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青年期からの適切な対策で精神疾患の発症予防は可能か

 青年から成人への移行期には、身体的、感情的および社会的な変化が大きいが、この発達期における慢性症状と精神疾患との関連について調べた研究はほとんどない。カナダ・マックマスター大学のM. A. Ferro氏は、青年から成人への移行期(emerging adulthood)に該当する15~30歳成人の疫学的サンプル調査により、慢性症状の有無別に性特異的な生涯精神疾患の有病率を調べた。結果、同年代では、身体的症状と精神的症状の併存は一般的であり、それらが相乗的に増大するという関連はみられなかったが、障害や痛みのレベルによっては関連する可能性があることを明らかにした。そのうえで、慢性症状を有するこの年代の成人の精神疾患の予防・減少を促進するために、行政は健康、教育、社会的サービスを統合・調整していくことが重要であると報告した。Epidemiology and Psychiatric Sciences誌オンライン版2015年9月8日号の掲載報告。

食事回数と肥満の関係

 食物摂取頻度と肥満との関連の研究結果は一貫していない。滋賀県立大学の村上 健太郎氏らは、米国National Health and Nutrition Examination Survey(NHANES)2003-2012のデータを用いた横断研究から、米国成人の1日の全食事回数・食事(間食を除く)回数・間食回数の多さが、過体重/肥満と中心性肥満のリスク増加に関連することが示唆される、と報告した。the Journal of Nutrition誌オンライン版2015年10月14日号に掲載。

早期アルツハイマー病診断に有用な方法は

 アミロイドPET検査ならびにCSFバイオマーカーは、いずれも高い精度で早期アルツハイマー病を診断できることを、スウェーデン・ルンド大学のSebastian Palmqvist氏らがBioFINDER研究で明らかにした。最も有効なCSF測定値とPET検査所見の間に違いはなく、それらを組み合わせて使用しても精度は向上しなかったことから、著者らは「早期アルツハイマー病の診断においてCSFバイオマーカーとアミロイドPET検査はどちらも精度は同等に高いので、利便性、費用、医師や患者の好みによる選択が可能である」とまとめている。Neurology誌2015年10月号の掲載報告。

認知症患者の精神症状に対し、抗不安薬の使用は有用か

 認知症患者の神経精神症状や機能レベルに対する入院および向精神薬の影響について、フィンランド・タンペレ大学のHanna-Mari Alanen氏らが調査を行った。その結果、認知症患者の神経精神症状に対する抗不安薬の使用を支持しない結果が得られたことを報告した。Dementia and geriatric cognitive disorders誌オンライン版2015年9月4日号の報告。

難治性そう痒にアザチオプリンが有効である可能性

 慢性かつ重症で治療抵抗性のそう痒は生活を変えるほどであり、臨床医と患者の両方にとって難題である。このようなそう痒は、免疫が関与している場合があり免疫抑制薬に反応することがあるが、これまで詳細な調査は行われていなかった。米国・エモリー大学のAlexander Maley氏らは、アザチオプリンで治療した全身性ステロイド反応性のそう痒患者について後ろ向きに再調査した。その結果、アザチオプリンが難治性そう痒の症状を、著明に改善する可能性があると報告した。Journal of the American Academy of Dermatology誌2015年9月号(オンライン版2015年6月12日号)の掲載報告。

統合失調症患者にはもっと有酸素運動をさせるべき

 初回エピソードの統合失調症患者のメタボリックシンドロームおよび代謝異常の有病率は、健常対照と比較して有意に高く、また1年間の治療フォローアップ中にいずれも有意な増大が認められたことが、デンマーク・オーフス大学病院のL. Nyboe氏らによる検討の結果、示された。さらに、メタボの有意なリスク因子として、有酸素運動の不足を示唆する所見もみられたという。結果を踏まえて著者らは、「健康的なライフスタイルを、精神科治療およびリハビリテーションの一部として推進していかなくてはならない」と提言している。Schizophrenia Research誌2015年10月号の掲載報告。

注意が必要なトランスジェンダーのメンタルヘルス

 中国医科大学のXiaoshi Yang氏らは、同国におけるトランスジェンダー女性のうつ病罹患状況とその背景要因を検討するため横断研究を行った。その結果、中国のトランスジェンダー女性は、うつ病を高頻度に経験していることを報告した。また、彼女たちのうつ病は、トランスジェンダーに関連する差別や性転換の状況よりも、特定あるいは不特定のパートナーの有無により予測できること、セックスパートナーの存在がうつ病に関連していること、また、自己効力感がうつ病の軽減に好影響を与えうることなどを報告した。そのうえで、「彼女たちがうつ病に対処できるよう、またパートナー(とくに特定あるいは不特定の)とのリスキーなパートナーシップの特徴を見極められるように、自己効力感の改善に重点を置いた介入をすべきであることが示唆された」と報告している。PLoS One誌オンライン版2015年9月14日号の掲載報告。

緑膿菌による角膜炎、多剤耐性のリスクは?

 多剤耐性緑膿菌角膜炎のリスク因子は、潤滑軟膏使用、眼表面損傷および保護コンタクトレンズ使用であることを、インド・L V Prasad Eye InstituteのJayesh Vazirani氏らが後ろ向き症例対照研究の結果、示した。著者は、「防腐剤が入っていない潤滑軟膏は、感染源またはリザーバーとして作用する可能性がある」と指摘したうえで、「多剤耐性緑膿菌角膜炎は薬剤感受性緑膿菌角膜炎と比較して予後不良である」とまとめた。Ophthalmology誌2015年10月号(オンライン版2015年7月15日号)の掲載報告。

脳梗塞と脳出血の発症しやすい季節

 国立病院機構南京都病院の重松 一生氏らは、京都府医師会脳卒中登録に登録された約1万4千例のデータから、虚血性脳卒中と出血性脳卒中の発症比率の季節変動を検討した。その結果、脳卒中の種類により季節変動性が異なり、脳出血/脳梗塞、くも膜下出血/脳梗塞におけるオッズ比は、年齢・性別・危険因子に関係なく、夏で低くそれ以外の季節で高いことが認められた。Acta Neurologica Scandinavica誌2015年12月号に掲載。

SPECT+統計解析でアルツハイマー病の診断精度改善:東北大

 東北大学の金田 朋洋氏らは、SPECT(単光子放出断層撮像法)を用いたアルツハイマー病(AD)の診断精度について検討を行い、画像評価と統計解析を併用することで診断精度が改善することを報告した。SPECTは認知症の重要な診断ツールとなっているが、最近ではこれに統計解析を加味して認知症研究に用いるのが一般的になってきている。Clinical Nuclear Medicine誌オンライン版2015年9月10日号の掲載報告。

統合失調症治療、ドパミン調節の概念が変わる

 イタリア・ナポリ大学医学部のAndrea de Bartolomeis氏らは、統合失調症治療において、ドパミン調節の概念がドパミンD2受容体遮断から機能的選択性へと変化しつつあるとしたうえで、アリピプラゾールの神経生物学的作用について言及し、統合失調症治療薬としての可能性の広がりを示唆した。CNS Drugs誌2015年9月号の掲載報告。

介護施設での任天堂Wiiを用いたメンタルヘルス

 世界中で65歳以上の人口が急増している。介護施設の高齢者は地域の高齢者に比べ、うつ病の程度が高く、社会的支援や帰属意識が少ない。施設入居者のメンタルヘルスを改善する介入法が研究され始め、テレビゲームが認知や身体に効果があることが明らかとなった。集団の中でゲームをすることは、社会的交流にもつながり孤独感を減らす可能性がある。オーストラリア・フェデレーション大学のJessica Chesler氏らは、任天堂Wiiを用いた介入プログラムを評価する研究を行っており、そのプロトコルを紹介した。著者らは、「テレビゲームの使用が効果的であるとわかれば、楽しく経済的で使いやすい介入方法を確立し、Wiiゲームを活動スケジュールに組み込むことが介護施設に入居する高齢者のメンタルヘルスに役立つ可能性がある」とまとめている。BMC Geriatrics誌オンライン版2015年9月3日号の掲載報告。