循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:157

Impellaは心原性ショックを伴う急性心筋梗塞に対するPCI症例の循環補助にIABPよりも有効か有害か?:入院死亡率と出血合併症率の比較検討(解説:許俊鋭 氏)-1200

Impellaは2008年に米国FDAの製造販売承認を得たが、当初の適応は重症PCIの補助(Supported PCI)であった。日本では米国治験データでIABPとの比較においてImpellaの優位性が認められず、Supported PCIを適応とせず、2012年に心原性ショック(CS)に対するカテーテル型補助人工心臓としての適応で検討されたが、承認には至らなかった。2016年に米国でImpellaのCS適応が承認され、2017年に日本でもCS適応で保険償還された。しかし、急性心筋梗塞(AMI)に起因したCSに対するImpellaの適応や有効性については異論も多々あり、本Dhruva論文(Dhruva SS, et al. JAMA. 2020 Feb 10. [Epub ahead of print])もその代表的な1つである。

経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)と外科的大動脈弁置換術(SAVR)の5年の治療成績はどちらが優れているか?(解説:許俊鋭 氏)-1199

TAVRとSAVRの大規模前向き無作為化試験であるPARTNER cohort Aでは、高度外科手術リスク症例に対する5年死亡率でTAVRのSAVRに対する非劣性(67.8% vs.62.4%、p=0.76)が示され(Mack MJ, et al. Lancet. 2015;385:2477-2484.)、CoreValveでは1年死亡率(14.2% vs.19.1%、p=0.04)においてTAVRの優位性が示された(Adams DH, et al. N Engl J Med. 2014;370:1790-1798.)。両者の血行動態の比較でTAVRのほうがSAVRよりも体表面積補正を行った有効弁口面積(iEOA)は大きく、prosthesis-patient mismatch(PPM)の発生率は小さいが、一方、大動脈弁周囲逆流が高率にみられる(Hahn RT, et al. J Am Coll Cardiol. 2013;61:2514-2521.)ことから、長期予後の検討は今日的検討課題と考えられる。

高血圧患者以外でもナトリウム摂取量削減に応じて血圧低下/BMJ

 食事からのナトリウム(塩分)摂取量の削減による血圧の低下には、強力な用量反応関係がみられ、降圧効果は高齢者や非白人、血圧が高い集団で大きいことが、オーストラリア・シドニー大学のLiping Huang氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2020年2月25日号に掲載された。ナトリウム摂取量が多いほど血圧が上昇することは、広範なエビデンスによって示されている。一方、高血圧患者では、血圧に及ぼすナトリウム摂取量削減の効果は明らかだが、他の集団での効果は不確実であり、介入期間の影響も十分には解明されていないという。

脳梗塞へのtenecteplase、投与量で改善の違いは?/JAMA

 主幹動脈閉塞の脳梗塞患者において、tenecteplaseの投与量0.40mg/kgは同0.25mg/kgと比較し、血栓除去術施行前の脳再灌流を改善しなかった。オーストラリア・メルボルン大学のBruce C. V. Campbell氏らが、同国27施設およびニュージーランドの1施設で実施した多施設共同無作為化臨床試験「EXTEND-IA TNK Part 2試験」の結果を報告した。先行して行われたEXTEND-IA TNK試験において、同様の脳梗塞患者に対するtenecteplaseによる血栓溶解療法はアルテプラーゼと比較し、血栓除去術施行前の再灌流を改善することが示されていた。JAMA誌オンライン版2020年2月20日号掲載の報告。

冠動脈ステントのポリマー論争に決着か?(解説:中川義久氏)-1196

PCIに用いる金属製の薬物溶出性ステントの比較試験の結果がNEJM誌に掲載された。Onyx ONE試験の結果で、すでにケアネットのジャーナル四天王でも紹介されている(高出血リスクへのPCIステント、ポリマーベースvs.ポリマーフリー/NEJM)。その概要は、耐久性ポリマーを使用したステントと、ポリマーフリーのステントを比較して、安全性および有効性の複合アウトカムにおいて非劣性であったという内容である。第1世代の薬物溶出性ステントのCypherで遅発性・超遅発性ステント血栓症が問題となった。その原因として、薬剤の放出をコントロールするためのポリマーが、過敏性反応から炎症惹起性があることが原因とされた。ポリマー性悪説が掲げられ、生体吸収性ポリマーや生分解性ポリマーなどの、消えてなくなるポリマーのステントが開発された。さらにポリマーを用いることなく薬剤放出をコントロールする、ポリマーフリーのステントが開発されるに至った。一方で、ポリマーの生体適合性が向上し、抗血栓性を内在するポリマーなど、ポリマー性善説も登場してきた。このように、薬物溶出性ステントを巡るポリマー論争は長い歴史がある。耐久性ポリマーvs.生分解性ポリマーの比較試験もいくつも施行された。そして、耐久性ポリマーvs.ポリマーフリーの比較試験が今回の論文である。いずれの試験も非劣性試験のデザインが大半で、わずかの差異を声高に誇る研究もあるが、結果を総括すれば「ほぼ同等」である。つまり新世代の金属製の薬物溶出性ステントはポリマーの有無にかかわらず成熟が進み完成形に近づいていることを示している。

無症状でも重症ASは放っておいてはダメ(解説:上妻謙氏)-1192

昔から失神や胸痛を来した重症大動脈弁狭窄症(AS)は、急いで手術しないと急死しやすいことは経験的に認められてきた。TAVRが出てくる前から手術ができる患者は準緊急で手術に送ったものだったが、TAVRが出てから市場が大きく掘り起こされ、超高齢社会も相まって、無症候のASが多く見つかるようになった。これは、そういった無症候の重症ASを手術せずに経過をみたらどうなるかということをはっきりさせた重要な論文である。早期に手術をする群に比べコンサーバティブに経過観察した群は明らかに死亡率が高く、早期手術群では手術死亡もなかった。単純明快な論文であるが、いくつかlimitationも存在する。まずは145例と症例数の少ない点、そして患者の6割以上が二尖弁で平均年齢が62歳と若い点である。これは最近増加している高齢者のdegenerative ASの患者像とは異なり、手術リスクも異なるため、同様には扱いにくい。しかしTAVRが一般化した現在では高齢者にも当てはめてよいと考えられる。

多遺伝子リスクスコアの追加、CADリスク予測をやや改善/JAMA

 冠動脈疾患(CAD)のリスク評価モデルpooled cohort equations(PCE)と多遺伝子リスクスコア(polygenic risk score)を組み合わせることで、CAD発症の予測精度がわずかではあるが統計学的に有意に改善し、一部の個人集団においてリスク分類を改善することが示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのJoshua Elliott氏らが、観察研究の結果を報告した。著者は、「PCEでの遺伝情報の使用は、臨床で実施される前にさらなる検証が必要である」とまとめている。JAMA誌2020年2月18日号掲載の報告。

世界のCKD患者、27年間で3割増/Lancet

 2017年の世界の慢性腎臓病(CKD)の推定有病率は9.1%で、1990年から29.3%増大していたことが明らかにされた。また、同年の全世界のCKDによる推定死亡者数は120万人に上ることも示され、CKDの疾病負荷は、社会人口指数(SDI)五分位のうち低いほうから3つに該当する国に集中しているという。イタリア・Mario Negri研究所のBoris Bikbov氏ら「GBD Chronic Kidney Disease Collaboration」研究グループが、システマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。ヘルスシステムの計画策定には、CKDを注意深く評価する必要があるが、CKDに関する罹患率や死亡率といったデータは乏しく、多くの国で存在すらしていないという。研究グループは、世界的、および地域、国ごとのCKDの疾病負荷の状況、さらには腎機能障害に起因した心血管疾患および痛風の疾病負荷を調べるGlobal Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2017を行った。Lancet誌オンライン版2020年2月13日号掲載の報告。

CHD予測モデルにおける多遺伝子リスクスコアの価値とは/JAMA

 多遺伝子リスクスコアは、冠動脈疾患(CHD)のイベント発生を予測するが、2013年米国心臓病学会/米国心臓協会(ACC/AHA)による動脈硬化性疾患のリスク予測モデル(pooled cohort equations:PCE)と比べて、識別能、キャリブレーション(較正)、リスク再分類を有意に改善しないことが示された。米国・ヴァンダービルト大学のJonathan D. Mosley氏らが、被験者数合計7,000例超の2つの米国成人コホートからを後ろ向きに解析し明らかにした。多遺伝子リスクスコアは、何百万もの一塩基遺伝子多型(SNP)の情報を含むため、幅広い集団のCHDスクリーニングに役立つ可能性が示唆されていた。著者は「今回の結果は、多遺伝子リスクスコアは、一般白人中高年の集団においてはリスク予測能を強化しないことを示唆するものである」とまとめている。JAMA誌2020年2月18日号掲載の報告。

TAVRの術後は抗血小板療法?抗凝固療法?(解説:上妻謙氏)-1191

経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、重症大動脈弁狭窄症に対する治療として標準治療となったが、術後の抗血栓療法についての十分なエビデンスが存在しない。今までTAVR後の抗血栓療法としては3~6ヵ月のアスピリンとクロピドグレルによる2剤併用抗血小板療法(DAPT)が標準とされてきたが、この抗血小板療法についての大規模研究は少なく、とくにランダマイズトライアルは皆無である。TAVR後に抗血小板療法が良いのか抗凝固療法が良いのかが疑問であったため、低用量アスピリンに加えてリバーロキサバン10mgとクロピドグレル投与を無作為で比較するGALILEO試験が行われ、結果はすでに発表された。