イプタコパンは、補体代替経路の補体B因子を標的とする強力な経口補体阻害薬。「APPLAUSE-IgAN試験」の9ヵ月時点の中間解析で、急速な疾患進行のリスクが高いIgA腎症患者において、本薬はプラセボと比較して24時間尿蛋白/クレアチニン比の有意な減少(38.3%の減少、p<0.001)をもたらし、安全性プロファイルは許容範囲内であることが示されたため、すでに原発性IgA腎症の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)の迅速承認を得ている(本邦ではIgA腎症に対しては未承認)。英国・University of LeicesterのJonathan Barratt氏らは、今回、同試験の24ヵ月時の最終解析を実施。イプタコパンはプラセボと比較して腎機能低下を有意に減速させたことを報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年3月29日号で発表された。
国際的な無作為化プラセボ対照第III相試験
APPLAUSE-IgAN試験は、日本の施設も参加した国際的な二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2021年1月~2025年9月に患者を登録した(Novartisの助成を受けた)。
対象は、年齢18歳以上、ACE阻害薬やARBなどによる支持療法にもかかわらずIgA腎症を認め(生検で確定)、推算糸球体濾過量(eGFR)≧30mL/分/1.73m
2、24時間尿蛋白/クレアチニン比≧1の患者であった。
被験者を、イプタコパン(200mg、1日2回)またはプラセボを経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。
主要エンドポイントは、24ヵ月間にわたるeGFRの年間総変化量とした。副次エンドポイントとして、複合腎不全エンドポイント(eGFRのベースラインとの比較で30%以上の低下が4週間以上持続、eGFR<15mL/分/1.73m
2の状態が4週間以上持続、維持透析[4週間以上]の導入、腎移植の実施、腎不全による死亡)のtime-to-event解析も行った。
eGFRの年間総変化量が有意に良好
477例を登録し、イプタコパン群に238例(平均[±SD]年齢39.7[±11.6]歳、男性56.3%)、プラセボ群に239例(39.2[±12.5]歳、50.6%)を割り付けた。それぞれ18.9%および36.8%の患者が、主にeGFRの30%以上の低下が原因で試験薬の投与を中止した。
24ヵ月の時点でのeGFRの年間総変化量(最小二乗平均)は、イプタコパン群が-3.10mL/分/1.73m
2/年と、プラセボ群の-6.12mL/分/1.73m
2/年に対し、低下の勾配が有意に緩徐であった(群間差:3.02mL/分/1.73m
2/年、95%信頼区間[CI]:2.02~4.01、補正後のp<0.001)。
また、複合腎不全エンドポイントの発生率は、イプタコパン群が21.4%と、プラセボ群の33.5%と比べて有意に低かった(ハザード比[HR]:0.57、95%CI:0.40~0.81、p=0.003)。
もう1つの副次エンドポイントである9ヵ月時の24時間尿蛋白/クレアチニン比<1の患者の割合は、イプタコパン群が43.9%とプラセボ群の17.5%に比べて有意に高かった(群間差:26.4%[95%CI:18.7~34.0]、オッズ比[OR]:4.45[2.79~7.09]、p<0.001)。
有害事象の8割が軽度~中等度
有害事象の発生率は、イプタコパン群で87.0%、プラセボ群で89.1%であった。イプタコパン群で頻度の高い有害事象は、COVID-19(21.0%)、上気道感染症(16.0%)、上咽頭炎(10.1%)であった。同群の有害事象の重症度別の発生率は、軽度が46.6%、中等度が34.0%、重度が6.3%だった。
重篤な有害事象は、イプタコパン群で12.2%、プラセボ群で11.7%に発現し、重篤な感染症はそれぞれ6.7%および2.1%にみられた。試験薬との関連が疑われた有害事象は20.2%および20.5%、試験薬の投与中止に至った有害事象は4.6%および4.6%に発現した。死亡例は認めなかった。
著者は、「イプタコパン群は慢性的なeGFR低下の発生率がプラセボ群の約半分であり、腎機能の全体的な低下の幅も著明に小さかった」とし、「イプタコパンは、進行リスクの高いIgA腎症患者において、腎機能の低下の速度を有意に減速した」と結論付けている。また、「本試験は、尿蛋白高値に基づき進行リスクが高いと判定されたIgA腎症を対象としており、低リスク例におけるイプタコパンの効果は不明である」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)