頭部外傷の一番の予後予測因子は中脳周囲槽の所見の有無/脳神経外科学会

提供元:ケアネット

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公開日:2018/10/24

 

 頭部外傷の一番の予後予測因子は、中脳周囲槽の所見の有無である―。千葉大学脳神経外科の本島 卓幸氏らは、頭部外傷データバンク2015のデータを使用して、機械学習を用いた解析を行い、このような結果を導き出した。10月10~12日に仙台市で開催された日本脳神経外科学会で発表した。

 頭部外傷データバンク2015には、2015年4月~2016年3月までの期間で33施設が参加。本研究では、その中から来院時グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)が8点以下、もしくは脳外科手術を行った患者について調査した。登録された症例は1,345例で、データ不備を除いた534例を解析。生存か死亡の2群の予後予測因子を機械学習で分析した。

 本島氏らが用いた分析方法は、通常のロジスティクス回帰分析と「決定木」と呼ばれる機械学習の手法。決定木は、条件分岐によってグループがなるべく同じ属性で構成されるように分割して分類していくもので、直感的で理解しやすい半面、適切なパラメータを与えないと過学習となってしまうという欠点があるという。

 分析の結果、ロジスティック回帰でも決定木でも、p<0.05の説明変数は、中脳周囲槽の有無、Dダイマー値、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、年齢の4項目だった。なお、ICPモニターの有無、血小板数は、単独では有意差がなかったが、中脳周囲槽に所見があった場合に、重要な予後因子になることが決定木分析で明らかになった。

 決定木分析では、連続変数であれば、感度・特異度がもっとも高いカットオフ値を算出することができる。それらは、Dダイマーが66.73ng/mL、APTTが39.5秒、年齢が76.5歳だった。

 本研究でのaccuracy score(正答率)は、ロジスティック回帰で80.3%、決定木で81.0%といずれも高い値となった。「分析手法にはそれぞれ特徴があり、さまざまなアルゴリズムを用いることで、予後を予測するうえでより精度の高い特徴量を今後も探っていきたい」と本島氏は話している。

(ケアネット 風間 浩)