四肢骨折の手術部位感染予防、最適な皮膚消毒薬は?/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2024/02/13

 

 四肢骨折の手術部位感染予防における手術前の皮膚消毒では、閉鎖骨折の場合は、クロルヘキシジングルコン酸塩のアルコール溶液と比較して、ヨウ素ポバクリレックスのアルコール溶液は有効性が高い一方で、開放骨折ではこのような差はないことが、カナダ・マクマスター大学のSheila Sprague氏らが実施した「PREP-IT試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年2月1日号に掲載された。

北米25病院のクラスター無作為化クロスオーバー試験

 PREP-IT試験は、四肢骨折の手術部位の感染予防における手術前の皮膚消毒として、2種のアルコールベースの消毒薬の有効性と安全性の評価を目的とするクラスター無作為化クロスオーバー試験であり、米国とカナダの25の病院で行った(米国患者中心アウトカム研究所[PCORI]などの助成を受けた)。

 参加施設を、0.7%ヨウ素ポバクリレックスの74%イソプロピルアルコール溶液を使用する群(ヨウ素群)、または2%クロルヘキシジングルコン酸塩の70%イソプロピルアルコール溶液を使用する群(クロルヘキシジン群)に無作為に割り付け、2ヵ月ごとにこれらの介入を入れ替えた。

 対象は、年齢18歳以上の閉鎖骨折(下肢、骨盤)または開放骨折(上肢、下肢)の患者であった。

 主要アウトカムは、手術部位感染(30日以内の皮膚表層切開創感染、90日以内の深層切開創感染または臓器/体腔感染)とした。

閉鎖骨折では、ヨウ素群2.4%、クロルヘキシジン群3.3%

 閉鎖骨折6,785例(平均[±SD]年齢53.9±20.3歳、女性51.1%)と、開放骨折1,700例(44.6±18.2歳、男性63.5%)を登録した。閉鎖骨折ではヨウ素群に3,360例、クロルヘキシジン群に3,425例、開放骨折ではそれぞれ854例、846例を割り付けた。

 閉鎖骨折では、手術部位感染は、クロルヘキシジン群の108例(3.3%)に発生したのに対し、ヨウ素群は77例(2.4%)と有意に少なかった(オッズ比[OR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.55~1.00、p=0.049)。

 一方、開放骨折では、手術部位感染は、ヨウ素群が54例(6.5%)、クロルヘキシジン群は60例(7.3%)で発生し、両群間に有意な差を認めなかった(OR:0.86、95%CI:0.58~1.27、p=0.45)。

予定外の再手術、重篤な有害事象の頻度は同程度

 副次アウトカムである1年以内の予定外の再手術(閉鎖骨折[ヨウ素群5.5% vs.クロルヘキシジン群5.9%、OR:0.96、95%CI:0.77~1.20]、開放骨折[16.1% vs.14.5%、1.16、0.87~1.54)の頻度は両群で同程度であった。また、1年以内の重篤な有害事象の頻度にも両群間に差はみられなかった。

 著者は、「これらの知見により、米国では、手術前の皮膚消毒としてヨウ素ポバクリレックスのアルコール溶液を使用することで、数千例の閉鎖骨折患者の手術部位感染を予防する可能性が示唆されるが、開放骨折患者のアウトカムを改善する可能性は低い」とまとめ、「どちらの溶液の成分も、患者がアレルギー反応を示す可能性があるため、病院は両方の介入の在庫を保持し続ける必要がある」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)