医療一般|page:3

通院費増で遺伝子変異に関連した治験への参加率が低下、制度拡充が必要/国立がん研究センター

 がんの臨床試験(治験)では、地域の医療機関が参加条件に該当した患者を治験実施施設に紹介することが一般的だ。患者は自宅から離れた治験実施施設に通わねばならないケースも多く、時間的・経済的負担が生じる。国立がん研究センター中央病院 先端医療科の上原 悠治氏、小山 隆文氏らは、施設までの通院費と治験の参加可能性が関連するかを検討する後ろ向きコホート研究を行った。  2020~22年に、がん遺伝子パネル検査後に国立がん研究センター中央病院に治験目的で紹介された進行固形腫瘍患者1,127例を対象に、通院費と治験参加状況の関連を調査した。主要評価項目は遺伝子変異に関連した治験への参加、副次評価項目は遺伝子変異とは関連しない治験への参加だった。多変量ロジスティック回帰分析により、移動費用と治験参加率との関連を評価した。本研究の結果はESMO Real World Data and Digital Oncology誌オンライン版2025年2月25日号に掲載された。

双極症における片頭痛と関連する臨床的特徴

 双極症患者は、併存疾患を有していることが多く、片頭痛は最も一般的な併存疾患の1つであるといわれている。双極症における片頭痛の有病率に関する研究は増加しているが、関連する臨床的特徴、併存疾患、治療法は、いまだ十分に調査されておらず、一貫性も認められていない。フランス・ University of Clermont AuvergneのLudovic Samalin氏らは、成人双極症患者の大規模コホートを用いて、片頭痛に関連する臨床的特徴および併存疾患について、調査を行った。Journal of Affective Disorders誌2025年6月15日号の報告。  対象は、FondaMental Advanced Centers of Expertiseに通院している双極症外来患者4,348例。社会人口統計学的および臨床的データは、標準化された手法を用いて収集した。

臓器の生物学的老化の加速は疾患リスクに影響する

 臓器の生物学的年齢(臓器年齢)は人によって異なり、臓器の老化の加速により、その臓器だけでなく、他の臓器に関連した疾患のリスクも予測できる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のMika Kivimaki氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Digital Health」3月号に掲載された。  Kivimaki氏らは、特定の臓器年齢の加速は、1)その臓器の疾患リスクを高めるのか、2)他の臓器に関連する加齢関連疾患や、それらの疾患の同時発症のリスクも高めるのか、を検討した。対象は、35年以上にわたり1万人以上の英国成人を追跡したホワイトホールII研究のデータから抽出した、45〜69歳の6,235人とした。対象者の血漿プロテオームの解析により9つの臓器(心臓、血管、肝臓、免疫系、膵臓、腎臓、肺、腸、脳)の年齢を推定し、同年代の人の臓器年齢との差を算出した。その後、対象者を平均19.8年間追跡し、45種類の加齢関連疾患とマルチモビディティ(多疾患併存)の発症について調査した。

慢性期心不全患者への水分制限は不要!?(FRESH-UP)/ACC

 長らく議論されてきた心不全(HF)患者に対する水分制限に関するFRESH-UP試験の結果が、米国心臓学会議(ACC2025、3月29~31日)のScientific Sessionsで発表され、慢性期HF患者への水分制限はメリットが見いだせない可能性が示唆された。本研究は、Nature Medicine誌2025年3月30日号に同時掲載された。  なお、3月28日に発刊された日本循環器学会の『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』のCQ3「心不全患者における水分制限を推奨すべきか?」には、“代償期の心不全における1日水分摂取量1~1.5Lを目標とした水分制限を弱く推奨する(エビデンスレベルA[弱]、p.209)”と示された一方で、“FRESH-UP試験やそのほかの研究結果が公表された際には再検討が必要”とされていた。

セフトリアキソンで腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症を治療できるか

 セフトリアキソン(CTRX)は尿路感染症における選択薬の1つであるが、他のβ-ラクタム系抗菌薬と比較して尿中排泄率が低いという欠点がある。わが国では2023年にセフォチアム(CTM)が不足したことから、尿路感染症に対するCTRXの需要が高まっている。今回、愛知医科大学の柴田 祐一氏らが、腎盂腎炎を伴う腸内細菌目細菌菌血症に対するCTRXと他のβ-ラクタム系抗菌薬の有効性を比較したところ、30日全死亡率は同様であった。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2025年4月9日号に掲載。

日本の男性乳がんの生存率、女性乳がんと比較~12府県のがん登録データ

 男性乳がんと女性乳がんの予後を比較した研究の結果は一貫しておらず、わが国において男性乳がんと女性乳がんの予後を大規模集団で比較した研究はほとんどない。今回、愛知県がんセンターのDaisy Sibale Mojoo氏らが12府県のがん登録データを用いて検討した結果、男女の乳がんの純生存率が同程度であることが示された。Cancer Science誌オンライン版2025年3月3日号に掲載。

若年性認知症患者、過去30年間で2倍超

 若年性のアルツハイマー病やその他の認知症(EOAD)は、患者本人だけでなくその家族にも大きな負担をもたらす。しかし、EOADの世界的な負担は、これまで十分に調査されていなかった。中国・Jinan University First Affiliated HospitalのZenghui Zhang氏らは、1990〜2021年の世界の疾病負担(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors:GBD)2021研究のデータを用いて、EOADの世界、地域、各国の負担を評価するため、本研究を実施した。European Journal of Neurology誌2025年3月号の報告。  GBD2021のデータより、40〜64歳の成人データを抽出した。主要アウトカムは、EOADの年齢調整罹患率、発生率、死亡率、障害調整生存年(DALY)、21地域および204ヵ国における年平均変化率(AAPC)とした。

医師からのメッセージ、AIが作成しても患者の満足度は高い

 患者は通常、診療所から届いたメッセージの作成者が誰であるかを知らされなければ、それが人工知能(AI)によって書かれたものであっても気にしないことが新たな研究で明らかになった。この研究によると、AIにより書かれたメッセージと医師により書かれたメッセージを見せられた患者は、AIのメッセージを好む傾向にあったが、全体的な満足度はどちらも高かったという。米デューク大学医学部のAnand Chowdhury氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に3月11日掲載された。

喘息の検査には時間帯や季節が影響する

 喘息の診断に用いられる気道可逆性検査の精度は、実施する時間帯、季節により異なる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。研究グループは、定期的な喘息検査は午前中に行う方が信頼性の高い結果を得られる可能性があるとしている。英ロイヤル・パプワース病院NHS財団トラストのBen Knox-Brown氏らによるこの研究結果は、「Thorax」に3月11日掲載された。  典型的な喘息の検査は、2段階のプロセスで行われると研究グループは説明する。まず、患者はチューブを通してできるだけ深く息を吸い、次にできるだけ強く、速く息を吐くように指示される。患者の肺の中を出入りする息は、肺機能を測定する装置であるスパイロメーターにより測定される。次に、患者は即効性の気管支拡張薬を吸入してから、同じ呼吸テストを行う。2回目の結果が1回目よりも良好である場合、つまり気管支拡張薬反応性が認められた場合は、テスト前にすでに気道が狭くなっていたことを意味し、患者が喘息であることが示唆される。

フィネレノン、CKD有するHFmrEF/HFpEFに有効~3RCT統合解析(FINE-HEART)/日本循環器学会

 心不全患者のほぼ半数が慢性腎臓病(CKD)を合併している。心不全とCKDは、高血圧、肥満、糖尿病といった共通のリスク因子を持ち、とくに左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)患者ではその関連がより顕著である。レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)や交感神経系の活性化、炎症、内皮機能障害、線維化、酸化ストレスといった共通の病態生理学的経路を有する。したがって、心不全患者、とくにHFpEF患者において、腎保護が治療成功の鍵となっている。

65歳未満の市中肺炎、GL推奨の短期治療の実施率~日本人約2万5千例の解析

 肺炎診療ガイドライン2024では、市中肺炎治療において、初期治療が有効な場合には1週間以内の短期抗菌薬治療を実施することが弱く推奨されている。しかし、その実施率は高くないことが示された。酒井 幹康氏(名城大学/豊田厚生病院)らの研究グループが、65歳未満の成人市中肺炎における短期治療の実施状況について、大規模レセプトデータベースを用いて検討した結果をJournal of Infection and Chemotherapy誌2025年5月号で報告した。

StageII/IIIのHR+HER2-乳がんの術後内分泌療法後、リアルワールドでの再発リスクと治療成績

 術後内分泌療法を受けたStageII/IIIのHR+HER2-早期乳がん患者における再発リスクをリアルワールドで検討した米国・Sarah Cannon Research InstituteのJoyce O'Shaughnessy氏らの後ろ向き研究の結果、リンパ節転移陰性患者も含め、再発リスクが依然として高いままであることが示された。Breast誌2025年6月号に掲載。

強制的なランニングがストレスや抑うつ症状に及ぼす影響〜動物実験データ

 High mobility group box 1(HMGB-1)は主に有核細胞の核内に発現しているタンパクで、炎症性刺激時または細胞死に際して核内から細胞外に放出され、それが炎症応答を誘導し、敗血症や免疫疾患などの病態を増悪することが知られている。HMGB-1により媒介される炎症反応は、うつ病の病態生理学的メカニズムにおいて重要な役割を果たすと考えられる。Qian Zhong氏らは、海馬におけるHMGB-1の影響を評価し、うつ病の慢性予測不能軽度ストレス(CUMS)マウスモデルに対する強制的なランニング(FR)の抗うつ作用を調査した。Neuropsychobiology誌オンライン版2025年3月11日号の報告。

新型コロナパンデミックが園児の発達に影響

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックは、園児の発達をさまざまな面で遅らせているとする研究結果が報告された。パンデミック発生後(2021〜2023年)の園児は、パンデミック発生前(2018〜2020年)の園児と比べて、言語・認知発達、社会的コンピテンス、コミュニケーション能力、一般知識の平均スコアが有意に低いことが明らかになったという。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院社会福祉学分野のJudith Perrigo氏らによるこの研究結果は、「JAMA Pediatrics」に3月10日掲載された。

高齢者の不眠症に最も効果的な運動は?

 高齢者の不眠症の改善に最も効果的な運動は、レジスタンストレーニング(筋トレ)であるとする論文が発表された。ただし、筋トレだけでなく、有酸素運動などの有効性も確認されたという。マヒドン大学ラマティボディ病院(タイ)のKittiphon Nagaviroj氏らによる研究の結果であり、詳細は「Family Medicine and Community Health」に3月4日掲載された。  加齢とともに睡眠の質が低下する。高齢者の12~20%が不眠症に悩まされているという報告もある。不眠症はうつ病や不安症、その他の精神疾患と関連のあることが明らかになっており、さらにメタボリックシンドロームや高血圧、心臓病などの身体疾患との関連も示されている。

食道がんリスクが平均赤血球容積でわかる?

 健康診断などでよく見る平均赤血球容積(MCV)は貧血の種類を判別する指標だが、食道がんの予測因子としても使えるようになるかもしれない。静岡県立総合病院消化器外科の佐藤真輔氏、静岡社会健康医学大学院大学の菅原照氏らの研究によるもので、食道がんの発症リスクが高血圧の既往や生活習慣などとともにMCVでも予測できる可能性があるという。研究の詳細は「PLOS One」に2月11日掲載された。  食道がんは予後不良のがんであり、2020年には世界で54万人が食道がんで死亡している。症例の多くは扁平上皮がんであり、日本や中国を含む東アジアでの発症率が特に高くなっている。食道の扁平上皮がんのリスク因子は飲酒と喫煙であることが報告されている。

非小細胞肺がん、肺がんコンパクトパネルのリアルワールドデータ/Anticancer Res

 非小細胞肺がん(NSCLC)の分子プロファイリングに基づく個別化治療戦略は、NSCLC患者の予後を改善するために不可欠である。肺がんコンパクトパネル(LCCP)は、組織および細胞診検体からNSCLCの遺伝子変異を検出するマルチフレックスコンパニオン診断キットである。しかし、その実臨床における成績について大規模な検証がなされていなかった。そのようななか、近畿中央呼吸器センターの谷口 善彦氏が日本でのリアルワールドデータをAnticancer Research誌2025年4月号で発表した。

女性の体型は膣内の微生物叢で変わるか/北里大

 腸内の微生物叢がさまざまな疾患などに関連することが、近年の研究で判明している。では、女性の膣内の微生物叢は、健康な女性では、その体型に関連するのであろうか。この課題に対し、北里大学薬学部の伊藤 雅洋氏らの研究グループは、日本人の健康な女性24人の膣液を採取、分析し、菌種を特定するとともにBMIが生菌総数および膣内pHに影響を及ぼすことを明らかにした。この結果は、Frontiers in Cellular and Infection Microbiology誌2025年2月4日号に公開された。

ワインによる各脂質レベルへの影響~メタ解析

 ワイン摂取が脂質プロファイルに及ぼす影響について、これまで脂質をトリグリセライド、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、フィブリノゲンに分けてメタ解析を行った研究はなかった。今回、スペイン・University of Castilla-La ManchaのMaribel Luceron-Lucas-Torres氏らが系統的レビューとメタ解析を実施した結果、赤ワインによるLDLコレステロール減少効果が示された。The Journal of Nutrition, Health and Aging誌2025年6月号に掲載。  本研究では、MEDLINE(PubMed)、Scopus、Cochrane、Web of Scienceのデータベースを調べ、系統的レビューとメタ解析を行った。

乳がん患者と医師の間に治験情報に関する認識ギャップ/ケアネット・イシュラン共同調査

 ケアネットとイシュランが共同で実施した、乳がん患者(134人)と乳がん治療に携わる乳腺外科医(62人)を対象にした「治験に関する意識調査(インターネット調査)」の結果、患者側は医師からの治験の提案を期待している一方で、医師は日本国内の治験情報を十分に入手できていないと認識していることが明らかになった。患者の約6割が自身の主治医が国内の治験情報をよく知っていると思うと回答したのに対し、治験情報をよく知っていると回答した医師は1割未満にとどまった。