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アドエア、「COPD診断と治療のためのガイドライン」に安定期の薬物療法の選択肢として紹介される

グラクソ・スミスクライン株式会社(GSK)は9日、社団法人日本呼吸器学会より発行した「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第3版」にCOPDの安定期の薬物治療の選択肢として長時間作用性β2刺激薬/吸入ステロイド配合薬(「アドエア」)が紹介され、その改善効果に関する記述が掲載されたと発表した。「アドエア」(一般名:サルメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル)は、GSKが2007年6月に成人の気管支喘息を適応として発売した薬剤で、本年1月にCOPDに対する追加適応を取得している。今回、改訂したガイドラインでは、COPDの安定期の治療について、気流閉塞の程度だけでなく、症状の程度(呼吸困難、運動能力の低下、繰り返す増悪)を加味し、重症度を総合的に判断した上で治療法を選択することとなった。薬物治療は、長時間作用性気管支拡張薬(長時間作用性抗コリン薬または長時間作用性β2刺激薬)をベースとして、吸入ステロイド薬等を追加することとされている。従来は、吸入ステロイド薬の追加はIII期(高度の気流閉塞)からとされているが、新たなガイドラインでは、より早い段階でも症状の程度に応じて使用を考慮することが推奨された。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2009_07/P1000563.html

2862.

5年前の出生前B群溶連菌スクリーニング、10年前に比べ実施率1.8倍に

米国で、2003~2004年の出生前B群溶連菌スクリーニングの実施率が、1998~1999年に比べ、およそ1.8倍に増えてきていることがわかった。これは、2002年に米国の診療ガイドラインで、同スクリーニングの実施が勧告されたことによると考えられる。これに伴い、分娩時の抗生物質投与実施率も約5ポイント増加していた。米国疾病対策予防センター(CDC)のMelissa K. Van Dyke氏らの調べで明らかになったもので、NEJM誌2009年6月18日号で発表した。スクリーニング実施率は85.0%にDyke氏らは、米国10州で実施しているB群溶連菌感染に関する2003~2004年のサーベイランスをもとに、後ろ向きに調査を行い、生後7日以内に発症する早発型B群溶連菌感染254児と、感染の認められなかった7,437児について分析した。また、1998~1999年に行った類似の調査結果と、今回の結果を比較した。その結果、2003~2004年の出生前B群溶連菌スクリーニングの実施率は85.0%と、1989~99年の48.1%から大幅に増大していた。また、分娩時に抗生物質投与を受けた乳児の割合は、26.8%から31.7%に増えていた。出生前のB群溶連菌スクリーニングで陽性だった妊婦で正期産の場合、その87.0%が分娩時の化学的予防法を受けていた。一方、同スクリーニングで陽性で早期分娩の場合、分娩時の化学的予防法を受けたのは63.4%にとどまった。正期産早発型B群溶連菌感染の6割強が、母親へのスクリーニングでは陰性早発型B群溶連菌感染率は、1,000生児出生当たり0.32だった。早期分娩で生まれた乳児の同発症率は1,000生児出生当たり0.73と、正期産で生まれた乳児の1,000生児出生当たり0.26に比べ、有意に高率だった。ただし、早発型B群溶連菌感染の見られた乳児数では、正期産の乳児が74.4%(189/254例)を占めていた。なお、正期産で、母親が出生前のB群溶連菌スクリーニングを実施せず、早発型B群溶連菌感染の見られた乳児は34例と、感染児全体(254例)の13.4%を占めた。一方、正期産でスクリーニングでは陰性だったものの、乳児に早発型B群溶連菌感染が見られたのは、正期産感染児全体の61.4%にも上った。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

2863.

ARB(テルミサルタン)と利尿薬の配合で降圧を可能に 「ミコンビ配合錠」発売

日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社とアステラス製薬株式会社は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)のテルミサルタンとサイアザイド系利尿薬のヒドロクロロチアジド(HCTZ)の配合剤「ミコンビ配合錠」を23日に発売したと発表した。 高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)では、ARB単剤で降圧効果が不十分な場合は、ARBと少量の利尿薬との併用が推奨されている。作用機序の異なる両剤の併用により、相乗的な降圧効果とともに、血清カリウムに与える影響などを相殺することができると考えられているという。ミコンビ配合錠は、ARBテルミサルタンと少量利尿薬ヒドロクロロチアジド(HCTZ)12.5mgとの配合剤。1錠あたりテルミサルタン40mgを含有する「ミコンビ配合錠AP」と、1錠あたりテルミサルタン80mgを含有する「ミコンビ配合錠BP」の2種類の製剤が発売される。国内臨床試験において、「ミコンビ配合錠AP」は、治験終了時の収縮期血圧のベースラインからの血圧下降度が-23.3mmHgと極めて強力な降圧効果を示したとのこと。なお、同剤は、従来からのテルミサルタン製剤「ミカルディス錠」と同様に、日本ベーリンガーインゲルハイムが製造し、アステラス製薬が販売を行い、両社で共同販促(コ・プロモーション)する。詳細はプレスリリースへhttp://www.boehringer-ingelheim.co.jp/com/Home/Newscentre/pressrelease/news_detail.jsp?paramOid=3660(日本ベーリンガーインゲルハイム)http://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/arb.html(アステラス製薬)

2864.

段階的弾性ストッキングは脳卒中後の深部静脈血栓を予防しない

大腿部までの長さの段階的弾性ストッキング(GCS)の着用は、脳卒中後の深部静脈血栓(DVT)のリスクを低減しないことが、イギリスEdinburgh大学臨床神経科学部のMartin Dennis氏らが実施した無作為化試験(CLOTS 1)によって明らかとなった。脳卒中後は一般にDVTや肺塞栓症が見られるが、手術を受けた患者を対象とした小規模な試験においてGCSによるDVTリスクの低減効果が確認されている。エビデンスとしては十分でないにもかかわらず、脳卒中ガイドラインはこれらの知見を外挿して脳卒中患者に対するGCSの使用を推奨している。Lancet誌2009年6月6日号(オンライン版2009年5月27日号)掲載の報告。GCSのDVT低減効果を検証する無作為化対照比較試験CLOTS(Clots in Legs Or sTockings after Stroke)1の研究グループは、大腿部までの長さのGCSによる脳卒中後のDVTの低減効果について評価するための無作為化対照比較試験を行った。2001年3月~2008年11月までに、イギリス、イタリア、オーストラリアの64施設から急性脳卒中発症後1週間以内に入院し、活動不能な状態の患者2,518例が登録された。これらの患者は、中央無作為化システムによってルーチン治療と大腿部までのGCSを着用する群(1,256例)あるいはルーチン治療のみを施行しGCSは使用しない群(1,262例)に割り付けられた。登録後7~10日および25~30日に、治療の割り付けを知らされていない技師によって両足の圧迫Doppler超音波検査が施行された。主要評価項目は、膝窩静脈あるいは大腿静脈の症候性、無症候性のDVTの発現とした。DVT予防効果はなく、皮膚有害事象が有意に多いすべての患者が解析の対象となった。主要評価項目の発現率は、GCS使用群が10.0%(126/1,256例)、GCS非使用群は10.5%(133/1,262例)であり、絶対リスク低減率は0.5%と有意な差は認めなかった。皮膚の裂傷、潰瘍、水疱や皮膚壊死の頻度は、GCS非使用群の1.3%(16/1,256例)に対しGCS使用群は5.1%(64/1,262例)と有意に高かった(オッズ比:4.18、95%信頼区間:2.40~7.27)。これらの結果により、著者は「急性脳卒中による入院患者に対して、DVTの予防を目的とした大腿部までの長さのGCSの着用は支持されない」と結論し、「脳卒中ガイドラインは、本試験の知見に基づいて改訂を検討すべきであろう」としている。(菅野守:医学ライター)

2865.

入院からPCI施行までの時間は短いほどよい

ACC/AHAガイドラインでは、ST上昇型急性心筋梗塞患者に対する経皮的冠動脈形成術(PCI)は、入院後90分以内を推奨しているが、米国エール大学のSaif S Rathore氏らが行った調査で、入院からPCI施行までの時間は短いほど死亡リスクが低下することが明らかになった。「90分以内で行っている施設も、できるだけ短縮すべきである」としている。BMJ誌2009年5月30日号(オンライン版2009年5月19日号)より。現状は、90分以内実施率57.9%、院内死亡率4.6%被験者は、American College of Cardiology National Cardiovascular Dataに2005~2006年の間に登録された、ST上昇型急性心筋梗塞でPCIを実施した患者4万3,801例。死亡リスクを主要評価項目とする、前向きコホート調査が行われた。その結果、入院受付からPCI実施までの所要時間は、中央値83分(四分位範囲:6~109)だった。90分以内にPCIを実施していたのは、全体の57.9%だった。また、院内死亡率は4.6%だった。90分→60分、死亡リスク0.8%低下入院受付からPCI実施までの所要時間については、長くなればなるほど、直線的ではないが、補正後死亡リスクが高率になる相関が認められた。補正後死亡リスクは、所要時間30分の場合3.0%、60分3.5%、90分4.3%、また120分5.6%、150分7.0%、180分8.4%だった(p<0.001)。所要時間を90分から60分に短縮することで、死亡リスクは0.8%低下、60分を30分に短縮すればさらに0.5%低下できる計算となる。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

2866.

降圧薬は血圧レベルに関係なく、ある年齢になったら検討すべきではないか

ロンドン大学疫学部門のM.R.Law氏らの研究グループは、異なるクラスの降圧薬について、冠動脈疾患(CHD)と脳卒中予防の有効性を定量的に判定するとともに、治療を受けるべき患者を見極めることを目的としたメタ解析を行った。Medline(1966~2007)をデータソースに文献を検索、CHDイベントおよび脳卒中の記録があった147の前向き無作為化疫学研究を選定し解析は行われた。BMJ誌2009年5月24日号より。46万例をCVD歴なし、CHD歴あり、脳卒中歴ありに分類しメタ解析選択した試験のうち、108件が実薬とプラセボ(あるいは対照群が未投与)間の「血圧差試験」、46件が「薬剤比較試験」だった。なお、7試験はいずれにも該当、被験者は合計95万8,000例だった。そのうち、心血管疾患(CVD)既往のない者、CHD既往のある者、脳卒中既往のある者の3群に分類された46万4,000例をメタ解析した。β遮断薬のCHDイベント再発低下が有意β遮断薬に関する血圧差試験の解析から、β遮断薬は、CHD既往のある者のCHDイベント再発を有意に低下することが認められた(平均リスク低下率:29%、CHD既往のない者での場合や他クラスでの試験では平均15%)。その効果は、CHD既往のうちでも試験参加1、2年前に急性心筋梗塞を発症していた者ほど大きく(31%)、CHD発症から時間が経っていた者ほど効果は小さかった(13%)(P=0.04)。上記以外の血圧差試験での、CHDイベント低下率は22%、脳卒中低下率は41%で、この結果は、メタ解析で予想されたCHD 25%減、脳卒中36%減と同程度であり、その有益性は血圧を低下させたことにあることが示された。60~69歳、拡張期血圧90mmHgの患者には標準用量の半量で3剤投与がベスト5つのおもな降圧薬(サイアザイド、β遮断薬、ACE阻害薬、ARB、Ca拮抗薬)は、CHDイベントと脳卒中の予防に関する効果は同程度だった。ただし例外として、Ca拮抗薬は脳卒中に対してより大きな予防効果が認められた(相対リスク:0.92)。CHDイベントと脳卒中の減少の度合いは、CVD歴の有無と治療前の血圧(収縮期110mmHg、拡張期70mmHgまで)にかかわらず同程度だった。これら結果と2つの他の研究(血圧コホート研究、薬剤の降圧効果を投与量で判定した試験のメタ解析)を総合すると、60~69歳の、治療前拡張期血圧90mmHgの患者で、標準用量の半量で3剤を組み合わせ投与した場合、CHDで約46%、脳卒中で62%、リスクを低下することが明らかになった。標準用量1剤では効果がおよそ半分だった。さらに、Ca拮抗薬以外の降圧薬(非選択性のβ遮断薬を除く)では心不全の出現率を24%低下する一方、Ca拮抗薬は19%の低下だったことも明らかになった。血圧レベルによらないシンプルな降圧治療ガイドラインをCHD直後に投与されたβ遮断薬の付加的な保護作用と、脳卒中予防のCa拮抗薬のわずかな付加的効果を除けば、降圧薬はいずれもCHDイベントと脳卒中の減少に同程度の効果があった。CVDイベントの減少率は、治療前血圧やCVDの有無にかかわらず、同じか同程度だった。これらから研究グループは、降圧薬の使用ガイドラインについて、いかなる血圧レベルの患者にも提供されるよう単純化されるべきだと述べるとともに、血圧測定によって治療対象者を選ぶのではなく、一定の年齢に達したら誰でも降圧薬の服用を検討することが重要だと述べている。

2867.

2型糖尿病患者への強化血糖コントロールがもたらすアウトカム

2型糖尿病患者への強化血糖コントロール療法は、標準療法と比べて、冠動脈イベントの低下をもたらし死亡リスクも上昇しないことが、5つの前向き無作為化試験(UKPDS、PROactive、ADVANCE、VADT、ACCORD)のメタ解析の結果、報告された。強化血糖コントロール療法の有益性に関してはこれまで明らかにされていなかった。ケンブリッジ大学公衆衛生/プライマリ・ケア部門のKausik K Ray氏らによる本報告は、Lancet誌2009年5月23日号に掲載されている。5つの前向き無作為化試験、被験者計3万3,040例のデータをメタ解析解析した5つの前向き無作為化試験の被験者は、総勢3万3,040例に上る。Ray氏らは、各試験データから、非致死的心筋梗塞、虚血性心疾患(致死的・非致死的心筋梗塞)、脳卒中、全死因の死亡に関する情報を集め、ランダム効果モデルによるメタ解析を行った。臨床転帰の評価には各試験結果から算出したオッズ比を用い、試験間の統計的な異質性の評価(χ2乗、I 2乗)も行った。非致死的心筋梗塞17%、虚血性心疾患15%低下5つの試験(約16万3,000人・年)のイベント発生数は、非致死的心筋梗塞1,497例、虚血性心疾患2,318例、脳卒中1,127例、全死因死亡2,892例だった。また、平均HbA1cは、標準療法群よりも強化血糖コントロール群で、0.9%低かった。強化血糖コントロールは、非致死的心筋梗塞については17%の低下(オッズ比:0.83、95%信頼区間:0.75~0.93)、虚血性心疾患については15%の低下(0.85、0.77~0.93)をもたらしていた。しかし、脳卒中(0.93、0.81~1.06)、全死因死亡(1.02、0.87~1.19)には、有意と言える影響を及ぼしてはいなかった。Ray氏は、「総じて、強化血糖コントロールは標準療法と比べて、死亡リスクを上昇することなく冠動脈イベントの低下をもたらしていた。所見は、『血糖コントロールは心血管リスクの低下に有効』という知見に安堵をもたらすもの」と結論したが、至適な方法、速さ、HbA1cの減少範囲について、集団間での差異の可能性についても言及した。また、全死因死亡の低下について明白なベネフィットを立証できなかったことについて、「全死因死亡の低下については、脂質低下療法と降圧療法が有益であることが示唆された。これら治療が2型糖尿病患者の心血管イベントおよび全死因死亡の低下に重要であることを示す強いエビデンスと言える」と述べている。その上で、血糖コントロールを達成するための至適な方法を確立する必要性、HbA1cのガイドライン推奨値の整備について提言した。

2868.

心臓死後の臓器提供、米国小児病院の約7割で独自方針あるが内容にばらつき

心臓死後の臓器提供に関して、調査を行った米国小児病院のおよそ7割で、独自の方針が整備されているものの、その内容にはかなりのばらつきがあることがわかった。また2割の病院では、調査時点で同方針を整備中だった。米国Utah大学小児科学部のArmand H. Matheny Antommaria氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年5月13日号で発表した。回答を得た施設の72%で整備、方針がなく整備中でもないのは7%同氏らは、全米小児病院の組織であるNational Association of Children’s Hospitals and Related Institutions(NACHRI)に所属する医療機関で、移植ネットワークUNOSの移植センターとして登録されている124ヵ所の医療機関を対象に、調査を行った。そのうち回答が得られた105ヵ所の医療機関の72%(95%信頼区間:64%~82%)にあたる76施設で、心臓死後の臓器提供に関する独自の方針を整備していた。また、方針を整備中だったのは19%(12%~28%)にあたる20施設、方針がなく整備中でもなかったのは7%(3%~14%)の7施設だった。84%が心臓死の基準を明示73施設の独自方針の内容について見てみたところ、死亡を決定するための基準や検査について特定していたのは、84%(73%~91%)の61施設だった。また4施設の独自方針では、心臓死から臓器摘出までの待機時間について、ガイドラインで定めた2分以上5分未満とは異なる設定を行っており、1施設では待機時間を2分未満、3施設では5分超にしていた。さらに64施設では、死亡決定に関して移植チームを排除し、37施設では死亡前管理への同チームの関与を禁止していた。生命維持治療を中止する場所についての記述があったのは68施設で、そのうち37施設では手術室を指定していたが、3施設では集中治療室(ICU)を指定していた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

2869.

チアジド系降圧利尿剤 フルイトラン錠1mg新発売

塩野義製薬株式会社は15日、チアジド系降圧利尿剤「フルイトラン錠1㎎」(一般名:トリクロルメチアジド)を新発売した。フルイトランは、米国シェリング・プラウ社により開発され、1960年に米国で発売されたチアジド系降圧利尿剤トリクロルメチアジドの経口用製剤で、腎臓の遠位尿細管でナトリウムや水分の再吸収を抑え、体内の余分な水分を排出して尿の量を増やし、高血圧症の方々の心臓への負担を軽減する。現在、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を含むレニン・アンジオテンシン系抑制薬と、少量の降圧利尿薬の併用療法が、降圧効果の相乗作用のみならず、電解質・糖代謝に対する副作用を相殺できる利点があるとして推奨されている。同社は「フルイトラン錠2㎎」を1960年より販売しているが、今回、少量製剤であるフルイトラン錠1mgを発売し、新たに医療現場に提供することで患者の利便性を向上させ、さらにARBである「イルベタン錠」と併用することで降圧効果の増強を図ることが可能になるとしている。詳細はプレスリリースへhttp://www.shionogi.co.jp/ir/news/detail/090515.pdf

2870.

抗てんかん薬の妊婦服用による出産児への影響には差がある

抗てんかん薬の妊婦服用に関して、米英での多施設共同前向き観察研究NEADの解析から、薬剤によって出産児のリスク増大に差異があることが明らかになった。抗てんかん薬は発達障害や奇形リスクを増大するとして、米国神経学会のガイドラインなどで一律に、妊婦の服用を禁じている。しかし、そのエビデンス研究は十分ではない。本報告は、NEJM誌2009年4月16日号に掲載されている。妊婦への抗てんかん薬単剤療法4種類について検討NEAD(Neurodevelopmental Effects of Antiepileptic Drugs)スタディは、米英のてんかん治療センター25施設で1999~2004年の間に、カルバマゼピン(商品名:テグレトールなど)、ラモトリギン(同:ラミクタールなど)、フェニトイン(同:アレビアチンなど)、バルプロ酸(同:デパケンなど)いずれかの抗てんかん薬単剤療法を受けた妊婦を登録した前向き観察研究。主要予後は、6歳時の認知能力(IQスコア評価)で、本論は、3歳時点の中間解析の結果を報告したものである。出産児の3歳時IQ、バルプロ酸曝露群が有意に低い結果、バルプロ酸に曝露された子どものIQスコアが、他の抗てんかん薬に曝露された子どもより有意に低かった。補正後(母親のIQ、母体年齢、投与された抗てんかん薬、在胎期間、母親の先入観による葉酸服用)の、子どもの平均IQはそれぞれ、ラモトリギン曝露群101、フェニトイン曝露群99、カルバマゼピン曝露群98、バルプロ酸曝露群92だった。バルプロ酸曝露群の子どもは平均して、ラモトリギン曝露群より9ポイント低く(P=0.009)、フェニトイン曝露群より7ポイント低く(P=0.04)、カルバマゼピン曝露群6ポイント低かった(P=0.04)。また、バルプロ酸使用とIQとは、用量依存性の関連が見られた。子どものIQと母親とのIQには、カルバマゼピン、ラモトリギン、フェニトインでは有意な相関が見られたが、バルプロ酸では見られなかった。これらから、「バルプロ酸については、出産可能な女性において第一選択薬から除外する現状のガイドライン等の指針を支持するものだ」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

2871.

間欠性跛行患者へのナフチドロフリルの臨床的有用性確認

間欠性跛行に対する経口ナフチドロフリルの有効性について、Ghent大学(ベルギー)Heymans薬理学研究所のT De Backer氏らが、個々の患者データに基づくメタ解析を実施。プラセボとの比較で臨床的な有用性が確認されたと、BMJ誌2009年3月21日号(オンライン版2009年3月10日号)で発表した。血管作用薬の治療薬として提案されて30年以上になるが、強力な有効性データが不足しており、使用については議論が続いている。ナフチドロフリルは1968年に発売され、European and transatlanticガイドラインでも有効性が言及されているが、メタ解析による有効性の提示が行われていない。唯一行われたシステマティックレビューによるメタ解析は、取り上げた試験間の不均一性を理由に見送られていたが、Backer氏らは、個々の患者データに基づくメタ解析で補正可能と判断し本研究を実施した。1,266例を無作為化し全例解析解析は、Medline、International Pharmaceutical Abstracts、Embase、Science Citation Index、the Cochrane trial registersから、無痛歩行距離を主要アウトカムとする、二重盲検無作為化プラセボ対照試験を取り出し行われた。個々の患者データは、電子データもしくは症例報告から収集され整合性の確認を行った上で解析に回された。解析方法は、すべての患者を無作為化したのち全例解析。有効性は、プラセボとの比較によるナフチドロフリル投与後の無痛歩行距離の相対的改善率(相乗平均)で評価された。レスポンダー解析における治療成功の定義は、歩行距離がベースライン時より最低50%改善された場合とした。患者総数は1,266例で、主要解析対象は1,083例にて行われた。結果、プラセボとの比較でナフチドロフリル投与後の無痛歩行距離の相対的改善率は、1.37(95%の信頼区間1.27~1.49)。改善率の差は22.3%(95%信頼区間:17.1%~27.6%)だった。また、6ヵ月の治療期間中に症状軽減のために必要とした治療回数は4.48(95%の信頼区間3.62~5.85)だった。

2872.

ブロプレスとカルシウム拮抗薬の合剤を承認申請

 武田薬品工業株式会社は30日、ブロプレス(一般名:カンデサルタン シレキセチル)とカルシウム拮抗薬(一般名:アムロジピンベシル酸塩、以下、アムロジピン)との合剤である高血圧症治療薬について、厚生労働省に製造販売承認申請を行ったことを発表した。 同社が創製したブロプレスは、血圧を上げるホルモンの一つであるアンジオテンシンIIの働きを阻害する、アンジオテンシンII受容体拮抗剤(ARB)。日本では1999年に発売開始され、2005年にはARBとして国内で初めて慢性心不全の効能を取得した。一方、アムロジピンは、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬であり、細胞内へのカルシウムイオンの流入を抑制することで、主として血管平滑筋を弛緩させ、末梢血管抵抗を減じることで降圧効果を発揮する。 日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2009」では、降圧効果が不十分な場合には降圧薬の併用治療が推奨されており、中でもARBとカルシウム拮抗薬の併用治療は、個々の降圧効果を減じることなく、有効性および安全性の点からも合理的であり、同ガイドラインで推奨される組合せの一つに挙げられている。

2873.

ブロプレスと利尿剤の合剤 エカード配合錠新発売

 武田薬品工業株式会社は13日、ブロプレス(一般名:カンデサルタン シレキセチル)と低用量の利尿剤(一般名:ヒドロクロロチアジド)との合剤である高血圧症治療剤「エカード配合錠LD」「エカード配合錠HD」を発売した。 エカード配合錠は、高血圧治療ガイドラインにおいて併用が推奨されているアンジオテンシンII受容体拮抗剤と低用量の利尿剤を組み合わせた合剤。ヒドロクロロチアジドの含量を通常用量の4分の1である6.25mgとすることで、サイアザイド系利尿剤に一般的に見られる副作用を軽減できると考えられ、臨床第3相試験において降圧効果の増強が認められているという。 製剤の種類は、1日1回の経口投与製剤で、1錠あたりカンデサルタン シレキセチル4mg/ヒドロクロロチアジド6.25 mgを含有する「エカード配合錠LD」と、カンデサルタン シレキセチル8mg/ヒドロクロロチアジド6.25mgを含有する「エカード配合錠HD」の2種類。

2874.

減量効果に最も優れている食事療法とは?

肥満治療として減量効果に最も優れているダイエット食とは? 米国ハーバード公衆衛生大学院栄養学のFrank M. Sacks氏らは、これまでタンパク質、脂質、あるいは炭水化物それぞれの栄養素に着目したダイエット食の研究報告がなされているが、その減量効果は確立しておらず、また研究期間が1年を超えて行われているものがないとして、どの栄養素を重視した食事が効果的か、介入期間2年にわたる無作為化試験を行った。その結果、栄養素は関係なく、低カロリー食であることが肝心との報告を寄せている。NEJM誌2009年2月26日号掲載より。栄養素の割合が異なる4つの食事療法群に無作為割り付けし2年間追跡試験は過体重の成人811例を対象とし、脂質・タンパク質・炭水化物の各割合(%)が異なる4つの食事療法群、(1)20%、15%、65%、(2)20%、25%、55%、(3)40%、15%、45%、(4)40%、25%、35%に無作為に割り付け、2年間食事指導の介入を行った。4群の食事はいずれも、心血管ヘルスガイドラインにのっとったもので、食品構成は類似していた。主要評価項目は2年後の体重変化で、低脂質食群(含有比率20%)vs. 高脂質食群(同40%)、標準タンパク質食群(同15%)vs. 高タンパク質食群(同25%)、および含有比率が最も高い炭水化物食群(同65%)vs. 最も低い炭水化物食群(同35%)の比較が行われた。低カロリーな食事であることが重要、栄養素は関係ない体重は6ヵ月時点では平均6kg、ベースライン時の7%相当減っていた。しかし12ヵ月後にはリバウンドし始めていた。2年時点での減量は、標準タンパク質食群3.0kg vs. 高タンパク質食群3.6kg、低脂質食群 vs. 高脂質食群はいずれも3.0kg、最高炭水化物食群2.9kg vs. 最低炭水化物食群3.4kgで、いずれも同等だった(すべての比較についてP>0.20)。試験完了者の80%相当が、平均4kg減量していた。また14~15%相当の者が、試験前体重の少なくとも10%以上の減量に成功していた。 満腹、空腹感、食事に関する満足度、グループセッションへの出席率は、全群で同様だったが、セッションへの出席率が、減量(1セッション参加につき0.2kg)と強く関連していた。一方で、4つの食事療法群ではいずれも、脂質関連のリスク因子および空腹時インスリン濃度の改善が見られた。これらを受けSacks氏は、「カロリーが低い食事療法が臨床的に意義のある減量をもたらす。どの栄養素の割合が際だっているかは関係ない」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

2875.

ACC/AHA臨床ガイドライン、エビデンスの裏付けは貧弱

米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)の臨床ガイドラインは、その裏付けとなるエビデンスに乏しい、との調査結果が、米国Duke大学のPierluigi Tricoci氏らによって報告された。複数の無作為化試験など信頼できるエビデンスで裏付けのある勧告は、全体のおよそ1割程度という。JAMA誌2009年2月25日号より。勧告の半数近くが専門家の意見や症例研究などが裏付けTricoci氏らは、ACCとAHA の臨床ガイドラインで、1984~2008年に公表された22の主題に関する53ガイドライン(勧告数は7,196)について、調査した。そのうち、勧告の裏付けとなるエビデンスの程度を明記した、16ガイドラインについて、エビデンスの程度と勧告の種類などを調べた。その結果、複数の無作為化試験またはメタ解析の裏付けがある「エビデンスレベルA」の勧告は、全体の勧告2,711中314(ガイドラインの分野により割合は異なるが、中央値は11%)に留まった。一方、専門医の意見や症例研究、標準的に行われている治療などといった「エビデンスレベルC」の裏付けに基づく勧告数は、1,246(同中央値48%)にも上った。また、ACCとAHA の臨床ガイドラインでは、それぞれの勧告の対象となる処置や治療の有効性などについて、クラスI~IIIに分類している。例えば治療法や処置が効果的であるとして、エビデンスや意見の一致が見られている勧告は、「クラスI」に分類される。エビデンスレベルAの割合が最も多かったのは、「クラスI」にあてはまる勧告だった。それでもクラスIの勧告全体の1,305中245(同中央値19%)に留まっている。ガイドライン改定で勧告数は増加、有効性について意見の分かれる勧告が最も増加また、2008年9月までに改定のあったガイドラインについて見たところ、全体の勧告数は初版の1,330から1,973へと、48%も増加していた。特に、治療法や処置の有効性について意見が分かれている「クラスII」の勧告が、最も増加率が大きかった。同研究グループは、臨床ガイドラインの作成過程について改善が必要だ、としている。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

2876.

腰痛の画像検査は無用?

重篤な基礎疾患のない腰痛患者に画像検査を行っても臨床転帰は改善しないことが、アメリカ・オレゴン健康科学大学のRoger Chou氏らが実施したメタ解析で明らかとなった。Agency for Healthcare Policy and Research(AHCPR)ガイドラインは急性腰痛発症1ヵ月以内の画像検査を否定しており、重篤な基礎疾患を示唆する臨床所見(いわゆるred flags:癌、感染症、馬尾神経症候群など)のない慢性腰痛には画像検査を行うべきではないとするガイドラインもある。しかし、現実には患者の要望などもあってルーチンに施行したり、臨床所見がないのに行われる場合が多いという。Lancet誌2009年2月7日号掲載の報告。腰痛、腰椎機能を主要評価項目とした6試験のメタ解析研究グループは、重篤な基礎疾患のない腰痛患者において、即座に腰部画像検査(X線、MRI、CT)を実施する群と、これを施行しない通常ケアのみの群の臨床転帰を評価するために、無作為化対照比較試験の系統的なレビューとメタ解析を行った。解析対象の試験は、腰痛あるいは腰椎機能を主要評価項目とするものとし、QOL、精神的健康状態、各種スケールに基づく患者自身による全般的な改善度、ケアに対する患者満足度についても検討した。6つの試験(イギリス3、アメリカ2、インドネシア1、計1,804例)が選択基準を満たした。試験の質は、Cochrane Back Review Groupの基準を適用した判定法に基づいて2人のレビューワーが個々に評価した。メタ解析には変量効果モデル(random effects model)を用いた。プライマリ・ケアに十分に適用可能即時的な腰部画像診断施行群と非施行群で、短期的(3ヵ月以内)および長期的(6ヵ月~1年)な解析の双方において、腰痛と腰椎機能障害の発症には有意な差は認められなかった。そのほかの評価項目についても、有意差を認めたものはなかった。試験の質、個々の画像法、腰痛の罹病期間も解析の結果に影響を及ぼさなかったが、これらの検討を行った試験は少なかった。今回の解析結果は、プライマリ・ケアにおける急性および亜急性の腰痛に十分に適用できるものであった。著者は、「重篤な基礎疾患のない腰痛患者に対し画像検査を行っても臨床転帰は改善しない。それゆえ、重篤な基礎疾患を示唆する所見のない急性、亜急性の腰痛に対するルーチンの即時的な画像検査は止めるべき」と結論し、「不要な画像検査を避ける一方で、患者の要望を満たし満足度を向上させる腰痛評価法や患者教育の戦略を確立する必要がある」と主張している。(菅野守:医学ライター)

2877.

小児がんからの女性生存者、40歳までのマンモグラフィ実施率低く留まる

小児がんで胸部放射線治療を受けたことのある女性生存者は、若年での乳がん発症リスクが高いため、25歳(または同治療後8年経過後のどちらか後に来る方)からのマンモグラフィ実施がガイドラインで勧告されている。ところが、40歳未満の6割強が、過去2年以内にマンモグラフィによる乳がんのスクリーニング検査を受けていないなど、実施率が低いことがわかった。これは、米国Memorial Sloan-Kettering Cancer CenterのKevin C. Oeffinger氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年1月28日号で発表した。胸部放射線治療を受けた625人を調査Oeffinger氏らは、2005~2006年にかけて、小児がんで胸部放射線治療を受けたことのある25~50歳の女性生存者、625人について調査を行った。コントロール群としては、年齢が近く、小児がん生存者で、胸部放射線治療を受けたことのない639人と、小児がん生存者の姉妹712人だった。胸部放射線群の40歳未満、半分近くがマンモ未受診調査の結果、胸部放射線治療を受けた女性で回答の得られた551人のうち、過去2年以内にマンモグラフィを受けていたのは55%だった。年齢別に見てみると、25~39歳では同割合は36.5%(95%信頼区間:31.0~42.0)、40~50歳では76.5%(同:71.3~81.7)だった。一方、胸部放射線治療を受けたことのない小児がん生存者の同実施率は40.5%、小児がん生存者の姉妹は同37.0%だった。さらに、胸部放射線群で40歳未満のうち、これまでにマンモグラフィを一度も受けたことのない人の割合は、47.3%(同:41.6~53.0)にも上った。また、同群の40~50歳のうち、マンモグラフィを過去4年のうち2回受けたことのある人は、52.6%に留まった。なお、医師にマンモグラフィを勧められた人の方が、同実施率が高かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

2878.

就学前小児の上気道ウイルス感染による喘鳴:発作時の経口薬治療

上気道ウイルス感染による喘鳴発作は、就学前児童においてはよく見られ、短期間の経口プレドニゾロン剤投与が広く行われているが、軽症~中等症には有効ではないと結論する無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果が報告された。英国レスター大学小児保健部門のJayachandran Panickar氏らによる報告で、NEJM誌2009年1月22日号にて掲載された。入院期間に有意差はないPanickar氏は本試験の目的について、「この年代の発作の大半は間欠型呼吸器症状や慢性下気道好酸球増加症を有するものではなく、学齢期になれば解消される」とし「ガイドラインでの推奨エビデンスは、この年代以外のエビデンスを基にしたもので、同年代における有効性のエビデンスには矛盾が見られるからだ」と述べている。試験は、英国の3病院で、ウイルス感染による喘鳴発作で受診し入院が必要と診断した、生後10~60ヵ月の小児700例を対象。過去のスタディで矛盾が見られた5日間投与を参考に、経口プレドニゾロンの5日間投与(10~24ヵ月児:1日1回10mg、25ヵ月児以上:1日1回20mg)の有効性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照試験をデザインした。対象児は、入院の診断前にアルブテロールの10パフ噴霧を受けており、定量吸入器またはVolumatic spacerもしくはアルブテロールネブライザーで管理を受けていた(3歳未満2.5mg、3歳以上5.0mg)。主要評価項目は、入院期間。副次評価項目は、呼吸評価スコア(基線値は入院診断後、アルブテロール噴霧5分後に評価した値とした)、アルブテロールの使用、7日間の症状スコア。全例解析は687例(プラセボ群344例、プレドニゾロン例343例)で実行された。主要評価項目の入院期間は、プラセボ群13.9時間、プレドニゾロン群11.0時間、相乗平均0.90(95%信頼区間:0.77~1.05)と有意差はなかった。副次評価項目、また有害事象の発生数についても有意差はなかった。(武藤まき:医療ライター)

2879.

胃腸障害に対する効果的な薬剤投与順とは?:DIAMOND試験

プライマリ・ケアにおける胃腸障害の管理では、制酸薬→H2受容体拮抗薬(H2RA)→プロトンポンプ阻害薬(PPI)の順に投与する治療戦略がその逆順で投与する戦略よりも費用効果に優れることが、オランダで実施されたDIAMOND試験によって明らかとなった。プライマリ・ケアでは、胃腸障害治療は医師の作業負担が大きく、医療コストもかさむことがわかっている。コンセンサスやガイドラインはあるものの、最も費用効果に優れる初期管理の戦略は依然として経験に基づくものだという。Radboud大学ナイメーヘン医療センターのCorine J van Marrewijk氏が、Lancet誌2009年1月17日号で報告した。制酸薬→H2RA→PPIと、PPI→H2RA→制酸薬を比較研究グループは、プライマリ・ケアにおける新規発症胃腸障害の初期管理の治療戦略として、ステップアップ戦略(制酸薬→H2RA→PPIの順で投与)とステップダウン戦略(PPI→H2RA→制酸薬の順で投与)の比較を行う二重盲検無作為化対照比較試験を実施した。対象は、新規発症の胃腸障害でかかりつけ医を受診した18歳以上の症例とした。2003年10月~2006年1月までに664例が登録され、ステップアップ群に341例が、ステップダウン群には323例が無作為に割り付けられた。各ステップの治療期間は4週とし、症状が持続するか4週以内に再発した場合に次のステップへ進むこととした。主要評価項目は6ヵ月後における症状軽減および費用効果であった。費用効果はステップアップ群で優れるが、最初にPPIを投与したほうが効果発現は早い評価可能なエンドポイントに到達した症例は、ステップアップ群が332例、ステップダウン群が313例であった。脱落のおもな理由はフォローアップの非完遂であった。6ヵ月後の治療成功例はステップアップ群が238例(72%)、ステップダウン群は219例(70%)であり、有意な差は認めなかった(オッズ比:0.92、95%信頼区間:0.7~1.3)。医療コストの平均値は、ステップダウン群の245ユーロに対しステップアップ群は228ユーロと費用効果が有意に優れた(p=0.0008)。この差はおもに薬剤費によるものであった。少なくとも1つ以上の有害事象が報告された症例は、ステップアップ群が94例(28%)、ステップダウン群は93例(29%)と同等であった。全例に主症状以外の胃腸症状、下痢、便秘、味覚障害などの軽度の有害事象が見られた。著者は、「プライマリ・ケアにおける新規発症胃腸障害の初期治療では、ステップアップ戦略とステップダウン戦略の治療成功率は同等であったが、前者のほうが費用効果が優れた」と結論する一方で、「プライマリ・ケアでは重要な情報」として、「PPIを最初に投与する経験的な戦略のほうが効果が早く現れ、とくに胃食道逆流症状の見られる症例でその傾向が顕著であった。ジェネリック医薬品の制酸薬を用いた場合は、費用効果の差は小さくなった」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

2880.

非心臓手術周術期のβ遮断薬投与は不要?

米国心臓学会/米国心臓協会(ACC/AHA)のガイドラインの推奨にもかかわらず、非心臓手術時の周術期における心血管死や脳卒中の予防を目的としたβ遮断薬の使用を支持する確固たるエビデンスはないことが、米Brigham and Women's病院循環器科のSripal Bangalore氏らが実施したメタ解析で明らかとなった。Lancet誌2008年12月6日号(オンライン版2008年11月11日号)掲載の報告。33試験に参加した1万2,306例を対象とするメタ解析実施周術期患者評価に関するACC/AHAのガイドラインでは非心臓手術時の周術期におけるβ遮断薬の使用が推奨されている。しかし、最近報告されたPOISE試験などこれを支持しない臨床試験もいくつかあるという。研究グループは、非心臓手術を受けた患者に対する周術期のβ遮断薬投与を評価したエビデンスについて厳格なレビューを行った。PubmedおよびEmbaseを用いて、非心臓手術時のβ遮断薬の使用について調査した無作為化対照比較試験のデータを検索した。30日全死亡率、心血管死亡率、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全、心筋虚血、および周術期の徐脈、低血圧、気管支攣縮に関する安全性アウトカムのデータを抽出した。33試験に参加した1万2,306例が対象となった。ACC/AHAガイドライン委員会は周術期β遮断薬使用の見解を緩和すべきβ遮断薬を投与しても、全死亡率、心血管死亡率、心不全のリスクは低下しなかった。また、β遮断薬投与により非致死的心筋梗塞および心筋虚血が低下した(オッズ比:それぞれ0.65、0.36)が、その代償として非致死的脳卒中が増加した(オッズ比:2.01)。β遮断薬の効果が高いとする試験の多くが、バイアスのリスクの高い試験であった。安全性については、周術期にβ遮断薬を使用すると治療を要する徐脈および低血圧のリスクが上昇した。気管支攣縮のリスク上昇は見られなかった。著者は、「非心臓手術を受けた患者では、周術期の心血管死や脳卒中などの臨床アウトカムの予防にβ遮断薬を使用することを支持するエビデンスは確認されなかった」と結論し、「ACC/AHAガイドライン委員会は、結論的なエビデンスが提出されるまで周術期β遮断薬使用の見解を緩和すべき」としている。(菅野守:医学ライター)

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