急性腰痛に筋弛緩薬は有効か/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2021/07/20

 

 非特異的腰痛の治療における筋弛緩薬の臨床的有効性と安全性には、かなりの不確実性が存在し、確実性がきわめて低いエビデンスではあるが、急性腰痛では非ベンゾジアゼピン系抗痙攣薬が2週間以内に、痛みの強さを臨床的な意義はないもののわずかに軽減することが、オーストラリア・Neuroscience Research AustraliaのAidan G. Cashin氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2021年7月8日号に掲載された。

疼痛強度、機能障害、受容性、安全性をメタ解析で評価

 研究グループは、腰痛治療における筋弛緩薬の有効性と受容性、安全性を評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。

 医学データベース(Medline、Embase、CINAHL、CENTRAL、ClinicalTrials.gov、clinicialtrialsregister.eu、WHO ICTRP)を用いて、創設時から2021年2月23日までに登録された文献を検索した。

 対象は、非特異的腰痛の成人(年齢18歳以上)患者の治療において、筋弛緩薬をプラセボ、通常治療、介入待機(waiting list)、無治療と比較した無作為化対照比較試験であった。

 2人の研究者が別個に、試験を同定し、データを抽出し、バイアスのリスク(Cochrane risk-of-bias toolを使用)およびエビデンスの確実性(Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluationsを使用)を評価した。制限付き最尤推定法による変量効果メタ解析モデルを用いて、プールされた効果とその95%信頼区間(CI)を推定した。

 アウトカムは、疼痛強度尺度(0~100点)、機能障害尺度(0~100点)、受容性(投与期間中のあらゆる理由による投与中止数で評価した満足度)、安全性(有害事象、重篤な有害事象、有害事象により試験を中止した参加者の数)であった。

大規模で信頼性の高い試験が早急に必要

 レビューには49の試験が含まれ、このうち31試験(6,505例)がメタ解析の対象となった。これらの試験は、18種の筋弛緩薬について評価しており、29試験が非ベンゾジアゼピン系抗痙攣薬、11試験がその他の薬剤、5試験が抗攣縮薬、4試験はベンゾジアゼピン系薬の検討を行っていた。

 急性腰痛では、確実性が「非常に低(very low)」のエビデンスとして、対照群と比較して、2週時または2週以内に非ベンゾジアゼピン系抗痙攣薬は疼痛強度の軽減と関連した(平均差:-7.7、95%CI:-12.1~-3.3)が、機能障害の軽減は認められなかった(-3.3、-7.3~0.7)。

 また、急性腰痛では、確実性が「低(low)」のエビデンスとして、対照群と比較して、非ベンゾジアゼピン系抗痙攣薬は有害事象のリスクを増加させ(相対リスク:1.6、95%CI:1.2~2.0)、確実性が「非常に低」のエビデンスとして、受容性に及ぼす効果はほとんどないか、まったくない可能性が示された(0.8、0.6~1.1)。

 他の筋弛緩薬や腰痛の持続時間の違いを検討した試験は少なく、ほとんどの試験はバイアスのリスクが高かったことから、エビデンスの確実性は低かった。

 著者は、「腰痛治療における筋弛緩薬の有効性と安全性に関する不確実性を解消するには、大規模で信頼性の高いプラセボ対照比較試験が早急に必要である」としている。

(医学ライター 菅野 守)