心・脳血管疾患の既往やNSAIDs使用はパーキンソン病リスクを高めるか?

提供元:ケアネット

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公開日:2026/08/12

 

 心・脳血管疾患の既往はパーキンソン病(PD)のリスク増加と関連することが示されているが、逆の因果関係による可能性が疑われていた。一方、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)はPDリスクを低減させると考えられてきたが、過去のエビデンスは一貫しておらず、背景にある血管疾患による交絡の可能性も懸念されていた。

 英国・University of OxfordのClare Wotton氏らは、女性約82万例を対象とした大規模前向きコホート研究「Million Women Study」のデータを用いて解析を行った。その結果、虚血性心疾患および脳血管疾患の既往はPD発症リスクの有意な上昇と関連しており、逆の因果関係だけでは説明できないことが示された。一方、NSAIDsの使用とPD発症リスクとの関連はみられなかった。本結果はAnnals of Clinical and Translational Neurology誌オンライン版2026年7月24日号に掲載された。

 本研究では、1996~2001年に募集された英国の「Million Women Study」のデータが用いられた。ベースライン時(中央値2001年)の質問票でNSAIDs(アスピリン、イブプロフェン)の過去4週間の大半における使用(定期的な使用)の有無に回答し、かつPDの既往がない女性81万9,575例を対象とした。ベースライン時の自己申告および入院記録から、虚血性心疾患および脳血管疾患の既往を特定した。主要評価項目は、PDの診断を伴う初回入院またはPDを原死因とする死亡とし、Cox比例ハザードモデルを用いて調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。なお、本研究における「逆の因果関係」とは、運動症状が顕在化する前のPD前駆期において、病態の初期発現として血管疾患が生じた可能性や、初期症状に反応してNSAIDsの使用状況が変化した可能性を指す。この逆の因果関係の影響を評価するため、ベースラインから10年未満と10年以上の追跡期間別にも解析を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象者81万9,575例において、平均18.2年(SD 4.3)の追跡期間中に、1万364例(1.3%)のPD発症が確認された。
・虚血性心疾患の既往がある人は、既往がない人と比較してPD発症リスクの有意な増加を示した(HR:1.45、95%CI:1.35~1.54)。
・脳血管疾患の既往がある人も同様に、PD発症リスクの有意な増加を示した(HR:1.51、95%CI:1.32~1.73)。
・これらの血管疾患とPD発症リスクの関連は、ベースラインから10年以上経過した期間においても依然として顕著であった(10年以上のHRは虚血性心疾患で1.39、脳血管疾患で1.35)。
・アスピリンの定期的な使用は、未調整モデルではPDリスク上昇と関連していたが(HR:1.20、95%CI:1.14~1.27)、血管疾患の既往で調整するとその関連はほぼ消失した(aHR:1.06、95%CI:1.00~1.13)。
・イブプロフェンの定期的な使用は、調整の前後にかかわらず、PD発症リスクとの関連を示さなかった(調整前HR:1.03、95%CI:0.96~1.10、aHR:1.04、95%CI:0.97~1.11)。

 著者らは、10年以上の追跡調査でも血管疾患がPD発症リスクの大幅な増加と関連していたことから、これらは単なる逆の因果関係だけでは説明できないと指摘している。背景として、ミトコンドリア機能障害、酸化ストレス、炎症の関与が示唆された。これらは血管疾患のリスクを高めるアテローム性動脈硬化症の発症・進行に寄与する一方で、PDの特徴であるレビー小体を形成するα-シヌクレインの凝集にも関与している可能性がある。また、アスピリンやイブプロフェンの使用はPD発症リスクと直接的な関連がないことも示された。

(ケアネット 古賀 公子)