術後VTEの予防、REGN7508Catがエノキサパリンを上回る/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2025/12/08

 

 カナダ・Thrombosis and Atherosclerosis Research InstituteのJeffrey I. Weitz氏らは、2つの第II相試験(ROXI-VTE-I、ROXI-VTE-II)において、人工膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症(VTE)の予防効果に関して、エノキサパリンと比較してREGN7508Catは優越性を有するが、REGN9933A2は優越性を持たないと報告した。REGN9933A2は、凝固XI因子(FXI)のアップル2ドメインに結合してFXIIaによるFXI活性化のみを阻害し、REGN7508Catは、FXIの触媒ドメインに結合してFXIaの活性を阻害するとともに、FXIIaおよびトロンビンによるFXI活性化をも阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体である。研究の成果は、Lancet誌2025年11月29日号で発表された。

2つの国際的な無作為化試験

 ROXI-VTE-I試験とROXI-VTE-II試験は、それぞれ術後VTEの予防におけるREGN9933A2およびREGN7508Catの有効性と安全性の評価を目的とする非盲検無作為化試験であり、前者は2023年5月~2024年5月に7ヵ国15施設で、後者は2024年6月~2025年1月に5ヵ国12施設で参加者を登録した(Regeneron Pharmaceuticalsの助成を受けた)。

 両試験とも、年齢50歳以上で、片側の膝関節に対する初回の待機的人工膝関節全置換術を受けた患者を対象とした。

 ROXI-VTE-I試験では、REGN9933A2(300mg、単回、静脈内)、エノキサパリン(40mg、1日1回、皮下)、探索的比較としてアピキサバン(2.5mg、1日2回、経口)の投与を受ける群に1対1対1で、ROXI-VTE-II試験では、REGN7508Cat(250mg、単回、静脈内)またはエノキサパリン(40mg、1日1回、皮下)の投与を受ける群に2対1で、それぞれ参加者を無作為に割り付けた。

 両試験の主要エンドポイントは、修正ITT集団における、試験薬の初回投与(術後12~24時間)から12日目までに発現し、客観的に確定されたVTE(術側下肢の無症候性深部静脈血栓症、いずれかの下肢の客観的に確定された症候性深部静脈血栓症、確定された非致死性または致死性肺塞栓症の複合)とした。REGN9933A2とREGN7508Catは、対数オッズ比(log OR)の事後確率が95%を超える場合に、エノキサパリンより優越性があると判定した。

 主な安全性アウトカムは、大出血および臨床的に重要な非大出血の複合であった。

事後確率、I試験78.5%、II試験99.8%

 ROXI-VTE-I試験は373例(REGN9933A2群123例[年齢中央値66歳、女性77%]、エノキサパリン群125例[66歳、83%]、アピキサバン群125例[66歳、71%])、ROXI-VTE-II試験は179例(REGN7508Cat群120例[67歳、77%]、エノキサパリン群59例[66歳、75%])を登録した。追跡期間中央値は両試験とも74日(四分位範囲:72~76)であった。

 ROXI-VTE-I試験では、12日目までにVTEがREGN9933A2群で116例中20例(17%)、エノキサパリン群で117例中26例(22%)、アピキサバン群で113例中14例(12%)に発生した。平均補正後オッズ比(aOR)は0.78(90%信用区間[CrI]:0.47~1.32)、事後確率は78.5%であり、エノキサパリンに対するREGN9933A2の優越性は示されなかった。

 一方、ROXI-VTE-II試験では、12日目までにVTEがREGN7508Cat群で113例中8例(7%)、エノキサパリン群で58例中10例(17%)に発生した。ROXI-VTE-I試験のエノキサパリン群と統合したデータに基づく平均aORは0.37(90%CrI:0.20~0.68)、事後確率は99.8%と、エノキサパリンに対するREGN7508Catの優越性を確認した(名目上のp=0.04)。

主な安全性アウトカムのイベントは発生せず

 大出血および臨床的に重要な非大出血の発現は認めなかった。最も頻度の高い試験治療下での有害事象は、術後の貧血(ROXI-VTE-I試験:REGN9933A2群123例中9例[7%]、エノキサパリン群125例中11例[9%]、アピキサバン群125例中16例[13%]、ROXI-VTE-II試験:REGN7508Cat群120例中6例[5%]、エノキサパリン群0例)であった。

 また、重篤な有害事象は、ROXI-VTE-I試験ではREGN9933A2群で4例(3%)、エノキサパリン群で1例(1%)、アピキサバン群で2例(2%)に発現し、ROXI-VTE-II試験ではREGN7508Cat群で2例(2%)にみられ、エノキサパリン群では認めなかった。両試験ともに試験薬の投与中止の原因となった有害事象の報告はなく、試験薬関連の有害事象や重篤な有害事象も発生せず、試験期間中の死亡例もなかった。

 著者は、「これら2つの試験は、FXIの阻害は出血リスクを増加させずに血栓症を軽減するという考え方への支持をより強固なものにする」「今後、REGN9933A2とREGN7508Catの安全性を確定し、これらの異なる作用機序が、FXI活性化の駆動因子に応じた個別化治療を可能にするかを明らかにするための試験が求められる」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 後藤 信哉( ごとう しんや ) 氏

東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授

J-CLEAR理事