができたのは10ヵ月後だった。移植顔面の機能・美容両面で満足移植された顔面に対する心理的受容は機能の向上に伴って進んだ。拒絶反応は移植後18日目と214日目に出現したが、やがて消失した。ただしイヌリンクリアランスの低下が認められたため、14ヵ月目に免疫抑制処方計画をタクロリムスからシロリムスに変更している。拒絶反応が繰り返し起こるのを予防するため、10ヵ月目に体外光化学療法が導入。それ以降、拒絶反応は起こっていない。初の部分顔面移植を受けたこの女性患者は、術後18ヵ月現在、機能面、美容面ともにおいて満足しているという。(朝田哲明:医療ライター)

1999.

C型肝炎肝硬変の血小板減少症に対するeltrombopagの寄与を確認

血小板新生を促進する新しい経口活性型トロンボポエチン受容体作用薬であるeltrombopagは、がん化学療法やC型肝炎ウイルスに関連した血小板減少症の治療薬として期待され、臨床試験が進められている。本論はデューク大学(イギリス)のJohn G. McHutchison氏ら研究グループによるもので、同剤の、HCV関連肝硬変に伴う血小板減少症患者の抗ウイルス治療に対する寄与を評価したもの。NEJM誌2007年11月29日号より。eltrombopag投与群は用量依存的に血小板が増加血小板数が20,000以上70,000未満(単位:立方ミリメートル;/mm3)のHCV関連肝硬変患者74例を、eltrombopag(1日30、50または75mg)投与群とプラセボ群にランダムに割り付け4週間にわたって連日投与された。主要評価項目は、4週目の血小板数が100,000/mm3以上であることとした。試験ではさらにその後12週間、eltrombopagあるいはプラセボを継続投与しながら、ペグインターフェロンとリバビリンによる抗ウイルス治療を開始した。4週目にデータが有効だった例では、血小板数は用量依存的に100,000/mm3以上に増加した。内訳は、プラセボ投与群が18例中0例、30mg投与群12例中9例(75%)、50mg投与群19例中15例(79%)、75mg投与群21例中20例(95%)だった(P

2000.

胃癌術後患者の補助化学療法に関する日本発エビデンス:ACTS-GC

経口フッ化ピリミジン系薬剤(S-1)に関して、日本国内の109医療機関、患者1,059人が参加して行われたACTS-GC試験(Adjuvant Chemotherapy Trial of TS-1 for Gastric CancerTS-1:胃癌術後補助化学療法比較試験 http://acts-gc.jp/index.html)の結果が、NEJM誌11月1日号に掲載された。筆頭執筆者は北里大学の桜本信一氏。治癒的切除術が施行された胃癌患者に対するS-1を用いた補助化学療法の有用性を評価したもの。ステージIIまたはIIIの胃切除術後患者に経口S-1錠投与ACTS-GCは2001年10月から2004年12月にかけて、D2リンパ節郭清を伴う胃切除術を受けたステージIIまたはIIIの日本人の胃癌患者を、術後にS-1投与による補助化学療法を受けた(投与群)529例と、手術療法のみの(手術単独群)530例にランダムに割り付け行われた。投与群は術後6週間以内に投与を開始し、1年間継続。処方計画は原則として、経口S-1錠80mg/m2/日を4週間投与した後2週間休薬する6週間周期で構成された。主要エンドポイントは全生存率。3年全生存率は投与群80.1%、手術単独群70.1%患者登録終了後1年時点の最初の中間解析で、S-1投与群が手術単独群よりも高い全生存率を示した(P=0.002)。そのため効果・安全性評価委員会の勧告に基づき試験は中止されている。追跡調査データの解析によって、3年全生存率は、S-1投与群が80.1%、手術単独群が70.1%で、S-1投与群の対手術単独群死亡ハザード比は0.68だった(95%信頼区間:0.52-0.87、P=0.003)。S-1投与群で比較的よくみられたグレードIIIまたはIVの有害事象は、食欲不振(6.0%)、悪心(3.7%)、下痢(3.1%)だった。これらから研究グループは、「東アジア人でD2郭清を施行した局所進行性胃癌患者に対するS-1を用いた補助化学療法は効果的である」と結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

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