製薬企業は臨床研究法にどんな対応を考えているのか

提供元:ケアネット

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公開日:2018/10/26

 

 2018年9月29日に第9回日本製薬医学会年次大会が開催され、臨床研究法に対する製薬業界の現状と今後のあり方に対する調査結果について、日本製薬医学会メディカルアフェアーズ(MA)部会タスクフォースチームが報告した。

臨床研究の概要と結果報告
[目的]日本における製薬業界が実施する臨床研究の現状を理解し、製薬業界の動向を把握するため
[対象企業]2018年2月時点で日本製薬医学会学会員が所属していた企業
[調査期間]2018年2~3月
[方法]研究区分を、1)研究者主導臨床研究、2)企業主導(委託型)臨床研究、3)共同臨床研究(企業もしくは研究者発案型)とし、各定義に準じ回答を得た。

 調査結果は以下のとおり。

・回答企業は全33社(内資:15社、外資:18社)であった。
・臨床試験/研究の担当部門の内訳において、治験や製造販売後臨床試験(GVP/GPSP省令に基づく)は臨床開発部門、製造販売後調査(GPSP省令に基づく)はファーマコビジランス(PV)部門、非介入研究(観察研究など)と研究者主導臨床研究はMA部門において行う企業が多かった。
・今後の臨床試験/研究の担当部門の内訳において、情報創出の中心となる非介入研究および研究者主導臨床研究はMA部門、製造販売後調査はPV部門が主に担当すると回答した企業が多かった。
・今後、企業が望ましいと考えている臨床研究形態は、研究者主導臨床研究が91%(30社/33社)と最も多く、企業発案型や企業主導(委託型)臨床研究は50%を割っていた。
・臨床研究に関する社内手順において、資金提供に関する手順書は、回答したすべての企業で整備されていた。一方、実施に関する手順書について、15%(5社/33社)では社内手順がないと回答した。
・それぞれの臨床研究に対し、営業部門の関与は、ほぼすべての企業で「不可」となっていた。
・企業は法の施行に向けて、「臨床研究法及び臨床研究に関する社内教育の強化」、「標準業務手順書等の改定」に最も注力を注いて準備を行なっていた。
・研究者主導臨床研究に関する倫理指針の遵守は、76%(25社/33社)が確認し、「契約書に倫理指針の遵守義務を明記」する方法が最も多かった。
・特定臨床研究における臨床研究法の遵守は、64%(21社/33社)が確認予定であると回答し、その方法は「契約書に倫理指針の遵守義務を明記」が最も多かった。
・特定臨床研究に関する社内業務手順書の作成や整備を担う部門は、88%(29社/33社)がMA部門と回答した。
・企業が資金提供する場合の研究者主導臨床研究において、33社中1社を除くすべての会社が、研究者に有害事象報告義務を負わせると回答した。また、臨床研究法施行後も32社中1社を除き、同様の検討をしていると回答した(未回答1社)。
・研究者主導臨床研究のweb等による公募を実施しているのは、66%(21社/32社)であった(未回答1社)。
・研究者主導臨床研究の事前準備に対する資金提供の有無については、回答した29社のうち19社(66%)が提供を考えていた(未回答4社)。

 このような結果を踏まえ、MA部会タスクフォースチームは、「臨床研究は治験ではないことを理解し参加する」、「GCPパスポートという制度を研究に関わる医師だけではなく、事務局の方々にも受験してもらいたい」などを訴求した。また、特定臨床研究を回避するために観察研究が増える可能性について懸念を示した。

 今回実施したサーベイは臨床研究法が施行される前のものであり、今後、臨床研究法施行後のサーベイを2019~20年に実施し、両者の比較検討を行う予定である。

■参考
厚生労働省:臨床研究法について
一般社団法人 日本臨床試験学会

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(ケアネット 土井 舞子)