nab-パクリタキセル+アテゾリズマブ、トリプルネガティブ乳がんでPFS延長(IMpassion130)/ESMO 2018

提供元:ケアネット

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公開日:2018/10/23

 

 進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)への1次治療として、nab-パクリタキセルと抗PD-L1抗体アテゾリズマブの併用療法が、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。日本も参加している第III相ランダム化比較試験IMpassion130の結果に基づき、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のPeter Schmid氏がドイツ・ミュンヘンにおける欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)で報告した。同患者対象の1次治療の第III相試験で、免疫療法についてポジティブな結果が出たのは初となる。

nab-パクリタキセルとアテゾリズマブ併用を評価
 IMpassion130では、ECOG PS 0~1、転移性または切除不能な局所進行TNBC患者を対象に、アテゾリズマブ併用群(28日を1サイクルとして、アテゾリズマブ840mgを1日目と15日目に、nab-パクリタキセル100mg/m2を1日目、8日目、15日目に投与)とプラセボ群(プラセボ+nab-パクリタキセル100mg/m2を1日目、8日目、15日目に投与)に1:1の割合で無作為に割り付けた。層別化因子は、タキサン系薬剤による治療、肝転移の有無、PD-L1ステータス。主要評価項目は、ITT解析集団およびPD-L1陽性患者におけるPFSと全生存期間(OS)、副次評価項目は、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性などであった。

 主な結果は以下のとおり。

・2018年4月17日のデータカットオフ時点で、追跡期間中央値は12.9ヵ月。
・全体で902例が組み入れられ、ITT解析対象はnab-パクリタキセル+アテゾリズマブ併用群/nab-パクリタキセル+プラセボ群ともに451例、うち41%(185例/184例)がPD-L1陽性であった。
・年齢中央値はアテゾリズマブ併用群が55歳、プラセボ群が56歳。(ネオ)アジュバント療法歴有は63%(284例/286例)、タキサン系薬剤は51%(231例/230例)、アントラサイクリン系薬剤は54%(243例/242例)であった。
・PFS中央値はITT解析対象でnab-パクリタキセル+アテゾリズマブ併用群7.2ヵ月に対しnab-パクリタキセル+プラセボ群5.5ヵ月(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.69~0.92、p=0.0025)。PD-L1陽性患者でアテゾリズマブ併用群7.5ヵ月に対し5.0ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.49~0.78、p<0.0001)といずれも併用群で有意に改善した。
・中間解析時点でのOS中央値はITT解析対象で21.3ヵ月 vs.17.6ヵ月(HR:0.84、95%CI:0.69~1.02、p=0.0840)。PD-L1陽性患者で25.0ヵ月 vs. 15.5ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.45~0.86)であった。
・ORRはITT解析対象で56% vs.46%、PD-L1陽性患者で59% vs.43%。完全奏効率はアテゾリズマブ併用群で高く、ITT解析対象で7% vs.2%、PD-L1陽性患者で10% vs.1%であった。
・DOR中央値はITT解析対象で7.4ヵ月 vs. 5.6ヵ月、PD-L1陽性患者で8.5ヵ月 vs. 5.5ヵ月であった。
・安全性プロファイル(452例/438例が解析対象)について、Grade 3 以上の有害事象で多くみられたのは好中球減少症(両群とも8%)、好中球数減少(5%/3%)、末梢神経障害(6%/3%)、倦怠感(4%/3%)、貧血(両群とも3%)であった。

 オランダ・Netherlands Cancer InstituteのMarleen Kok氏は本結果について、「PFSのベネフィットは比較的小さく約2~3ヵ月であったが、PD-L1陽性患者におけるOSを約10ヵ月延長している点が印象的である。抗PD-(L)1抗体とどの化学療法の組み合わせが最適かについて多くの臨床試験が進行中であり、本結果はその疑問に答えを出すのに役立つだろう」と話している。

(ケアネット 遊佐 なつみ)