重症または中等症の血友病B成人患者において、fidanacogene elaparvovecの単回静脈内投与は、投与後3~6年間に認められた有害作用はない、あるいはあっても軽度であった。また、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いた治療の中で最も少量である体重1kg当たり5×1011ベクターゲノムの投与で、長期にわたり有効性が維持された。オーストラリア・シドニー大学のJohn E. J. Rasko氏らが、第I/IIa相試験および長期追跡試験の結果を報告した。血友病B治療のために開発された遺伝子組み換えAAVベクターのfidanacogene elaparvovecは、高活性第IX因子変異体(FIX-R338L変異体[FIX-Padua])の持続的な発現が認められているが、長期的な安全性と有効性は不明であった。NEJM誌2025年4月17日号掲載の報告。
fidanacogene elaparvovecを単回投与し3~6年間追跡
研究グループは、18歳以上の重症または中等症の血友病B(第IX因子活性が正常値の2%以下)患者に、fidanacogene elaparvovecを体重1kg当たり5×10
11ベクターゲノムの用量で単回静脈内投与した。投与1年後、参加者はさらに5年間の長期追跡試験に登録できることとした。
本試験の主要目的は安全性の評価で、有害事象、臨床検査値の変化などが含まれた。副次目的は有効性の評価で、年間出血率、第IX因子活性などであった。
計15例が登録されfidanacogene elaparvovecの投与を受けた。このうち14例が長期追跡試験に参加し、少なくとも3年間の追跡調査を完了した。追跡期間中央値は5.5年(範囲:3~6)で、データカットオフ時点で8例が試験を継続していた。
安全性プロファイルは良好、平均年間出血率は1未満を維持
長期追跡試験に参加した14例において、投与1年後以降に治療関連有害事象を報告した患者はいなかった。
追跡期間全体を通じて、4例に計9件の重篤な有害事象が報告された。内訳は、脊柱管狭窄症、事故、関節脱臼、腎挫傷、肝挫傷および肋骨骨折が1例(重複)、虫垂炎、大動脈解離、関節内出血が各1例で、いずれも治療に関連するものではなかった。試験中止や死亡に至った有害事象はなく、血栓性イベントや抗第IX因子抗体も認められなかった。
追跡期間を通じて第IX因子活性平均値は軽症血友病の範囲内に維持されており、年間出血率は平均値1未満、中央値は0で、10例(67%)は治療を要する出血エピソードを一度も経験しなかった。
肝臓のサーベイランス超音波検査では、がんの所見は認められず、体重増加とALT値上昇(最大値77U/L)を伴う4例に脂肪肝がみられた。また、1例で投与後5年時から基礎疾患の肝線維化の進行が認められたが、本症例はBMI値が高く、C型肝炎、B型肝炎およびHIV感染の既往があった。
8例で計13件の外科手術が行われ、そのうち10件で外因性第IX因子が投与されたが、予期しない出血合併症は発生しなかった。
(ケアネット)