医療一般|page:1

統合失調症の陰性症状に有効な運動介入は〜RCTネットワークメタ解析

 統合失調症の陰性症状は、抗精神病薬への治療反応性が低く、生活の質を著しく低下させる。統合失調症に対する運動介入は、非薬物療法的な補助的戦略となりうる可能性があるが、異なる種類の運動の相対的な有効性は依然として不明である。中国・Hunan Applied Technology UniversityのZixia Wang氏らは、成人統合失調症患者における陰性症状の改善に対する有酸素運動(AE)、レジスタンス運動(RE)、有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせた運動(AE+RE)、心身運動、ヨガの有効性を比較するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Psychiatry Research誌オンライン版2025年8月7日号の報告。

朝食抜きがうつ病リスクに及ぼす影響〜メタ解析

 うつ病は世界的に重要な公衆衛生上の問題であり、うつ病の発症には朝食習慣が関連している可能性がある。中国・成都中医薬大学のJunwen Tan氏らは、朝食とうつ病の相関関係を分析するため、先行研究のメタアナリシスを実施し、朝食抜きとうつ病リスクとの関連性を包括的に評価し、異質性の潜在的な因子を調査した。Frontiers in Psychiatry誌2025年8月5日号の報告。  2024年9月1日までに英語で公表された観察研究を、PubMed、Embase、Web of Scienceのデータベースより検索した。選択された研究のデータ解析は、ニューカッスル・オタワ尺度(NOS)を用いて評価した。PRISMA、Prospero Registration Agreementのガイドラインに従い実施した。混合効果モデルは、最大調整推定値を組み合わせ、I2統計量を用いて異質性を評価した。感度分析により分析の堅牢性を検証し、出版バイアスを評価した。

音楽は血圧の調節に役立つ?

 英語では「Music hath charms to soothe the savage breast(音楽には怒りを鎮める力がある)」というフレーズがあるが、音楽は心臓の健康状態にも同様の効果をもたらし得るようだ。新たな小規模研究で、血圧が音楽のパターンに「同期」する可能性のあることが明らかになった。この研究を実施した、英キングス・カレッジ・ロンドン工学教授でピアニストでもあるElaine Chew氏らは、「このことは、身体の血圧を調節する能力である圧受容体反射感受性を高める助けになるかもしれない」との見方を示している。この研究結果は欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2025、8月29日~9月1日、スペイン・マドリード)で発表された。

脂肪分の多い食事が好中球性喘息の一因か

 脂肪分の多い食べ物は、子どもの喘息の一因となる可能性があるようだ。特定の食品に含まれる脂肪が、微生物や細菌のタンパク質によって引き起こされる非アレルギー性の喘息である好中球性喘息に関連していることが、新たな研究で示された。米フィラデルフィア小児病院のDavid Hill氏らによるこの研究結果は、「Science Translational Medicine」に8月27日掲載された。Hill氏らによると、好中球性喘息はアレルギー性喘息よりも治療が難しく、入院が必要になるほど重篤な症状が引き起こされる可能性がアレルギー性喘息よりも高いという。

赤肉の摂取は腹部大動脈瘤の発症につながる?

 赤肉を大量に摂取すると、致死的となることもある腹部大動脈瘤(AAA)の発症リスクが高まる可能性があるようだ。赤肉や他の動物性食品に含まれる成分は、腸内細菌によって分解されたのち、肝臓で酸化されてTMAO(トリメチルアミンN-オキシド)となり、血液中に蓄積する。新たな研究で、血中のTMAOレベルが高い人ほどAAAの発症リスクが高いことが示された。米クリーブランド・クリニック血管医学部門長のScott Cameron氏らによるこの研究結果は、「JAMA Cardiology」に8月20日掲載された。  AAAは腹部の最も太い動脈(腹部大動脈)に瘤のような膨らみが生じる病態である。通常、大動脈の壁は、心臓から送り出される血液の圧力に耐えられる程度に強固である。しかし、動脈硬化などにより部分的に血管壁が弱くなると、そこに膨らみが生じる。このような大動脈瘤は、大きくなるにつれて破裂のリスクが高まり、破裂が病院外で発生した場合には、80%のケースで致死的になるという。

座席位置で変わる生存率、運転席は重症外傷リスクが最大に

 自動車の座席位置によって生存率、外傷リスクはどう変わるのか?日本の地域中核病院で20年にわたり収集された交通事故患者のデータを解析した研究により、座席位置が死亡率や外傷の重症度と関連することが示された。特に運転席の乗員は後部座席の乗員に比べて院内死亡や重症外傷のリスクが高かったという。研究は神戸大学大学院医学研究科外科系講座災害・救急医学分野の鵜澤佑氏、大野雄康氏らによるもので、詳細は「BMC Emergency Medicine」に7月30日掲載された。  交通事故は社会に大きな経済的負担を及ぼす公衆衛生上の課題である。世界保健機構(WHO)によると、2023年には約119万人が交通事故で死亡したと報告されている。自動車事故に巻き込まれた負傷者の生存率や転帰を改善するためには、死亡率や解剖学的重症度に影響を与える因子を明らかにすることが極めて重要である。中でも、運転席、助手席、後部座席に分類される座席位置は交通事故による死亡の重要な要因と考えられている。しかしながら、この座席位置と死亡率の関連を検証した先行研究では矛盾する結果も報告されており、依然としてその関係は明確ではない。そのような背景から、著者らは後部座席の位置が死亡率および解剖学的重症度の低下と関連しているという仮説を立て、国内の地域中核病院のデータベースを用いた後ろ向きコホート研究を実施した。

診療に難渋する糖尿病性神経障害の診療マニュアルが登場/糖尿病学会

 糖尿病の合併症の1つに糖尿病性神経障害がある。この疾患の放置は、下肢の切断など重篤な障害を起こし、患者のQOLに多大な影響を及ぼす。日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎氏)は、この糖尿病性神経障害について『糖尿病性神経障害の評価・診断マニュアル』を作成し、9月16日に同学会のホームページで公開した。  このマニュアルでは、日常臨床でしばしば遭遇するものの、評価や診断が比較的難しく煩雑と考えられている糖尿病性神経障害について、実臨床に即した評価・診断法を整理し、記載している。

患者報告アウトカムはがん患者の独立した予後予測因子~メタ解析

 がん患者4万4,030例を対象とした69件のランダム化比較試験を統合したシステマティックレビューとメタ解析により、ベースライン時の全般的健康状態・QOLスコア、身体機能、役割機能(role functioning)が良好な患者ほど予後が良好であった一方、悪心・嘔吐、疼痛、疲労などの症状が強い患者ほど予後が不良であったことが、カナダ・トロント大学のRyan S. Huang氏らによって明らかになった。JAMA Oncology誌オンライン版2025年9月11日号掲載の報告。  これまで、症状や生活の質などの患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcome:PRO)と全生存(OS)との関連は報告されているが、特定のPROドメインが予後予測因子となり得るかどうかは不明であった。そこで研究グループは、がん患者におけるベースライン時のPROとOSとの関連性を評価し、さまざまなPROドメインの予後予測的意義を定量化するために、システマティックレビューとメタ解析を実施した。

肺高血圧症へのソタテルセプト、中リスク以上なら追加検討を/MSD

 肺動脈性肺高血圧症(PAH)において、肺血管リモデリング(細胞増殖)抑制を標的とする世界初のアクチビンシグナル伝達阻害薬(ASI)ソタテルセプト(商品名:エアウィン)が2025年8月18日に発売された。この疾患領域については2025年3月に診療ガイドラインが改訂されており、ソタテルセプトは推奨表25(p.91)や治療アルゴリズム(p.92、図18)にも掲載され、4系統目の薬剤としての期待が記されている。9月2日には発売を記念したMSDメディアセミナーが開催され、福本 義弘氏(久留米大学医学部内科学講座 心臓・血管内科部門 主任教授)が「肺動脈性高血圧症(PAH)治療 新規作用機序の新薬『エアウィン』への期待」と題し、PAHの現状や新薬の日本人における治療効果について解説した。

ピロリ除菌は全年齢層で有効、国際的なコンセンサス発表/Gut

 台湾・台北で行われた「Taipei Global Consensus II」において、Helicobacter pylori(H. pylori)感染の検査・除菌による胃がん予防戦略に関する国際的な合意文書が公表された。日本を含む12ヵ国・地域(台湾、中国、香港、韓国、日本、タイ、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ドイツ、フランス、オーストラリア、米国)の32人の専門家がGRADEシステムを用いてエビデンスを評価し、28のステートメントで80%以上の合意が得られた。この内容はGut誌オンライン版2025年9月5日号に掲載された。

未就学児へのADHD治療薬処方の多くは時期尚早

 米国小児科学会(AAP)は、注意欠如・多動症(ADHD)と診断された未就学児の治療に関する専門家のコンセンサスとして、「薬の処方に先立ち6カ月間の行動療法を実施すること」を明文化している。それにもかかわらず、米国では未就学児のADHD診断例においてこのガイドラインが遵守されていたケースはわずか14.1%であることが新たな研究で示された。米スタンフォード大学医学部小児科分野のYair Bannett氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に8月29日掲載された。  Bannett氏は、「多くの未就学児が、ADHDの診断後ほどなくして薬を処方されていることが分かった。これは懸念すべきことだ。なぜなら、ADHDの治療は、まずは行動療法から始めるのが有益であることが明らかにされているからだ。そうすることで、子どもだけでなく家族にも大きなプラスの影響がもたらされる」と話している。

フレマネズマブ24ヵ月投与中止後の片頭痛悪化と投与再開後の治療反応

 ギリシャ・Agios Andreas General Hospital of PatrasのAndreas A. Argyriou氏らは、フレマネズマブで治療反応が認められた片頭痛患者における2年間投与後の治療中止の影響、片頭痛悪化後およびフレマネズマブ治療再開後の治療反応の違いを評価した。European Journal of Neurology誌2025年8月号の報告。  本研究は、Greek Research Alliance for Studying headache and Pain(GRASP)研究グループによるプロスペクティブ多施設共同リアルワールド試験である。フレマネズマブの24ヵ月投与を完了後に休薬し、その後片頭痛悪化に伴いフレマネズマブを再開した高頻度エピソード性片頭痛(HFEM)または慢性片頭痛(CM)患者149例を解析対象とした。1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD/MHD)およびその他の有効性における縦断的な変化を評価するため、ベースライン(T0)、3ヵ月目(T1)、24ヵ月目(T2)、治療休止期間(T3)、フレマネズマブ再開後3ヵ月目(T4)に面接調査を行った。主要評価項目は、T4における50%以上および75%以上の奏効率をT3とT2間での比較とした。

ブロッコリー・キャベツなどが大腸がん予防に/メタ解析

 これまでに報告された疫学研究によれば、食事は大腸がんリスクに寄与する主要な環境要因の1つとされている。とくにキャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツなどのアブラナ科の野菜はポリフェノール、食物繊維、ビタミンCなどを豊富に含み、これらががん予防に寄与する可能性が示されていた。中国・The Second Clinical Medical School of Inner Mongolia University for the NationalitiesのBo Lai氏らは、アブラナ科の食物摂取量と大腸がん発症の関連についてメタ解析した。BMC Gastroenterology誌2025年8月11日号掲載の報告。

人生における目的意識は脳の健康を守る?

 人生に目的意識を持つことは、充実感をもたらすだけでなく、認知症から脳を守る可能性もあることが新たな研究で明らかになった。人生に高い目的意識を持っている人では、目的意識の低い人と比べて軽度認知障害(MCI)または認知症を発症する可能性が28%低いことが示されたという。米カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)精神医学および行動科学教授のAliza Wingo氏らによるこの研究結果は、「The American Journal of Geriatric Psychiatry」10月号に掲載された。Wingo氏は、「われわれの研究結果は、目的意識を持つことが、年を重ねても脳の回復力を維持するのに役立つことを示している」と話している。

COVID-19罹患は喘息やアレルギー性鼻炎の発症と関連

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患により、喘息、アレルギー性鼻炎、長期にわたる慢性副鼻腔炎の発症リスクが高まる可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。一方で、ワクチン接種により喘息と慢性副鼻腔炎のリスクは低下することも示された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のPhilip Curman氏らによるこの研究結果は、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」に8月12日掲載された。  Curman氏は、「ワクチン接種が感染そのものを防ぐだけでなく、特定の呼吸器合併症に対しても優れた予防効果をもたらす可能性のあることが興味深い」と同研究所のニュースリリースの中で述べている。

隠れた脂肪の蓄積が心臓の老化を加速させる

 腸の周りや肝臓、筋肉などに溜まった脂肪が心臓の老化を速めるとする、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)のDeclan O’Regan氏らの研究結果が、「European Heart Journal」に8月22日掲載された。異所性脂肪と呼ばれるそれらの脂肪の蓄積は体型からは判別しにくく、たとえ体重は健康的とされる範囲であっても、そのような脂肪が蓄積していることがあるという。一方、全身の脂肪蓄積の分布とその影響には性差があり、論文の上席著者であるO’Regan氏は、「ある種の脂肪、特に女性の腰や太ももの周りの脂肪は、老化を抑制する可能性がある」と述べている。

タルラタマブ、サイトカイン放出症候群の警告追記/厚労省

 タルラタマブについて、サイトカイン放出症候群が生じて死亡に至った症例が3例(うち、医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例は1例)報告されていることを受け、厚生労働省は2025年9月17日に添付文書の改訂指示を発出し、「警告」の項に追記がなされた。  改訂後の警告の記載は以下のとおり(下線部が変更箇所)。 1. 警告 1.1 本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。

「また、にしない。まだ、にしない。」認知症早期対応のための合言葉を発表/リリー

 近年、認知症基本法の施行や、アルツハイマー病(AD)疾患修飾薬の登場などを背景として認知症診療は大きな転換期を迎え、かつての「症状が進行した後のケア」から、「MCI(軽度認知障害)を含む早期段階からの介入」へと、臨床現場の役割は大きく変化しつつある。こうした中、認知症月間である9月10日に、日本イーライリリーの主催で「『認知症に早めに対応するための合言葉』および『MCI/認知症当事者等への意識調査』に関するメディア発表会」が開催された。

医療費適正効果額は1千億円以上、あらためて確認したいバイオシミラーの有効性・安全性

 日本国内で承認されているバイオシミラーは19成分となり、医療費適正化の観点から活用が期待されるが、患者調査における認知度は依然として低く、医療者においても品質に対する理解が十分に定着していない。2025年8月29日、日本バイオシミラー協議会主催のメディアセミナーが開催され、原 文堅氏(愛知県がんセンター乳腺科部)、桜井 なおみ氏(一般社団法人CSRプロジェクト)が、専門医・患者それぞれの立場からみたバイオシミラーの役割について講演した。  化学合成医薬品の後発品であるジェネリック医薬品で有効成分の「同一性」の証明が求められるのに対し、分子構造が複雑なバイオ医薬品の後続品であるバイオシミラーでは同一性を示すことが困難なために、「同等性/同質性」を示すことが求められる。