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目まぐるしく進歩する、肺がん治療

 2015年10月30日都内にて、「肺癌分子標的治療の変遷と最新治療」と題するセミナーが開かれた(主催:アストラゼネカ株式会社)。演者である中西 洋一氏(九州大学大学院医学研究院臨床医学部門内科学講座呼吸器内科学分野 教授)は、肺がん治療の変遷を中心に講演。免疫チェックポイント阻害薬の登場により、免疫療法が薬物療法の表舞台に立とうとしている現状に触れ、「将来的には判定方法や副作用への対応など、学会、国の方針自体を整備していく必要がある」と述べた。

うつ病への呼吸リラクゼーション併用療法

 うつ病は患者本人だけでなく、家族、仕事や社会的関係にも多大な影響を及ぼす慢性疾患である。Mackay Memorial Hospital のHui-Ching Chien氏らは、大うつ病患者に対し、認知行動療法に呼吸リラクゼーション・エクササイズを併用した場合の、睡眠の質および心拍変動に及ぼす影響を検討した。その結果、睡眠の質および心拍変動が共に改善したことを報告した。認知行動療法は大うつ病に有効な治療法と考えられているが、これまで、大うつ病患者に対して、認知行動療法と呼吸リラクゼーションを併用した場合の効果を包括的に検討した研究はほとんどないという。Journal of Clinical Nursing誌2015年11月号の掲載報告。

アトピー患者のアレルギー、卵感作例はハウスダスト感作も多い

 アトピー性皮膚炎を有する青少年および成人患者における卵アレルギーの発症、および卵アレルギーと他の食物や空気アレルゲンとの関連を示した報告は少ない。チェコ共和国・カレル大学のJarmila Celakovska氏らは、14歳以上のアトピー性皮膚炎患者を対象に卵アレルギーまたは卵感作と、ほこり・ダニ・羽毛・動物の鱗屑に対する感作について調査した。その結果、卵感作とほこり感作との間に関連が認められることを報告した。Acta Medica (Hradec Kralove)誌2015年第1号の掲載報告。

高齢てんかん患者への外科的切除術は行うべきか

 これまで、発作から解放される可能性があるにもかかわらず、60歳以上のてんかん患者に外科的切除術(RES)はほとんど施行されていない。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のSandra Dewar氏らは、60歳以上のてんかん患者に対するRESの有用性を検討した。その結果、90%以上が手術により良好なアウトカムを示し、大半の患者が1つ以上の合併症を有しているにもかかわらず、50%の患者が発作の寛解を達成したことを報告した。今回の結果を踏まえて、著者らは「60歳以上のてんかん患者においてRESは安全かつ有効である。本研究のデータは、加齢を理由にRES施行の回避を考慮すべきでないことを示唆している」とまとめている。Journal of Neurosurgery誌オンライン版2015年9月18日号の掲載報告。

緑内障発症、体内の微量金属濃度が関与?

 体内の必須元素濃度の異常や有毒な微量金属への曝露は、眼を含む多くの器官系に影響を及ぼし、さまざまな疾患の発症に関与することが示唆されている。米国・カリフォルニア大学のShuai-Chun Lin氏らは、韓国の住民を対象とした横断研究を行い、血中マンガン濃度低値と血中水銀濃度高値が、緑内障と関連していることを明らかにした。著者らは、「緑内障発症における微量金属の役割を確認するためには、前向き研究により緑内障の発症が微量金属の存在で増加するかどうかを確かめる必要がある」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌2015年10月号の掲載報告。

認知症患者と介護者のコミュニケーションスキル向上のために

 看護師と認知症患者との効果的なコミュニケーションにより、患者ニーズの理解が促進し、コミュニケーションのミスに関連した患者または看護師におけるフラストレーションが軽減するため、患者ケアの質が高まる。台湾・国立成功大学のHui-Chen Chao氏らは、最新の革新的インターネットベースコミュニケーション教育(AIICE)プログラムが、認知症患者に対する看護師のコミュニケーションスキルおよび認知症患者の記憶・行動関連の症状およびうつ症状に及ぼす影響を検討した。その結果、AIICEプログラムは看護師のコミュニケーション知識、患者とのコミュニケーション能力評価の頻度、コミュニケーション実行能力を向上させ、患者の記憶・行動関連の問題およびうつ症状を軽減させることが示された。著者らは、「AIICEプログラムを用いた看護師の継続的なコミュニケーション訓練が推奨される」と述べている。Journal of Nursing Research誌オンライン版2015年9月14日号の掲載報告。

双極性障害エピソードと脂肪酸の関連を検証

 血漿中イコサペンタエン酸(EPA)濃度比低下は、双極性障害(BD)エピソードと関連しており、血漿中オメガ(n)-3値は、治療によって変化可能であることを、米国・ペンシルバニア州立大学のErika FH Saunders氏らが明らかにした。症候性BDにおいて血漿中EPA比の低下は、気分の脆弱性に関する重要な因子の可能性があり、血漿中n-3値の変化が多価不飽和脂肪酸(PUFA)代謝の変化および症状改善を示唆しうるという。著者らは、「所見は、前臨床データや事後分析データと整合しており、n-3を増量またはn-6を減量した食事性PUFAの介入試験の検討を示唆するものである」と述べている。Bipolar Disorders誌2015年11月号の掲載報告。

坐骨神経痛のリスク、喫煙で増大:メタ解析結果

 坐骨神経痛における喫煙の役割は明確ではない。フィンランド・Finnish Institute of Occupational HealthのRahman Shiri氏らは、腰部神経根痛および坐骨神経痛に対する喫煙の影響を評価する目的でメタ解析を行った。その結果、喫煙は腰部神経根痛および臨床的な坐骨神経痛のリスクを高めることが明らかとなった。また、禁煙によりそのリスクが低下することが示唆されたが、「禁煙してもリスクがゼロになることはない」と著者は指摘している。American Journal of Medicine誌オンライン版2015年9月21日号の掲載報告。

セクシュアルマイノリティーにおける皮膚がんと日焼けマシーン使用

 「セクシュアルマイノリティー(同性愛者や両性愛者)の男性は、異性愛者の男性に比べて日焼けマシーンをよく使用しており、また皮膚がんになる確率が高い」というデータが発表された。JAMA Dermatology誌オンライン版2015年10月7日号での報告。  本研究で、セクシュアルマイノリティーの男性は日焼けマシーンを使うことが多いことが明らかになった。研究者らは、「彼らに対して優先的に皮膚がんリスクを伝えることが予防につながるのではないか」とまとめている。

アルツハイマー病への薬物治療、開始時期による予後の差なし

 世界中で何百万人もの高齢者がアルツハイマー病(AD)で苦しんでいる。治療薬にはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とメマンチンがあるが、その臨床効果は限られており、早期に薬物療法を開始することが長期的に良好な予後につながるかどうかも不明である。そこで、中国・香港中文大学のKelvin K.F. Tsoi氏らは、AD患者に対する早期治療の有効性について、前向き無作為化比較試験のメタ解析を行った。その結果、約6ヵ月早くAD治療薬の投与を開始しても投与開始が遅れた場合と比較して、認知機能、身体機能、行動問題および臨床症状に有意差は認められなかった。この結果について著者らは、「追跡期間が2年未満の早期AD患者の割合が比較的高かったためと考えられる」と指摘したうえで、「長期に追跡した場合の有効性について、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2015年9月18日号の掲載報告。

心筋を凍死させる 心房細動治療の新たな選択肢

 日本メドトロニック株式会社は2015年10月23日、薬剤抵抗性を有する再発性症候性の発作性心房細動治療を目的とした「Arctic Front Advance冷凍アブレーションカテーテル(以下、Arctic Front Advance)」の発売開始を記念し、プレスセミナー「心房細動におけるアブレーション技術の最前線」を開催した。そのセミナーの中で、日本不整脈心電学会理事長、奥村 謙氏は「心房細動治療最前線と冷凍アブレーションへの期待」と題する講演を行った。

ぶどう膜炎に対する眼内インプラントの効果は?

 中間部、後部および全ぶどう膜炎に対するフルオシノロンアセトニド(FA)眼内インプラントと全身性ステロイド療法の有用性を比較した、米国・ペンシルバニア大学のJohn H. Kempen氏らによるMulticenter Uveitis Steroid Treatment(MUST)試験の4.5年の追跡調査において、視覚機能および黄斑浮腫に対する改善効果は両群で類似しておりどちらも良好であることが示された。

ラピッドサイクラー双極性障害、抗うつ薬は中止すべきか

 急速交代型(rapid-cycling:RC)双極性障害における抗うつ薬の使用は論争の的となっているが、米国・ルイビル大学のRif S. El-Mallakh氏らは、このトピックについて初となる無作為化試験を行った。その結果、アプリオリな分析で、良好な抗うつ薬反応と気分安定薬の使用にもかかわらず、RCにおいて抗うつ薬使用を継続することは、中断した場合と比べて、維持アウトカムの悪化、とくに抑うつ罹患と関連することが明らかにされた。Journal of Affective Disorders誌2015年9月15日号の掲載報告。

TG値1,000mg/dL以上を示す患者の臨床的特徴

 金沢大学附属病院で過去10年間に1,000mg/dL以上の高トリグリセリド(TG)値を示した215例の調査によると、全体の7.9%に冠動脈疾患の既往、5.6%に膵炎の既往があり、55.3%に脂肪肝が認められたことがわかった。また、多くが何らかの2次的要因によるTG上昇であることがわかった。深刻な高TG血症は、さまざまな状況により引き起こされる可能性があるため、潜在的な2次的要因を探ることの重要性が示唆された。Journal of clinical lipidology誌7・8月号掲載、金沢大学附属病院 多田 隼人氏らの報告。