米国の主要ガイドライン、低エビデンスも推奨強が多い?/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2021/12/09

 

 米国心臓病学会(ACC)、米国心臓協会(AHA)、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の作成した臨床ガイドラインについて、エビデンスの質が低いにもかかわらず、推奨の度合いが強い事例が少なくないことが示された。そうしたエビデンスの質と推奨の強さの「不一致」は、エビデンスベースのガイドラインと比べてコンセンサスベースのガイドラインに多かったという。カナダ・マックマスター大学のLiang Yao氏らが、ACC、AHA、ASCOの作成したガイドラインとそれに基づく推奨について実証分析を行い明らかにした。エビデンスに基づく医療とは、推奨の度合いとエビデンスの質が一致していることを原則とするが、コンセンサスベースのガイドラインでこの原則を満たしているかは明らかにされていなかったという。著者は「“信頼できる”ガイドライン作成のためには、エビデンスの質と推奨の度合いを適切に一致させることが鍵になる」と指摘している。BMJ誌2021年11月25日号掲載の報告。

推奨の根拠や作成過程などを評価

 研究グループは、推奨の度合いとエビデンスの質との整合性が、コンセンサスベースのガイドラインとエビデンスベースのガイドラインで異なるかを調べるため、2021年3月27日時点で検索を行い、ACC/AHA、ASCOが作成した臨床ガイドラインのうち、(a)エビデンスに基づく明確なコンセンサスから作られたガイドライン、(b)推奨を含むもの、(c)推奨がコンセンサスに基づくものか、エビデンスに基づくものかを明確に分類しているもの、(d)エビデンスの質とそれぞれの推奨の度合いを明記したものを抽出し調査した。

 検証作業は2人1組で行い、それぞれが推奨について根拠がエビデンスかコンセンサスか、推奨作成に当たりグレードシステムを用いたかどうか、推奨の度合い、エビデンスの質といった推奨の特徴を評価した。また、弱いエビデンスに基づく強い推奨といった「不一致」が認められる推奨や、適切性基準に見合わない「不適切で不一致」な推奨事項の数を数えた。

コンセンサスアプローチによる「不適切で不一致」推奨事例は2.6~5.1倍

 ACC/AHAの12のガイドラインに基づく1,434件の推奨事項、ASCOの69のガイドラインに基づく1,094件の推奨事項が調査対象に含まれた。

 質の低いエビデンスに基づくACC/AHAの504件の推奨のうち、200件(40%)がコンセンサスアプローチにより、304件(60%)がエビデンスアプローチにより作成されたものだった。

 また、ASCOの質の低いエビデンスに基づく404件の推奨は、292件(72%)がコンセンサスアプローチによるもので、エビデンスアプローチは112件(28%)のみだった。

 ACC/AHA、ASCOのガイドラインの両者において、コンセンサスアプローチのほうが、より多くの「不一致」の推奨事項を生み出しており(ACC/AHAガイドラインのオッズ比[OR]:2.1[95%信頼区間[CI]:1.5~3.1]、ASCOは同2.9[1.1~7.8])、またより多くの「不適切で不一致」な推奨事項を生み出していた(それぞれ2.6[1.7~3.7]、5.1[1.6~16.0])。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

統計数理研究所 大学統計教員育成センター 特任教授

滋賀大学 データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 特任教授

J-CLEAR評議員