医療一般|page:1

HER2+早期乳がん術前療法、de-escalation戦略3試験の統合解析結果/ASCO2025

 HER2陽性(HER2+)早期乳がんに対し、パクリタキセル+抗HER2抗体薬による12週の術前補助療法は有効性と忍容性に優れ、5年生存率も極めて良好であった。さらにStageI~IIの患者においては、ほかの臨床的・分子的因子を考慮したうえで、化学療法省略もしくは抗体薬物複合体(ADC)による治療を考慮できる可能性が示唆された。de-escalation戦略を検討したWest German Study Group(WSG)による3件の無作為化比較試験(ADAPT-HR-/HER2+試験、ADAPT-HR+/HER2+試験、TP-II試験)の統合解析結果を、ドイツ・ハンブルグ大学のMonika Karla Graeser氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。

救急外来におけるアルコール使用障害マネジメントの課題

 アルコール使用障害は、世界で1億人に影響を及ぼしているといわれており、救急外来への受診につながるケースも少なくない。近年の研究では、救急外来でnaltrexoneを投与することで飲酒行動を効果的に抑制することが示唆されているが、十分に活用されているとはいえない。米国・ペンシルベニア大学のIvan Covarrubias氏らは、救急外来においてnaltrexone投与開始を検討する際、臨床医と患者が直面する障壁およびnaltrexone投与を促進するための介入を特定するため、本研究を実施した。The Journal of Emergency Medicine誌オンライン版2025年1月23日号の報告。

子宮頸がん治療の新たな選択肢:チソツマブ ベドチンの臨床的意義/ジェンマブ

 進行・再発子宮頸がん2次治療の新たな選択肢として、ファースト・イン・クラスの抗体薬物複合体(ADC)チソツマブ ベドチン(商品名:テブダック)が注目される。  2025年6月、ジェンマブのプレスセミナーにて、国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科の米盛 勧氏が進行・再発子宮頸がんのアンメットニーズと治療戦略について講演した。  日本において新規に診断される子宮頸がん患者は年間約1万例、近年でも罹患数は微増している。子宮頸がんは早期では比較的予後良好である。5年生存率はI期で9割超、II期でも7割を超える。その一方、進行期では予後不良でStageIIIの5年生存率は5割強、遠隔転移のあるStgeIVBでは3割を切る。

軽症の免疫チェックポイント阻害薬関連肺臓炎へのステロイド、3週vs.6週(PROTECT)/ASCO2025

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が広く使用されるようになり、免疫関連有害事象(irAE)マネジメントの重要性が高まっている。irAEのなかで比較的多いものの1つに、薬剤性肺障害(免疫関連肺臓炎)がある。免疫関連肺臓炎の治療としては、一般的にステロイドが用いられるが、適切な治療期間は明らかになっていない。そこで、免疫関連肺臓炎に対するステロイド治療の期間を検討する無作為化比較試験「PROTECT試験」が本邦で実施された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、藤本 大智氏(兵庫医科大学)が本試験の結果を報告した。本試験において、ステロイド治療期間を3週間とする治療レジメンは、6週間の治療レジメンに対する非劣性が示されなかった。

行方不明の認知症患者が亡くなっている場所とは/警察庁

 認知症患者が一人歩き中に行方不明になると、事件・事故に巻き込まれるケースがあるため、家族などから行方不明者届(旧捜索願)が警察に出されることも多い。  警察庁は、6月5日に「令和6年における行方不明者届受理等の状況」を公表した。この中で、認知症による行方不明者数は令和6(2024)年で1万8,121人おり、平成27(2015)年の1万2,208人より緩やかに増加していることが判明した。  警察に届出のあった行方不明者数全体は8万2,563人(前年比7,581人減少)であり、男性5万2,502人(63.6%)、女性3万61人(36.4%)と男性の方が多かった。年代別では、10~20代の行方不明が多く、全体の約4割を占めていた。原因・動機では、疾病関係が2万3,663人で1番多く、家庭関係が1万2,466人、事業・仕事関係が6,722人と続いていた。

ミニストローク後に持続的な疲労感を経験する人は多い

 一過性脳虚血発作(TIA)を経験した人では、その後、最長で1年間にわたり疲労感が持続する可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。オールボー大学病院(デンマーク)のBoris Modrau氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に5月14日掲載された。  TIAでは、脳への血流が一時的に途絶えるが、本格的な脳卒中のように永久的な脳障害には至らない。このため、TIAはしばしば「ミニストローク」とも呼ばれる。Modrau氏は、「TIAを発症すると、顔面や腕の筋力低下や麻痺、言語不明瞭などの症状が現れることがあるが、通常は24時間以内に回復する。しかし、生活の質(QOL)の低下、思考障害、抑うつ、不安、疲労感などの問題となる症状が持続していることを報告する人もいる」と話す。

食道がんへの術後ニボルマブ、長期追跡でもベネフィット示す(CheckMate 577)/ASCO2025

 日本も参加するCheckMate 577試験は、術前化学放射線療法(CRT)+手術後に残存病理学的病変を有する食道がん/胃食道接合部がん(EC/GEJC)患者における、術後ニボルマブ投与の有用性をみた試験である。すでにプラセボと比較して無病生存期間(DFS)を有意に延長したことが報告されている(22.4ヵ月対11.0ヵ月、HR:0.69)。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、ベイラー大学医療センター(米国・ダラス)のRonan J. Kelly氏が、本試験の副次評価項目である全生存期間(OS)の最終解析結果およびDFSの長期追跡結果を報告した。

閉経前HR+乳がんの術後補助療法、EXE+OFSとTAM+OFSの15年追跡結果(SOFT/TEXT)/ASCO2025

 閉経前のHR+早期乳がんにおいて、術後補助内分泌療法+卵巣機能抑制(OFS)による再発抑制の持続および再発リスクが高い患者における全生存期間(OS)の改善が、SOFT試験とTEXT試験ですでに報告されている。今回、これらの試験の最終報告として、SOFT試験(追跡期間中央値:15年)およびSOFT試験とTEXT試験の統合解析(同:16年)の結果について、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのPrudence A. Francis氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。

統合失調症に対するコリン作動薬の有用性~RCTメタ解析

 統合失調症患者の3人に1人は、副作用や限られた有効性のため、従来の抗精神病薬による治療反応が不十分である。ムスカリン受容体とニコチン受容体を標的とし、統合失調症の病態生理に関連するコリン作動薬の機能不全を活用した、新たな治療法が注目されている。インド・All India Institute of Medical SciencesのAmiya Shaju氏らは、統合失調症に対するコリン作動薬の有効性および安全性を評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を実施した。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2025年5月2日号の報告。

「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」新薬5剤を含む治療アルゴリズムの考え方は

 近年新規薬剤の発売が相次ぐアトピー性皮膚炎について、2024年10月に3年ぶりの改訂版となる「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」が発表された。外用薬のホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬ジファミラスト、注射薬の抗IL-31受容体A抗体ネモリズマブおよび抗IL-13受容体抗体トラロキヌマブ、経口JAK阻害薬ウパダシチニブおよびアブロシチニブの5剤が、今版で新たに掲載されている。ガイドライン策定委員会メンバーである常深 祐一郎氏(埼玉医科大学皮膚科)に、新薬5剤を含めた治療アルゴリズムの考え方について話を聞いた。  前版である2021年版のガイドラインで、治療アルゴリズムの骨格が大きく変更された。全身療法(注射薬と経口薬)の位置付けについて、寛解維持療法の選択肢に一部が加えられたほか、使用対象がその前の2018年版アルゴリズムの「重症・最重症・難治性状態」から「中等症以上の難治状態」に変更されている。そして各段階で「寛解導入できたか」という問いが加えられ、そのyes/noに応じて治療のPDCAサイクルを回していく構成となっている。この背景には、使用できる薬剤が増えたことが何よりも大きいと常深氏は話し、寛解導入に持っていくためにPDCAサイクルを回し、これらの薬剤を活用し、必ず寛解導入すること(Treat to Target)が重要とした。

定期的な診察で心不全患者の全死亡リスクが低下

 心不全(HF)患者の5人に2人は、心不全の重症度にかかわりなく循環器専門医の診察を定期的に受けていないことが、新たな研究で明らかになった。この研究では、専門医の診察を年に1回受けているHF患者では翌年の死亡リスクが24%低下することも示されたという。ナンシー大学病院(フランス)臨床研究センターのGuillaume Baudry氏らによるこの研究結果は、「European Heart Journal」に5月18日掲載された。  HFとは、心臓のポンプ機能が低下し、体が必要とする酸素や栄養を十分に送り届けられない状態を指す。Baudry氏は、「通常、HFを治すことはできないが、適切な治療を行えば症状を何年もコントロールできることが多い」と欧州心臓学会(ESC)のニュースリリースの中で述べている。

果物やコーヒーが耳鳴りを減らす可能性

 果物、食物繊維、カフェイン、乳製品の摂取といった特定の食事因子が、耳鳴りの発生率低下と関連するというレビューが「BMJ Open」に3月18日掲載された。  成都中医薬大学附属医院(中国)のMengni Zhang氏らは、観察研究のシステマティックレビューとメタ解析を実施し、耳鳴り発現と日常の食習慣との関連を検討した。10件の後ろ向き研究が解析対象となり、そのうち8件がメタ解析に含まれた。  15の食事因子について評価した結果、果物、食物繊維、カフェイン、乳製品の摂取が耳鳴りの発生率と負の相関を示した(オッズ比はそれぞれ0.649、0.918、0.898、0.827)。感度解析により、この結果の頑健性が確認された。

非小細胞肺がん、術後アテゾリズマブの5年成績(IMpower010)/JCO

 切除後の非小細胞肺がん(NSCLC)患者における化学療法+アテゾリズマブ術後補助療法の5年追跡結果が発表され、ベストサポーティブケア(BSC)に対する無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)の改善が示された。DFSは最終解析、OSは2回目の中間解析の結果で、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年5月30日号での報告。

日本人高齢者の脳Aβ沈着に対するDHAの保護効果

 アルツハイマー病は、アミロイドベータ(Aβ)プラークの蓄積により引き起こされるが、そのメカニズムはいまだに解明されていない。オメガ3(ω3)脂肪酸、とくにドコサヘキサエン酸(DHA)には、保護作用があるといわれているが、Aβ蓄積との関係は、完全に解明されているとはいえない。米国・ピッツバーグ大学の関川 暁氏らは、ω3脂肪酸の摂取量が多いことで知られている日本人において、認知機能が正常な日本人高齢者を対象に画像診断の6〜9年前に測定した血清DHAおよびエイコサペンタエン酸(EPA)濃度が、脳Aβ沈着と逆相関を示すかを調査しました。PETに基づくAβ陽性と判定されたアルツハイマー病進行リスクの高い高齢者に焦点を当て、DHAが早期アミロイド病変を軽減する可能性を評価した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2025年5月8日号の報告。

早期TN乳がんの術前療法、SG+ペムブロリズマブでpCRが32%(NeoSTAR)/ASCO2025

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)への術前サシツズマブ ゴビテカン(SG)+ペムブロリズマブ併用療法を評価した初の試験である第II相NeoSTAR試験において、SG+ペムブロリズマブ 4サイクルによる病理学的完全奏効(pCR)率は32%であり、非アントラサイクリン系レジメンを用いた術前化学療法が追加された患者を含めると50%がpCRを達成した。米国・Massachusetts General Hospital Cancer CenterのRachel Occhiogrosso Abelman氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。  SGは転移TNBCおよびHR+HER2-転移乳がんに承認されており、ペムブロリズマブは早期TNBCおよびPD-L1陽性転移乳がんに承認されている。本試験のArm A1では、早期TNBCへのSG単剤療法4サイクルにより、30%のpCR率が得られたことが確認されている。今回は、Arm A2において早期TNBCへのSG+ペムブロリズマブ併用を評価した結果が報告された。

H. pylori検査と除菌後胃がん、知っておくべき7つのQ&A

 胃がんの罹患者・死亡者数は減少傾向にあるものの、依然として日本人の主要ながんであり、2022年の罹患数は約12万例、死亡数は約4万例と報告されている。胃がんはその大部分がHelicobacter pylori(H. pylori)感染に起因するとされ、H. pyloriの診断と除菌治療は胃がんの1次予防として極めて重要である。日本では2013年より陽性判定者の除菌治療が保険適用となり、広く行われるようになっている。そして、H. pylori感染診断・除菌治療が一般的になった今、H. pylori検査や胃がんを巡る新たな問題が生じているという。H. pylori研究の第一人者である大分大学・兒玉 雅明氏に、今医療者が知っておくべきポイントを聞いた。

帯状疱疹ワクチンは心臓の健康も守る

 帯状疱疹ワクチンが、高齢者の心臓の健康を守る可能性のあることが報告された。ワクチン接種者は心臓病のリスクが23%低く、これにはワクチンによる炎症抑制、血液凝固抑制が関与していると考えられるとのことだ。慶熙大学校(韓国)のDong Keon Yon氏らが、約130万人の医療データを解析して明らかにした結果であり、詳細は「European Heart Journal」に5月5日掲載された。ワクチンによる心保護効果は最大8年間続くという。  帯状疱疹は、以前に水痘に感染したことがある人に発症する。水痘の原因ウイルス(帯状疱疹のウイルスでもある)は、神経節の細胞の中に数十年間も潜伏し続け、ある時、再び活動し始めて帯状疱疹を引き起こし、痛みを伴う発疹や水疱を出現させる。「ワクチン接種を受けない場合、生涯で約30%の人が帯状疱疹を発症する可能性がある」とYon氏は解説する。そして、「帯状疱疹は発疹に加えて、心臓病のリスク上昇とも関連のあることが示唆されている。そのため、われわれは、ワクチン接種によって心臓病のリスクが低下するのではないかと考えた」と、研究背景を語っている。

GLP-1RAで飲酒量が3分の1に減る

 肥満症治療における減量目的でも処方されることのあるGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬(GLP-1RA)の使用によって、アルコール摂取量が大きく減少するとする研究結果が報告された。ダブリン大学(アイルランド)のCarel le Roux氏らの研究によるもので、「Diabetes, Obesity and Metabolism」に論文が1月2日掲載され、また欧州肥満学会議(ECO2025、5月11~14日、スペイン・マラガ)でも発表された。習慣的飲酒者では、GLP-1RA使用開始後約4カ月で飲酒量がほぼ3分の1に減少したという。

高リスク頭頸部がん、CRT+ニボルマブの術後補助療法が20年振りの新たな標準治療に(NIVOPOSTOP)/ASCO2025

 高リスクの局所進行(LA)頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)に対する術後の標準治療は、長らく補助療法としての化学放射線療法(CRT)であった。しかし、これらの治療にもかかわらず40%以上の患者で再発が認められ、より効果的な治療法が必要とされている。NIVOPOSTOP試験は、術後CRTにニボルマブを追加した群とCRT単独群を比較した試験である。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションにおいて、Le Centre hospitalier universitaire vaudois(スイス)のJean Bourhis氏が本試験の結果を発表した。

HRR関連遺伝子に病的バリアントを有するmCSPCへのニラパリブ+AAP、rPFS改善(AMPLITUDE)/ASCO2025

 相同組換え修復(HRR)関連遺伝子に病的バリアントを有する転移去勢感受性前立腺がん(mCSPC)患者において、PARP阻害薬ニラパリブ+AAP(アビラテロン+prednisone)併用療法は、プラセボ+AAP療法と比較して、画像上の無増悪生存期間(rPFS)を有意に改善した。英国・ロンドン大学のGerhardt Attard氏が、ヨーロッパ・北米など32ヵ国で実施された第III相AMPLITUDE試験の中間解析結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。