循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:37

健康な60歳以上の4人中1人に無症状の心臓弁膜症

 心臓弁膜症がある高齢者の割合は、これまで考えられていた以上に高いことが、新たな研究で示された。一見、健康で症状もない60歳以上の人の4人中1人以上に未診断の心臓弁膜症のあることが、英イースト・アングリア大学医学部心臓内科学臨床教授のVassilios Vassiliou氏らの研究によって明らかになった。この研究結果は、「European Heart Journal-Cardiovascular Imaging」に6月26日掲載された。  Vassiliou氏は、「われわれの研究から、こうした60歳以上の成人の28%以上に何らかの種類の心臓弁膜症のあることが明らかになった。ただ、安心できるのは、そのほとんどが極めて軽症であることだ」と言う。また、同氏は同大学のニュースリリースの中で、「このデータから、心臓弁膜症に関連する主要な要因が年齢であり、高齢になるほど心臓の弁の問題を抱える確率が高まることも示された」と説明している。

高齢の心臓手術患者、脳波ガイド下麻酔は術後せん妄を抑制せず/JAMA

 心臓手術を受ける高齢患者において、脳電図(EEG)ガイド下で脳波の抑制(suppression)を最小限にして行う麻酔投与は、通常ケアと比較して術後せん妄の発生を抑制しなかった。カナダ・モントリオール大学のAlain Deschamps氏らCanadian Perioperative Anesthesia Clinical Trials Groupが「Electroencephalographic Guidance of Anesthesia to Alleviate Geriatric Syndromes(ENGAGES)試験」の結果を報告した。術中の脳波の抑制は、全身麻酔の投与量が過剰であることを示唆するとともに、術後せん妄と関連することが先行研究で示されていた。JAMA誌2024年7月9日号掲載の報告。

イメージングガイドPCIの有用性と今後の展望(解説:上田恭敬氏)

IVUSあるいはOCTを用いたイメージングガイド、あるいはアンジオガイドのPCI(DES留置術)の成績を無作為化比較試験によって検討した22試験(1万5,964例、平均観察期間24.7ヵ月)のネットワークメタ解析の結果が報告された。主要エンドポイントである心臓死・標的血管関連心筋梗塞・TLRの複合エンドポイントでは、イメージングガイドPCIにおいてアンジオガイドPCIに比してリスクの低下(相対リスク[RR] 0.71 [95%信頼区間[CI]:0.63~0.80]、 p<0.0001)が観察された。さらに、心臓死(0.55、0.41~0.75、p=0.0001)、標的血管関連心筋梗塞(0.82、0.68~0.98、p=0.030)、TLR(0.72、0.60~0.86、 p=0.0002)のリスク低下に加えて、ステント血栓症(0.52、0.34~0.81、p=0.0036)、すべての心筋梗塞(0.83、0.71~0.99、p=0.033)、全死亡(0.75、0.60~0.93、p=0.0091)のリスク低下も観察された。また、IVUSガイドPCIとOCTガイドPCIの成績に違いは認められなかった。

産後VTE予防のエノキサパリン、より高リスク例へ限定可能?/JAMA

 妊娠に関連した静脈血栓塞栓症(VTE)予防のためのヘパリン(エノキサパリン)ベースのプロトコルに、より選択的なリスク層別化アプローチを追加することで、産後VTEが増加することなく血腫が減少したことを、米国・アラバマ大学のMacie L. Champion氏らが報告した。著者らのアラバマ大学では、2016年に米国産科婦人科学会のガイドラインに基づく妊娠関連VTE予防プロトコルを導入したが、血腫の発生確率が2倍以上となり(補正後オッズ比[aOR]:2.34)、VTEは減少しなかったため、2021年に、より選択的なリスク層別化アプローチを取り入れたという。JAMA誌オンライン版2024年6月27日号掲載の報告。  研究グループは、ヘパリンベースの産科学的血栓予防プロトコル(エノキサパリンプロトコル)に対する、より選択的なリスク層別化アプローチのアウトカムを後ろ向き観察研究で評価した。

マルチビタミンに寿命延長効果はある?

 米国では、成人の3人に1人が疾患予防を目的にマルチビタミンを摂取している。しかし、約40万人の成人を20年以上にわたって追跡調査した研究で、マルチビタミンの摂取が長生きに役立つというエビデンスは得られなかったことが報告された。米国立がん研究所(NCI)がん疫学・遺伝学部門のErikka Loftfield氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に6月26日掲載された。   毎日のマルチビタミンの摂取がもたらす有益性と有害性については明確になっていない。マルチビタミンの摂取と死亡との関連についての過去の研究では一貫した結果が得られていない上に、追跡期間も短かった。

重要性を増すゲノム診療科、その将来ビジョン/日本動脈硬化学会

 2023年に議員立法として成立した“良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律”、通称「ゲノム医療推進法」。詳細についての議論はこれから進んでいく模様だが、循環器領域においては、2022年度の診療報酬改定により動脈硬化に関連する難病への遺伝学的検査の対象疾患が拡大され、4疾患(家族性高コレステロール血症、原発性高カイロミクロン血症、無βリポタンパク血症、家族性低βリポタンパク血症1[ホモ接合体])の遺伝学的検査を含む複数の脂質異常症疾患が保険適用された。

脳卒中後の血圧コントロール不良、看護師電話管理で改善/JAMA

 コントロール不良の高血圧で主に低所得の黒人およびヒスパニックの脳卒中生存者では、家庭血圧遠隔モニタリング(HBPTM)単独と比較して、電話を用いた看護師による患者管理(NCM)をHBPTMに追加することで、1年後の収縮期血圧(SBP)が有意に低下し、2年後の脳卒中の再発には差がないことが、米国・ニューヨーク大学ランゴーン医療センターのGbenga Ogedegbe氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2024年7月2日号で報告された。  本研究は、ニューヨーク市の合計8つの脳卒中センターと外来診療施設で実施した臨床ベースの無作為化試験であり、2014年4月~2017年12月に参加者を登録した(米国国立神経疾患・脳卒中研究所[NINDS]の助成を受けた)。

脂質低下薬が糖尿病網膜症の進行を抑制する可能性

 脂質低下薬のフェノフィブラートが、糖尿病による目の合併症を抑制することを示唆するデータが報告された。網膜症の進行、それによる治療を要するリスクが、プラセボに比べて27%低下するという。英オックスフォード大学人口保健研究所のDavid Preiss氏らが米国糖尿病学会年次学術集会(ADA2024、6月21~24日、オーランド)で発表するとともに、論文が「NEJM Evidence」に6月21日掲載された。  Preiss氏は、「糖尿病網膜症は依然として視力喪失の主要な原因であり、その進行を抑えるために、広く利用可能なシンプルな戦略を必要としている」と解説。また本研究の結果について、「フェノフィブラートは糖尿病網膜症の患者に対して、有益な追加効果をもたらす可能性があることを示唆している」としている。なお、糖尿病網膜症は、高血糖の持続により眼球の奥の血管がダメージを受けることで発症し、血管から血液成分が漏れ出したりすることによって視野が欠けたり視力が低下して、最終的には失明することもある病気。一方、脂質低下薬であるフェノフィブラートは、糖尿病患者の心血管イベント抑制を主要評価項目として検証した複数の臨床試験で、網膜症を抑制するという副次的な効果を有することが示唆されている。

冠動脈バイパス術後の抗血小板薬療法(解説:後藤信哉氏)

冠動脈のカテーテルインターベンション(PCI)後の抗血小板療法は、2剤併用の期間短縮の方向に向かっている。PCI後のMACEが減少し、抗血小板薬による出血の問題が相対的に大きくなったことが主な理由である。PCIの適応が拡大し、バイパス手術に回る症例の困難性は以前よりも増加していると想定される。リスクの重畳したMACEリスクの高い症例が多いかもしれない。本研究では中国の6つの病院で施行したオープンラベルではあるが、ランダム化比較試験である。

高リスク高血圧患者の降圧目標、140mmHg未満vs.120mmHg未満/Lancet

 心血管リスクの高い高血圧患者では、糖尿病や脳卒中の既往によらず、収縮期血圧(SBP)の目標を120mmHg未満とする厳格降圧治療は、140mmHg未満とする標準降圧治療と比較して、主要心血管イベントのリスクが低下したことが示された。中国・Fuwai HospitalのJiamin Liu氏らESPRIT Collaborative Groupが無作為化非盲検評価者盲検比較試験「Effects of Intensive Systolic Blood Pressure Lowering Treatment in Reducing Risk of Vascular Events trial:ESPRIT試験」の結果を報告した。SBPを120mmHg未満に低下させることが140mmHg未満に低下させることより優れているかどうかは、とくに糖尿病患者や脳卒中の既往患者でははっきりしていなかった。Lancet誌オンライン版2024年6月27日号掲載の報告。