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院外心停止での心調律解析前のCPR実施時間、長短でアウトカムに差は生じず

院外心停止で心調律解析前に行う救急医療サービス(EMS)隊員管理下での心肺蘇生法(CPR)は、短時間(30~60秒間)でも、長時間(180秒間)でも、その後のアウトカムに有意差は認められないことが報告された。カナダ・オタワ大学のIan G. Stiell氏らROC(Resuscitation Outcomes Consortium)研究グループによる。米国心臓協会国際連絡協議会(AHA-ILCOR)が蘇生ガイドライン2005で、それまでの即時除細動を行う戦略を改め、EMS隊員がまず心調律解析前に2分間、CPRを行うことを推奨する内容に改訂した。しかし、その後の試験で、試行を支持する知見と否定する知見が報告され、蘇生ガイドライン2010では、「エビデンスは相矛盾している」という内容に再修正されているという。NEJM誌2011年9月1日号掲載報告より。CPR実施時間を30~60秒と180秒に無作為割り付けStiell氏らは、CPR施行時間は短い戦略がよいのか、比較的長めに行う戦略がよいのかについてクラスタ無作為化比較試験を行った。米国とカナダ合わせて10大学とその関連EMSシステムの施設が共同参加し、院外心停止を来した成人患者を、最初の心電図解析の前にEMS管理下で、30~60秒間CPRを受ける群と、同180秒間CPRを受ける群に割り付けた。主要アウトカムは、良好な機能状態(改変ランキン・スケール・スコアが≦3、同スコアは0~6の範囲で値が高いほど障害が重い)での生存退院とした。両群のアウトカムに有意差なし対象とした9,933例の患者のうち、5,290例は心調律の早期解析群に、4,643例は遅めの解析群に割り付けられた。結果、主要アウトカムの基準を満たしたのは、遅めの解析群計273例(5.9%)、早期解析群計310例(5.9%)で、クラスタ補正後の差は-0.2ポイントだった(95%信頼区間:-1.1~0.7、P=0.59)。交絡因子補正後、両群とも生存に関するベネフィットが示されなかった(クラスタ補正後の差:-0.3ポイント、95%信頼区間:-1.3~0.7、P=0.61)。サブグループ解析(事前特定解析、事後解析)においても同様であった。(朝田哲明:医療ライター)

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院外心停止での標準的CPR時のITD使用、良好な機能状態の生存退院に結びつかず

院外心停止での、標準的な心肺蘇生(CPR)施行時のインピーダンス閾値弁装置(ITD)の使用は、良好な機能状態生存の改善には結びつかないことが報告された。米国・ウィスコンシン医科大学のTom P. Aufderheide氏らROC(Resuscitation Outcomes Consortium)研究グループによる。ITDは、CPR施行時に胸腔内圧を低下させ、心臓への静脈環流量と心拍出量を増加させるよう設計されている。これまでの研究で、CPR施行時のITD使用が、心停止後の生存率を改善する可能性が示唆されていた。米国心臓協会ガイドライン2005では、血行動態および心拍再開改善のためITDの活用をIIaクラスの推奨として勧告している。しかし長期生存率の上昇については実証されていなかった。NEJM誌2011年9月1日号掲載報告より。8,718例を、標準的CPR時ITD活用群とプラセボ群に無作為化しアウトカムを比較Aufderheide氏らは、米国とカナダ合わせて10大学とその関連EMSシステムの施設共同参加の下、院外心停止での標準的CPR時に、ITDを活用する群と偽ITD(プラセボ)使用群とを比較する大規模無作為化試験(解析対象8,718例)を行った。患者、研究者、試験コーディネーター、すべての医療提供者に、治療割り付け情報は知らされなかった。主要アウトカムは、良好な機能状態(改変ランキン・スケール・スコアが≦3、同スコアは0~6の範囲で値が高いほど障害が重い)での生存退院とした。病院到着時の心拍再開、入院生存、退院生存も有意差なし解析対象となった8,718例のうち、4,345例がプラセボ群に、4,373例がITD活用群に無作為に割り付けられた。結果、主要アウトカムの基準を満たしたのは、プラセボ群260例(6.0%)、ITD群254例(5.8%)で、リスク差(逐次モニタリングで補正後)は-0.1ポイント(95%信頼区間:-1.1~0.8、P=0.71)だった。副次アウトカムの、救急治療部門への到着時における心拍再開率(P=0.51)、入院生存率(P=0.84)、退院生存率(P=0.99)なども有意差は認められなかった。(朝田哲明:医療ライター)

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甲状腺がん患者における放射性ヨウ素使用、病院特性が大きな理由

米国・ミシガン大学のMegan R. Haymart氏らは、臨床現場における甲状腺がん患者の全摘後の放射性ヨウ素使用の傾向について調査を行った。甲状腺全摘後の放射性ヨウ素使用については確定しておらず、使用の期間や重症度と使用との関連性などが明らかになっていない。術後使用の議論は熱いが無作為化試験は行われておらず、そのためガイドラインでは医師の裁量とされており、臨床現場は使用の支持派と反対派に二分されている。Haymart氏らは、最近の臨床での使用パターンを調べ、病院間で使用程度の格差があるか、あるとしたらどのような因子が関連しているのかを調査した。JAMA誌2011年8月17日号掲載より。18年間で使用は有意に増大調査は、1990~2008年に米国国立がんセンターデータベースにデータを提供していた981施設で治療を受けた分化型甲状腺がん患者18万9,219例を対象とし、放射性ヨウ素の使用について時間傾向分析を行った。また、2004~2008年に治療を受けた患者コホートにて、放射性ヨウ素使用と患者特性や病院特性などの関連を評価する多平面解析を行った。結果、1990年と2008年とでは、腫瘍サイズにかかわらず、放射性ヨウ素使用は有意に増大していた。患者の割合でみると、40.4%(1,373/3,397例)から56.0%(11,539/20,620例)への有意な増大が認められた(P<0.001)。患者特性と腫瘍特性が21.1%、病院タイプと治療件数が17.1%多平面解析の結果からは、放射性ヨウ素使用についてステージ間(米国がん病期分類合同委員会に基づく)での格差が認められた。ただし認められたのはステージIとIVの格差で、オッズ比0.34(95%信頼区間:0.31~0.37)だったが、ステージIIまたはIIIと、IVとの間には関連が認められず、IIとIVのオッズ比は0.97(同:0.88~1.07)、IIIとIVのオッズ比は1.06(0.95~1.17)だった。放射性ヨウ素使用の因子としては、患者特性、腫瘍特性に加えて、病院特性があることが認められた。使用有無の格差は大きく、その因子として、患者特性と腫瘍特性が21.1%を占めたが、病院タイプと治療件数も17.1%を占めていた。また患者特性、腫瘍特性、病院特性で補正後は、不明瞭だが病院特性に類する因子が29.1%を占めていた。Haymart氏は、「分化型甲状腺がん患者の治療における放射性ヨウ素使用は有意に増えていた。使用格差の背景には病院特性が大きな理由としてあることが明らかとなった」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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ICU重症成人患者への静脈栄養法は8日目以降開始のほうがアウトカム良好

重症疾患でICUに入室となった成人患者への静脈栄養法の開始は、早期開始(48時間以内)するよりも後期開始(8日目以降)のほうが、回復が早く合併症が少ないことが明らかにされた。ベルギー・ルヴェン大学病院集中ケア内科学のMichael P. Casaer氏ら研究グループが行った4,640例を対象とする多施設共同無作為化試験の結果による。重症疾患は、摂食障害を来し重度の栄養障害、筋消耗、虚弱をもたらし回復を遅らせるため栄養療法が開始されるが、アウトカム改善については明らかになっていなかった。Casaer氏らは、投与ルート、タイミング、目標カロリー、栄養療法のタイプに着目し、特に議論となっている経腸栄養法単独では目標カロリーが達成できないICU重症成人患者への静脈栄養法開始のタイミングについて試験を行った。NEJM誌2011年8月11日号(オンライン版2011年6月29日号)掲載報告より。静脈栄養法開始について早期開始群と後期開始群とに無作為化し検討試験は、2007年8月1日~2010年11月8日の間にベルギー国内7つのICUから登録された、経腸栄養法では栄養不十分(栄養リスクスコア7段階で3以上)のICU成人患者4,640例を対象とし、静脈栄養法の早期開始(ヨーロッパのガイドラインに基づく)と後期開始(米国・カナダのガイドラインに基づく)とについて比較された。早期開始群(2,312例)は、ICU入室後48時間以内に静脈栄養が開始され、後期開始群(2,328例)は7日目においても栄養不十分な場合で8日目に開始された。経腸栄養の早期開始のプロトコルは両群同一に適用され、正常血糖達成にはインスリンが注入された。後期開始群の生存退室率・生存退院率が相対的に6.3%上回る結果、後期開始群の患者は、ICUからの早期生存退室率(ハザード比:1.06、95%信頼区間:1.00~1.13、P=0.04)と病院からの生存退院率(同1.06、1.00~1.13、P=0.04)が相対的に6.3%上回り、退院時の機能状態の低下を示す所見は認められなかった。ICU内死亡率、病院内死亡率、90日生存率は、両群で同程度だった。また後期開始群の患者は早期開始群患者と比較して、ICU感染症(22.8%対26.2%、P=0.008)、胆汁うっ滞発生率(P

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非糖尿病性腎症患者、ガイドライン推奨値の減塩維持が蛋白尿減少と降圧の鍵

ACE阻害薬最大量で治療中の非糖尿病性腎症患者には、ガイドライン推奨レベルの減塩食を持続して摂らせることが、蛋白尿減少と降圧に、より効果的であることが52例を対象とする無作為化試験の結果、示された。試験は、オランダ・フローニンゲン大学医療センター腎臓病学部門のMaartje C J Slagman氏らが、同患者への追加療法として、減塩食の効果とARB追加の効果とを比較したもので、両者の直接的な比較は初めて。Slagman氏は、「この結果は、より有効な腎保護治療を行うために、医療者と患者が一致協力して、ガイドラインレベルの減塩維持に取り組むべきことを裏付けるものである」と結論している。BMJ誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月26日号)掲載報告より。ACE最大量投与中にARB and/or減塩食を追加した場合の蛋白尿と血圧への影響を比較Slagman氏らは、ACE阻害薬最大量服用中の非糖尿病性腎症患者の蛋白尿や血圧への影響について、減塩食を追加した場合と最大量のARBを追加した場合、あるいは両方を追加した場合とを比較する多施設共同クロスオーバー無作為化試験を行った。被験者は、オランダの外来診療所を受診する52例で、ARBのバルサルタン(商品名:ディオバン)320mg/日+減塩食(目標Na+ 50mmol/日)、プラセボ+減塩食、ARB+通常食(同200mmol/日)、プラセボ+通常食の4治療を6週間で受けるように割り付けられた。ARBとプラセボの投与は順不同で二重盲検にて行われ、食事の介入はオープンラベルで行われた。試験期間中、被験者は全員、ACE阻害薬のリシノプリル(商品名:ロンゲス、ゼストリルほか)40mg/日を服用していた。主要評価項目は蛋白尿、副次評価項目が血圧であった。直接対決では減塩食の効果が有意平均尿中ナトリウム排泄量は、減塩食摂取中は106(SE 5)mmol/日、通常食摂取中は184(6)mmol/日だった(P

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術前心エコー検査、術後生存改善や入院期間短縮と関連せず

大手術時に懸念される周術期心臓合併症を回避するために、ガイドラインで推奨されている術前心エコー検査について、住民ベースの後ろ向きコホート試験の結果、術後生存や入院期間を改善していないことが明らかにされた。カナダ・St Michael's HospitalのDuminda N Wijeysundera氏らが、40歳以上の中~高リスクの選択的非心臓手術患者を対象に行った試験で報告した。周術期心臓合併症は、選択的非心臓手術例の2%以上で発生、術後死亡の約3分の1を占めると報告されており、術前リスク層別化として心エコーが推奨されている。BMJ誌2011年7月23日号(オンライン版2011年6月30日号)掲載報告より。わずかだが有意に、心エコー検査受診が術後死亡率を上昇試験は、カナダ・オンタリオ市の急性期病院に関する医療データベース(入院料、医師報酬請求、人口動態統計、65歳以上処方などの各データ)を利用して行われた。1999年4月1日~2008年3月31日の間に、中~高リスクの選択的非心臓手術を受けた40歳以上を被験者とし、術前6ヵ月間内に行われた安静時心エコー検査の記録を調べ、術後生存(30日時点と1年時点)、入院期間について評価した。評価に際して術後手術部位感染症例は、心エコー検査との関連が期待できないアウトカムとして除外された。全コホート26万4,823患者のうち、心エコー検査を行っていた人は4万84例(15.1%)だった。心エコー検査を受けたか受けなかったかの違いによる減少差をみるために行った、適合コホート(7万996例)との傾向スコア解析の結果、心エコー検査受診と30日死亡率上昇(相対リスク:1.14、95%信頼区間:1.02~1.27、P=0.02)および1年死亡率上昇(同:1.07、1.01~1.12、P=0.02)との関連が、それぞれわずかだが有意に認められた。入院平均期間延長との関連も有意だった(0.31日、95%信頼区間:0.17~0.44、P<0.001)が、術後手術部位感染症は有意ではなかった(相対リスク:1.03、95%信頼区間:0.98~1.06、P=0.18)。ストレステストおよびリスク因子の有無で、死亡との関連が左右されることが明らかにまたサブグループ解析から、死亡との関連が、ストレステストの有無、心臓合併症のリスク因子の有無で左右されることが明らかにされた。ストレステスト受診者(相対リスク:1.01、0.92~1.11)と、ストレステスト未受診者でも高リスクを有する人(同:1.00、0.87~1.13)では死亡率上昇が認められなかった一方、ストレステスト未受診者で低リスク患者(同:1.44、1.14~1.82)、中間リスク患者(同:1.10、1.02~1.18)では死亡率上昇が認められた。Wijeysundera氏は、「試験の結果、周術期アウトカム改善のための術前心エコー検査の有用性に疑いを投げかけるものとなったが、同時に、リスク階層化の精度を上げるためのさらなる研究、および心室機能障害に通じる周術期心臓合併症を減少させるための有効な介入法開発の必要性を強調するものである」と結論している。

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心房細動を有する75歳以上高齢者の脳卒中リスクは“高リスク”とするのが妥当

心房細動を有する高齢患者の脳卒中リスクの予測能について、近年開発提唱された7つのリスク層別化シェーマを比較検討した結果、いずれも限界があることが報告された。英国・オックスフォード大学プライマリ・ケア健康科学部門のF D R Hobbs氏らによる。脳卒中のリスクに対しては、ワルファリンなど抗凝固療法が有効であるとの多くのエビデンスがあるにもかかわらず、高齢者への投与率は低く、投与にあたっては特に70歳以上ではアスピリンと安全面について検討される。一方ガイドラインでは、リスクスコアを使いリスク階層化をした上でのワルファリン投与が推奨されていることから、その予測能について検討した。試験の結果を受けHobbs氏は、「より優れたツールが利用可能となるまでは、75歳以上高齢者はすべて“高リスク”とするのが妥当だろう」と結論している。BMJ誌2011年7月16日号(オンライン版2011年6月23日号)掲載報告より。プライマリ・ケアベースの被験者を対象に、既存リスクスコアの予測能を検証既存リスク層別化シェーマの成績の比較は、BAFTA(Birmingham Atrial Fibrillation in the Aged)試験の被験者サブグループを対象に行われた。BAFTA試験は、2001~2004年にイギリスとウェールズ260の診療所から集められた心房細動を有する75歳以上の973例を対象に、脳卒中予防としてのワルファリンとアスピリンを比較検討したプライマリ・ケアベースの無作為化対照試験。Hobbs氏らは、BAFTA被験者でワルファリンを投与されていなかった、または一部期間投与されていなかった665例を対象とし、CHADS2、Framingham、NICE guidelines、ACC/AHA/ESC guidelines、ACCP guidelines、Rietbrock modified、CHA2DS2-VAScの各シェーマの脳卒中リスク予測能を調べた。主要評価項目は、脳卒中と血栓塞栓の発生。解析対象のうち虚血性脳卒中の発生は54例(8%)、全身塞栓症は4例(0.6%)、一過性脳虚血発作は13例(2%)だった。最も分類できたのは高リスク、予測精度は全体的に同等低・中間・高リスクへの患者の分類は、3つのリスク層別化スコア(改訂CHADS2、NICE、ACC/AHA/ESC)ではほぼ同等であった。分類された割合が最も高かったのは高リスク患者で(65~69%、n=460~457)、一方、中間リスクへの分類が最も残存した。オリジナルCHADS2スコア(うっ血性心不全、高血圧、75歳以上、糖尿病、脳卒中既往)は、高リスク患者の分類が最も低かった(27%、n=180)。CHADS2、Rietbrock modified CHADS2、CHA2DS2-VASc(CHA2DS2-VASc血管疾患、65~74歳、性別)は、スコア上限値でリスク増大を示すことに失敗した。C統計量は0.55(オリジナルCHADS2)~0.62(Rietbrock modified CHADS2)で、予測精度は全体的に同等であった。なお、ブートストラップ法により各シェーマの能力に有意差はないことが確認されている。

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高血圧の薬物療法開始前にABPMを:診察室血圧、家庭血圧より治療ターゲットが適切に

診察室血圧と家庭血圧は、いずれも高血圧の診断に推奨される単体検査としての十分な精度を有していないことが、英国・バーミンガム大学プライマリ・ケア臨床サイエンスのJ Hodgkinson氏らによるシステマティックレビューの結果、報告された。各測定を24時間自由行動下血圧測定(ABPM)と比較した結果による。従来、高血圧の治療導入は診察室血圧を診断ベースとしガイドラインでもその値が参照基準として採用されているが、ABPMのほうがより正確に真の平均血圧を推定でき、心血管アウトカムや末端器官傷害との相関性も良好であることが示されている。また、家庭血圧のほうが診察室血圧よりも末端器官傷害との相関性が良好であることも明らかになっており、Hodgkinson氏らは、診察室血圧、家庭血圧の精度をABPMと照らし合わせて検証することは重要かつ必要なこととしてレビューを行った。BMJ誌2011年7月9日号(オンライン版2011年6月24日号)掲載報告より。診察室血圧、家庭血圧の精度を対ABPMで検証した試験をメタ解析Hodgkinson氏らは、階層的サマリーROCモデルによるシステマティックレビューでのメタ解析を行った。血圧測定機器の検証エビデンスなど方法論の質的評価が行われた。データソースとしたのは、Medline(1966年~)、Embase(1980~)、システマティックレビューのコクラン・データベース、DARE、Medion、ARIF、TRIPで、2010年5月アップ分までを対象。試験適格基準は、全年齢の成人を対象に高血圧診断について、家庭血圧と診察室血圧あるいはいずれかを用いた場合と、ABPMを用いた場合とを比較し、診断閾値の定義していたものとした。結果、20試験が適格基準を満たした。ただし試験間には著しい差異が、年齢(平均年齢<33歳~60歳まで変動)、性(男性割合16~69%)、集団サイズ(16~2,370例)、設定(プライマリ・ケアか専門家集団)に関してあり、全試験にいくつかの方法論的弱さがあった。診察室血圧、家庭血圧ともに診断感度、特異度が不十分20試験は、さまざまな閾値を高血圧診断に用いており、診察室血圧とABPMとの直接比較が可能だったのは7試験(平均年齢47.1歳、女性57%)、家庭血圧とABPMについては3試験(同52.5歳、55%)であった。135/85mmHgが閾値のABPM群との比較で、診察室血圧140/90mmHg超を診断基準とした場合の平均感度は74.6%、特異度は74.6%。家庭血圧135/85mmHg超を診断基準とした場合の平均感度は85.7%、特異度62.4%であった。Hodgkinson氏は、「診察室血圧、家庭血圧ともに感度、特異度が不十分で、単一診断検査としては推奨されない」と結論。その上で「ABPMを参照基準とした場合、診察室血圧、家庭血圧に基づく治療決定は相当な過剰診断に結びつく可能性がある」と述べ、「生涯にわたる薬物治療開始前にABPMを行うことは、特に診断閾値に関しての治療ターゲットをより適切なものへと導くことになるであろう」とまとめている。

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2型糖尿病に対する早期強化療法により心血管イベントがわずかに低下傾向に:ADDITION-Europe試験

2型糖尿病に対する早期の多元的な強化療法によって、5年後の心血管イベントや死亡が有意ではないがわずかに減少することが、イギリス・代謝科学研究所のSimon J Griffin氏らが行ったADDITION-Europe試験で示され、Lancet誌2011年7月9日号(オンライン版2011年6月25日号)で報告された。2型糖尿病では、複数の心血管リスク因子に対する多元的な強化療法によって死亡率が半減する可能性が指摘されているが、血圧、脂質、血糖などの個々のリスク因子の治療を診断直後から開始した場合の有効性は不明だという。3ヵ国の343プライマリ・ケア施設が参加したクラスター無作為化試験ADDITION-Europe(Anglo-Danish-Dutch Study of Intensive Treatment In People with Screen Detected Diabetes in Primary Care)試験は、2型糖尿病に対する診断後早期の多元的治療が心血管リスクに及ぼす効果を検討する並行群間クラスター無作為化試験である。2001年4月~2006年12月までに、デンマーク、オランダ、イギリスの343のプライマリ・ケア施設が、ルーチンの糖尿病治療を行う群あるいは早期に多元的強化療法を施行する群に無作為に割り付けられた。患者は、スクリーニング検査で2型糖尿病と診断された40~69歳(オランダのみ50~69歳)の地域住民であった。多元的強化療法群は、既存の糖尿病治療に加え、プライマリ・ケア医や看護師による教育プログラム(治療ターゲット、アルゴリズム、ライフスタイルに関する助言など)への参加をうながし、Steno-2試験などで使用された段階的レジメンに基づくガイドラインに準拠した薬物療法や、健康なライフスタイル実践の指導が行われた。全施設で同じアプローチが使用されたが、薬剤の選択などの最終決定は担当医と患者が行った。ルーチン治療群ではプライマリ・ケア医が患者に検査結果を伝え、標準的な糖尿病治療が施行された。主要評価項目は、初発心血管イベント(5年以内の心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、血行再建術、非外傷性四肢切断)の複合エンドポイントとした。心血管リスク因子がわずかに有意に改善、心血管イベントは有意差はないがわずかに低下ルーチン治療群に176施設(1,379例、診断時平均年齢60.2歳、男性57.3%)が、多元的強化療法群には167施設(1,678例、60.3歳、58.5%)が割り付けられ、主要評価項目の解析は3,055例(99.9%)で可能であった。全体の平均フォローアップ期間は5.3年(SD 1.6)。心血管リスク因子[HbA1c、総コレステロール、LDLコレステロール、収縮期血圧、拡張期血圧]は、強化療法群でわずかではあるが有意に改善された。初発心血管イベントの発生率は、ルーチン治療群が8.5%(15.9/1,000人・年)、強化療法群は7.2%(13.5/1,000人・年)であり(ハザード比:0.83、95%信頼区間:0.65~1.05、p=0.12)、評価項目の個々のコンポーネントも強化療法群で良好な傾向がみられたが、有意差は認めなかった(心血管死:1.6% vs. 1.5%、非致死的心筋梗塞:2.3% vs. 1.7%、非致死的脳卒中:1.4% vs. 1.3%、血行再建術:3.2% vs. 2.6%、非外傷性四肢切断:0% vs. 0%)。全体の死亡率はルーチン治療群が6.7%、強化療法群は6.2%であった(ハザード比:0.91、95%信頼区間:0.69~1.21)。著者は、「2型糖尿病に対する早期の多元的強化療法によって、5年後の心血管イベントや死亡がわずかに減少したが有意差はなかった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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持続型赤血球造血刺激因子製剤エポエチン ベータ ペゴル(商品名:ミルセラ)

 エポエチン ベータ(遺伝子組換え)(商品名:エポジン)に1分子の直鎖メトキシポリエチレングリコール(PEG)を結合させた、長時間持続型の赤血球造血刺激因子製剤(ESA)である「エポエチン ベータ ペゴル(遺伝子組換え)」(商品名:ミルセラ)が、2011年4月「腎性貧血」を適応として承認された。赤血球造血刺激因子製剤(ESA)治療の課題 腎性貧血は、腎機能障害によるエリスロポエチン産生能低下による貧血である。わが国ではその治療にESAが使用されるようになってから既に20年を越え、透析患者のみならず透析治療導入前の保存期慢性腎不全患者においても、ESAは腎性貧血治療薬として広く普及している。現在、透析患者約30万人のうち、約8割がESAによる貧血治療を受けていると考えられている。 従来のESAは血中半減期が短く、頻繁に投与する必要がある。透析患者では、通常、週3回透析がありESAもその際に投与できるため、通院回数が増えることはないが、保存期や腹膜透析の場合、通常、月に1回もしくは2ヵ月に1回の通院となるため、その間隔では従来のESAでは十分な効果が得られない。十分な効果を得るには、ESA投与だけのための通院が必要となることから、通院頻度が月1回という患者でも治療可能な、血中半減期の長いESAが求められていた。4週間に1回の投与で目標ヘモグロビン濃度を達成 今回承認されたエポエチンベータペゴルは長時間持続型のESAであり、既存のESAより長い血中半減期を有する。そのため、維持用量として、皮下または静脈内投与のいずれにおいても4週間に1回という少ない投与頻度で、確実かつ安定した効果が得られる。また本剤の投与により、腎性貧血治療のガイドライン1)の目標ヘモグロビン値を達成することが確認されている。これらの特徴から、通院が月1回という保存期や腹膜透析の患者に、とくにニーズが高いと予想される。 なお、皮下投与だけではなく静脈内投与においても、4週間に1回の投与が可能であることも特徴の1つである。 安全性については、既存のESAと異なる副作用は確認されていない。なお、本剤は2007年欧州での承認以降、すでに100ヵ国以上で発売されている。透析患者におけるリスク低減 一方、透析患者にとっては、通院の負担という面では従来のESAでも問題はないものの、注射という医療行為によるリスクの低減につながる。きわめて稀とはいえ、薬剤や用量の取り違えや感染のリスクはゼロではなく、できる限りリスクを軽減することが求められるが、従来のESAから本剤に変更することで、月に13回の注射が1回に減り、リスクは13分の1となる。 さらに、医療従事者における業務負担の軽減、薬剤の保管スペースの削減など、本剤のメリットは大きいと言えよう。個々の患者に適したESA治療が可能に ミルセラの登場により、患者の状態に合わせた腎性貧血治療の選択肢が増えると考えられる。今後は、保存期や透析期の病期の違い、貧血の程度や患者の状態により、それぞれの特徴を考慮し、個々の患者に合った適切なESA治療が可能になると考えられる。

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QFractureScoresの高い骨折リスク予測能を確認

イギリスで開発された骨折リスクの予測スコア法であるQFractureScores(http://www.qfracture.org/)は、骨粗鬆症性骨折および大腿骨近位部骨折の10年リスクを予測するツールとして有用なことが、イギリス・オックスフォード大学のGary S Collins氏らが行った外的妥当性の検証試験で確認された。国際的ガイドラインは、骨折リスクが高く、介入によってベネフィットがもたらされる可能性がある患者を同定するために、10年絶対リスクに基づいて高リスク例を絞り込むアプローチを提唱している。QFractureScoresは、イギリスの大規模な患者コホートの解析に基づいて開発された骨折リスクの予測モデルであり、内的妥当性の検証結果は2009年に報告されている。BMJ誌2011年7月2日号(オンライン版2011年6月22日号)掲載の報告。外的妥当性を検証する前向きコホート試験研究グループは、QFractureScoresの骨粗鬆症性骨折および大腿骨近位部骨折の予測能を評価するために、その外的妥当性を検証するプロスペクティブなコホート試験を行った。1994年6月27日~2008年6月30日までに、イギリスの364のプライマリ・ケア施設からThe Health Improvement Network(THIN)のデータベースに登録された224万4,636人(30~85歳、1,278万4,326人年)のうち、2万5,208人が骨粗鬆症性骨折(大腿骨近位部、橈骨遠位部、椎骨)を、1万2,188人が大腿骨近位部骨折を発症した。良好な予測能を示すデータが得られたQFractureScoresの独立した外的妥当性の検証結果は、この予測モデルの骨粗鬆症性骨折および大腿骨近位部骨折に関する良好な予測能を示した。すなわち、大腿骨近位部骨折のリスクスコアの受信者動作特性(ROC)曲線下面積は女性が0.89、男性は0.86であった。また、骨粗鬆症性骨折のリスクスコアのROC曲線下面積は女性0.82、男性0.74であった。QFractureScoresのモデル・キャリブレーションも良好で、男女とも、骨粗鬆症性骨折および大腿骨近位部骨折の10段階のリスクのすべてで予測リスクと実際のリスクがほぼ一致しており、判別可能な過大予測や過小予測は認めなかった。同様に、年齢層別の骨折リスクも全年齢層で予測リスクと実際のリスクがほぼ一致した。著者は、「QFractureScoresはイギリス人の骨粗鬆症性骨折および大腿骨近位部骨折の10年リスクを予測するツールとして有用である」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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低リスク肺塞栓症の低分子量ヘパリンによる外来治療は入院治療に劣らない

低リスクの急性肺塞栓症に対する低分子量ヘパリンを用いた外来治療は、入院治療に劣らない有効性と安全性を有することが、スイス・ベルン大学病院のDrahomir Aujesky氏らの検討で示された。欧米では、症候性の深部静脈血栓症の治療では低分子量ヘパリンによる外来治療が通常治療とされる。肺塞栓症の診療ガイドラインでは、血行動態が安定した患者には外来治療が推奨されているが、現行の症候性肺塞栓症の治療の多くは入院患者を想定したものだという。Lancet誌2011年7月2日号(オンライン版2011年6月23日号)掲載の報告。外来治療の非劣性を評価する非盲検無作為化試験本研究は、4ヵ国(スイス、フランス、ベルギー、アメリカ)の19の救急診療施設の参加のもと、肺塞栓症の入院治療に対する外来治療の非劣性を評価する目的で実施された非盲検無作為化試験である。症状のみられる急性肺塞栓症で、死亡リスクが低い患者(肺塞栓症重症度インデックスでリスクがclass IあるはII)が、外来治療(看護師の指導でエノキサパリン1mg/kg×2回/日を自身で皮下投与し、24時間以内に退院)を行う群あるいは外来治療と同じレジメンを入院で施行する群に無作為に割り付けられた。外来治療群のうち自己注射が不可能な患者には、介護者あるいは訪問看護師が投与した。両群とも、経口抗凝固薬とビタミンK拮抗薬を早期に導入し、90日間以上継続することが推奨された。主要評価項目は、90日以内の症候性静脈血栓塞栓症の再発、14日あるいは90日以内の大出血などの安全性のアウトカムおよび90日死亡率とした。非劣性の定義は両群のイベント発生率の差が4%未満の場合とした。患者にも好評、在院期間の短縮に2007年2月~2010年6月までに344例が登録され、外来治療群に172例が、入院治療群にも172例が割り付けられた。評価可能例は、それぞれ171例、168例であった。外来治療群の171例のうち90日以内の静脈血栓塞栓症再発例は1例(0.6%)のみ、入院治療群では再発例はなく、非劣性の判定基準を満たした[95%上限信頼限界(UCL):2.7%、p=0.011]。90日死亡例は両群とも1例(それぞれ0.6%、95%UCL:2.1%、p=0.005)のみで、14日以内の大出血は外来治療群が2例(1.2%)、入院治療群では認めなかった(95%UCL:3.6%、p=0.031)。90日までに外来治療群の3例(1.8%)が大出血をきたしたが、入院治療群では認めなかった(95%UCL:4.5%、p=0.086)。平均在院期間は、外来治療群が0.5日(SD 1.0)、入院治療群は3.9日(SD 3.1)であった。著者は、「低リスク例の場合、肺塞栓症の入院治療を外来治療で用いても安全かつ有効と考えられる」と結論し、「患者にも好評で、在院期間の短縮につながるだろう」としている。(菅野守:医学ライター)

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重症感染症児への輸液ボーラス投与、48時間死亡率を上昇

 ショック患者への急速早期の輸液蘇生術は、救急治療ガイドラインに示されており、小児科における生命維持訓練プログラムでも支持されている。しかし、処置法、用量、輸液の種類に留意したエビデンスはなく、集中ケア施設がまず利用できないアフリカのような、医療資源が限られた環境下でのショック患児や生命に関わるような重症感染症児への治療に対する輸液蘇生の役割は確立されていない。そこでケニア中央医学研究所(KEMRI)のKathryn Maitland氏らは、アフリカ東部3ヵ国で輸液蘇生の効果を調べる無作為化試験を行った。NEJM誌2011年6月30日号(オンライン版2011年5月26日号)掲載より。アルブミンボーラス、生食ボーラスと対照群の3群に無作為化し48時間後の転帰を比較 研究グループは、ウガンダ、ケニア、タンザニアで、重症熱性疾患と循環不全で入院した小児を、5%アルブミン溶液20~40mL/kg体重ボーラス投与(アルブミンボーラス群)もしくは0.9%生食液20~40mL/kg体重ボーラス投与(生食ボーラス群)する群か、ボーラス投与しない群(対照群)の3群に無作為に割り付け検討した(A層試験)。このA層試験では、重症低血圧の小児は除外されB層試験にて、いずれかのボーラス投与群に無作為に割り付けられ検討された。 >被験児は全員、ガイドラインに基づく、適切な抗菌薬治療や静脈内維持輸液ならびに生命維持のためのトリアージや救急療法を受けた。なお、栄養失調または胃腸炎の患児は除外された。 主要エンドポイントは、48時間時点の死亡率とし、副次エンドポイントには、肺水腫、頭蓋内圧亢進、4週時点の死亡または神経学的後遺症の発生率などが含まれた。 A層試験は3,600例の登録を計画していたが、3,141例(アルブミンボーラス群1,050例、生食ボーラス群1,047例、対照群1,044例)が登録された時点でデータ安全モニタリング委員会の勧告により補充が停止された。 マラリアの保有率(全体で57%)、臨床的重症度は全群で同程度だった。ボーラス後48時間死亡率が有意に上昇 A層における48時間死亡率は、アルブミンボーラス群10.6%(1,050例中111例)、生食ボーラス群10.5%(1,047例中110例)、対照群7.3%(1,044例中76例)だった。生食ボーラス群 vs. 対照群の相対リスクは1.44(95%信頼区間:1.09~1.90、P=0.01)、アルブミンボーラス群vs.生食ボーラス群の相対リスクは1.01(同:0.78~1.29、P=0.96)、両ボーラス群vs.対照群の相対リスクは1.45(同:1.13~1.86、P=0.003)だった。 4週時点の死亡率は、それぞれ12.2%、12.0%、8.7%だった(両ボーラス群vs.対照群の相対リスクは1.39、P=0.004)。神経学的後遺症発生率は、2.2%、1.9%、2.0%だった(同1.03、P=0.92)だった。肺水腫または頭蓋内圧亢進の発生率は、2.6%、2.2%、1.7%だった(同1.46、P=0.17)。 B層では、死亡率がアルブミンボーラス群69%(13例中9例)、生食ボーラス群56%(16例中9例)だった(アルブミンボーラスの相対リスク:1.23、95%信頼区間:0.70~2.16、P=0.45)。 これらの結果は、施設間、サブグループ間(ショック重症度や、マラリア、昏睡、敗血症、アシドーシス、重症貧血の状態に基づく)で一貫して認められた。 研究グループは「医療資源が限られたアフリカでの重症循環不全児に対する輸液ボーラスは、48時間死亡率を有意に高める」と報告をまとめている。

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C型慢性肝炎治療剤 テラプレビル

新規C型慢性肝炎治療剤であるテラプレビルが、2011年1月、承認申請された。優先審査品目に指定されたことから、早期の承認が見込まれる。社会的に大きな関心を集めるC型慢性肝炎治療肝臓がんは、がんの中でも予防可能ながんとして注目されている。わが国の肝臓がんは、72%がC型肝炎由来、17%がB型肝炎由来であることが報告されており、肝臓がん発症の高リスク例は、C型およびB型肝炎ウイルスの検査で事前に予測することができる。そのため、国としても対策に注力しており、肝炎ウイルス検診の実施、肝炎研究7ヵ年戦略、肝炎治療における助成金の交付など数多くの取り組みがなされている。また、報道機関などで取り上げられることも多く、国民の関心が高い疾患といえる。Genotype1・高ウイルス量におけるSVR率の向上が課題現在のC型慢性肝炎治療では、C型肝炎ウイルスのGenotypeとウイルス量をもとにした4つのカテゴリーに分け、それぞれで異なる治療戦略がとられている。近年の医療の発展により、多くの患者カテゴリーで治療成績が向上したが、Genotype1・高ウイルス量のカテゴリーに属する患者の治療成績は現在も良好とはいえず、大きな問題となっている。このカテゴリーに属する患者は、現在の治療の中心であるペグインターフェロン、リバビリンの併用療法(48週)であっても、SVR (Sustained Viral Response:ウイルス学的著効)率が約50%に留まり、約半分の患者でウイルス消失が達成できていない。さらに、多くの患者がこのカテゴリーに属しているため、Genotype1・高ウイルス量へのSVR率向上は大きな医療ニーズとなっている。テラプレビルの追加でSVR率の大幅な上昇が可能にC型慢性肝炎ウイルスの増殖抑制作用を有するNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤であるテラプレビルは、こうした医療ニーズを満たす薬剤として、すでに医師ばかりでなく患者からも大きな期待を集めている。国内でもGenotype1・高ウイルス量患者を対象に第Ⅲ相試験が行われている。ペグインターフェロンα-2b、リバビリンの2剤併用療法48週(PR48)群と、最初の12週をテラプレビル、ペグインターフェロンα-2b、リバビリンの3剤併用療法を行い、その後12週をペグインターフェロンα-2b、リバビリンの2剤で後観察したテラプレビル追加群(TVR12/PR24)の2群に割り付け、SVR、HCV RNA陰性化率、および安全性を検討した。この試験におけるPR48群のSVRは初回治療例で49.2%であった。TVR12/PR24群においては、初回治療例73.0%、前治療再燃例88.1%、前治療無効例が34.4%であった。、初回治療無効例でのSVR率の差はもちろんだが、現在有効な治療手段を持たない前治療無効例の3分の1でSVRを獲得し、新たな治療手段を示した点も興味深い。HCV RNAの累積陰性化率をみると、PR48群が6週で15.9%、48週で79.4%と比較的緩やかに上昇しているのに対し、TVR12/PR24群は6週時点ですでに97.6%、24週では98.4%と、早期かつ高い陰性化を示している。一方、有害事象の発現率では、PR48群においてもすでにヘモグロビン量減少や皮膚症状の発現例がみられ、テラプレビルの併用により発現率が強まる可能性が示唆された。今後は、皮膚症状への適切な対応については皮膚科との連携がより重要視されよう。テラプレビルの併用は、副作用上昇の可能性があるため注意が必要であるが、治療期間の短縮化、SVR率の向上性などを鑑みても有用な治療法だといえよう。承認前から治療ガイドラインで推奨これらの試験結果を受け、厚生労働省研究班は、すでにテラプレビル承認後の治療ガイドライン(初回投与)を策定・発表している。テラプレビル承認後のガイドラインでは、Genotype1・高ウイルス量の患者さんに対しては、ペグイントロン、レベトール、テラプレビルの3剤併用24週投与が推奨される。肝炎の治療薬が、承認前からガイドラインで推奨されるのは、今やB型肝炎治療のスタンダードなったバラクルードと同じで、その期待の高さがうかがえる。実際、テラプレビルは、わが国で優先審査品目に指定され、通常の新薬よりも早い承認が予想される。すでにFDAでは、今年4月に諮問委員会が満場一致で承認を支持、5月には正式に承認された。このような背景がわが国でも追い風になる可能性は高い。

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初発慢性骨髄性白血病の治療選択肢が増加、使い分けの時代へ

 2011年6月16日、抗悪性腫瘍剤ダサチニブ(商品名:スプリセル)が慢性骨髄性白血病(CML)のファーストライン治療薬としての新たな効能が承認されたことを受け、同月30日、ブリストル・マイヤーズ株式会社と大塚製薬株式会社による記者説明会が開催された。本会では、名古屋第二赤十字病院血液・腫瘍内科部長の小椋美知則氏より、CML治療の変遷と国際共同第3相試験「DASISION試験」の結果、さらにCML治療の今後の展望について講演が行われた。初発CMLに対する治療選択肢が3剤に 2001年、チロシンキナーゼ阻害薬イマチニブが登場し、CMLの治療成績は著明に改善した。その後、より強力なBCR-ABLチロシンキナーゼ阻害作用を持つ第2世代チロシンキナーゼ阻害薬、ニロチニブ、ダサチニブが開発され、イマチニブ抵抗性・不耐容のCMLに対して承認された。さらに、初発慢性期CMLに対してイマチニブと比較した臨床第3相試験の成績から、2010年12月にニロチニブが、また今月2011年6月にダサチニブが初発CMLに対して承認された。 これで、初発CML治療にイマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブの3剤が使用できることになり、年齢や合併症など患者さんの状態を考慮した治療薬の使い分けが可能となった。 現在、米国のNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)の治療ガイドライン(CML Treatment Guideline Ver2. 2011)では、慢性期CMLと診断された場合の治療選択肢として、チロシンキナーゼ阻害薬(イマチニブ400mg、ニロチニブ300mg1日2回、ダサチニブ100mg1日1回)がCatedory1として推奨されている。国際共同第3相試験「DASISION試験」におけるダサチニブの成績 DASISION試験は、初発慢性期CMLを対象にダサチニブ100mg1日1回投与とイマチニブ400mg1日1回投与を比較した、非盲検・ランダム化・国際共同第3相試験である。519例(うち日本人49例)が登録され、ダサチニブ259例(同26例)、イマチニブ260例(同23例)がランダムに割り付けられた。主要評価項目は、12ヵ月間のConfirmed CCyR(細胞遺伝学的完全寛解)率、すなわち28日間以上の間隔で連続したCCyR率である。 本試験において、12ヵ月時点のConfirmed CCyR(ダサチニブvsイマチニブ:77% vs 66%、p=0.0067)、CCyR(同:83% vs 72%、p=0.0011)、分子遺伝学的Major寛解(MMR)(同:46% vs 28%、p

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骨髄異形成症候群-相次ぐ新薬発売で治療が大きく変化

骨髄異形成症候群(MDS)は、高齢者に多く見られる疾患で、高齢者の人口増加に伴い有病率の増加が懸念されている。MDS治療において、治癒を期待できるのは造血幹細胞移植のみであるが、高齢者には難しく、有効な治療手段がない。このような状況のなか、昨年から今年にかけてMDS治療における新薬の発売が相次ぎ、治療方法が大きく変化しつつある。 ここでは、2011年5月31日、帝国ホテル(東京)にて開催されたプレスセミナー「今だからこそ正しく知りたい『血液がん』~MDSの事例から~」(主催:セルジーン株式会社)での埼玉医科大学総合医療センター血液内科 教授 木崎昌弘氏の講演から、MDSの最新の治療についてレポートする。増加するMDS患者現在、日本におけるMDS患者は約10,000 人と推定され、高齢者の人口増加に伴い患者数は増加している。患者数の増加について、木崎氏は「疾患に関する理解が広まり、血液内科へ紹介、診断されるケースが増えていることも理由の1つではないか」と述べた。MDSは、骨髄不全と前白血病状態という2つの側面を持つ疾患である。男女比は2:1で、高齢者に多く発症し、他のがんに対する化学療法や放射線療法の前治療歴もリスク因子に挙げられている。MDSのリスク分類と治療の現状MDSの治療方針は、MDSの病型、リスク分類に加え、症状、年齢、全身状態、患者の意向を考慮し決定される。リスク分類については、国際予後判定システム(IPSS)では「骨髄中の芽球の割合」「血球減少が何種類か」「染色体異常の種類」の3項目により判定するが、各リスク群における生存期間中央値と急性骨髄性白血病(AML)移行率は、低リスク:5.7年/19%、中間リスク-1:3.5年/30%、中間リスク-2:1.2年/33%、高リスク:0.4年/45%である。現在、MDS治療で治癒を期待できるのは同種造血幹細胞移植のみであるが、高リスク群あるいは頻回の輸血を必要とする場合に適応となり、一般的には55歳位までに限られている。日本における移植成績は欧米よりも良好であり、MDS全体での移植後長期生存率は約40%と比較的良好といえる。比較的若年者には、AML治療に準じた強力な化学療法が行われるが、一般的に奏効率は低い。相次ぐ新薬発売このような状況のなか、2010年、新たな治療薬としてレナリドミド(商品名:レブリミド)が承認された。レナリドミドは、5番染色体長腕部欠失を伴うMDSに対して有用性が認められており、海外第3相試験において、プラセボ群に比べて赤血球輸血非依存率を有意に増加させ、ヘモグロビン値を増加させることが示されている。また、5番染色体異常が正常になる例も認められたことから、木崎氏は疾患の本態を改善している可能性もあると述べた。さらに自験例として、レナリドミドの投与により、へモグロビン値が徐々に増加し、5番染色体異常が正常となった症例(68歳女性)の治療経過を提示した。さらに今年、メチル化阻害剤であるアザシチジン(商品名:ビダーザ)が発売された。アザシチジンは高リスクMDSにおいて高い有効性を示し、多施設国際共同第3相試験において、従来の治療群と比較して全生存期間(24.5ヵ月 vs 15ヵ月)、2年生存率(50.8% vs 26.2%)を有意に改善したことが報告されている。輸血依存による鉄過剰症の治療一方、MDS治療においては、輸血依存による鉄過剰症がしばしば問題となる。鉄過剰症はさまざまな臓器障害の原因となり、全生存率(OS)を低下させるが、過剰となった鉄分を除去する鉄キレート剤デフェラシロクス(商品名:エクジェイド)が2008年に発売されている。フランスでのプロスペクティブ調査では、赤血球輸血を実施するMDS患者において、デフェラシロクス投与によりOSを有意に改善したことが報告されている。新たな治療薬を含めたリスク別治療方針木崎氏は、米国NCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドライン2011年v.2を基にしたリスク別治療方針を紹介した。低リスク群では輸血頻度の軽減やAMLへの移行をできるだけ少なくするために、造血因子やレナリドミド、アザシチジンを投与する。高リスク群では生存期間の延長をゴールとして、アザシチジンの投与やAMLに準じた化学療法、同種造血幹細胞移植を行う。残念ながら、治療失敗あるいは治療に反応しない場合には臨床試験に頼るしかないという現状である。患者さんとの向き合い方MDS患者には、どのように向かい合えばよいのか。木崎氏はMDS患者に対して、MDSにはさまざまな治療の選択肢があること、加えて、治りにくい病気であるが病態解明に関する研究の進歩とともに新しい薬剤の開発も盛んなので、主治医と相談して最適な治療法を選択するように伝えていると紹介した。(ケアネット 金沢 浩子)

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2008年英国NICEの勧告による、歯科治療での抗菌薬予防的投与中止の影響

感染性心内膜炎のリスクが高いと思われる患者に対する抗菌薬の予防的投与は、いまだ多くの国で行われているが、英国国立医療技術評価機構(NICE)は2008年3月に、歯科の侵襲的治療に先立って行われる同抗菌薬予防的投与の完全中止を勧告した。シェフィールド大学臨床歯科学部門のMartin H Thornhill氏らは、このNICEガイドライン導入前後の同処置変化および感染性心内膜炎発生率の変化を調査した。BMJ誌2011年5月21日号(オンライン版2011年5月3日号)掲載より。ガイドライン後、予防的投与は78.6%減少、症例・関連死の増加傾向がストップ英国では全入院患者について、1次的退院診断名と最大12の2次的診断名がデータベース化されている。Thornhill氏らは、そのデータから、1次的退院診断名および2次的診断名として、急性または亜急性の感染性心内膜炎のデータがある患者を対象に、ガイドライン導入前後の比較研究を行った。主要評価項目は、予防的投与に用いられたアモキシシリン(商品名:サワシリンなど)3g単回経口投与またはクリンダマイシン(同:ダラシン)600mg単回経口投与の1ヵ月間の処方数、感染性心内膜炎の毎月の症例数、同疾患関連による病院死または口腔レンサ球菌によると考えられる感染性心内膜炎の症例数とした。結果、NICEガイドライン導入後、抗菌薬予防的投与の処方数は、月平均1万277例(標準偏差:1,068)から2,292例(同:176)と、78.6%(P<0.001)減少という有意に大きな変化がみられた。一方で、ガイドライン導入前にみられていた感染性心内膜炎の普遍的な増加傾向が、導入後は一転してみられなくなっていた(P=0.61)。非劣性試験の結果、ガイドライン導入後、症例増加については9.3%以上、また感染性心内膜炎関連の病院死増加については12.3%以上を削減した可能性が示された。ハイリスク患者への予防的投与についてはさらなる検証をThornhill氏は、「NICEガイドライン導入後、抗菌薬予防的投与の処方は78.6%も減少したにもかかわらず、導入後2年間の感染性心内膜炎の発症例または死亡率の増加を大きく削減していた。このことはガイドライン支持に寄与するが、今後もデータのモニタリングを行い、さらに臨床試験によって、特にハイリスク患者を感染から守るには抗菌薬予防的投与が有用であるのかどうか決定する必要がある」と述べている。

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STEMI患者、エビデンス治療の導入率増加に伴い死亡率低下

1996~2007年にかけて、ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者に対するエビデンスに基づく治療の導入率が上がるに従い、院内死亡率や30日・1年死亡率が低下していたことが明らかにされた。スウェーデン・カロリンスカ大学病院循環器部門のTomas Jernberg氏らが、同期間にSTEMIの診断を受け治療・転帰などを追跡された「RIKS-HIA」研究登録患者6万人超について調査し明らかにしたもので、JAMA誌2011年4月27日号で発表した。エビデンスベースやガイドライン推奨の新しい治療の実施状況や実生活レベルへの回復生存との関連についての情報は限られている。再灌流、PCI、血行再建術の実施率、いずれも増大研究グループは、1つの国で12年間以上追跡された連続患者の新しい治療導入率と短期・長期生存との関連を明らかにすることを目的に、1996~2007年にかけて、スウェーデンの病院で初めてSTEMIの診断を受け、基線特徴、治療、アウトカムについて記録された「RIKS-HIA(Register of Information and Knowledge about Swedish Heart Intensive Care Admission)」の参加者6万1,238人について、薬物療法、侵襲性処置、死亡の割合を推定し評価した。被験者の年齢中央値は、1996~1997年の71歳から、2006~2007年の69歳へと徐々に若年化していた。男女比は試験期間中を通じて有意な変化はなく、女性が34~35%であった。エビデンスベースの治療導入率は、再灌流が66%から79%へ、プライマリ経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が12%から61%へ、血行再建術は10%から84%へと、いずれも有意に増加した(いずれもp<0.001)。スタチンやACEなどの薬剤投与率も増大、死亡率は院内・30日・1年ともに低下薬剤投与についても、アスピリン、クロピドグレル、β遮断薬、スタチン、ACE阻害薬の投与率がいずれも増加していた。具体的には、クロピドグレルは0%から82%へ、スタチンは23%から83%へ、ACE阻害薬もしくはARBは39%から69%へと、それぞれ投与率が増加した(いずれもp<0.001)。同期間の推定死亡率についてみてみると、院内死亡率は12.5%から7.2%へ、30日死亡率は15.0%から8.6%へ、1年死亡率は21.0%から13.3%へと、それぞれ有意な低下が認められた(いずれもp<0.001)。補正後、長期にわたる標準死亡率の一貫した低下傾向も認められ、12年生存解析の結果、死亡率は経年的に低下していることが確認された。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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避難所からいかに高齢者を救うか

日本老年医学会は今回の東日本大震災に対して、『高齢者災害時医療ガイドライン』と『一般救護者用・災害時高齢者医療マニュアル』を、現在行われている被災地での高齢者災害時医療に活用いただくため、試作版ではあるがいち早く学会ホームページを通して公開した。当ガイドラインの作成者の一人であり、日本老年医学会として被災地に赴いた東京大学大学院医学系研究科・加齢医学講座 飯島勝矢氏からの寄稿文を紹介する。【本ガイドラインおよび一般向けマニュアル作成にあたっての経緯】私自身は日本老年医学会の代議員であると同時に、この『高齢者災害時医療ガイドライン』作成の研究班の一員でもあり、そして、急遽立ち上げた「日本老年医学会 東北関東大震災対策本部」の中心として動いております。本国(日本)は地震、台風、津波などの様々な災害が多い国であります。その災害時において、「被災高齢者」に対する医療は非常に重要であると常日頃から考えております。特に避難所での生活に入らざるを得なかった高齢者の方々は、生活環境が一変し多くの精神的・身体的ストレスを受けます。さらに、もともとかかりつけていた慢性疾患(高血圧,糖尿病,脳心疾患なども含めて)の管理を継続しづらくなってしまいます。さらに、家屋倒壊や津波などによる直接の死亡だけではなく、避難所にどうにか収容されたにもかかわらずさまざまな疾患が発症し、最終的には亡くなってしまう、いわゆる『震災関連死』も高齢者では無視できません。実際、今回の東日本大震災においても、避難所にいる高齢女性が心筋梗塞によって搬送先の病院で亡くなってしまったなど、同様の現象が起きております。これからは被災高齢者において、認知機能やメンタル管理も含めて、慢性的な管理の重要性が問われていると考えております。すでに厚生労働省・厚生労働科学研究費補助金を受け「災害時高齢者医療の初期対応と救急搬送基準に関するガイドライン作成研究班を立ち上げ、平成23年度内完成を目標に作業を進めておりましたが、今回の東日本大震災発生により被災高齢者の方々に対する医療現場の厳しい現状が数多く報告されているため、本ガイドライン作成研究班および日本老年医学会は「高齢者災害時医療ガイドライン」および「一般救護者用・災害時高齢者医療マニュアル」を被災地の高齢者医療の現場で一刻も早く役立てていただきたく、現段階では試作版ではありますが、公表に踏み切ることと致しました。また、私自身がすでに日本老年医学会の代表としてとして、(短い時間ではありますが)福島県の相馬市にある避難所にて医療支援を行ってきました。その時に、お一人お一人の高齢被災者を診察しながら、この一般救護者向けのマニュアルを1冊ずつ手渡し、今後も続くであろう避難所生活において活用して頂くよう配布してきました。(相馬市避難所医療支援の様子はこちらから)『高齢者災害時医療ガイドライン』と『一般救護者用・災害時高齢者医療マニュアル』を日本老年医学会ホームページ上に掲載致します。少しでも現在行われている被災地での高齢者災害時医療の一助なって頂ければ幸いです。また、一般救護者向けマニュアルを、今後、各避難所に数多く配布できればと考え、現在準備中でございます。リンク 日本老年医学会ホームページhttp://www.jpn-geriat-soc.or.jp/ ●医療者向け『高齢者災害時医療ガイドライン』一括ダウンロード 全329頁 (PDF:10.3MB)表紙・前付・目次 (PDF:68KB)I :災害発生時の経時的な医療需要予測・評価 (PDF:545KB)II:避難所における高齢者急性期疾患発症と初期対応,搬送基準 (PDF:221KB)III:避難所における高齢者慢性期疾患発症と対応,搬送基準 (PDF:1.75MB)IV:災害現場,避難所,仮設住宅における高齢者の主要症候と初期対応法 (PDF:1.84MB)V:自治体の初期対応と福祉避難所設営 (PDF:246KB)VI:自治体他の医薬品,医療機材の備蓄 (PDF:220KB)VII:高齢者家屋の防災処置 (PDF:103KB)VIII:高齢者の災害時緊急持ちだし用品 (PDF:88KB)IX:様式集(PDF:5.39MB)X:過去の災害における高齢者医療出動の内容(65歳以上の高齢者を中心に) (PDF:666KB) ●一般救護者向け「一般救護者用・災害時高齢者医療マニュアル」(試作版)(全25頁)(PDF:1.94MB)(ケアネット 細田 雅之)

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肥満を加味しても、心血管疾患リスク予測能は向上しない:約22万人の解析

欧米、日本などの先進国では、心血管疾患の従来のリスク因子である収縮期血圧、糖尿病の既往歴、脂質値の情報がある場合に、さらに体格指数(BMI)や腹部肥満(ウエスト周囲長、ウエスト/ヒップ比)のデータを加えても、リスクの予測能はさほど改善されないことが、イギリス・ケンブリッジ大学公衆衛生/プライマリ・ケア科に運営センターを置くEmerging Risk Factors Collaboration(ERFC)の検討で明らかとなった。現行の各種ガイドラインは、心血管疾患リスクの評価における肥満の測定は不要とするものから、付加的な検査項目とするものや正規のリスク因子として測定を勧告するものまでさまざまだ。これら肥満の指標について長期的な再現性を評価した信頼性の高い調査がないことが、その一因となっているという。Lancet誌2011年3月26日号(オンライン版2011年3月11日号)掲載の報告。58のコホート試験の個々の患者データを解析研究グループは、BMI、ウエスト周囲長、ウエスト/ヒップ比と心血管疾患の初発リスクの関連性の評価を目的にプロスペクティブな解析を行った。58のコホート試験の個々の患者データを用いて、ベースラインの各因子が1 SD増加した場合(BMI:4.56kg/m2、ウエスト周囲長:12.6cm、ウエスト/ヒップ比:0.083)のハザード比(HR)を算出し、特異的な予測能の指標としてリスク識別能と再分類能の評価を行った。再現性の評価には、肥満の指標の測定値を用いて回帰希釈比(regression dilution ratio)を算出した。むしろ肥満コントロールの重要性を強調する知見17ヵ国22万1,934人[ヨーロッパ:12万9,326人(58%)、北米:7万3,707人(33%)、オーストラリア:9,204人(4%)、日本:9,697人(4%)]のデータが収集された。ベースラインの平均年齢は58歳(SD 9)、12万4,189人(56%)が女性であった。187万人・年当たり1万4,297人が心血管疾患を発症した。内訳は、冠動脈心疾患8,290人(非致死性心筋梗塞4,982人、冠動脈心疾患死3,308人)、虚血性脳卒中2,906人(非致死性2,763人、致死性143人)、出血性脳卒中596人、分類不能な脳卒中2,070人、その他の脳血管疾患435人であった。肥満の測定は6万3,821人で行われた。BMI 20kg/m2以上の人では、年齢、性別、喫煙状況で調整後の、心血管疾患のBMI 1 SD増加に対するHRは1.23(95%信頼区間:1.17~1.29)であり、ウエスト周囲長1 SD増加に対するHRは1.27(同:1.20~1.33)、ウエスト・ヒップ比1 SD増加に対するHRは1.25(同:1.19~1.31)であった。さらにベースラインの収縮期血圧、糖尿病の既往歴、総コレステロール、HDLコレステロールで調整後の、心血管疾患のBMI 1SD増加に対するHRは1.07(95%信頼区間:1.03~1.11)、ウエスト周囲長1 SD増加に対するHRは1.10(同:1.05~1.14)、ウエスト/ヒップ比1 SD増加に対するHRは1.12(同:1.08~1.15)であり、いずれも年齢、性別、喫煙状況のみで調整した場合よりも低下した。従来のリスク因子から成る心血管疾患リスクの予測モデルにBMI、ウエスト周囲長、ウエスト/ヒップ比の情報を加えても、リスク識別能は大幅には改善されず[C-indexの変化:BMI -0.0001(p=0.430)、ウエスト周囲長 -0.0001(p=0.816)、ウエスト/ヒップ比 0.0008(p=0.027)]、予測される10年リスクのカテゴリーへの再分類能もさほどの改善は得られなかった[net reclassification improvement:BMI -0.19%(p=0.461)、ウエスト周囲長 -0.05%(p=0.867)、ウエスト/ヒップ比 -0.05%(p=0.880)]。再現性は、ウエスト周囲長(回帰希釈比:0.86、95%信頼区間:0.83~0.89)やウエスト/ヒップ比(同:0.63、0.57~0.70)よりもBMI(同:0.95、0.93~0.97)で良好であった。ERFCの研究グループは、「先進国では、心血管疾患の従来のリスク因子である収縮期血圧、糖尿病の既往歴、脂質値に、新たにBMI、ウエスト周囲長、ウエスト/ヒップ比の情報を加えても、リスクの予測能はさほど改善されない」と結論したうえで、「これらの知見は心血管疾患における肥満の重要性を減弱させるものではない。過度の肥満は中等度のリスク因子の主要な決定因子であるため、むしろ心血管疾患の予防における肥満のコントロールの重要性を強調するものだ」と注意を促している。(菅野守:医学ライター)

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