ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)は、ヘパリン治療に対する免疫介在性の反応で、血小板第4因子(PF4)とヘパリンの複合体を標的とする抗体によって引き起こされ、血小板数の減少と血栓症リスクの上昇を特徴とする。カナダ・McMaster UniversityのJared Treverton氏らは、最も多くみられる抗PF4抗体疾患であるHITが、クローン性の限定された抗PF4-ヘパリン抗体によって引き起こされるかどうかを、カナダ国内の患者9例を対象に調査し、全員の病原性抗体がモノクローナルであったことを報告した。HITはポリクローナル免疫応答として特徴付けられてきたが、他のまれな抗PF4疾患の研究で、クローン性の限定された抗体が同定されていた。著者は、「今回の知見は、HITの発症機序への洞察を与えるものであり、診断や標的治療の向上に影響をもたらすものである」と述べている。NEJM誌2025年9月4日号掲載の報告。
病原性HIT抗体のクローン性について9例を調査
研究グループは、病原性HIT抗体のクローン性について、臨床的および血清学的にHITと診断された9例の患者について調べた。採取された血清検体から、PF4-ヘパリンビーズを用いて抗PF4-ヘパリン抗体をアフィニティ精製した。
抗体のクローン性を、免疫固定電気泳動法と質量分析法によって評価した。PF4への抗体結合は、酵素免疫測定法によって評価し、血小板機能の活性化はPセレクチン発現アッセイを用いて評価した。また、患者2例において、PF4変異ライブラリを活用してHIT抗体エピトープをマッピングした。
全例がモノクローナル
対象のHIT患者9例は、女性2例(22%)、平均年齢63歳(範囲:45~77)であった。
9例全例の血清検体は、酵素免疫測定法およびPセレクチン発現アッセイによって、PF4-ヘパリンに対する血小板活性化抗体は陽性であることが確認され、6例(67%)は、免疫固定電気泳動法によってモノクローナル抗体を有することが確認された。
9例全例のアフィニティ精製された抗PF4-ヘパリン抗体は、Pセレクチン発現アッセイで血小板を活性化し、質量分析法によりモノクローナル抗体であることが示された。
アフィニティ精製後、抗体を除去した血清検体について、酵素免疫測定法では結合活性が、またPセレクチン発現アッセイでは機能活性がいずれも失われており、病原性抗体が除去されたことが確認された。
血清検体由来の抗PF4-ヘパリン抗体によって標的とされるPF4上のエピトープは、アフィニティ精製後モノクローナル抗体によって標的とされたPF4上のエピトープと同様のものであった。
(ケアネット)