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8月10日「ハートの日」には循環器病の予防に支援を/日本心臓財団ほか

 日本心臓財団、日本循環器協会、日本循環器学会、日本AED財団の諸団体は共催で、8月10日の「健康ハートの日」を前に、都内で循環器病に関するシンポジウムを開催した。日本心臓財団が、循環器病予防と健康を呼びかける「健康ハートの日」の活動を開始し40周年の節目を迎え、「循環器病予防の40年:過去・現在・未来」をテーマに、循環器病活動を振り返り、将来の20年に向けた新たな展望を議論した。

妄想性障害や急性精神病などの精神疾患と統合失調症や双極症との遺伝的関連性

 妄想性障害、急性精神病、特定不能精神病、統合失調感情障害の4つのまれな精神疾患における病因的な相互関係は、いまだに解明されていない。米国・バージニア・コモンウェルス大学のKenneth S. Kendler氏らは、妄想性障害、急性精神病、特定不能精神病、統合失調感情障害患者における統合失調症、双極症、うつ病の家族遺伝子リスクスコア(FGRS)レベルを評価し、これらの遺伝的関係を明らかにするためコホート研究を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2025年7月9日号の報告。  1950〜2000年にスウェーデン生まれの両親のもとスウェーデンで生まれた人を対象に、2018年までフォローアップを行った。国家レジストリーの診断コードに基づき診断した。統合失調症、双極症、うつ病患者の統合失調感情障害は、同居を考慮したうえ、第1〜5近親者より算出した。主要アウトカムは、妄想性障害、急性精神病、特定不能精神病、統合失調感情障害の診断とした。

「風邪のときのスープ」に効果はある?

 風邪症候群や咽頭炎、インフルエンザ様疾患などの急性気道感染症の症状を和らげるために、温かいスープを飲むと良いとされることがある。この伝統的な食事療法の有効性を検討することを目的に、英国・University of the West of ScotlandのSandra Lucas氏らが、システマティックレビューを実施した。その結果、スープの摂取は、急性気道感染症の症状緩和や炎症抑制をもたらす可能性が示唆された。本研究結果は、Nutrients誌2025年7月7日号で報告された。  本研究では、急性気道感染症に対するスープの効果を評価した研究を対象として、システマティックレビューを実施した。2024年2月までに公表された論文を対象に、MEDLINE、Embase、Scopus、CINAHL、CENTRAL、Cochrane Database of Systematic Reviewsなどを用いて文献を検索した。適格基準を満たした4件の無作為化比較試験(対象342例)を抽出し、メタ解析は行わずナラティブ統合を行った。解析対象となった研究で用いられたスープは、鶏肉ベースのスープに野菜やハーブを追加したものが主なものであった。評価項目は、症状重症度、罹病期間、炎症マーカーなどとした。

GLP-1RA処方が糖尿病患者の新生血管型加齢黄斑変性と関連

 糖尿病患者に対するGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の処方と、新生血管型加齢黄斑変性(nAMD)の発症リスクとの関連を示すデータが報告された。交絡因子調整後にもリスクが2倍以上高いという。トロント大学のReut Shor氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Ophthalmology」に6月5日掲載された。  この研究は、カナダのオンタリオ州の公的医療制度で収集されたデータを用いた後ろ向きコホート研究として実施された。組み込み基準は、糖尿病と診断後12カ月以上の追跡が可能な66歳以上の患者であり、除外基準はデータ欠落、およびGLP-1RAが処方された患者においてその期間が6カ月に満たない患者。

見落とされがちな高血圧の原因とは?

 ホルモン異常が原因で高血圧が生じる一般的な疾患について、多くの患者が医師に見逃されている可能性があるとして、専門家らが警鐘を鳴らしている。米国内分泌学会(ENDO)の専門家のグループがこのほど発表した臨床ガイドラインによると、循環器専門医の診察を受ける高血圧患者の最大30%、プライマリケア医の診察を受ける高血圧患者の最大14%が、「原発性アルドステロン症」と呼ばれる疾患を抱えている可能性があるにもかかわらず、その多くがこの疾患を見つけるための血液検査を受ける機会を一度も提供されていないという。このガイドラインは、「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism(JCEM)」に7月14日掲載された。

重度irAE後のICI再治療、名大実臨床データが安全性と有効性を示唆

 免疫チェックポイント阻害剤(ICI)はがん治療に革命をもたらしたが、重度の免疫関連有害事象(irAE)を引き起こす可能性がある。今回、irAE発現後にICIによる再治療を行った患者でも、良好な安全性プロファイルと有効性が示されたとする研究結果が報告された。研究は、名古屋大学医学部附属病院化学療法部の水野和幸氏、同大学医学部附属病院消化器内科の伊藤隆徳氏らによるもので、詳細は「The Oncologist」に6月14日掲載された。  抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体を含むこれらのICIは、単剤または併用療法として患者の予後を大きく改善してきた。ICIは抑制性シグナル伝達経路を阻害することで抗腫瘍免疫応答を高める一方、重度のirAEを引き起こす可能性がある。irAEは一般的に内分泌腺、肝臓、消化管、皮膚などに発生する。グレード3以上の重度の非内分泌irAEに対しては、現行のガイドラインに基づき、ICIの一時的または恒久的な中止が推奨される。このため、重度のirAE発症後のICI再治療は、効果と再発リスクのバランスが課題となる。過去の報告ではirAE再発率は約30%とされているが、患者背景や重症度の詳細が不十分だった。既存のメタ解析も、研究間の異質性やイベント報告の不備が課題とされている。こうした背景から、著者らは重度のirAE後のICI再治療の安全性と有効性を明らかにすることを目的に、ICI再治療後のirAE発生と患者の転帰に焦点を当てた後ろ向き解析を実施した。

モデルナのLP.8.1対応コロナワクチン、一変承認を取得

 モデルナ・ジャパンは8月5日付のプレスリリースにて、同社の新型コロナウイルスワクチン「スパイクバックス筋注シリンジ 12歳以上用」および「スパイクバックス筋注シリンジ 6ヵ月~11歳用」について、2025~26年秋冬シーズン向けのオミクロン株JN.1系統の変異株LP.8.1対応とする一部変更承認を、8月4日に厚生労働省より取得したことを発表した。6ヵ月~11歳用については、生後6ヵ月以上4歳以下を対象とした追加免疫に関する一部変更承認も7月29日に取得した。  これらの承認により、2025年10月から開始予定の定期接種の対象者だけでなく、生後6ヵ月以上のすべての世代で、LP.8.1対応の本ワクチンを接種することが可能となる。12歳以上用は定期接種開始前の9月中、6ヵ月~11歳用は10月に供給開始の予定。

日本人統合失調症患者における自殺企図の出現時期と重症度との関連

 岩手医科大学の伊藤 ひとみ氏らは、日本人統合失調症患者における自殺念慮の出現時期、自殺企図の重症度、これらに関連する因子の調査を行った。PCN Reports誌2025年7月6日号の報告。  対象は、2003〜21年に自殺企図のため救急外来を受診した統合失調症患者273例。自殺念慮の出現時期に基づき、同日群または同日前群のいずれかに分類した。受診時に観察された患者の人口統計学的特徴および精神症状に関するデータを収集した。また、自殺の動機および自殺企図手段に関するデータを分析し、自殺念慮の出現時期、自殺企図手段の重症度、関連因子との関係を検証した。

1日7,000歩で死亡リスクが半減!?

 ウォーキングが健康に良いことが知られているが、具体的な歩数についてはさまざまな報告があり、明確な目標値は定まっていない。そこで、オーストラリア・シドニー大学のDing Ding氏らの研究グループは、成人の1日の歩数と死亡や疾患の発症、健康アウトカムとの関連を検討することを目的として、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、1日7,000歩でも死亡リスクが低下し、心血管疾患や認知症などの疾患の発症リスクも低下することが示された。本研究結果は、Lancet Public Health誌2025年8月号で報告された。

食事パターンは慢性便秘リスクに影響

 食生活を変えることで中高年の慢性便秘リスクを軽減できることが、新たな研究で示された。検討した5つの食事パターンの中で便秘予防効果が最も高かったのは、地中海食とプラントベース食であることが示されたという。米マサチューセッツ総合病院のKyle Staller氏らによるこの研究の詳細は、「Gastroenterology」に7月2日掲載された。  Staller氏は、「慢性便秘は何百万人もの人に影響を与えており、患者の生活の質(QOL)に重大な影響を与える可能性がある。この研究結果は、年齢を重ねるにつれて、特定の健康的な食事が既知の心血管系への効果だけでなく腸にも効果をもたらす可能性があることを示唆している」と話している。

ガバペンチンは認知症の発症リスクを高める?

 発作、神経痛、むずむず脚症候群の治療に使用される薬剤のガバペンチンが、認知症の発症リスク増加と関連している可能性があるとする研究結果が発表された。ガバペンチンを6回以上処方された場合、認知症リスクが29%、軽度認知障害(MCI)リスクが85%増加する可能性が示されたという。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学のNafis Eghrari氏らによるこの研究の詳細は、「Regional Anesthesia & Pain Medicine」に7月10日掲載された。  研究グループによると、ガバペンチンはオピオイドほど中毒性がないため、慢性疼痛の治療薬としての人気が上昇の一途をたどっている。しかしその一方で、ガバペンチンには神経細胞間のコミュニケーションを抑制する作用があることから、ガバペンチンの使用が認知機能の低下を招く可能性があることに対する懸念も高まりつつあるという。

禁煙にはニコチンガムよりニコチン入り電子タバコ

 禁煙に際して、ニコチンを含んだガムや飴を用いるよりも、ニコチンを含む電子タバコの方が、効果が優れていることを示唆する研究結果が発表された。6カ月間での禁煙成功率に、約3倍の差があったという。ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)および国立薬物・アルコール研究センターのRyan Courtney氏らの研究の結果であり、詳細は「Annals of Internal Medicine」に7月15日掲載された。なお、研究者らは、長期的な禁煙継続率への影響は未確認であることを指摘している。  この研究は、公的年金等を受給している社会的弱者に該当する成人のうち、禁煙の意思がありながら毎日喫煙している1,045人を対象として、2021年3月~2022年12月に実施された。ランダムに1対1の割合で2群に分け、1群にはニコチン入りのガムや飴、他の1群にはメンソールやフルーツ風味のフレーバー付きニコチン入り電子タバコを、それぞれ8週間分支給。また、全員に対して5週間にわたり、禁煙サポートのためのテキストメッセージの自動配信を行った。

治療抵抗性うつ病に対する早期ブレクスピプラゾール補助療法

 うつ病治療では、患者の苦痛を最小限に抑えて、臨床的ベネフィットを最大化するために、可能な限り早い段階で適切な治療を行う必要がある。米国・Otsuka Pharmaceutical Development & Commercialization Inc.のShivani Kapadia氏らは、うつ病の早期および後期におけるブレクスピプラゾール併用療法の有効性および安全性を評価するため、ランダム化比較試験の事後解析を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2025年7月3日号の報告。  対象は、抗うつ薬治療で効果不十分な成人の治療抵抗性うつ病外来患者。ブレクスピプラゾール併用療法に関する3件の6週間ランダム化二重盲検プラセボ対照試験のデータを統合した。年齢中央値、診断時年齢、エピソード数、エピソード持続期間、過去に服用していた抗うつ薬数に基づき早期群および後期群に分類した。有効性はMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)総スコアの変化、安全性は治療中に発現した有害事象により評価した。

誤嚥性肺炎へのスルバクタム・アンピシリンvs.第3世代セファロスポリン~日本の大規模データ

 誤嚥性肺炎に対する抗菌薬として米国胸部学会/米国感染症学会(ATS/IDSA)の市中肺炎ガイドライン2019では、セフトリアキソン(CTRX)やセフォタキシム(CTX)などの第3世代セファロスポリンを推奨しており、膿胸や肺膿瘍が疑われない限り、スルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC)など嫌気性菌に有効な抗菌薬のルーチン投与は推奨されていない。今回、東京大学の谷口 順平氏らは全国DPCデータベースを用いて、誤嚥性肺炎の入院患者に対するこれらの単一抗菌薬治療の有効性を直接比較する大規模研究を実施した。その結果、SBT/ABPCが第3世代セファロスポリン(CTRXが主)より院内死亡率が低く、Clostridioides difficile(C. difficile)感染症の発生率が低いことが示された。Respiratory Medicine誌オンライン版2025年7月25日号に掲載。

小児用ワクチン中のアルミニウム塩は慢性疾患と関連しない

 120万人以上を対象とした新たな研究で、小児用ワクチンに含まれるアルミニウム塩と自閉症、喘息、自己免疫疾患などの長期的な健康問題との間に関連は認められなかったことが示された。アルミニウム塩は、幼児向け不活化ワクチンの効果を高めるためのアジュバントとして使用されている。スタテンス血清研究所(デンマーク)のAnders Hviid氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に7月15日掲載された。  アルミニウム塩はワクチンのアジュバントとして長年使われているものの、アルミニウム塩が慢性自己免疫疾患やアトピー性皮膚炎、アレルギー、神経発達障害のリスクを高めるのではないかとの懸念から、ワクチン懐疑論者の標的にもなっている。

バイオニック膝関節を用いた義足で下肢切断患者の動きが改善

 「より良く、より強く、より速く」。これはテレビドラマシリーズ『600万ドルの男(Six Million Dollar Man)』に登場するバイオニック・マンのキャッチフレーズだが、近い将来、足を膝上で切断した人にも同じ言葉が当てはまるようになるかもしれない。米マサチューセッツ工科大学(MIT)K. Lisa Yangバイオニクス・センター共同ディレクターのHugh Herr氏らが、オッセオインテグレーテッド・メカノニューロナル人工装具(OMP)と呼ばれるバイオニック膝関節を用いた義足(以下、バイオニック義足)によって切断患者の歩行速度が向上し、階段の昇降も楽になり、障害物をうまく避けられるようになったとする研究結果を、「Science」に7月10日発表した。

米国で肥満関連がんによる死亡が20年で3倍以上に

 米国では過去20年間で、肥満に関連するがんによる死亡が3倍以上に増加したとする研究結果が、米国内分泌学会(ENDO2025、7月12~15日、サンフランシスコ)で発表された。米ハッケンサック・メリディアン・ジャージーショア大学医療センターのFaizan Ahmed氏らが報告した。  Ahmed氏らの研究によって、肥満関連の13種類のがんによる米国での死亡率が、1999年から2020年の間に、100万人当り3.7人から13.5人に増加したことが明らかにされた。主任研究者である同氏は、「肥満は多くのがんの重大な危険因子であり、死亡率の上昇に寄与している」と解説。また、「われわれの研究から、特に農村部や医療サービスが行き届いていない地域で、肥満に関連するがんによる死亡のリスクが高いことも示された」としている。

大気汚染物質への曝露は髄膜腫リスクを高める

 大気汚染物質を吸い込む量が多い人は、髄膜腫と呼ばれる脳腫瘍のリスクが高いことが、新たな研究で示された。髄膜腫は、脳や脊髄を覆う組織の層にできる脳腫瘍の中でも発生頻度が高い腫瘍だが、ほとんどは良性である。この研究では、粒子状物質や二酸化窒素など複数の種類の大気汚染物質が髄膜腫のリスクを高める可能性のあることが示された。デンマークがん研究所のUlla Hvidtfeldt氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に7月9日掲載された。Hvidtfeldt氏は、「さまざまなタイプの大気汚染物質が健康に悪影響を与えることが示されてきた。このうち超微小粒子は極めて小さく、血液脳関門を通過できるため、脳組織に直接的な影響を与える可能性がある」と話している。

monarchE適格基準を満たす乳がんの予後、サブグループ間でばらつき

 monarchE試験において、高リスクHR+/HER2-早期乳がんに対する術後内分泌療法へのアベマシクリブ追加のベネフィットが示されているが、高リスク患者のサブグループごとの再発リスクの差異については不明である。そこで、国立がん研究センター中央病院の星野 舞氏らは自施設の症例を対象に、monarchEコホート1の適格基準(リンパ節転移4個以上、リンパ節転移1~3個で腫瘍径5cm超または組織学的グレード3)のサブグループ別に予後を解析したところ、ばらつきがあることが示された。Breast Cancer誌オンライン版2025年7月28日号に掲載。  本研究は、2017年1月~2019年8月に国立がん研究センターで手術を受けたHR+/HER2-乳がん患者989例を後ろ向きに解析した。患者を非適格群(monarchEコホート1適格基準を満たさない)、N1+>5cm群(腫瘍径5cm超かつリンパ節転移1~3個)、N1+G3群(組織学的グレード3かつリンパ節転移1~3個)、≧N2群(リンパ節転移4個以上)の4群に分け、無浸潤疾患生存期間(iDFS)、遠隔無病生存期間、全生存期間を含む生存アウトカムを、Kaplan-MeierモデルおよびCox比例ハザードモデルを用いて解析した。

日本の認知症動向、その傾向と地域差

 アルツハイマー病やその他の認知症は、深刻な公衆衛生上の懸念事項であり、日本においてはさらに重要な課題となっている。ベトナム・RMIT University VietnamのDeepak Kumar Behera氏らは、アルツハイマー病やその他の認知症負担の経時的傾向を調査し、関連するリスク因子を特定し、時系列モデリングを用いて将来予測を行った。Alzheimer's & Dementia誌2025年7月号の報告。  世界疾病負担(GBD)研究2021のデータを用いて、日本におけるアルツハイマー病やその他の認知症の傾向を分析し、罹患率、死亡率、障害調整生存年(DALY)を評価した。リスク因子の特定には回帰分析を、2021〜30年までの疾病負担の予測には自己回帰統合移動平均(ARIMA)モデルを用いた。