心筋梗塞で入院し退院後1ヵ月時点の受診時評価で身体機能が低下した65歳以上の高齢患者において、多領域(multidomain)リハビリテーションによる介入は通常ケアと比較し、1年以内の心血管死または心血管疾患による予定外入院(複合アウトカム)の発生を有意に減少させた。イタリア・フェラーラ大学病院のElisabetta Tonet氏らが、同国で行われた研究者主導の多施設共同優越性試験「Physical Activity Intervention in Elderly Patients with Myocardial Infarction trial:PIpELINe試験」の結果を報告した。心筋梗塞後に身体機能が低下した65歳以上の高齢患者に対する、リハビリテーション介入の有益性は明らかになっていなかった。NEJM誌2025年9月11日号掲載の報告。
心筋梗塞で入院、退院後1ヵ月時点のSPPBスコア4~9の65歳以上が対象
研究グループは、ST上昇型または非ST上昇型心筋梗塞で入院し、冠動脈血行再建が成功裏に行われた65歳以上の患者のうち、退院後1ヵ月時点のShort Physical Performance Battery(SPPB)スコアが4~9の患者を、介入群と対照群に2対1の割合で無作為に割り付けた。
介入群では、心血管リスク因子の管理(禁煙、血圧・脂質・血糖コントロール)、食事指導、運動トレーニング(退院後30日ごとに3回、その後は90日ごとに3回、計6回の監督下個別セッション、ならびに自宅での個別運動処方)が行われた。
対照群では、退院1ヵ月後に30分の対面カウンセリング(食事・禁煙・身体活動に関する教育資料付き)を1回のみ実施した。
主要アウトカムは、1年以内の心血管死または心血管疾患による予定外の入院の複合とした。
多領域リハビリテーション介入で1年後の複合アウトカム43%減少
2020年3月27日~2023年11月30日に計512例が無作為化された(介入群342例、対照群170例)。患者背景は、年齢中央値が80歳、女性が36%であった。
主要アウトカムのイベントは、介入群で43例(12.6%)、対照群で35例(20.6%)に発生した(ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.36~0.89、p=0.01)。
心血管死は介入群で14例(4.1%)、対照群で10例(5.9%)(HR:0.69、95%CI:0.31~1.55)に、心血管疾患による予定外の入院はそれぞれ31例(9.1%)、30例(17.6%)(0.48、0.29~0.79)に発生した。
介入に関連する重篤な有害事象は認められなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)