急性脳梗塞で血管内治療後の急性期血圧管理、厳格vs.標準(OPTIMAL-BP)/JAMA

主幹動脈閉塞による急性虚血性脳卒中患者で血管内血栓除去術(EVT)により再灌流に成功した後、血圧上昇がみられる患者において、24時間の集中的な血圧管理(収縮期血圧の目標140mmHg未満)は従来の血圧管理(同140~180mmHg)と比較し、3ヵ月時点の機能的自立の達成割合が低いことを、韓国・延世大学のHyo Suk Nam氏らが多施設共同無作為化非盲検評価者盲検比較試験「Outcome in Patients Treated With Intra-Arterial Thrombectomy-Optimal Blood Pressure Control:OPTIMAL-BP試験」の結果、報告した。急性虚血性脳卒中患者におけるEVTによる再灌流成功後の最適な血圧管理は、不明であった。著者は、「EVTを受けた急性虚血性脳卒中患者において、再灌流成功後24時間の強化降圧療法は避けるべきである」と述べている。JAMA誌2023年9月5日号掲載の報告。
140mmHg未満目標の強化管理群vs.140~180mmHg目標の従来管理群を評価
研究グループは、2020年6月~2022年11月の期間に韓国の脳卒中センター19施設において、EVTを受けた20歳以上の主幹動脈閉塞による急性虚血性脳卒中患者で、修正Thrombolysis in Cerebral Infarction(TICI)スコアが2b以上(閉塞血管領域の50%以上で再灌流)、再灌流成功後2時間以内に2分間隔で少なくとも2回測定した収縮期血圧が140mmHg以上の患者を登録。登録後24時間の収縮期血圧について、140mmHg未満を目標とする強化管理群と140~180mmHgを目標とする従来管理群に1対1に無作為に割り付けた。主要有効性アウトカムは、3ヵ月時点の機能的自立(修正Rankin Scaleスコア0~2)とした。主要安全性アウトカムは、36時間以内の症候性頭蓋内出血、3ヵ月以内の脳卒中関連死であった。
3ヵ月後の機能的自立の達成割合は、従来管理群が良好
本試験は、ENCHANTED2/MT試験で示された安全性の懸念が確認されたことなどにより、データ安全性モニタリング委員会の勧告に基づき、306例が無作為化された時点で早期中止となった。無作為化された患者のうち、305例が適格基準を満たし、302例(99.0%)が試験を完了した(平均年齢73.0歳、女性122例[40.4%])。機能的自立を達成した患者の割合は、強化管理群39.4%(61/155例)、従来管理群54.4%(80/147例)、群間リスク差は-15.1%(95%信頼区間[CI]:-26.2~-3.9)、補正後オッズ比は0.56(95%CI:0.33~0.96、p=0.03)であり、強化管理群で達成が有意に低いことが認められた。
症候性頭蓋内出血の発現率は、強化管理群9.0%(14/155例)、従来管理群8.1%(12/149例)であった(群間リスク差:1.0%[95%CI:-5.3~7.3]、補正後オッズ比:1.10[95%CI:0.48~2.53]、p=0.82)。また、3ヵ月以内の脳卒中関連死亡率は、強化管理群7.7%(12/155例)、従来管理群5.4%(8/147例)であった(2.3%[-3.3~7.9]、1.73[0.61~4.92]、p=0.31)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)
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機械的血栓回収療法後の脳卒中急性期の血圧管理目標レベル(解説:冨山博史氏)
コメンテーター : 冨山 博史( とみやま ひろふみ ) 氏
東京医科大学 循環器内科 教授
J-CLEAR評議員