循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:34

糖尿病予備群が大動脈弁狭窄症を引き起こす

 糖尿病予備群の主要な原因であるインスリン抵抗性が、大動脈弁狭窄症のリスクを高めることを示唆するデータが発表された。クオピオ大学病院(フィンランド)のJohanna Kuusisto氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Medicine」に11月26日掲載された。  大動脈弁狭窄症(AS)は高齢者に多い心臓弁の病気の一つであり、心不全や死亡のリスクを高める。Kuusisto氏は、ジャーナル発のリリースの中で、「この新たな発見は、インスリン抵抗性がASの重大かつ修正可能なリスク因子である可能性を浮き彫りにしている。インスリンに対する感受性を高めることを意図した健康管理は、ASのリスクを減らし、高齢者の心血管アウトカムを改善するための新たなアプローチとなり得る」と語っている。

心筋梗塞後のβ遮断薬の長期投与は不要か―統計学的には非劣性だが、臨床的にはそうとは限らない(解説:名郷直樹氏)

β遮断薬内服中で駆出率が40%以上の6ヵ月以前に発症した心筋梗塞患者で、β遮断薬を継続する群と中止する群で、死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心血管疾患による入院の複合アウトカムを1次アウトカムにしたランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT)であるが、プラセボは使用せずオープン試験である。このRCTは薬剤中止試験と呼ばれるもので、歴史的にはジギタリスの中止試験が有名である。ジギタリスの中止試験では、いずれも中止による心不全症状の悪化が報告されている。対象者がすでに治療を継続できている患者だけが対象であることに留意すべきで、新規の患者にどうするかというのはまた別問題であると考えるのが重要である。

甘いものの摂取、心臓の健康にとっての「スイートスポット」は?

 甘いものが心臓の健康にもたらす影響は、その種類により大きく異なる可能性のあることが新たな研究で明らかになった。論文の筆頭著者であるルンド大学(スウェーデン)のSuzanne Janzi氏は、「この研究結果で最も印象的だったのは、異なる摂取源の添加糖が心血管疾患(CVD)リスクに、それぞれ異なる影響を与えることを示した点だ」と述べている。例えば、加糖飲料の大量摂取は脳卒中や、心不全、不整脈の発症リスクを大幅に高めることが示された一方で、オートミールに蜂蜜を加えたり、甘いペストリーを時々食べたりしても心臓の健康に大きな害はなく、むしろ改善する可能性もあるという。この研究の詳細は、「Frontiers in Public Health」に12月9日掲載された。

心房細動の早期発見、早期介入で重症化を防ぐ/日本心臓財団

 日本心臓財団メディアワークショップは、都内で「心房細動の診療」をテーマにメディアワークショップを開催した。  心房細動(AF)は心臓内の心房が異常な動きをし、不整脈を引き起こす疾患である。AFでは、自覚症状を伴わないことが多く、気付かずに長期間放置すると心房内に生じた血栓が血流にのり、脳血管障害や心不全などを発症させる恐れがある。早期発見が重要であり、治療ではカテーテルアブレーションや薬物による治療が行われる。そして、早期発見では、日常の検脈や健康診断が重要となるが、近年では、テクノロジーの発達とデジタルデバイスの普及により、これまで見つかりにくかった無症候性や発作性タイプのAFの早期発見が可能になってきている。

動物性から植物性タンパク質への摂取移行は心臓の健康に有益

 主なタンパク質源を肉から植物に切り替えると、心臓の健康に驚くべき効果がもたらされるようだ。30年にわたる研究により、動物性タンパク質に対する植物性タンパク質のエネルギー比率が最も高い人では、心血管疾患(CVD)リスクが19%、冠動脈性心疾患(CHD)リスクが27%低下することが示された。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のFrank Hu氏は、「われわれの多くが、植物性タンパク質を主なタンパク質源とする食生活にシフトしていく必要がある。肉の中でも、特に赤肉や加工肉の摂取を減らし、豆類やナッツ類の摂取量を増やすことでそれが可能になる。このような食生活は、人間の健康だけでなく地球の健康にも有益だ」と述べている。この研究の詳細は、「American Journal of Clinical Nutrition」12月号に掲載された。

抗凝固薬とNSAIDsの併用は出血リスクを高める

 抗凝固薬を使用している人が、イブプロフェンやナプロキセンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用すると、脳や腸、肺、膀胱での制御不能な出血リスクが2倍以上に上昇することが、新たな研究で明らかにされた。抗凝固薬は通常、脳卒中や心筋梗塞、あるいは脚や肺の血栓を治療または予防するために処方される。一方、NSAIDsには血液を薄める作用のあることが知られている。オーフス大学病院(デンマーク)のSøren Riis Petersen氏らによるこの研究結果は、「European Heart Journal」に11月18日掲載された。  Petersen氏らは、デンマークの全国レジストリを用いて、抗凝固薬を使用している静脈血栓塞栓症(VTE)患者がNSAIDs(イブプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン)を使用した際の出血リスクについて検討した。対象は、2012年1月1日から2022年12月31日の間にVTEの治療のために経口抗凝固薬を処方された患者5万1,794人(年齢中央値69歳、女性48%)であった。

閉経後HRT(ホルモン補充療法)のビッグデータを用いたtarget trial emulation(標的模倣試験)の結果(解説:名郷直樹氏)

閉経後のホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)は、かつて観察研究で心血管イベントを減らすがランダム化比較試験では増やすという真逆の結果が報告され、多くの論争を呼んだ。結論としては、RCTでは閉経直後でない多くの患者が対象とされていたり、 ITT解析がなされていたりすることと、観察研究での実際に投与された患者での解析による選択バイアスや、観察研究では排除できない交絡によって、違いが出たとされている。さらに最近では、新しいホルモン製剤によるHRTが主流となっている現状もある。

再利用ペースメーカーは安全で再利用可能

 再利用ペースメーカーは新しいペースメーカーと同程度に安全かつ効果的であり、低・中所得国の多くの人に利用可能な治療選択肢を提供する可能性があるとする研究結果が報告された。この研究を実施した米ミシガン大学医学部循環器科内科部門のThomas Crawford氏は、「米国と異なり、低・中所得国の人は、ペースメーカー治療が利用できなかったり、利用できたとしても費用が高額過ぎたりすることが多い」と指摘。「われわれのMy Heart Your Heart(MHYH)プログラムは、それを変えることを目指している」と話している。この研究結果は、米国心臓協会年次学術集会(AHA 2024、11月16〜18日、米シカゴ)で発表された。

DOACとスタチンの併用による出血リスク

 直接経口抗凝固薬(DOAC)はスタチンと併用されることが多い。しかし、DOACとアトルバスタチンまたはシンバスタチンの併用は、出血リスクを高める可能性が考えられている。それは、DOACがP-糖タンパク質の基質であり、CYP3A4により代謝されるが、アトルバスタチンとシンバスタチンもP-糖タンパク質の基質であり、CYP3A4により代謝されることから、両者が競合する可能性があるためである。しかし、これらの臨床的な影響は明らかになっていない。そこで、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAngel Ys Wong氏らの研究グループは、英国のデータベースを用いて、DOACとアトルバスタチンまたはシンバスタチンの併用と出血、心血管イベント、死亡との関連を検討した。