セマグルチド、肥満関連の心不全・2型糖尿病に有効/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2024/04/25

 

 肥満に関連した左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)と2型糖尿病を有する患者に対し、セマグルチドの週1回投与はプラセボ投与と比較し、1年時点で心不全関連の症状と身体的制限の軽減、および体重減少が大きかった。米国・Saint Luke's Mid America Heart InstituteのMikhail N. Kosiborod氏らSTEP-HFpEF DM Trial Committees and Investigatorsが、616例を対象とした無作為化試験の結果を報告した。肥満症と2型糖尿病は、HFpEF患者では一般的にみられ、症状の負荷が大きいことが特徴であるが、2型糖尿病を有する肥満に関連したHFpEFを標的とする治療法は、これまで承認されていない。NEJM誌2024年4月18日号掲載の報告。

KCCQ-CSSと体重の変化を比較

 研究グループは、BMI値が30以上で2型糖尿病を有するHFpEF患者を無作為に1対1の割合で2群に分け、セマグルチド(2.4mg)を週1回、またはプラセボをそれぞれ52週間投与した。

 主要エンドポイントは、カンザスシティ心筋症質問票の臨床サマリースコア(KCCQ-CSS:0~100で数値が高いほど症状と身体的制限が少ない)のベースラインからの変化量、体重のベースラインからの変化率だった。

 検証的副次エンドポイントは、6分間歩行距離の変化量と、階層的複合エンドポイント(死亡、心不全イベント、KCCQ-CSSの変化量の差、6分間歩行距離の変化量の差など)、およびC反応性蛋白(CRP)値の変化だった。

KCCQ-CSS変化量平均値、セマグルチド群は13.7点、プラセボ群6.4点

 2021年6月15日~2022年8月19日に計616例が無作為化された(セマグルチド群310例、プラセボ群306例)。52週時点で投与を受けていた(各群260例)被験者において、セマグルチドの計画用量2.4mgで投与を受けていた被験者は209例(80.4%)、プラセボの同用量投与被験者は248例(95.4%)であった。被験者の年齢中央値は69歳、女性が44.3%、BMI中央値は36.9、KCCQ-CSS中央値は59.4点、6分間歩行距離中央値は280mだった。

 KCCQ-CSS変化量の平均値は、セマグルチド群13.7点、プラセボ群が6.4点だった(推定群間差:7.3点、95%信頼区間[CI]:4.1~10.4、p<0.001)。体重の変化率の平均値は、それぞれ-9.8%、-3.4%だった(推定群間差:-6.4%ポイント、95%CI:-7.6~-5.2、p<0.001)。

 検証的副次エンドポイントの結果も、セマグルチド群がプラセボ群より良好だった。6分間歩行距離の変化量は、群間差の推定値14.3m(95%CI:3.7~24.9、p=0.008)、階層的複合エンドポイントのwin ratioは1.58(95%CI:1.29~1.94、p<0.001)、CRP値の変化に対する治療間比の推定値は0.67(95%CI:0.55~0.80、p<0.001)だった。

 重篤な有害事象はセマグルチド群55例(17.7%)、プラセボ群88例(28.8%)で報告された。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)